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15禁注意

「光は体の中で 2(GS)」

一夜 (2007-06-13 15:40/2007-06-17 08:21)
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「に、妊娠ですってぇ!」

 斉天大聖の言葉を聞き、令子は顔を真っ赤にし忠夫の胸倉をつかみ持ち上げる。横島の足は地面から離れ、バタバタと宙を走っている

「あんた避妊は完璧だって言ったわよね! 三回ともちゃんとゴムつけてやったわよね! 途中で外れたとか中で漏れたとかなかったんでしょ! 何、それとも実はつけずに生でやりましたとかか! あんただましたの、 私が初めてだと思ってぇ!!」
「してない……そんなことしてない く、苦しいぃ……し、しまってる 」
「まさか!……あんた、はめたわね! ゴムに穴あけてたんでしょう!」

 令子の言葉に女性陣3人は顔面真っ赤である。まさかこんな場面で赤裸々に、令子の初体験が語れるとは思っておらず混乱している。「三回もしたんだ」 「はじめてだったんですか」 「そっか、ゴムに穴あければいいのね」など、決して口には出せない言葉が彼女たちの頭をめぐっていたが、だんだんと顔が青白くなっていく横島を見て、冷静さを取り戻したキヌが令子を止めに入る。

「美神さん! やめてくださいよ! 横島さん身重なんですよ!」
「んなことわかってるのよ……  え?」

 後ろから令子を羽交い締めにしようと悪戦苦闘しているキヌの声で令子の腕の力が抜ける。力の抜けた腕は、忠夫の体重を支えることは出来ず、ドスンっと言う音とともに忠夫は地面に落とされた。令子の怒号が止み、静けさを取り戻した室内で、げほげほという横島の咳の音が響く。

「横島が妊娠しとるんじゃ。お主じゃない」

 (あぁ、そうだった……確かにこのサルは忠夫に向って『お主、妊娠しておるわ』って言ったわよね。うん、私もあぁ、忠夫が妊娠したんだぁって思って……避妊したって嘘だったのねって、それで怒って……あれ? 妊娠? 男って妊娠したっけ?)

「そんなことあるかぁ! このサル、出鱈目言ってんじゃないわよ!」
「出鱈目なんぞ言っとらんぞ。」

 横島を地面に落してからの数秒で自分の思考を整理した令子は、自分の怒りを向ける対象が忠夫ではなく、斉天大聖に向けるべきだったことに気がつき、今度は斉天大聖の胸倉を掴み上げた。このような罰あたりの令子に神罰を与えるべき小竜姫とヒャクメはそのあまりの暴挙と剣幕に、抗議の声一つあげる事が出来なかった。

「男が妊娠するかぁ!」
「しかし、こいつの腹の中で一つの魂が生まれて育っておるんじゃ。その状態を妊娠と言わずに何と言うのじゃ?」
「男の腹で人間が育つかぁ!」
「誰が人間と言った?」
「え?」

 斉天大聖の一言で場が凍りつく。

「……人間じゃない?」

 さっきまで地面に倒れていた忠夫がよろよろと立ちあがりながら斉天大聖に尋ねた。一歩一歩斉天大聖に近づいていく忠夫の表情は、困惑から徐々に期待へと変わっていく。

「そうじゃ」
「まさか……魔族?」
「……うむ」
「……………ルシオラか?」
「そうじゃな」
「ルシオラが俺の腹の中にいるのか」

 斉天大聖は黙って頷く。それを見た忠夫は両手で自分の腹を包み込むように触る。その表情、仕草、雰囲気は母親のそれと全く同じ、むしろそれ以上の歓喜に包まれていた。今この瞬間の忠夫の頭にはお腹の中の子供の事しかないことがわかる。わかるが故に、彼を取り巻く4人の女性の表情は複雑であった。誰もが彼に「おめでとう」と言いたい気持ちがある。しかし誰も彼にその祝福の言葉を言えないでいる…… 特に彼女は…… 


「いつだ、いつ生まれるんだ! ……いやそれよりどうやって生まれるんだ!」

 忠夫は喜びいっぱいでの表情で質問をぶつける。それこそ天にも昇るのではないかという勢いで迫る彼に斉天大聖は目を合わせることができず、背中を向けてしまう。

「……………」
「なぁ、教えてくれよ。 ってかこっち向いてくれよ!」
「……無理じゃ」
「なんでだよ、いいじゃんかよぉ!」
「その子は生まれん」

 無表情で斉天大聖はそういった。感情も熱も無くその言葉は発せられ、全員の心を貫通していった。

「は?」
「残念じゃが、死産しかないんじゃ」
「な、何だよそれ。そんな悪質な冗談通じるかよ。」
「冗談でこんなことは言わん」

 全員の心に空いた穴を残酷な言葉が埋めていく。穴をあけたのと同じように、感情も熱も無いただ言葉通りの意味しか乗っていない言葉が埋める。冷たく動かない心を凍らせるそれがまるで血流まで止めてしまったかのように、行動も、思考も停止する。
 それは忠夫も同じであった。さっきまでの歓喜は氷となり砕け散った。体から力が抜け、その場にへたり込みそうになるが、無意識のうちに体に力を入れそれをとどめる。足に力を入れ踏ん張り、体幹に力をいれ、バランスをとる。両手は大切な物を守るため腹に……

 (腹に大切なものがあるんだ……ここに……大切なものが)

 青白く血の気の引いた忠夫の顔に赤みが差してくる。歯をくいしばり、目じりがつりあがる。 

「なんで、死産しかねぇんだよ!」

 霊力の乗った、まさに言霊が彼の口から飛び出す。彼の内面がすべてわかる言葉だった。しかしそれを真正面から受け止める斉天大聖は先ほどと同じように無機質な言葉で彼に返す。

「ひとつは、この子が育つには魔力が足りん……ちゃんと生まれるためにそれ相応の魔力がいる。……それは下界じゃ集まらん」

 忠夫は絶句するしかなかった。表情は怒りのままだが、言葉が発せられない。 何を言えばいいのかわからなかった。

「……魔力が集まればいいのですか?」

 青白い表情の小竜姫が問う。意外なとこからの言葉にすべての目がそちらに集まる。

「少しずつ継続的に送れる魔力が集まればのう」
「でしたら、ワルキューレやジーク……べスパ、パビリオに頼めば大丈夫なのではないでしょうか?」
「ふむ……そうじゃった。こやつらには魔族の知り合いが多くおったんじゃったのぉ」

 二人のやり取りを聞いていた忠夫の顔に期待の表情が浮かぶ

「しかし、今度はこやつが死ぬ」

 何度目の静寂だろう。空気ひとつ動かない。

「体の中に魔族一体分の魔力が存在することになる。その魔力がどれほどの量か小竜姫、お主ならわかろう。……はたして、人が耐えられる量かのう?」
「……いえ」
「子が生まれる前に母体が壊れる。そうじゃの」
「じゃぁ、この中の子をほかの、それこそ魔族の誰かの体内に移すのね!」
「残念じゃがそれも無理じゃ」
「どうしてなのね!」
「ヒャクメ、お主も霊視をしたんじゃったのう」
「はい」
「子はどこにおると思う?」
「どこって、私に見えたのは丹田に霊力が集まって安定してる状態だけだったのね……子供なんて……え」
「そうじゃ、丹田。つまりこいつのチャクラのすぐそばにおる」
「じゃぁ……」
「わかりやすく言えば、人間で言う臍の緒がつながった状態でおる。そんな子をどうやってほかに移す?」
「……無理なのね、、、緒が切れる時点で……」
「そういうことじゃ」

 忠夫を救おうと、希望の光を射すために交わした問答が闇をより深くする。

「あの……でも、横島さん、一度魔族を体から生み出したことありますよ……月で、メドーサが体の中で生まれ変わって出てきたって」

 キヌのこの言葉でも斉天大聖の表情は変わらなかった。

「あれはただ傷ついた自分の魔力の再生の場としてこいつの胃を借りただけじゃ。親と子として一つの体内に存在したわけじゃないからの。今回とは違うんじゃよ」
「でも……でも!」

「何だよ……なんだよそれ」

 忠夫の声が部屋に響く。口は笑っていたが、眼はつりあがったままだった。

「……………」
「こいつは……せっかく魂が出来たってのに……死ぬしかねぇのかよ……」
「……………」
「なぁ、頼むよ! せっかく、せっかくルシオラがここで生きてるんだ! なんとかしてくれよ」
「……………」
「何でもする、どんなことでもする! だから……なぁ生かしてくれよ! 頼むよ!またあいつを死なせたくないんだよ! 今度こそ生きて欲しいんだよ!」
「……………」
「何か言ってくれよ! ほんとに何でもする! 命がけでも、何でも…… 死んでも生みたいんだよ!」

 斉天大聖にすがりながら発せられる彼の悲痛な叫びに誰も応える事が出来なかった。

「頼む……頼む、頼む、頼む、頼む、頼む……」

 一瞬、斉天大聖の表情に感情が出る。しかしそれは一瞬だった。口を開くときには感情はまた隠されていた。

「……そんなに、ルシオラの魂が大事か?」
「あぁ! あたりまえじゃないか!」
「美神令子よりもか?」
「え?」

 ふっと、令子の顔を見る。……口は真一文字に結ばれ真正面に忠夫を見ている。


  ただ涙をながしながら……悲しみのあまりに表情を崩せないまま泣いていた。


「……よく考えろ……お主にとって何が大事で……何を失いたくないのか……今、誰と生きているのかを」

 床に突っ伏す忠夫の肩を抱き発せられた斉天大聖のこの言葉には、弟子を思いやる温もりが入っていた。


   〜続く〜


 
 あとがきと言う名の反省の場。むしろ懺悔の場

 ……どうなんだろう?これは、、、15禁? ダーク? うーん自分の考えてるこの作品全体は決してそういう話のつもりはないんですが、今回だけ取り上げると、、、判断に困ったのですが15禁のダークなしにしました。


 この先の展開はあまり言えないのですが……作者はhappy endしか望みません。これだけ伝えておきます。
(まぁ人に言わせれば作者のhappyの定義は広すぎるらしいですが……ね)

 そして感想を下さった皆様。本当にありがとうございます!! うれしいです! 励みになります! 


 ○Tシロー様

 えぇ、そうなります……なりますが、一筋縄ではいかないほど前途多難っぽいです。 はい、完結できるようがんばります! ありがとうございます。


 ○たぬきち様

 とりあえず、消化管の中に子供がいるわけじゃないんでどちらの穴からも無理みたいです。……どうなるんでしょうか。


 ○wata様

 女性になっても今回は霊力の問題で無理……としてください>< うーん苦しい!


 ○アイギス様

 ぎゃー>< 初めて同士って設定なのでそんな過激なことはしてません!! いつかはやっちゃいそうですけどね(オイ)
 横島君が妊娠した詳しい経緯は、次の回で書ければなぁと思っております。 


 ○ZEROS様

 今作はパビリオ出てきますけど、暗躍はしませんよぉ。まぁ活躍があるかも知れないし、ないかも知れません(予定は未定)

 ……(あれ? 原作に妙神山に電話があるって設定なかったっけ? それはどなたかのSSでの設定か? 原作にはなかったけ? なさそう。うん勘違いだ……)
 つ、通信鬼が一匹事務所にいるんですYO! アシュタロス大戦の時に使ったあれです! ひとつは横島、ひとつはヒャクメ。それが今は事務所と妙神山においてあるんです。ね? 辻褄合った感じするでしょ?(墓穴)


 ○名無しのGS様

 えぇ、そのお絹ちゃんの心あたりも次回でかければなぁと思っております。
 ……次回、次回って先送りするお役所みたいな返答で申し訳ありません……

 あぁ、ありがとうございます>< 仲間内でゴジ(誤字)キングとあだ名される輩なんで……以後気をつけマース>< 


 ○闇の皇子様

 王道ははずすのが庶民の歩く道でして……はずし過ぎて真っ暗闇ですが……


 ○アイク様

 あ、ありがとうございます。。。が、がんばります。
 ご指摘の通り、地の文が少なすぎて雰囲気が伝わり憎い感が一話にはありますね……この2話ではかなり増やしたつもりですがいかがでしょうか?
 皆さんが読みやすいよう、精進を重ねます。


 ○にく様

 そ、そんな水があるのですか!!  し、知らなかった。。。 作者は、西遊記といえば孫悟空が唐沢さんでして(あぁ年がばれる><)つい最近のも見てないし物語りも読んでないのですよ。。。。 無知でしたぁ><

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