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「霊能の炎は燃えているか!?〜一回戦(前)(GS+オリキャラ+α)」

いりあす (2007-07-14 22:40)
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 私の両親のうち、父親とは幼い頃から接点がほとんど無かった。
 それは、別に父親の人格や品行のせいじゃない……と知ったのは、私がGSへの道を本格的に歩くようになってからの事。父が何の因果か身につけてしまった能力で、私や周りの人々の心に立ち入ってしまうのを避けるため。でもその頃は、ただ父が私に対して愛情を持っていないのだと思っていた。
 私を優しくも厳しく育ててくれた母親は、私が15歳の時に永遠に姿を消した――少なくとも、あの頃はそう信じていた。そうではない事を知ったのは、ほんの1年前の事だ。

 父親とは生別同然、母親とは死別。母が何者かに付け狙われていた事で子供の頃は方々渡り歩いていたせいか、心を許せる友達もいなかった。子供の頃実の兄妹のように接してくれた年上の友達は、遠い海の向こうに渡ってしまって時々手紙を送ってくれる程度。
 多分私は、家族や友達に囲まれた暖かい生活……そういうものを、あの時心のどこかで一度諦めていたんじゃないかと思う。


 手に入らないものを、何か他のもので埋めたいと思った。それを通して、大事なものを失って生まれた心の中の隙間のようなものを埋めかったんだと思う。
 そして、その代替として“お金”を選んだのは、何か深い理由があったのだろうか、それとも単なる気まぐれだったのか……自分の心理というのは、だからこそよく分からない。“家族”とか“友達”とか、そして“愛情”……そんなものは、お金で買えるものじゃない。そう思ったからこそ、その代償にお金を稼いで、稼いで、稼ぎ尽くしてやろう……そんな風に思っていたのかも知れない。
 守銭奴と言われたって構わない。お金があれば快適な生活が送れる。広い家、素敵な服装、優雅な食事。財力に物を言わせて押して押しまくれば、多少の困難な除霊だって楽に達成できるのだ。そしてお金を稼げるという事はステータスだ、名声だってついて来るし、周りの人間だって私を放ってはおかない……そういうスタンスを、いつの頃からか私は確立させてしまったのだろうか。


 お金に拘る人間を軽蔑する奴は多い、だけどそれが何だと言うのだろう? お金を持たずに、どれだけの事ができると言うのか?

 生きていくのに最も大切なのはお金だ。お金さえ持っていれば何だってできるし、何だって手に入る。地位だって、権力だって、どんな物だって。お金さえあれば、誰かに従属する必要もなければ、無理をして心を開く必要もない……


 ……そう考えていた、いや、そう考えたかった――――そう、ついこの前まで。


 煩悩まみれのバカな少年を丁稚にした時、私が備えているらしい色気につられたそいつを私はとんでもないはした金で雇った。私から見ればドブに落っことしたら手を伸ばす気にもならないようなお金と、気のおもむくままの実力行使と、そしてほんのちょっとの色仕掛け。その程度の事で、アイツはホイホイついて来る。なんて安い買い物なんだ、と私は内心小躍りしたものだ。
 しばらくして出会った幽霊の少女にしてもそう。そりゃ彼女の身の上にホンのちょっとは同情したにしても、これまたちょっと気の許せるアシスタントを小銭で手に入れた――少なくとも表面上は、そう思ったのだろう……それとも、そう思いたかったのか。


 でも、二人の存在は日に日に私の心の中で大きくなっていった。特に、いつの間にかその丁稚の少年を、私は一人の異性として意識するようになっていたようだ。そして、私は気がついてしまった。自分がお金では買えない物を手に入れたのだ、そしてもっともっと自分の物にしたがっているのだ……と。
 アイツの事を、どうやら私は独り占めしたいと考えてしまったらしい。でも、あの煩悩の塊で、人の事を欲望の対象と見なしていて、それでいて気の優しいあの男の心をどうすれば独占できるのか――その方法が分からない。だって、彼の――横島クンの心までは、多分お金だけで買う事はできなかっただろうから――


「結局……人の気持ちを惹きつけたかったら、それに見合うだけの気持ちをさらけ出さなきゃいけなかったのよね。価値のあるものを買うためには、それに見合うだけのお金を払わなきゃいけないようなモノでね」
 と、琥珀色の液体と氷の入ったグラスを右手で軽く揺らしながら、美神令子は幾分の苦みをこめた笑いを顔に浮かべる。
「人に自分を“好きだ”と言わせたかったら、まず自分の方から“好きだ”って言えばいい。それが一番速いし、一番確実な方法だったのかも知れない……特に、横島クンのようなブキッチョな人が相手の時は特に、ね」

 おキヌちゃんはそれに気付いた。そして、横島クンに自分の抱いている愛情を伝えた。そして、横島クンもそれに応えた……そうやって、あの二人は単なる片想いではない、片想いのすれ違いでもない、お互いの愛情を確かめ合える関係を築く事ができたんだろう。


「それとも私、一方的に慕われるだけの関係を創りたかったのかな……アイツを自分の独占物にしたいと思う一方で、自分が独占されるのはイヤだ、そんな風に思ってたのかもね」
 そう言ってグラスの中身を飲み干してから、美神令子はテーブルの向かい側に視線を向けた。
「ねえ、西条さんはそのあたりどう思うかしら……って、ちょっと?」

「う、う゛〜〜〜……も、もう飲めません……」
 中身がある物、空になった物。大量の酒瓶と二つのグラスが置かれたテーブルを挟んで反対側のソファーで、美神の深酒に付き合わされた西条輝彦は文字通り泥のように酔っぱらっていた。


「ちょっと、私をほっぽり出して一人で酔い潰れるなんてないでしょうが!? せっかく私が西条さんに祝い酒を振る舞ってあげてるってゆーのに」
「うぐぐぐ……で、でも令子ちゃん、これは祝い酒というよりヤケ酒……」
「横島クンがおキヌちゃんとくっついたって聞いて小躍りして喜んでたって、ママから聞いたわよ」
「せ、先生……確かに喜びはしたけど、話に尾ヒレをつけて…………ぐふっ」
 頭部の血圧を急に変化させたのが良くなかったのか、西条はそのまま眠ってしまった……専門家が見れば、急性アルコール中毒の少なくとも一歩手前までは来ていると判断しただろうが。


「横島クンがまた普通に恋をするようになった事は喜ぶべき事だし、おキヌちゃんが長年の想いをかなえた事だって祝福してあげてもいいんだろうけどなあ……」
 長椅子に倒れ込んだ西条に手近なタオルケットを引っかけながら、美神はアルコール混じりのため息をつく。長年と言っても暦の上では一年チョイしか経っていないはずなのだが、そのあたりは追及すべき事柄ではない。

 あの二人がそういう仲になったからと言って、自分への態度が何か変わったではない。むしろ、二人に嫉妬して大人げない振る舞いをした事に怒りを示さなかった二人に対して、感謝の気持ちすらどこかで感じていた。
 それでも、何となく……二人が自分のところから離れてしまうのではないかと、ずっと気になっていた。


「……そうね。私の方で二人に距離を取っていたら、本当にそうなっちゃうもの。ま、そばで声援なりヤジなり飛ばすぐらいは、してあげてもいいか」
 そう言って、美神は一つ伸びをうってから応接室に転がる酒瓶を片づけ始めた。
「人工幽霊壱号、西条さんの事頼んだわよ。あんたから見て危ないと判断したら、救急車でも何でも呼んで構わないから」
『それは承知しています。それで、すぐさまご出発ですか?』
「まさか。さすがにこれだけ飲んだ後で運転したら、事故っちゃうもの」
 そもそも飲酒運転で捕まると思うが、そっちの方はあまり気にしていない美神……それでいいのだろうか?
「まずはシャワーを浴びて一眠りして、アルコールを抜いてからよ。到着は明日――大会初日の午後になるだろうけど、いくら何でもあの子達が全員そろって初戦敗退するとも思えないし」
 そうキッパリと言ってから、彼女は自分のプライベートスペースに通じるドアを開ける。
「さ〜〜て、鋭気を養わなくっちゃね〜。ウチの従業員を引き抜こうなんて不届き者には、それ相応の代償を払ってもらうなり、実力を見せてもらうなりさせないと」
『……色々な意味で、お気をつけて』
 人工幽霊壱号は少しだけ心配になった。それは美神のフラストレーションの行き先についてであり、明日から始まるという全国大会の帰結に関してであり、それに参加する横島・おキヌ・シロ・タマモの事であり――ついでに、応接室でノビてしまっている西条の事でもある。


   『霊能の炎は燃えているか!?』 Written by いりあす


  〜〜〜1回戦 全国大会開幕!!〜〜〜


 ぱ――ぱっぱらっぱ、ぱ――ぱ――、ぱっぱらっぱ、ら――ぱ――ぱ―――♪

 どこの学校かは知らないが、おそらく近所の学校のブラスバンドが演奏しているのであろう、どちらかというとツタに包まれた野球場にこそ似合いそうな曲が開会セレモニーとして鳴らされている。
「う〜〜っ! この曲こそ高校生の青春の結晶・その1だわっ! 私も一度アルプススタンドで応援してみたいっ!」
 と列の先頭でむやみに感動している愛子の真後ろで、横島の表情は微妙に緊張気味である。もちろん、緊張の源になっているのは今行われている開会式などではなく、その少し前に起きた一連の出来事のせいである。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「話は夏子から聞いたで、横島くん?」
「うんうん。私達はともかく、夏子の気持ちにまで全然気付かなんだっちゅ〜んは、やっぱ問題やなあ」
 夏子から事の経緯を聞いたらしい素子と望の二人が、夏子の両脇をガッチリ固める形で横島達に曰くありげな笑いを向けている。
「そんなワケで、私らは夏子の味方や。好きなら好きと言えん私らも私らやったと思うけど、手当たり次第に女の子にイタズラするばっかりやった横っちの罪も重い」
「告白もできずに別れてもた男の子が、彼女つきでヒョッコリ姿を見せたかて……素直にハイお幸せにとはいかんよねえ」
「ちょ、ちょっと待てよお前ら……」
 再会した早々にブン殴られ、さらに泣かれ、挙げ句ケンカを売られて黙っていられるほど、横島はお人好しではない。まして、横島としては自分の認識している事実と彼女達の前提がまるで異なるのだから、戸惑うなという方が無理だろう。
「お前ら三人とも、銀ちゃんを取り囲んでキャイキャイ言ってた口やろーが! 銀ちゃんを横目でボヘーッと眺めながらそこはかとないジェラシーを感じとった俺の立場はどーなるんや!?」
「は〜……やっぱ気付いとらんかったんか、横っち」
 ずり下がった眼鏡のフレームを指でクイと戻しながら、素子がため息をつく。
「確かに他のクラスや他の学年の女子が銀一の追っかけしてたのは事実や、それは認める。せやけど、私らがそれに付和雷同してたと思われるのは心外やで」
「あのミーハーな連中を隠れ蓑にしとった……ちゅうのも、また事実やけど」
 ショートカットの髪を指先でポリポリ掻きながら、そう望も続ける。
「ンなアホなっ? あれだけ俺を目の敵にしといてそれはねーやろ? ミニ四駆の大会で銀ちゃんに勝てば文句を言われ、スカートめくりしても銀ちゃんだけ無罪放免で俺は帰りの会のつるし上げやったってのに!?」
「ミニ四駆の件に関しては、アレはただの判官贔屓やね。な、夏子?」
「せやな。それから、スカートめくりの件やけど」
 望の話を受けて、今度は夏子が横島の鼻っ面にまた指を突きつける。
「例えば横島のそばに、ところ構わず相手問わずに男の子に抱きついたりキスしたりするよーな女の子がいるとする。その女の子が……」
 そう言いながら、夏子の指は横島の隣のおキヌ、続いて近くにいた弓や一文字達に伸びる。

「おキヌちゃんの時と、そんなに親しい仲でもない女の子の時……どっちの時が文句言いたなる?」
「そ、そりゃあ…………」
 次の瞬間、横島の煩悩まみれな下半身から発する衝動は“誰であろーと、他の男に色気使うなんて許せるか〜〜!!”という叫びをブチ上げようとした……が、すぐさま別な部分の意志がそれを押さえ込む。もし自分の隣にいる少女が他の男に血道を上げたり色目を使ったりしたら、自分はどう思うだろうか? おキヌを怒鳴りつけたりできるかは微妙だが、悔しくはなるだろうとは予測できた。
「………………」
「ま、無理に口に出さんでもええよ。もし自分のスカートだけをめくるんなら、ウチは銀一の方を怒鳴っとる。けどな、誰彼構わずそーゆーイタズラするなら、腹を立てるのはあんたの方や……女心の勉強、足らなんだんとちゃうか?」
 どー勉強しろっちゅーんや!? と内心横島は思ったが、それを言う事は憚られた。

「ついでに言うと、バレンタインの時に銀一にはチョコやってあんたには何もやれんかったんは、義理ならそんな気にせんと渡せるけど、本命はみ〜んな牽制しあって渡せんかったっちゅう事」
「……じゃ、じゃあフォークダンスの時に銀ちゃんの隣を取り合った時とか……」
「アホか横っち? 横っちの方で勝手に遠慮して“女子の方が人数少ないから、俺そっちに入るわ”って毎度毎度言うとったやんか。同じ列に入られたら、手のつなぎようが無いやろ」
 これまた明快に否定されて、グウの音も出ない横島。
「大体あんた、ウチが銀一と付き合ってると思うとったやろ? それはちゃう、ウチの方で“横島の方がいい”っちゅうて断ったんや。それを全く反対に捉えてもて……」
「え゛、え゛、え゛…………」
「……横島さんって、子供の頃から女の子の気持ちに鈍感だったんですね?」
「お、おキヌちゃんまでっ!!?」
 夏子はおろか隣のおキヌにまで軽いふくれっ面で言われて、硬直するしかない横島であった。


「どうも初めまして〜。おキヌちゃん達のコーチをさせていただいてます、六道冥子っていいます〜」
「こちらこそよろしゅう、市天の顧問をやらせていただいてます、真田信之いいます。おタダ……やのうて、横島くんとは小学校の時1年生と6年生やって、仲良うさせてもらいましてん……でも、私たち“初めまして”やなくて、前にもどこかでお会いしたかも知れへんけどね」
「え〜? そうでしたっけ〜?」
「よ、横島くんの……その、義理の姉になります、愛子っていいます! よ、よろしくお願いします……」
 その斜め後ろでは、三者のコーチャー達が挨拶をしていたりする。もっとも、愛子はあとの二人に比べると緊張気味らしく、信之の顔をチラチラとのぞき込んでいる。


「ま、そういう事になったから、あんじょう頼むな? 過ぎた事をグチグチ言い合うのはここまでにして、後はお互い、GSとしての腕比べで勝負をつけるって事にさせてもらうわ。そー簡単には負けへんで、おキヌちゃん?」
「は、はい! わ、私だって負けませんからっ!!」
「え、あ、と……」
 夏子に負けずに気合いを入れるおキヌの隣で、横島はまだ動揺から立ち直ってはいない。
「あ、お話はまとまったようやね? ほな、おキヌちゃんもおタダも頑張ろうな? せやけど、夏子ちゃんの事を見くびらん方がええかもよ」
 横島&おキヌと夏子の間を仲裁するかのように、ノホホンとした調子で信之姉こと真田先生が間に入った。
「こう言うのも何やけど、夏子ちゃんってこっちじゃ二つ名つきで呼ばれとるんよ? 誰が言い始めたんか知らへんけど、春ぐらいから“ザ・ブリリアント・オブ・ブライトメン”って言われだしたんやわ」
「……しゅ、“秀才の中の秀才”……ですか?」
「だ、大丈夫よおキヌちゃん達〜」
 顔を引きつらせる愛子の隣で、冥子は冥子なりの激励の仕方なのか、胸を張って言い返そうとする。
「令子ちゃんが言っていたわ〜、“秀才は天才には勝てないのよ”って〜、だから、気圧されちゃダメ〜」
「……その“れーこちゃん”っちゅうんが誰なのかは聞かんけど」
 信之越しに二人に背中を向けながら、夏子は肩越しにニヤッと笑った。
「でも、ツッコミは入れさせてもらうわ。それは正しい指摘かも知れんけど、一方で物事の片方しかとらえとらんな。より正確を期すんなら、こう表現すべきや――“秀才は天才に勝てず、天才はアホに敵わず、そしてアホは秀才に及ばない”……ってな?」
 いかにも陰陽五行の術者らしい相克論を言い放ってから、夏子はチームメイト二人と信之の肩をポンポンポンと叩いた。
「さ、そろそろ開会式や。整列、整列」
「せやな」
「ほんじゃ、試合で会うたときはよろしゅうな」
「じゃねおタダ、大会が終わったらまたゆっくり会おうな」
 そう言い残しながら、市天霊能部という姿をした嵐は横島達の前を去っていったのである。

「……え……あ……」
「わ、私は負けませんからね、夏子さんっ!」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ぱららっ(ぱらら)、ぱぱらぱら(ぱらら――)、
  ぱぱぱらぱ、ぱぱらぱら――――、ぱ――ぱ――ぱ――ぱららぱ――ぱ――♪


(聞いた限りだと、あの大阪の連中って横島の昔のGFか何かみたいらしいね?)
(どうも、そうみたいですわね。でも今の横島さんには、氷室さんという人がいますし……)
(よく分かんないけど、横島ってのもトラブルメーカーだよなあ……)
 ブラスバンドが青春の結晶・その2にあたる年末年始の国立競技場向けな楽曲を吹奏している中で、六道女学院チームの口さがのない面々は、列の最後尾にいるおキヌに聞こえないようにヒソヒソ話をしていた。
(ま、あたしはおキヌちゃんの味方だけどな。死んでた時からずっと横島一筋だったんだもんな、今さら横島の昔の甘酸っぱい初恋の思い出になんて出て来られちゃかわいそうだよ)
(どの道ライバル同士ですから、試合で当たれば全力で戦うまでですけどね)
(それより、甘酸っぱいと言うよりホロ苦いって言うべきなんじゃないの?)
 峰・神野・一文字・弓・花園といった口さがのない連中が、列を微妙に乱しながら頭を寄せ合って密談をしているのは、周囲からも目につくわけで。
「ごほんっ!!」
(……っと、いけね)
 おキヌの隣で眉をひそめていた鬼道が咳払いをしたのをきっかけに、彼女たちは列を元に戻した。


(結局、あの夏子どの達は先生の昔のご友人のようでござるな)
(友達って言うより、先方は明らかにそれ以上のつもりみたいだけど)
(ハタで聞いていた限りだと、あっちの片想いだったみたいだったわね〜〜)
 六道女学院同様に、横島くんの高校(仮名)のメンバーも、ゴシップに弱いらしいメンバーはこれまたコソコソ密談していた。
(で、ど〜すんのシロ? あの夏子って子が横島とおキヌちゃんの間に割って入ったりしたら、あんたにもチャンスが回ってくるんじゃない?)
(いや、それはそうなのかも知れませぬが……でも、それではおキヌどのが……)
(横島さんのこと、応援してあげたいなって思うんですけどね…………)
 マネージャーとしてさり気なく列に加わっている小鳩が、複雑そうな表情でポツリと言った。


 ぱっぱぱ―――――――、ぱ――ぱ――ぱ―ぱ――ぱ――ぱ――♪
  ぱらら――ぱぱ――――ぱぱ――――、ぱらら――ぱぱ――――ぱぱ――――♪
   ぱらら―――ぱ――ぱ――――、ぱ――――ぱ〜〜〜〜〜、ぱ〜〜〜〜〜〜♪


「あ〜〜、何度聞いてもこの曲は素敵っ! “あのクイズ”も復活しないかしら……」
 なんてそれぞれの思惑をよそに、愛子は愛子で第3の青春の結晶たる曲――この前愛子が出場して、全国まであと一踏ん張りのところで敗退したあの大会のテーマだ――に感激していた。なお、あまりの高音にブラスバンドは真っ赤な顔をしているのだが、その辺は追及してはいけない。


 さて、そんな開会式の中、来賓席と役員席でそんな思わぬ成り行きを見守る人々もいたりする。
「あらあら〜〜〜、横島くんったら子供の頃から女の子と縁があったのね〜〜〜」
「六道先生、もう野次馬根性丸出しですね……あまり面白がるものではありませんよ?」
「まあ、予想外のハプニングが起きるとウキウキしてくる気持ちは、分からないでもないけどね」
 ワザワザ役員席の端っこに座っていた六道理事長がやたら面白そうにしているのを隣の唐巣神父が憮然としてたしなめ、そのまた隣の美智恵がクスクス笑って応じている。
「でも横島クン、ここは男の見せ所よ? おキヌちゃんに対しても、令子に対しても……ね」
 今さら自分の娘のために横島とおキヌの関係をどうこうするつもりのない美智恵にしても、この大会に関してピートや愛子、あるいはシロのような直接的な熱意を抱いてはいなかった横島の尻に火がつきかけていることに対する、ある種の期待を抱いているのは確かである。

「……ま、私としちゃピートに言い寄る女がいなけりゃ別に構わないワケだけど」
 観客席の最前列で面白くも無さそうに開会式のセレモニーを眺めながら、ピッタリした白いワンピース姿の小笠原エミはさしたる興味も無さそうに独り言を言った。


「それで、どうするんですか横島さん?」
 色々と長ったらしい挨拶の飛び交う開会式を終えて更衣室で着替え中の横島(と言っても、いつも着ているGジャンとGパンに戻るだけなのだが――着慣れた服の方が霊力が馴染んで戦いやすくなるものだ)に、隣でこれまた動きやすい服装に着替えていたピートが尋ねた。
「どうするって…………もしかして、夏子の事か?」
「横島サンが夏子サン達にどう返事するのか、気になるところではありますノー」
「ひょっとして、昔好きだった子とヨリを戻せそうでラッキー、なんて考えているとか……」
「……そんな事は考えてねーよ」
 声をひそめて突っ込んだ質問をしてくるタイガーやジークに対して、横島はほんの少しだけ間を置きながらもポツリと否定した。
「あれ、横島くんにしてはあっさり答えたね?」
「どちらかというと横島さんの事だから、『両手に花が俺の理想じゃー!』とか言いそうなものだと思っていましたが?」
「あ、あのな……」
 昔それに類する言葉を言った事があった横島としては、とっさに反論する事ができない。

 今さらこういう事を言うのもどうかと思うが、横島忠夫はスケベである。最近はおキヌというステディな相手がいるのだが、それ以前の彼が女と見れば誰彼構わず声をかける、風呂や着替えをのぞく、エロ本やエロビデオに目を奪われる等々、やりたい放題していた(少なくとも、周囲にはそう見えた)のは周知の通りである。
 が、だからといって彼にとって全ての異性が“平等に”煩悩あるいは性欲の対象だったかというと、決してそうではない。女性に対する反応自体が首尾一貫していないというのもあるが、やはり見知った女性が相手だと彼女たちに対する一定のルールのようなものが見え隠れしている。

 で、そんな横島にも当然特別な異性というのは存在するわけで、彼にとって単なる無節操な煩悩の対象にはできない女性達がいるのだ。
 一人はあの道路標識の下での不思議な出会いから始まって、1年以上の時間を掛けて少しずつ絆を深めてきて、そして今お互いに気持ちを通じ合わせる事になったおキヌ。
 もう一人は、1000年前からの不思議な宿縁で結ばれていて、一時期は己の煩悩を全てさらけ出す事のできた三界一のくされ縁――クサっていると言われれば肯定否定が分かれるかも知れないが――美神令子。
 そして一度は世界の運命、あるいは自分が持っていた他の全てとハカリにかけるほどに深い仲になっていた……そしてそれ故に、喪失した事が一時期彼の心に大きな影を投げかけていた魔族の少女ルシオラも、横島にとってすれば特別な女性になるのだろう。
 もちろん、この三人以外の彼の周囲の女性達……例えばシロ、タマモ、小鳩、愛子、小竜姫、エミ、冥子、マリア、魔鈴、パピリオにベスパ、エトセトラエトセトラ。彼女達が別に平等に“その他大勢”という事は決してないのだが、それにしてもおキヌ・美神・ルシオラが横島にとって元々別格だったのは事実だ。彼がルシオラとの甘い生活をつかの間の休息として満喫していた時期も、美神やおキヌが“別格”の座から離れていたわけではないのである。


 ……さて、ここからが本題になる。ここにもう一人、横島の心の中では他の女性とは異なる立ち位置を占めている人がいる。前述の三人とはまた少し違った意味で“別格”……それこそが真田夏子である。横島にとって幼年期の終わりから少年期、そして思春期の始まりの時代に仲の良かった異性であり、小学校5年生の頃、つまり思春期を迎えた横島が最初に“異性”として意識するようになった……早い話が、初恋の人である。

 ちょうど“恋”に目覚める一方で“性”については本当の意味では分かっていなかった頃の、少年時代の淡い想いというものが、あの夕焼けの屋上で見た光景によって断ち切られてからもう6年余になる。その後何とはない微妙な気持ちを抱えたまま横島は東京へと引っ越し……そして知っての通りの煩悩少年へと成長していったのだが、その過程において夏子という少女の存在は、彼女に対して抱いた想いの淡さゆえに、横島にとって“特別”なものになっていた……らしい。

 だから横島としては、彼にとってある種の原体験になってしまった少女が、今いきなり生身の人間に戻って目の前に現れて、あまつさえもう一度やり直せと言ってきたところで困惑が先立ってしまうのだ。まして、それにうかうかと乗ってしまったら、いつも自分を暖かく包容してくれた黒髪の少女にどれだけのショックを与えてしまうかと思うと……


「乗り気なピートやタイガーに全部任せちまおうとも思ってたけど、どうもそうはいかないらしいなあ……」
 自分は裏方に徹して張り切っている悪友二人に華を持たせようと思っていたが、それでは夏子が納得するまいし万が一遅れをとったらそれこそ修羅場へ一直線だ。横島は、奇遇と言うには出来過ぎているように思える事の成り行きに嘆息しながら、試合に持ち込むための文珠を生成すべく手に霊力を集中させ始めた。


「あれは、まさか…………横島……だと……!?」
 そんな青春の苦悩真っ盛りな横島を人並み越しに見すえる視線に、横島も、ピート・タイガー・ジークの三人も気付かなかった。


『これより第1回・全国高等学校霊能選手権、一回戦の試合が始まります。実況は私、GS協会記録部広報課の枚方亮です』
 別に今回の全国大会は、GS試験同様お茶の間の電波に乗せたりしない。過去に一度GS試験を生中継で全国放送した事があったらしいが、放送開始後ものの数十分で中止になったそうだ。真相は公式には明らかにされていないが、『格闘シーンがあまりにバイオレンスで視聴者がバタバタと倒れたから』だとか『解説席に座ったGSがここぞとばかりに霊波をカメラに流し込んで自分のPRに利用したから』だとか、『あまりに強烈な霊波が飛び交ったので撮影したカメラが爆発する事例があったから』などなど、もっともらしい推測が水面下では囁かれたという。
『本日の解説は、オカルトGメン日本支部長の……』
『どうも、美神美智恵です。令子〜〜、見てる〜〜?』
『だだあ♪』
 去年のGS試験でも実況を務めていた役員の隣で、ひのめをヒザに載せた美智恵がカメラに向かって手を振っていた。
『あ、あの美神さん? あくまでこれはGS協会の記録用なのですが……』
『ジョーダンよ、ジョーダン。令子の事だから、きっとこのビデオを見たがると思ったのよ? まあ気にしないで、枚方クンってば』
『5年間死んだ事になっていた間、何があったんですか……』
 昔のこの人はもっとシャキッとした隙のない人だったけどなあ……と、実況の枚方氏は内心でボヤいた。


『さて、今回の参加校は17校でチーム数にして31チームですが……その辺り、どうお考えですか?』
『そうね、個人戦だともう少したくさん参加してくれたのかも知れないけど……今後チームで動くGSが増えるかも知れないから、こういうタイプの大会だって必要だと思うわよ』

 3人一チーム+コーチャーというスタイルは、例えばインカムと小型カメラを装備して無線で連絡を取り合いながら除霊作業をするGSのチームを想像すると分かりやすい。そして後方でコーチャー=指揮官が三人の様子をモニターしながら指示を出す……そういう科学的なスタイルも、一芸型の霊能力者の増加という風潮には対応しているのではないだろうか。そんなGS協会の判断が、今回のルールを創設させたと見ていいだろう。
 そういう事なので、横島くんの高校(仮名)vs六道女学院のテストマッチで明らかになったコーチャーの立場の不安定性については若干ルールを改正してあり、コーチャーに対して攻撃・補助を問わず霊能力で一斉の影響を及ぼしてはならない事になった(試合とは無関係の不慮の事故での負傷や、それに対する治療は別)。また、法円の外から中の選手に指示を出せるのもコーチャーだけ。つまり、コーチャーの役割は野球のベースコーチ的なものに限定される事になる。


「それにしても、壮観よね〜。野球やサッカーやクイズほどじゃないけど、全国から色んな学校の代表が集まっているのを見ると、やっぱりワクワクするわ」
 “横島くんの高校(仮名)”と案内板の置かれた待機ブースで、自分が戦うでもないのにウキウキしている愛子がキョロキョロと周りを見回している。
「そんなに大勢の猛者が集っているのでござるか?」
「ホラホラ、あっちが太宰府学園のチーム。見た感じ、留学生もだいぶいるみたいね〜。それからあっちが……」
 などと、方々渡り歩いたせいで仕入れた知識をここぞとばかりにシロ相手に披露する愛子。


 などと言っている間に、係員の女性とおぼしきアナウンスがスピーカーから流れてきた。試合の組み合わせは、審判長の唐巣が“ラプラスのダイス”を振って決めている。
『一回戦第1試合、東京都・横島くんの高校(仮名)Bチーム 対 京都府・新第三高校Aチーム! Aコートへ集合して下さい』
「え、いきなり出番? Bチームってことは、シロちゃん達の事なのね〜」
「おおっ、一番クジを引いたとは縁起がいいでござるなっ! よ〜し、張り切っていくでござるよっ!」
 呼ばれたBチームのメンバーのうち、シロが目を輝かせてパッと立ち上がった。
「開幕戦に呼ばれるなんて、むしろイヤ〜な予感の方こそしないのあんた?」
「わ、私もできたら3試合目ぐらいの方がよかったかな〜って……」
「当たったものは仕方が無いだろう? さ、行こうか」
 喜色満面のシロに続いて少々渋面を作ったタマモ、緊張気味のアン、そしてそんな二人を励ましながらジークが席を立ってAコートに向かって歩き始めた。
「先生、見ていてくだされっ!」
 一段高いところに設置されたコートに登る間際に、シロは横島の方を振り向いてビシッと親指を立てた。
『続けて一回戦第2試合、岩手県・遠野東高校 対 石川県………』
 なんてBコートの対戦カードを告げるアナウンスは右から左へ聞き流して、とりあえず横島達や隣のおキヌ達は、シロ達の試合を注視する事になった。


『新第三高校は学校単位で霊能の訓練こそしていませんが、歴史ある寺院や陰陽師の出身の生徒が多い学校ですから、前評判はなかなか高いですね。一方の……資料によりますと横島くんの高校(仮名)というのは、今年霊能愛好会という形で部が立ち上がったばかりだそうですが?』
『そうね、私は色々あってよく知っているけど、創部一年目にしてはなかなか面白いメンバーが揃っているわよ。この大会のダークホースってところかしら』
 と、解説席の美智恵はそれだけしか説明をしなかった。別にここであの学校の特異性を熱く語ってもいいのだが、そこまでしては公平を失する事になる。
(大丈夫よ横島クン。あの事件はもう終わった事だし、あなたの汚名も水に流された。後は、あなた次第……令子の下でこれからも実績と信頼を勝ち取りながら一緒にやっていくか、それともスッパリとあの事務所を離れて未知の可能性に満ちた道を求めるか……それくらいは考える資格はあるはずよ)
 と美智恵は心の中だけで横島に語りかけながら、途中でナチュラルに駄洒落じみた事を言った事に気付いた。


「それでは、互いに礼!」
「「「「「「お願いします(でござるっ)!!」」」」」」
 最初の挨拶は、法円の脇で行う。3対3の団体戦と言っても、チームでユニフォームを揃えているチームというのは少数派で、たいがいは各選手の流儀に合わせた服装をしている。現に対戦相手の新第三高校のチーム選手である3人の男子のうち、一人はいかにも古都・京都の学生らしく、平安時代の陰陽師のような白い狩衣姿で、手には霊刀とおぼしき刀を持参。もう一人はこちらは修験道でもやっているのか、錫杖を手にした山伏姿。最後の一人は……ごく普通のジャージ姿である。
 これが横高(仮)サイドになると、さらにバラバラ感は強い。キャプテン格の(と一人で意気込み、周囲も何となくそれを認めている)シロはノースリーブシャツに片脚を切り取ったジーンズ、スニーカーといつもの格好。その隣のタマモはTシャツにスパッツという夏らしい服装。最後の一人のアン・ヘルシングに至っては甲冑・盾・槍の三点セットのイージス・スーツ“ダビデ改”を着込んでいて、真夏の熱気に当てられて暑そうにしている。これから試合に臨むGSの卵と言われても、すぐにはピンと来ない取り合わせである。

「まずは拙者が“どっぷばったー”になるでござる! 文句はないでござろう?」
「ま、いいけど。でも一人で突っ走ってコケたって、面倒見ないわよ?」
「まーまー、タマモさんも穏便にしましょうよ。でも、危なくなったらちゃんと交代はしてよね」
 などと言い合いながらシロが法円の中央に進み出て、他方のタマモ・アン両名は逆に法円の脇に残った。コートの向こう側でも相手チームのうち狩衣姿の選手だけが法円の中に入る。


 そして、法円の中で二人が身構えたところで、出番待ちの選手達や来賓席・役員席・そして観客席の視線が集まる中で――

 カ―――――――――ン!!

 全国大会の幕を開けるゴングが高らかに打ち鳴らされた。


「犬塚シロ、推参でござる! でえぇぇぇ―――いっ!!」
 ゴングが鳴ると同時に、シロは右手から霊波刀を伸ばしながら素早くダッシュする。開幕戦というプレッシャーなどまるで感じさせない思い切りの良い動きは、対戦相手の意表を突いた。
「てやあぁぁぁぁっ!!」
「うっ!?」
 試合の組み立てに気を取られた相手は機先を制された。慌てて構えた破魔札は霊波刀で真っ二つに切り裂かれ、そのまま霊力の刃が右腕を切り裂く。
「ちぇすと―――っ!!」
 そして相手の横をすり抜けながら霊波刀で一文字に斬りつけてから、すかさず切り返して45度ぐらいの角を描く要領で反対方向に飛び上がりながら霊波刀を斬り上げる! 鮮血が派手に飛び散ったりはしないが、霊力の刃は相手にかなりのダメージを与えたようだ。


「やった! シロさん、いい先制攻撃!」
「長丁場のトーナメントで、いきなりエンジン全開にしていいと思ってんのかしらあのバカ犬?」
「いや、あれでいいんだ。長丁場だからこそ、一回戦から消耗戦は避けたい」
 リングサイドで出待ちをしているチームメイト二人は対照的な観察をして、それに対してコーチャーズボックスのジークは実戦的な評価を下した。


 ものの例えで言えば、高校野球の第一試合などは両者とも緊張しながら試合に臨む事も多いだろう。そんな時に、ピッチャーがのっけから思い切りのいいド真ん中ストレートをポンポン投げ込んできたりすると、バッターの方は意表を突かれて打てない事がある。シロがやった事はそういう効果があったらしく、本来の実力差はともかく試合の主導権はシロが掴んだ。
「せいっ! たあっ! やあっ!」
「あっ! うっ! なにィ!?」
 出鼻をくじいた一撃の後も、シロの果敢苛烈な攻撃は止まらない。相手選手は刀こそ抜くことができたが、後は防戦一方である。霊波刀を霊刀で受け流しながらも、ジリジリと押されてゆく。息もつかせぬ連続攻撃のうち何合かは、相手の身をかすめた。


「ひゅう! あの犬塚って娘、やるやないか。シッポがあるところを見ると、純粋な人間やのうて人狼かなんかやろうな」
「そうやね〜。霊波刀の出力も高いみたいやし、荒削りやけど素質は充分みたいや」
 さて、横島やおキヌといった東京組からは少し離れたところに、“市立天王寺高校”の待機スペースも当然置かれている。そしてそのチームのうちAチームのメンバーは、横島の後輩達に当たるシロ達の試合を観察していた。
「夏子ちゃんは、どう思う?」
「ん〜〜……」
 素子や望と違って黙って見ていた夏子に信之が水を向けると、彼女は視線を試合から動かさないまま少し考え込んだ。
「……あの人狼の子がええ筋してるのは事実や。霊力もウチの代表クラスと互角以上みたいやし。身体能力も高い。ま、問題があるとすれば……」
 夏子の視線の先には、法円の縁あたりまで対戦相手を追い込んでいるシロの姿がある。今まさに、ロープ際まで追い込んだ相手選手に対して霊波刀を振りかぶったところだった。

「御しるし、頂だ……いっ!?」
 物騒な事を言いながら最後の一撃を繰り出そうとしたシロだが、横から霊波が急接近してくるのを感じた。慌てて右を向くと、ジャージ姿の相手選手二人目が法円の中に飛び込みながら破魔札を3枚投げつけている。
「おぉっ! なんと、キャんっ!?」
 不意を突かれながらも霊波刀で2枚叩き落としたのは彼女の反射神経の賜物だが、それでも3枚目は右腕に炸裂させる事になってしまった。
「ぐっ! よ、横槍とは勝負に水を……わわわっ!?」
 文句を言おうとするシロだが、なおも投げつけられる破魔札2枚をギリギリで叩き落とすのが精一杯だった。

「……とまあ、あーゆーあたりやな。一対一でやり合う事に集中しすぎて、こう……なっとる嫌いはある」
“こう……”のところで、夏子は両手をそれぞれの目の端に立て、それを前に軽く突き出しながら“視界が狭い”といった意味のジェスチャーをした。


 思わぬ成り行きに、リング外の三人も色めき立つ。
「まずい! 今の一撃、思ったよりダメージが大きいぞ!」
「霊波刀の出力の上げすぎだわ……無防備の部分に直撃食らったみたいね」
「そ、それって大変ですよ!? 早く交代して、治療しなくちゃ!」
「シロくん、戻って来い! 交代するんだ!!」
「……くっ!」
 利き手から伸びている霊波刀が痛みでブレるのを見てとったシロは、ジークのコーチングもあって素早く決断する。次の相手と戦うのを避け、人狼ならではの機敏さを生かして後ろに飛び下がったのだ。無論ただまっすぐに下がり続けるのではなく、まず真後ろにワンステップ、追い討ちを避けながらジクザグに2歩目・3歩目。
「ほっ! はっ! でぇぇぇ―――いっ!!」
「うおっ!?」
 4歩目は縦に狙いを外すべく高くジャンプ! そして空中で一回転しながら着地し、今度は前に思いっきり飛び出した。そして、シロを追撃しようとしていた相手選手に霊波刀を思いっきり突き出した。

 バチンッ!!

「おわーっ!?」
 予想外の反撃に神通棍でブロックしようとするも、お互いのパワーが干渉した衝撃がそのまま相手選手をはね飛ばす! その間に、激突の反動を利用したシロは今度こそ自陣のコーナーまで戻る事ができた。
「オーケー! シロさん、あとは私に任せなさい!」
「くれぐれも油断めさるな、アンどの!」
 そして、体勢を立て直した新第三高校の選手が迫ってくるより早く、横高(仮)もシロからアンへバトンタッチする。
「ヴァンパイア・ハンター、ヴァン・ヘルシング家が4代目、アン・ヘルシング、行きまーすっ!!」
 ご丁寧にも彼女、法円にはいると同時に槍をまっすぐ地面に突き立て、名乗りまであげてから槍と盾を構えた。

 開幕戦の第二ラウンドは、神通棍と盾が正面からぶつかり合って甲高い金属音を立てる事で始まった。身軽な格好で連続攻撃を仕掛ける相手に対して、重装備に任せて盾や甲冑でそれを受けるアン。対して、構えた槍を次々と突き出す反撃に対して、ある時は神通棍で槍筋を逸らし、またある時はサイドステップで回避する。スピード剣士のシロと違いアンの戦いぶりは重装歩兵そのものであり、コート上は金属どうしの衝突する音が鳴り響き続ける。

「互角……と言うより、膠着状態ね。あっちはあっちで次の準備してるみたいだし、あんまりいい感じじゃないわよ」
 リングサイドのタマモが指差した先では、まだ法円内に入っていない新三高の3人目・山伏姿の選手が最初の選手・陰陽師風の青年にヒーリングとおぼしき術を施していた。
「シロくん、治療はまだ終わらないのか!?」
「ちょ、ちょっと待ってくだされ! 自分で自分を治療するのは、これでなかなか手間がかかるのでござる!」
 ジークに叱咤混じりで呼ばれたシロは、先ほど破魔札を食らった右の二の腕を嘗めながらそう反駁した。
「……という按配だ。タマモくん、三番手は頼めるかい?」
「オーケー。真打ちはやっぱり最後に登場するものよね」
 ちょっとだけハードボイルドな笑いを浮かべながら、親指をピンと立てるタマモ。が、その場にいたもう一人が猛然と反発する。
「あ゛〜〜! そ、それはないでござろう女ぎ……タマモ! 拙者やアンどのに労苦を押しつけて自分だけ功名手柄を狙うつもりでござるか!?」
 公衆の面前でうっかり“女狐”と言いかけて、慌てて訂正してから文句を続けるシロに、タマモは今度はイタズラ好きの浮かべる笑いを見せた。
「……ジョーダンよ。華ぐらいはあんたに持たせてあげるわよ、ちょっと耳を貸しなさい」
 自分の右腕をベロベロとなめながら顔を近づけてくるシロの耳に、「いい? あんたは……ヒソヒソ」と、タマモは小声で作戦を吹き込んだ。


「う〜〜む、決め手がなかなかありませんノー」
「『ダビデ』から色んな内蔵武器を撤去しちゃったの、やっぱりまずくなかったかしら?」
 少し離れた待機ブースで、タイガーや愛子らAチームの面々もハラハラしながら年少者3人の戦いぶりを見守っていた。
「いえ、あれでいいんです。バンパイアだけでなく様々な悪霊や妖怪、あるいは魔族と戦うのなら、機能は絞り込んで守備力を強化した方が彼女のためになります」
「大体のところ、あんまり効果無かったもんな……アレ」
 以前アンがピートを襲った時に繰り出された“盾から十字架型の魔力放射”だとか“ヘルメットからビーム”などを思い出し、ちょっと遠い目になる横島。
「でも、あんまり長期戦になるとアンちゃんの分が悪くなるかもね〜」
「え? そうなんですか?」
「特殊合金製で軽量化はしてても、結局は甲冑だからな。あれだけの重装備で動き回ってると、霊力はともかく体力の方がなあ……」
「重そうやもんなあ、アレ」
 重たげな槍や盾を振り回すアンの姿に、小鳩の影で姿を隠したままの貧乏神も軽くため息をつく。
「とにかく、一発当たれば大きいかも知れないけど、当たらないようだと逆にアンちゃんが不利になるわね。となると、やっぱり……」

 バシィッ!!

「おっ!?」「あ?」
 さっきまでの金属音とは明らかに違う音響に、批評していた待機組も一斉にそっちの方角を見た。


 先に長期戦に根負けしたのは、相手の側だった……と言うより、交代間際にシロが食らわせた一撃が響いた。動き回って攻撃と防御を繰り返した結果、霊力と身体がほぼ同時に悲鳴を上げたのだ。これでも子供の頃から、事情はともあれ“打倒・ピート!”を目指していたアンがその隙をそうそう見逃すはずもない。
「でぇぇ―――いっ!!」」
「ぐっ!?」
 横殴りに薙ぎ払われたランスの中程が、初めて相手をまともに捉えた。柄とは言っても金棒のようなもの、重量に任せた衝撃と槍が帯びた魔力と霊力によろめいてしまう。そして、そこに踏み込んで左手を突き出してくる甲冑姿の少女。
「もう一発!!」
「だぁぁっ!?」
 体勢が泳いだところに、追い討ちに盾でぶちかましを食らい、今度は後ろに吹っ飛ぶ。さらに、再び槍の穂先が突きつけられ……その柄の途中で、小さなフタが開く。
「とどめぇっ!!」
 改造にあたって様々な内蔵武器を廃止した『ダビデ改』のうち、唯一残してあった霊波弾発射装置が、ここで火を吹く。満を持して発射された霊波の弾が二発、またもや命中した。
「やった……?」
 霊波が炸裂した事で発生した土埃と霊気のモヤを見据えながら、それでも彼女はランスの穂先を下ろす…………が、
「!?」
 視界が晴れてくると同時に、大量の破魔札が投げつけられてきた。その向こう側では、フラつきながらも自陣のコーナーに駆け戻る相手の姿がある。
「わわわ、わあっ!?」
 アンが盾をかざして破魔札の直撃から身を護っている間に、追いつけない間合いに逃げられていた。
「しまった!?」
「アンくん、戻れ! タマモくんと交代だ!」
「……は、はい……!」
 破魔札乱れ打ちをしのいだ所で、背後からジークの声が届いた。


「うっわー、全国から集まった連中ってのも、やっぱり強いのが集まってるよなあ」
 六道女学院のブースで、その一進一退の攻防を凝視しているのはおキヌとそのチームメイト達である。
「あっちの新第三高校……だっけ? あっちは、戦闘要員2人にヒーラー1人ってシフトらしいね。ほら、最初の奴がまた出てきた」
「……ちょっと、まずいかな? うちのチームでヒーリングが人並み以上にできるのって、氷室さんぐらいのものなのよね」
「個人能力優先でメンバー選んでたからねえ、私達……」
「だ、大丈夫ですよっ! ヒーリングだって限界はありますし、やってる方だって霊力は使うんですから!」
 おキヌの励ましは、まるで励ましになってなかった。


「さ〜て、一つやってみましょっか」
 そして、横高(仮)チームの三番手、タマモがリングに入って先ほどの陰陽師風の選手と対峙する。剣士らしく隙の無い構えをとったシロとも、全身を甲冑で固めたアンとも違う、無造作にリング上に立っている姿は、明らかに前線向きのスタイルではない。
「うおおお――っ!」
「……っと、ノンビリ構えてるわけにもいかないわね」
 向こうもそれを見てとったのか、刀を構えて突っ込んでくる。タマモは表情を引き締めながら右手に霊力を集中する。ほんの僅かなタイムラグを経て、右手の指先から子どもの頭程度の大きさの火の玉……いわゆる狐火が現れた。
「それっ!」
「うっ!?」
 そして、すかさずその狐火を投げつける! 突っ込んでくる所へ火の玉が襲ってきてはさすがに避けきれない。とっさに狐火を刀で切り払ったが、完全に四散はされずに炎の余波がその身を焦がした。
「くっ! てえぇぇ―――い!!」
「おっと」
 怯まずに振り下ろされた刀の一撃を、タマモは妖狐らしくフワリとしたジャンプで避けた。そして、すかさず牽制に狐火を一発投げつけた。
「さてと……それじゃ、始めよっかな」
 そうやって試合をゆっくり進めながら、彼女は気取られないように霊力を集中させ始めた。

 対する新第三高校から見ると、目の前の金髪の少女は先ほどの二人に比べると与しやすい相手に見えた。最初のシッポの生えた少女は一流アスリート並の俊敏さで霊波刀を次から次へと繰り出してきたし、次の留学生らしき少女は霊力こそ低かったが、霊能用の武具でガッチリ身を固めて隙をなかなか見せなかった。
 この二人に比べると、三人目……タマモは、重装備をしているでもなくシロほどの身のこなしもない。となれば、火炎術をかいくぐって接近戦に持ち込みさえすれば勝てる……と、彼は考えた。
「うおおおお――――っ!!」
「つっ……!」
 だから、飛んでくる火球を刀で打ち払いながら、逃げ回るタマモ目がけていっさんに斬りかかる。まるでイタチごっこのような攻防を繰り返していたものだから、彼はほんの僅かな違和感に気付かなかった。

 さて、そんな攻防を鋭く見つめる狼の目が一対。
「ケガの方は大丈夫かい、シロくん?」
「……こんなものでござろうな」
 ヒーリングの終わった傷跡のニオイを嗅いで具合を確かめてから、シロは右手をブンブンと二、三度振った。
「分かった。それじゃタマモくんに合図を送るぞ」
「あ、言葉にはせぬ方が」
「分かってる」
 シロの注意にそう答えて、ジークはごく小さく口笛を吹く。それが聞こえたのか、リング上のタマモはほんの少しだけ目配せをした。


 身軽にヒョイヒョイ逃げ回りながら火球を放ってくる相手を追尾している間に、ついに状況が変化した。斬りつけた一太刀をまたかわして、金髪の少女は再び火を投げつける……

 ………………。

「えっ!?」
 が、振るわれた右手からは何も出て来なかった。彼女は信じられないような表情で右手を呆然と眺める――そこに、隙が出来た!
「でやあぁぁ――――っ!!」
「しまっ……!?」
 彼女が戸惑っている隙に素早く駆け寄り、ついに刀の間合いに! そして、フルパワーの霊力を込めて、大上段から袈裟懸けに――――

 ザシュッ!!

「――――――!!」
 ――斬り下げた。斬られたナインテールの少女は、血を激しく吹き出しながらスローモーションで仰向けに倒れていく……


「………………えっ!?」
 そして、その派手な流血のショックから我に返った時。そこには誰もいなかった。
「な、なんだ今のは……はっ!?」
「隙ありぃぃ――――っ!!!」
 ワケが分からないまま気配の方向に向き直ると、最初に手合わせした尻尾付きの少女が既に至近距離にまで間合いを詰めていた。
「ろーが・はざぁぁ――――んっ!!」
 あまりな事態の変化に対応できないうちに、シロのジャンプしながらの斬り上げで真上にぶっ飛ばされ、さらに返す刀で切り下げの一撃を食らって地面に叩きつけられる! さらに間髪入れず、もう一度飛び上がりながら空中で彼に幾度に渡って霊波刀の刃を食らわせ、さらに地面に着地するが早いか突きのラッシュ! そして、とどめの刺突が彼の胴にまともに入った。
「どわ――――っ!!??」
 そして彼は、何が何やら分からないまま地面に倒れ伏したのである。


 幻術と一言で言うが、実際はさらに二つに分けられる。
 一つは“幻影”とでも言うべき術であり、これは霊力でその場に極めて真に迫ったホログラフのような像を生み出し、相手を幻惑する。例えて言うなら、カメラの前にカキワリの絵を用意する事でモニターの向こうにいるであろう目を誤魔化すような物だろう。この術の利点は相手の霊力・魔力など関係なしに幻惑する事が可能な事で、その気になれば一つの幻影で多数の対象を一斉に惑わす事ができる点もある。こうした“幻影”系の幻術を得意としたのはあの蛍の少女・ルシオラである。が、こうした幻影には無論攻撃力はない。
 そしてもう一つは霊力で直接相手の感覚や神経に介入し、幻を見せる……いわゆる“幻覚”である。タイガーの精神感応、あるいは神野の心理攻撃、そしてタマモの幻術もこれに分類される。この術はカメラの回線に直接介入して偽のデータを送り込むようなもので、まず相手に効くか効かないかが問題になるが、一度効いてしまえば相手が幻覚だとハッキリ確信するか術が途切れない限りひたすら化かされ続ける。そして強力な暗示を伴う幻覚の中で攻撃を受けたりすると、相手は本当に“やられた!”と信じ込み、ダメージを受ける事すらあり得る。もしあまりに強い暗示として心臓を刃物で刺される幻覚など見せられたら、本当に心臓が止まってしまう可能性すらあるのだ。

 ……とまあそういう具合で、新第三高校の選手の彼はタマモを斬ったつもりになっていたが、実はその部分はタマモに見せられた幻覚だった。そして我に返ると同時に、その間にタッチを受けていたシロの攻撃を食らった……というのが種明かしである。が、彼は化かされた事に辛うじて気付いたのみで……

 カンカンカンカンカ――――ン!!

 試合終了を告げるゴングがけたたましく鳴っていたのである。無論、シロ達のKO勝ちである。


「やった〜! やったでござるよ〜〜!! 見ててくれたでござるか、せんせ〜〜!?」
「どわああっ!? だ、だからよせって! こんな公衆の面前でっ!!」
「舞い上がったコイツは毎度毎度こうなの、横島が一番知ってるでしょうに? いい加減、犬にでもジャレつかれてると思って諦めたら?」
「拙者は犬ではござらぬ〜〜! 先生もこ奴に何か言ってやるでござる〜〜!」
「あ゛あ゛〜〜! だからやめなさいっ! おキヌちゃんの前なんだぞ〜〜っ!?」
 などとまあ、勝利の喜びをこういう形で爆発させるシロの姿に、事情を知らない周囲の選手や観客は少々驚き気味なわけで。


「……狼っつーより、犬っぽいな」
「犬やな」
「ホンマに、犬やねえ」
 少し離れた所で見ている市天Aチームの三人娘も、そんなシロと横島の様子を呆れ半分で観察していた。


「横島さんたちの高校って、2チーム目もバカにならないわね」
「確かに。1年生ばかりだとか甘く見てると足元すくわれるね、アレは」
 そして、こちらは横島たちの隣でその騒ぎを横目にみている六道女学院ベンチ。ピートにタイガー、それに横島の実力のほどはよく知っていたが、年少者たちも自分たちとほとんど遜色ない実力を持っているのは無視できない。
「こないだの臨海学校の時は除霊に手一杯で、気にしてる余裕はありませんでしたけどね」
「氷室さんの知り合いなら、ウチの学校に入ってもよかったんじゃないの?」
「そうなのよ〜。お母さまもシロちゃんとタマモちゃんを勧誘したがっていたのよ〜? でもあの二人、横島くんと同じ学校がいいって言って断っちゃったんですって〜」
 例によって裏面の事情をポンポンしゃべる冥子。この前の対抗戦からこっち人格的に成長しているのは間違いないのだが、口が軽いという本質はそう簡単には改まらないということなのだろうか。

「……あ、あのさおキヌちゃん」
「はい?」
 今の冥子の暴露話を聞いた一文字が、少しだけ表情を硬くしておキヌに顔を寄せた。
「ひょ、ひょっとしておキヌちゃんも、横島の高校に行きたいとか思ってない?」
「……は?」
「いや、だからさ、あっちのシロちゃんとかタマモちゃんとかが横島の高校に通ってるんなら、自分もやっぱりあっちに転校して横島と一緒の学校生活を送りたいわ♪ な〜んて考えてるとか……」
「え、そ、それって本当?」
「それは、まさかですよ。確かにこの学校に転校するちょっと前に“横島さんの学校でもよかったのに”って思いましたけどね」
 何人かの視線がパッと自分に集中するが、おキヌはさほど慌てるでもなくそう答えた。
「私、六道女学院のことも、学校の皆さんのことも好きなんですから――横島さんに対する“好き”とはまた違いますけど――転校したいなんて事は考えてませんよ。それに」
 言いかけて、おキヌの目が横島の方をチラリと向く。
「……それに?」
「学校が別々だと横島さんとの距離が離れちゃう、なんて考えていませんから……私」
 ニコッと笑いながら彼女がそう言い切った次の瞬間、『ヒュ〜〜〜〜』という口笛がいくつか飛んだ。


『一回戦第3試合、東京都・六道女学院Bチーム 対 鳥取県・八木橋高校! Aコートへ集合して下さい。続いて一回戦第4試合、東京都・六道女学院Cチーム 対 奈良県・和州高校! Bコートへ……』
「あ、出番だわ」
「ん〜残念、もう少し氷室さんのノロケ話を聞いていたかったのに〜〜……」
「桜井先生、それって教師の発言すべき事ですか?」
 アナウンスに呼ばれたので、六女のメンバーのうち8人。Bチームが峯・神野・クリス&鬼道、Cチームは花園・白崎・松田&桜井の面々がそれぞれ席を立った。

 さて、彼女たちが待機スペースを離れた後、残ったおキヌの表情が少しだけ曇る。
「自信……少しは持っていいと思うんです。ただ……」
「ただ、あの真田さん達が本気で割り込んでこられたらどうなるか分からない……かしら?」
 彼女の独り言を耳に挟んだ弓かおりが、おキヌの隣に座り直しながら言葉を継ぎ足した。
「まあ確かに、横島さんはあの通りの性格ですから……遠慮なしに色仕掛けでもされたらどうなるか分かりませんものね」
「そうなんですよ。別に浮気性とかスケベとかそんなんじゃなくって……女の人の気持ちには、ちゃんと答えを返す人ですから、横島さんは」
「な〜るほど。自分以外の誰かが本気で気持ちを伝えたら、横島もそれに“本気”で応えちまうんじゃないかって事か」
 弓とは逆隣に、今度は一文字が腰を下ろす。
「ま、そこはそれ。勝つのが一番手っ取り早いと思うな、あたしは。そうすれば、おキヌちゃんの気持ちの方が強いんだ〜って事を証明できるんじゃないのかな。大阪の連中だって、負けたら身を引くって言ってるんだからさ」
「同感ですわね。事ここに至ったら、あとは前進あるのみ! なんと言っても、二人は究極的な意味で“身体を許しちゃった”仲なんですから!」
「あ、あ、あの弓さん、ここでその話は〜〜……」
 対抗試合の後明るみに出て密かなゴシップの種になった“入れ替わり”の一件を蒸し返されて、おキヌは泡を食って両手をワタワタと振り回した。


「ハイハイ、そろそろ落ち着いて! 六道女学院のみんなの試合、ちゃんと見なくちゃ」
 再び視点を横島達に戻すと、まだ横島にジャレついているシロを引き離しながらリーダー格の愛子がまだはしゃいでいる面々を制していた。
「この大会はトーナメントなんだから、他のチームの研究なんかもしなくちゃダメよ? 特に横島くんをなめ回すのに夢中のシロちゃんに、女の子にばかり視線が行きがちな横島くん」
「あのな……お、俺だって他の試合ぐらいはそれなりに見るぞ? GS試験の時だって六道女学院のクラス対抗戦だって……そりゃ確かにキレイなねーちゃんの出る試合を優先的に見てはいたけど
「……ダメじゃん」
 これでも昔ほど無節操ではなくなっているんだけどなあ……と、愛子は内心ため息をつく。おキヌからすれば、誰にも目移りしない横島というものをそこまで切望していないのかも知れないが……少なくとも、今のところは。
「まあ、この2試合はまずおキヌちゃんのお仲間達が勝つと思うのね〜。よっぽどおかしなミスをしなければ、だけど」
「……分かるの、ヒャクメさま?」
「まあパッと見た感じだけだけど、あっちのチームは三人とも霊圧が弱いのね〜。たぶん、対戦相手の5割から7割程度の霊能力だと思うわね」
 と、まず峯・神野・クリスチームと対峙する対戦相手を指さしながらそう論評するヒャクメ。続いて彼女はBコート、つまり花園達の方に指を移しながら、
「逆に向こうの対戦相手は、リーダー格の人は六道女学院チームと同じくらいの霊力だけど、あとの二人は素人に毛の生えた程度の実力しかないみたい。一人で頑張って勝つつもりなんだろうけど、それで勝ち上がれるほど生やさしい相手ではないのよね〜、六道チームって」
「……そうなのか、ジーク?」
「だと思うよ。心眼の数こそ制限されているけど、ヒャクメの霊視は信頼できると思うから」
「…………………………そうなのか?」
「その間は何なのっ!?」
 なにせ横島はアシュタロスがらみの一連の事件でのヒャクメのオタつきぶりを目の当たりにしたものだから、チームメイトほど彼女の手腕に全幅の信頼を置けないという事情もある。そういうわけで、後は自分の目で確かめるべく試合の観戦に集中する事にした横島である。


 もっとも、ヒャクメの見立てはまず正鵠を射ていたらしい。

 まず、Aコート。
「いただきっ!!」
「ぐっ!?」
 2年G組チームの3番手・クリスティン峰が八木橋高校の3番手(男子)の反撃を払いのけて、その頭を右手でむんずと掴んだ。と同時に、クリスの軽い癖のある金髪がザワザワと逆立ち、全身から霊波が放たれる!
「雷・獣・変化っ!!」
 そして瞬時にして、レオタード姿に身を包んだ彼女の肉感的な身体は逞しい獣人のような姿に変身する。そして、相手の頭を掴んだままの右手から、霊力が電流の形をとって放出された。

 バチバチバチッ!!

「あがだだだだぁっ!!??」
 感電した対戦相手は悲鳴とともに崩れ落ちた。ケイレンしながらも動かないところを見ると、どうやら失神したらしい。

 カンカンカンカンカン!!

「Okay! I made it!」
 ゴングが鳴らされたところで、方円の外の仲間二人に向かってクリスはビシリと親指を立てた。


 続けてBコートはというと、これまた六道女学院側が危なげのない試合をしていた。

 ガキィィィン!

「ぐっ!?」
 和州高校のエースがいくら六女の代表メンバーとほぼ互角とはいえ、独りでは無理が出て当然だろう。花園玲にキョンシーをけしかけられて消耗させられ、続いて白崎咲夜のイージス結界に取り込まれて霊力を削り取られ、とどめに三人目・松田悠里の神通棍が“彼”の手から神木刀をたたき落とした。拾いに行く暇もなく、すかさず彼女の神通棍がのど元に突きつれられる。神通棍のその先には、前髪の間からチラリとのぞいている三白眼気味の双眸が彼を見据えている。
「どうする? 続ける? それとも、この辺でやめておく?」
「…………参った」
 霊力と武器を二つとも失っては抵抗のしようがない。ギブアップを選んだのは理性的な判断なのか、諦めが良すぎるのか。

 カンカンカンカンカ――――ン……

「ま、油断さえしなければこんなところかな」
 アメリカンらしく開けっぴろげに喜ぶクリスとは対照的に、悠里は神通棍を素早く畳んできびすを返し、出迎えるチームメイト二人と桜井先生に向かって軽く右手を挙げた。


「うっへぇ、レベル高ぇ……去年のクラス対抗戦よりずっとレベル上がってるじゃねーか」
 この二試合を見ていた横島の第一声がこれである。
「でも、この前の対抗試合の時の彼女達の事を考えると、あり得ないレベルだとは言えないと思いますが」
「負けず劣らずハイレベルなのは否定しませんがノー」
 霊力が上がろうが新技を会得しようが愚痴と弱音がむやみやたらと多いのは横島という男の変わらない性なのかも知れないが、そういうところが一種の清涼剤になっている事をピートもタイガーも知っている。
「それに、六道女学院って元々レベルが高いと思いますよ? あれぐらい高度な能力を持ったチームは、そんなに多くないんじゃないかって思います」
「でも、有名校はやっぱり要注意よ? GS試験でいいところ行ったからって、高校のトップクラスを甘く見ちゃダメね」
 直接的な戦闘員ではない愛子が三人を軽くたしなめるのは、除霊委員以来の名物カルテットのほほえましい一幕と言えるかも知れない。

『…………一回戦第6試合、東京都・横島くんの高校(仮名)Aチーム 対 福岡県・太宰府学園Aチーム! Bコートへ集合して下さい……』
 そうこうしている間に、次の試合スケジュールを告げるアナウンスが4人の耳を打った。
「……げ、言ってるそばから順番か?」
「しかも対戦相手の学校名、確か……」
「太宰府学園ね。六道女学院、市立天王寺と並ぶGS養成の大手校だわ。いきなり強敵よ」
 コメカミに人差し指を押しつけてため息をつきながら、愛子がそう解説してくれた。
「何じゃそりゃ〜〜!? 何でいきなり、そんな優勝候補と当たらなきゃならんのや〜〜!?」
 一回戦から相当の強敵に当たれば、誰しも天を仰ぎたくもなるだろう。まして横島の場合、下手に初戦敗退なんてしようものならその後の夏子vsおキヌの構図に対して何も言えなくなってしまうのだから尚更である。


『これは一回戦から注目のカードです! 優勝候補の一角・太宰府学園と本大会の台風の目……ピエトロ・ド・ブラドー選手を擁する横島くんの高校(仮名)の対戦です!』
 実況席で昂奮した声をテープに吹き込む枚方に、隣の美智恵はピクリと反応した。
『あら? ピート君が台風の目なの?』
『そりゃあ、そうですよ。GS協会での前評判だとシングルの選手としては最有力選手で、個人戦なら優勝候補筆頭だって言われているんですから』
 役目柄そういう下馬評に詳しいらしい枚方は、確信に満ちた表情でそう答えた。
『でも……ほら、去年のGS試験の時なんかは、ピート君よりチームメイトの横島クンの方が勝ち進んでるみたいよ』
『そうなんですが、後で冷静になってビデオを見直してみると、横島選手の勝ち方はどう見てもマグレですので……』
『…………なるほど』

 ふと、自分が横島に初めて出会った時の事を思い出す。自分の感覚で18年前に邂逅した、ちょうどGS試験を合格した直後の横島は、確かに霊能の基礎をちょこっとかじった程度の素人だった。そのGS試験も奇跡的にカオス・九能市・陰念に勝ち抜き、雪之丞と引き分けてのベスト16だったそうだが、ビデオで見たその戦いは相手の自滅に助けられる形のものが多かった。

 あれから1年。彼は能力的にも人間的にもかなりの成長を遂げたのだが、その事は社会的には認知されていない。そもそも、一般の市民から見た横島は雇い主の令子にこき使われるスケベでバカなアルバイトの従業員に過ぎない。そうでないことを知っている人達はごく限られていて、世間のうちでは美神令子という太陽の周りの小惑星程度でしかない。

 そもそも、横島が大活躍する状況というのは高位の妖怪だの神族・魔族が関わるような大事件が専らで、普段の日常的な、逆に普通の人達の目に留まりやすい除霊は、令子が悪霊をブッ飛ばすためのサポートに徹している事がほとんどである。別に、彼女に他意があるわけではない。ただ令子のモットーは“スリル&ビッグマネー”であって、従業員を使うだけで自分は濡れ手に粟という稼ぎ方は好まないのだ。だからなおのこと、美神事務所というのは「令子+その他大勢」というイメージが強いのである。もっとも、意外と寂しがり屋な彼女の深層心理として、『横島達をメジャーにしたら、自分のところから離れてしまうかも知れない』というのがあるのかも知れない。

 せめて、見る目のある外部の人間が彼らの姿を広く紹介してくれれば横島の評価も上がるのだろうが、マスコミはあまりオカルト業界の報道に熱心ではない。かつて横島が魔族の手先“ポチ”としてお茶の間を騒がせていた時はさんざん報道されたものだが、美智恵がオカルトGメンとGS協会を通して彼の潔白を証言したとたんに彼の報道はパタンと止んでしまい、横島忠夫という男の実像が広く知られることは全くなかった――せっかくの世界的な報道誌でさえ、南極から帰ってきたメンバーのうち美神・エミ・冥子、それにピートばかり取り上げていたものである。

 マスコミ各社が彼のことについてまるで取り上げないのは、オカルト関係を公共の電波や紙面に載せることで悪影響が出ることを嫌っているからだろうが、あるいはかつてTV局がこぞって美神事務所に法外な報酬を取られたついでに多大な損害を出した事も影響しているのかも知れない――横島&おキヌのコンビが挑んだ最初の依頼・放送衛星のグレムリン退治の結末が――

(令子ったら、そこまで計算した上で横島クンのことを操縦しているのかしら? ……まさかね、たぶんそこまで考えてはいないんでしょうね)
 そんな事を、美智恵は心の中で計算していた。
『あ、あの美神さん、どうしました?』
『え? ああ、何でもないのよ。まあ何はともあれ、この試合は注目ね』
『あ、でももう一つの試合も放っておいてはいけないんですが……』
『……ああ、第5試合の方ね? ええと……』
 横島達だけに肩入れできないのは美智恵の泣き所のようだ。


「さ〜て、まずは横島のお手並み拝見と行きますか」
 まだ試合の順番が回ってこない市天Aチームの一人、素子が腕組みをしながらBコートの脇で試合前の礼をする横島達6人を眺める。
「せやけど、横っちの試合の相手、いきなり優勝候補の“太宰”やね。いきなり初戦敗退なんてしたら、夏子どないする?」
「どないしたモンかな〜。まあ私らやおキヌちゃん達かて緒戦落ちの可能性があるから、今は何とも言えんけど……」
 何とはなしに神通扇で肩をポンポンと叩きながら、夏子は少し空を眺めつつ考える。
「もし私らやおキヌちゃん達に比べてお粗末な成績やったら、ウチらで鍛え直してやるのも悪くないかも知れんな。どこのGSに教わったのか、ようは知らんけど」
「夏子ちゃんも気の早いことやねえ。6年間の時間、ここぞとばかりに取り戻したいん?」
「……ま、泥縄な事を言うとるって自覚はあるけどな」
 後ろの信之がそう混ぜっ返したので、夏子はそうフォローした。

「いきなり大勝負だよな、横島のヤツ。西の太宰って言えば、東の六道とどっこいどっこいの大どころだろ?」
 これまた出番待ちの六道女学院Aチームのメンバーも、まずはこの試合に注目していた。
「卒業生のうちかなりの数が海外でGSになるそうですけど、国内で開業する卒業生も決して少なくないそうよ」
「のっけから強敵だな。大丈夫かな、タイガーの奴?」
「大丈夫よ〜。だって横島くんにピートくんにタイガーくんなんだもの〜」
「あ、あはは……冥子さんに同感ですけど、口に出してみるとなんだか頼りないですよね……」
 口調とは裏腹に、おキヌの両手はギュッときつく握られている。


「ななな、何なんじゃあの連中は〜〜! 全員刀ブラ下げとるやないか〜!? 銃刀法はどこへ行ったんや、銃刀法は〜!?」
「お、落ち着いて下さいよ横島さん!? GS試験の時も、登録さえしておけば霊刀の類はOKだったでしょう?」
 相手チームが全員日本刀に直剣に青龍刀と刃物持ちだったので、いきなり横島はビビっていた。
「は〜……横島くんの除霊ぶりを全部知ってる訳じゃないけど、腰が少し引けすぎてない?」
「う〜ん、横島サンは最初はこんな感じのことが多いからノー」
 本当の意味での横島の本領発揮を目の当たりにしていない愛子からすれば、彼のオタつきぶりは少し心配になるものらしい。もっとも彼の態度は、修羅場を一緒にくぐりまくったピートやタイガーにとってはさほど奇異なものでもない。敢えて言えば、新たな敵超人の登場にビビるキン○マン程度のものだろう。

「それにしてもあの人達、ピート君ばかり見てたわよね。会場の声援もピート君あてのものが多いみたいだし、やっぱりピート君が一番マークされてるのかしら」
「……視線は今でも感じますね」
「何やら、コーチャーの人が『あのバンパイア・ハーフは要注意だ』とか『あとの二人は大したことはないから、あの金髪をまずつぶせ』とか言ってますノー」
 霊力とは関係なしに聴力もなかなかのものらしいタイガーが、そんな事を報告してくれた。
「あ〜はいはい、敵にもギャラリーにもモテモテでようござんしたねぇ」
「横島くん、いつもいつもそればっかりね? まあ、実力行使に走らないのは成長の証かも知れないけど」
 女運に関して言えばピート君より上のような気がするんだけどな〜……と、これまた内心ため息をつく愛子。
「……で、作戦だけど。向こうがピート君をマークしてるんなら、そのままマークさせておいた方がいいわね。何たって長丁場のトーナメントだもの、タイガー君の精神感応や横島くんの文珠なんかは使わずに済ませたいわ」
「やれやれ……つまり、僕に見せ場と称した出番を増やせって事ですか」
 愛子の言わんとすることを先取りして、ピートは嘆息しながら法円に入る。と同時に、スタジアムの方から黄色い歓声がいくつかあがった。その中の一つは、『アレは私のモンよ〜〜〜〜!!』と叫ぶ小笠原エミのものだったような気もしたが……ピートは聞かなかったことにした。


 同時刻、東名高速道路を爆走する一台の車があった。日本広しと言えども片手で数える程度しか存在しないであろうシェルビー・コブラである。
「あ〜〜もうっ! 何だってこういう時に限ってうっかり寝過ごしちゃうのよ、私は〜〜!!」
 クラクションを鳴らしながら猛烈なスピードで前をゆく車を次々と抜いてゆくが、あいにく夏の行楽シーズンだけあって交通量はなかなかのものだった。
「こら〜〜! オービスにビクついてノンビリ走るぐらいなら、道を譲りなさいよっ!! こんな事だったら、荷物を犠牲にしてでもカオス・フライヤー2号で飛んでいくんだった〜〜!!」
 どうやら運転席の美神令子、少なくとも横島の試合には間に合いそうにないようである。


 〜〜後半へ続く!〜〜


 あとがき、というよりなかがき


 本当に、ホントーに、ほんっと〜〜にお久しぶりになってしまいましたいりあすです。何だかスランプにでもなったようで、アクションシーンを書くのにとんでもなく手間取ってしまいました。幸か不幸か、いりあすの一身上には重大な何事かは起こりませんでしたので、ここに第2話を投稿する事ができました。
 とは言え、一話が相当長くなってしまいましたので、前半と後半に分割して投稿させていただきます。後半は24時間ばかり置いてから掲載したいと思っています。


 前話のレス返しも、遅まきながら今のうちに書かせていただきます。


>平松タクヤ様

 巫女服の端切れをバンダナにしてプレゼントするというギミックは、実は没にしたショートものから引っ張ってきたアイデアだったりします。
 横キヌvs夏子の直接対決をどういう形で始めるかは、まだ明らかになっていませんがw


>月夜様

 夏子のバンダナについては小説版で出てくるそうですが、実はいりあすは小説版を読んだ事がありません(汗)
 彼女の若干先走った言行については、“元々横島には自分達の気持ちを伝えたものと思ってた”という長年の思い込みが先立っていたので、告白より先に宣戦布告が口に出てしまったものとお考え下さい。


>スケベビッチ・オンナスキー様

 いや別に計算尺でなくてもよかったんですけど、小鳩と愛子って一昔前のツールを普通に使ってる印象があるんですよね。理由はそれぞれ異なりますけどw
 弓とユッキーについては……多分、横キヌに触発されたんじゃないかなあと思ってみたりww


>零式様

 実は市天の3人が、夏子の言っていた“横島との事を占おうとしたコックリさんのせいで霊障に巻き込まれたメンバー”というのは密かな裏設定ですw


>wata様

 GS試験は別にTV中継されたわけではありませんので、GS免許については正確な情報は夏子も掴んでいないはずです。
 でも、おおよその察しはついてるという辺りでしょう。


>むじな様

 作中でも言及したとおり、下馬評ではダークホース扱いです。これで評価が上がるかどうかは、一回戦をどう戦うかによりますが……そのあたりは、後半をご一読下さい。


>長岐栄様

 ジークとヒャクメは暇になったと言うより、デタントの次のステージとして留学してきたとお考え下さい。


>aki様

 さて、他のキャラはどう動く事でしょうか。シロ・愛子・小鳩それに会場に近づきつつある美神さんと、原作でも横島に好意を持っていたメンバーはかなり集まってますからねえwww

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