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「魔神の後継者 第三十七話(GS)」

アイク (2007-08-20 01:48/2007-09-13 06:38)
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―第三十七話 臨海学校(後編) ―

異形の群れを前に、残っていた六道陣は酷く少ない。
敵が1,000近くいるというのに、六道陣は横島と美神を入れ120人程。その内戦えるのは80程しかいない。
残りは怯えて敵を見ている状態となっている。絶望的な戦力差だ。

「鬼道く〜ん」

「各自、自身の専用装備の使用を許可する!」

戦えそうな80人の内、戦意が有るのも更に数少ない。
そして、最低でも自分の身は自分で護れる様にと六道理事は決断する。
鬼道の鋭い一言におキヌは置いていたネクロマンサーの笛を手にした。

「氷室さん?」

「・・・やるのか?」

大群を前に真剣な表情をしたおキヌ。その姿に確認するかのように弓と一文字が聞いた。
おキヌは無言で一度首を縦に振っただけだ。

「仕方が無いですわね」

「変な所で強情なんだからよ」

「ごめんなさい」

苦笑い気味に言う弓と一文字。そんな2人に頭を下げるおキヌ。
だが、それは一度だけ。2人はおキヌの前に立つ。
弓は水晶観音と呼ばれる強化装甲みたいなモノを纏う。腕が六本になる。
一文字の手に持つのは一振りの木刀。だが、この木刀、霊気を込めれば霊に対しては斬る事が出来るのだ。
戦える生徒や教諭は各々の装備を持つ。

「鬼道く〜ん。悪いけど〜戦えない娘達をお願いね〜」

「分かっとります」

六道理事にそう指示された鬼道は腰を抜かしてしまった生徒や、動けそうに無い生徒を夜叉丸と一緒に運ぶ。
ホテルには強化した結界を展開している。ホテルまで連れて行けば何とかなると考えているのだ。
逃げ出した教諭や生徒達もホテルに有事の際ホテルにいれば(一応)大丈夫と言ってある事から、
恐らくホテルにいるだろう。勿論括弧の中は言ってはいないが、嘘ではないから大丈夫だろう。
更に余計なパニックには結界が破られない限りならない為、問題ない。

(神通棍と破魔札数枚に精霊石が3つか・・・)

「美神さん」

美神は敵の群れを睨みつける様に見ながら己の装備を確認する。そして、このままでは危険と判断した。
そんな時、横島に呼ばれた。このタイミングで呼ぶという事はどういう事かと思う。
該当するのが1件だけ有った。

「破魔札とかを入れた何時もの除霊要具入りのバックが後方400メートル地点に有ります。
 あと、念のためにコレを持ってて下さい」

「文珠・・・良いの?」

「シロ達にも一個ずつ配ります(これで残り10・・・)」

横島がそう言い、美神に手渡したのは文珠と予備の神通棍だった。
文殊を渡された事にいろいろな意味を込めてそう聞く美神に横島はそう言うだけ。内心残りを確認する。
そして、右手に先程敵を薙ぎ払った霊波砲を放った光球を生み出しながら、敵に背を向けずに後退した。
先ず行くのは一番近いおキヌ達の所だ。

(横島さん?)

「おキヌちゃん、シロ、タマモ。念の為にコレを持っててくれ」

「これは何でござる?」

「私に聞かないでよ」

おキヌは近づいてくる横島に疑問を覚えてたが、直に晴れた。横島は【護】と込められた文珠を3人に渡す。
文珠は淡い光を放ち、発動している。
シロは渡された文珠の匂いを嗅いだり、まじまじと見たりしながら、タマモに聞く。
聞かれたタマモも分からない為にそう言うしかない。おキヌが説明しようとするのを、横島は手で制した。

「それはお守りだ。ヤバイ時自動で発動するから持ってろ」

「そうなんでござるか?」

「ふ〜ん」

シロとタマモの反応に苦笑いしながら横島はそう言う。
シロは相変わらず不思議そうな顔をし、タマモは興味深そうに文珠を見る。

(言う必要は無い・・・そういう事ですか?)

そんな彼等の様子におキヌは心の中で悲しそうに呟く。
横島がシロとタマモにソレが文珠だと説明しなかった事が、おキヌの胸に締め付ける様な痛みを奔らせる。

『グゴギゴゴゴガガガガガガガガアアアアッ!!!』

「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」

そんなおキヌの考えを吹き飛ばす様な鮮烈で異様な叫び声と共に、異形達が動き出す。
醜悪な彼等は狂気に満ちた目で六道陣を粘着質な殺気を込めて見る。
通常ならば発狂してもおかしくは無い異様な視線に動きを止める者が出た。

「っ!おキヌちゃん!1つずつ弓さんと一文字さんに!いざとなったら残りで治癒を頼んだ!」

「はい!弓さん!一文字さん!」

動きを止めた生徒達の救出に向かうべく、横島はおキヌに文珠を4個渡し、駆ける。
渡した文珠の内2つが既に【護】と込められ、光を放ち、残りの2つは何の文字も込められていない。
おキヌは言われた通り、2人に1つずつ渡した。

「こんなモノ。無くても大丈夫ですけど、まあ頂きますわ」

「素直に受け取っとけよ」

ぶっきらぼうに言う弓に対し、一文字はそう嗜める。弓は何も言い返さずに前へ進む。
シロやタマモも弓に続き、おキヌは数歩後ろで音を奏で、一文字がおキヌを守護する位置に立つ。

「逝けえ!」

動けない生徒に背を向けながら、横島は充填していた霊波砲を放つ。
轟音と共に放たれたソレは、先程殲滅したのと威力は変わらないモノだ。

「っ!」

だが、ソレは全てを貫く事が出来なかった。途中までは貫いていたのだが、直に敵は陣営を建て直し、前進する。
魚の腐ったような腐臭を漂わせる彼等は人の嫌悪感を刺激し、吐き気を催す。

「動きを止めちゃダメよ〜。さあ、攻撃よ〜」

『はっ、はい!』

間延びする六道理事の声。だが、その動きは先程と比べ、一段速くなっている。
鋭く数枚の破魔札を投げ、ボウガンの矢の様に敵の額へ突き刺し、爆破する。
頭を失ってもまだ前進するソレに対し、次は胸の中心へと放ち、爆砕。
それを行う理事に生徒達は驚きを隠せない。

「おばさまも本気の様ね」

美神は小さく呟きながら、六道理事の動きを見た。
六道理事は円を描くように動き、袖に隠し持った破魔札を出し、無駄なく敵の頭や胸に突き刺し爆破させている。
その動きは、間延びした声とは異なり、素早い。

「はぁあ!」

美神は六道理事の動き見た後、気合の声をあげながら敵を葬り始めた。
鞭状にした神通棍は正確に敵にしなりの有る痛烈な一撃を放つ。空気を切り裂き、敵をも切り裂く。
鞭状の神通棍を振り回し、近距離の敵の額に破魔札を貼り付け吹き飛ばす。次々と敵を斃す。
その動きは滑らかであり、無駄は少ない。

「わぉぉぉおおおぉおぉおぉぉおおおおおん!」

「そこ!」

生徒陣もこの異色を放つ2人に対し、奮闘する。
シロが遠吠えの様な咆哮をあげ、無理なく敵を切り倒し、後ろからはタマモが火の矢で狙撃する。

「我弓式除霊術が水晶観音を前にして、倒される以外無い事を自覚しなさい!」

「気合入ってんな!弓のヤツ!」

弓は水晶観音を纏い、六本になった腕を駆使し、殴り倒し、討ち洩らしを一文字がおキヌに接触する前に撃破する。
おキヌはネクロマンサーの笛を奏で続けるだけだ。その音は敵に対し、不快にさせ、その動きを鈍らせる。
敵は本来の力の半分程しか発揮できないが為に、易々と倒され続けているのかもしれない。

ゴガガガガガガガガガガガガガガガガガン!!!

『きゃぁぁああぁあああぁあああああ!!!』

「っ!ぐぁぁあっぁぁあぁあぁあああぁああああああ!!!」

「「「「横島クン(さん)(先生)(ヨコシマ)!!!」」」」

拮抗していた戦場は敵の味方をも巻き込む極太の霊波砲によって変化する。
轟音を伴って接近する光の塊を前に叫ぶ事しかできない生徒達。
それに反応できたのは何人かいるが、実際に動いたのは横島だった。
横島は彼女達の前に出て、なんとかサイキックソーサーを展開する事は出来たのだが、
サイキックソーサーを紙の様に貫いた光芒は横島の体を包み込む。
横島の絶叫に、そう叫ぶ美神除霊事務所の面々。
彼女達。特に美神、おキヌ、シロ達の心に失った悲しみと辛さ、悔い等が襲う。

ドサッ

横島の体は鈍い音と共に地面に堕ちた。
それは人の形をしているだけの物体。所謂肉の塊と比喩される死体にしか見えないだろう。
戦場は凍結した。
六道陣は、恐怖する程恐ろしい力を持った者が呆気なく倒れた事に絶望する者までいる。
怒りを噛み締める者や憎しみを噛み締める者がいた。

「ほう、身を挺して護ったか・・・」

そんな声がした。
先程の霊波砲によりモーゼの十戒の様に空いた間を、大きな亀に乗った者が言う。
亀と人とを混ぜた容姿のソレ。海坊主が言ったのだ。

「貴様が・・・貴様がぁぁああぁあああああああああ!!!」

「「「シロ(ちゃん)!」」」

海坊主が言った事をシロが理解した瞬間、彼女の中で怒りと憎しみが爆発した。
憎悪の咆哮、霊波刀は今までに無く集束し、凶悪なまでに輝き、怨敵を一刀両断にせんとする。
我を失ったシロに呼びかける美神達だったが、その声は届いていない。

「ふん。甘い・・・だが、危険だな」

『っ!!?』

海坊主はそう嘲笑しながら言う。だが、我を失った獣は危険と判断し、己を強化する。
乗っていた亀が光になり、海坊主を包み込み、光が消えればソコには化け物が立っていた。
まるで魔装術を纏い、堕ちた人の様だ。
その身に生々しく醜悪な装甲を装備した人型がだ。その姿に本能が危険だと認識させる。

「うぉぉぉおぉおぉぉおぉおぉぉおぉおぉお!!!」

だが、そんなモノ理性の大半を失ったシロにとっては関係ない。
ただ、己の牙である霊波刀を突き刺し、殺す事しか頭に無い。

「ふんっ!」

「!?」

だが、その牙が変容した海坊主を傷つける事は無かった。海坊主がその拳をもって霊波刀を破壊し、
そして蹴りを放った為だ。蹴り自体の威力は文珠が自動的に発動し、シロは事なきを得たが、吹き飛ばされる。

「死んだ男の渡した物に護られるか・・・弱いな。お前も、死んだ男も」

仮面で見えないが、明らかに嘲笑う海坊主。
シロの脳裏には、情けなくとも逃げない横島の姿が、どんな状況でも諦めない横島の姿が浮かぶ。
そして、その映像がガラスの様に砕け散った。大切なモノを汚されたシロの中の何かが目を覚ます。

「グルルルルルルルルルルルッ」

『っ!?』

低く呻るシロ。四肢を地面に付け、四つん這いになったその姿は獣。
目には理性等無く、純粋な殺気と憤怒、憎悪しかない。そして、放つソレは霊気ではなく妖気だ。
そしてその圧は並ではない。

「ほう・・・」

「っ!ガァァアアアァアアアアアアア!!!」

その姿に嘲笑混じりにそう呟く海坊主。
その姿にシロは咆哮し、疾走する。見えているのは敵の喉笛。やる事は噛み砕くのみ。
シロの意思はその体に反映させる。その身は完全なる獣。人並に大きな白銀の狼と化していた。
白き疾風と化したシロの牙。それは人の動体視力では目視がやっとのモノだ。

「ぐぉ!・・・速い。だが、それだけかっ!」

「ギャインッ!」

その接近は海坊主も完全に捉える事が出来なかった様で、少し上体を動かす事しか出来なかった。
シロの牙は海坊主の腕を肩から噛み千切る。
だが、それだけだった。海坊主の回し蹴りの前におキヌ達の元へ吹き飛んだ。

「グルゥゥゥゥッ!」

「っ!シロちゃん!落ち着いて!」

「そうよ!我を失ってどうするの!?」

「ガウ!ガルウア!!?」

その一撃は相当効いている様で、フラフラになりながらも立ち、襲い掛かろうとする大狼。
おキヌとタマモはシロを後ろから抱き締めて、動かないようにしようとする。
おキヌはこっそりと【縛】の文珠をも使う。
拘束されてもそう叫びながら首を左右に振り、暴れるシロ。

「まあ、随分躾けのなっていない犬ね」

「「!!!?」」

何時の間にか海坊主の後ろに着物の女が立っていた。その姿に美神とおキヌは見覚えが有る。
角の生えた着物姿の美女。そして、海坊主が取り込んだあの亀は舟亀。

「何故若返ってんのよ!乙姫!」

「それは内緒よ」

美神の一言に妖艶に微笑む着物の女。乙姫。そして、乙姫の登場に戦場は再び動き出す。
異形の化け物共が再度侵攻を始めたのだ。

「!迎撃よ〜!」

『っ!』

六道理事の声に我に返った六道陣は動き出すが、旗色が悪すぎる。
海坊主と乙姫は動かないが、異形共の猛攻に怪我を負う人数が多くなっていく。
重傷者は未だ出てはいないが、このままでは死者すら出る事になる。
撤退しても、ホテルの結界が破られればそこまで。全滅するだろう。このままでも同じ事。
美神も手持ちの精霊石と破魔札、文珠を使いきり、神通棍にもヒビが入っている。
弓や一文字、おキヌも文珠によって護られたが、預かった残りは1つ。迂闊には使えない。

「おぉぉぉおぉぉおぉおぉぉぉおぉぉおぉおぉおおお!」

ドガァアァアアアアアアアアアン!!!

そんな絶望的な戦局を変える咆哮が轟音と黒い閃光共に夜の闇を切り裂いた。
閃光が敵の群れを呑み込み、消滅させる。

「何っ!?」

「ふふふ」

驚愕する腕を修復中の海坊主と妖艶に微笑む乙姫。六道陣も圧倒的な恐怖と悪寒が襲う。
先の黒い閃光は魔力の爆発。暴走し、獣と化したシロさえも動きを止めた。
爆心地に空気が呼び寄せられる。消滅した何かを埋め合わせるかの様だ。
魔力による内養功で体を修復させた爆心地のソレは立ち上がる。それは人型だった。
ただ、背中には黒い魔力で出来た翼が広げられている。緋色の双眸が不気味に輝く。

「「横島・・・クン(さん)?」」

青銅と銀を合わせたかの様な背まで伸びる髪。体にフィットする上半身のタンクトップ。
腰に巻かれた布と革の様なズボン。軍用な無骨なブーツと肘下まで有るグローブ。
姿形が変わろうとも、ソレは横島だった。唖然とそう呟く美神とおキヌ。どこか疑問系だ。

「・・・ちっ!まさか、魔創の導きを使わせるなんてな」

「馬鹿な・・・っ!何故貴様が生きている!」

舌打ちし、体の具合を確かめるかの様に何度か右手を握ったり開いたりしながら横島は吐き捨てるかの様に呟いた。
その姿にそう叫ぶ海坊主。仮面で顔は見えないというのに醜いと思わせる。

「そんな事、おまえが気にする必要は―――」

「っ!!?」

そう言いながら横島の体が幻かの様に掻き消える。先程のシロの速さを疾風とすれば、この横島の速さは迅雷。
海坊主は愚かにも左右を見てしまった。そこには何も無い。そして激痛を海坊主を襲う。
自分の胸を何かが貫いている。

「無い。もう死ぬんだからな」

「グギャァァああぁアア!!!」

横島は真正面から海坊主の胸を半物質化した栄光の手を纏った右手で貫き、軽薄な笑みを見せたまま呟く。
そして、栄光の手から己の魔力を海坊主の体内を蹂躙させ、断末魔の叫びと共に爆散させた。
更に、無造作に左手に生み出した銃形の栄光の手で異形共を消し去った。
荒れ狂う黒き閃光に呑み込まれたソレ等の断末魔を六道陣は聴いた。だが、それはまるで夢か幻の様だ。
それもそうだろう。苦戦していたソレ等は魔力によって呑み込まれただから。
瞬きをする刹那という時間で全てを消滅させられたのだから。
彼等が見るのは、黒い光、魔力で出来た翼を持つ髪の色さえ変えた横島と対峙するのは着物を着た乙姫だ。

「クスクス・・・流石ですね」

「・・・さあな。それより、次はおまえの番だ」

小さく笑う乙姫に対し、横島はいたって冷静にそう言う。
温度差がありすぎるその対応に観客となってしまった六道陣は例外を除き、背筋が凍る思いだ。

「・・・よくも私をあのような姿にしてくれたわね。その代価、その身で払ってもらおう!!!」

着物を破り、そう言いながら乙姫は変貌する。
人の形を取っていた上半身の筋肉は異常に発達し、その上を強固な鱗が覆う。
その頭は凶悪な爬虫類、トカゲ等を模したそれになり、ソレに合わせて下半身も強化される。
更にタチの悪い事に全高6メートルはあるかという化け物となった。
その声にも野太いのが混ざっている。その姿は巨大な蜥蜴人間(下半身は蛇バージョン)かのようだ。
霊格も高そうで、なかなか凶悪な霊圧を放っている。

「おもいっきり逆怨みね」

「黙れ!美神令子!私をあのような姿にしたのは貴様だろう!まあいい!横島殿の次は貴様だ!」

「・・・地雷から爆雷になった様ね」

その化け物と化した乙姫に美神は皮肉気味にそう言ってやった。
そう憎悪を込めて返す乙姫に美神はアホらしく思う美神。彼女は横島が負けないと感じていた。
今の横島の霊圧は抑圧されたモノ。その状態で乙姫の半分近くだ。
もし、使えるだろうと思われる霊圧を解き放てば離れていようとも人を吹き飛ばす位は有ると美神は推測する。
本人も使わないだけかと美神は思っている。

乙姫の猛攻が始まった。
両腕で次々と横島に殴りかかる乙姫。その一撃は浜に大穴を空ける凶悪な一撃。それを横島は避け続ける。

「(さて・・・時間は少ない。イチバチで良いか・・・どうせ、アスタロトが関係しているんだろうしな)
 乙姫。貴様を蘇らせ、メロウや平家ガニを強化したのは誰だ」

そんな中、横島は避けながらそう聞く。その目には期待も何もしていない、ダメ元で聞いている様だ。
このタイミングでこんな事をしようとするのはソレ位しか心当たりが無い。
それ以外だとしても、潰せば問題ない。短略的思考だ。

「フン。冥土の土産に教えてやる!メドー―――はぁ?」

乙姫は全てを語る事は無かった。その首が飛んだからだ。
横島の右手に輝く黒い光を束ね、半ば物質と化した霊波刀によって斬り落とされた為だ。
乙姫は情けなくなりそうで無様な死に際に見た己の体を見た疑問の様な声が最後に発した声となった。
鈍い地響きと共に乙姫の体が倒れる。六道陣に背を向けて立つ魔力を使う横島。
その命を刈り取った魔力を使う、変貌した男に恐怖する六道陣。
そんな中、男に近づく銀の大狼。何時の間にか文珠の効果が切れた様だ。
その狼を優しげな目で見る美神、おキヌ、タマモ。

「クゥーン」

横島の手が触れる位置まで近づいた狼はその場で座り、鼻で鳴いた。
すると横島は魔創の導きを解除し、元の姿になり片膝を付きその狼の頭を撫でてやる。

「まったく、そんな姿になっちまって・・・俺は大丈夫だぞ。シロ」

「わう!」

自分だと認識してもらったのが嬉しいのか、横島が生きていて嬉しいのか、それとも撫でられたのが嬉しいのか、
それは本人しか分からない事だが、シロは横島を押し倒し、顔を舐める。

「体が痛いんだ。今の姿だと響きそうだから人型になってくれ」

「わぅ―――それは拙者が重いということでござるか!?」

「悪い。悪かった」

「キューン」

頭を撫でながらそう言う横島に、シロは抗議の声を上げ様としたが、その姿では出来ないのか、
言われて通りに人型になり、抗議する。
横島は優しく頭を撫でてやれば、目を細めて小さく鳴いた。
その姿に笑みが毀れる美神。少し嫉妬を覚えるのはおキヌとタマモだ。

「「「横島クン(さん)(ヨコシマ)!」」」

3人はどうやら2人に走り寄る。そして、笑いあう。
その姿でも、横島とシロに対し、恐怖の目は向かって行った。特に横島に集中して。
シロが吼えそうになるが、撫でられる手が暖かいのか、何もしない。
彼等を見ながら六道理事は心の中で溜め息を付いて結界を再発動させ、臨海学校は終結した。


―後書き―
先ずはすいません。先週中に更新出来ませんでした。
家庭内事情と言う奴です。まさか、親が離婚寸前までイって、人騒がせな事に再び収まるのですから・・・
精神的に参りますよ・・・本当に・・・嫌になります・・・・・・・・・
さて、金曜から学校。私の夏休みが終わります。
大阪市の教育委員会は何を考えて8月下旬から午前中だけの短縮授業にしたんでしょうか?
謎です。そして腹が立ちながらも、成績の為に泣く泣く行くしなないのが嫌です。
仕方が無い。この言葉は便利ですね〜

作中のシロの変化は、多分最近EVAのSSを読んでいたからだと思います。
横島の髪が変化したのはDOMさんのレスでイングラム、ヴィレッタ、クォヴレーが浮んだからです。
青銅なのはアシュからきました。ワイド版の13巻を見たらそんな感じの色だったもんですから。

温泉にでも浸かりたいです・・・


〜レス返し〜
・セラ様
 はい。これからも頑張ります。

・ソウシ様
 恨みからでした。そして、体をも変化させてしまいました。
 そして、この変化は・・・最終決戦の時、全てが明らかになります。まだ遠いですが・・・

・February様
 ロクでもないというか、瞬殺です。少し扱いが酷いですかね?
 そして、動き出す時。みたいな感じですかね?ちんたら引き伸ばすかもしれませんが。

・DOM様
 いやー今回は有る意味彼方の一言で横島の変化がプラスされました。
 閃きの材料となるレスをしてくださって感謝してます。
 そして、例のセリフ。何時の日か使わせていただきます。

 厳しい戦況はたった数個の規格外な要因によって覆されました。
 勝手をやる某自由の剣みたいだと書いてから思いました。
 そして、横島の隣に立つ条件は概ね合っているような気がします。
 例外として、人外ならそこらへん関係なしな気がしますがね。

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