「あの本に載ってた特集は、嘘っぱちだったのかい? 一度見たかったんだけどね…チョンマゲ」
日本について初めての言葉がそれだった。
「せっかく『日本の女性ベスト10』に載ってた、〇刻館の管理人の服装を真似て来たのに…なんだい? このスカートの短さは?」
メドの服装は、ちょっと大きめのセーターにロングスカート。バックの中には『黄色いPIYOPIYOエプロン』まで用意してたりする。
それというのも、初めて合う兄に、喜んで貰おうと頑張った成果だったのだが…参考にした本が悪すぎたみたいだ。大樹は「憧れの管理人さん!!」と、喜び百合子に殴られたらしい。
「…まっ、いっか。可愛いし」
何とも前向きな娘さんである。
ちなみに、『日本の女性ベスト10』では、水を被ると女になる変態の居候先の長女や、『運命じゃ』が口癖の人外僧侶を家族に持つ大食い巫女さん等、同系列の女性が上位を飾っていた。
GS見習い。横島!?−3−
日本に来る前の事。
ナルニアで百合子の手伝いをしながら、その合間に霊能の修業をしていたメド。
とても楽しそうに、フライパンに霊力を送り込む。
そんなメドを見ていた百合子が、メドに尋ねた。
「そんなに楽しいかい? それ?」
「今まで出来なかった事が出来るようになったからね。楽しくもなるさ」
「そうかい…。」
百合子はそれだけ言うと黙り込んでしまった。
「…百合子が嫌なら百合子が家にいる時は止めるよ? 困らせたくないからね」
百合子の反応を見て、悲しそうにそう伝える。
しかし、この後の百合子の言葉にメドは衝撃を受ける。
「…メド。日本に行きたくないかい?」
「え?」
「昨日、あの人と話してたんだけど、GSを目指すのなら、日本に行った方がメドのためになるんじゃないか? ってね…」
予想だにしていなかった事に言葉を失うメド。
「日本には、ナルニアより腕の良いGSがいるし、霊能を鍛える学校もある。メドが本気でGSになりたいなら、私達は全力で応援するよ?」
「………………」
「どうする?」
メドの目を見ながら、百合子が尋ねた。
正直怖い。それに百合子と大樹の側にいたい。でも、それ以上にGSに憧れる。
答えはすぐに出た。
「日本に行くよ。…母さん」
この時メドは、百合子の事を初めて『母さん』と呼んだ。
そして数日後、横島夫妻の強力なバックアップを受けを、日本に旅立ち冒頭に繋がる。
「さて、まずは兄さんの所に行かないとね」
駅から出て、住所を頼りに兄が住む場所へと歩を進める。
「はぁー、ナルニアと違って都会だねぇ…」
歩きながら、周りの景色を見て、今まで住んでいた場所と比べてため息をつき、呟く。
「えーっと…スイマセン、この住所ってこっちですか?」
たまたま、近くにいたロン毛の男に道を聞く。
「ん? あぁ、そうだよ。もしよければ案内しようか? 車で行けばすぐだよ?」
「え? 大丈夫。ありがと。」
メドは、道楽公務員の誘いをアッサリ断り、教えられた方向へ歩いて行った。
「まさか、僕があっさりフラれるとは…。それにしても…今の住所、見た事あるんだが…。思い出せないって事は、女の子のじゃないな」
やっぱり道楽公務員は、どこまで行こうと道楽公務員だった。
「今のは…ナンパだったのかい? 怪しかったしタイプじゃ無かったから断ったけど、勿体なかったかねぇ…お金は持ってそうだったし…」
ブツブツと呟きながら歩くメド。擦れ違う人は、その怪しさに指を指し、あるいは目が合わないように俯き、早足で逃げていく。その光景は、兄である横島忠夫のそれとよく似ていた。が、警察が来なかっただけ、メドの方に救いがあるようだ。
血は繋がって無いはずなのに、恐るべき兄妹である。
「…ここかい? なんとも、ボロいアパートだね。兄さんは本当にGSかい?」
兄の住むアパートを見たメドの感想だった。
その場で深呼吸をすると兄の部屋へと進む。一歩、また一歩と、歩を進めるに連れて、胸が高鳴るメド。決して胸が高くなるでは無い。
何とか扉の前にたどり着き、もう一度大きく深呼吸してからドアをノックする。
「………」
もう一度ノックする。
「………」
念のため、もう一度ノックする。
「………」
更にノックしようとした所に、突然声がかけられる。
「横島さんならいませんよ?」
「ふぇ? ど、何処に行ったの!?」
「今日は多分お仕事じゃないかな?」
「そ、そう」
声をかけてきた胸の大きな女性の話しを聞き、メドはガックリと肩を落とし、アパートを後にした。
実はこの時横島は、下水道で不発弾を『アッ、ソーレッ!!』っと叩いていたりする。
「気が抜けたら、なんだかお腹が空いたね…」
兄が居ないとわかると、途端に食べ物屋を捜し出す。
どうやら、気を張っていて、何も食べていないらしい。
しばらく町をぶらつき、アルバイトをするアンドロイドや、頭の薄い神父を眺めた後にメドは、とある店の前にいた。
「魔法料理…? どんなのだろう?」
聞いたことも無い料理に、興味はあるが、『準備中』の看板がかかっていた。
「はぁ…、残念だねぇ」
と、中を覗きながら呟いた時、中にいた女性と目が合った。
目が合った女性は、作業を止めるとパタパタと駆け足で出て来た。
「どうかされましたか?」
黒い服を着た女性。その姿はまるで魔女のようだった。
「いや、魔法料理に興味があってね。聞いた事もないからね。」
「よかったら食べて行きます?」
「準備中なんじゃないのかい?」
その看板を見ながら話す。
「少しなら大丈夫ですよ。さあ、どうぞ?」
そう言って、案内された店内は明るく、落ち着いた雰囲気がした。ただ、勝手に床を掃くホウキやチリトリ、人の言葉を喋る猫等がいるが…。
作ってくれた料理を堪能した後、魔鈴と話しをしていた。
「如何でした? お口に合いました?」
「人間って、こんなに美味しいものを作れるんだね。私もこんな料理を作りたいね!」
「フフッ。ちょっと大袈裟ですけど、ありがとうございます。そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はこのお店を営んでる魔鈴めぐみといいます。」
「私は横島メドだよ。よろしくね」
自分の名前を名乗った時、魔鈴の様子が変わった。
「横島さん? もしかして、美神除霊事務所の…?」
魔鈴は、ちょっと前に仕事で知り合った人物を思い出す。
「兄さんを知ってるのかい!?」
思わぬ所で兄の名前が出て来た事に驚くメド。
「ええ、以前お仕事でご一緒したことがあるんです。あぁ、こう見えても私、夜はGSをしてるんです」
その言葉を聞いて、メドの目の色が変わる。
「GSって、どんな事をするんだい?」
………横島の事はいいのか?
「GSに興味があるんですか?」
「そのために日本に来たんだよ。それで兄さんを頼ろうと思ったんだけど、今日は仕事で会えなかったよ」
「じゃあ、美神さんの所に?」
「うーん…。まだ考えてない」
「そう…って大変! もうこんな時間! どうしよう…仕込みが…」
どうやら、メドとの話しに夢中になりすぎたらしく、使い魔では出来ない仕事が山積みのようだ。
メドが来てから既に一時間が経過していた
「手伝うよ。ちょうどエプロンもあるし、私と話しをしてたからだしね」
そう言いながらエプロンを身に着けるメド。臨戦体制はバッチリだ! って、もう働く気だし…。
「え? でも…」
行動の早いメドに戸惑う魔鈴。
「料理は、百合子…って母さんなんだけど、仕込まれてるし、なにより、めぐみの事が気に入ったから…ね」
照れたような表情で話すメド。頬がほんのり朱い。
この場に横島がいたら、きっと飛び付いているだろう。
「じゃあ、お願いしようかしら?」
メドの告白とその姿に、笑顔になりながら答え、厨房に向かっていく。
「そうそう、GSの事だけど、魔鈴に弟子入りするよ。」
メドは、突然とんでもないことをのたまった。
「えぇ!?」
「昼間はお店を手伝って、夜はGSの見習いをして…。あっ、出来れば住み込みで」
どうやら、メドの中では決定らしい。
「え、えーと…。良いのかしら? こんなに簡単に決めちゃって…」
めぐみもメドが気に入ったらしく、弟子入りや住み込みに関しては、やぶさかではない。が、やけにアッサリしていた為、後頭部に大きな汗を浮かべていた。
「めぐみ? 早くしないとお店開けれないよ?」
「あっ、はいっ…ってまだ話が…」
こうして、メドのGS見習いとしての生活が始まった。
後書き
やっとタイトル道理の所まで行った。
まず時間ですが、横島の『アッ、ソーレッ!!』でわかると思いますが、フェンリル戦後です。
原作では、この時に魔鈴はまだ登場してませんが、この話では魔鈴の一連の話が終了してるという設定になってます。
レス返しです。
February様
時間はフェンリル戦後です。まぁ、フェンリル以前の話を差し込む可能性はあります。魔鈴とメドで…。
メドの除霊スタイルはフライパンによる接近戦。後は本文で。
クルーゼかぁ…。いっそ、クルーゼに「フジヤマ〜、ゲイシャ、バンザ〜イ!」と言ってもらいましょう(マテ
D,様
なぜか舞妓姿のメドが海老天握りを食べてる姿がw
ってゲイシャは美味しいものですか!?
メドが小竜姫様と乳くり合い、横島が飛び掛かり…。
内海一弘様
日本で口にっていうか、目の前でおもいっきり挑発します! で、兄を仏罰ですねw
正体が分かりそうな人々については、気にしてはいけません。今後は、出番の少ない人はあんな感じで出てきます。虎とか。
アミーゴ様
今回でペット生活脱却です。まだやりたいネタはあったんですが、話が進まないので止めです。
メドは胸の事になると周りが見えなくなります。ので、小竜姫との絡みでは大変な事に(予定
ちなみに私は絵が描けません。どこぞの画伯と同レベルかと…。
それではまた次回。
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