「横島さん、朝から死んでますね」
ピートが机に突っ伏している横島を見ての発言である。
「昨日は除霊だったみたいですのー」
タイガーがいつにもまして寝入っている横島を見て判断する。その隣には机に腰掛けた愛子が頬に手をあてていた。
「うーん、生活のためバイトで徹夜は青春なのかな?」
「命がけのバイトは青春じゃないと思うぞ」
机に突っ伏したまま横島が口を開いた。
「あ、起きてたんですか」
「ああ」
横島は欠伸を一つすると、みなのほうを向いた。
「昨夜の依頼ってどんなのだったの?」
「斬馬刀持って赤い鎧着た鬼」
「うわ………」
「それはまたとんでもないんですじゃあ」
「思ったんですが。僕達と同じ年のGS試験の合格者の中で、横島さんが一番戦闘経験豊富なんじゃないですか?」
そうなのである。令子と同じ、最高クラスのGSである唐巣神父の所に来る依頼人は、社会的に弱い依頼人がほとんどである。そういった人たちの悩む霊障は、企業や政府とは違い弱い霊だったり、簡単にどうにかなるものが多いい。
片や令子はと言うと、除霊対象の質が高かったり、除霊条件が非常にシビアかのどちらかである。(稀に両方に当てはまる場合もある)
まあその為、忠夫は質の低い除霊といったものをほとんどやった事が無かったりする。
「そうかもな、雪之丞は俺らの次の年だし、タイガーにいたっては合格すらしてないしな」
「おろろ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
雪之丞はメドーサと組していた為、失格扱いにされた過去がある。さらにはブラックリストに載っちゃたりしていたが、原始風水盤の時に小竜姫に協力した事で、もう一度GS試験を受けることを許されたのである。
「わしも雪之丞さんにあたらんかったら受かっとたんじゃ〜〜〜〜〜〜〜」
タイガーは一次試験こそ受かったものの、二次試験の一回戦で雪之丞とあたり、接戦を繰り広げるも敗北してしまう。その後雪之丞はするすると勝ち上がり、主席合格を果たしたのである。
ちなみに、雪之丞はタイガーとの試合の際、タイガーの精神感応により姿を見失った為、タイガーの攻撃を甘んじて受け、全力でカウンターを放つという非常に彼らしい方法で勝っている。
「ま、ラプラスのダイスも分かってるって事だな」
「そうですね」
「そうね」
「みんなひどいんじゃーーーーーー!!!」
タイガーに幸福あれ。
余談ではあるが、合格者の中にはカオスの名前があったりする。
それでも時は進みだす
―彼の価値観、彼女の価値観―
Presented by 氷砂糖
「おはよう高島さん」
「草壁穂波、おはようございます」
六道女学院の校門、穂波は千夜の姿を見かけ、千夜の方に駆け寄って行った。
「今日の宿題やった」
「ええ」
穂波は楽しそうに千夜に話しかけるが、千夜は穂波のほうを向いて答えようとはせず、正面を見たまま、ただ簡単に答ええる。
その様子に穂波は苦笑を浮かべる。千夜の反応は予想していたのだろう、それでも穂波は千夜に話しかけようとする。
「昨日何かあったの?目の下に隈がうっすらと出来てるけど」
「除霊がありました」
「えっと、美神お姉さまたちと?」
「はい」
瞬間穂波は千夜の両肩を掴んだ。
「?」
千夜は穂波の普段とは違う行動に首を傾ける。
「千夜さん」
「はい」
「美神さんお姉さまと一緒に除霊したの?」
「はい」
穂波は千夜の方を掴んだままガクガクと高速で揺らし始めた。
「千夜さん!千夜さん!千夜さん!美神お姉さまの除霊見たの!!!」
ブンブンブン!!!
「ええ、見ました」
ブンブンブンブンブン!!!
「えーーーーーーー!いいな!!美神お姉さまの除霊ってどんなのだった!!!」
ブンブンブンブンブンブン!!!
「最高の名に恥じぬものでした」
ブンブンブンブンブンブンブン!!!
「美神お姉さまの前で除霊なんかしちゃったりしたの!?」
ブンブンブンブンブンブンブンブン!!!
「除霊の際、共に祓いました」
ブンブンブンブンブンブンブンブンブン!!!
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ズン!
千夜は高速で振られる中、自分と穂波の間に握りこぶしを入れた。
「ウ!?」
振られる勢いがそのまま、拳が穂波の横隔膜に突き刺さった。
「草壁穂波、このままでは遅刻します」
「は、はひ………」
千夜は地面に座り込む穂波に冷たく告げた。
こちらは忠夫宅、
「ク〜〜〜〜」
「ス〜〜〜〜」
「先生〜たっぷり食べて、でござるよ〜〜〜〜〜〜」
令子、タマモ、シロの三人は昨日の除霊で疲れたため寝ていた。
「横島さん、結局来たときだけ起きてましたね」
忠夫は机に突っ伏しており、なぜかその頭には白い粉が沢山ついている。
「それにしてもすごかったですのー、三時間目の数学の牧島先生のチョーク投げ」
「両手の指の間全部にチョークを挟んでの投擲でしたからね」
「しかも投げた後、即座にチョーク入れから引き抜いてたものね」
数学の教師牧島。バーコードで黒縁四角メガネの彼は、大学紛争時代水に浸した皮手袋を着用しこの投法において火炎瓶の牧島と異名を誇り、国家公安委員会によりマークされていた過去を持つ。
現役時代、彼は50メートル先の空き缶に移動しながら命中させることが出来たという。
「それよりそろそろ横島さんを起こしましょう」
「そうね、起こさないとお昼ご飯食べそこねちゃうわ」
「横島さん起きてくださいのー」
「横島君起きなさい」
愛子は忠夫の肩をゆっくりと揺する。
「……朝か?」
「まあ、なんと言うか横島さんですね」
「まったくですのお」
牧島のチョークでは起きなかったくせに、愛子に揺すられるとあっけなく目を覚ます。本当に彼らしい。
「んあ?」
「横島君もうお昼よ、起きないとお昼ご飯だべそこねるわよ?」
「ああーーー、起きた」
愛子のお昼という言葉に反応してか、忠夫は突っ伏したまま鞄から大きな包みを取り出した。
「またおキヌさんが作ってくれたんですか?」
「うんにゃ、今回はシロ」
忠夫は包みを解くと三段弁当の蓋を開けると、まあなんというか、米!肉!肉!であった。
「に、肉がこんなに!?」
肉食性の癖に、動物性タンパク質が多大に不足しているタイガーが吼える。
「作ったのがシロだからな、自分の好きなものしか入れやがらねえ」
そう毒ずく忠夫だが、彼の顔は笑みを作っている。
「横島よ」
「なんだ?」
そんな忠夫の背後から眼鏡が声をかける。しかし忠夫は気にせずに肉に箸をつけている。
「シロとは毎朝お前を引きずってる犬っこか?」
「そうだぞ、あと本人の前で犬っこ言うなよ、自分は狼だってうるさいから」
眼鏡は眼鏡のブリッチを人差し指で押し上げ、眼鏡をキラリと光らせると言った。
「そうか、A班!B班!出口を固めろ!C班は横島を包囲、D班はそのままC班の援護に回れ!」
眼鏡の掛け声に合わせて、ピートとタイガー以外の男子が即座に行動。出入り口を固め逃走ルートを塞ぐと、いつでも飛びかかれるように忠夫を囲む。
「な、なんじゃあ!?」
忠夫が疑問の声に眼鏡はこたえる。
「ふ、昨日は逃げられたが、今日は逃がさん。横島よ、命までとろうとは言わん、その弁当をよこせ」
不適に笑い、眼鏡は忠夫に最後通達を送る。彼にとってせめてもの慈悲のつもりである。
「そうだ!幸せは皆で分ける物だ!!」
「独り占めは許さんぞ!!」
「てか、横島がそんな目にあうことが許せねえ!!」
「ちょっとまてや特に最後の奴!俺が女の子に弁当もらったらあかんのか!?」
横島の心からの絶叫に、教室に静寂が訪れる。
「横島よ………何をいまさら当然のことを言ってるんだ?」
眼鏡の目は本気である。彼は心の底から忠夫にそのような幸せが訪れてはいけないと思っているのだ。
「横島!世界の為なんだ!!お前にそんなことがあれば世界が滅ぶ!!!」
「は!持てるやつから奪う!!常識だ!!!」
「横島!弁当をよこせーーーーーーー!!!」
群集は波のように押し寄せ、忠夫を飲み込もうとした瞬間、救いは訪れた。
「おーい横島、ピエトロ、え〜〜〜とら?校長が呼んでるぞ」
「とら!?」
担任が教室に忠夫たちを呼びに来たのだ。それを聞いた眼鏡は、一度だけ指を鳴らした。
「撤収だ、命拾いしたな横島、食わないでやるから早く行って来い」
眼鏡がそういうと、男子は解散していき各々の席に戻っていく。
「信用できるか!?」
「何を言ってる?本人いない所で奪っても、面白くないだろ」
眼鏡は微笑を浮かべて言い切った。
六道女学院中庭、今回はおキヌから誘い千夜たち五人で昼食をとることになった。
「へえ、千夜と草壁は代表に選ばれたのか」
「そうなんです、千夜さん今日の授業で式神ケント紙を相手にした時、軽々倒しちゃったんで。私はぎりぎりです、ハム」
穂波はそう言うとサラダサンドをぱくつく。
「それは………………」
弓は微妙な表情を浮かべている。式神ケント紙には彼女なりの思い出があるのだ。
「すごいね千夜ちゃん」
おキヌの正直な賞賛も彼女の表情を揺らさない。
「いえ、当然の結果です」
ある意味傲慢に聞える台詞も、千夜は当然のように口にする。彼女にとっては本当のことなのだ。
「すごい自心ですわね」
弓は呆れている。彼女もこういった事を口にすることはある。だがそれは自分に言い聞かせる為口にするのだ。千夜のように感情もなく言うことは出来ない。
「本当に千夜さんは強いね、それに未だ使ってない手もあるんでしょ?」
穂波はため息混じりに千夜を賞賛するが、千夜から帰ってきた言葉は意外なものだった。
「草壁穂波、貴方も本来の能力を使っていない。草壁家は元来結界術者の家系のはず、しかし貴方は選考の際、結界術を用いてはいなかった」
穂波はそれを聞くと、食べかけのサンドイッチを膝の上に置き、彼女はゆっくりとうつむいた。
「千夜さん草壁の家のこと知ってたんだ……」
「草壁の本家は京にあります、名と霊能以外は知りません」
千夜は穂波の様子を気にしない、彼女にとって他の家のことなど知ったことではないのだ。
「そっか、………私はね出来損ないなの、草壁の本家に生まれたのに簡単な結界術一つ使えない。千年の昔から結界術に特化した血筋にありながらね、だから私は草壁家の恥でしかないの………………」
「草壁………」
「草壁さん………」
「穂波ちゃん………」
何とも言えない空気の中、会話の際も箸を止める事の無かった千夜が箸をおいた。
「草壁穂波、一つ訂正しなさい」
「え?」
千夜の珍しい強い口調に、穂波は下げていた頭を上げ、千夜の顔を見つめる。穂名の表情にはいつもの笑顔は無い。
「一族が伝えてきた術を本家のものが仕えない、確かにこれは家にとって恥でしょう」
「千夜ちゃん!?」
「な!千夜てめえ!!」
ある意味この中で一番仲間というものを大事にする一文字が千夜の言葉に憤慨する。
「待ちなさい一文字さん!」
「待てって弓!」
一文字を留める弓、その弓にきつい視線を送る一文字。しかし千夜はそれを気にも止めず、ただ穂波の顔だけを見つめる。
「本来陰陽師というものは人に仇なす霊的存在を払い、力なき者を守護するが命題。私のように家を続かせる事が困難になるならともかくとして、草壁穂波、貴方は霊を払い、深き闇より人を救う術を持つ。高島千夜は貴方を出来損ないとは認めない」
千夜にとって固有の霊能を継ぐ事が価値ではない、霊能を用いて何をなすかが価値なのだ。その為強い霊能を持つ者を産むことは彼女にとって重要なことである。
穂波の手にしていたサンドイッチが宙を舞い、気付けば穂波は千夜の首に手を回していた。
「穂波、何故抱きつくのです?」
「………なんでだろうね?」
「穂波、何故泣くのです?」
「………なんでだろうね?」
穂波は千夜の首に回した両手をさらに強くし、細い千夜の肩に顔をうずめる。
結界術の使えない穂波が、草壁の本家でどのような扱いを受けてきたのか、それは穂波の言葉から推測できる。ならば彼女にとって、今の千夜の言葉はどれ程のものだろう?
千夜の言葉は穂波を励ますためのものではない。千夜にとって穂波ほどの力を持つものが出来損ないとする事は、千夜の価値観において認めることの出来ない事だったからだ。
慰めでなく事実を、穂波はそれをどれだけ欲しってものだったのだろうか?
千夜には穂波が抱きつく理由も、泣く理由も分からない。だけど、それでも、穂波の腕を振り払おうという気は起きなかった。
おキヌは思う、
この二人が出会うことが出来てよかった、
もしかしたらこの二人は私や、弓さんや、一文字さんと同じように歩むのかもしれない。
おキヌは笑っていた。
「ははははははは始めまして!わ、私草壁穂波と言いま、ズ!!!?」
穂波は美神心霊事務所の面々を前にして盛大に舌を噛んだ。その様子を見ておキヌと令子は思わず苦笑を浮かべる。
「始めまして草壁さん、そんなに緊張すること無いわよ」
「はひ」
令子はそういって笑いかけるが、穂波はさらに緊張する。憧れのお姉さまが目の前にいるのだ、ここは大目に見るのが優しさというものである。
どうして横島宅に穂波がいるのか、それはおキヌが穂波を一緒の食事に誘ったからである。穂波は千夜とおキヌが一緒に暮らしているのは知っていだが、まさか令子まで一緒に暮らしているとは思わず、不意打ちに近い形での対面であった。
「穂波、何故緊張してるのですか?」
これはある意味緊張をまったくする事が無いんじゃないんだろうか?と思われる人物のせりふである。
「始めましてでござる、せっしゃ犬塚シロでござるよ」
「私はタマモ、よろしくね」
シロが元気よく、タマモがどうでもよさそうにそれぞれ挨拶する。
「あともう一人いるけど、まだ帰ってないから紹介は帰ってきてからでいいわね」
令子はもう一人いるという、穂波の脳裏に一人の名前が浮かんだ。
「あと一人って横島忠夫さんですか?」
「あら、知ってるの?」
令子は忠夫の名前が出てくるとは思っていなかったのだろう、少し驚いたように聞く。
「はい、月刊GSに乗ってました、美神心霊事務所所属の期待の新人って見出しでし」
「………………期待?」
令子は首を傾げる、それは何時のときのものだろう。お世辞にもGS試験の時にその言葉は出てこないだろう。だとしたらそれ以降、少なくとも霊波刀を習得したくらいのときだろうか?アシュタロス事件のときの事は本人以降もあり一般には公開されてないし。
「えっと推薦者はオカG日本支部部長になってましたけど………」
「ママが?まっそれなら納得ね」
いや、自分に内緒で丁稚を褒めているのが気に食わないでもないが、忠夫の評価は身内になればなるほど高くなる傾向がある。逆に身内以外にとっての評価はよくて中の下である。
「私もその記事読んだけど、穂波ちゃんよくその記事に気がついたね?あのときの記事、ピートさんが一面に出てたのに」
ピートは吸血鬼でありなが唐巣神父の後継と目されており、なおかつ生まれ持ったその美貌のため一面の扱いになったのである。月刊GSで一面を飾るには顔だけでは無理だ、実力も伴わなければ載ったりはしない、つまり今のところピートは世間一般において若手NO1なのである。
ちなみにおキヌは、この月の月刊GSを観賞用と保存用の二冊を買っている。もちろん彼女の目的はピートではなく何処かの誰かさんである。
「はい、美神心霊事務所所属って言うのと、それまでの経歴に目を引かれたんで」
「経歴ってどういうこと?」
あいつに特別な経歴なんてあっただろうか?たかが期待の新人程度を語るのに深く調べたりはしないはずだ。そのためどんな扱いを受けていたなどは載らないはず。一番付き合いの長い令子がまたもや首を傾げる。
「はい、事務所の所属した当時霊能のかけらも発露してなかったって書いてあったんで」
成る程、確かに霊能を持っていない状態でGSに雇われるのは普通ではない。
「私これを見て思ったんです、きっと横島って人は美神さんに持っていた霊能を見出されたんだろうなって」
穂波が尊敬の視線を令子に向けるが、令子はその視線が痛かった。彼女が忠夫を雇ったのは霊能を見出してではもちろんない。ただ単に安く使える労働力確保のためだ。その事を知っているおキヌは苦笑を浮かべている、彼女も幽霊時代安く雇われた身だ。しかしおキヌはまだいい、その隣でさすが美神殿でござると目を輝かせている犬っ娘や、やるじゃないと視線を送ってくる狐っ娘、何を考えてるかわからない千夜の視線が辛い。
「ただいまーっす」
その時渦中の人物が帰宅をとげた。その瞬間………
「せんせーーー!!おかえりでござるよーーーーー!!!」
シロが玄関に向かい飛び出しっていった。
「お、シロでむかえごく、って抱きつくな!押し倒すな!なめるな!ここじゃいやーーーーーーーーー!!!」
シロに押し倒されたようだ、それを聞いていたタマモがやれやれと立ち上がるとげんかんのほうに向かっていく。
「えっとあれって………」
「穂波、いつもの事です」
「そうなの………」
千夜の言葉に穂波はちょっと引く。
「馬鹿犬、何時までそうやってるのよ、お客様が来てるのにそんな事してたら失礼じゃない」
「む、女狐にしてはまともな事をいう、確かにこんなことをしている時ではござらぬな。ほら先生立つでござるよ」
「……取りあえず言いたいことはおいておいてやる、誰か来てんのか?」
声がだんだん近づいてきて忠夫が姿を現した。………………シロとタマモをはべらせて。
そして穂波の姿を見た瞬間、
「初めましてお嬢さん!僕横島忠夫って言います!!」
そうのたまいながら穂波の両手を握り締めた。
「お嬢さん!ぜひお名前をって、あれ?」
いつもの様に調子にのってまくし立てようとしていたが、何かに気付いたのか握った手を見つめる。
「あの?」
いきなり変わった忠夫の様子に穂波は戸惑う。が、それも長くは続かなかった。
「横島君、何時までそうしてるつもり?」
この後はお決まりの通りである、あえて記す必要も感じ無いがあえて記すならば。
「事務所に恥を塗るんじゃないわよ!!!」
「すんませーーーん!!!」
変わらない日常の一こまであった。
「なに、あんたら六女のクラス対抗に参加すんの?」
今夜の献立は和食が中心、シロは生姜焼きを食べるたびに尻尾をふりふり、タマモはお味噌汁の具の油揚げを食べるたびにナインテールがひょこひょこゆらす。
「そうなんすよ」
「なに、六道のおばさんにでも脅されたわけ?」
令子の台詞におキヌはなんとも言えない顔をし、穂波は味噌汁をふき出しかけ、千夜は気にせず食事を続ける。
「違いますって、何でもうちの校長が生徒の才能を生かすのは教育者の使命だ、そう言って六道理事に単身話を持ちかけたそうなんすよ。それで六道側からOKがでたんでどうかって話になって、そこまでされたら断れないじゃないっすか」
「それは立派な先生ね………」
たかが一介の公立学校の校長が六道家当主に対して直訴、しかもその話を六道が受ける。普通では考えられないことである。
ちなみにこの校長、今の高校に就任する前30校以上の高校に就任している。その全ての高校において全ての生徒を進学、あるいは就職させるという実績を残している。教育委員会に来ないかという話もあったが、一生現役を掲げこの話を断っていたりする。
「てことは私たちと当たることもありえるって事ですか!?」
穂波が驚きの声を上げると、千夜が続けた。
「ちょうどいいですね、横島忠夫の実力がどの程度のものか知るいい機会です」
忠夫はそれを聞くといやそうに顔を歪める。
「確実に当たるとは限らんやろうが」
試合形式は勝ち抜き式、つまりはトーナメントである。どちらかが負けてしまえば出会うことはない。それでも千夜は、
「私は勝ちます」
そう答えた。それを聞き穂波は笑っている、あまりにも千夜らしいと。
「まあ、私も呼ばれてるからいくから楽しみにしてるわ」
令子はあまり気のない様子だ、他にも何か要請されたのだろうか?
忠夫は千夜と令子の言葉を聴きため息を漏らす。
ピートもタイガーにとってもこの話はいいものだ。ピートはここである程度の実績を残せばオカG入りがますます楽になるだろうし、タイガーは勝てば給料上がるかもと喚いていた。
自分にとっても悪い話でもないと思っている。霊能のスペシャリストを育てる六女相手に自分がどれだけのことが出来るだろうか?
彼女に救われたこの命、どれ程の価値があるのか。忠夫はそれが知りたくてたまらなかった。
自分の価値は自分で決める。
この言葉は自分の価値はこんなにもあるんだと回りに押し付けるものではない。
自分の価値は自分が何をするか、どれだけの事をなしたかで決まるという意味だ。
それならば自分の価値は………………
「横島忠夫」
「ん?」
自分でも気付かないうちに箸が止まっていたようだ、ごまかすように一口お米を食べる。
「どうした?千夜」
取り合えずなんでもないように答えるが、千夜は忠夫の目を見たまま、いや視線は少し斜め下を見ている。
「ほほにご飯粒がついています」
千夜はそう言うと手を伸ばし、忠夫のほほに指を触れさせご飯粒をとるとそのまま………………
指をそっと忠夫の唇に触れさせた。
忠夫の唇に千夜の指の冷たい感触が触れ、そして触れたときと同じようにそっと離れていった。
「な、な、な、な、な、ななななななななななななななななななななな!?」
「はわわわわわわわわわわわわわわ」
「先生に何するでござるかーーーーーーーーー!?」
「ごふっ!ごふ!けほ!」
「わ!」
呂律が回らぬもの、言語が破綻した者、憤慨する者、お味噌汁を飲んでいたため咳き込むもの、顔を覆った指の間からその様子を覗く者。
様々な反応を見せる面々をよそに当事者の片割れは平然としていて、もう片方はというと。
ガタン!
音を立てて椅子から立ち上がり、
ズダダダダダダダダダダ!
足音を荒立て玄関まで向かい、
ガチャン!
大きな音を立て玄関の扉を開け、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
夜空に咆哮を轟かせ、夜の街に走り去って行った。
そして後には、
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
呆気にとられた面々と、
「?」
何も分かってない千夜だけが残された。
忠夫は次の日の朝になるまで帰ってこなかったそうだ。
どうも氷砂糖
千夜確実にメインヒロインの道を進んでますね、作者の思惑ではこんなことになるはずではなかったのですが………………
穂波の過去話出しました、千夜の学園生活をかく都合上穂波の出番が増えそうなので。
忠夫の学校教師が偉いことになってますがたぶんまだまだ増えると思います(まて
忠夫の価値観ですが、作者が呼んだライトノベルで深く感銘を受けたものを使わせていただきました
千夜があんまりにも人気なので千夜カウンターなる物を次回から設置します、100溜まると千夜オンリーの話を一話、作者が書く気になるかも知れませんw
千夜カウンターは1レスに一つでも千夜の名前があれば1ちーちゃんとさせてもらいます、作者も書く時間がほしいのでw
なお単位についてですがkkhn様のちーちゃんを採用させていただきますwありがとうございました。
最後にほっぺたについたご飯粒を食べるのではなく食べさせる千夜、………………………………萌えました?
レンジ様
横島かっこよくかけてましたか、よかった。
登場人物横島と千夜だけ………やばい書いててこっぱずかしいのしかうかばねえw
え〜に様
ハーレムっすか!やりたくないとわ言えないんすけどストーリー上難しくて、六女の話が終われば壊れを書くつもりなんでもしかしたらそれがハーレム風味になるかもしれません
内海一弘様
はいシロタマが積極に出てきました、美神とおキヌは今後に期待です。
白夜の能力はまだありますがそれは必殺のようなものにするつもりなのでしばらくは秘密です。
アミーゴ様
くう!作中の言葉で返信をしてくるとは!?
お見事ですアミーゴ様w
なんかだんだん千夜が箱入り娘になってきて困ってますw
今回の千夜はどうでしょう?
闇色戦天使様
はい!横島が真面目にやるときはラスト近い時意外は落ちなきゃいけません!w
そうですね確かに美神と千夜は一歩リード、今回でさらに千夜がリードですw
文月様
三点リーダの秘密は最終回後にはっきりと、いまから突込みが想像できて楽しみでなりませんw
そうです!横島はどんなな賢くなろうとも、どんなに強くなろうとも落ちを忘れちゃいけません!(力説
千夜は今回こうなりましたw
どうですか?