インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「霊能の炎は燃えているか!?〜開会式(GS+オリキャラ+α)」

いりあす (2007-03-06 03:50/2007-03-06 03:51)
BACK< >NEXT

「長かった……」
 滝から止めどもなく流れ落ちる水。それが新たな水底にたどり着き、再び川の流れに戻ってゆく……滔々と流れ続ける、その激しくも悠久なる自然の営み。
 その滝壺の底で、流れ落ちる水に打たれる一つの人影があった。


「あれから2ヶ月……本当に長かったわ……」
 2ヶ月前、5月下旬に彼女の犯した過ち。過剰なまでのプライド、絶対に負けられないプレッシャー、相手の強さ、そして向こうが仕掛けたギリギリの駆け引き。それら全てが、自分の浅慮、自分の腹黒さ、そして自分の弱さをさらけ出させる結果になってしまった。
「この2ヶ月…陰口は叩かれ、話を聞き及んだ両親には叱責され、挙げ句の果てには雪之丞に罵倒され……る方がマシだというのに、逆に優しく励まされたりして……本当に長い2ヶ月だったわ……」
 滝に打たれる彼女――弓かおりの胸中を去来する、あの学校対抗試合での醜態、そしてそれ以降に続いた試練の日々。

「でも……いいえ、だからこそ! 己が過ちで損なった名誉を、この手で挽回する! そう、あの試合で造ってしまった汚名は、次なる試合を通して返上するべし!!」
 相変わらずどこを向いているのかよく分からない目をクワッと見開きながら、彼女は滝の水圧をものともせずにスックと立ち上がった。彼女の脳裏には、次なる名誉挽回・汚名返上の舞台が浮かび上がっていた。
「第1回・全国高等学校霊能選手権……この新しい戦いの場で、今度こそ……本当の自分を取り戻す! 横島さん、ピートさん、タイガーさん、そしてまだ見ぬ全国の強豪達……勝つとは言わない、でも負けられない!!」
 それは決して、自分のプライドためだけではない。まして家や学校の名誉だけのためでもない。この決意は、自分のため、闘龍寺や六道女学院の人々の期待に応えるため、そして何より自分を許してくれた人々――愛子、横島、ピート、タイガー、おキヌ、一文字、美神、冥子、鬼道、六道理事長、雪之丞、そして日々競い合う学友達――皆の気持ちに今度こそ答えを出したい。
「ふうううぅぅぅ………」
 水に打たれながら、目を閉じて身構えつつ精神集中を始める弓。その身からは赤紫色のオーラが滲み出てゆく。そして彼女の周囲が淡く光り始め……そして、唐突に光が消える。

「たああああぁぁぁぁっ!!」

 そして、気合いの声と共に右の拳を真上に突き上げる! 次の瞬間、その赤紫色の光の波動がその拳から真上に向かって放たれた! 流れ落ち続けていた滝の水は、なんとその光の波に押し上げられ、滝のてっぺんまで押し上げられた。コンマ数秒の事ながら、十数メートルはあるはずの滝の水は止まり、岩肌がその姿をさらけ出した。


「ハーッハッハッハッ!! なかなかやるようになったじゃねーか、弓!!」

 光の波動、つまり霊波が消え、水が再び下へ落ち始めると同時に、高笑いの声が滝の周囲に響き渡った。声の方向に弓が目を向けると、そこには滝の棚近くに仁王立ちする一人の眼光鋭い男の姿。
「雪之丞…!!」
 半ば無意識的に名前を呼ぶ弓の目の前で、伊達雪之丞は「とう!」と言いながら滝の傍らの岩肌を数メートルごとに突き出た岩に着地&踏切を繰り返しながら、滝壺のところまでものの数秒で降り立った。
「だが、まだまだ甘いな! 見ろ!! だありゃあああっ!!!」
 そして弓の隣に仁王立ちして、――弓より若干頭の位置が低いのが涙を誘う――先ほどの弓同様の腰ダメから真上にフルパワーの霊波砲をぶっ放す!

 ザザンっ!!

 ……滝の水は上の水面を超え、さらに2メートルぐらいのところまで飛び散った。

「くっ、さすがにやるわね雪之丞! でも、霊波砲のパワーだけがGSの強さではないわ!!」
「よ〜し、その意気だっ! さあ、お前の技の全てを俺に叩き込んでみやがれっ!!」
 何だかますますテンションが上がってきたらしい雪之丞、今度は目をランランと輝かせながら魔装術を展開した。対する弓も、負けじと水晶観音をその身にまとう。
「うぉおおらららららららぁぁっ!!」
「ハッ! ハッ! ハッ! たぁぁっ!!」

 拳と拳が交錯し、蹴りと蹴りがぶつかり合う! 何故か飛び上がりながらのこの殺陣の余波を受けて、滝の流れはいつの間にやら左右に分かれている。とにかく一撃一撃が重い雪之丞のラッシュ、対する弓は水晶観音の6本腕を最大限に活用して息をつかせぬ連打!

「うおおおっっ!!!」
「てぇぇええ――いっ!!!」

 ずどんっ!!

 そして二人の拳が正面からぶつかった瞬間、スパークした霊力が滝の水を四方八方に吹っ飛ばした。


「この一週間でなかなか腕が上がったじゃねーか、感心したぜ弓」
「お互いに、ね」
 滝壺の岸辺で滝の滔々たる流れを眺めながら、二人はそんな風に修行の成果をたたえ合った。
「修行の成果はキッチリ見せるぞ。お前は夏の全国大会、俺は秋のGS試験でな」
「お互い、目指すは優勝ね」
「へ、トーゼンだ。どんなヤツが出て来ようが、俺は負けねーからな」

 伊達雪之丞は一度は取得したGS免許を取り消されている。知っての通りメドーサとの裏取引の事実が明るみに出たからなのだが、香港での一件をきっかけにGS協会のブラックリストからは外され、月でメドーサが倒された事をきっかけにGS免許の欠格条項も解除された。
 そしてアシュタロス事件での活躍を鑑みてGS協会は彼の資格を復活させたのだが、雪之丞はどうもこの決定に心から納得したわけではないらしい。結局、彼はGS試験をもう一度受ける事にしたそうだ―――しかも、GS協会のお偉方相手に“今度は首席で合格してやるぜ”とタンカまで切ったらしい。


「さてと、大会まであと4〜5日ですから、そろそろ山を降りる事にしましょう」
「そうだな。よーし、そうと決まったらまずは煩悩落としだ! まずはメシ! そんでもって寝る!」
「そ、そうですね……」
 などと言いながら、二人はどこかぎこちない様子でいそいそと森の中へ戻っていった。


 雪之丞によると、山ごもりで修行三昧に明け暮れている状態というのは、ある意味まともではないのだそうだ。修行で能力が上がるのは良いのだが、その際にたまったフラストレーションやら煩悩やらは何らかの方法で発散させてから街へ戻らないと、そういったモノやどこかズレたままの感覚、そして薄まってしまった物事への執着心が問題を起こす事があるらしい。

 というワケで、この二人は修行を終える時にはそういうものを取り去って日常の感覚を取り戻してから下山する事にしているらしい。と言っても別段特殊な事をするわけではなく、たまったものを発散させるだけだ。具体的には美味いものをしこたま食べて体力をつけ、睡眠をタップリ取って疲労を回復させ………最後の一つに関しては、この二人が別々な場所で異口同音にグチった言葉『修行明けのアイツは特別激しい』をもって説明の代わりとしたい。

 ―――なお、その際雪之丞が妙なジェラシーを抱いた横島と殴り合いを起こしたのは言うまでもない。


   『霊能の炎は燃えているか!?』 Written by いりあす


  〜〜〜開会式 集結、再会、宣戦布告!?〜〜〜


 き〜〜〜んこ〜〜〜んか〜〜〜んこ〜〜〜ん………

「ん〜〜〜っ、終わった終わった〜〜! これでお勤めもおしまいや〜〜!」
 授業終了のチャイムを聞いた横島忠夫は、いかにもスッキリしたような表情で大きく伸びをうった。
「別に、無理に全部出なくても良かったんじゃないの?」
 その横島の隣で、書き終わったノートをありふれた学校机の引き出しにしまいながら、少しだけ首をかしげる少女が一人。
「出席日数だったら、半分出ればクリアできるって聞いたけど」
「別にいーだろーが。保険だよ、保険。また二学期で日数が足りなくなるかも知れんのやからな」
「まして、あの子達が授業受けてる以上は一緒に来てあげないと心配でしょうがない?」
「……少なくとも、片方が一緒に登校しようとうるさかったのは事実だ」
「横島くんも苦労が絶えないわね〜。お姉さん、ちょっと同情するかも」
「あのな……」

 学校自体は一学期を終えて夏休みに入っているが、授業が全くないわけではない。横島達は既に3年生になった事もあり、進学を目指している受験生達のための課外授業・兼出席日数の足りない生徒達のための補習授業が行われていた。
 そういうわけで、横島忠夫の様な日数不足の生徒と、成績の良い受験生が机を並べて夏休みの午前中を学業にいそしむという光景がここにあるわけだ。

「で、この前の全国模試はどうだったの? 横島くん、一応受けたんでしょ」
「あんまり意味はないけどな……見るか?」
 隣の席の少女に、今日返ってきた成績表を無造作に渡す横島。彼女が広げた成績表の5教科7科目平均の偏差値は“64.8”とあった。
「これだけあれば、少し真面目に勉強したらそれなりのレベルの大学に合格できそうなのにね」
「万が一美神さんの事務所をクビにでもなったら、そうする。で、お前の方は?」
「………こんな感じよ。これでも第一志望に合格できるかどうか、けっこう微妙なのよ」
 交換する形で受け取った彼女の成績表をパラリと広げて、横島は微妙に眉をひそめた。多分その理由は平均偏差値の欄の“78.0”という数値であり、同時に氏名の欄の“横島 愛子”という表記にまだ慣れていないせいもあるのだろう。


 ご存じ学校妖怪・机少女の愛子が正式に横島の苗字を名乗るようになってから、既に一月以上は経過している。妙神山での修行の甲斐あって机というハンディを克服した彼女は、現在では机そのものが人間の姿に変身して行動できるようになっている。おかげで青みがかった瞳以外は普通の人間と外見上見分けが付かなくなった彼女は、横島の両親の了承を得て戸籍と住民票を手に入れたわけだ。もっとも、洋服を自分で買わなければならなくなったというのが今の彼女の悩みらしいが。


 がらがらっ!

「せんせー! お昼ご飯にするでござるよっ!」
 そんな授業終了後の喧噪をすっ飛ばすかのような大声と共に教室に入ってきたのは、セーラー服姿の犬塚シロと……
「おキヌちゃんのお弁当、預かってるわよ〜?」
 同じく、セーラー服姿のタマモの二人である。


 シロとタマモの二人がどこの高校に編入するかで一揉めし、横島達とおキヌ達の霊能試合の勝者の側の高校に入るという妥協案が出されたのは既に二ヶ月以上前の話。結局あの試合は書類上は六道女学院の反則勝ちという形にはなっているが、実質的には痛み分けに近い結果だった事もあって、最終的に美神令子の側で二人の希望の前に折れる形で横島くんの高校(仮名)に入学する事になった。
 なお美神が折れた明確な理由は不明だが、一部の関係者筋では件の学校対抗試合の際に横島とおキヌの交際の事実が発覚したという事態が彼女の心理に影響を与えたのではないか――ともっぱらの噂である。


 余談ながら、学生名簿上のタマモの“苗字”を何にするかで事務所内で若干の論争があったりしたらしい。
 “美神”の苗字を貸す事に令子が若干の難色を示したり、
 シロが人狼族の長老(本名は“犬江ジョン兵衛”というらしい)に苗字を貸してもらおうかと提案したとか、
 おキヌは日本霊異記を引き合いに“来寝”はどうかと提示したとか、
 横島は横島で『“横島”はダメだぞ! これ以上義理の姉妹が増えたら何を言われるか分からん!』と文句を言ったとか、まあ色々あったのだが、タマモ本人の
『まだ進学とか就職とか考えてるわけでもないし、無理に戸籍を取ろうなんて思ってないわ』
 という意志もあって、学校側との交渉の結果単に“タマモ”として学籍を取得する事になった。


「それで先生、午後の予定はどうなっておられるのでござるか?」
 おキヌお手製のお弁当を頬張りながら、シロが隣の横島に尋ねた。
「ん? 言わなかったか? 霊能愛好会のミーティングだ、ミーティング。部費の事とか夏休みのスケジュールとか、まあ色々と決めなきゃならねーし」
 課外授業を終えた連中が帰宅し、午後を部活で過ごそうという連中が昼食をとっている教室内で、そんな話をしながら横島姉弟&シロタマが机を囲んでいる。なお、教室の別の一角ではピートとタイガーも同様に食事中。なおピートはオカルトGメン採用試験の受験勉強であり、タイガーは純粋に補習らしい(留学生のため、どうしても国語等は苦手なのだそーだ)。
「へえ、部費なんか集めてるんだ」
「集めてねえ、学校と生徒会からもらってんだよ(いや、学費と生徒会費は毎月払わされてるんだが)。そーゆーのが今どれだけ残ってるかとか、それで何か買おうかとか、そんな事」
「高級な肉とかでござるか!?」
「お揚げとか?」
「なんで食い物限定なんだっ!?」
 部によっては、確かに試合の時の飲食物を部費で購入したりするのだろうが……肉や油揚げは果たして部活動上の必需品と見なされるのだろうか。


「それじゃあ三人とも〜〜、私は大会役員として京都まで一足先に行っているからね〜〜〜」
 ところ変わって、六道女学院・理事長室。アタッシュケース片手に、いつもの和服姿の理事長が表面上はノホホンと告げていた。彼女を見送るのは、この場にいる三人。
「お気をつけてお母さま〜、こっちは大丈夫ですから〜」
 と、理事長の一人娘・六道冥子。横島くんの高校(仮名)との対抗試合の後六道女学院で講師を務める事が増え、一見さして変わらないものの、近頃は22歳の大人の女性らしい落ち着きも出てきた………と、最近後見人(恋人?)的な役目の鬼道政樹は若干ひいき目かも知れない評価をしている。
「ほな僕らは、大会の前日にそっちへ行きますさかい」
 と、冥子の隣で直立不動気味にその鬼道政樹。もっとも、口さがのない女生徒たちの一部からは、“もうすぐ六道先生”などと冷やかされていたりもする。
「任せて下さいっ! 選手のみんなは、ベストコンディションで試合に出させますからっ!」
 で、妙に気合いの入っているのが、三人目の桜井先生。出身不明、本名不明(本人は“真子”と名乗っているが、“シンちゃん”と名乗った事もあり本名は“真一”とでも言うのかと噂される)、性別すら不明(出身校は男子校という説も)という謎の熱血教師だが、学科教師としても霊能教師としても申し分のない実力を持った、六道女学院の影の実力者である。

「それにしても〜〜、全国大会に出場するのが2年生チームばっかりなんてね〜〜〜、これは楽しみだわ〜〜〜」
「そら今回の大会ですか、それとも来年のGS試験の方でっか?」
「そりゃあ両方よ〜〜〜、鬼道君ったら分かってるクセに〜〜〜」
 表面上はノホホンと、しかし物言いは含みありげに笑う理事長である。理事長席の上に置かれている参加者名簿の控えに書き込まれている出場選手・3人一組3チーム、9名の学年欄は全て“2年生”とあった。
「横島クン達と試合をしたのが〜、2年生のみんなのいい勉強になったみたい〜」
「おかげで選手選考会も、ベスト4までは2年生が独占してしまいましたし」
「ってなワケですから、理事長センセも期待してて下さい」
「期待してるね〜〜〜。来年の就職戦線のために、大いにアピールしなくっちゃ〜〜〜……」
 などと聞き捨てならない事を言いながら、理事長は意気揚々と部屋を出て行った。

「あ、あのセンセ? あんまり、あの子達の進路を勝手に決めない方が……」
「無理よ政樹くん〜、令子ちゃんもああなったお母さまは止めようがないって言ってたもの〜」
「でも生徒達にいい就職をさせたいと思う一方で、あの子達の自由な選択肢を残したいとも思うんですよね……」
 意気揚々と廊下を歩き去って行く理事長を見送りながら、残された三人のコーチャー達は軽くため息をついた。


 パチパチパチパチパチパチ、カリカリカリカリ………

「ダメじゃないですか、領収書なんかはちゃんと保存して、支出もちゃんと書き留めておかないと」
 左手でソロバンの玉を弾き、右手でその結果を出納簿に書き付けながら、花戸小鳩は軽く苦情を言う。
「自分のお金ならいざ知らず、学校のお金はしっかり管理しないとダメですよ? 家計簿をつけるのと同じような感覚でやってくれればいいんですけど……」
 子供の頃から貧乏で大変だったせいもあるのだろう、小鳩はそのあたり非常にしっかりしていた。
「ご、ゴメン。俺、そういう出納管理なんて目分量でしかやんねーから」
「ううっ、わっしも横島サンと同じようなものなんジャー…」
「私も妖怪暮らしが長くって、お金の事ってあんまり気にしてなかったし……」
「ブラドー島では、お金なんてほとんど使っていませんでしたから……先生もあまりそういうものを気にしませんので」
 と、それぞれ恐縮する3年生4名、この霊能愛好会の母体となった“除霊委員”のメンバーである。

 その隣では、けっこう部費でホイホイ物を買ったりしていた1年生の面々がシュンとしている。
「私も同じです。実家からの仕送りがあるから、お金にそんなに苦労していないし…」
「拙者も同様でござる。美神どのは自分で帳簿をつけておられる故、拙者達は帳簿のつけ方など習っておらんのでござる……」
「一度コッソリ見た事あるけど、美神の帳簿って実際のお金の出入りとはゼロの数が一つ二つ違ってるのよね」
 右から順に、ピート襲撃事件の後で留学生としてこの学校に入学してきたアン・ヘルシング、犬塚シロ、そして物騒な事を言ってるのはタマモ。本当は1年生部員はこの他にもそれなりにいるのだが、霊能力者としてのレベルはまだまだ基礎レベルなのでこのミーティングの場にはいない。

「……春桐さんや百成さんも、同レベルなんですか?」
「すみません。僕は実働部隊なので、会計処理は経験がほとんどなくって…」
「ウチの会計は計算鬼使った半自動管理なので、手書きの簿記なんて誰もできないのね〜…」
「何百年も生きてて、それでいいのか神族も魔族も?」
 横島に突っ込まれてしまった2年生が2名。交流留学生としてこの学校に編入してきた魔族のジークフリード、留学生としての仮名は“春桐 勝利”と、同じく神族の留学生・“百成 ひとみ”こと本名(?)ヒャクメの2名。留学期間は“何事も事件が起きない限りは2年間”と決定されているので、二人とも2年生として学生生活を満喫している次第である。

「それで、こっちがよその学校の霊障に出張した時の“お礼”の明細なんだけどね」
「あ、こっちが収入ですか? えっと、全額部費になったんでしょうか?」
「ああ、この額面の6割4分が私たちの取り分なのよ。建前上学校から学校に“お礼”の金一封が届いて、それを学校→生徒会→部費って感じでお金が回ってくるから、全額私たちに入ってくるのは不都合があるんですって」
「ふうん、複雑なんですね……」
 愛子の説明にそんな評価を入れながら小鳩は金属製の定規“のように見える”ものを取り出し――三本の定規をひっつけて、真ん中の一本がスライドするようになっている――何やら操作を始めた。
「わあ、懐かしいなあ。まだこれを使ってる人、いるのね……」
「曾祖父の数少ない形見なんだそうです。昔の花戸家は貧ちゃんの影響で電卓みたいな高級品はすぐに壊れちゃったので、これとソロバンをずっと使っていたんですって」
 で、その定規もどきをスライドさせ、時折目盛りをのぞき込みながら何やら帳簿に書き込んでゆく小鳩。
(先生、あれは何なのでござる?)
(いや、俺も見た事がない……何だありゃ?)
(僕に言われても、これまたサッパリ……)
(やっぱ若い連中は知らんのやな〜…って、ピートは今いくつやねん)
 と、ヒソヒソ話をする横島達の横で、
「これがすたれだしてから少したった頃ね、テストにこれを持ち込んだ子がいたのよね〜。本人は『定規です!』って言い張ってたけど、速攻でバレて停学処分になったわ。これも青春のあやまちって奴よね〜」
「数学とか物理とか、これがあるとやっぱり役に立つんでしょうか?」
 なんて会話を愛子と小鳩――この平成の時代に計算尺を普通に使いこなす事のできる数少ない現役高校生二人が話に花を咲かせていた。


「それで小鳩ちゃん、時間的に余裕があったらこうしてウチの会計を手伝ってくれると助かるんだけどさ」
「それは構いませんけど。実際、私も貧ちゃんもこの愛好会の部員みたいなものですから」
 横島さんのおかげで家計にも余裕が出てきましたから、と彼女は小声で付け加えた。正しくは“横島さんが貧ちゃんの呪いを解いてくれたおかげで”と言うべきなのだろうが、そこは彼女なりの気持ちのありようなのだろう。


 今部室にいるこの11人(貧乏神含む)が、横島くんの高校(仮名)霊能愛好会の主要メンバー達である。なお顧問の暮井緑先生(ドッペル)は部室の隅っこで面白そうにそんなやり取りを見ているが、積極的に口を出す様子はない。


「さて、部費の余剰分の使いどころはまた2学期になってから決めるとして、次の議題に移りましょうか」
 小鳩がキッチリ整理してくれた帳簿を本棚にしまってから、部長の愛子が使い古されたホワイトボードを後ろに司会役を始める。
「次の議題? 修行の旅にでも出られるのでござるか?」
「それも捨てがたいけど、今回は別の話なのね〜。今度の全国大会のスケジュールの話をするのね」
「次の大会? この前のクイズ大会だったら、愛子たち準決勝で負けたとか言ってなかったっけ?」
「そうなのよ〜。あの時は悔しくて口惜しくて……って、クイズの全国大会じゃなくて霊能の全国大会!」
 タマモのボケにツッコミを入れる愛子に、“あ〜、いい感じにチームができてきてるな〜……”と、ほんのちょっとだけ遠いところに視線を向ける横島であった。


 六道女学院との学校対抗試合から2ヶ月ちょい、霊能愛好会の結成から数えればもうじき3ヶ月になる。この間にも色々とあったものだ。
 机を克服する為の修行が修了間近だった愛子が本物の“愛子”と向き合う事になったとか、
 妖怪やGSに対する差別発言をやらかした某政治家に対して、オカルトGメンやGS協会からの抗議活動に学校あげて協力したとか、
 去年の総攻撃よりさらに大規模なものになり、六道女学院の全校総出に加えて横島達とも合同で行われた小間波海岸での臨海学校とか、
 まあ色々と波瀾万丈だったのだがこの場では語らない事にする。


「私や横島くん達は知ってるんだけど、近々GS協会主催で霊能の全国大会を開催するのよ。それで、この前おキヌちゃん達とやったのがその大会のルールのテストマッチだったって事なの」
「おおっ、そーだったのでござるか! すると先生やピートどのやタイガーどのが、日本全国から集まった強者達と戦いを繰り広げるのでござるな!」
 あの時の丁々発止な横島達とおキヌ達の激戦を思い起こし、瞳をキラキラと輝かせるシロ、その隣で“ふ〜ん”と言いたげに頬杖をついているタマモ。
「それでね、全国大会って一校につき3チームまで参加できるのよ。部費にも余裕があるようだし会場の京都までの旅費も充分確保できてるから、この際2チーム目のメンバーも決めようかなって思って」
 と、愛子がなんの気なしに言った途端、何人かの目が“キュピーン!!”と光った。
「はいはいはいはい! 拙者も先生と一緒に出場したいでござるっ!!」
「わ、私だって出てみたいです! そして私の成長をピートおにーさまにっ!!」
「ん〜……そういうの、出てみるのも面白そうかなぁ……」
「あ゛〜〜っ、私だって参加してみたいのね! 私だってこの二ヶ月でけっこう成長したって自信があるのねっ!」
「えっと、出遅れたけど、僕も興味が……」
 と、1・2年生が合計5人ほど一気に名乗りをあげてきたのであった。同じく2年生の小鳩は霊感こそ貧乏神の余慶で高いが、さすがに霊能力はさしたる事がないから手は挙げない。


「やっぱり、この5人が5人とも名乗り出てきたんじゃノー」
 と、重々しくタイガーがうなずく。
「さすがに都合良く3人だけ乗り気とはいきませんよねえ」
 と、その隣で苦笑いするピート。
「と言って、こっちから3人に声をかけるとあとの2人に角が立つかも知れないし……」
 で、議長席の愛子が肩を落とせば、
「まあしょうがない、じっくり考えないとなあ」
 と、愛子のすぐ隣の副部長席の横島も腕組みする。
「先生、それはご無体なっ! 拙者は絶対試合向きでござろう!」
「そうよ! 私をまず選ばないなんて、横島も愛子もいい度胸してんじゃない!」
「そりゃ戦士じゃないけど、私だって歴とした神族なのよっ! 説明を要求するのね〜!」
「一年前ならいざ知らず、今の私はGSを目指してるんですよ! 横島さんもピートお兄さまもあんまりです!」
「あの横島くんに横島さん、僕は一応魔族の戦士なのであって……」
「はい、落ち着いてみんな! これから検討するんだから」
 やいのやいの言い出す5人を愛子がなだめて、席に座らせた。

「まずはタマモ。幻術と狐火っていう妖狐の能力はポイント高い、問題はお前がただの妖狐じゃないって事」
「!」
 “ただの妖狐じゃない”というフレーズに、タマモの眉がピンと跳ね上がる。美神事務所という空間、そしてこの学校では何の問題もないが、妖狐、しかも若いとは言え白面金毛九尾の狐の転生という事実を盾に問答無用で捕殺されかけたという出来事からまだ一年もたっていないのだ。
「あまり派手にやり過ぎて、お偉方が『あっ、あの時除霊されたはずの九尾の狐!』とか言い出したりしたら大事になる。その辺は分かってるんだろうな?」
「……分かってる。でも今の私はただの妖狐のタマモ、白面金毛九尾の狐・玉藻前は前世に過ぎないわ。自分を見失って、前世の記憶に取り込まれたりはしない」
 静かに答えるタマモだったが、目の中には確かなものを湛えた光が宿っているのを横島は見た。
「…オーケー。美神さんや隊長もお前の事は“前世は九尾かも知れないけど今はただの妖狐”って事にしてあるらしいから、あまり目立つ事さえしなけりゃ大丈夫か。あの時お前を退治しようと躍起になってた官房長官も、無事に(?)不祥事がバレて逮捕されたらしいし」
 美神にしたって前世の種族を持ち出されて退治の理由にされたらたまったものではないから(一部の筋しか知らない事実だが、彼女の前世はよりによって魔族)、前世の事で追われたタマモに対してはそれなりに共感できるものがあるのかも知れない―――少なくとも、お金さえ絡まなければ。

「次にアンちゃん、君の弱点は霊力が劣っている事。そのあたり、自覚してるんだろ?」
「うっ……それは、その、そうなんですが」
 彼女は曾祖父の遺品に操られていたとは言え、戦闘訓練ならそれなりに積んでいる。しかしそれはバンパイアを退治するためのそれで、霊能力を鍛錬していたわけではない。
「で、でも! この学校に来たのは皆さんみたいにGSになりたいと思ったからだし、それに『ダビデ』だって霊能仕様に改良したんです! 足手まといになんてなりませんから!」
 多少マッドエンジニアの気はあるが、そこはドラキュラ伯爵を退治したヘルシング教授の子孫でもあり、シロとタマモを除けば1年生の部員の中で一番の有望株。彼女にも彼女なりの自信とプライドがあって、こうやって選手に名乗り出ているのだから、そう簡単に戦力外通告は受け付けられない。
「どう思う、ピート?」
「『ダビデ』の基本性能は当てになる事、横島さんも知ってるでしょう? あとは、改良の成果がどの程度のものか確認してからですね」
「そうよね。というわけで、アンちゃんについては保留、と」
 そう言いながら、ホワイトボードに書かれた“タマモ”の名前の隣にマル、“アン・ヘルシング”の隣にサンカクを書き入れる愛子。

「続けてジークにヒャクメは、二人ともコーチャーと補欠の方向で行きたいと思う」
「「え―――っ!?」」
 評価以前の横島の宣言に、言われた二人は綺麗に叫び声をハモらせた。
「私、これでも神族なのに〜〜! 私って、やっぱりものすごい役立たずっ!?」
「僕もか? 僕も姉上の言う通り、戦士には向いてないのかぁ!?」
「わっ! ちょっと、ヒャクメ様もジーク君も落ち着いて!」
「待て、とにかく待て! 色々と考えた結果なんや〜!」
 ちょっと……いやかなり、プライドを傷付けられたような二人をこれまたどうどうと抑える横島姉弟。

「大体二人とも、こっちに来た時に本来の能力のほとんどは封印するなりリミッターを掛けられたりしたんでしょう? ヒャクメ様なんか、あれだけたくさんあった“心眼”が3つにまで減らされてるし」
「う……そ、それは仕方がないのね〜……」
 物が見えすぎる事は人間との共同生活では弊害になる恐れがあるというので、両耳のイヤリング状のものと眉間の第三の目、それ以外は封印して表に出ないようにしてきたヒャクメ、その5つの目を伏せてしょげ返る。
「ジークにしたって、今は俺やピートと大して変わらない程度まで霊力を抑えてあるって聞いたぞ? そーゆー状態で試合に出たって、いざって時は普段の能力のつもりで動こうとしてケガするかも知れないだろ」
「む……」
 例えば、道を走っている時に直径5メートルの大穴に差し掛かったらどうするか。もしその人が3メートルしかジャンプできなければ、それを承知して穴の手前で立ち止まるだろう。しかし、もしそれが本来は6メートル跳べるのにウェイトを身につけていて3メートルしか跳べない状態だったら? その人は、6メートルジャンプできるつもりで自信満々にジャンプし、そのまま穴の底へ真っ逆さまという事は考えられる――横島が直接気にしているのは、そのあたりの問題である。決して“魔族だからダメ”と言っているわけではないのが、横島の中途半端な気の良さなのだろう。
「というわけで、ヒャクメは残った心眼で霊視してもらうのでメディカルマネージャーって事で」
「わ、わかったのね〜……でも医療班って、ひょっとして責任重大?」
 と、少しだけ期待した目で横島に顔を近づけるヒャクメ。
「かなりな」
「引き受けたのねっ! みんなベストコンディションで試合に送り出してあげるのね!」
「よし、頼むぞヒャクメ。それとジークだけど、今はまだ保留な。1年生の女の子3人でチームを作れるなら、お前にコーチャーをやって欲しいんだよな」
「コーチャーって、戦闘指揮官……わ、分かった……」
 “コーチャー=指揮官”という図式を頭の中で成立させて、ジークも何故か納得してくれた。どうも、士官の中では最下級の少尉という軍での立場ゆえか、“指揮官”という響きにプライドが満足したらしい。

「で、残る最大の問題はシロちゃんなのよね……」
「え゛!? な、何故ゆえに!? なにゆえタマモが良くて拙者が問題なのでござるかっ!?」
 自分は大丈夫だろうと思っていたシロ、最大の問題とまで言われて思わずパイプ椅子を蹴倒してしまった。
「あのね、シロちゃん……あなたは詳しく知らないと思うんだけど、事前に贈られてきたルールブックにはこう書いてあるのよ……」
 物凄く申し訳なさそうな表情で、愛子はシロの胸元に指を突きつけた。
「出場選手はね……そのサイズの精霊石を身につけてちゃダメなのよ」
「え゛………」
 胸元に光っている精霊石のネックレスに視線を落として、絶句するシロ。
「シロ……あんた、昼間にそれを外すと犬に戻っちゃうって聞いたわよ?」
「拙者は犬ではござらん……って、身につけていてはダメなのでござるか!?」
「「「「ダメ」」」」
「ピートどのにタイガーどのまでぇっ!?」
 キッパリ言われてガックリと膝を突くシロ。思いもよらぬルールの壁の前に、こればっかりはシロも文句の言いようがなかった。

「人狼族って、犬飼なんかは昼間でも人間の姿で出歩いていたんだけどなあ……なんでシロはダメなんだ?」
「うう〜〜……拙者、これでもまだ未成年ゆえ、まだ昼間は人の姿になれぬのでござる……」
「昔の人って、15〜6ぐらいで成人って聞いたけど……シロちゃんは違うの?」
「あ〜、それがダメなんだわ小鳩ちゃん。こいつ超回復で成長したけど、元々は小学生ぐらいの年だから」
「そ、そうなんですか……」
「ううっ……そう説明されるとまるで、拙者が年齢詐称しているみたいでござるよ……」

 シロによると、人狼族というのは昼間は力が最も弱くなり、夜は月が満ちるごとに強くなってゆくものだという。そして、力が上がるにつれて“ただの獣→人間の姿→二足歩行する狼人間→究極的にはフェンリル”と形態が変わるのだそうだ――ただし、女性は獣人にはならないとの事。なお、犬飼ポチが昼間でも狼人間だったのは、妖刀・八房を所持していたかららしい。


「それで、昼間でも人の姿になる事ができれば、それをもって成人の証とするのでござる……」
「う〜ん……精霊石以外でその点をクリアできる方法………って、あれば美神さんがとっくに使ってるか……」
「あうう〜〜、拙者も先生と一緒に試合に出たいでござるのに〜〜〜………」
 シュンとうなだれるシロを見ているとさすがに気の毒に思えたのか、横島達も顔を見合わせる。
「何か他の方法、無いのかしら? このままだと、シロちゃんが青春から取り残されちゃうじゃない」
「でもなあ……美神さんが他の方法を知らないとなるとなあ。美神さんが知らない方法なんてあるのか、あったとしてもそれを知ってる奴なんている……の………か……」
 慨嘆しようとして、横島はハタと言い淀んだ。
「横島サン、何か思いついたんかいノー!?」
「望みはメチャメチャ薄いが、一人だけ知ってそうな奴がいる。ダメもとで相談してみるか……」
「へ〜? それ、誰?」
 何の気なしに尋ねたタマモに、横島はしばし沈黙した後乾いた笑いを顔の端に浮かべた。
「………ドクター・カオス……」
 溺れる者が掴む藁にしては、確かに細いと言わざるを得ない。


「ほ〜う? 未成年の人狼族を、昼間でも人の姿にさせる方法とはのう」
 アパート・幸福荘の一室。口の中に詰め込んだ手みやげのアンドーナツをウーロン茶で胃袋に流し込みながら、“ヨーロッパの魔王”ドクター・カオスは面白そうに聞き返した。
「どうぞ・皆さん」
「あ、悪いな」
 湯呑み――は人数分も無いので、これまた一緒に持ってきた紙コップに入れた麦茶をマリアから受け取る霊能愛好会の皆さん。
「で、そういう研究した事あります? よく覚えてないとは思いますけど」
 横島の助っ人で一時期同僚だった気安さも手伝って、けっこうぶしつけな聞き方をする愛子。
「う〜む、どうじゃったかのう……」
 ここで即答できるカオスでもなく、本棚の手前に放り出してあった大学ノートをパラパラとめくり始めた。
「ええと、人狼族人狼族〜〜……と、コレなんかいけるかも知れんな」
「え゛? 本当に研究してたんですか?」
「いや、無い。無いが、応用できそうな研究はある。おいマリア、アレはどこに置いたかのう? ほら、アレじゃよアレ」
「ドクター・カオス、“アレ”と・言われても・何が何だか・理解不能です」
「アレはアレであって……まあいい、自分で探す」
 そう言ってカオス、大学ノートをちゃぶ台の上に放り出してタンスの中をゴソゴソ漁り始めた。
「おいカオスの爺さん、捜し物だったら手伝う……何じゃこりゃ?」
 気になった横島がノートを広げると、そこにはワケの分からない文字がギッシリと書き込まれていた。それにつられて愛子にピート、タイガーやシロも後ろからノートをのぞき込む。
「これは暗号でござるか?」
「ワッシの読んだ事がない言葉ジャノー」
「ギリシア語……よね、これって? ピート君、読める?」
「汚い字ですねえ……これはちょっと、読みづらい……」
「人聞きの悪い事を言うでない! お主の島こそ700年も地中海に閉じこもっておるから、ワケの分からん訛りのラテン語しか通じんし崩れに崩れた字体のアルファベットでしか文書が残っとらんじゃろうが」
 ピートの批評にそうやり返しながら、ペンダントのようなものを手に彼は戻ってきた。

「とりあえず狼の嬢ちゃん、その精霊石を外してこいつを首につけてみてくれんか? 別に呪いの類ではないから安心せい」
 シロが受け取ったそれは、精霊石とさして大きさの違わない石をペンダントにしたものである。
「え? いや、しかし……」
「ためらってないで、さっさとしなさいよバカ犬!」
 怪しげな石のペンダントを片手にキョロキョロするシロに苛立ったらしいタマモが、シロの胸元に下げられた精霊石のペンダントを後ろから取り上げた。たちまちボワン! とでも擬音がつきそうな調子で犬……に一見見えなくもない狼の姿になってしまうシロ。
「わうわうわう〜〜!(何をするのでござるか女狐! まだ心の準備ができておらぬとゆーのに!)」
「さっさと結論を出さないと、横島達が選手を決められなくて困るでしょーが! ほら」
 さすがに緊張気味に見守る周囲をよそに、タマモはさっさとシロの首にカオスの石の方を引っかけた。

 ………ぽん☆

 コンマ数秒の間を置いて、シロは元の少女姿に戻っていた。
「「「「おお〜〜っ!」」」」
「やったやった、やったでござる〜! せんせ〜〜、拙者は今猛烈に感動しているでござる〜〜!」
 滝のような涙を滂沱と流しそうな勢いで、感極まって横島に抱きつくシロ。
「わ、分かった分かった! だから、抱きつくのはともかく顔をなめるな!」
 本当は『抱きつくな』とも言うべきではないのか?―――と何人かは思ったが、口には出さなかった。

「で、アレはどういうメカニズムなのね〜〜?」
「うむ、よく聞いてくれた。魔術の儀式という奴には月齢という要素が関わってくるものがあってな、満月の夜にしか実行できないとか、逆に月が欠けていないとうまくいかないとか、そういう術を施すのには適切な時期を待たねばならん」
 うまい具合に当時の事を思いだしたのか、ここぞとばかりに説明を始めるカオス。
「それを一々待ってるのが面倒くさいので、その場に照らし込まれる月からの魔力をコントロールできないかと研究した事があるんじゃな。残念ながらこの研究、“月に由来する品”が何か一つ必要になるので打ちきりになっておったのだ――どの道、都合のいい月齢を待てばいいだけの話だったからのう」
「あれ? でも月に由来する品なんて一体どこで……あ! 一年前、月に行った時か!?」
 月がらみの一件といえば何はなくともあの件だ。それに気付いた横島・ヒャクメ・ジークの3人がパッとマリアの方を振り向く。
「イエス、横島さん。ミス・美神と・横島さんが・月面で・メドーサと・戦闘中、月の石・いくつか・回収しました。その月の石・過去の・研究ノート・参考に・加工を・施しました」
「凄いじゃろ? わしの500年前のグチをバッチリ覚えていてくれたのじゃ」
(マリアって、前からそんなに融通の利く性格だったっけ……?)
 と、胸を張るカオスの横で少し首をひねる横島である――が! マリアだって美神や横島と接する事で少なからぬ影響を受けているのだ、成長の一つや二つするだろう。

「……で、この“月の石”はもらっていいのでござるか?」
「やってもいいが、タダとは言わんぞ。元手がかかっとらんワケでもないのだ」
「む……え、ええと」
 慌てて小銭入れを制服のポケットから取り出そうとするシロを、別のセーラー服の手が制した。
「アパートの家賃向こう2ヶ月分、霊能愛好会の部費で前払いしておくわ。それでどう?」
「……6ヶ月分にせい」
「3ヶ月」
「5ヶ月」
「4ヶ月」
「…………よし、それで譲ってやろう」
「商談成立ね。それじゃ、この納品書と請求書、あと領収書にもサインをお願い」
 さっそく会計上の手続きに入る愛子とカオスを横目に、はしゃぐシロと霊能愛好会一同。
「これで拙者も、精霊石無しでも生活できるでござるっ! 武術大会にも出られるでござるっ!」
「うんうん、よかったよかった。バカ犬取り残して私だけ試合に出たって、何となく張り合いないし」
「よかったですねえ、シロちゃん」
「おめでとうございます、ミス・犬塚」
「ありがとうでござる……って、拙者は犬ではござら〜〜ん!」
 と、部屋の中がワイワイと沸き立っていると。

 がちゃ。

「カオッさん!! お隣さんの迷惑になるんだから、少しは静かにしたらどうなんだい!!」
「「「「は、はいっ!!」」」」

 ……大家のバーサンの一喝によって、その場は一気に静かになったのである。


 何はともあれ、こうして横島くんの高校(仮名)からは1年生トリオ+コーチャーのジークが二組目のチームとして全国大会に参加する事になったのである。


 さて、数日後・夕刻。ところは毎度おなじみ美神除霊事務所である。
「というわけで拙者達、明後日の全国……何だったっけ?」
「全国高等学校霊能選手権大会……大会名ぐらい覚えときなさいよ」
「ああ、すまぬすまぬ。で、その全国大会に拙者とタマモも選手として出場する事になったので、今夜から会場の京都まで行って参るのでござるよ」
「…………ふ〜ん」
 この事務所の所長にして日本トップランクのGS・美神令子は、今ひとつ興の乗らない表情で生返事をした。
「ま、大会の話は前にママから聞いた事があるから、あんた達が出場する事になるだろうとは予想していたけど……無様な負け方をしたりしたら、時給下げるからね」
 二人にそう釘を刺しながら、美神は周囲にそれとなく視線を走らせる。
「……人工幽霊壱号、横島クンとおキヌちゃんは?」
『お二人でしたら、玄関前で話し込んでおられます。お呼びしましょうか?』
「ん〜……別に、そこまでしなくてもいいわよ」
 彼女の表情を一言で説明するなら、“複雑”が一番しっくり来るだろう。


 この事務所のメンバーである横島忠夫と、氷室キヌこと元幽霊少女のおキヌが恋愛関係にあるらしいという事が白日の下明らかになって2ヶ月以上が経過している。白昼堂々とキスなんてしてしまったものだから、両学校をはじめとする世論(?)は沸騰し、両名はおろか美神・シロ・タマモ・美智恵までもが質問責めにされたものである。
 そういう狂乱が過ぎ去って、“まあ、あの二人なら不思議じゃないか……”という一応のコンセンサスが得られた事で横島&おキヌは半ば公認のカップルになった。

 さて、こうなると所長にして横島の雇用者・兼前世の深い仲・兼実質的支配者・兼独占欲の対象(少なくとも前回の一件までは)、なおかつおキヌの雇用者、同居人、そして保護者的役割を担ってきた美神令子としては、何となく二人が自分のところから離れていくような気がしてならない。ところが面白いもので、この二人が大っぴらに交際できる関係に進展しても、事務所内における美神やシロ・タマモ達への態度がさして変わったわけではないのだ。
 確かに二人で仲良く会話する事とか、おキヌが横島に会いに行ったりする事は増えたが、事務所の中でベタベタするような事は無いのだ。それは、“自分達二人の関係が進んだからって、事務所のみんなとの関係を変えるつもりはないんですよ”という二人の意思表示なのかも知れないが、横島に対する好意とかおキヌに対する嫉視を自覚しつつも否定している美神の複雑怪奇な心境としては、内心の整理が完全には終わらないのが実情なようだ。


「……それじゃ、さっそく出発の支度にかかるから」
「除霊の依頼もここ一週間ほど入ってはござらぬようですし、どうぞノンビリと夏休みを取ってくだされ」
 話を済ませたシロとタマモが所長室を退室してからしばらくして、今度はまた別な人影がドアを開けた。
「いいの、令子? あの子達の応援に行かなくても」
「べ、別に……結局は横島クンやおキヌちゃん達の学校の行事だし、呼ばれたわけでもないし……」
 入ってきた母・美智恵と妹・ひのめの視線から、姉・令子は心持ち目をそらした。
「横島くんとおキヌちゃんだって会場でイチャイチャするわけじゃないし、令子が応援してあげた方が、あの子達も張り切るでしょうに」
「……どうなのかなあ。私が行くと、逆にプレッシャーかけちゃうんじゃないかなって思うけど」
 マホガニーだか何だかのデスクにヒジを突いて頬杖を突く令子の物言いは、相変わらず素直さとかあけすけさが欠けていた。その姿に、美智恵はほんの少しだけ――令子に気取られない程度にため息をついた。
(シロちゃんやタマモちゃんはあの二人の事、結局認めてるのにねえ……まあ、前世以来の縁だとすれば、あっさり身を引けるでもない、か)
「ああ、それから明後日の大会の事だけど、六道の理事長によるとGS協会やオカルトGメンだけじゃなくて、大手の事務所や海外のオカルト筋も観戦に来るみたいよ。筋の良い選手を見たら、スカウトぐらいはするんじゃないかしら?」
「な゛? す、スカウト!?」
 さすがにそこまでは考えていなかった令子、これには母の方に向き直って腰も少し浮いてしまった。
「あの子達がいきなり引き抜かれるとは考えにくいけど、素質のある見習いGSにはそういう選択肢もあるんだって事は忘れない方がいいわよ。それじゃ、私も唐巣先生と一緒に会場で観戦してくるから」
 それだけ告げて、美智恵は相変わらずキビキビした歩調で所長室を出て行った。

「う〜〜ん……確かに気にはなるんだけど……でも応援なんてして横島クンがいつもの発作を起こして『これはもー愛の告白としかー!』なんてブチ上げた日にはトンデモない事になるし……でも横島クンやおキヌちゃんの身の振り方が私の知らないところで決められても大変だし……う〜〜〜〜〜〜ん…………」
 そして後にはブツブツ煩悶する令子が残され、人工幽霊壱号としても声をかけづらかったりする。


「今夜のうちに出発するんですか?」
「まあね。小鳩ちゃんによると、夜行バスが一番安上がりなんだってさ」
 もっとも愛子は『学生は鈍行乗り継いでノンビリ旅行するのが青春なのに〜〜』ってゴネてたけどな……と苦笑いする横島。
「おキヌちゃん達は?」
「私たちは、明日の朝貸し切りバスで出発ですよ。会場で会ってからは、お互いライバルですね」
 横島の隣に座ったおキヌが、イタズラっぽい笑顔を浮かべる。この二人、ただ今事務所の玄関前の石段に腰掛けて話し込んでいた。
「ああ、それから愛子からおキヌちゃん達に伝言。『今度は勝つ!』だってさ」
「あ、私も弓さんや一文字さんから同じ伝言をもらってるんですよ」
 あの試合はウヤムヤになっちゃいましたからね……と、ほんの少し頬を赤く染めながらおキヌは付け加えた。
「さて、と」
 そう言って、おキヌはスカートの砂埃を払いながら立ち上がった。それに合わせるように、横島も立ち上がる。
「横島さん、お互いに頑張りましょうね」
「……そうだな」
 横島としてはそんなに日本一とか何とかに執着する気はないのだが、チームメイト達は大張り切りだ。友人達のために頑張ろうという気は、もちろん持ち合わせている。
「それからこれ、お守りだと思って持ってて下さい」
 そう言いながらおキヌが取り出したのは、二枚のバンダナである。何の意匠も施されていない、赤と白のシンプルなバンダナが一枚ずつ、彼女の両手の上にちょこんと載っていた。
「え、いいのか? サンキュ……っと」
 そのバンダナを受け取ろうとした横島、ハタとあることに気付いて服の上からポケットをまさぐった。そしてその後少し考え込んでから、自分が今頭に巻いているバンダナを外した。
「じゃあ、コレ……お守り代わりになるといいんだけど」
 で、その二枚のバンダナを左手で受け取るのと入れ替わりに、右手に持った自分のバンダナを彼女の手の上に置いた。そして二枚のうちの一枚の、赤い方を試みに身につけようとして――その赤いバンダナは“赤”と言うよりむしろ“朱色”をしていて、しかも微妙に布地自体が使い込んだ感じがする事に気がついた。
「なあおキヌちゃん、やっぱりこれって……」
「だ、大丈夫です! ちゃんと洗濯しましたし、それに傷も痛みもないところを仕立て直しましたからっ!」
「あ、そう……ありがと」
 改めて礼を言ってから、内心で『ひょっとしてこれ、300年前の由緒正しい品なんじゃ……』と勘繰りながら、横島はその新しい(?)バンダナを頭に巻き付けた。
「じゃあ、美神さんに挨拶してくるかな」
「あ、私も一緒に行きます」
 そうして二人はうなずき合い、手をつないだまま事務所の中に入っていった。


 翌日、午前8時30分ぐらい。六道女学院、玄関前。
「ふわぁああ〜〜〜っ……」
 出発30分前に学生寮から出てきた二人の女生徒のうちの一人が、周囲に人影がないのをいい事に大あくびをついた。
「よしなさいよクリス、みっともない」
「だってしょうがないじゃん? こっちは昨日実家から帰ってきたばかりで、時差ボケが抜けてないんだって」
「そ、それって自慢〜〜!? それとも皮肉〜〜!? 私は海外旅行した事なんて無いのに、クラスメートにハワイ出身者がいるなんて〜〜!」
「ひがまない、ひがまない。大体ハワイって言っても周りは軍人と観光客ばっかりで、住んでる側からしたらそんな楽しいってものでもないよ」
 六道女学院は日本各地の有名な寺や神社の生まれの生徒も多いが、さり気なく留学生も多い。だからこうして、神社の跡取りで海外旅行経験ゼロの“神野 志保”と、ハワイ出身の日系五世“クリスティン 峰”が同じチームに入るという現象もさして奇異なものではない。

「それにしても、少し来るのが早かったかな〜……神野さんは、誰が早く来て誰が遅くなると思う?」
「あんたもヒマな事を考えるわね……んー、まずお堅い鬼道先生が来て、次にこれまたお堅い弓さん、峯さんと花園さんは連れだって出てきて、松田さんと白崎さんは5分前か時間こっきりぐらい、ルーズそうな一文字さんとトロそうな氷室さんや六道先生は少し遅れて来るんじゃない? 桜井先生は……あの人、いつの間にかいるのよね」
 そんなざっとした予想を、神野はまず立ててみた。
「氷室さんはトロいかも知れないけど、遅刻はしないんでない? あの子元をたどれば江戸時代の産まれらしいし、昔の人は早寝早起きだったんでしょ?」
「昔はそうかも知れないけど、今は普通の現代っ子でしょう? それにあの子彼氏つきだし、しかもその彼氏はスケベだって事だから、昨夜も遅くまでしっぽりと……」
「やっぱり、する事してるのかな? でも、やり過ぎると足腰に悪いんでない?」
「……何を考えてそんな話をこんな所でしてるのさ?」
「「はっ!?」」
 第三の声に二人がそちらを向くと、そこにいたのはそばかすの多い顔の目元を前髪で隠し気味にした少女である。
「ま、松田さん……早いのね」
「早くて文句を言われる筋合いがあるの? あたしは先に乗ってるよ」
 2年D組代表の実戦派“松田 悠里”は、戸惑い気味な神野&クリスの視線をよそに、とっとと貸し切りの観光バスの中に乗り込んでいった。

「グッモーニン松田さん、早いのね」
「おはようございます、桜井先生」

「「ホントに桜井先生いるっ!?」」
 桜井先生の正体が美神親子の上を行く世界トップクラスのGSではないかという噂も、こういうミステリアスさを見せつけられるとあながちデマとは思えなくなってくる二人である。


 数分後。
「それじゃあ皆さん、行ってきます。見送り、ありがとうございました」
 と、校門の方から聞こえてくるのは、紛れもなく氷室キヌの声である。
「ああ、来た来た。さすがに氷室さん早い……い゛?」
「うわっ……!?」
 バスに乗り込みもしないで待ち構えていたG組の二人が校門に目を向け……予想外の光景に絶句した。
「ワシらは応援には行けないが、頑張って来てのう」
「君が帰ってきたら、君の活躍をたたえる歌を熱唱してみせるぜっ!」
「ガンバんなよ!? 美神にも横島にも、いいとこバシッと見せてくるんだぜ」
「はいっ、ありがとうございます! 私、頑張って来ます!」
 霊感の無い人達から見るとあらぬ方におキヌが話しかけているとしか思えないだろうが、霊能科の学友達には、彼女が石神やジェームズ伝次郎を始めとするご町内の浮遊霊の皆さんに取り囲まれて声援を浴びている模様がハッキリ見えている。
「ああいう姿を見ると、氷室さんが元幽霊だって事を実感するわね……」
「……同感」
 別に害のない浮遊霊をどうこうするつもりもないが、ああも浮遊霊と親しく会話している姿はいささか奇異に思えてならないのも、霊能力者の養成校の生徒達の実感ではある。

「あの〜……氷室さんも浮遊霊さんの皆さんも、通してくれません?」
「あ、白崎さんおはようございます! じゃあ皆さん、行ってきます!」
 2年D組の代表の二人目・イージス結界師“白崎 咲夜”が校門前にたどり着いたところで、おキヌも浮遊霊達に一礼して校門をくぐって来た。
「皆さん、おはようございます! 明日からの大会、頑張りましょう!」
「え、ええ……そうね」
「氷室さん、相変わらず元気だねえ」
「それぐらいしか取り柄がありませんから」
 あながち謙遜とも思えない返事を返してから、おキヌもバスのタラップを元気よく駆け上がっていった。
「何かいい事あったのかな?」
「さ、さあ……」
「そこまでは……」
 その“いい事”が男がらみかも、と思うとさすがに詮索はできなかった。


 続いて、出発予定時刻の10分前。
「お、今度は弓だ」
「うわっ、しかも男のバイクとタンデムだなんて! あれが噂の雪之丞さん!?」
「意外と、背の低い人なんですねえ」
 “海外旅行”のみならず“彼氏”にも過敏に反応する神野、そしてサラリと手厳しい評価をする白崎。三人の視線の先で、側車から荷物を降ろした弓が目つきの鋭い小柄な男――言うまでもなく、人呼んで伊達雪之丞だ――と、二言三言会話しているのが見えた。いや、会話と言うには剣呑な調子だったのだが…………

「お、おはようございます……え、え〜っと……」
 雪之丞運転によるバイクが走り去った後、弓かおりはいささかバツの悪そうな表情でバスのところまで歩いてきた。その顔は陽に焼けている上にバンソーコーも二ヵ所ばかり貼られていて、なかなかに派手なトレーニングを積んできたらしい事が一目瞭然である。
「何の事でケンカしてたの?」
「け、ケンカだなんて、そんな……!」
「校門の真正面でバイクを止めたので、その事で怒ったとか?」
「…………ノーコメントです」
 “否定しない”はこういう場では“限りなく肯定に近い”と受け止められるものだが、それを失念したらしい弓はそそくさとバスに乗り込んでしまった。


 さらに5分後。
「ウチにはいないけど、福岡の太宰府学院なんかはあっちからの留学生が結構いるみたいよ」
「あ、聞いた事あるわね。あっちは30年以上前の文革でオカルト業界が大打撃を受けて、実力のあるGSなんか一時期全滅状態だったって」
「だからワザワザ日本に留学してオカルトを学ぶって事かあ……っと、おはようございま〜す」
 と会話しながらバスに乗り込んできたのは、実家の所在が日本最大の中華街という共通点を持つD組のキョンシー使い“花園 玲”とG組の主将格“峯 明日香”の両名。なお、華僑としての名前はそれぞれ“ファ・ヤンリン”と“フェン・ミンシャン”と言うらしいが、学校内ではこの呼び方は使わない。
 こうして見ると、六道女学院は生徒の出身地が本当に様々だという事が見てとる事ができるだろう。何せ日本という国は悪く言えば無宗教だが、よく取れば信仰に対してやたら寛容なところがあるから、仏教・神道・キリスト教・道教・果ては黒魔術やブードゥーに至るまで、ありとあらゆるタイプのオカルト技術が共存・競合しているという面がある。だから、留学生も自分に合った流儀での技術を磨くべくやって来るのだろうか。


「わ、悪い! パトカーに職質されたら、遅くなっちまった!」
 9時を1〜2分過ぎた頃になって、一文字魔理が息を切らせながらバスに駆け込んできた。
「……一文字さん、その格好で学校まで来てたの?」
「わ、悪いかよ? あたしら、別に京都まで修学旅行に行くワケじゃないんだろーが」
 “族”の戦闘服みたいな服装をしていて、カバンから二本の木刀が丸見えになっている状態でスクーターを走らせていれば、そりゃレディースの出入りか何かと思われても不思議はないだろう。もちろん残りの選手達が制服なり私服なり、普通の服装なのは言うまでもない。
「一文字さん、試合は明日ですよ? 着替えの服とか、ちゃんと持ってますか?」
「そりゃあ、当然……あ、でも普段着や制服は持ってきてねえ……」
 既にバスに乗り込んでいた面々のうち何人かが内心で“(アホ)(バカ)だ……”と感想を述べた。


「鬼道先生も六道先生も、遅いわね」
「鬼道先生まで遅いって事は……やっぱり二人一緒に来るのかな?」
「や、やっぱりあの二人も昨夜はしっぽりと……」
「そのネタしつこい!」
 横島とおキヌの関係もそうだが、鬼道政樹と冥子の関係というのもあの学校対抗試合ですっかり公認されてしまっているから、茶化される鬼道の苦労たるや推して知るべし。

 で、そんなこんなでもう数分経ってから六道女学院の駐車場に一台のリムジンが駆け込んできた。
「ゴメンね政樹くん〜、荷物持ってもらっちゃって〜」
「あ、ああ、まあ気にせんといてや。これもトレーニングの一環やと思えば……」
「ありがとう〜、政樹くんのそういうところ、冥子大好き〜」
 後部座席から降りてきたのは身一つの冥子と、アタッシュケースを両手に二つずつ持ち、肩からショルダーバッグを三つ引っかけた鬼道の二人である。

「何か、いい様に使われてないか? 鬼道先生って……あ、六道先生と言うよりは理事長の方にだけど」
「何だか、昔の美神さんと横島さんを思い出すなあ……」
「六道先生には悪気はないんでしょうけど……」
 何となく、さっきまで鬼道を話のタネにしていた事を申し訳なく思ってしまう生徒一同であった。


 こうして、六道女学院の選手団も東京を出発した。
 会場近くの京都市内で、横島達と奇遇にも宿泊先が同じで一騒ぎあったのだが、ここでは詳細は語らない。


 同日・正午過ぎ、大阪市立天王寺高校・校門前。
「今ここにいない連中も、宿舎の場所は承知しとるんやろ?」
 妙神山に修行に行った時の出で立ちで、その少女は集まってきたチームメイト達に尋ねた。
「それは大丈夫よ? もう1学期のうちから、くどいぐらいに説明しといたんやさかい」
 大阪人にしては少しゆっくり目な喋り方で、二十台半ばぐらいの女性――おそらく顧問の先生か何かだろう――がノホホンとした表情で答えた。
「オーケー、ほいじゃ行きますか。来とらん連中も、明日の朝には来るやろうし」
 会場が近いゆえの――と言っても京都と大阪はそれなりに離れているのだが――気安さも手伝って、彼女……真田 夏子はあっさりそう言って歩き出した。
「ああ、夏子ちゃん、ちょっと待ってえな〜〜」
「集合時刻から10分もたってれば、充分待ったやろ。遅れた連中からは連絡ぐらいあるやろし、チャッチャと行こチャッチャと」
「先生、行こうって。別に、行方不明になったってわけでもないんやから」
「そうそう。気にしない、気にしない」
 ほんの少しだけ夏子を引き留めようとした先生の背中を、今度は後ろから女生徒二人がグイグイ押し始めた。それを見ていた他のメンバーも、苦笑混じりに夏子の背中を追い始める。この一団の歩く先は貸し切りバス――なんて豪華なものではなく、JR・市営地下鉄の天王寺駅であった。


 ――――こうして、役者は着々と揃いだす。


 本邦初の高校霊能選手権の開催地が東京ではなく京都なのは、実のところ深い意味はない。ただ、GS資格試験が毎年東京で開催されている事について、GS協会の西日本の支部から若干の不平があったことをある程度考慮しての結果らしい。が、GSの中でも古くからの家柄となると本家はこのかつての宮城にある事が珍しくないから(六道家や鬼道家なども、そういう流れを汲んでいるようだ)、そのあたりも影響しているのかも知れない。

 そういった経緯により、栄えある第1回大会の会場に選ばれたのは、右京区のとある陸上競技場であった。


ざわざわざわざわ…………

「思ったより大勢いるんやなあ……」
 去年受けたGS試験に比べれば少ないにしても、競技スペースだけで100人は軽く超す人が集まっている競技場のトラックエリアで、横島は感心したように言った。フィールドコートの中には、この前の対抗試合の時のような法円が二面しつらえてある。
「さっき受付で聞いたんですけど、15〜6校ぐらいの高校から30チームぐらいが集まってるんだそうですよ。コーチの人やマネージャーさん達に、それに役員の方も入れると、200人以上はいるんじゃないでしょうか?」
 と、横島の隣でやっぱり会場の様子を眺めていたおキヌが、そう説明してくれた。二人ともいつもの除霊時の服装で、横島はおキヌにもらったバンダナのうち朱色のものを頭に巻いている。その隣のおキヌはというと、横島から譲られたバンダナを腰のあたりで髪留めにしていた。
「やっぱりこういうの、あがっちまうよな〜……おキヌちゃんも、やっぱり緊張してる?」
「緊張はしてますけど……学校のみんなと一緒だし、それに横島さんも一緒ですから、心強いです」
 そう言いながら、おキヌは視線をフィールドに向けたままそっと右手を横に伸ばし、横島の左手にそっと触れる。そして彼の手の温かさを感じ取ろうとしてか、彼の左手をそっと右手で包み込む―――


「あれ? ひょっとして、おキヌちゃんとちゃう?」
 ちょうどその直前に、二人の後ろから声がかかった。
「え?」
「ん?」
 二人が声の方に向き直ると、そこには同じく高校生ぐらいの年の頃で、膝ぐらいまで届く長髪をなびかせ、近畿地区の某代表的プロ野球球団のホーム用ユニフォームによく似た服装をした一人の少女がいた。その元気のよさそうな、それでいて凛とした美しさを備えたその姿に、横島の眉がピンと跳ね上がる。
「やあ、こんにちはっ! おキヌちゃんの知り合い? 俺はよ……こ……――――?」
 そして速攻でナンパしようとした――隣におキヌがいるというのに、だ! こういうあたりは、どうも頭より速く脊髄か下半身が勝手に反応してしまうらしい――横島は、何か頭の片隅に引っかかるものを感じて言葉を続けるのをやめた。

「ああ、やっぱりおキヌちゃんや。おキヌちゃんも、選手として出場するんやな」
「はいっ! おかげ様で、私もこの大会の選手に選ばれました!」
 横島が声をかけるのをためらっているうちに、おキヌとその少女は何やら挨拶を交わしていた。
「えっと……おキヌちゃん、この人と知り合い?」
「ま、チョイと縁があったんや。あ! ひょっとしておキヌちゃん、この人がこの前言ってたおキヌちゃんの彼氏なんか?」
「か、彼氏だなんて……面と向かって言われると、まだ恥ずかしいです……」
 照れたように頬を赤らめ、肩をすくめながら恥じらう仕草をするおキヌだったが、すぐに気持ちを切り替える。
「紹介しますね。こちらは私が妙神山で修行していた時に一緒だった、大阪の“真田 夏子”さんです。それで、この人が前に夏子さんにお話しした……“横島 忠夫”さんです」
 と、ニコニコ笑いながらおキヌは二人をそう引き合わせた。

 ……………………………………

「……あれ?」
 何故か会話が続かない事におキヌが首をかしげる。彼女の視界の両脇で、それぞれの表情は微妙に硬直気味だった。
「よ……横島……忠夫……?」
「真田…………な、夏子?」
 おキヌが告げた名前を噛みしめるかのように、それぞれがお互いの名前を口にする。ややあって、横島がおそるおそる口を開いた。
「……ひょっとして、浪速の松屋町筋に住んでたりした……?」
「そちらこそ、もしかせんでも日本橋の市営住宅に小学生の頃おったとか……」
 隣で聞いているおキヌにはピンと来ない地名を、二人ともボソボソと並べた。そして、数秒の沈黙の後横島がため息を一つ吐き出した。
「見た事があるはずや……まさかとは思ったけど、こんな所で本当に夏子に会うとはな〜……」
「……横島…………」
 その言葉が決定打になったのか、緊張していた夏子の表情が心なしか崩れた。
「あ、あの……ひょっとして、お知り合いだったんですか? 横島さんと夏子さんって……」
 隣でキョトンとしていたおキヌも二人の様子に気付いて、横島にそう尋ねた。
「あ、ああ……しょ、小学校が同じでさ…………」
 少しどもり気味にそう説明してから、横島はもう一度ため息をつく。
「……夏子、久しぶり」
「横島ぁ……」
 苦笑する横島を見つめながら、夏子はほんの少し目を潤ませながら一歩前に進み出る。


「…………このバカっタレぇぇぇっ!!!」
 バキッ!!
「ごふぁっ!!??」

 ……そして、絶叫しながら横島の頬桁に渾身の右フックを叩き込んだ。


「な、夏子さん……!?」
「な゛………!?」
 息を呑むおキヌ、吹っ飛ばされて尻餅をつく横島、そしてその横島を肩を怒らせて見下ろす夏子。この出来事に、周囲にいた選手達も会話をやめて一斉に三人の方向を向いた。
「6年やぞ、6年! 何で連絡一つくれんのや!? 何べんも手紙書いたのに、返事一つよこさんで! ウチがあんたの事、どれだけ心配したと思ってるんやっ!!?」
「あ、あのなあ……――!?」
 怒鳴り返そうとした横島だが、言いかけてそのまま絶句してしまった。夏子の怒りに気圧されたからではない。その逆である。彼女の頬を光るものが濡らしているという事実が、彼に反論を許さなかった。
「なんで!? なんであんたは、人の気持ちに気づきもしないで……ウチをこんな気持ちにさせたまんま、一人でさっさと…………」
「夏子さん……?」
「な、夏子……お前……?」
 夏子の声もまた、しゃくり上げるような泣き声にかき消されて、やがて聞こえなくなった。


「な、せ、先生!? これは一体いかなる事でござ……る、か……」
「よ、横島さん……?」
 騒ぎを聞きつけたシロ達が駆けつけてきたが、彼女たちもその場の異様な雰囲気にそれ以上踏み込む事ができなかった。殴られて尻餅をついている横島、肩を震わせて泣く夏子、そしてオロオロするおキヌ。こういう状況を、普通は何と言うだろうか……? そう。人、それを“修羅場”と呼ぶ。


「……世の中というモンは、なかなか面白くできとるもんや」
 少し平静を取り戻した夏子が、ポツリと自嘲気味に言った。
「妙神山で話のタネにしたお互いの“ホレた男”が、よもや同一人物やなんて、な」
「じゃ、じゃあ……やっぱり、あの時夏子さんが言ってたクラスメートの人って……?」
「ご明察。こいつが転校した後、私らはこいつの事“女泣かせの横島”なんて言うてたけど、な」
「いつ俺がお前らを泣かせたってんだ……いちち」
 殴られた頬をさすりながら、横島が不満げな表情をしつつ立ち上がる。 
「分かってない! 横っち、あんた分かってない! 私たちがどんな気持ちであんたを見送ったか、全然分かってない…………〜〜っ!」
 まくし立てかけて、途中で言葉を切る。そうだ、分かっていたはずだ。この横島という奴が、どれだけ鈍感な少年だったか、自分は知っている。

「夏子さん……?」
「……カンニン、おキヌちゃん。おキヌちゃんの彼氏がどんな奴やったか知りたかったし、会う機会があったら思いっきりお祝いしたろ思うとった……けど、それが横島やとしたら、話は別や」
 そう言いながら彼女は瞼の上を右手でグイと拭い、目を濡らすものを払いのけた。と同時に、妙神山に居た時におキヌの前で見せていた、あの不敵な笑みを浮かべる。
「横っち、おキヌちゃんはいい子や……それはウチも認める。あんたがウチの知ってる横っちのままでいるのなら、正直お似合いやとも思う……せやけど」
 そう言いながら夏子は左手を腰に当て、右手の指先をピンと横島の鼻先に突きつけた。
「おキヌちゃんとひっつくのも悪いとは言わんけど、昔の女とのケジメはちゃんとつけてくれるんやろうな?」
「「「「「え゛!?」」」」」
 まるっきり意表を突いた彼女の一言に、横島もおキヌもそろって絶句した。いやこの二人だけではなくて、周りで見ていたシロにタマモ、愛子に小鳩、ピート、タイガー、ヒャクメ……そして、直接関係ない野次馬達も含めて言葉を失った。

「別に、略奪愛に走るとまでは言わんよ。けど、私がタダで身を引くなんて思たらアカンで、横っちもおキヌちゃんも? そうやな……」
 目の前に突き出された指から逃げるように背筋をのけぞらせる横島を見すえたまま、夏子はニヤリと笑う。
「おキヌちゃんは横島と一緒にGSとしてやっていきたくて、妙神山であのしんどい修行をやり遂げたんや。二人がお互いに相応しい、それも二人でやっていける実力のGSになれるか……そこを尺度にさせてもらうわ」
 さらに後ろに反り返る横島の顔面の鼻っ面で指をパチンと鳴らしてから、彼女は右手を引っ込める。
「幸いこれから霊能の大会や、そいつで一勝負させてもらうで。横っちにおキヌちゃん、二人のうちどちらかがウチよりいい成績を残せたら、あんたらの仲を認めてやってもええ……ただし、二人がウチに負けるようなら」
 今度はおキヌの鼻先で指をパチンと鳴らし、夏子はおキヌの方も硬直させた。
「ウチは今度の秋のGS試験を受ける。そして首尾良く資格が取れたら、部活仲間と一緒に開業する腹なんや……その時は横っちをスカウトさせてもらう」
「ええっ!?」
 立て続けに飛んでくる爆弾発言に、おキヌ達はもう慌てるしかなくなってしまっている。
「受ける受けないは横っちの自由。おキヌちゃんが一緒に来てくれても、私は一向にかまへん……せやけど、二人の間には割り込ませてもらうで? GSとしての実力がもしウチに劣ってるようなら、な」
「な、夏子!? お、お前そんな横暴な……」
 自分達の意志を半ば無視して話をポンポン進める夏子に、横島は文句を言おうとしたのだが。

「な、何やのんこの騒ぎ? 夏子、どしたん!?」
「何、なに? 一体何しとんの?」
 少し遅れて騒ぎを聞きつけたらしい少女が二人、夏子のそばに駆け寄ってきた。
「ああ、素子も望もええところに来てくれたわ……二人とも、こいつが誰か分かる?」
 ショートカットでおとなしい感じの少女と、セミロングの髪型に丸眼鏡をかけた気の強そうなタイプの少女に向かって曰くありげな笑いを浮かべながら、夏子は親指で横島を示した。その二人の容貌にも、横島は何となく覚えがある。
「ひょっとして……望? それに素子まで?」
「私らの名前を知ってるって事は……まさか、横島!?」
「ええっ!? 夏子、そうなん!?」
「そ〜ゆ〜事。この二人が私のチームメイトや、あんじょうよろしゅうな」
 この二人も横島は知っている。夏子と同じく小学生時代のクラスメートだった女の子達だ。彼の記憶が確かなら、眼鏡の少女が“五藤 素子”、そしてショートカットの娘は“水無月 望”のはずだ。

「あれ〜、夏子ちゃんどうしたん? こんな所で大騒ぎなんて……あれ?」
 さらにその後ろから歩み寄ってきたのは、彼女たちより5〜6歳ほど年上の女性である。
「ひょっとして……おタダ?」
「そ、その言い方は……信之姉か……?」
「切っ掛けさえつかめば、イモヅル式に思い出すもんやな? そ、ウチの霊能部の顧問で、チームのコーチャー役の信之姉や」
 そして最後に出てきたのは、横島・夏子・それに近畿剛一こと銀一、三人にとって共通の近所のお姉さんにあたる“真田 信之(しの)”――夏子とはたまたま同じ苗字だが、血縁関係にはない――だった。


「……というワケや。私らのチームは偶然にも横島の知り合いばかり、それもあんたが嫌いやとかどーでもいいとか思うとる奴はおらへん。悪いけどあきらめの悪いのが揃っとるさかい、勝負は避けられないからな」
 そう言って、夏子は長髪をなびかせながら振り返ってその場を歩み去っていった。
「なあ夏子、どーゆー事なん? 横島の隣にいた巫女さんの子って、ひょっとして……」
「チョイ待ち、詳しい話はあっちでするわ」
「あらあら、何だか大変やねえ」
 そして市立天王寺高校のチームの面々も、夏子を追ってロッカールームの方へ歩み去っていった。


「よ、横島さん……ど、ど、どうしましょう?」
「……なんか、えらい事になっちまったなあ……」
 我に返ったおキヌがすがりついてくるのを受け止めながら、横島は困ったように天を仰いだ。
「妙神山で一緒に修行したって言ってたけど、やっぱり夏子の奴……強いのか?」
「はい……あの時は、間違いなく私より……」
「……そっか…………」
 無意識的におキヌは横島の手を握りしめていたが、お互いの手の感触がさっきに比べてずっと湿っぽい事に二人は気付かなかった。


  〜〜To Be Continued〜〜


 ―――次回予告―――


「軽い気持ちで参加したはずの全国大会が、俺とおキヌちゃん、それに夏子の修羅場に大発展!? 一体これはどーゆー事なんや!
 それにしても夏子の奴キレイになって……って、感心してる場合か! ここで夏子に負けたりしたら、おキヌちゃんに対して男が立たない! こーなったらもー、手加減無しの本気で行くしかないっ!


 次回、“『霊能の炎は燃えているか!?』1回戦 全国大会開幕!!”!!

 みんなまとめて極楽へ行かせ……て、どーするってんだ俺!」
(By横島)


 あとがき


 もうお忘れの方もかなりいらっしゃるとは思いますが、『小鳩バーガー』〜『学校対抗試合』〜『舞台裏』と続く一連の横島×おキヌの学園ドラマシリーズの続きを書かせていただくことにしました。今回からいよいよ全国大会編、横キヌのライバルとして登場願いましたのは夏子です。

 メインはこの3人の奇妙なトライアングルになりますが、周りを固めるキャラクターもある程度こちらで設定を作らせていただきました(特に、六道女学院の皆さん)。奇異に感じる方もいらっしゃるとは思いますが、色々な地域から色々なタイプが集まっているのが六女であり、他の色んな学校だと思っていますのである程度ご了承いただければ幸いです。

 更新ペースが物凄く遅くなっている気もしますが、いりあすの一身上に何事もない限りは最後まで書かせていただきたいと思ってます。予定としては、開会式から決勝まで、全6〜7話ぐらいに分けていきたいと思いますので、どうぞ一つよろしくお願いします。


 なお、『舞台裏』に比べると若干夏子達の大阪弁が怪しくなるかも知れません。いりあすはご当地の人間ではないので大阪人達の話し方の書き分けにあまり自身がありませんので、あまりおかしな喋りになっている場合はどうぞ容赦なく突っ込んで下さい。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze