旅行最終日、朝起きた忠夫達は荷物を整理して帰る準備を始める。今日は朝食を食べたらチェックアウトして、お土産を見て周りそのまま帰る予定なのだ。
「それにしても昨日の金魚すくいの店主には可哀想なことしちゃったわね」
「そうね。顔が土気色になってた上に倒れちゃってたもんね」
「私~、金魚すくいに夢中で全然気がつかなかったわ~」
朝食を食べながら、昨日の縁日での話をしている。あの金魚すくいの激闘の後、倒れている店主に気がついた忠夫達は慌てて店主の介抱をした。その店主が倒れた原因を理解した忠夫達は四匹の金魚をもらうだけで、残りは全部返すことに。それを聞いた店主は泣きながら感謝の言葉を言ったそうな。その必死さに自分達がどれほどのことをしてしまったのかを悟る忠夫達であった。
「でも、あの後がすごかったのよね」
「恥ずかしかったから逃げるように戻って来たしね」
「アイドルになった気分よ~」
金魚すくいを終えて移動しようとすると、四人はギャラリーに囲まれて金魚すくいの腕を絶賛されたのだ。それと、この機会に令子、冥子、エミという美女とお近づきになりたい男どもからの口説き、お誘いの言葉などが次から次へと掛けられる。
そのあまりの多さに令子達は逃げるように旅館へと戻って来たのだった。
「姉さん達は美人だから困るよ・・・」
「あら?焼きもち?」
「そうだよ。悪い?」
「べ、別に!私はどうでもいいけど///」
「大丈夫よ~。私は誘いに乗る気はないから~。忠夫君の誘いだったら乗るけど~」
「私も乗る気はないわね。安心なさい」
その若干拗ねてるような忠夫の言葉にエミと冥子はご機嫌に答え、令子はテレながら素直には答えなかった。
朝食を食べ終え、荷物の整理を終らせた忠夫達はチェックアウトすべく旅館の受付に向かう。
「あら~。皆様、チェックアウトですか~?」
「はい、御願いします」
「わかりました~。っとその前に~、ここの旅館にきた記念に写真撮影でもなさいませんか~?」
「写真ですか?でも、現像は・・・」
「ご安心ください~。ポラロイドカメラでの撮影ですので~、その場で写真が出来ます~」
「そうですか。そうする?せっかくだから撮ってく?」
「ま、いいんじゃない?」
「俺もいいよ」
「とっていきましょ~」
「じゃあ、御願いします」
「は~い。では~、表で撮りましょ~」
旅館の玄関前に出てカメラを持つ谷川さんの前に並ぶ四人。真ん中に忠夫。その左手を抱きしめて縁日でとった金魚を入れている袋を持っている冥子。忠夫の後ろから首に腕を回して肩に顎を乗せているのはエミ。忠夫の右半身に背中をつけて寄りかかるようにしているのは令子。
「は~い、取りますよ~。1+1=?」
「「「2~」」」
パシャッ!
四人での初めての旅行での記念写真。写真の中の冥子は満面の笑みを浮かべて、隣の忠夫は苦笑ぎみ、後ろのエミはニヤニヤといたずらっ子の笑みだが楽しそう。一番右の令子はしかめっ面だが、よく見ると口の端がにやけているように見える。四人にとってこの旅行が大切な思い出になったことは確かなようである。
「「「「お世話になりました~」」」」
「またお越しくださいね~」
写真を撮った後、チェックアウトを済ませ忠夫達はお土産屋に向かう。冥子は金魚がすごく気に入ったようでしきりに眺めては「可愛い~」と呟いていた。
忠夫とエミはお土産を買う人の確認をして、令子は何を買おうかと考えている。
そして、お土産屋に着いた四人は揃って驚くのだった。
「いらっしゃいませ~」
「「「「なんでフミさんがここにいるの~~~~~~~~????」」」」
「乙女の秘密です♪」
そう、四人を出迎えたのがフミさんだったからだ。ご丁寧にこの店の制服であろう服に着替えて。そうなんだ~と冥子は素直に感心し、忠夫とエミはなにやら諦めたような顔で、令子はいろいろとツッコミたいのを抑えて納得するしかない。そんなことを気にしていたら免許なんて取れないからだ。
何もしてないのにどっと疲れたような気がするが、四人はお土産を見て回る。
「これとこれはお父さんとお母さんっと」
「これは冥奈さん達だね?」
「そうそう・・・って冥子?あんたも選びなさいよ」
「え~?あ、う~ん、そうだったわね~」
「ん?何見てるの?」
「ななななんでもないのよ~?」
「何慌ててんのよ」
「慌ててないってば~!?」
「怪しいわね・・・」
エミ、令子、忠夫は誰にどれを買うか話し合いながら選んでいたが、冥子はあるコーナーを眺めていて全然参加していない。一緒に選ぶよう誘ってみるとなにやら慌てている。そのあからさまな反応に目をキラリと光らせてニヤリと笑う令子とエミ。忠夫はどうしたのかな?と疑問符を浮かべているだけである。
令子とエミはすぐさま行動に移す。まずは令子が冥子を破戒締めし、動きを封じるとエミが冥子が見ていた一角の調査を行った。
「あ~!!離してよ~!令子ちゃ~ん!!」
「諦めないさい冥子。エミ!」
「OK!・・・へぇ、なるほどね」
「どうしたのよ?」
「実は・・・ゴニョゴニョ・・・」
「そ、それは・・・納得だわ」
引き攣った顔のエミに疑問に思った令子は問いただす。面白そうなネタを手に入れたのに引き攣っているのはどういうことか?と。冥子が見ていたのはペアのキーホルダーであった。忠夫とつけるところを想像していたのだろう。これは恰好のからかいネタであるため、本来なら喜ぶところであるが忘れてはいけない。ここには”フミ”がいるのだ。これを買うときの反応が怖くてどういっていいやらというわけである。
令子もそれを理解できたために揃って顔を引き攣らせるのであった。
「じゃ、とっととお土産を買っちゃいましょ」
「そ、そうね」
というわけで修羅場にならないようにさっさとお土産を買うのに戻ろうと促す。だが、令子達の努力をぶっ壊す男がここにいる。
「あれ?冥子姉さん。これが欲しいの?」
後ろから顔を出して冥子の眺めていたコーナーを覗き込んでいた忠夫である。思わず令子とエミは叫びだしそうになった。
「「(なんてこというのよ~~~~!!!)」」
そんな二人の様子に気づかずに目の前の二人はそのまま話しを進めてしまう。
「どれを見てたの?」
「これなんだけど~」
「へぇ、なんかいいね。でも、これってペア?」
「うん、忠夫君と一緒につけたいな~って///」
「あ///ありがとう///」
「えへへ~///」
二人とも顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべる。なんとかしてそれを阻止したい令子とエミだったが、冥子と忠夫の甘い空間につっこみを入れることが出来ずにいる。そのうちにどんどん話が進んでしまい。
「じゃ、買ってあげるよ」
「いいの~?」
「うん。さて、お土産選びを再開しようか」
「うん~、ありがと~」
令子とエミにとって最悪の結論に達してしまったのだった。
「「やめて~~~!!!」」
二人の切実な願いは叶わないのであった。
お土産を選び終わり、忠夫達はレジへと向かう。もちろん、冥子のほしがっていたペアキーホルダーもちゃんとある。令子とエミはもう諦めていてガックリと肩を落としている。逆に冥子はすごく嬉しそうだ。忠夫はちょっと照れていたり。
レジに近づくたびに令子とエミは死刑執行のときが近づく死刑囚の気持ちが理解できるかもしれないと思いながら歩いている。忠夫がフミを見て悪戯を思いついたようにニヤリと笑ったのに気付かぬままに。
ついにフミの前にそのキーホルダーを出してしまった。その瞬間、令子とエミは逃げ出したい気持ちで頭を抱える。
「以上でよろしいでしょ・・・・!?」
品物を確認していたフミの顔が一変するのを令子とエミは”見逃せなかった”。
ヤバイ!と思って反射的に逃げ出しそうになったとき、忠夫がフミの前に立ちふさがる。その瞬間、雰囲気が一変した。
「いえ、まだですよ・・・」
何故か敬語でしかも、凛々しく真剣な眼差しを向ける忠夫。一瞬でペアのキーホルダーを見た衝動を忘れ、忠夫に見惚れるフミ。あの令子やエミでさえ、忠夫のかもし出す雰囲気に呑まれ身動きが出来ずに固まってしまっている。
両手でフミの手を包み込み、目を真直ぐに捉えて忠夫は言葉を紡いだ。
「まだ、あなたというどんな宝石でさえも霞んでしまう美しい女性を貰えてませんから」
ドサリ・・・
「フミさん!?」
忠夫の言葉にフミは気絶してしまう。まさか気絶してしまうとは思っていなかった忠夫は慌てて駆け寄り抱き起こす。だが、この場で反応できたのは忠夫だけであった。なぜなら、轟沈したのはフミだけではなかったからだ。
「ポ~・・・・」
自分が言われたわけではないのに見惚れて固まってしまっている冥子や。
「なんでドキドキしてるのよ!あれは忠夫よ!そう・・・忠夫なんだから・・・あれ?忠夫だと駄目なのかしら?ってどうしたのよ?私は!!」
なにやら混乱している令子。
「あれは弟あれは弟あれは弟あれは弟あれは弟あれは弟あれは弟あれは弟・・・」
必死で自分に言い聞かせるエミ。
様々な反応を見せるが、共通していることはみんな正常な状態ではないということだった。
「あんたどこであんなのを覚えたのよ・・・」
「全くだわ。知らない人に絶対使うんじゃないわよ!」
「忠夫く~ん、今度は冥子に言って~」
あの騒動からしばらくしてなんとか落ち着きを取り戻した令子達は新幹線に乗るために駅に向かっていた。でも、まだ令子達の頬はあかく染まっていたり。
気絶したフミは店の店員(恰幅のいいおばちゃん)に相談したところ、奥で寝かせてもらえることになったので預けてきている。
今はさっきの忠夫の行動について話していた。
「ご、ごめん。まさかあんなことになるなんて思わなくってさ」
さすがに気絶者を出してしまったことに恐縮している忠夫。ちょっとした悪戯が大事になってしまったのだから当然だろう。
「私達はいいけどね。後でフミさんに謝っておきなさいよ?」
「うん。わかったよ」
「それはそうと、さっきのは何?全然あんたらしくないじゃない」
「あれは・・・父さんに教えてもらったというか、なんというか」
「「はぁ?」」
忠夫のあの行動は大樹がよく使っているのを見ていたために自分も使ってみようかな~と思ってやった行動であるらしい。百合子に買い物を頼まれたときに値切り交渉(女性限定)で使用していた方法で忠夫は何度か一緒にいったときに見ていて覚えていたのだった。見ず知らずの人なら問題があるが、レジにいたのはフミである。自分が良く知っている人だったために使っても冗談で済ませられると思って気軽にやってしまったのだった。
「ハァ・・・お父さんは何をやってんだか」
そんな義父の行動にため息を吐くエミ。令子はそんなエミに苦笑するだけ。冥子は忠夫にさっきの言葉を自分に言ってと催促して、忠夫は困っていた。
こうして四人の初めての旅行は無事に終ったのだった。
――ある車の中――
黒塗りの高級車の後部座席に座ってニコニコ顔の谷川さん。隣にはフミが寝ている、よいうより気絶したままといったほうがよいだろう。そんな谷川さんに車を運転している縁日の射的の親父が話しかけた。
「何か面白いことでもありましたか?谷川さん?」
「あら~?あなたこそ~、面白いことがあったんじゃないの~?射的の店主~?」
二人ともとてもいいことがあったようでニコニコ顔での会話だ。
「ふふ、それはもう面白いことがありましたよ。谷川さんもでしょ?」
「まぁね~。それより~、そろそろ正体を現しましょうか~?」
「そうですね。イベントも終ったことですし」
そういうと二人は一斉に顔に手をあて、思いっきり引っ張った。すると顔の皮がびよ~んと伸びてはがれてしまう。どうやら、ザンスのテロリストが使っていたあの変装マスクを着用していたようだ。
そのマスクの中から出てきたのは?
「御疲れ様でしたよ。冥奈さん」
「そちらこそ~、御疲れ様~。大樹さ~ん」
そう、何を隠そう冥子の実母、冥奈と忠夫の実父、大樹であった。仕事の都合で当日にヘリで参上した冥奈とは違い。大樹は何日か前からすでに準備を終えており、忠夫の達が出発する前日にここに来ていたのだ。その大樹の代わりに百合子が仕事をしているのは秘密である。
何を隠そう、風呂場の男湯と女湯の境界をなくしたのも大樹と冥奈の共犯である。
ちなみに船の船頭も大樹だったり。金魚すくいは違うのだが。
「ばっちし撮れましたよ。後で見ましょう」
「ふふふ~楽しみだわ~。それと~、私のもあるからね~」
「ふふ、ではこの後一緒にお食事でもいかがです?」
「あら~?百合子ちゃんはいいの~?それに私は人妻よ~?」
「もちろん、愛する我妻とあなたの愛しの旦那さんもご一緒にですよ。すでに妻が場所を抑えているはずです」
「さすがに仕事がはやいわね~。楽しみにしてるわ~」
「それでは、少し飛ばしていきましょうか?」
「ええ」
「「子供たちの幸せに乾杯ってね(~)」」
こうして黒塗りの高級車は夜の闇に消えていく。
あとがき
あれ?フミさんが出てきたのに暴走しなかっただと~!!ラッフィンです。
旅行編が終わりました~!!
少し短いですけど・・・
いや、かなり?
とにかく、短くてごめんなさい。
さて、次回は・・・どうなるんでしょうか?
全然考えてません。
それと更新が週一で出来なくなりそうです。
ネタもないし、リアルで忙しいので。
それでは、次回!
レス返しです。
内海一弘様
48!?すごいですね・・・
自慢じゃないけど、私は一匹も取れる自信がありませんw
やっと冥子を目立たせることができたよ~www
令子、エミも目立たせることができたかな?
フミが目立ってない?
あっちをたたせるとこっちがたたず・・・難しいな~・・・
Tシロー様
六道SSの根性の勝利ですね。代償は大きかったけど・・・
今回もお姉さんズを目立たせることに成功したかな?
あれ?フミが目立ってない?・・・OTZ
遊恵様
>忠夫君自分と代わってはくれないだろうか!?
十二神将と仲良くなれるならどうぞw
>六道SSリーダー
口は災いの元w
解答していただき、ありがとうございますw
紅井か~・・・どうして真っ赤な血のイメージしか出てこないんだろう。
秋桜様
新たなる方程式=四人<フミ<GMY
六道SSの意地とプライドでなんとか粘りましたw
代償は・・・。・°°・(ノ_б、)・°°・。
原作はヤバイですって!せめてシリアスな展開の横島君ならいいとは思いますが。
DOM様
愛に生き、愛を貫き通す修羅。それが我らがフミさんである!
特別手当をもらっても私は遠慮しますよw
鹿苑寺様
YES!書ききれません。書くならさらにもう1話が必要です。
むしろ、フミさんは梁山泊の師範なのでは?
>これは何を予期しているのでしょうか
あなたが一人前のフミラーになった証拠ですw
meo様
そんな怖いことはしません。ちゃんと返却しました。
いても育てられないし・・・