麗らかな昼下がり。大樹は仕事で、百合子は買い物に出掛けてる。家には私一人。私は、まったりとした昼下がりに、縁側でひなたぼっこ。最近ハマっている、渋目の日本茶と厚めに切った羊羹完備。
私の名前は横島メド。この名前はどうなんだい?
ちなみに命名は大樹だ。
……………。
「平和だねぇ…」
羊羹を食べ、呟く。その呟きは虚空へと吸い込まれる。
「静かだねぇ…」
今度はお茶を飲み、呟く。…うん! 美味しい。ケーキに紅茶もいいけど、お茶と羊羹もいいね!
「ここで、『はむはむこくこく』なんて言ったら怒られるかねぇ?」
そんな独り言で一人遊びをしながら、ここに来てからの事を考える。
私が横島家に来てもう半月。記憶はたいして戻って無いけど、分かったことはある。
父親の大樹は、ときどき少し普通じゃないけど、普通の大人。ただ、百合子に浮気が見つかって、半殺しにされた後なんかはオカシクなる。
あと、私が『お父様』って呼んでもオカシクなって、すぐ私に飛び掛かってくるから、百合子直伝のフライパンアタックで迎撃してる。だから『大樹』って呼んでる。
百合子に「アレがオカシクなるのは何でだい?」って聞いたら、「若い頃はあんなだったから、ショックでその頃に戻ってるんじゃないのかい?」って言ってた。
母親の百合子は、絶対に怒らせたり、逆らったりしちゃいけない人。
時々、本当に人?? なんて思ったりする。
でも、怒らせなきゃとてもいい人なんだけどね。
私は百合子の事を『母さん』や『お母様』等の呼び方で呼んだことが無い。と言うのも、母親じゃなく師弟っていうか…友達のようなそんな付き合い。最近百合子に似て来たって大樹に言われた。喜んで良いんだよね?
あと自分の事…。少しだけ記憶が戻った。
私はメドーサって魔族だったみたいだ。
でも、今の私は…人間だったりする。
「なんでさね?」
GS見習い。横島!?−2−
私がナルニアの横島家に住み始めて10日目に、百合子の知り合いの霊能力者が来た。なんでも、旦那さんの仕事の都合でナルニアに来ていて、偶然百合子と出会ったって。で、ちょっと話をして帰ろうとするその人を、あの百合子が頭を下げて連れて来たらしい。今思えば、百合子が頭を下げるなんてね…。
その人は訳あってGSはしてないらしい。
その訳は教えてくれなかったけどね。
この時初めてGS…ゴーストスイーパーの事を聞いた。
時には、自身の命を代償にする事もある厳しい仕事。そんな仕事もあるんだねぇ…面白そうじゃないか。私でもなれるかな…?
そんな話で盛り上がった後、訳あり美人霊能奥様(命名は私)が私の身体を見てくれた。…この表現はちょっとヤラシイかね?
話によると、チャクラと言われる霊的中枢。その場所に普通は『霊力』と呼ばれる力が宿っている。その『霊力』を自在に操れる人が霊能力者と呼ばれる人だ。
でも私は、『霊力』の他に違う大きな力がある…らしい。でも、ソレが何なのかよく分からないんだって。
だから考えないことにした。
訳あり美人霊能奥様は、私の身体を見てくれた後(やっぱりヤラシイね)霊力の使い方を教えてくれた。初歩的な事らしいけど、私には凄い事だった。
私には才能があるんだって。どうやら、愛用のフライパンに霊力を篭めたのが凄かったみたい。普通は神通棍ってのを使うらしい。
私もGSになれるかな? って聞いたら頑張れば、なれるかもしれない。って言ってた。
でも、百合子が許してくれないかね?
百合子の友達(訳ありうんぬん…は長いから止め)は色んな事情があるから、私の事は黙っててくれって言って帰って行った。
そういえば、百合子に「日本に忠夫って名前のGSの見習いをしてる息子…メドにとっては兄さんがいるんだよ」なんて言われた。
戸籍の上では、私は16歳らしい。だから私が妹だって。
横島忠夫…なんでだろう? 私はその人を知ってる気がする。
……会ってみたいな。会えば、何か思い出しそうな気がする…。これって運命かな? どうなんだい? 兄さん…。
そういえば、この間見た本に『これが日本人だ!』なんて特集があったねぇ…。両親には聞いてないけど、兄さんもそんなのなのかい? 私は嫌だよ? 兄さんがチョンマゲってのは……。
「さてっと、そろそろ洗濯物を取り込むかね」
今までの事を振り返っていたメドは、残っていた日本茶&羊羹のコンビを速攻でやっつけると、洗濯物を取り込む為に庭へと向かった。
「さて、頑張りますか!」
そう自分に気合いを入れ、『パンッパンッ』と洗濯じわを伸ばす心地良い音を辺りに響かせながら、洗濯物を取り込んで行く。
「それにしても、胸が大きいってのは邪魔でしかないね…。肩が凝るし、足元は見づらいし、走ると痛いし、目立つし(主に男に)、可愛いブラジャーがなかなか無いし、朝起きたら腕が痺れてる事だってあるし…」
と、某修業場の管理人さんが聞いてたら、逆鱗に触れてしまいそうな事を呟きながら…。
触れてしまいそうじゃなく、むしろ触れる?
「ふぅ。…ん?」
洗濯物を半分程取り込んだ時に、メドはある事に気が付いた。
「…無いねぇ」
物干し竿の端の一角、そこに確かに干していた物が無い。
そこには、大樹のトランクスがささやかな風に揺れてるだけだった。
「百合子と私の下着だけ、風で飛ぶなんて事は…無いよね?」
取りあえず、残りの洗濯物を急いで取り込むと、『下着ドロを探して来る。そのうち帰るよ。 メド』という書き置きを残して家を出て行った。
家を出たメドは、町に向かっていた。
「何処に行ったんだい? 私のブラは!!」
どうやらブラを取られた事が気に入らないらしい。
「私のサイズだと、可愛いのはなかなか無いんだよ! 気に入ってたのに!!」
そういう事らしい。
ちなみにメドは、只今ノーブラだったりするが、絵が無いのが大変残念である。
「そこの仮面!」
メドは、道を歩いていた通行人Aを捕まえて話し掛ける。
「な、なんだい?」
「ここらで、あんた以外で怪しい奴を見なかったかい?」
「いや? 見てないけど? 何かあったのか?」
「見てなかったら良いんだ。すまなかったね…」
「あ、あぁ」
メチャメチャ怪しい通行人Aとの会話を終えたメドは、町へと消えていった。
「な、何だったんだ? 今のは?」
仕事の都合でナルニアまで来ていた仮面を着けた通行人A。実はトップクラスのテレパスなのだが、突然だった為か、メドの心は見えなかった。
「帰ったぞー」
仕事も終わり、部下(男)の誘いを断り真っ直ぐ家に帰って来た大樹。その大樹を出迎えたのは、妻の百合子一人だった。
「お帰…」
大樹の姿を見た百合子は、一瞬にして全身を凍らせた。
大樹のその手には、百合子の下着と、メドの下着が握られていた。
「表に落ちてたぞ? って、どうした? お、俺、なんかした?」
珍しくフリーズしている百合子に、戸惑いながら大樹が聞く。
「あんた…浮気だけじゃあきたらず、とうとうそこまで…。」
我に帰った百合子は、フリーズしていた間の事を覚えてないようだ。
「ちょっと待て! 何の話だ!!」
怒りをあらわに詰め寄って来る百合子に、恐怖を覚えながら大樹が叫ぶ。
「この、下着ドロボー! 家族の下着パクって楽しいんか! うちのだけならまだしも、娘の下着にまで手を出すやなんて…悲しゅうて涙も出んわ!!」
大樹の胸倉を掴み上げ、言いあげる百合子。横島家の男子は、常に誤解される星の元に生まれているのだろう。
「だから誤解…ゆ、百合子…絞まる、しまっ…しぬ…」
大樹の首を、持てる全ての力で絞める百合子。
「その戯れ事を信じてほしかったら、さっさと下着ドロを探しに行ったメドを…探しに逝かんかい!」
大樹を投げながら百合子が叫ぶ。しかも「メドを見付けるまで帰ってくんな!!」と、言う有り難きお言葉付き。
「俺は無実だー! やり直しを要求するー! それに、字が違うぞー!」
………却下。
投げられながら、そこまで言えるのは流石といったところか。
「大樹…また浮気したのかい? いい加減にしないと百合子に捨てられるよ?」
百合子に投げられ、ゴロゴロと転がった先にメドが立っていた。
「あら、お帰りメド。下着、表に落ちてたらしいわよ?」
しっかり大樹の話を聞いていた百合子だった。
「本当に! よかった。何処を探しても無いから、諦めて帰って来たんだよ。」
二人は、大樹を見事にスルーしながら家に入って行った。
残された大樹は…
「妻と娘が冷たい…。シクシクシク…。」
その呟きと、啜り泣く声が妙に響いていた。
後書き
話が進まない(泣
いつまでナルニアにいるんだろう?
今回、メドが霊力を使えるようになりました。
通行人Aは…気にしないで下さい。もう出てきませんから。
時間についてですが、次で分かると思います。…分かるといいな。
レス返しです。
アミーゴ様
読んで頂きありがとうございます。
マイペースでと言われるとずいぶん楽になります。
February様
あの台詞は名言です(笑
他にも「返したまえ! いい子だから」と言うのも好きです。
メドーサは横島メドになりました。
名前については気にしないでくれるとおっちゃん嬉しいな。
内海一弘様
確かに状況はパ〇ーですが、パ〇ーだと、ボケとして弱かったんで大佐になりました。
これからも期待を裏切れればいいんですが。
ヘタレ様
大樹については、百合子が隣にいたのでボケたと言うことに…。
此処のメド姐…。考えてますが、余り絡まないかも。
ZEROS様
時間については次を待って下さい。
過度の期待はご遠慮下さい。作者が潰れます。
D様
姿は若返ったコギャル風です。が、少しだけいじります。…胸ぢゃないよ?
以上レス返しでした。
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