「すみません!」
真夜中の大宰府に小竜姫の声が響く。境内に参拝客はもちろんいない。
「妙神山からの使いの小竜姫です。道真殿に文を届けに来ました。」
奥の方から音もなく一人の束帯姿の男が現れる。
「小竜姫様自らの使いとは……いかなるご用件でございましょうか?」
束帯姿の男はそう言うと小竜姫に頭を下げた。
「夜遅くにすみません道真殿。斉天大聖様から文を届けるように申し付かりました。」
「私にですか?」
「はい。早急に届け返事をもらってくるようにと」
小竜姫に差し出された文を受け取った道真は、それを裏返し斉天大聖の署名を確認をする。
「わかりました」
文を広げ、文面を読み進めるうちに道真の表情が曇ってゆく。
その道真の表情に文の内容を知らぬ小竜姫は不安を覚えるが、くっと奥歯をかみしめ何も言わぬよう耐えている。あくまで使いであり余計な詮索はするべきではない事を彼女はよく知っている。
文を読み終わり考え込む道真に小竜姫は感情を抑え一言だけ尋ねる。
「斉天大聖様にはどのように伝えましょうか?」
「……少し上がっていただけますか。探し物がございますので」
「探しものですか?」
「はい。少し時間がかかります故、中でお待ちしていただきたいのですが」
「……わかりました」
「あいにく、今は巫女もおりませぬ故もてなしもできませんぬが」
「今のわたしは使いですのでお気づかいは無用です」
「……申し訳ありません。では中へ」
道真に案内され神殿の奥に向かう廊下の中、小竜姫は文の内容について思考を巡らせていた。
(あの文には一体何が書かれていたのでしょうか……ただの応援要請……では無そうですね ……それに、一体なぜ道真殿なのでしょうか? 学問と雷の神……まさか横島さんのような前例があるかを調べのでしょうか……)
小竜姫は畳敷きの部屋に通され、道真はさらに奥の部屋に入った。
再び小竜姫の前に現れた道真の手には分厚い本が一冊あった。
「お待たせいたしました。斉天大聖様にこちらをお渡しください。」
その本の表紙は汚れや破れで解読不能な部分が多かったが『神具』と言う文字を読むことが出来た。
「私が力になれるのはこれだけです。 お役に立てずに申し訳ございません。」
小竜姫は言い知れぬ不安に襲われた。一体斉天大聖は何を考えているのか? そして道真は何故、役に立てないことを詫びながらこの本を出すのか。この使いと忠夫は関係があるのか。
(理解出来ないことが多すぎますね……)
「あの……失礼ですが、文にはどのような事が書いてあったのか教えて頂けますか?」
小竜姫の問いで道真は彼女が文の内容を知らないことを知ると少しばつの悪そうな表情を浮かべその問いに答えた。
「私に文珠の精製法について尋ねておられました。」
「文珠ですか?」
「はい。ですが、残念ながら私は存じ上げませんでしたが。」
「では何故、あなたにこのような文を届けたのでしょうか?」
「おそらく私が文珠を使っているからではないでしょうか。」
「使っている? 神族のあなたが?」
(そんなば……文珠じゃ神通力や魔力の制御は出来ない……神が使うはず……)
「えぇ、私は確かに今でこそ学問と雷の神でおりますが……元は人間でございます。神通力は他の神より弱くございます。雷は起こすことは出来ても制御は上手くいきません。ですから文珠を利用して制御しております。」
(なるほど……雷を起こす神通力はあっても制御する神通力はない……雷自体は自然界のもの……つまりは文珠で制御できるというわけですか……でも)
「あの……でも文珠の精製法は知らないんですよね……一体、どうやって文珠を手に入れたのですか?」
「神界からでございます。」
「神界?」
「はい」
「それは誰が作ったものなのですか?」
「……申し訳ございませんが、存じ上げません。 ……私も支給していただいてるだけでして……」
「わからないのですか?」
「はい。何でもこのことに関しては極秘事項となっているみたいです。」
「極秘事項?」
「はい……斉天大聖様ですらご存じないのですから……よっぽどの事ではないかと」
小竜姫は余りの展開に想像力がついていかず、口に手を当て考えこむ。
「この本には、精製法については書いていないのですが『文珠』についての詳しい説明が載っております。少しは役に立つかと」
「詳しい説明?」
「はい。文珠がどのような道具かの記述がございます。」
(『神具』……文珠が神具? ……どう言う事?)
道真との会話は小竜姫の手に余った。
(知らない事、わからない事が多すぎるます。……とりあえず、妙神山に急ぐしかないですね)
「わかりました。ではこれを預かっていきます。」
「斉天大聖様によろしくお伝えくださいませ」
「はい」
小竜姫はその本を脇に抱え立ち上がり、神殿を後にした。
(この本で何がわかるのか……さっぱり見当がつかないけど、何かの手がかりになるのは確かそうです……急がないと)
妙神山に急ぎ、東へ東へと文字通り飛んで帰る小竜姫を徐々に明ける朝日が赤く照らす。自然と飛行速度が上がっていく。
斉天大聖に使いを頼まれたヒャクメは今、神界の自宅にいる。しかしこれはさぼっているのではなく、斉天大聖に持ってくるようにいわれてリストの物すべてが彼女の自宅にあるものばかりだったからである。ヒャクメは今、リストの最後の一つを見つけるため、物置の奥にいる。
「みつけたのねぇ……こんな奥にあったのね」
出てきたのは少し量の多い紙粘土であった。
「よくこれで遊んだのね……懐かしいのねぇ……」
紙粘土が見つかったのは、子供の頃に彼女が遊んだ物を集めて保管していた玩具箱の中からだった」
「でも……なんの役に立つのね……まぁいいか」
物置を出たヒャクメはバーナー・電球・カメラ・などが入ったトランクにその紙粘土も入れ蓋を閉じた。
「これで、リストのものはだいたい集まったのね……集まった……けど全く何に使うか理解できないのねぇ!!」
少し時間が戻り、斉天大聖が彼女の前でメモを書いている間、彼女は斉天大聖が何を考えてるか読もうと心をのぞきこんだが、心眼の一つを譲り受けたままの斉天大聖に気付かれ急に出てきた如意棒で叩かれた、それ以降、ばれる度に如意棒の餌食となり、最後までわからなった。
「うー ……優秀な情報官としては悔しいのね……サルジジのケチィィィィ! ゲーム狂いぃぃぃぃ!」
この時のヒャクメが自分の言うように優秀な情報官で、斉天大聖に心眼で見られてると気がついていれば妙神山に戻った時に百匹の小さな斉天大聖の分身に折檻される事はなかっただろう。
~続く~
あとがき って何語ってもいいよね?
まぁ……あれですわ……設定が細かすぎるというか、ぼろが出そうで怖いというか……原作の設定ぶっ壊してるとやだなぁ……と危惧しております。うーん……大丈夫でしょうか……
今回はまぁ3.5話としてもいいかなぁと思いましたが、4話としました。
短くなってしまいましたが、読みにくい回ですし、区切りの関係でここがちょうどいいかと。
まぁ……この短いのが……設定調べにネカフェに籠るわ、一回書いたのが何故か消えるわで……無駄に時間かかりました……いやはや
次の5話の掲載はちょっと日にち空きますので気長に……待ち望んでいただけたら号泣しながら感謝です。
本当にこんな拙い話に返事をいただきありがたい限りです……励みになってます。
では、また5話で。
……の前にレス返しさせてください!
○Tシロー様
やったぁ! よしがもらえたぁ! ありがとうございます!
ごった煮が上手く作れるのは本当に料理センスがいい人じゃないと無理じゃないですか?……まぁとりあえずここのシロにそれは期待できなかったので……
ほら、よく言うじゃないですか、「うまい話には裏がある」って(←大間違い)
コメディーもダークも、どちらも「らしい」ものを出していきたいと思います! ありがとうございます。
○アミーゴ様
いやぁ……一応人間の何倍の嗅覚があるんですから、我慢できませんよ
臭い→何かたしてごまかす→ますます臭くなる→何かたす……の無限ループですから。
はい、作者ならむしろ「無」で目の前から消したいです。
○内海一弘様
あぁ……そんな眩しい瞳で信じないで下さい……作者の曲がった心に突き刺さります……が、がんばらねば……
まぁ……全力疾走空回りなお嬢さんですから……しょうがないですよ。はい。
うーん……あの3匹、動けるのでしょうか?……まぁこの短編で一番かわいそうなのは人工幽霊な気が個人的にしています。。。南無阿弥陀仏……
○ZEROS様
はい、実は外伝です。ちゃっかりきっかり。
あのお嬢さんは冷蔵庫の中で目についたものをぽんぽん入れただけです……なんであんなのばっかり入ってるんでしょうか?
あぁ……そんな可愛らしい称号でいいのでしょうか、、、受け取らさせときます。
○February様
えぇ……この惨劇は朝も昼も起こりそうです……西条、、、西条かぁ……ふふふ(←悪い顔して作者が笑ってます)
はい! 楽しみにして頂きありがとうございます! がんばっていきます。
※追記
1話~4話+外伝の改定をいたしました。 名無しのGS様 の感想を読み少し小竜姫の口調も直しました。アドバイスありがとうございます。
えっと5日位したらまた戻ってくる予定なので、ではでは