・・・イタイ・・・・
イタイ・・・・イタイヨ・・・・
カラダガ・・・ウゴカナイ・・・・
ナンダ・・・・ナニガ・・・オキテイルンダ・・・
などと意味深に考えるのもめんどくさい!!
「いたたたた・・・」
「あっ、やっと起きたのね〜。横島さん調子はどうなのね〜?」
ヒャクメが声をかけてくる。
俺は勘九郎との戦いの後、意識を失なってしまったのは覚えている。
目覚めてすぐ自覚したのが全身をくまなく襲う痛み。
そして視界から自分が妙神山にいることを知った。
「全身くまなく痛いぞ。」
「それはご愁傷様なのね〜。」
ヒャクメは憎たらしいほどの笑顔でそう言った。
「・・・色々聞きたいことがあるんだが、とりあえず俺は何でこんな状態なんだ?」
「それは小竜姫の神装術を使った副作用みたいなもんなのね〜。」
ヒャクメは表情を切り替えて説明を始める。
「副作用?ヒャクメの神装術のあとで熱を出すのと同じようなものか?」
「そうなのね〜。私の神装術では脳が情報を処理しきれずオーバーヒートして知恵熱出すのと同じで、小竜姫の神装術では横島さんの霊力をほぼ全部使ってしまうみたいでその回復のため二日間も眠っていたのね〜。んで、体の痛みは・・・」
「痛みは?」
「筋肉痛なのね〜。」
「は?筋肉痛?」
「そうなのね〜。小竜姫の神装術は横島さんの身体能力をかなり増幅するみたいなのね〜。でも、あまりに増幅するもんだから体が悲鳴をあげてるのね〜。」
な、なるほど・・・確かにあの時はとんでもない力が使えたからな・・・
「いててて、体の痛みの原因はわかった。それじゃ俺が寝てた二日間で起きたことを教えてくれないか?」
「了解なのね〜。え〜と・・・」
痛む体を起こしながら訪ねるとヒャクメは顔に笑顔を戻して説明を始めた。
メドーサが会場に火角結界を仕掛けていたこと。
火角結界の処理のため試験の続きは中止になったこと。
処理は昨日無事に終了したこと。
現在、GS協会では今回の試験を有効にするか無効にするかで会議中であること。
そして、
「伊達雪乃丞が逃げた!?」
「そうなのね〜。ピートさんとの試合を終えた後、気を失っていた伊達は救護室に運ばれたのね〜。でも周りが火角結界で騒ぎになっている間に隙をついて逃げ出したのね〜。」
「・・・タフだな。」
「まったくなのね〜。一応協会で追跡はしてるらしいのね〜。私が探してもよかったんだけど、火角結界の処理で手が離せなかったのね〜。まぁ、詳しい話は陰念の治療が終われば聞けるからそんなに気にしなくていいと思うのね〜。」
「・・・いいのか?ほんとに?」
「一応後で私が所在を調べてみるのね〜。でも試合中の会話を聞く限りではメドーサに合流することは無いと思うのね〜。」
確かにな。それにヒャクメが調べるなら近いうちに見つかるか。
「とりあえずそんなとこなのね〜。私は横島さんが起きたことを小竜姫に教えてくるからおとなしく寝てるのね〜。」
そういいながらヒャクメは俺の体を無理やり横にした。
「いっ!いてててて、もう少し優しくしてくれよ!」
「それだけ元気に言えれば大丈夫そうなのね〜。それじゃ、ちょっと行ってくるのね〜。」
そう言うと、ヒャクメは部屋を出て行った。
「横島さん、具合はどうですか?」
「体が悲鳴をあげてます。」
私がそう訪ねると横島さんは苦笑いを浮かべながらそう答えた。
「そうですか。そんな状態の時に申し訳ないのですが・・・」
「?なんですか?」
「私の神装術を発動させたときのことを教えていただけますか?」
この状態で横島さんに聞くには酷な事かもしれませんが聞かないわけにはいきません。
「・・・わかりました。」
横島さんは少し顔をしかめながらもそう答えた。
「横島さん、別に今じゃなくても大丈夫なのね〜。だから無理をしなくても・・・」
ヒャクメは横島さんのあまりの表情を見てそう声をかけた。
「いや、大丈夫だ。と言っても俺が話せるのはたいして長い話じゃありませんよ?」
「いえ、それで結構です。話してください。」
横島さんの顔をあらためて見つめながら私は話すよう促す。
「あの時、俺はまた声が・・・心の声が聞こえてきました。そして情けない話ですがパニックになってしまって、何もかもがわけがわからない状態になってしまいました。」
苦笑しながらも横島さんは話を続ける。
「そして・・・そこから俺は暗闇の中に一人でいました。まるでぬるま湯につかっているような感覚が全身を包んで・・・どこかにゆっくりと落ちていくような感じでした。」
『落ちていく』
私とヒャクメその言葉にわずかに反応する。
「俺はもう・・・その感覚に抗うのが嫌になってただ楽になりたくて・・・その感覚に身を任せようとしていました。その時、その、小竜姫様の声とヒャクメの声が聞こえてきまして・・・気がついたら発動に成功していました。」
「・・・」
横島さんの話を聞き終えると私は少し考えごとを始めた。
「あれはいったいなんだったんですか?」
横島さんの問いかけに私とヒャクメは一瞬だけ視線を合わせると一度だけ頷いた。
「あれは堕天です。」
「堕天、ですか?」
「そうです。神が魔に堕ちる。天から堕ちて魔に辿り着く行為です。」
小竜姫は簡潔に説明する。
「でも俺は人間ですよ?」
「それはそうなのね〜。でも横島さんの中には神族の私の霊力があるのね〜。しかもあの時横島さんの霊力は神装術でかなり強化されていたし、霊力も神族のものとほぼ同じものだったのね〜。堕天するには少し弱いけどその可能性があったのは確かなのね〜。」
「そうですね。私の考えもほぼ同じです。他にも魔装術と同じように神装術の暴走も考えたのですが、その可能性は少ないようです。」
「?そうなんですか?」
「ええ、少し魔装術について調べてみました。魔装術は一般的には魔と契約することで使用する術と考えられていますが実際には魔と契約するのではなく、自身を魔に落とすと思い込むことで己を魔に変え力を得るのですが、最終的には己の意思で潜在能力を引き出す術なのです。」
一息ついて私は説明を続ける。
「しかし神装術は実際に神と契約しておこなわれます。そのため肉体に負荷が掛かりこのような副作用、知恵熱や筋肉痛が出るのですが魔装術とは違い契約した神の能力を一部ですが使えるようになります。また、先ほどの説明にもありましたが魔装術は己の潜在能力を引きだすので最終的な形は己の影法師とほぼ同じになります。ですが神装術は神の力を借りるので最終的にはその神と同じような格好になります。まさに神を装う術。という訳ですね。」
ヒャクメの神装術は額に眼が現れ、私のはわずかだが竜の一族の証である角がはえる。
「それはわかったのね〜。でもそれじゃ暴走じゃない説明にならないのね〜?」
「魔装術とは違い神装術は肉体を付属物にするようなことはありません。ですからたとえ暴走しても最悪死ぬことはあっても堕天と言う結果にはなりません。」
「あ、確かにそうなのね〜。」
補足するならば魔装術と言うのは一般的に伝承されているのは間違った方法だ。その術の完成への過程で魔に堕ちてしまうものが多かったためそのように伝わったのだろう。
「なので横島さん、今後私の神装術は出来るだけ使わないでください。いつもあのようなことが起こるわけではないですが、可能性は十分ありますので。」
「わかりました。」
私の言葉に横島さんは素直に頷いた。
「よろしいです。私は今回のことを神界に報告しなければなりません。ヒャクメ、少し手伝ってください。」
「了解なのね〜。」
ヒャクメの返事を聞きながら私達は立ち上がる。
「横島さんはゆっくり休んでいてくださいね。」
「はい。と言ってもあんまり体は動かせないですからじっとしてるしかないですけどね。」
「クス、そうですね。」
横島さんの言葉に私は微笑を浮かべる。
「それじゃすぐ戻ってくるからおとなしく待ってるのね〜。」
ヒャクメの言葉を最後に部屋を出る。
そして書斎に向かう道すがら少しだけ話をする。
「まああの神装術を使ってあの程度の筋肉痛で済んだのは幸いなのね〜。もし冥子ちゃんのヒーリングが無かったら少し体を動かすだけで泣くほど痛かったと思うのね〜。」
「不幸中の幸い、ですかね。」
「あの時横島さんが使った神剣、小竜姫の使うものと比べたら見劣りするけど人間界では屈指の霊刀と同レベルの威力はあったのね〜。竜の体から出でし剣、草薙の剣と言った所なのね〜。」
「人をヤマタノオロチみたいに言わないでください。」
まったく!ヒャクメにはもう少し仏の教えを説かなくてはいけませんね・・・
「それより、後で横島さんに簡単な食事とマッサージでもしてあげてください。幾分はそれで楽になるでしょうから。」
「!!了解なのね〜!!」
私の言葉にヒャクメは嬉々として返事をする。
ヒャクメ・・・そこはかとなく嫌な予感がするんですが・・・気のせいですよね?
私は手早く小竜姫の手伝いを終えると再び横島さんのもとにやってきた。
「なあ、ヒャクメ?」
「?なんなのね〜?」
横島さんは先ほどから私と顔をあわそうとしない。
「なにしてるんだ?」
「なにって、マッサージなのね〜?」
私は先ほどから横島さんの腕だの足だのを揉み解している。
「そうか、それはありがたいんだが・・・なんで風呂でやるんだ?」
「その方が効果があるからなのね〜!」
ちなみに私達は湯船につかりながら話している。
つまりは混浴中なのね〜!キャーー!!
あ、でも残念ながらお互いタオルは巻いてるのね〜。ちっ!!
「ほらほら、ここがええのんかなのね〜?」
「親父かお前は!?」
軽いジョークなのね〜
「んじゃ、お客さんこういう所始めて〜?なのね〜。」
「ますます親父みたいだぞ?」
久しぶりにツッコミ全開なのね〜。
「だいたいお前には恥じらいって言葉がないのか?」
「しょうがないのね〜。まさか服を着たままお風呂に入るわけにはいかないのね〜。」
横島さんの顔はわずかに赤くなっている。ふふ、かわいいのね〜。
「あ、もしかしてなにもつけないほうがお好みなのね〜?」
「ば!?馬鹿野郎!そんなわけあるか!!」
「あっはっは、横島さん顔が真っ赤なのね〜。」
茹蛸みたいに顔を真っ赤にして・・・うぶなのね〜。
でも、前みたいに露骨に避けたりしない。少しは改善されたのね〜?
「ねぇ、横島さん?」
「な、なんだよ?」
「あの時、神装術を使ったときに私達の声が聞こえたって言ってたけど、なんて言ってたかは覚えてるのね〜?」
少しだけ気になっていた。もしあの時の言葉を聞いていたならば・・・
「ああ、あの時小竜姫様の声が聞こえた後、ヒャクメの声も聞こえたんだ・・・『横島さんは横島さんのままでいて欲しい』って・・・」
「それだけなのね〜?」
「?ああ、その前にも何か聞こえたけど、聞き取れたのはそれだけだった。」
「そっか・・・」
残念なような安心したような複雑な心境なのね〜。
「とりあえず今回は助かったよ。ありがとな、ヒャクメ。」
そう言ってまだ少し赤い顔をこちらに向けた。
「ううん、横島さんもお疲れ様なのね〜。」
まぁ今回はこれで良しとするのね〜。
「さぁ、マッサージの続きをするのね〜!!」
「ちょ、まて!もういいって!あ、あたた。」
「ほらほら、大人しくするのね〜!!」
そう言って私は横島さんに抱きつく。
「ぎゃーーーー!!何で抱きつくんだよ!?」
「マッサージなのね〜!」
「こんなマッサージ知らねぇよ!!」
横島さんの叫び声がこだまする。ふふ、おキヌちゃん、今回は私の勝ちなのね〜。
追伸
風呂場でのことが小竜姫にばれて仏罰をくらいました。
翌日は横島さんと仲良く布団を並べて過ごすことになりました。
「ひ、久しぶりだから・・・か、回復が追いつかないのね〜・・・」
「天罰、だな。」
ひ、ひどいのね〜!!
あとがき
今回は説明ばっかりです。ちなみに神装術と魔装術の違いを更に補足すると、魔装術はある程度の素質は必要なものの使い手を選びません。まぁ、使いこなせるかは別ですが。神装術は素質と相性が重要になります。ですのでかなり使い手を選びます。横島君はヒャクメの霊力を持ってますから使えるんですね。個人的な解釈で申し訳ないんですが。さて、次から少し時間軸を弄ります。キャラの前倒しもしますよ〜。二、三人出す気でいますのでお楽しみに〜。
追伸
俊様のご指摘により誤字を修正いたしました。
俊様、ご指摘ありがとうございました。
レス返し
始めにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
Tシロー様
はじめまして。一応手下がいないとメドーサだけでは動きづらそうなので回収しました。どうしようか悩んだんですけどね。今後ともゆっくり書いていきますのでよろしければ読んでみてください。
内海一弘様
横島君は気がついてません。お約束ですね。ユッキーとピートはまだ考えてません。というかユッキーの次の出番もまだきまってなかったりします。少し時間軸を動かしますので。
February様
ユッキーは逃げていただきました。他の候補に裏取引みたいなのをして小竜姫様、もしくは他のGS預かりになる。なんてのも考えたんですがあんまり展開が思いつかなったんで。いっそのこと闘龍寺にでも叩き込もうかとも思ったんですけどね。
鹿苑寺様
一度頭脳戦みたいなのをやってみたいんですが如何せん私の頭がついてきません。情けない。ちなみに横島君の恋人候補を一人増やします。次の次ぐらいかな?近いうちに出しますのでお楽しみに〜。
俊様
誤字のご指摘ありがとうございました。情けない限りです。今回は仏罰少しだけありでした。本当に少しでしたけどね。何をしたかはご想像にお任せします。あ〜、なんか今小竜姫様の眼が赤く光るのを想像してしまいました。キュピーンとかいいながら・・・
百目守様
お褒めの言葉ありがとうございます。その分心理的描写やバトルシーンがまだまだだと感じている今日この頃です。神装術は今回説明したとうりです。魔装術は個人的な解釈がかなり入ってます。しかしまだまだ説明に穴がありそうな気がしてしょうがないんですよね。
闇色天使様
一応勘九郎は手ごまにするためお持ち帰りいただきました。メド様には今後活躍していただかなければいかないのでお手伝いは必要だと思ったので。フラグは微妙に立ちました。なんのフラグかは秘密ですけどね。
への様
堕天についての説明は現時点ではこんな感じです。矛盾点はおいおいと。おキヌちゃんは黒もいいんですがシリアスの後だったのでほのぼので。一応黒っぽいネタはありますのでそのうち書くかもしれません。お楽しみに〜。
アイク様
同時に展開すると完璧に制御仕切れません。ですがかなり強いのは事実です。副作用が大変そうですが・・・熱出しながら筋肉痛・・・最悪ですね・・・