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「それでも時は進みだす―心の残滓−(GS)」

氷砂糖 (2007-06-21 23:11/2007-06-25 08:44)
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キーン、コーン、カーン、コーン

 四時間目終了のチャイムが鳴る。

「きりーつ、きょーつけ、れーい」

 昔から続く形式を委員長が行い、他の生徒がそれに続く。

 すべての生徒が一斉に、ではなく、立つタイミングも頭を下げるタイミングもばらばらである。

 誰もが別にやらなくてもいいと思っていながら、誰もがやめようとは言い出さない。形骸化した礼儀に対する優しさがそこにはあった。

 しかしそんな優しい空気も、

ガタン!

 授業終了後すぐさま鞄から弁当と水筒を引き抜き、扉に駆け出した忠夫によって打ち破られた。

「ドアだ!ドアを塞げ!!」

 教室に男子の怒号が響き渡る。

「無駄だ横島!出口は固めた!!諦めろ!!!」

 男子生徒の言うとおり、忠夫が扉にたどり着く前に、出口は数人の男子によりふさがれている。

 だが忠夫は笑っていた。

「とう!」

 突然方向を切り替え、即座に跳躍。

「ガハ!?」

 タイガーの頭を踏み台に、開け放たれたままの窓へと飛ぶ、

「横島君!ここは三階よ!?」

 愛子の叫びに不適な笑みで帰し、外へと飛び出した忠夫は体を大きく捻り、青空を見上げ右手を空へと伸ばす。

 まるで空をその手に掴もうとするかのように、

「ハンズオブグローリー!」

 忠夫の霊能の一つであるハンズオブグローリーが空に伸ばした右手に顕現する。

「伸びろ!」

 ハンズオブグローリーが伸び、屋上の鉄柵を掴み、

「ふははははははははは!さらばだ諸君!?」

 忠夫は上へと姿を消していった。

「上だ!追え!!」

 バタバタと足音を立て、教室から何人もの男子が出て行った。

「嵐ですね」

「そうね」

後には呆然とする女生徒と愛子とピート、そして、

「酷いんじゃ〜」

 踏み台にされ、机を二つ三つ巻き込んで吹き飛んだタイガーが残された。


「たく、ただ昼飯食べるために何でこないに苦労せにゃならんのや」

 屋上に着くと、忠夫は屋上に通じる扉に文珠を使い『錠』を掛けると、そのまま日の当たる壁にもたれかかるように腰掛ける。

 多少暑いと思わないでもないが、日の陽気はそれ以上に心地よかった。

「今日はタマモが作ってくれたんだったな、昼飯代が浮いてありがたいこっちゃ」

 弁当を作ってくれる彼女らの本心に気付いていないのか、あるいは気付いていながら気付いていない振りをしているのか、忠夫はそんな言葉を漏らす。

「『いつもあんたが飢えてるのを見て、かわいそうだと思って作ってあげたんだからね、感謝しなさいよ』っか、あいつ段々美神さんに似てきたな」

 忠夫は弁当を渡すときのタマモの台詞を思い出して苦笑すると、弁当の包みを解く。

「まっ、せっかくもらったんだ、ありがたくいただくとするか」

 忠夫が弁当の蓋を開けるとそこには、

 湯がいたうどんと、刻まれた油揚げがあった。

「………………………」

 忠夫は黙って弁当を置くと、キャップ兼コップに水筒の中身を注ぐ。

 麺汁、

「………………………」

 やがて、

 ズル…………ズルズルズルズルズルズルズルズル

 屋上にはうどんをすする音だけが響いた。


ピ!ザザ!こちら狙撃班、CQ聞えるか、どうぞ』

ザ!こちらCQどうした?」

ピピ!ターゲットの昼食は冷うどん、繰り返す、ターゲットの昼食は冷うどん』

ピ!こちらCQ了解した、狙撃班は撤収せよ、さすがにそれを邪魔するのは忍びない」

ザザ!了解した、これより狙撃班は撤収する、交信終わり』

 眼鏡は用を終えた無線機を机の上に置くと、眼鏡を押し上げた。

「命を拾ったか、横島」

「………………愛子さん」

「駄目よピート君、突っ込んだら負けよ」

「まったくですじゃ」


それでも時は進みだす
―心の残滓―
Presented by 氷砂糖


 六道女学院五時間目、この時間対抗戦出場者には自由練習時間が与えられた。

「今回の対抗戦よろしく、高島さん」

 髪をポニーテールにくくった背の高い体操服姿の少女が、同じく体操服姿の千夜に手を差し出す。

「私のことは千夜でかまいません、和泉水凪」

 彼女は対抗戦出場者の三人目だった。

「そう、なら改めてよろしく千夜、草壁もよろしく」

「よろしく、和泉さん」

 千夜は出されたままになっていた水凪の手をとると、目を細めた。

「棍、いえ錫杖」

 水凪は面白そうに目を細める。

「へえ、よく分かったね。たいていは棍って答えるのに」

「以前山伏の方が使っているのを見たことがあります。それに手のたこのできた後が棍にしては小さい、私が知る中ではこの大きさは錫杖しか知りません」

 水凪は笑う。

「それだけ分かれば十分でしょ。それより千夜の除霊スタイルってどんなの?草壁のは知ってるからいいけど」

 猫の様に目を細めて水凪が問う、彼女は未だ見せていない千夜の霊能を知ろうとしているようだ。

「符と式神、私が使うのはこの二つです」

 千夜は隠していた手札をあっさりと見せた。

「基本遠距離主体か、それよりいいの?隠してたみたいなのにあっさりばらして」

「かまいません、公の場であれば回りに知られることになりますが、今は身内しかいない」

 それを聞き水凪は面白そうに千夜を見やる。

「へえ、私が他人にばらしたらどうする?」

「和泉さん!?」

 穂波は驚きの声を上げるが、千夜はただ首を傾げただけだった。

「貴女は自分の不利になるようなことをするのですか?」

「ぶっ、ははははははははは、ちょ、ごめん、い、息が、でき、ぶははははははははは」

 水凪はひとしきり笑うと、穂波のほうを向いた。

「草壁、この子面白いわ」

 水凪は笑いそうになるのをこらえながら、千夜を指差す。

「あははははははは」

 それに対して穂並みは乾いた笑いをあげる事しか出来ず。

「?」

 千夜は首を傾げていた。

「まっ、あらためてよろしく、二人とも」

 水凪は千夜と穂波に笑顔でそう言い。

「ええ」

「よろしく、和泉さん」

 千夜はうなづき、穂波は頭を下げた。


 ちなみに六道女学院の体操服はブルマである。


 美神心霊事務所、そのオフィースには一人の客人が訪れていた。

「久しぶりじゃない、今回はどうしたの?」

 令子が親しげに話しかけている相手は、

「美神令子、今回はここに魔界軍としての依頼を持ってきた」

 有翼の魔族ワルキューレだった。

「美神殿、このお方は誰なんでござるか?前々から知っているお方のようでござるが」

 初見のシロの好奇心が首を出したのか、令子に問う。

「ああ、あんた達は始めてあうんだっけ。魔族のワルキューレよ、依頼を受けたことあってね、そんな仲よ」

「そうだ、それに何度かともに戦った仲でもある」

 令子の説明にワルキューレが補足し、それを聞いたシロは目を丸くする。

「なんと、では横島先生とも共闘をしたことがあるのでござるか」

「む、貴様は横島の弟子なのか?」

 シロの先生という言葉を聞いてワルキューレはそう判断した。

「そのとおりでござるよ!せっしゃ横島先生が一番弟子犬塚シロともうす」

 そう言ったシロを見て、ワルキューレは一言漏らした。

「ふむ、横島はいい弟子を持ったようだな」

 ワルキューレの言葉に、シロは満面の笑みを作った。

「で、そっちの貴様は?見たところ妖狐、しかも九尾のようだが」

「わかるの?」

「私は魔族だ、それくらいのことは分かる」

「そう、私は横島に助けられたからここにいる、ただそれだけよ」

 タマモは気のないようにワルキューレに答える。

「助けられた、か……………なるほど横島は相変わらず甘いようだ」

 タマモはワルキューレの言葉に反応して目を吊り上げた。

「なによ、甘かったらいけないの?」

「いや、戦士横島の甘さはもはや強さだ。あれにかなうものはそうない」

「そ」

 ワルキューレは断言し、タマモはそれに表面上何気なく答えた。

「時に美神令子」

「何よ?」

「横島は何時からロリコンに趣旨換えしたんだ?」

「いいからさっさと依頼の話をしなさい」

 令子は脱力した。


「やって来ました五時間目、家庭科の時間です!」

「誰に向かって言ってるの横島君?」

 家庭科、一昔前までは女子だけの科目であったが、最近では男子もやることになっている科目である。

「なんかテンション高いんですのー」

「何かあったんですか?」

 ピートは忠夫のテンションの高さに疑問を感じたようだ。

「いや昼飯がちょっとな」

 忠夫は苦笑してピートに笑いかけた。

「?」

「いや、なんでもない気にしないでくれ」

「それよりも速く作らないと、放課後までもつれ込むわよ」

「今日バイトだからな、はやくすまそう」

 そう愛子に向いて言いながら忠夫は手探りで包丁を掴んだ。

刃のほうを。

「痛て!」

「横島君大丈夫!?」

 忠夫が包丁の刃を掴む様子をはっきりと見ていた愛子が、心配し驚きの声を上げる。

「大丈夫だそんなに強く握ったわけじゃないし、血もあんま出てない」

 忠夫が大丈夫だーというように、包丁を握ったほうの手をぷらぷらさせる。その時うっすらと血の筋が出来るが、ただそれだけだった。

「もう気をつけてよね。包丁は私が使うから横島君は食材を取ってきて」

「へーい」

 横島は生返事をすると食材を取りに向かった。

 食材は教師が使うホワイトボードの前の机に一塊にされており、他の班はもうすでに食材を取ったのかワンセット残っているだけであった。

 その残っている食材に対して忠夫は突っ込みを入れたくて仕方ないが、入れたら負けかなーとか現実から逃避しようとしていた。

 今日のメニューはオムライス、人数が多いので卵もそれなりの数になるだろう。しかし残っている卵は後一つ、その一つが問題だった。

「なんでダチョウの卵サイズやねん」

 忠夫が突っ込んでも現実は変わらない。

「……………まあ、先生呼ぶか」

 卵を取り替えてもらう為、先生を呼ぼうとした忠夫の耳に、

ピシ!

 乾いた音が響いた。

「ぴし?」

 忠夫は聞こえた音のほうを向くと、そこにはひびが入った卵があるだけである。

「て、待てひび!?」

ピシ!パキ!ピキ!パキキキキキキキキキキキ!!

 やがて卵全体にひびが入り、音が止む。

 忠夫が恐る恐る卵に顔を近づけた瞬間。

バキィン!!!

 爆発するように四散し、卵の殻が突き刺さった。


「しかしよく懐いてますね」

「本当、さすが人外キラーね」

 ピートと愛子、二人の言葉は忠夫の頭に四肢を使いしかっ、としがみついているものを見ての言葉だ。

 鋭い爪に硬く赤い鱗、背中には蝙蝠の様な翼が生えている。

「血まみれの横島さんを心配してか、なめたりもしとったんじゃー」

 まさしくその姿は西洋竜、つまりはドラゴンだった。

「まあな」

 しかしその姿は生まれたばかりの為か丸っこくて愛らしい。目も大きくてクリクリしている。

 忠夫がその手を伸ばし、ドラゴンの頭に触れると、

「グルッキュ、クルルルルルルルルルルル♪」

 嬉しそうに喉を鳴らし、忠夫の手に頭をこすり付けてくる。

「クス、名前をつけて上げたら横島君?」

 あまりの懐きように愛子が忠夫にからかうように提案する。

「そう……だな、なんか長い付き合いになりそうな予感がするし」

「霊感ですか?」

 忠夫はピートの質問に首を横に振る。

「いや、どちらかというと美神さんにしばかれる前とか、シロが散歩に誘いにくる直前とか、タマモに奢らされる時とか、お絹ちゃんが黒くなる前とかと同じ感じかな?」

 何故そこで危機感というか、女難の感覚が働くのだろうか?

「ところで名前は何にするんですかいのー」

 これ以上話を聞いたら駄目だ、そう判断したのかタイガーは話を元に戻そうとする。

「そうだな………………うん、こいつの名前はレイン、レインだ」

「レインですか?」

「ほら、なんかあったろ、どっかの火の神様の剣」

「………………レーヴァティンのことですか?」

「そうそれ、それにあやかってな」

 忠夫は頭にのっかていたレインをとって膝の上に乗せると頭をなでる。

「グキュウ♪」

「それにしてもレインって女の子の様な名前ね、男の子だったらどうするの?」

「グキュ?」

 レインは忠夫の膝の上で頭を横に傾げている。

「大丈夫だ、女の子以外認めない」

「グル、グキュ」

 忠夫の声に合わせて鳴いただけなのであろうが、それはレインがうなずいている様に見えた。

「これからどうするんですか?」

「そうだな、取りあえず美神さんに報告するは、なんか分かるかもしれんし」

「クルーリュ」

 忠夫はそう言うとレインを頭に乗せ鞄を持つと立ち上がった。

「悪いけど対抗戦の話は明日ピートんとこでいいか?」

「ええかまいません」

「じゃ、またな」
「キュル」

 そう言うと横島は教室から去っていった。

「行っちゃいましたね」

「ええ」


「火竜の卵が魔界から人界に落ちたから火竜の卵を見つけてほしい?」

「そうだ、魔界に何百年に一度こういうことがある。今回落ちた場所が東京と推測されたのでこうして頼みにきたのだ」

「そ、で御代はいくら?」

 楽しそうに聞く令子に、ワルキューレは苦笑する。

「これと同じものを20本」

 そういってワルキューレは金の延べ棒をさしだした。

「まいどー」

 令子は嬉しそうにうなずく。

「で、何処に落ちたか検討ついてるの?」

「ああ、それは………………」

「ちわーす美神さん、こんなん拾ったんですけどどうしたらいいっすか?」

「キュウ」

 忠夫が現れた、………………………頭にレインを乗せて。

「………………………………………………」

「………………………………………………」

「………………………………………………」

「………………………………………………」

 沈黙が舞い降りた。おもに忠夫の頭の上を中心に。

「お、久しぶりだなワルキューレ、元気だったか?」

「グキャア」

「よ、横島?」

 ワルキューレは震える指先で忠夫の頭の上を指差す。

「ん、これか、いや懐かれてな。どうしたらいいかわかんねえんだ」

 能天気に横島が言うのを聞いてか、聞いていなかったのかシロが発言する。

「さすが先生でござるなあ。依頼を聞くまでも無く依頼を果たすとは」

「や、たぶんそれは違うから」

 シロの勘違いにタマモが突っ込んだ。


「レインがその落ちてきた火竜の卵だったと?」

「卵が孵った瞬間に立ち会って、一番最初に顔を見られただと」

「まあ、話を総合する限りそうなるんじゃない」

 話がまったく分かってなかった忠夫に一通りの説明をすると、令子はため息を一つついた。

「ほんと、トラブルが向こう側からやってくるわね。なんか新種の霊能も持ってたりするんじゃない」

「しかもその際に横島の血を舐めた?」

「止めてくださいよ、美神さんが言うと無理やりにでもその手の霊能を発現させそうじゃないですか」

「さらに名前までつけただと」

「あんた私を何だと思ってんのよ?」

「しかも名前の由来がスルト神のレバンテイン」

「何って美神さんでしょ」

「馬鹿な、それではまるで………………」

「うるさいわよワルキューレ、横島君をしばくのに邪魔だからさっさとこのドラゴンつれて帰りなさいよ!」

「あ、ああすまない。さ魔界に帰るぞレイン」

 ワルキューレは忠夫の頭の上のレインを取ろうとするが、忠夫の頭に張り付いて離れようとしない。

「グギャア!グルルルルルル!キュア!」

 必死に前足で忠夫の頭を掴み、引き離そうとするワルキューレに抵抗する。

「もげる!もげる!首がもげる!」

「キューガ!キャーーー!」

ボン!

 音と共にレインを中心に煙が舞う。

「ぼん?」

 思わぬ事態にワルキューレはレインから手を離してしまった。

 そして煙が晴れて見えたものは。

 波打つウェーブのかかった長く見事な赤い髪。

 赤銅色にやけた健康的な肌。

 それらを持ち合わせた四歳位の少女が忠夫の首にし拝みついていた。

「は?」

 忠夫が予想外の展開にほうけてい折る間に、おそらくレインであろう少女は忠夫の背中に回り、

「キューーーーーー!」

 背中から翼を生やし、

「ギャ!」

ガシャーン!

 事務所の窓を割り、逃走した。

「ねえワルQ」

「なんだミカリン」

「ドラゴンってあんな生態なの?」

「何千年かに一度ああいった個体が確認されることもある」

「そうなの」

「ああ」

 割れた窓から部屋の中に一陣の風が吹いた。


「あああああああああああああああああああああああ」

「千夜ちゃん、何か聞こえない?」

「確かに何か聞こえました」

 お絹はどこか聞いた事のある声にあたりを見回す。

「でもどこから?」

「あああああああああああああああああああああああ」

「氷室キヌ、上です」

 千夜は冷静に音の方向を聞き定め。おキヌが上を見るとそこには、

「あああああああああああああああああああああああ」

 小さな少女に抱えられて飛んでいる忠夫がいた。

「横島さん!え、なんで!?」

 あわてるおキヌをよそに、

「白夜」

 千夜は小さくそう呟いた。


「こんなとこ連れて来やがって、怒ってんだぞ分かってんのか?」

 東京タワーの展望台の上、レインはそこに忠夫を連れて来た。

「クルルルルルル♪」

 忠夫は怒っていると言いながらも、自分に抱きついているレインの頭を撫でている。

「たく」

「キュ♪」

キィ

 そんなことをしていた忠夫の耳に錆付いた金属音が聞こえた。

「?」

 忠夫が肩越しに振り返ると、

「横島忠夫」

 千夜がそこにいた。

「千夜、どうしてここに!?」

「飛んでいたのを見つけたので白夜に追わせました」

「そっか」

「キュイ」

 忠夫の言葉に反応してレインが鳴く。

「………………よく懐いていますね」

「まあな、俺は人外キラーらしいからな」

「そうですか」

「事務所にいた戦乙女には連絡を入れておきました」

「そうか」

「キュウーー」

 忠夫と引き離されると感じたのか、レインが不安そうな声で鳴く。

「どうしたもんかね」

 忠夫は不安そうに鳴くレインを見て苦笑する。

「………………貴女は魔界に連れ戻されるでしょう」

「……………キュウイ」

 千夜の言葉を理解しているのだろう。レインが俯きながら鳴く。

「そしてまたここに来ようとしてもそれは阻まれることになるでしょう」

「……………キュウ」

 レインは千夜の言葉を聞き落ち込んでいる。

「しかしここに来ようとすることは貴女の意思、それは誰にも邪魔を出来ない貴女自身のもの、諦めねばいつかここに来ることが出来るかもしれない」

「……………キュウ!」

 レインは千夜の言葉の意味を理解して一声鳴いた。

「横島!ここにいたか」

 その時白夜に連れられてワルキューレがやってきた。

「キュウ、キュウイ」

「またなレイン」

 レインは忠夫に甘えるように頬に頬を摺り寄せると翼を広げ、ワルキューレのほうへと飛んでいった。

「横島、協力に感謝する。もっと話をしたいのだが、今は忙しい身でそれもかなわん。すまんな」

「いや、また今度ゆっくり出来る時にこいや」

「ああ、そうさせてもらう。お前はこれからどうする?」

 忠夫は視線をワルキューレから逸らす。

「もうすぐ日が沈む。それまではここで待つさ」

「そうか!ここは彼女の!」

「ああ」

「そうか、………………では戦士横島さらばだ」

「キュイ!」

 そう言うとワルキューレとレインは消えていった。

 忠夫は空を見たまま何も言わない、

「横島忠………」

「見ろよ、日が沈む」

 話しかけようとした千夜の言葉は忠夫の言葉にさえぎられた。

 千夜は空へと視線を移し見たものは、

 燃えるような夕日とそれを静かに見入る忠夫の背中、

 それが千夜の視線を奪った。


 やがて永遠の一瞬が終わり、日が完全に沈む。

「横島忠夫」

「何だ?」

 背中を向けたままの忠夫に千夜は問う。

「ここで何かあったのですか?」

「……………………ああ」

 僅かな沈黙の後、忠夫は肯定する。

「そうですか………………」

 千夜はそれ以上何も聞けなかった。

「何も聞かないのか?」

 そんな千夜に忠夫が反対に聞く。

「聞けば答えてくれますか?」

「いや」

「そうですか」

 二人の間にしばらく沈黙が訪れ、今度は忠夫が口を開いた。

「じゃ、事務所に行くか。これ以上美神さん待たせるとなに言われるか分からんし」

「ええ」

 展望台の上の非常扉に向かう忠夫から視線を空に向けると、

 夜になっても明るい東京の空にシリウスが輝きはじめていた。


 ちなみに千夜が言った言葉のせいか、レインが魔界から脱走しては忠夫に合いにやって来て、そのたびにワルキューレとジーク、ついでに百目が奔走することになるがそれはまた別の話である。


 どうも氷砂糖です。
今回の話を書いていて思ったのですが、それ時本編のジャンルは何だろう?誰か教えてください。

ああ、いけないオリキャラ連中が原作連中を食ってる、どうしよ………

三人目として水凪登場です、性格は竹を割ったような性格の姉御肌という設定でやっていこうと思います。

次はレインについてですが………………………あれ?なんかむちゃくちゃ可愛い、ここまでするつもりだったかな?

歯車のほうにつまってます、やっぱり交互は難しいです、ゆっくり書いてって書けたらあげます。

最後に、千夜メインの話ですがこれ出したら千夜がメインヒロイン完全確定になるような話になりそうです。

ではまた次回で。

千夜カウンター12ちーちゃん


 アミーゴ様
タイガー、百目、鬼門、そう聞いてあれ?三人でカルテットって言ったけ?本気でそう考えてしまいましたw
米!肉!肉!書いてて自分でうらやましくなりました。ええもう泣きたいくらい。
ふ、罠と分かっていても引っかかったようですなw
次回もお楽しみに。


 kkhn様
はっはっはっはっは、打ち抜けましたかそれはよかったw
今回もお弁当イベントありますよー、一応全員回すつもりです。
カウンターの単位、採用させてもらいました。ありがとうございます。


 yukihal様
いいこですか、私もそう思いますw
千夜カウンターの回る条件は
.譽稿發棒虧襪量樵阿あること
■吋譽坑栄
千夜への愛があればさらに1票
とさせてもらいます。


 ism様
誤字報告ありがとうございます。見直したつもりでしたがこんなに残っていたとは………………
魅力半減にしないためしっかり確かめねば。
応援ありがとうございます。


 マンガァ様
天然も出ました、普段アノ性格だけに出たときの威力がすごいことにw
今回はどうですか?


 鳳仙花様
千夜話はデレではすみそうにありません、ヒロイン確定話になりそうです。


 レンジ様
おめでとうございます、あなたは二票目を獲得しました。
さんなに千夜が好きですか?
対抗戦はもう少ししてからになります。あ楽しみに。


 神楽朱雨様
おお一気読みをする猛者がまた一人w
弁当担当者正解です、今回はタマモでした。油揚げ弁当ではなかったですが、
千夜の手料理………………まだまだかかります。
次回お楽しみに。


 良介様
忠夫の評価が低いのは忠夫より目立つ人物がいたりするからっだたりしますw
とっても目立ちますしw
や、そんな速さで言ったら間に合いそうに無いのでw


 内海一弘様
おお穂波に反応してくれる人が!ひそかに作者のお気に入りだったりするんで嬉しかったりします。
忠夫は朝帰ってからしばかれましたw
穂波はさっさと学校に行ってますw


 LL様
穂波の良さを分かってもらえますか!
はい今後出番は増えてきます。


 文月様
対抗戦はもう少しお預けですが燃えは書くつもりですご期待ください。
対抗戦のユッキーは出てきますが、乱入はしません。
その代わり意外な人が出てきます。

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