・・・なんてこった・・・。
俺が逆行したこの世界・・・。
俺の世界じゃない!!
「ここは一体どこなんだ・・・。」
その事に気づいたのはこの世界に来てすぐだった。
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
朝、まだ逆行の疲れが抜けきっていないものの、随分と楽になった。
そして掛け布団をどけて起きる。
「うぅ~ん、兄ちゃん寒い。」
「あぁ、悪かったな。
ほれ。」
布団を掛ける。
そして台所に行って冷蔵庫を開ける。
見ると野菜もあるし肉もあるし卵・牛乳にジュース。
結構充実している。
目玉焼きを作り、パンを焼いてサラダをあわせてコップに牛乳を・・・・。
あれ?
さっき布団の中に何か居た?
恐る恐る視線を布団に戻す。
微妙に膨らんでいる。
OK、深呼吸をして・・・。
スーハー、スーハー。
バッ
掛け布団を投げ飛ばす。
中に居たのは赤髪の小さな女の子で小学校低学年くらいか、見た目かなり可愛らしい、ネコのように丸くなっているのを見ると思わず抱きしめたくなる。
いや、変な意味じゃなくて。
ほら、生まれて一週間くらいの仔猫を見た心境みたいな。
「なんだよ、兄ちゃん。
寒いじゃんか・・・。」
兄ちゃん・・・確かにそう言ったよな・・・。
「お、お前誰だ!?」
思わず声が上ずる。
「はぁ?
兄ちゃんその若さでボケ始まったのか?
義妹の薫だろ~が。
お、いい匂い。
いっただきま~す。」
妹!?
ちょ、ちょっと待て!!
「いや、待て待て。
オカンも親父も髪の色は黒だったよな?」
「いや、だから異母兄弟なんだろう?
私達。」
アウチ!
まじですか・・・・。
そうか、あの親父・・・。
今ごろ天国かな・・・?
オカンの折檻に耐え切れたかな・・・。
「なぁ、兄ちゃんマジで大丈夫か?
なんなら紫穂呼んで体でも見てもらうか?」
紫穂って誰さ!?
「いや、だから接触感応能力者で私の同僚だよ。
兄ちゃんによくくっついてたじゃんか。
・・・ほんとに大丈夫か?」
いや待て、同僚?
つまりお前働いてるのか!?
「だからバベルでいつもあばれ・・・ゲフンゲフン働いてるんだろ?」
・・・文珠を三つ取り出す。
込める文字は『眠』『忘』『覗』。
眠らせて、忘れさせて、記憶を覗く。
そこには・・・。
昔の俺みたいな思考回路(煩悩?)と暗い思い出、親を殺され、バベルという組織に引き取られ、相変わらずまともじゃ無いうちの両親により引き取られたが心には爪あとを残し、バベルで出会った紫穂っていう子と葵という子に助け、助けられ。
そして一番明るい所には俺がいた。
相変わらずの性格で、しかし超能力ごときで差別してない俺を慕っていて、もう一人、皆本という人物には惹かれている。
・・・・・・・・・・・・。
「俺が覗いていいモンじゃ無いな・・・。」
文珠を一つ『忘』。
消すのは薫の思いと心。
俺の周囲の関係はそのまま残しとく。
しかし・・・・。
「ここは一体どこなんだ・・・。」
もれた呟き、答える人いない。
「うう~ん。」
薫が目を覚ます。
俺はこれからどうしたらいいのだろう・・・。