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「光と影のカプリス 第84話(GS)」

クロト (2007-07-12 20:23/2007-07-16 19:29)
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 横島は軽くシャワーを浴びて心身ともにリフレッシュすると、居間に戻って家族会議の開催を宣言した。
 議題はもちろん、彼の竜神化についてである。
 ……が、その前に1つ気になることがあった。

「カリン、またお色直ししたのか?」

 今回のお召し物は黒っぽい薄手のセーターに白いフレアミニスカート、黒のサイハイソックスと(太腿の辺り以外は)やけに普通っぽいデザインである。ただ1点、直径10センチほどの黒地に白い模様が入った珠が幽霊時代のキヌの人魂(ひとだま)のようにふわふわ浮かんでいるのを除けばだが。
 しかし初Hまで成長の契機になるとは、自分もたいがい煩悩に特化したドスケベ野郎だと思う。

「ああ、林間学校の時は武器だけだったからな。これで一応今回のバージョンアップは完成したというところかな。
 で、この珠はいわゆる竜珠(りゅうじゅ)だ。竜がよく手に持ってたり、顎の下にあったりするあの宝珠だな。といってもこれはさっきまでの上着、つまり剛練武(ゴーレム)の鎧が変化したものだから、今は防御結界を張るしか能がないんだが。
 でも防御力はさらに強くなったし、特に霊体の触手とかネクロマンサーの笛とか、貫通力がないタイプの攻撃は体に触れられる前に遮断できるのが大きいな」

 そこでカリンはなぜか嬉しいような困ったような、複雑な表情で微苦笑を浮かべた。

「つまりいま着てるこの服は、防護服じゃなくて普通の服なんだ。
 だから今までの下着みたいにある程度デザインを変えることができるんだが……私はそんなにおまえとデートがしたかったのかな?」

 今までのチャイナドレスでは目立ちすぎて何かと不便があったのだが、これなら普通に街中を出歩くことができる。しかしその想いがバージョンアップの方向性に影響を与えたとすると、さすがにちょっと気恥ずかしいものがあった。
 ちなみに竜珠は服にくくりつけておく事も可能だから、目立って困るということはない。

「それから横島、栄光の手を出して見てくれ」
「栄光の手? あれはおまえがいる時はおまえの方に行ってるはずじゃ……あれ、出てきた」

 今は出て来ないはずの竜気の手袋が、なぜか横島の右手でオレンジ色の光を放って輝いている。横島が不思議に思ってカリンに顔を向けると少女はますます困ったような表情になって、

「ああ、それはおまえ専用になったんだ。
 ……私はよほどおまえのことが心配だったんだろうな」

 カリンは素手でも十分強いし、この前習得した炎のブレスもあるから武器がなくてもさほど困らない。だからそれを自分が使うのではなく、横島が自身を守るための力にしたいと「無意識に」思っていたせいでこうなったのだろう。
 横島もここまで想われれば、素直に感謝の言葉を述べるしかない。

「そっか……ありがとなカリン。でも素手になったんだから、これからはあんまり無理するなよ」
「ん、わかってる。おまえもそれを使いこなせるように、ちゃんと修行するんだぞ」
「う゛、地雷踏んだか!?」

 横島はそんなことを言ったが、口調はおどけた感じで本当にいやがっているようには見えなかった。

「でもおまえに剣がないってのは寂しいよな。ほら竜属性の戦士って、特別な剣持ってるヤツが多いだろ。所長とかセイ○ーとか、ダ○とかバ○ンとかラー○とかアト○シャンとか」
「ちょ、ちょっと待て横島。その発言はちょっとメタすぎるぞ」
「そ、そーよ横島。竜神化の話するんでしょ!?」
「……?」

 横島はなぜカリンとタマモが急に血相を変えたのか理解できなかったが、この話題に特に執着があったわけでもないのであっさりタマモの主張を受け入れた。

「そだな。まあ神通棍でも買っとけばちっとはマシになることだし、そんなに気にすることないか。
 で、シャワー浴びてる間に所長に言われたことをちょっと考えてみたんだが」

 まずは家族と友人についてである。
 カリンとタマモは当人に直接聞くとして、両親については判断要素から除外した。決まってから報告するのならともかく、決める前に意見を訊ねたらどんな嵐が起こるか見当もつかない。
 ただ基本的に親は子どもより先に死ぬ生き物なのだから、寿命が縮むならともかく延びる分にはさほど気に病む必要はないと思う。
 タダスケはそもそもよその世界の住人だから問題外だ。

「だから家族関係の方はあんまり気にしない方がいいよーな気がする。
 で、次は友達関係なんだが……」

 小竜姫とヒャクメと愛子とピートはガチで人外側だ。竜神になる道を選べば、彼女たちとはより親密に付き合えるようになるだろう。
 あとキヌは「死んでも生きられる」とか言っていたから幽霊になればあっち側だし、魔鈴もひょっとしたら魔女の秘法とかですでにあっち側の住人になってそうな気がする。訊ねる勇気はないが。
 それ以外の友人知人―――令子、美智恵、冥子、エミ、唐巣、雪之丞、鬼道などは人間側だが、人外側にはタマモもいるのだし、どちらを取るかと言われれば向こうに軍配が上がりそうだ。
 ちなみに他のクラスメイトたちなどは、初めから勘定に入っていない。

「で、おまえたちはどー思う?」

 とりあえず交友関係についてだけではあるが、自分の考えを述べ終わったら出席者の意見を尋ねる番である。
 別に言いなりになる気はないが、重要な参考意見として尊重するつもりだった。

「……私のことは気にするな。前にも言ったが、おまえの人生なんだからおまえの都合で決めればいい」

 しかしカリンはそれだけしか答えなかった。
 彼女自身はいつか横島に「竜気の陽神」について語ったことがあるように竜神化には大賛成なのだが、そのために彼の人生を曲げるようなことはしたくないのだ。
 むろん横島が自分の意志でその道を選んでくれるなら、大いに歓迎するのだけれど……。

「そりゃあんたがずっと一緒にいてくれるのはうれしいけど、でも友達がどーこーとかより、自分が何をしたいかで決めるべきじゃない?」

 タマモはしばらく首をひねっていたが、やがてそんなことを口にした。単純に自分の希望だけを述べるのではない辺り、この少女も横島の幸せをちゃんと考えてくれているようだ。
 彼女も学校で進路について聞く機会が何度もあったから、こういう思考法もできるようになったのである。竜神化といっても、ある意味就職先の1つのようなものではないか。
 むろん横島もそれについて考えないわけではない。

「ああ、それは俺も考えてはみたんだけどな。正直言ってよくわからんのだ」

 なにぶん情報が少なすぎる。竜神になった後の進路としていま考えつくのは、妙神山修行場への就職と竜神界に引越しという2つだが、前者は小竜姫がいるのは良いがあまりにも退屈そうだし、後者はちょっと怖い。この点は小竜姫に詳しい話を聞く必要があるだろう。
 竜神になればカリンやタマモとずっといちゃいちゃしていられるのだが、さすがの横島もこの辺りを解決せずに決断はできなかった。楽しいらぶらぶ生活も、まともに住む所あっての話である。

「神社でも建ててもらえたら面白そーなんだけどな。確か大宰府天満宮の菅原道真って神様も元は人間なんだろ? おキヌちゃんの実家だっておキヌちゃんを祀(まつ)ってたんだし」

 んでもって美女の願いをかなえてあげてネンゴロにー! などと竜神というより邪神のようなことを考えている煩悩バカであったが、実はこの案、単なる妄想のように見えてなかなかのアイデアであった。
 カリンがひょいと顔を上げて、

「ふむ、それは案外いい考えかも知れんな。もちろんいきなり横島を祀ってもらえるわけはないが、まずは妙神山の麓(ふもと)辺りに小山殿か彼女の師匠殿でも祀る神社を建てて、横島はそこの宮司になればいい。
 ずっと3人でいっしょに暮らせるし、小山殿ともいつでも会えるからな」

 妙神山修行場よりは退屈しないだろうし、竜神界よりは安穏に暮らせるだろう。小竜姫との付き合いを続けていれば、カリンが霊能を振るう機会もあるはずだ。そして横島にハクがついたら、独立して横島神社(仮称)を建ててもらえばいい。
 するとタマモがちょっと興味アリ、みたいな顔で食いついてきた。

「そーね、横島が宮司やるなら私が巫女さんやってあげるわよ。
 ……って、あれ? これって結構いけるんじゃない?」

 妙神山の麓なら自然豊かで空気もきれいだし、万が一のことがあっても修行場に避難できる。ド田舎とはいえ、竜神と妖狐が宮司と巫女をつとめるのだから参拝客は来るだろう。山の上じゃなくて麓だからTVやゲームもOKだし、それでも退屈になったらお揚げ道を習いに行ったり街中に遊びに行ったりと暇つぶしのネタにはことかかない。
 GSの手伝いをしているより平和で穏やかで安全で、それでいて遊びはしっかり楽しめる。横島だって別に悪霊をシバくのが好きというわけではないし、悪い話じゃないはずだ。

……革命的だわっ! そーよ、あんたは仮にも九尾の狐たるこの私の保護者なんだから、十把ひとからげのGSやGメンなんかより立派な神サマになるべきよ。
 これはもー決定事項ね、反論は受けつけないわ

「落ち着けタマモ殿」

 興奮のあまり横島の襟首をつかみ上げようとしたタマモだが、カリンに頭をぺいんとはたかれて墜落した。

「確かに私としてもお勧めの案だが、文字通り人生の分かれ道なんだからあまり慌てて決めるのは良くない。
 もう1度小山殿に詳しい話を聞いてから、改めてゆっくり考えよう」
「……そだな。じゃ、今日は疲れたしそろそろ寝るか」

 まことにもっともな話で、横島がうんうんと深く頷いて賛意を示す。タマモもさすがにこれ以上の無理押しは不利になるだけだとさとったらしく、あっさりと矛を収めた。

「……はーい。でもホントにちゃんと考えてね?」
「ん、わかってる。それじゃおやすみ、タマモ」
「うん、おやすみ」

 ―――その夜の横島の寝顔は、実にすっきりして幸せそうであったらしい。


 翌日の放課後。横島は愛子を小山事務所に連れて行こうと声をかけたが、あいにくと今日は別の友人と約束があるらしかった。

「あ、でもその後だったら行けるかしら。6時か7時くらいになっても大丈夫?」
「ああ、別にかまわねーよ。所長には7時くらいに来るって言っとくから」

 横島は屈託なくそう答えたが、実はその方が都合がよかった。竜神化関係の話は愛子に聞かせるのはまだ早いと思うから。
 そんなわけで横島がカリンとタマモと3人連れで事務所に行くと、小竜姫はカリンが妙に普通っぽい服を着ていたことに不思議そうな表情を見せ、ついで少女が腰に留めている球体を見て訝しげに首をかしげた。

「ああ、昨晩また変わったんだ。この珠は前の服が変化してできた竜珠で……」

 わざわざ小竜姫の顔色を読まなくても、説明を求めていることはすぐ分かる。カリンが横島にも話したことを(「デートがしたい」とかいった部分は抜きにして)説明してやると、なぜか小竜姫はがっくりと床に手をついて泣き崩れてしまった。

「そ、そんな、カリンさんに竜珠だなんて……私だってまだ持ってないのに……。
 やっぱり私はドジでのろまでヘタレな暴走小隆起なんでしょうか……えぐえぐ」
「あ、あの、所長? 竜珠ってのがどーゆーモノかはよく知りませんけど、カリンのはただの結界機なんだし、そんなに落ち込むことないんじゃ……?」

 驚いた横島が小竜姫の前にしゃがみこんでそう慰めてみたが、小竜姫は立ち上がろうとはしなかった。どうやら風水盤事件で唐巣と電話した時に受けた傷がまた開いてしまったようだ。

「で、でもこの成長の速さだと、そのうち他の神通力も使えるようになって私より格上になってしまうんじゃないかと思って……こんな簡単に弟子に追い抜かれる師匠なんて……えぐえぐ」
(うーん、どーしたもんかな)

 横島は対応に困ったが、放置しておくわけにもいかない。自分にも責任があることだし。

「いや所長、別に格とか力なんて関係ないっスよ。俺が成長してたとえ所長の100倍強い竜神になったとしても、所長は俺の師匠です。
 つーか所長ほど素敵な神さまなんて他にいないと思いますし」

 これは横島のまぎれもない本心で、それゆえに破壊力は絶大であった(注・人外限定)。

「よ、横島さん……!」

 感極まった小竜姫ががばっと身を起こし、ひしと横島に抱きつく。一瞬虚を突かれた横島だったが、即座に立ち直って抱き返そうとしたところで、

「あんぎゃぁぁぁ!?」

 頭部に異様な熱を感じて絶叫した。横島のナンパっぷりにヤキモチをやいたカリンとタマモのダブルファイヤーで髪の毛を燃やされているのだ。
 当然小竜姫を抱きしめるどころではなく、慌てて台所に走って水道で文字通り頭を冷やす。

「な、何しやがんだいきなり!? せめて所長を抱きしめて、ついでに乳と尻を撫でるまで待つくらいの思いやりはないのかぁぁぁーっ!」

 と横島が怒って文句を言うこと自体は当然であったが、台詞の中身はやっぱり邪であった。むろんこれで加害者2人が恐れ入るはずもなく、

「「あるかーーーっ!!」」

 呼吸ぴったりのWナックルパートがうなりをあげ、恋人の煩悩少年を壁にたたきつけるのだった。


 そのあと横島と小竜姫が落ち着いたところで、4人は横島が竜神になった場合に考えられる身の振り方について話し合うことになった。
 ちなみに竜珠というのは別名を如意宝珠(にょいほうじゅ)といって、あらゆる願いをかなえてくれる秘宝だという。もちろん現実にそんな都合のいいものがあるわけはなく、パワーや性質に応じた限度はあるのだけれど。
 竜の神通力の源とも言われているが、実際は竜の霊力が結晶化したもので、術を使うときに助けになるものだそうだ。
 小竜姫もこれを持てるだけの資質はあるのだが、竜の姿になると暴走してしまうのでまだできないらしい。

「それにしてもカリンさん、武器を譲った代わりに竜珠ができて、炎を吐けて竜気で爪も出せるなんて……本当に竜みたいになりましたねぇ。もしかしたら神通棍なんか持たない方が強いかも知れませんね」
「うーん、確かに神通棍は青竜刀や栄光の手に比べると物足りないからな……その割に高いし、非常用として持っててもらうくらいにしておこうかな?」
「そうですね。大してかさばるものでもありませんし、その辺りが順当だと思いますよ。
 ……っと、話がそれてしまいましたね。確かに竜神になった後の身の振り方についてお話しなかったのは手落ちでした」

 武神のサガなのか、つい話をバトルな方向に持っていってしまった小竜姫があわてて軌道を修正する。考えてみれば、昨日進路について話すのを忘れたのは全面的に自分のミスなのだ。

「さしあたって考えられるのは4つですね。
 まず1つめは正式に私の直属の部下になること。こう見えても私は竜王家の一員ですから、もし異動になって竜神界に行っても席はかなりいいですよ。
 2つめは竜神界の民間で暮らすこと。でもこれはいろいろ苦労が多いでしょうからお勧めはしません。
 3つめは竜神になったことを隠して、単に強い霊能者として生きること。ただ5年や10年ならともかく、20年経っても見た目が変わらなかったら周囲から変に思われるでしょうし、それにお友達との別れに立ち会うのはつらいでしょうから、これもお勧めはしません。
 4つめは人里を離れて、仙人や隠者のように暮らすこと。横島さんやタマモさんの趣味じゃないような気はしますけど、選択肢としては有りだと思います。
 ……私としては最初の案をとっても強く推しますが。お勧めです。できる限りの好待遇をお約束しますよ。あ、もちろんタマモさんとご一緒でかまいませんから」

 さすがに小竜姫は自分から話をもちかけただけあって、ちゃんと青写真を持っていた。それに彼女が竜神の王族だったというのは驚くべき新事実である。
 まあ横島的には小竜姫の身分などたいした問題ではなく、彼女が自分を迎えたいと思ってくれていることの方がはるかに重要だった。少なくとも彼女が出した4案の中では1番いい。
 しかし彼の左に座っていたタマモにとっては、いよいよライバルが本気になったことを示すアラートシグナルである。速攻で話に割って入った。

「うーん、そーゆーのも悪くはないけど、こっちの方でも『妙神神社』の宮司になるっていう案が出たんだけど、どー思う?」

 と昨晩話した「横島神社計画」を説明する。自分を祀ると聞いて小竜姫は驚いたが、考えてみればそれほど悪い案ではない。
 人界に住む本物の神である以上、祀られても別におかしくはないし、この話なら横島たちとの関係は今と似たようなものだ。いつでも会えるし、任務があれば協力してくれるだろう。
 ただ問題は、竜神=水神として祀られるにふさわしい力を自分が持っていないことだった。

「そうですねぇ。ダメとは言いませんが、今の私には雨を呼ぶ力はありませんから……いえ、実際に呼ぶかどうかは難しい判断になるんですけど、まったく呼べないのに雨乞いの祈りなんかささげられても困りますし」
「じゃあ呼べるようになったらOKなのね?」

 とタマモが身を乗り出して言質(げんち)を求める。
 小竜姫がここにいるのは再修行のためだと聞いた。ならいつか呼べるようになる日も来るだろう。

「はい。横島さんが本気でそういう人生を歩むというのなら、師として協力を惜しむつもりはありません」

 しかし小竜姫はタマモの思惑が分かっているのかいないのか、いたって真面目な顔でそう答えた。その真摯(しんし)さにタマモよりも横島が喜んで、

「ありがとうございます。どうするかはまだ決まってませんけど、きっちり考えて近いうちに結論出しますんで。
 ……ところで、昨日言ってた特殊な修行法って何なんスか?」

 まだ気になっていたらしい。横島がそう訊ねると小竜姫は昨日と同じく頬を赤くしたが、これ以上隠すのも意味がないと思ったのかぼそぼそと小さな声で白状した。

「…………例の『煩悩全開(小竜姫Ver)』です」

 あの技(?)は普段の横島の霊力をはるかに超えるパワーの竜気を彼の全身に満たすものだから、継続的に行えば普通の修行よりずっと早く霊体の質を変えることができるのだ。むろんやり過ぎは毒になるが、その辺りは小竜姫が監督していれば問題ない。
 ―――そしてそんなことを聞かされた横島の喜ぶまいことか。

「やります所長ッ! いやぜひやらせて下さい、必ずや立派な竜神になってみせまへぐあっ!?」

 横島がやる気1200%な顔つきでしゅばっと手を挙げるが、当然のお約束というべきか、途中でカリンに張り倒されて床に伏せる。カリンがそちらには目をくれもせず、

「小山殿、もう少し自分を大事にした方がいいのではないか? いくら師匠だからといって、そこまですることはないと思うぞ」

 と諌めたのも無理はなかったが、小竜姫は意外に頑固そうな顔つきでそれを却下した。

「はい、大事にしてますよ。私だって、弟子なら誰でもあんなこと許すってわけじゃありませんから」
「そ、そうか……そこまでの心底なら止められないが……」

 カリンはまだ納得してはいなかったが、小竜姫にこう出られてはこれ以上諌める言葉はなかった。小竜姫は横島とタマモの関係を知っているはずだが、ここまでの話で彼女が横島に横恋慕していると断定することはできないから。
 ちなみにタマモは煩悩全開(小竜姫Ver)のことは剣道場で船田健史の霊と戦った時のことしか知らないので、単純に弟子思いの師匠だとしか理解していなかったりする。
 果たして横島はどのような未来を選ぶのであろうか……?


 ―――つづく。

 今回いくつか出た小竜姫さまの設定について少々補足をば。
 まず身分ですが、以前にも書いた通り天龍童子との関わり方及び斉天大聖の弟子であるところから、西遊記に登場する玉龍の娘、つまり西海白竜王の孫娘だと設定しました。文字通りの王族であります。
 年齢は1千歳前後、天龍に比べると成長が速いのですが、同じ竜族でも生まれ持った霊力等によって成長速度(=老化速度、寿命)は異なるのだと解釈しました。
 竜珠については、原作「ドラゴンへの道」編で持っていなかったので持っていないことにしました。ただ香港編で雪之丞が「最近の人間界にはこいつほど強い神はザラにはいない」、文珠編で斉天大聖が「我々は人間界に駐留している神族の代表」と言っている点からパワー的には十分だけれど、逆鱗をさわられて「暴走」したことと、メドーサと空中戦をやった時に竜に変身しなかったことから、「竜の姿では理性を保てない」と考え、それを竜珠ができない理由としました。
 以上ご理解いただければ幸いです。
 あとこの際なので、主要キャラの現在のスキルを挙げておきます。

○横島
 スキル:栄光の手、炎のブレス、小竜気、陰陽術、煩悩全開、除霊具作成、復活(ギャグ)、人外キラー、悪運、商才
 解説:総合的には原作の文珠編直後(つまり《模》や《同》《期》がない状態)と同等程度の戦力になってると認識してます。

○カリン
 スキル:炎のブレス、小竜気、陰陽術、竜珠の結界、超加速(パワー上昇中のみ)、お札作成
 解説:影法師のくせに本体より強いです(笑)。

○タマモ
 スキル:幻術、変化の術、狐火、各種お揚げファイヤー、横島との人狐一体、お揚げ道(ぉ
 解説:狐火の扱いと料理の腕は原作より上です。

○小竜姫(封印中)
 スキル:断固仏罰剣、ヒーリング、お札作成
 解説:ヘタレ度は原作以上です(酷)。

○タダスケ
 原作と同じです。不幸度は(以下略)。

○令子、キヌ、魔鈴、ヒャクメ、冥子、エミ、愛子、鬼道
 原作の「バッド・ガールズ」編直後と同じです。

○唐巣、ピート、雪之丞
 原作の文珠編直前と同じです。

○美智恵
 原作のひのめ出産後と同じです。

○シロ
 原作のフェンリル編後+霊波刀投げの技を使えます。


 ではレス返しを。なお番外編01のレス返しは、番外編01のレス欄で致しましたので。

○アミーゴさん
 横島君の決断はもう少し先になりますー。時間に余裕があるのに即決しちゃうのも変ですから。
>ちゃっかり自分も入れている小竜姫様、まじ策士w
 修行は確実に進んでいるようです。周りにいるのは一筋縄ではいかない連中ばかりですからねぇw

○Tシローさん
 GMが来た時こそが、横島君の運命の真の分かれ道なのかも知れませんねぇ。
>一人前の竜神になるまで下界に下りてはいけないとか言われそう
 それはもしかして小竜姫さまの陰謀げふんげふん(ぉ
>でもココの横島は竜神になったほうが皆と楽しくやっていけそうな気がするよ
 筆者も何となく同感であります。

○アラヤさん
>更新
 は、早いのだけがとりえであります(ぉ
>小竜姫の重要プラグぽい
 人間ルートを選んじゃったら落とすのは難しくなりそうですが……さてさて。
>しかし、横島君が神様になったらどんなご利益があるんでしょうか?w
 もし将来横島神社ができたら、某メイ○ガイに出て来る神社っぽくなりそうな感じがします。
 お賽銭……女の子のHぽいイベント。
 ご利益……彼氏つくる以外ならたいていOK。
 ひでぇ(笑)。

○名無しのGSさん
「母」と「娘」を同時に怒らせた大樹に救いはありませんでした。
 今後の横島君の決断やら他のメンツの策動(ぉ)やらにご期待下さいー。

○kurageさん
>ホントに人間じゃないよ?と言える身分になった方がむしろスッキリするかもw
 全くその通りですねぇ。当人たちは全然自覚なさそうですけどw
>大樹氏
 確かに今回はいいとこあまり無かったですからねぃ。もう1回くらいは出番あげたいものですな。

○チョーやんさん
>まぁ、カリンの行動以外は概ね予想通りでしたねぇ、これで美神さんの熱(?)も冷めたことでしょう
 大樹来襲編はカリンのアレを思いついたからこそのエピソードでしたから(^^
 令子さんもこれで少しは慎重になることでしょう。
>人生の岐路の選択
 ご意見ありがとうございます。
 確かにその通りですね。これほど重大なことを簡単に決めてしまっては、キャラクター自体が薄っぺらいものになりかねませんし。
 筆者の力量で描き切れるかどうかは分かりませんが、できるだけの努力はしたいと思います。
 その割には「煩悩全開(小竜姫Ver)」に釣られてますが、これは横島君だから仕方ないということで(ぉ
>誰の血を抜いたんだと子一時間問い詰めたry
 その辺はオカルトGメンの触れてはいけない暗部で(以下略)。

○通りすがりのヘタレさん
>憐れな大樹に正義の鉄槌が下された!
 考えてみれば彼は会社のOLたちも口説きまくってたわけですから、罰はむしろ軽すぎたかも知れませんな。
>タダスケ
 彼の場合は出番がない方が幸せですからw
>小竜姫様
 一応いろんな進路を示してはいますけど、本音はだだ漏れになっております(笑)。
 でも愛の告白ではないところがミソなのです。
>タマモやカリンにとっては、むしろ横島君の竜神化はメリットになりそうですね
 単純にメリットばかりとはいかなさそうですがw
>愛子
 次回事務所に来る……はずです(^^;

○whiteangelさん
>人界には”横島神”ではなく”煩悩神”として崇められそう
 それって「神」と呼んでいいものなんでしょうか(^^;
 男女差別も激しそうですしw

○HALさん
 子を想う母の愛ほど強いものはないのですよー。
 ご想像の通り家族会議から小竜姫さまとの会談につながりましたが、実に人間的な欲望と思惑が絡みまくっております(笑)。
>特殊な修行法
 今回ついにそのベールを脱ぎました。おっしゃる通り小竜姫さまに房(ぴー)術はできないでしょうから、この辺りが妥当かと。
>入籍とか事実婚とか
 横島君が竜神化ルートに入ったら策を練り出すかも知れませんねぇ(ぉ

○風来人さん
>令子
 筆者にもなぜこうなるのか分からないのですが、とりあえず美智恵は令子よりつおいということで宜しくお願いします(^^;

○遊鬼さん
>しかし、美智恵さんによる折檻はヤバそうですね
 それでも懲りないのが大樹クオリティだったりしますがw
>横島君を悪く言われた時のカリンの反応も可愛くてGJです
 ありがとうございますー。なにせ恋人同士になったばかりですから。
>霊体の竜神化まで半年から1年ってのはまた早いですねぇ
 横島君には煩悩全開という超技がありますからww
 彼の決断はも少しお待ち下さいー。

○読石さん
>大樹さん
 やってること考えれば当然の運命ですよねぇ(^^;;
>「呆けてない」カオスなら人の寿命から逸脱した先輩として良い助言が聞けそうな気がします
 そうですねぇ。彼がいればいろんな話を聞けるんでしょうけど、この世界ではまだヨーロッパにいますので、カリンやタマモたちとしか相談できないのですorz
>修行
 こういう流れだったのですよー。

○内海一弘さん
>まぁ身に覚えのあるリアルな可能性を垣間見てはねぇ
 覚えがなければ撃沈せずに済んだんでしょうけど、まさに自業自得でありました(笑)。
>母と娘
 ここの美智恵さんはキャラとして令子さんより強いですからねぇ。いっしょに出てしまったのが令子さんの運の尽きでありました(酷)。
>しっかり自分を数に入れている小竜姫
 そしていよいよ露骨な勧誘に(笑)。
 修行法は横島君がまじめにやればイエローで済むのですが、飛びかかっちゃうとピンクになりそうな気がします。

○鋼鉄の騎士さん
>隊長
 それはもう「あの」隊長さんですから、怒らせるなんてもっての他でありますよー。横島君が竜神になってもたぶん勝てません(笑)。
>カリンの愛
 ヤキモチも燃えてますw
>タダスケ
>帰れなくてもそれはそれで幸せになりそうな気もするw
 ヒドいw
 でも原作でもお姉ちゃんのいる飲み屋で楽しんでましたし、案外楽しく生きていけるのかも知れませんねぃ。

○KOS-MOSさん
 令子さんの出番が少ないのは仕様なので気にしないで下さい(ぉ
>大樹撃退
 口は災いの元というやつですな。
 実際に「つぶした」のは美智恵さんでしたがー。
>タダスケとブラドー
 たまには良いこともないとやってられませんものねぇヾ(´ー`)ノ
>霊体だけなら半年で竜神とは、霊能を覚えてからそんなにたたんのにやっぱ規格外なやっちゃなぁー
 横島君の最大の特質を生かした修行法ですから!

○ばーばろさん
>うんうん、カリンたんは「ウソは言ってない」
 嘘をつくと発言自体が薄っぺらくなっちゃいますからねー。これも横島流の一端であります。
>ヨコシマの思考そのままの事をやるパパ
 まさに親子ですな。技量には年季の差が見られますがw
>カリンたんをパパに見せなかった事をこうもってきましたか。巧い展開だと思います
 ありがとうございますー。ここが大樹編のキモでしたから。
>それをやらないところが、親父との差なわけだからねぇ
 今回思いっきりやってしまいました(^^;
 お仕置きはちゃんと受けましたが!
>小竜姫さま
 彼女のヤる気はイエローレベルというところでしょうか。
 しかし悶える小竜姫さまと2人っきりという状況で、はたして横島が飛びかからずにいられるのか!? 以下ネタバレにつき削除(ぉぃ
>ヨコシマにやるのが惜しい
 筆者も惜しいです<マテ

○Februaryさん
>「竜神横島の母」として百合子が崇められる姿
 うーん、まさに教祖ってやつですな(汗)。
 百合子さん案外簡単に受け入れてくれるかも(^^;
>最初に焼いたのが横島本体だけあって、ギャグ方面での出番が多いですね〜
 ほとんどのキャラが大道芸だと認識してる技ですからw
 それでこそ横島だと思うのであります。
>「見に覚えのある反応をした」ことがGMにばれたらどうなるんでしょう
 それはもう、「バ」指定が10個くらい必要なスプラッタ行為に(ガクブル)。
>ホントに誰の血なんですか?
 令子さんの血だったら彼女の血の気も少なくなって一石二鳥なんですが、詳しいことは闇の中です(ぉ

○@okiさん
 横島君は現在Bボタンを押すべきかどうか慎重に考えてる最中であります。まさに人生の岐路ですから。
>横島君のことだから、判断基準はきっと女の子なんだろうな〜
 思い切り釣られてます(笑)。

○トトロさん
 このSSでは現在デタントが成立してますので、神族と魔族が仲良くなることはできます。が、問題は今後魔族の新女性キャラが出る予定がないことでしてorz
 いあアシュ編がありませんのでこのSS(o_ _)o

○hiroshiさん
>竜神は、西洋では悪神、東洋では敬意を払われる神という扱いですからね
 その辺がメドさんと小竜姫さまの立場の差なのかも知れませんねぇ。
>いけ横島、全コンプリートをめざせ!!
 うーん、このSSではワルQもルシベスパピも登場予定ありませんからねぃ……メドさんは小竜姫さまの宿敵ですしorz

○にゃむこさん
 カリンを気に入っていただけて大変うれしいです。今後ともよろしくお願いします。
 美神さんは……うーむ、こういう方もいらっしゃるんですねぇ(^^;
>ハーレム
 横島君のあんまりなご乱行は、カリンとタマモが許さないと思いますーw

○HEY2さん
>大樹強制送還………どう考えても『貨物扱い』しか画が浮かんで来ませんでした
 うーん、美智恵さんのことですから本当にそうした可能性が高いですなぁ。怖いです(汗)。
>大樹も下手に報告してヤブヘビ出したくは無いでしょうからねぇ
 かと言って黙ってたことが後でバレたら怖いので、そうとう深刻に悩みそうですな(笑)。
>特殊な修行法
 ピンクに進むかイエローに終わるかは横島君次第であります!

○名称詐称主義さん
 横島君は生まれた時から人間じゃなかったような気も致しますが<マテ
>ブラドーの特別手当
 美智恵さんの血って……バレないのか!? いやわかってても怖くて指摘できないという可能性も(笑)。
>横島の今後
 エネルギー結晶の時と違って時間に余裕がありますから、もう少し考えてからにするようです。

○UEPONさん
>ああ、装具にチャージしてた小竜気使ったんですね
 はい、その通りであります。
>なんか、飛んで火に入る夏の虫っぽい?
 しかし本人がそれを望んでるフシがありますからねぇ。どうなることやら。
>ハーレムに入れそうな女性
 誰もヒャクメをカウントしないところがいけてます(酷)。
>紅ユリさまがどんなリアクションするのか
 予測するのは非常に難しいですが、大阪弁の怒号が飛ぶことだけは間違いないような気がします。
>怒濤のごとく砂糖を吐きそうなだだ甘の話はマジで期待してます
 は、こちらはガンガン書く予定ですよー。

○白鴉さん
 初めましてでしょうか。今後ともよろしくお願いします。
>龍は、情が深いとか多淫だとか云われますが、それが横島っぽいなあと
 なるほど、確かに横島らしいですね。竜は怒らせると怖い生き物ですが、横島も決めるときは決める男ですし。
>問題は、寿命云々以上に竜神になった事で発生するかもしれない柵でしょうか
 もちろん何の問題もなくというわけにはいかないのですが、この辺りは先をお待ち下さいませ。

   ではまた。

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