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「『最強の』後継者その4(GS)」

ラッフィン (2007-08-02 01:06)
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引越しも完了し新しい家にも慣れ、学校でも友人と呼べる存在がチラホラとでき始めたころ。突然、電話がかかってきた。

「もしもし。六道ですが。どちら様でしょうか?」

ちょうど近くにいた忠夫が電話をとる。家の名義が六道家になっているために家電にかかってくると忠夫も六道と名乗ることにしている。

「忠夫?ちょうどいいわ。今、家にこれるかしら?」
「うん、時間は空いてるから行けるよ」
「ならすぐに来て頂戴」
「わかった」

電話の相手は百合子だった。突然の家への呼び出しに不思議に思うも、切羽詰ったといった感じは受けなかったので、何か用事かなと思いつつ忠夫は出かける準備をし始める。

「誰から電話だったの〜?」
「母さんからだったよ。ちょっと母さんの家にいってくるね」
「わかったわ〜。夕御飯は作っておくからね〜」
「うん、いってきま〜す」
「いってらっしゃ〜い」

冥子はこの後少ししたら除霊の仕事に出かけるために別行動だ。冥子も、令子も、エミも才能があって学習能力も高いためにどんどん教えたことを吸収していくから、最近教えることがなくなって逆に困ってる、とは神父の談。もう少ししたら一人前のGSだと認めることになるだろう、いわばこれからはそれを見極める試験だと神父は語っている。そんなわけで冥子、令子、エミは仕事に気合い満々で励んでいる。
そんなわけで、忠夫は一人で横島家へと訪れる。

ピンポーン

「はい?どちら様ですか?」
「母さん、俺だよ」
「ああ、忠夫ね。鍵は開いてるから入ってきなさい」
「うぃうぃ」

中に入ると百合子とエミがお茶を飲んでいた。二人に挨拶をしながら忠夫はエミの隣に腰を下ろす。それを見た百合子は早速話しを切り出した。

「さてと、忠夫を呼んだのは・・・あんたもうすぐ16になるわよね?」
「ああ、来月でなるね」
「バイクの免許欲しくない?」
「できれば欲しいけど、金がないからな〜・・・」
「ならちょうどいいわ。今度、エミが大型二輪の免許を取りにいくからついでにあんたも自動二輪の・・・まぁ、どれをとるかはあんたに任せるけど、免許を取りたいなら取らせてあげようと思ったのよ」
「本当!?とりたいとりたい!!」
「そう、なら明日の午後に手続きしに行くからきなさい」
「わかった」

というわけで忠夫は免許を取りに教習所に通うことになった。このことを冥子に話したら。

「わぁ〜、なんかカッコイイわね〜。免許とったら〜、冥子を後ろに乗せてね〜?」

と素直に喜んでくれたので、忠夫のやる気も気合もさらに上がったのはいうまでもない。翌日の午後、忠夫とエミは百合子に連れられ教習所の受付で教習を受ける手続きをしていると・・・。

「げ・・・あんた達もきてたのね」
「げ・・・って何よ。令子」
「そうだよ。ひどいよ令子姉さん」
「べ、別にいいじゃない。エミとはいつものように顔をあわせてるんだからプライベートでは見たくないだけよ!」
「こっちだって好きで見せたわけじゃないわよ!できれば見たくなかったワケ!」
「なによ!」
「ふん!」

「あんた達、いい加減にしなさい。他の人に迷惑でしょう」

「「ごめんなさい」」

会ったとたんに言い合いに発展してしまった令子とエミだったが、熱くなっていても百合子から発せられる怒気に瞬時に血の気が引いて熱が冷めてしまう。もはや条件反射のように謝罪の言葉が出る。百合子はそんな二人に「まったく」とため息をついて手続きの続きに戻る。
そのとき、受付の人の顔が引き攣っていたのは気のせいだと思いたい。
場が落ち着いたところで、忠夫が令子に話しかけた。

「令子姉さん、俺は毎日会ってないからプライベートで会ってもいいよね?」
「な、何よ!」
「駄目なの?」
「べ、別に好きにすればいいじゃない」
「うん!」

二人の会話を聞いていたエミの顔がニヤニヤという擬音がぴったりというようなニヤけた笑みが浮かぶ。それに目ざとく反応する令子。

「ふ〜ん(ニヤニヤ)」
「な、何よ。気持ち悪いわね!」
「べっつに〜・・・」
「なんかムカつく〜!!」
「くっっくっく・・・」

第二次令子エミ饒舌戦はエミの圧勝に終る。令子は怒りに震えるが、このままでは自分は勝てないということがわかっていたので戦略的撤退と自分も教習の手続きをしにいくのだった。この恨みは何倍にもして返してやる!と心の中で思いながら。

「終ったわよ。実技は明日からだからエミはこれで終わり。忠夫はこの後、適性テストと学科教習があるらしいけど受けてく?」
「うん!先に帰ってて」
「わかったわ。エミ、いきましょうか?」
「は〜い。忠夫、あんた寝るんじゃないわよ?」
「大丈夫だよ。ひどいな〜エミ姉さんは」

忠夫は二人とわかれ、適性テストを受けるために教室へと向かう。まだ時間があるために、とりあえず端っこのほうに座って待つことにした忠夫。しばらくすると扉が開いたので、テストが始まるのかな?と思いきや。

「忠夫?」
「令子姉さん?」

入って来たのは令子だった。

「あんたも適正テストを受けるのね」
「うん、令子姉さんも受けるんだ。ちょっと意外だったよ」
「なんでよ?私と一緒に受けるのが嫌なの?」
「そういう意味じゃないよ!ただ、令子姉さんだったらとっくにバイクの免許とって学科は免除なんじゃないかって思っただけ」

悲しげな表情で問いただされ慌てて弁明する忠夫。令子は忠夫が嫌がっているのではないとわかってホッした。そんな自分がいることに驚き、直後に赤面してしまう。幸い、すぐに落ち着きを取り戻したおかげで忠夫にはバレずにはすんだが、思わぬ自分の一面にかるくショックを受け、これからの冥子や忠夫の付き合いを考える令子だった。

「この後、学科の8番があるみたい。受けてく?」
「そうね〜・・・そうしましょ。面倒ごとはさっさと片付けるのが一番よ」
「面倒って、確かにそうだけど。これも大切なことだよ」
「うっさいわね〜。面倒なもんは面倒なの!」
「はいはい・・・じゃ、行こうか」

適正テストを受けた後、学科が受けられるということで忠夫と令子は教室を移動する。まだ葛藤が残っている令子はとりあえず、今までと同じように接することで落ち着く。答えを保留にしたとも言うが。思考の切り替えは得意な令子なのだ。
その後学科を受け終え、忠夫と令子は帰宅した。
翌日・・・。

「あんた、学校サボったわね」
「いいじゃん。それより早く教習受けに行こう!今日から実技でしょ?」
「全く、ガキじゃないんだからハシャがないの!恥ずかしいったらありゃしない」

翌日の午後、昨夜は仕事だったために午前は寝ていたエミと午後の授業をサボってきた忠夫は教習所に向かっていた。
今日からは実技も始まるということで張り切っている忠夫。エミは経験しているために落ち着いている。ただ、エミも初めて実技を受けるときは楽しみで仕方なかったことを思い出し、忠夫の気持ちもわかるんだけどと内心では思っていた。

「じゃ、頑張ってきなさい。寝るんじゃないわよ?」
「わかってるってば!じゃ、後でね」

忠夫は中型自動二輪、エミは大型自動二輪と種類も違う上に忠夫は初めての教習なために教習を受ける時間が別々になっている二人。エミはすぐに実技教習を受けられるようで外のコースに向かう。一方、忠夫は実技教習まで時間があるので、その間は学科を受けに行くことにする。
今日は令子は仕事のようで教習は受けにきていない。そのため、忠夫は一人である。
眠たくなる学科を受けながら、早く実技を受けたいな〜と思い眠気を堪えるのだった。

「では、部屋を出るときにファイルを忘れないように」
「よっし!いよいよ実技だ!!」

意識が堕ちる寸前、ようやっとのことで学科が終る。その瞬間に堕ちかけていた意識を瞬時に取り戻す忠夫。両頬を叩いて完全に眠気を吹き飛ばし、意気揚々と外の教習コースに向かう。これから行う予定の実技教習に胸を躍らせながら。
とそこに意外な人物がたっているのを見つけ思わず名前を口に出してしまう。

「フミさん!?どうしてここに?」

なんとフミが立っていたのだ。しかも、いつものメイド服ではなく教官達が着ている制服のようなものを着ている。そんな忠夫にしてやったりといたずらっ子のような笑みを浮かべるフミ。

「ふふ、なんででしょうね〜?って、どうしました?私に何かついてますか?」
「じー・・・」

忠夫はフミのことを頭から足元まで見回すのでフミは少し戸惑う。
次に忠夫から放たれた言葉がフミを赤面させる。

「ん〜、普段のメイド服もいいけど。こういう姿のフミさんもなんかカッコイイなぁって」
「そんな忠夫様ったら。口がお上手なんですから〜///」
「お世辞じゃないのにな〜」
「もう、忠夫様ったら///」

忠夫の言葉にメロメロなフミ。自分がここにいる理由を言いそびれていることも忘れて照れている。そんなことをやっていると教習開始の合図が鳴り、みんなが教習を始める。

「あ、教習開始か。でも、俺達の教官はまだ着てないみたいだけど。どうすんだろ?ね?フミさ・・・」

フミに同意を得ようと振り向いた忠夫は固まった。

「では、教習を始めましょうか?」

そこには凛とした表情で教習開始を宣言するフミがいたから。状況を理解できてない忠夫は間抜けな声で問うた。

「え?始めるって、教官がいないけど・・・」
「いますよ?ここに。今日から忠夫様の教習を担当することになったフミです♪よろしく御願いしますね♪」

「ええぇえええええええええええええええええええええええええ!!!」

こうして忠夫の最初の実技教習は絶叫から始まったのだった。


「まずは、バイクを起こすことからはじめましょう。もしもバイクを起こせないのなら残念ながら免許を取ることができませんのでそのつもりで」
「はい!」

最初は驚いたものの、考えてみれば知らない人から教えられるよりは知っている人から教えてもらえたほうが気が楽だし、気兼ねなく質問をすることができる。忠夫は気持ちを素早く切り替え、実技教習に取り掛かる。

「ん、んん〜!!」

中型なので教習で使うのは400CCのバイクである。これが結構重い。これが持ち上がらずに免許取得を諦めざるを得ない人もいるくらいだ。しかし、忠夫は無事にバイクを起こすことに成功し、とりあえずは免許取得資格を得ることが出来た。

「バイクを起こすことは出来たみたいですね。それでは、次にバイクを停めておくためにスタンドを起こすことをやってみましょう。見本を見せますね?」

それからはスタンドを立てたり、バイクを引いて歩いてみたりと初歩の初歩を行う。これはバイクに乗る上で大事なことである。それだけに忠夫は早くバイクに乗りたい気持ちを抑え真剣に取り組むのだった。
そして、次が本日のメインイベントである。

「それでは、次は実際にバイクとはどのようなものか体験してもらいます」
「ってことはバイクに乗れるんだね?うわ〜、楽しみだよ」
「ん〜、忠夫様が考えているような乗り方じゃないんですよ」
「え?」
「私が運転するバイクの後ろに乗るんです。つまりは二人乗りですね///

というわけでフミの運転するバイクに二人乗りすることになりました。

「しっかり掴まっててくださいね?(そう、ぎゅ〜っと密着してくださいね?)」
「う、うん///」
「もっと、ぎゅっとしていいんですよ?(ほら、もっともっとぎゅってしてください)」
「だ、大丈夫だから。さあ、行こう?」
「そうですか?わかりました。では、行きます!(あ〜ん、まだまだ物足りないのに〜)」

ちょっと不満気な顔をしつつもフミはバイクを走らせる。まぁ、教習コースの中なので速度は30キロを越えることは少なかったが、初めて乗った人はかなり速く感じるだろう。
忠夫はバイクが加速するたびにぎゅっとフミに捕まっている腕に力を込めるため、そのたびに体が強く密着する。フミはそれが嬉しくてバイクを加速させたりしていたのは秘密だ。ときたま40キロに到達することもあったようだったが気のせいだ。しかし、教習ということは忘れていなかったらしく、ちゃんと内容はしっかりしたものだったと明記しておく。
なにせ間違ったことを教えてしまったら忠夫のためにならないのだから。そりゃぁ、しっかりと教えるだろう。
教習を終えての帰り道で、たまたま一緒の時間に教習を終えたエミと帰宅していた忠夫。自然と話題は教習の話になる。

「忠夫。教習はどうだった?初めてバイクに乗ったんでしょ?意外と速く感じたんじゃない?」
「そうだね。早く感じたよ。でも、バイクに乗るのは楽しいね」
「でしょ?私も乗るのに慣れたら楽しくて仕方なかったワケ」
「へぇ。そうなんだ。俺も早く慣れないとね」
「だったら、時間を置かずにどんどん乗ることね。時間あけると感覚忘れちゃうし」
「そうだね」

なかなかいい雰囲気で和気藹々と話している。それも恋人みたいに甘い空間ではなく家族のように暖かい雰囲気での会話であるために、嫉妬のように鋭く痛い視線ではなく、微笑ましく柔らかな視線を集めている。だが、そんな雰囲気も次の言葉で固まってしまった。

「教官の人とはどうだったの?私は男の教官で、人の体をイヤラしく見てきたから苛立ちを抑えるので大変だったわ」
「ん〜、エミ姉さんは美人でスタイルいいからな〜。同じ男としてわかるような気もするけど、なんだかムカつくな・・・」
「そいつは後でとっちめる予定よ。んで、忠夫はどうだったのよ?」
「俺?俺は・・・フミさんだった」
「は?」
「俺の教官はフミさんだったんだよ」

「はぁあああああああああああああああああああああ!?」

「やっぱりそうだよね。俺も最初は同じリアクションだったし」

それも当然だ。六道家の家政婦であるフミが教習所の教官をやっているのだから。しかも、忠夫の教官をしているのだ。驚くなというほうが無理である。忠夫好きにも程があるわよ!と呆れる気持ちと、冥子は苦労しそうねと冥子に同情する気持ちが複雑に入り乱れるエミであった。


教習所に通い始めてから2週間が経った。忠夫は相変わらず午後の授業をサボって教習を受けに行っている様子。進級は大丈夫なのか?原作ではもっとひどい状況だったのでたかが2週間早退しているくらいでは問題ないだろう。勉強はついていけるのか?これはもっと問題ない。何故なら彼には心強い味方がいるのだから。

「忠夫様〜♪」

ちなみにこの人ではない。

「えっと〜、ここで(x)を代入すると〜・・・こうなるから〜」
「あ、そっか。ここがこうなって(y)が・・・」
「そうそう〜。忠夫君は飲み込みが早くて教え甲斐があるわね〜」
「冥子姉さんの教え方がいいんだよ」

そう、彼には六道女学院で3年間首席争いを繰り広げていた内の一人がいるのだから。忠夫は冥子が仕事の時には教習所に行き教習を受け、冥子の仕事が休みのときは家に帰ってきて勉強を見てもらった後に教習に向かっている。このときの教えがよほどよかったのか?それとも冥子と勉強をしたからか、忠夫の成績は真面目に学校に行っていたときよりも上がったということが、この後に行われた定期テストの結果からわかったのだった。

「そろそろ休憩しましょうか〜」
「そうだね。ちょっと疲れちゃった」
「ちょっと待っててね〜。お茶を入れてくるから〜」
「ありがとう。冥子姉さん」

勉強の合間の休憩タイム。冥子のいれたお茶を飲み談笑する。話のネタは尽きることがないかの如く、二人の会話が途切れることはない。結局、この後の勉強は中止になってしまうのだった。

「では、今日は試験コースのBを走ってみますね。私の後についてきてください」
「わかりました」

実技教習でフミのバイクを追いかける忠夫。初めての実技教習を受けてから、翌日。2度目の実技教習を受けに来た忠夫は外のコースに移動する。そこに待っていたのは前回の教習同様にフミだった。

「なんで、またフミさんがここに!?」
「あら?言ったはずですよ。”忠夫様の教習を担当することになった”って」
「あれってそういう意味だったの!?」

と言った具合に混乱してしまったが、今はなれてしまった。教習とはいえ忠夫に甘くなるだろうと思っている人もいるだろう。しかし、前述にもあったようにちゃんと教えておかないと警察に捕まってしまうことから、意外なことに細かいことまで厳しく指導しているのだ。

「はい、サイドミラーを見るだけじゃなくて、肉眼でもしっかりと確認して!」
「ほら、カーブを曲がるときは前もってスピードを落として、加速しながら曲がるんですよ!」
「ギアチェンジをもっと素早くしてください!」

忠夫もしっかりとそれを聞き入れて真面目に取り組んでいるために、運転技術もメキメキと上げてきている。だが、それとは裏腹にフミの心の中は懺悔で満ちていたり。

「(ああ〜、忠夫様、申し訳ありません。本当ならこんなこといいたくないんです!この駄目なフミをお許しください。これも忠夫様のためなんです・・・でも、こんなことしたくないんです!心が痛いんです!あ、でも。凛々しいお顔がとっても素敵です♪バイクに乗ってる忠夫様///とても格好いいですぅ♪ああ、でもでも。こんな厳しいことを言ってしまって申し訳ありません。フミはいけないメイドです。お仕置きされても仕方ないのです。忠夫様・・・どうかこの駄目なメイドのフミにお仕置きを!忠夫様のお仕置き・・・いいかも///)

っと思考がだんだんと危ない方向に向かってしまっているが、フミの心の中は懺悔でいっぱいである。そんなこんなで実技教習は行われるのだった。
一方、学科教習はというと。そろそろ卒業試験が近づいてきたとあって、独自に問題集を解き始めていたり、テキストをチェックして知識を詰め込んだりしている人が多々見られるようになった。

「・・・60分たったわね。はい、これ」
「うん。今回は自信あるよ!」
「ふふん、でも私が勝つわ」
「じゃ、負けたほうがジュースおごりね?」
「受けてたつわ!」

忠夫と令子も例にもれず、二人は時間を決めて問題を解いた後、お互いの解答用紙を交換し合い、答え合わせをしている。今回はなにやら賭けも行われるようだが。
答え合わせが終わり、二人が一斉に得点を言い合う。

「95点!」
「93ね」
「・・・負けた」
「あたしに勝とうなんて10年速いわ」
「何がいい?」
「そうね〜、スポーツドリンクを御願い」
「わかった。いってくる」

結局、忠夫が負けたためにジュースを買いにいくことに。
自販機で缶ジュースを2本買い、令子の元へと戻る忠夫。それと同じ時、一人の男(大学生くらい)が机に蹲って寝ていた。

ガタッ

「ふが?」

頭が枕にしていた腕から落ちた衝撃で眠りから目覚める。まだ回らない頭で反射的に時計を見る男だったが、時間を理解した瞬間に完全に目が覚めたようだ。

「ヤバイ!!」

勢いよく飛び起きると慌てて荷物をかき集め、走り出す。

「ヤバイ!もう時間が!?」

とそこにジュースを買ってきた忠夫が扉を開けて入ってくる。が、男は腕時計で時間をもう一度確認していたために扉を開けて入ってくる忠夫に気がつかない。一方、忠夫も扉を開けていたために突然こちらに向かってくる男に一瞬固まってしまう。これがいけなかった。
そのまま二人は衝突してしまったのだ。

「痛!?」
「うわぁ!!」

男が忠夫にタックルを仕掛けた状態で二人はもつれ合って転倒する。が、突き飛ばされた状態の忠夫は突然のことだったので受身も取れずに後ろの壁に背中と頭を強打して気絶してしまった。対して男のほうは忠夫という衝撃緩和剤がいたために前に転んだ程度で済んでいる。

「忠夫!?」

事態に気付いた令子はすぐに忠夫に駆け寄って忠夫の状態を調べる。どうやら頭を打って気絶しただけのようなので、ホッと安堵のため息を吐くのだった。とそうしているうちにぶつかった男のほうが起き上がる。

「ったく、邪魔すんなよな。ガキが!!」

状況から見て男のほうが明らかに悪いのだが、寝坊して時間がない男は忠夫の責任にして毒づくと忠夫のことなど構いもせずに走り去ろうしとしている。周りの人はぶつかった音がしたために振り返っただけなので状況が理解できず、ただ見過ごすだけとなっているため、誰も男をとめようとするものはいない。
男はそのまま教習に向かおうとするも。

「待ちなさい!」

一人だけそれをとめるものがいた。それは忠夫に駆け寄った令子である。

「変なもの選んできたらとっちめてやらなきゃね」

と、忠夫のことを待ちながら入り口のほうを見ていたら、「ヤバイ」と慌てた様子の男が入り口に走っていくのが見える。そして入り口にはちょうど部屋に入ってこようとしていた忠夫の姿が。「危ない!」と令子が言うまもなく、二人は衝突したのだった。

「あんた、人を突き飛ばしといてどこ行こうとしてるわけ?」
「はぁ?何言ってんだ。このアマ?こいつが勝手に前に出てきただけだろうが!」
「あんたこそ何言ってるわけ?前方を見もせずに扉を開けて入ってきた人に勝手にぶつかってこけたのはあんたでしょうが!」

その男の言葉に普通の女の子なら怯んでしまうだろうが、あいにくと令子は普通の女の子ではない。堂々と男に向かって言い返す。

「人に怪我させといて勝手なこと言うんじゃないわよ!」
「俺はなにも悪くない!そいつが勝手に前に出てきただけだ!」
「あんた最悪ね。これが車だったら、あんたは間違いなく逮捕されるわよ」
「なんだと?」
「居眠りしてて教習に遅れそうになって前も確認せずにつっこんできたのはあんたでしょうが!全部見てたんだからね!これが本物の車だったら、あんたは居眠り運転で前方不注意でしょうが!それにあんた大学生?20歳以上?「そ、そうだよ」忠夫は高校生で未成年よ。つまりあんたは車で忠夫は二輪車の違いがあるわ。車と自動二輪車だったら車のほうが明らかに責任が重いんだからね!!」

とまくし立て男を追い詰める。最初の剣幕はどこにいったのか、男は大人しくなってしまう。そこに騒ぎを聞きつけて駆けつけた教習所の教官達。令子はすぐに事情を説明し、忠夫を病院へ連れて行く。
男は幸いにも今までの教習こそ無にされなかったが、本日行われるはずだった教習は全部キャンセルになったのだった。

「あ、あれ?」
「あ、目が覚めた〜?」

忠夫が目を覚ますとそこは自分の家で、冥子が覗き込むように見ていた。その隣には令子も安堵したような顔で覗き込んでいる。

「あれ?俺どうなったの?」
「あんた、馬鹿にすっとばされて壁に頭ぶつけて気絶したのよ」
「・・・ああ。そういえば、そうだっっっつ!!」
「少しこぶができてるからね。少し冷やしておきなさい」

令子の説明を受けて思い出す忠夫。時刻は7時になっていた。あれから令子は教習も受けずに(といっても実技はすでに終っていたのだが)救急車に一緒に乗り、付き添ってくれて、病院で医師からの説明を聞いたのも令子である。その後、連絡を受けてやってきた百合子とエミ、冥子とフミに事情を説明する。とりあえず、軽い脳震盪だったようでホッとした様子であった。
で、車に今だに気絶していた忠夫を乗せて現在に至っている。

「じゃ、私はそろそろ帰るわ」
「えぇ〜!もう帰っちゃうの〜?一緒にご飯食べようよ〜」
「無理言わないで。これから仕事よ!」

忠夫も目を覚ましたので令子は帰るというか、これから仕事に行くようだ。仕事といわれ仕方なしにご飯のお誘いを断念する冥子。忠夫も体を起こし、令子を見送る。

「じゃ、安静にしてなさいよ」
「うん、ありがとう令子姉さん」
「どういたしまして」

ちょっと照れくさそうに言う令子だった。


「くそ!今日はついてねぇ・・・」

令子に言い負かされて、教習までキャンセルになった男は愚痴をこぼしながら帰宅している。男にとっては踏んだり蹴ったりだろうが、自業自得なために同情の余地もないが。そんな男に声をかけてくる女性がいた。

「あの〜、お待ちいただけますか?」
「なんだぁ?」

さきほどのことでイライラしていた男は怒気の混じった声で返事をし振り返ると、そこにはメイド服を着ている美女が。男は怒気も忘れ「逆ナンか?」と思ってしまうが、次の瞬間にそれが完全に間違いだと理解する。

「なんのようで?もしかして逆ナンパっすか?」
「さっきはよくもやってくれましたね・・・」
「はっ?」

鼻の下を伸ばして問う男を射殺さんばかりに睨みつけながら、メイド服を着た美女。もうわかっていると思うがフミは、それでも敬語で話している。フミの体からは抑えられていた怒気が噴出して、ものごっついオーラをかもし出されている。

私の大切な忠夫様を突き飛ばしたあげくに気絶させるなんて・・・あなたには地獄すら生ぬるい!!この私が制裁してさしあげます!」

男はフミの後ろに死神の幻影を見るのだった。
その後、男はバイクや車に触るたびに痙攣を起こし、ショック症状を引き起こすようになったとか。原因も男は何も語ろうとはせず、というか聞かれるだけで絶叫して逃げ出すために誰にもわからず、真実は闇に閉ざされてしまったのだ。


あとがき

また台風が日本にやってくる〜。ラッフィンです。

今回は姉さん3人に頑張ってもらおうと思ったんですけど、令子だけが目立ったような・・・ひどいのは冥子。影薄いな〜・・・もっと目立たせないと・・・。メインヒロインがフミになってしまう。え?もうメインヒロインはフミだって?もう手遅れ?
あはは〜・・・やだな〜、そんなことは・・・そんなことはないはず。はずだよね?ね?
なにやら不安になってしまったラッフィン・・・。

さて、次回は商店街での攻防戦!商店街に嵐が吹き荒れる!!
では、次回w
またお会いしましょうw


レス返しです。


たりなか様

あんな暴走したフミさんでも癒されてくれましたかwいや〜、私も受け入れてもらって安心しました。

糖分は足りましたか?


セキヨウ ユキト様

甘さより暴走が目立つ!それが私の書くフミです!!
その分、甘い雰囲気を姉さん3人に任せます!!


Tシロー様

後味すっきりだったのに、いきなり衝撃の実態を見せ付けるw
すいません、雰囲気ぶち壊して・・・

今後の予定は未定ですが、西条を出そうとは思ってます。


FFF隊員No.1様

今回もフミさん出しましたよw私の書くフミさんは神出鬼没です!

ふふ、真のFFF隊員ならフミさんの出番が名前だけでも愛が膨れ、脳内補完されるものなのだよw


DOM様

きっとその砂糖の山で令子達の体は埋め尽くされていることでしょうw

忠夫はいるだけでフミのハートをガッチリキャッチしてますw

全ては大人組の会話の中にある。では、最強二人のシナリオ通りに・・・


鹿苑寺様

GMに逆らうとはおろかなw

物足りないでしょう?そうでしょうそうでしょうwあなたもフミラーの素養がおありのようだ。ふふふwいい兆候ですw


レンジ様

あるんですよ。特にフミには・・・ね。


秋桜様

糖分増やすのですか?ご使命が入りました〜。糖分追加〜。
わかりました。今後はみんなが糖分不足になるような甘い作品に仕上げようと思います!!

GSは太って動けないようなら死亡確定でしょうからね。美神ズブートキャンプとかやったら絶対やせますよwその前にノイローゼになりそうだけどw


whiteangel様

フミがいるだけでネタに困りませんw
勝手につぱしってくれますw


アミーゴ様

2代目ですか・・・ご愁傷様です。

フミはもういるだけでネタができますし、勝手にキャラが走ってある意味問題児ですw少しは抑えたほうがいいかな?


内海一弘様

くっ!まだ粘りますか・・・なかなかやりますね!!

>もはやこの話のヒロインは冥子では無くなってしまっている気が…(汗)
;・ロ・)!!
前々から薄々感じてましたが・・・ヤバイですね。進路を変更しなきゃ!!


風彌様

>最初普通だったから心配だった(ぇ
普通で心配ってwもうあなたは立派にフミラーですwさすがですねwもうFFFの名誉隊員になれますよw

PCから煙が!?フミさんパワーが原因ですか?もっと抑えないと駄目か〜・・・


カシス・ユウ・シンクレア様

まさにエヴァでいうATフィールドのような新婚もどきな忠夫と冥子に乾杯w
だが、フミが虎視眈々と狙っているぞ!
気をつけろ!!
ってな状況ですね〜wとりあえず、最近影が薄い冥子をなんとかしないとね^^

いくぞ!カシス様!!糖分の摂取は充分か?
でも、今回は甘くないですので大丈夫でしょうw

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