その日も暮れて、横島家の居間にて。
小竜姫からめちゃくちゃ重い課題を突きつけられた横島ではあるが、現在のところその心中は別のことで占められていた。
いや課題のことも真剣に考えるつもりはあるのだが、それは今日明日に結論を出さねばならぬ事ではないので、まずは昨日できなかった事をやりとげて気分をすっきりさせてからにしたいのである。というかそれをしなければ、腰をすえて人生について考えることなどできやしない。
「つーわけで、カリン! 俺としては難しーこと考える前に、恋人同士の契りをかわしておくのがベターだと思うんだが」
多少ぼかしてはいるが、要するにカリンとヤりたいという事のようだ。鼻をフンフン鳴らしてまことに見苦しい姿である。
カリンはやれやれと肩をすくめたが、この辺りは告白した時点で覚悟を決めていたことだ。
「わかったわかった……タマモ殿、すまないが今夜は譲ってくれるか?」
それでも律儀に「先輩」に声をかけると、タマモも同じような仕草ではあっと息をついて、
「いいわよ。それじゃ私は耳栓して寝てるから」
とあっさり自室に引っ込んでしまった。二股(?)を許した時点で承知していたことだから、今さらとやかく言う気はないのだ。
ということで、横島の部屋で2人きりになった煩悩少年と影法師娘だったが……。
「あー、えっと、本当にいいのか? やけに簡単にOKしてくれたけど……」
横島はいざとなると微妙に足踏みするタイプのようだ。カリンはおかしそうに口元を綻ばせて、
「自分から要求しておいて、今さら何を言ってるんだか。
それに今おまえにおあずけ食わせたら、とてもまともに進路のことなんて考えられなくなるだろうからな。ふふっ……」
「……う゛」
すっかり心を見透かされている横島だったが、事実なので反論のしようがなかった。
「でもその前に言ってほしいことがあるんだが……わかるか?」
「……」
横島は女心にさとい方ではないが、以前からタマモと付き合っている身だからそのくらいの想像はつく。そういえばカリンにはまだその言葉は言っていなかった。
正直なところ、恋とか愛とかいう感情がどういうものなのかはまだよく分からないのだが、この少女を大切に思っていることだけは混じり気なしの真実だ。
「恋とか愛とかはよくわかんねーけど、影法師だからとかそーゆーの関係なしにおまえのことはホントに大事に思ってる。
まー、何だ、その。す……好きだ。えっと、こ、これじゃダメか?」
こういう台詞を吐くのはルパ○ダイブするより照れくさいし、これで納得してくれるかどうかはちょっと自信がなかったりもするのだが、カリンは彼の危惧に反して本当に満足そうな、星の輝きのようなきれいな笑顔を見せてくれた。
「いや、十分だ。変に飾った言葉を並べられるより、素直に本心を話してくれる方がうれしい。
ちゃんと告白してよかった。ありがとう、横島」
「え? あ、いやそれほどのことじゃ」
そこまで喜ばれると横島的にはかえって気が引けてしまうのだが、カリンはもうそんな呟き声など聞いていなかった。
布団の上にぺたんと座って少年に微笑みかける。
「さて、待たせたな……っと、そうそう。私を抱くときは生身の女の子と同じようにしてくれればいいが、処女膜なんて面倒なものはないしむろん妊娠なんてしないからな。安心してがんばってくれ」
「……」
影法師娘のあまりにもストレートな物言いに、さすがの横島もちょっとだけ鼻白んだ。何というか、仮にも初Hなんだからもう少しムードとか気分というものに配慮した表現があると思う。
「あははは、すまんすまん。おまえでもそういう事を気にするんだな。でも知っておいてよかったろう?」
「そ、そりゃそーだけどさ」
しかしそのクレームもあっさり切り返されて、横島はますます縮こまってしまった。確かにロストバージンの痛みを覚悟しなくていいのは嬉しいし、ゴムが要らないと分かったのもありがたい。
初Hで尻(?)に奇襲を受けたあげく自分で自分を孕ませたなんて事になったら、もう笑い話どころか首を吊るしかないと思っていたところだったから。
そんな恐怖想像に思わずビクッと身をすくませた横島をカリンはくすくす笑いながら見つめていたが、ふと表情を改めるとまじめな口調で、
「……まあ、それはそれとして。
私自身はこういうことは初めてだから、なるべくやさしくしてくれると助かる」
「ああ、わかってる」
横島にとってそれは言われるまでもない事だ。一点の迷いもなく頷くと、少女の真向かいにどこかぎこちない動作で腰を下ろした。
カリンの目の前5センチほどのところに、横島のちょっと暑苦しい顔が迫ってきていた。
「えっと、横島……? そんなに顔を近づけて何のつもりなんだ……?」
そんな間近で見つめられたら緊張してしまうではないか。
カリンがそう言うと、横島は逆に不本意そうな顔つきで言い返してきた。
「いや、やっぱ最初はキスからだと思ったんだが……つーかあんまり見つめられるとやりにくいから目つぶってくれるか?」
「え!? あ、ああ、そうか、そうだな……」
横島の言うことはもっともだ。カリンはあわてて目を閉じたが、何だか必要以上に体に力が入っている。
(ああそうか、こいつも緊張してるんだな)
横島はそんなカリンがひどく可愛らしく思えた。ついさっきまでは自分よりずっとあっけらかんとしていたが、いよいよその時が来たとなればやっぱり平静ではいられないのだろう。
「大丈夫だよ。俺がちゃんとリードするから……」
本当はここで軽く言葉イジメをしてみたかったのだが、殴られるだけならともかく、H自体を中止にされたらつらすぎるのでやめておいた。
両手でそっと少女の顔をはさんで、静かに唇をかさねる。
(キスするのはこれで2回目だったかな……?)
まずはほんの数秒、ふれ合うだけ。いったん離れたあと、今度は舌で少女の唇を割ってその中に潜り込ませた。同時に右手を後頭部に回して髪を撫で、左手は肩の上に置く。
カリンはべつに抗いもせず、横島のなすがままに任せていた。
「んっ……ん、はぁ……あ」
ときおり唇がわずかに離れると、そこからくぐもった吐息がもれる。横島は舌と舌をねちっこく絡ませ、さらに唇を甘噛みしたり歯茎の裏を舌先でなぞったりと執拗なディープキスを続けた。
(カリンは強いけど……やっぱり女の子なんだな)
精神力も戦闘能力も、カリンは自分よりはるかに強い。でも今撫でている肩はとても華奢で、それに早くもフィードバックしてきたカリンの口の中の感触は、「女の子が感じる」気持ち良さだった。
抱きしめてその身体の温かみを感じていると、本当にこの少女と恋人同士になったのだという実感が湧いてくる。
カリンはもうすっかり力を抜いて、横島に身体を預けてくれていた。
(俺が幸せにするなんてえらそーなことは言えねーけど……でもその手伝いくらいはするからな)
といっても相手は自分だからちと滑稽ではあるのだが、とにかく横島はそんな決意を固めると、キスしたままカリンの上着の襟の辺りに手をかけた。なるべく少女に意識させないよう、慎重に飾りボタンを外していく。
そして脇の下辺りまで外した……のはいいのだが、その先にはボタンがないではないか。
仕方なく唇を離して、当人に脱がせ方を訊ねることにする。
「………………ん? ああ、確かにこの服はこの体勢じゃ脱がせにくいな……」
カリンは数秒ほどぽーっとしていたが、やがて横島の希望を理解するとふらっと立ち上がった。袖ぐりから腕をぬくと上着の両肩をはだけて、足元までずり下ろす。
「……おおっ!」
初めて見る少女の下着姿に、横島は思わず鼻血を噴き出した。
いや正確には慰安旅行の時にハダカを見たのだが、あの時はスコープ越しだったし、何よりシチュエーションが違う。普段は剣士らしく凛としているこの少女が、今は我が半身のことながら匂い立つような艶っぽさがもーたまらん状態なのだ。
均整の取れた過不足ない肉付きに(霊体だが)、ぱんっと突き出た形のいい乳房、締まったウェストからしなやかな脚に続く曲線はもはや芸術的といっていい美しさである。
その胸と腰を包む下着は上下おそろいの水色のシンプルなもので、あろうことかパンツは紐結び型になっていた。
(ぬぅぅ、これは俺に獣になれと言ってるのか? いやいかん、今日だけは耐えるんだ俺、やさしくするって言ったろう!?
そーだ、こーゆーときは素数をかぞえるんだ。孤独は俺に勇気を(以下略))
「……何してるんだ横島?」
「え!?」
深刻な葛藤に陥っていた横島がその声ではっと気づくと、カリンが不思議そうに自分の顔を覗きこんでいた。ついでになぜか横島自身もいつの間にかパンツ一丁になってしまっている。
「……あれ?」
横島は何か面妖なことが起こったような気がしたが、深く考えたら負けっぽいのでとりあえず棚上げにすることにした。
「……じゃ、続きしていいか?」
「ん」
カリンが頷いて、布団の上にころんと横たわる。横島はその上に乗っかかって、頬やら首すじやら鎖骨やらにキスしつつ、少女の胸をさわさわと撫でさすった。
「んっ……あ……」
小さな喘ぎ声といっしょに、横島の後頭部と背中に少女のやわらかい手がかぶさってくる。横島はその初々しい反応に感動しつつ、カリンの背中に手を回してブラジャーのホックを外した。肩ヒモを腕から抜いて、上半身をハダカにしてやる。
ついにあらわになったきれいな双丘に思わず見とれる横島。
「……どうかしたか?」
「……あ、いや。あんまりキレイだからつい見とれちまって」
「そうか。ふふっ、おまえもお世辞なんて言えるようになったんだな」
「いや、マジなんだけど……まあいいや」
ここから先は言葉ではなく行動で語るべきだろう。横島は右乳をてのひら全体で揉みしだきつつ、左乳の先端に思い切りむしゃぶりついた。
「ひゃうっ!?」
可愛らしい悲鳴をあげるカリンだったが、横島も同時に胸の先にぴーんと痺れるようなフィードバックを受けていた。
「くうっ、これは効く……いや確かに気持ちいーんだけど、俺最後までもつかな……」
入れた瞬間ならまだしも、入れる前に発射なんかしてしまったら男としてこれ以上の恥はない。
するとカリンはくすくす笑いながら、
「じゃあ止めておくか? タマモ殿には適当に言いつくろっておいてやるから」
「なっ、何おう!? こ、ここまで来て引いてたまるかよ。こーなったらぜってーおまえを先にイかせちゃる」
横島は意地になってそう叫んだ。
この少女がわりと感じやすいボディをしていることは林間学校の時にわかっている。速攻で勝負を決めれば、カリンがイくまで何とかもたせる事はできるはずだ。
今度こそ本気になってさっきの続き、大きな胸を丹念に揉みほぐしつつもその先端にある突起をねぶりあげ、吸って摘んでつついて転がす。
「きゃうっ!? あ、うんっ、や、んぁっ! よ、横島、も、もう少し、や、さし、く、あ、ふぁっ!」
さすがに刺激が強かったのか、カリンがもうとぎれとぎれの声で哀願するが、同じ刺激を受けている横島にもあまり余裕はない。林間学校の時は服の上から揉むだけだったが、今は直接、しかも口も使って責めているのだから。
「くぅっ、俺も、そーしたいけどっ、何かっ、スイッチ入っちまったみたいでっ、もう体が勝手にっ」
「あぁあっ、そんなっ、んっ、あはぁっ!!」
カリンはだいぶ性感が高まっているのか、白い肌が紅潮して何か悩ましいフェロモンのようなものを放っている。横島が耳から首すじ、背すじと順に指をはわせてやると、背中をそらせてビクッと体を震わせた。
「ひゃうぁっ、くぅっ、んん……ああっ、はぁ、あぁぁ……」
「くくぅ、お、俺も気持ちいい……!」
さて、ここからどうするか。そろそろカリンの大事な処にも手を伸ばしたいところだが、あまり悠長にしていると本当に暴発してしまう。
とりあえずカリンのパンツの紐をほどいて脱がすと、少女のクレヴァスを少しだけ、指がわずかにかする程度にさわってみる。
(濡れてる……?)
どういう原理になっているのかは分からないが、カリンのそこはもうびしょ濡れになっていた。これなら入れても大丈夫だろう。
横島は少女の脚の間に移動して、その濡れた秘所をのぞき込んだ。
(本当に……生身の女の子と同じなんだな)
実物を見るのはタマモのに続いて2人目だが、構造的に違った所はないし、それにすごく綺麗だった。生々しい欲望よりも芸術的な感動さえ覚えるほどに。
「カリン、いくぞ……」
「……ん」
横島はカリンがゆっくり頷いたのを確かめると、パンツをずり下げてもうギンギンに硬直した息子を取り出した。片手をそえて、そっと少女の秘部にあてがう。
その先端はさしたる抵抗もなくカリンの中に入り込んだが、次の瞬間熱い粘膜のようなものでキュンキュンっと締めつけられた。
「くぉぉっ、キツい……つーかこれ反則だろ……!」
「んぅぅぅっ、かはぁ……よ、よこし、ま、ぁ……」
つながったところが痺れて溶けそうな感触に、2人が同時にかすれた悲鳴をあげる。
特に横島は自分の肉茎の快感に加えてカリンの中の快感も味わっているので、完全に挿入しきった辺りで腰の力が抜けて動けなくなってしまった。いや自分のが自分に入ってる感触というのは曰く言い難いものがあるのだが、とにかくめちゃくちゃ気持ちいい。もしタマモとの経験が無かったなら、とっくに射精してしまっていただろう。
それに気づいたカリンが目を開けて、心配そうな顔つきで声をかけてくる。
「横島、大丈夫か? もしつらかったら、さっさと出して終わりにしてもいいんだぞ……?」
「な、何言ってやがる。いつか言ったろ、俺のスケベは筋金入りだって」
カリンが気づかってくれているのはよく分かるが、だからこそここで果てるわけにはいかない。横島はいったんのろのろと腰を引くと、思い切り力を入れて腰を突き出した。
―――ぱんっ!
横島の腰とカリンのお尻がぶつかり合う音がひびき、同時に2人の会陰辺りから脳天まで杭で貫くような快感がはしる。例によって横島にはそれに加えてペニスに絡みつく潤んだ膣壁の感触もプラスだから、もう何が何だか分からなくなるほどの気持ち良さだ。
「くぅっ、はあっ、こ、これがおまえと、俺の、かっ、くっ、凄ぇ……!」
「ああっ、はぁ、んっ、くぁぁ、あっ、あああっ!!」
小難しいテクニックなんて必要ない。横島はカリンの腰を両手で抱いて、ひたすら前後運動をくりかえした。
やがて2人の体の奥に、何か大きなうねりのようなものが湧き上がってくる。
「カリン、いくぞ、いいか、くっ、くくぅ……」
「……ッ、はあぁっ、く……あ、ふ、うぁ……あ……あ」
横島の問いかけもろれつが回っていなかったが、カリンはもうしゃべる事さえできないようだ。これならイってしまっても大丈夫だろう。
横島が最後の力でぐっと腰を突き出すと、カリンはひときわ高い声をあげて少年の剛直をきつく締めあげた。
「くああっ、あっ、は、あああーーーっ!!
…………ぁ、ふあ、あ、はぁ、はぁ……」
少女の背中が弓なりに反り、びくびくびくっと痙攣する。横島の希望通り絶頂に達してくれたようだが、むろん彼自身も同じエクスタシーを味わうわけで、いくら何でもガマンするのは無理だった。
―――いやもうその必要はない。横島は欲情の猛りをありったけカリンの中に吐き出すと、そのまま気を失って少女の身体の上に倒れこんだのだった。
「……あれ?」
横島が目を覚ましてみると、彼の体は布団の上に仰向けに寝かされていた。その上にハダカのままのカリンがうつ伏せにかぶさっている。
あったかくてやーらかくて、まことに気持ちがいい。
「横島、気がついたか?」
「……ん? ああ、俺気絶しちまってたんだな。うー、何か男として恥ずかしいかも」
「そんな事はないと思うぞ。私たちのは特別だし、私はちゃんとエクスタシーまでいったからな」
「そ、そっか」
カリンに褒められて単純に喜ぶ横島。確かに2倍の快感の中で何とか少女をイかせたのだから、男のメンツは保ったといえるだろう。
横島がそっとカリンの肩と背中を抱き寄せると、少女はおとなしく顔を少年の首すじにうずめてきた。
「……ありがとうな、横島。私を想ってくれてたのがよくわかったから、本当に気持ちよかった。
素敵な初体験だったぞ」
「そ、そうか? じゃ、じゃあ……またよろしくな」
普段の横島ならそこまで言われれば「ならもー1回!」と叫んで飛びかかるのがデフォルトなのだが、さすがに今はまだそんな力はなかった。
それでも次の予約を取っておこうとする辺りが骨の髄まで煩悩野郎だったが……。
するとカリンは顔を上げて、横島の目をじっと見つめながら悪戯っぽい微笑を浮かべた。
「そうだな。ただし、のめりこむのはダメだぞ。GSの修行も学校の勉強もちゃんとして、もちろんタマモ殿のことも大事にした上でのことだからな」
甘ったるいピロートークから一転して、リアルそのもののご訓戒である。当然横島ははうーっと脱力して、
「うう、俺ってそんなに信用ねーのか……!?」
「あははは。くやしかったら、信用できるように振る舞って見せてくれ」
「……いや、そんなの俺じゃねーし」
横島も少しは己を知っているようだ。しかしそれだけではあまりに情けないと思ったのか、少しだけ補足を加えた。
「でもまあ、仮にもおまえの本体だからな。恥ずかしくならんくらいにはがんばる……がんばると思う」
それでも断定形で終われないのは、やっぱり己を知っているからだろう。
もっともカリンにとっては、そのくらいの方がかえって信用できるわけで。
「そうか。じゃあ私も、おまえの手本になれるようにがんばるから……2人でいっしょに、歩いて行こうな……」
横島にやっと聞こえるくらいの小さな声でそう呟くと、顔を伏せて少年の首すじにうずめ直すのだった。
―――つづく?
やってしまいました。本来なら正妻(?)であるタマモを先に書くべきかとも思ったのですが、話の都合上カリンが先になりました。というか下手だな自分orz
第83話のレス返しは第84話で致しますので。
ではまた。