「ハァ!ハァ!」
ちくしょう!このヴァンパイアハーフやりやがる!
予想はしていたことだがこいつとの力はほとんど互角。
体力勝負の持久戦じゃ勝ち目はねぇな・・・
俺がこの状況を打破する手を考えていると、
ドサァァァ・・・
何か大きなものが倒れる音がした。
「勘九郎!?」
俺は目を疑った。
俺の視線の先には魔装術が解けた勘九郎が倒れていた。
そしてその脇には・・・神族の霊気を放つ横島とか言う奴が立っていた。
「は・・ははは・・・すげぇ・・・」
あいつは確かに俺が目を付けた一人ではあるがまさかここまでとは・・・
おもしれぇ。俺でも勝てるかわからない勘九郎を倒すか!!
あいつと真正面からやりあえたら・・・そう考えただけで体が震える。
だが、それはこいつとの勝負を終わらせてからだな。
「おい!ヴァンパイアハーフ!!」
俺は目の前の相手に視線を戻す。
あいつも外の光景に目を奪われていたが、俺の声に反応して慌てて視線を戻した。
「あっちも終わったみてぇだし、こっちもさっさと終わらせようぜ。」
俺はそういいながら魔装術を解く。
「?なんのつもりだ?」
俺は右手に全ての霊力を回しながら、
「一発勝負だ!!男ならこれだろぉ!!」
起死回生の賭けに出た。
持久戦では勝ち目が無い。かといって相手の隙をつくにしてもそれも難しそうだ。
ならば一発勝負で行ったほうがまだ勝ち目はある。
「・・・いいでしょう!その勝負受けてたちましょう!!」
賭けに乗ってきた!!
あいつは俺と同じように右手に全霊力をまわしている。
いいねぇ・・・この緊張感!!
俺達はともに相手を睨みつけながら動かない。
へへ、もう少しこの感覚を味わいてぇ所だが・・・
「いくぜ?」
俺の言葉にあいつは軽く頷くことで答えた。
そして・・・
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
ともに相手に向かって走り出す。
瞬時に相手のもとにたどり着き、相手の顔面目掛けて右手を振るう!!
ドガァァ!!
打撃音が頭に響く。
俺の右手はあのヴァンパイアハーフの顔面に突き刺さった。が、
俺の顔面にも・・・
ちく、しょう・・・結局・・・互角・・・かよ・・・
俺はそう考えながら自分の意識が遠くなっていくのを感じていた。
ドサァァ・・・
視界の隅で雪乃丞とヴァンパイアハーフの二人が同時に倒れて行くのがわかったが私の視線と意識はあの小僧から離れなかった。
堕天から立ち直るか・・・くくく、どこまでも面白い!!
「さて、賭けは私の勝ちのようですね?」
私の横で小竜姫が立ち上がりながら勝ち誇った顔でそう言った。
「そのようだねぇ。」
私もそう返事をしながら立ち上がる。
「約定どおりあなたの命・・・頂きます。」
小竜姫が自分の神剣を抜きながらそう言った。
「それは勘弁してもらいたいねぇ。」
「そのような言葉は聞きませんよ?覚悟はよろしいですか?」
神剣を構えながら小竜姫は問いかけてくる。
私はそれを警戒しながら視線をコートに向ける。
案の定多くの人間が気を失った二人を介抱しようとそこには居た。
くくく、好都合だねぇ。
「小竜姫、一つ提案だ。私達を見逃しな。」
「世迷言を。覚悟!!」
小竜姫は聞く耳を持たず私に向かってくる。
「火角結界をこの会場に仕掛けた。」
ピタッ!
小竜姫の動きが止まる。
「賭けの景品の変更だ。このまま私達を見逃すならおとなしく引き下がろう。が、私の命を取ろうと言うならこの会場の人間の命は諦めな。」
「・・・戯言を・・・」
小竜姫はそれだけ口にする。
しかしそれ以上動こうとしない。くくく、本当に感情が顔に出る奴だねぇ。これは相当悩んでるねぇ。
「信じる信じないはあんたの勝手だけど、もし本当だったらあんたの弟子も無事じゃすまないねぇ。」
「くっ!!おのれ・・・」
私の言葉に小竜姫は顔を歪める。
「・・・わかりました。ここは引き分けで手を打ちましょう。ですが賭けは無効にはしません。あなたの命は・・・私が貰います。」
そういいながら小竜姫は神剣を引いた。
「くっくっく、いいだろう。覚えておくよ。」
そう言って私は勘九朗に手を向け、ここまで移動させる。
「小僧!!」
先ほどまで勘九郎と戦い、今はこちらの動向を見守っていた横島とか言う小僧に声をかける。
「・・・」
小僧は何も言わず私を睨みつける。
「今日はなかなか面白いものを見せてもらってよ。褒美にここは引いてやる。その前に一つ聞かせな!あんた・・・何者だい?」
「・・・俺は横島忠夫。小竜姫様とヒャクメの世話になってるただの人間だよ。」
ただの人間。ねぇ・・・
「横島忠夫か、その名前覚えておいてやるよ!!」
それだけ言い残し私は勘九郎を運びながら会場を後にした。
今回はほんのお遊びみたいなもんだったが・・・楽しめそうだねぇ・・・
私達はメドーサが立ち去った後をただ呆然と見つめていた。
「横島さん、体に異常はありませんか?」
そこに客席から降りてきた小竜姫が横島さんに声をかけてきた。
「あっ、はい。特には・・・あ、あれ?」
横島さんは力の抜けた声を出しながらその場にへたり込んだ。
「横島さん!どうかしたのね〜!?」
「いや、なんかやたら疲れたみたいに体がだるいんだ・・・」
そういいながら横島さんの神装術は解けて行き、いつもの格好に戻った。
「それは多分なれない力を使ったせいだと思います。ヒャクメ、横島さんの状態を調べてください。」
「おっけーなのね〜。」
私は横島さんを霊視して横島さんの状況を調べる。
「ん〜、霊力、筋力ともに大分疲労してるのね〜。今までは気を張っていたから気にならなかったのが一気に出ただけだと思うのね〜。」
「そう、か・・・」
横島さんはそういいながら目を瞑りすぐに眠りにつくように意識を失った。
「横島さん!?大丈夫ですか!?」
そこに近寄ってきたおキヌちゃんが声をかける。
「心配しなくても疲れて寝ただけなのね〜。おキヌちゃん、悪いけど冥子ちゃんを呼んできて欲しいのね〜。ヒーリングしてもらいたいのね〜。」
「あ、わかりました。」
おキヌちゃんはそういいながら気を失っている冥子ちゃんを起こしに向かった。
「ヒャクメ、もう一つ調べてください。メドーサが火角結界をこの会場に仕掛けたと言っていました。」
「火角結界!?」
私の驚きの声に小竜姫は軽く頷くことで答えた。
「わかったのね〜。」
私はあたりを霊視し始める。
客席は異常なし。試合場はもとから結界が張ってあるから見にくいのね〜。
そう考えながらも霊視を続ける。
ん?これは・・・
「よくわからないけどさっきまでピートさん達が試合をしていたコートの下になんかあるのね〜。」
「そうですか・・・」
小竜姫はそれだけ言うと少しだけ悔しそうな顔をした。
「あなたはもう少しそこを詳しく調べてください。私は唐巣さんにこのことを伝えてきます。」
「おっけーなのね〜。」
私の返事を聞くと小竜姫は唐巣神父のところに向かっていった。
しかしあれは結構機嫌が悪いのね〜。くわばらくわばら。
なにがあったのかは後で聞くけど、今は触らぬ神にたたり無し。なのね〜。
私はそんなことを考えながらそこを再び調べだした。
む〜〜、これは火角結界で間違いなさそうなのね〜。これを使われてたらこの会場ぐらい軽く消し飛んだのね〜。
しかもかなり巧妙に隠してある。木を隠すなら森の中、結界を隠すなら結界の中なのね〜。
しかし前回といい今回といい火角結界を使っていることを考えるとメドーサとやりあうときは注意したほうがよさそうなのね〜。
「ふむ。まぁこんなもんなのね〜。」
自分の分析結果を出すと私は戻ってきた小竜姫たちにそれを伝えた。
それからは解体処理、もしくは結界の封印の話し合いが始まった。
これはもう試験どころじゃないのね〜。
私はその話の渦中からそっと抜け出し、おキヌちゃん達に任せた横島さんの様子を見に向かった。
「おキヌちゃん?」
そこには相変わらず眠り続ける横島さんとショウトラを使ってヒーリングをかける冥子ちゃん。そして・・・
「はい?」
その横島さんを膝枕するおキヌちゃんの姿があった。
「なんで膝枕してるのね〜?」
「だって床にそのまま横にしたら横島さん寝づらそうでしたから。」
私の問いかけにおキヌちゃんはしれっと答える。
「・・・それじゃ私が代わるのね〜。」
「いえ、横島さんもよく寝てますし、動かすのもかわいそうなんでもうしばらくこうしてますよ。」
おキヌちゃんはにっこり笑いながらそういった。
「「・・・・」」
私達はお互い笑顔で見つめあっていたが見る人が見たらその間には火花が散っていただろう。
その様子を他所に横島さんは幸せそうに眠り続けた。
その様子に安堵を覚えると同時に私は嫉妬も覚える。
「おキヌちゃん!お願いだから代わってほしいのね〜!!」
「やです!!ヒャクメ様はさっき横島さんに抱きついたじゃないですか!!だから絶対にやです!!」
そう言っておキヌちゃんはかわいらしく頬を膨らませてプイっと視線をそむけた。
「ひ〜ん!!いけずなのね〜!!」
あとがき
試験終了です。以前言ったように次は後日談みたいなのを書こうと思います。出来る限りほのぼのいきたいと思います。しかし今回実感したのは多くのキャラを書き分けるのは大変ですね。いうほど多くないですが。ちなみにユッキーVSピートは悩みながらもこの展開にしました。男の勝負!!みたいなものを書いてみたかったので。ありがちですけどね。
追伸
俊様のご指摘により誤字を訂正いたしました。
俊様、ご指摘ありがとうございました。
レス返し
始めにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
内海一弘様
その辺の説明はかなり後になるかと思います。今は種まき中です。その後水をやるかはわかりませんが。ちなみに横島君はそう簡単には気づきませんよ〜。
February様
誤字のご指摘ありがとうございました。訂正させて頂きました。しかしそう簡単に誤字はなくなりませんねぇ。注意はしてるんですが・・・ううむ、修行が足りません。
俊様
神装術の同時展開は考えていますが今後使うかは微妙です。流石に強力過ぎるので命失いかねません。ちなみに小竜姫様たちの心の声が聞こえてしまったのは小竜姫様たちが強く念じたから、と考えてください。ユッキーVSピートは引き分けにしました。ご意見を頂いた結果も考えたんですが、どうしても勝ち逃げするきっかけが思いつきませんでした。うう申し訳ないです。
羊棺執事様
お久しぶりです。覚えていていただけて嬉しい限りです。ルシオラさんも早く出したいんですけどね〜。こればっかりはしょうがありませんね。その代わりそろそろ繰り上げて出すキャラを数人考え中です。がんばりますよ〜!!
アイク様
超加速は現時点では使えません。しかし使える可能性はあります。今後の修行しだいですね〜。
スカートメックリンガー様
サOポリス・・・懐かしいです!!コミック持ってます。仲魔フラグは考えましたが今回は保留です。まぁフラグは立つのは時間の問題ですけどね。
百目守様
魔装術と神装術は自分的には似て非なるものと考えています。自分的には根本的に違うものと考えていますので今後説明する機会もあると思いますのでお楽しみに。しかしするどいご意見ですね〜。
灰原水無月様
タイトルは結構調べてみてこのようにしておりますが・・・自分でも本当にあってるのかわかりません!!なのでなんとも言えないのが本音です。申し訳ないです。
への様
その辺は次で書かせていただきます。メド様はまだご退場いただきませんでした。ここでやると周りの被害がすごそうなので。エンゲージは微妙なんですよね。黒魔術使いのエミさんにくくられているところから考えると魔に属するのか?なんてことも考えました。