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「光と影のカプリス 第95話(GS)」

クロト (2007-08-31 19:30)
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 翌朝、横島たちは約束通り唐巣の教会から少し離れたところにある広い河原に集まっていた。何しろ雪之丞は霊波砲を撃ちまくったり悪魔みたいな姿になったり空を飛んだりするので、人前ではとても本気で修行できないのである。
 カリンも空を飛ぶし口から火を吐けたりするが、ここは草木もまばらで火事になる恐れはなさそうだった。今日は組み手ということで、服を黒のニットセーターと白のスラックス(のように見えるデザイン)に変えている。
 パンチラの可能性がゼロになってしまったことに横島が不満を洩らしたが、カリンが「伊達殿に見られてもいいのか?」と切り返すと静かになった。実に分かりやすい男である。
 タマモと弓は流れ弾でケガしないよう、少し離れた場所で観戦することになった。横島もカリンも雪之丞も飛び道具の威力が強烈なので、間近で見物というのは危険すぎるのだ。
 タマモが持っているホルダーには、昨晩横島が竜珠を使って書いた強化版の傷病平癒符が入っている。もちろん組み手の後で応急手当てをするためなのだが、破魔札や結界札も同じように強化版を書けるから符の作り手としては大きく成長したといえるだろう。ただし強化する分だけ消耗も増すから量産はできないのだが。

「くっくっくっ……てめぇとはGS試験のときからやってみたいと思ってたんだ。思いっきり楽しませてもらうぜ!」

 言うなり魔装術を展開する雪之丞。その全身が黒っぽい悪魔のような形の霊気の鎧に包まれた。
 ただの組み手という事を忘れ果てているかのような台詞だが、彼にも一応言い分はある。横島たちは炎のブレスを吐けることをすでに聞いていたから、生身のまま戦ったら大火傷してしまうということだ。彼らがそこを考慮してブレスは控えるという事も考えられたが、相手の手加減を期待して戦うなんてセコい戦法のどこが面白いというのか!
 バトルとは全力と全力で正面からぶつかり合うから面白いのだ。たとえば相撲や高校野球で反則ばかりしていたら見てる方も詰まらないだろう。まあ今回はアノ技だけは勘弁してもらったが、いつかは破るつもりである。

「いやじゃーっ、ちょっとは手加減しろ!」

 文字通りバトルに飢えたケモノの咆哮に横島は早くも泣きを入れたが、すっと彼の前に出た影法師に台なしにされてしまった。

「そうか。あなたが強いのは承知しているが、生半可な攻撃で私たちの防御は崩せないからな。全力でかかって来るといい」
「だからおまえも煽ってんじゃねーーー!」
「へえ、うれしいコト言ってくれるじゃねえか。いくぜ横島!」

 煩悩少年の泣き言は完璧にスルーされつつ、いよいよ組み手が始まった。雪之丞はいきなり彼らの間合いに入ろうとはせず、まずは7メートルほど離れた位置で止まると真横にサイドステップして霊波砲を放つ。
 横に跳んだのは、霊波弾の射線をカリンと横島をつなぐ直線上に合わせるためだ。つまりカリンがかわしたら横島に当たるような位置から撃ったのである。
 カリンもすかさず右手を剣印(握り拳から人差し指と中指をそろえて立てる)に結ぶと、飛んで来る霊波弾にその指先を突きつけた。

「鋭ッ!」

 少女が得意とする金縛りの術だったが、雪之丞の霊波弾は一瞬では止まらなかった。カリンは八房の霊波刃を8枚一気に止めた実績があるのだが、あれは強度と殺傷力は高いが体積が小さいのでエネルギー量自体は意外に低く、止めるだけなら普通の霊波弾より容易だったのだ。

「なるほど、さすがに重いな……!」

 といっても「一瞬」では止められないというだけで、少し時間をかければ問題なく停止させられる。しかしその僅かな時間こそ、雪之丞にとってつけ込むべき隙だった。
 まずは数歩間合いを詰め、予想通り飛んで来た炎のブレスをもう1度横に跳んで回避する。

「止め切れるか? くらえ、俺の連続霊波砲!!」

 雪之丞が霊波砲を撃つペースとカリンがそれを止めるペースの勝負だ。カリンが勝っていれば雪之丞は霊力を消耗して不利になるが、雪之丞が勝っていれば彼女の防御を突破して一撃を加えることができるだろう。
 ちなみに雪之丞はカリンが出た状態で横島が霊力を使えることは知らない。犬飼と戦った時は一緒にいたのだが、横島が金縛りの術を使ったと断定できるほどの観察眼は持っていないのだ。霊波砲と違って目に見える術ではないから。

「なるほど、そう来たか……」

 カリンは別にあわてもせず、雨あられと飛んで来る霊波弾を次々と止めていく。このパターンは犬飼と戦った時に経験済みなのだ。
 確かに技術的にはさほど難しいことではなかったが、しかし今回はパワーの面で分が悪いようだった。弾が止まる位置がだんだん彼女の方に近づいて来ている。

「くっ、これはちょっときついか……!?」

 それなら横島が手伝えばいいのだが、なぜか煩悩少年は黙って見ているだけで手出しをしない。その間に雪之丞はとうとう勝機を見出していた。

「よし、今だ! くらえ……ッ!」

 渾身の霊波砲を両手から同時にぶっ放す雪之丞。その狙い通り、必殺の霊波弾2発がカリンの防空網をくぐり抜けて横島の腹に迫った。
 おそらく影法師娘は身をもって本体をかばうはずだ。そこに突進して接近戦を挑めば勝てるだろう。
 ―――と雪之丞は見込んだのだが、彼の霊波弾は横島の体には届かなかった。その50センチくらい手前で、ちょうど布団に斜めからボールを投げつけたような感じで勢いを殺され、軌道も逸らされてしまったのである。霊波弾は2発とも、空しく横島の左後ろにへろへろと流れて行った。

「金縛りじゃねえ……霊気のバリアーか何かか!?」

 驚愕に眼をみはる雪之丞。いろいろと規格外な男だと思っていたが、こんな芸まで身につけていたとは。
 タネはもちろん、カリンの竜珠の結界だ。魔装をまとった雪之丞の全力攻撃を防げるほどの出力はないが、横島の竜珠で強化すれば方向を逸らすくらいは簡単だった。横島が何もせずにいたのは、これに備えて竜珠を2つとも預かっていたからである。
 単によけてしまえば済むことでもあったが、今日の組み手は南武グループとの戦いに向けた新技の実地練習という位置づけなので、あえて受ける方を選んだのだ。

「そういうことだ。剣も防護服もなくなったが、別に弱くなったわけじゃないんだぞ?」
「何っ!?」

 雪之丞がはっと気づいた時には、身を低く沈めたカリンが彼の懐にまで入り込んできていた。犬飼の時に使った超スピードの突進術である。

「ぐふっ!」

 装甲の薄い腹部に肘を埋め込まれて、雪之丞は後ろに吹っ飛んだ。いや1度見ていたから自分から半歩下がるのが間に合ったが、そうでなかったら意識が飛んでいたかも知れない。とりあえず追撃を避けるため、痛みをこらえて空中に舞い上がる。
 しかし飛行能力はカリンの方が数段上だ。即座に追いすがって、下からブレスを吹きつける。
 煩悩ブーストなしのカリンのパワーは約70マイト、魔装雪之丞のせいぜい半分強でしかない。いくらスピードは勝っているといっても、がっぷり組み合って殴り合いなんて愚の骨頂なのだ。

「うわちちちちっ!? 畜生、や、やるじゃねーか」

 てっきり接近戦を挑んでくるものと思って身構えていた雪之丞が予想外のダメージに空中で転げ回った。さっきの肘打ちは別に格闘勝負をしようなんて意味じゃなかったのだ。
 しかし雪之丞とて自他共に認めるバトルフリークである。この程度で逃げ腰になるわけはなく、空中で反転すると自由落下の勢いも加えてカリンに突撃した。

「く、さすがに気合いが入ってるな!」

 カリンはブレスで迎撃することもできたが、それでも突っ込んで来られたらたまらない。とっさに後退して間合いを広げたが、雪之丞は2人の距離が最も縮んだ瞬間に霊波砲を乱射した。

「……っく!」

 金縛りの術で防ぎにかかるカリンだったが、間合いがわずか3メートルでは全部を停止させることはできない。体に当たらない分は無視したが、それでも2発、左腕と右腿にくらってしまった。
 下がりながらだったから、ダメージは多少緩和できたけれど。

「いってぇーーっ!? あんにゃろ、マジで撃ちやがったな」

 このような気合いに欠けた悲鳴をあげるのは、むろんカリンではなくて横島である。しかし自分と恋人を同時に痛い目に遭わされればヘタレな彼といえども怒るわけで、竜珠を接続して強烈な破術を雪之丞の右肩の辺りに叩きこんだ。
 そのただ一撃で、魔装の鎧の肩当てが水風船のように破裂して消し飛ぶ!

「ぐぅおおおっ!?」

 雪之丞が苦痛に表情をゆがめ、空中でよろめいてたたらを踏んだ。
 GS試験で陰念に使った時とは比べものにならぬ威力だった。横島も修行して上達した上に、今回は安全な場所にいたからゆっくり術を練れたのである。
 そしてカリンにとっては勝負をつける絶好のチャンスだったが、なぜか少女は追い討ちをかけずに雪之丞が立ち直って魔装を修復するのを待っていた。

「……どういうつもりだ?」

 雪之丞が訝しげに問い質すと、カリンはかすかに眉をひそめて、

「いや、やはり実質2対1では一方的になるみたいなのでな。
 いつも私がそばにいられるとは限らないし、あとは横島にやってもらうことにする」
「……?」

 雪之丞が首をかしげているうちに、カリンは身を翻して横島のそばに戻って行った。そして本体と二言三言話した後、その中に引っ込んでしまう。
 やがて横島が泣き喚く声が響いた。

「何でじゃー! 俺は後衛だっておまえも昨日言っただろがーー!!」

 どうやら彼を完全に説得しおおせたわけではないようだ……。


 雪之丞はカリンの意図を正確に理解することはできなかったが、組み手の続きができるのならそれで良かった。横島の手前5メートルほどの位置に着地して、律儀にも戦闘再開を声高らかに宣言する。さっきカリンに「情けをかけられた」以上、ここで横島に不意打ちするなど男の矜持が許さないのだ。

「何だかよくわからんが、とにかく続きを始めるぞ。てめえの腕前の方はよくわかったから、この先は手加減ナシだ!」
「ハナから手加減なんぞしてなかったろうがーーー!」

 半泣きになって逃げ回る横島。栄光の手はもう無いしカリンほどの技量もないので、バカ正直に雪之丞の攻撃を受け止めるなんてやってられないのである。カリンが引っ込む時は彼女の竜珠も一緒なので結界で防ぐこともできないとなれば、あとは足を使って回避する他あるまい。
 それに雪之丞は疲労もダメージも横島より深いから、防御に回って雪之丞をさらに消耗させるというのは作戦としても悪くなかった。横島には破術があるので、雪之丞に攻撃を中断して体力を回復させるという選択肢はなく、ひたすら攻め続けるしかないのだから。雪之丞が疲れて霊波砲を撃てなくなったら、ブレスでゆっくり料理すればいい。
 だから、

「てめぇ横島、いつまでも逃げてねーでかかって来やがれ!」
「うるへー、おまえとガチンコなんてしてられっか!」

 と彼がゴキブリのよーに逃げているのはいたって真っ当な戦術なのだが、なにぶん見た目が実に情けないのでギャラリーはそう解釈してはくれなかった。

「何だかなぁ……横島らしいって言えばらしいんだけど」
「カリンさんはきちんと戦ってらしたのに、あの方は……」
「……」

 横島はタマモと弓のあきれ顔が目に入ったのか、それとも空を飛んで追ってくる雪之丞から逃げ切れなくなったのか。くるりと踵を返すと真剣な顔で雪之丞に向き直った。
 来るか!?と構え直した雪之丞の足に金縛りをかけ、空中でがくりと転倒させる!

「おぅっ!?」
「ふはははは、これぞ横島忍法、金縛りビシの術じゃーっ!」

 高笑いしつつ再び雪之丞に背を向けて脱兎する横島。確かに空を飛べない相手にはかなり有効な手だが、雪之丞にはそれほどの効き目はなかった。体勢を崩しながらも、手を伸ばして霊波砲を撃ってくる。

「んぎゃっ!」

 真後ろから背中に霊波弾をぶつけられて、横島は潰れたカエルのような悲鳴をあげた。たいした霊力はこもってなかったからダメージは小さいが、痛いことは痛いのだ。
 しかしこれはもう手詰まりっぽい。金縛りは足止めにもならず、強化版の破術は霊力をためている余裕がなかった。なのに雪之丞は慎重にも、ブレスの射程距離内には入って来ないのだ!
 カリンなら雪之丞より速く飛べるから自分の間合いで戦えるだろうが、地べたを走るしかない横島にそれは無理だった。あの影法師娘はどういうつもりでこんな無謀な対戦をしくんだのか!?
 避けていればいずれ雪之丞が疲れて動けなくなると思っていたが、どうやらこちらが捉えられるのが先のようだ。

(チクショー、今夜はぜってー泣かしちゃる! あんなコトとかこんなコトとか、めいっぱいやってやるからな!!)

 この期に及んでアレな妄想に現実逃避し始めるのがいかにも横島らしかったが、それでも一応雪之丞に勝つ方法も考えてはいた。要するに、彼の霊波砲の間合いでタメなしで攻撃する手段があればいいのだ。たとえば霊波砲とか。

(いや、無理だな……仮に撃てたとしてもあいつに通じるはずがねえ)

 霊波砲は術理としては単純だがエネルギー効率が悪いので、横島は今まで練習していなかった。いわば初挑戦のトーシロがエキスパートの雪之丞に撃ったところで当たるとは思えない。
 そんな無駄なことをするくらいなら、何とか霊気をためて強化破術を使った方がまだマシだろう。

(くっそー、弓さんが水着でラウンドガールとかしてくれりゃ一発でたまるのに……あれ?)

 ふと気がついてみると、いつの間にか竜珠にけっこうな竜気がたまっていた。さっきからの妄想が功を奏したのだろうか。

「うっしゃあ、これならいける! くらええっ!!」

 飛んで来た霊波弾を横に跳ねてかわすと同時に、今度は雪之丞の左肩に破術をかける。魔装の肩当てがはじけ飛び、雪之丞は相当のダメージを受けたのか声も無くふらふらと地上に降りてきた。
 負傷と疲労で限界が近くなってきた魔装術を解いて、それでも衰えない闘志のこもった眼で横島を睨みつける。

「さすが俺が見込んだヤツだ……ここまで俺とまともに渡り合うとはな!」
「まだやる気なのかおまえ……」

 横島としてはそろそろドローゲームにしたいのだが、先方にそんな気はまったく無さそうだ。しかし雪之丞がもう飛べないのなら、横島もようやく対等の勝負をすることができる。
 ブレスは霊波砲で相打ちにされそうだが、手は他にもあった。横島はこっそり両足に小竜気を発現させると、それで思い切り地面を蹴って真横に跳んだ。
 いつかデジャヴーランドでマッキーを追いかけた時に使った小竜気走法である。今は両足でやっているから、あの時よりさらに速くなっていた。

「何っ……!」

 まさか横島までこの技を使って来るとは思っていなかった雪之丞が一瞬狼狽して動きを止める。横島はかく乱のつもりなのか雪之丞の周りを不規則に駆け回っているが、これでは霊波砲を当てることも接近して格闘を挑むこともできない。
 おそらく隙を見て火を吐いてくるつもりなのだろう。雪之丞はそう読んで横島の動きを注視していたのだが、煩悩少年の行動は今回も彼の予想を裏切った。

「ヨコシマ・キーーック!」
「な……!?」

 何と横島はめいっぱい加速をつけると、何の細工もなしに正面から飛び蹴りをしかけてきたのだ。今まで逃げてばかりだった彼が自分から突っ込んで来るとは、なるほど奇襲としては上手い手かも知れない。
 しかし雪之丞は霊能力だけでなく、格闘術も十分に修めている。いくら横島の奇襲が速かろうと、まともに食らうようなドジは踏まない。
 まあ左にかわすべきところを右に動いてしまったせいで横島の脚の間に顔をさらす事になってしまったが、それは雪之丞が鈍いのではなく、彼がそうするしかなかったほどに横島の蹴りが速かったのだ。

「ぶわぁッ!?」
「おおッ!? キックじゃなくて××××直撃!?」

 その結果は言うまでもない。横島の××××が雪之丞の顔面にクリティカルヒットして横島は悶絶、雪之丞も受身を取れないまま後ろに倒れて後頭部を地面に強打―――

 両者KOで引き分けとなったのである。

「あ、あの……」
「バカ……」

 タマモと弓が顔全体に縦線効果を100本ほど入れながら呟いたが、それは不幸中の幸いというべきか、彼らの眼と耳には届かなかった。


 横島と雪之丞のケガはそうひどいものではなかったので、タマモと弓は傷口を手当てして傷病平癒符を貼ると後は目を覚ますまで寝かせておくことにした。
 やがて2人は起き出してきたが何やら非常に気まずいものがあるらしく、雪之丞は歩けるようになると何も言わずに弓を連れてそそくさと帰って行った。横島も黙ってそれを見送ると、まずは影法師娘を呼んでさっきの組み手の件で苦情をつけることにした。

「ん? だから言ったろう、南武グループとの戦いに向けた実戦的な稽古だって」
「……」

 しかしカリンの回答はこの上もなく正論で、横島には返す言葉もなかった。しかしこれで済まされてしまっては、悶絶までして戦ったかいが無いではないか。
 負けていたなら何も言えないが、引き分けに持ち込んだのだからご褒美の1つくらいあっても良かろう。

「んじゃせめて敢闘賞として、昨日おまえがホゴにしたサービスをっ!」

 ここで横島がカリンに飛びかからなかったのは、彼も少しは成長して場をわきまえるようになったからなのか、それともここで飛びかかっても反故を撤回させるのがさらに難しくなるだけという計算があったからなのか、判断はなかなか微妙なところである。

「ふむ? まあ確かに、おまえにしては頑張った方か……」

 カリンが腕組みして唸っているのは、さっきの組み手の経過を思い出しているからであろう。技巧はまだ未熟だし最後はちょっとアレだったが、あの時もし雪之丞の反応があと一瞬遅かったら横島が完勝していたのだ。まあ彼にしてはよくやったと言えよう。
 だが横島の希望を承知してしまうのはまだ早い。

「しかし昨日はタマモ殿にもお預けさせてしまったからな。今夜はやはり彼女に譲るべきだと思うのだが」
「え゛!?」

 影法師娘にイジワルな視線を向けられて、タマモは無残なほどに頬を赤くほてらせた。確かに昨晩は3つ股野郎への当てつけとして狐の姿で寝たりしたが、今のカリンの言い方ではタマモの方が抱かれたがっているみたいではないか!
 しかしここで蹴ってしまうのもちょっと可哀そうだ。

「しょ、しょーがないわね。横島にいつまでもお預けさせとくと後がこわいから、今日は私が相手したげるわ」

 恥ずかしそうにそっぽを向きながらというのがまた可愛らしい。カリンはつい笑みがこぼれてしまいそうになるのを噛み殺しつつ、

「だそうだ、良かったな横島」
「…………」

 横島はうまくごまかされたような気がしたが、2人とも一応機嫌を直してくれたみたいなのでごねるのは止めておいた。

「ところでタマモ、今何時だ?」
「え? ……あ、もう8時45分じゃない。どうする?」

 横島から預かっていた携帯を見てタマモは困ったような声をあげた。今から普通に行ったらどう急いでも遅刻である。
 空を飛んで行けば間に合うが、日が出た後の市街地でそれはまずいだろう。

「そだな、所長に電話してちょっと遅れるって言ってくれ。
 今日は修行の予定だったから、組み手してたって言えばそんなに怒らんだろ」
「うん」

 タマモは頼まれた通り小山事務所に電話してしばらく話していたが、やがて携帯を閉じると横島にその結果を教えてやった。

「小山さん、ここに来るから待っててほしいんだって」
「へえ?」

 と横島が不思議そうにすっとんきょうな声をあげる。
 修行なら妙神山ですればいいのにわざわざこんな所に出向いてくるなんて、小竜姫はいったい何を考えているのであろうか……。


 ―――つづく。

 今回のバトルは原作のGS試験編と月世界編をちょっとだけ意識してみました。
 小竜気砲でも会得させてみようかとも思いましたが、ぽんぽん技を増やすのも何なので没りました。うまいルビが思いつきませんでしたし(ぉ
 横島君が霊波砲について考えてる所がその名残であります。
 番外編の方はちまちま書いてますので、気長にお待ち下さるとうれしいです。
 ではレス返しを。

○紅さん
 しょせんは横島君なのでカッコよくはなれないのですが、ご満足いただけたでしょうか(^^;
>3股
 まったくですなorz

○ハザさん
>バトル
 横島君の戦法は「ゴキブリのよーに(以下略)」しかありません!(ぉぃ
>二股許してあげたら、「なら三股、四股もOK?」ってオイ!
 まことに仰る通りなのですが、横島君ですからねぃ……orz
 ちっとは女心に配慮してやってほしいものであります。

○Tシローさん
>小竜姫さまの計画
 まだ詳細は明らかになってませんが、彼女がなりふり構わず来たら非常に手ごわそうです。
>雪之丞とのガチンコ試合
 横島君自身にはあまりやる気がないので、こんな風になってしまいました(^^;

○遊鬼さん
>タマモ
 恋する乙女はいろんな回路を積んでますからw
>小竜姫さま
 確実に獲物を射止められるチャンスを見計らっておるのですよー。横島君も果報な男です。
>ユッキーとの勝負
 横島君にカッコいい勝利とかは似合いませんでした。

○whiteangelさん
>ユッキーVs横島の対決
 横島単体だとスペック的にかなり不利なのですが、それにしては健闘したと思いますw
>すなわち4○ーなのか!?
 とんでもない男ですなorz

○風来人さん
>ピートより目立っていますw
 ひどいww
>小竜姫様の策略
 いあいあ、作戦はまだ始まったばかりですから!
>なんだかんだ言ってもタマモを大事に思っている横島君は好感が持てますね
 そう、まさにそうなのですよー。
 3つ股とかは男の甲斐性ということで<マテれ
>タマモの戸籍
 うーん、ヒャクメはむしろ敵方ですからねぃ。
 大樹や百合子の方が頼りになりそうなのですが……さて。

○通りすがりのヘタレさん
>横島はガチ前衛のユッキーとタメをはることが出来るのか!?
 女の子がかかってれば完勝できたような気もしますw
>弓嬢と雪乃丞
 ケンカするほど仲がいい、の典型かも知れませんな。
>見事に自爆した横島君
 こういうおバカさがあってこその横島君だと思うのですよー。
 なのになんでこんなにモテて幸せなんだろう(ぉ
>南武グループ編に参加することになるのか、バトルマニアの雪乃丞に注目しつつ
 まだ秘密でありますー。

○スカサハさん
 横島君がもっと器の大きな男になれば良いのですがねぇ。
 タマモも横島君を選んだ時点で多少のことは覚悟してるんですが、ここまでのことは予想してなかったでしょうし。

○鋼鉄の騎士さん
>まぁ学習できたら横島では無いがなw
 そんな本当のことをw
>小竜姫様
 次回辺りでぶっちゃけてくれそうな気がします。
>ここのユッキーの魔装は最終形態なんだろか
 妙神山がお休みなので、まだ初期形態のままです(酷)。

○チョーやんさん
>小竜姫様
 いあいあ、彼女はタマモンのことを承知の上でやってるんですよー。カリンのことまでは知りませんが(笑)。
 おキヌちゃんは……どうでしょう(^^;
>横島君に一言
 アホで墓穴を掘ってこその横島君ですから!(酷)
>どうやら自分がどれだけ幸せな状況にいるのか、まだ実感してないようですねぇ
 彼のコンプレックスは根が深いですからねぇ。
 両親がアレで小学生時代の友人が美形でと、ネタにことかかなかったのが原因なんでしょうけど(^^;
 でもここではそろそろ解放されても良いような気もしますが、そうすると横島君らしさが1つ減ってしまうのが問題だったり(o_ _)o
>雪乃丞
 今回はおとなしく帰りましたが(笑)、また出て来るかも知れませぬ。
>おキヌちゃん
 いつかはきっと……!
>十年後のタダスケさん
 あの令子さんに認められたんですから、見えない所が成長してるという線もあるとは思うんですが……orz

○ばーばろさん
>至高の稲荷寿司を作る月神族の二人が決め手になりそうな
 つまり小竜姫さまがお揚げでタマモを買収すると?w
 本当にやりそうな気がして怖いですな。
>小竜姫さまVSタマモン&カリン
 次回を刮目してお待ち下さいっ!
 でも悪いのは全部横島のはずなんですがねぇw
>尻に敷かれるバトルジャンキー&ツンデレお嬢様
 おお、定番的でいいですなぁ。今回はマヌケでしたが!

○読石さん
>小竜姫さま
 メドさんもびっくりするでしょうねぇ。神魔族がたった数ヶ月でここまで変わるんですから。
>タマモさん
 まったくその通りですな。もちろん愛が1番の要素なのですがー!
>幸福の揺り返しが久々に来ているのかな?
 まあ横島君ですから、このくらいは普通のことかと(酷)。
>試合なんだしカリン出さずに自分で戦う選択肢は無いのん横島君
 ぜんぜん無かったので強制的にやらされましたw

○Februaryさん
>己が幸福の只中に居るにもかかわらず、他人の幸福を羨み自爆する横島
 横島ってこういうやつですからねぇ。小学校時代の友人がはっきり証言してますし。
>羨ましい・・・呪っちゃっていいですか?
 今回ものすごく痛い目に遭っているので、少しは効いたのではないでしょうかw
>千円で競売に出したら10万くらいで買われた感じですかね
 何しろヨコシマとユッキーですからねぃw
>ここだけ「南武」ではなく「南部」になってました
 ありがとうございますー。修正しました。

○山瀬竜さん
 更新の速さが取り得ではあるのですが、隣の板にはもっと速い方もいて驚いております。
 月神族は次回に……出て来るかな?
>雪之丞も実態を知れば驚くでしょうねぇ
 せっかくのすごい力、何かもっとほかに(byおキヌちゃん)。
>南武グループとの一戦の前に戦闘スタイルを確認するという意味で
 横島君は相変わらず分かってるんだか分かってないんだかw

○ロイさん
 やっぱり基本は大事ですよねぇw
>ユッキーとのガチバトル
 2対1でも1対1でもちょうど互角とはならない難しいパワーバランスであります。
 でも2人でもそうむちゃくちゃ強いってわけでもないんですよね。たとえば原作の横島君でも、ゴング直後に文珠《防》を使えば後は防御考えずに全力攻撃できますし……ってそんなクレバーなやり方は彼らしくないですがー(ぉ
>さぁ横島君はここからどうやって番外編の関係にたどり着くのか!?
 むしろ何もしないのが1番いいような気もしますが、きっと余計なことばかりして状況を混乱させてくれるはずです!

○KOS-MOSさん
>横島、それはてめぇがいえるセリフか?
 逆に考えましょう。むしろ横島だからこそ言う台詞だ、と(ぉ
>今後タマモ・カリンと小竜姫さまがどうするのか
 女神さまはまた何か悪だくみを始めたようです。
>ユッキーとのバトル
 横島らしさが出ていれば良いのですがー!

○アラヤさん
>三人目を落とすにはカリタマを丸め込まないと行かないといけないんですなw
 はい、横島君も優先順位はきちんとつけてますからねぇ。でもおっしゃる通り、恋人に3つ股を納得させるのはとっても難しいことではありますw
>ユッキーと戦うようですが
 一般的な戦士と魔法使いのバトル……というか、ユッキーは飛び道具持ってたり空飛んだりしますからねぇ。悪運で引き分けに持ち込むのが精一杯でした(ぇー
>風を起こして土を舞い上げ目潰しとか
 あと風の中に毒や針を仕込むとか、策はいろいろありますよねぇ。
>ギャグの星の下にいるしw
 ↑なわけで今回はそこまでしませんでしたが!

○内海一弘さん
>てっきり竜神小竜姫として結婚を狙っていると思ってたんで
 どちらにしても夫婦になるのは同じですから、もっとも確実で手っ取り早い方法を考えているのですよー。
>おキヌちゃん枠
 まさに四面楚歌になっちゃってますが、まだフラグが折れたわけではない……はずorz
>ユッキーと横島のやりとりが好きですね
 雪之丞の横島への評価は過剰なのか正当なのか微妙ですよねw
>ピンク
 番外編を近いうちに上げますのでぇ……きっと(o_ _)o

○冬に咲く雪だるまさん
>実は女性合格者の三割という意味じゃないのかな
 なるほど、その方が数字としては納得できますね。令子は「全国から選りすぐられた連中」と言ってますが、ピートや雪之丞たちみたいにGSに弟子入りして修行する者もいるでしょうし。
 どちらにしても今後のストーリーに影響することは無いと思いますが(^^;
>臨海学校ではあえて関係のないGSを呼んでいるとか
 いや、臨海学校はただの講演より危険度が高いので、より信頼の置ける者を呼ぶと思います。実力や評判が同じなら、部外者よりOGを選ぶのではないかと。まして令子はギャラ高いですし。
>霊能ビジネス全体における六道派閥の形成で利益を得ているのかも
 なるほど。学校の備品も六道製品にして、生徒が卒業後もそれを使ってくれればビジネスになりますものねぇ。
 あのだだっ広いお屋敷はこういう稼ぎで建てたのですな。

○るくすさん
 はじめましてでしょうか? 今後ともよろしくお願いします。
>まさに竜狐相打つといった感じでしょうか
 どんな恐ろしい修羅場になることか、筆者も胃が痛いです(ぇ
>三人で食べたら皆幸せになれそうですね
 食べられる側はそれを熱望しているのですが、食べる側は貪欲なので邪魔者は減らしたがっているのです。
 譲り合いの精神が足りませんな(ぇー

   ではまた。

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