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「リスタート 第十七話 (GS)」

(´ω`) (2007-06-02 02:45)
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RRRRRR……


「はい唐巣教会ですが」

朝の礼拝を終わらせた唐巣に一本の電話が掛かって来た


「おはようございます〜〜冥菜ですけど〜〜」

――ハラリ

「ああ、これは六道夫人、ご無沙汰しておりました。
お嬢さんのGS試験合格おめでとうございます」

「ありがとう〜〜結局〜〜令子ちゃんに〜〜決勝で〜〜
負けちゃったんだけどね〜〜」

――ハラリ


平成××年度前期GS資格試験は上位3名が女性、しかも
全員18歳という史上初の快挙?を日本GS協会史に記した
試験であった。内役はというと

首席 美神令子

次席 六道冥子

3位 小笠原エミ


といった具合である


「ごめんなさいね〜〜愚痴みたいな事〜〜言ってしまって〜〜
恥ずかしいわ〜〜」

――ハラリ

「いえいえそのような……所で今日はどういったご用件で?」

神父は努めて平静な口調で話していたが彼の敬愛するカミ
幾許か父の御許へ召されて逝くのを感じ取った……


「ちょっと〜〜冥子の〜〜研修の事で〜〜お願いがあるの〜〜」


――リスタート――
  第十七話


芦心霊相談事務所の駐車場に、何処かで見たことがある様な黒塗りの
リムジンが停まっているのに気付いた横島は、とても嫌な予感がした。
その隣にあるワーゲンゴルフは、まあ見慣れているのでスルー。


「すっげぇ嫌な予感……」


しかし逃げる場所などないので多少警戒しながらも玄関をくぐると
案の定、見慣れない靴と草履が見たことの有る靴に混じって整列していた。


「……ただいま〜」


応接間を覗いてみるとそこには


「お帰りなさいヨコシマ」

いつものルシオラ

「やあ横島君。お邪魔させてもらっているよ」

「こんにちは横島さん。お邪魔しています」

神父&ピートの丁寧な挨拶

「あらお帰り横島クン」

我が家の様に寛いだ様子の美神さん

「お邪魔してるワケ」

紹介された時にピートととの間で一悶着あったエミさん


まあここまではいい。
歓迎すべき人達である。


――しかし


「お久しぶりね〜〜横島君〜〜元気そうで何よりだわ〜〜」

「こんにちわ〜〜」


――招かざる客がそこにいた


着替えて応接間に戻り、ルシオラの隣に腰掛けた横島は
一同を軽く見やる。
普段なら隣同士座ったピートとエミから仄かに漂うストロベリー臭に
即座に○ァブ○ーズの刑を処する所であるが、残念ながら今はそんな
事をしている暇は無かった。


「じゃあ全員揃った所で改めて紹介しようか。ルシオラ君、横島君。
此方は六道冥菜さんの娘の冥子君だ。
六道学園高等部の3年で令子君とは同級生だよ。
以前何度か話をしたことがあると思うけど、会うのは初めての筈だね?」

神父の紹介に「知り合いです」とは言えず、
ルシオラと横島は初対面の礼節を以って冥子に挨拶をする。

「初めまして六道冥子さん。ルシオラ=蛍=芦です。芦心霊相談事務所の
所長を務めています。そしてこっちが弟子の…」

「横島忠夫です。初めまして冥子さん」


完璧な礼節を保って挨拶をする横島にルシオラと六道母娘を除いた
一同が内心軽く驚愕した。


((((冥子(さん)(君)に飛び掛らない!?))))


(流石にヨコシマも警戒してるわね……当然といえば当然か…)


「初めまして〜〜六道冥子と申します〜〜よろしくね〜〜
ルシオラさん〜〜横島君〜〜」


一同の心中など解る筈もない冥子がそう挨拶する。

「冥子君は六道家に代々伝わる式神十二神将の使い手でね、
その実力は先のGS試験の序列を見れば解る通りだよ」


((実力!?))


実際に対戦した令子とエミが唐巣の説明に内心突っ込みを入れた。
準決勝で対戦したエミも、普段の学園生活で冥子と接する
機会の多い令子も異議あり!と全力で叫びたかった。


――理由は推して知るべし……


「で、その六道家の方がウチみたいな三流除霊事務所にどのような
御用向きでしょうか?生憎と平日に閑古鳥が鳴いているような所
ですので御力になれるような事は少ないと思うのですが?」

「まあ〜〜そんなに謙遜しなくてもいいじゃない〜〜事務所を
開いてからの〜〜活躍は〜〜おばさんの所にも〜〜耳に入って
来てるのよ〜〜」


事務所を開いて暫くして六道家からルシオラに非公式な
詫び状が届けられた。ルシオラとしても別に望んで六道家と
喧嘩したい訳ではない。要は妙な気を起こさないでくれれば
それで良いのである。ルシオラはその詫び状を受け取り、
水に流す意思を伝えた。
あくまで水に流しただけで距離を置くという事に
変わりは無いのであるが……


ルシオラの事務所は仕事が無くて閑古鳥が鳴いているのではない。
仕事を余り取らないだけなのである。
最近の芦心霊相談事務所が週に請ける仕事は一桁を超える事はないが、
依頼達成率は95%超を誇る。此処一年間の依頼は難易度Aを超える
依頼ばかりであり、無論料金も難易度に正比例する。

その他の時間をルシオラは全て横島の修行の為に費やした。

唐巣が請け負う、余り裕福でない故に協会に依頼することの出来ない
人達からの依頼の何件かを、神父に掛け合い修行の名目で横島と令子
にやらせたり(当然無償だが、ルシオラが自腹で令子にバイト代を支払い、
神父に幾許か渡るようにしている)、令子に頼み込んで美神家の所蔵する
霊能関係の貴重な書籍を横島に読ませて貰う等、数え上げたら切がない
程であった。無論夜の修行も。

「事務所を立ち上げて僅か2年でA級になるのは稀有な事なのだから、
そんなに自分を卑下してはいけないよ。S級だってもう目の前
じゃないか。それに君の持たざる人達への救済はS級GSになる
事よりも遥かに尊い事なんだ。もっと誇っていいんだよ?」

「ありがとうございます神父。でも私はお金や名誉の為だけにGSを
している訳ではありませんので」


――そう、全ては私とヨコシマの為……


(お金や名誉の為「だけ」じゃない、か……)

美神は内心でルシオラの言葉の行間を推し量る。

彼女が自腹を切ってまで貧しい人からの除霊を自分と横島クンに
やらせるのは、私たちに実戦経験を積ませる為と見て間違いは
ないだろう。後は精々神父の栄養の為?
横島クンに家の本を読ませてあげて欲しいと頼んで来たのも
横島クンに知識と智恵を与える為に他ならない。となると……

(全ては横島クンの為って訳ね……)

師匠が弟子に向ける愛情、無論それも有る。でもそれだけじゃない。
むしろそれは建前ではないか?
彼女の本心がどこにあるのか?
令子はルシオラと横島に接する内にルシオラの本心が何処にあるのか
薄々ながら感じ取っていた。ルシオラの本心――

――男女間のそれ

そして計らずもそれは自らの横島忠夫という少年に対する心情をも
自分に問いかける結果となった


――横島忠夫

バカでお調子者。極度の女好き

それらは横島の表面をなぞった者が下す彼に対する評価であり、
概ね正解である。


――しかし

それに相反するかのような一途さと真摯さ。
物事に対する柔軟な姿勢と思考力
心許した者に向ける優しさと心遣い

内面を覗いて見れば表面からは想像できないような
人間的魅力に溢れている


ピートがエミを教会に連れてきたときもそうだ

血の涙を流しながら藁人形に釘を打っていると思ったら、
教会の庭で談笑している2人を普段からは想像できない、
まるでこれから芽を出し伸びていく花を見る様な
優しい眼差しで見守っていた。

修行も口では色々言いながらも、何処か遥か高みにある
目標を見据えて臨んでいる。それが何かは解らないが……


そして何よりもセクハラ紛いの行為の裏に隠された
私に対する心遣い――

ママがいない事の寂しさは今でも忘れる事は出来ない。
でも心細さや孤独さは感じない。
私の周りには神父がいてピートがいて学校に行けば
(厄介事に巻き込まれるが)冥子がいる。
最近は度々衝突するがエミもいる。

それに気付かせてくれたのは間違いなく横島忠夫
という少年であった。

私にセクハラする度に私とルシオラさんに折檻され、
それをみて神父は遠くから苦笑いしながら見守り、
エミの呆れた視線の隣でピートが取り成す。

心細さや孤独なんて感じる暇がない。

それら全てが横島忠夫という少年が基本となっている。

彼が居なければ私は、寂しさを誤魔化す為に自分の殻に
閉じ篭って強がっていただろう。

――周りに気付く事も無く


そんな横島忠夫を自分は、
美神令子はどう思っているのか?

手の掛かる弟の様な存在?

修行を共にした仲間?

どちらも正解である

でも本心には遠い

じゃあ本心は?

美神令子は


――美神令子は横島忠夫に惹かれている?


(……認めたくないけどそれが本心、か……)

バカでスケベな弟みたいな奴

そのくせ真摯で一途な修行仲間

(いいじゃない好きになったんだから)


彼にはもうルシオラという恋人がいる

(私は美神令子よ?欲しいものは必ず手に入れてみせる!)


強敵である

それがどうした?

美神の女は戦う前から敵に背を向けたりはしない

たとえどんな悪霊だろうと魔族だろうと


――恋敵だろうと


(ルシオラさん、悪いけど横恋慕させてもらうわよ?)


ちらりとルシオラを見た令子だが
ルシオラもまた令子を見ていた。


――やっと土俵に上がってきたわね?最強の恋敵さん

瞳がそう語っている
令子が横島を見る視線が今日は何時もと違う
たったそれだけでルシオラは令子の心境の変化を嗅ぎ取った

魔族の勘?

女の勘である

そして女の勘が導き出した回答に誤りは無かった

(小竜姫さんと美神さんか……危険度Sランクばかりじゃない)


ルシオラは苦笑した

夜毎遊びに来る小竜姫に加えて遂に最強の敵が土俵に上がってきた

(修羅場ってやつかしら?)


負ける積もりはさらさら無い

でもこの状況をどこかで楽しんでいる自分がルシオラは可笑しかった


美神にしろ小竜姫にしろたとえどんなステータスを持つ男達が
望んでも易々とは手に入らない正に高嶺の花である。

そんな女性達が一介の中学生を巡って自分と争おうと言うのだから
考えてみればこれ程可笑しな話は早々無い。

隣にいる横島を見てルシオラは噴出しそうになる


――自分の見る目に誤りは無かった


それは美神と小竜姫が確信させ、後は自分がそれを証明して見せれば良い
何しろ自分は彼に今一番近い女なのだから

(いいわ、美神さん。正々堂々と戦いましょ♪)

ルシオラは美神にそっと瞳だけで笑いかける

(美神の女の戦いに正々堂々なんて言葉はなくてよ?ルシオラさん♪)

そう敵は強大だ。ならばありとあらゆる手を尽くして最後に勝つのが
美神の女である。でもそれはルールに則った上での話であることも
令子は解っていた。
だから自分はこの戦いに反則は使わない。反則ギリギリの手は
使うかもしれないけど。


まあ取り合えず


――宣戦布告である


((負けない(わ)(わよ)!!!))


「あの〜〜ルシオラさん〜〜?おばさんの話〜〜
聞いて欲しいんだけど〜〜?」


……ああ


「あらすいません……それでどういったお話でしょうか?」


現実に引き戻されたルシオラが六道夫人に顔を向ける


尤もまた以前の様な話ならば……


「そんな〜〜怖い顔しないで〜〜今日は〜〜この娘達〜〜
3人の為の〜〜お話なんだから〜〜」

ルシオラの雰囲気を感じ取った冥菜はそう前置きをする。


「3人とは?」

「令子君、エミ君、冥子君の研修の事なんだがね……」

冥菜の後をとって唐巣が補足した。


「私がエミ君の紹介状を認めたのは知っているね?」

「はい、ピートさんが連れてきたときに確か」


エミがGS試験を受けるための保証人になったのは唐巣であった

エミは当初自分の経歴を考えて無理だろうと考えていたが
ピートの勧めで会うだけは会ってみようという事にした。

ピートから紹介された時にエミは唐巣に、自分の経歴を洗いざらい
偽ることなく話した。


自分の生い立ち

殺し屋だった事

悪魔と契約していた事


唐巣はエミの話が終わるまで一言も発する事は無かった

全てを話し終えたエミに唐巣はまず神に祈りを捧げた

「主よ、彼の者の罪を許し、祝福と道を指す標を与え給え」

そう祈りを捧げた後に紹介状を認め、エミに一言だけ言った


「ピート君と仲良くしてくれたまえ」


そう微笑んで紹介状を渡し、エミの経歴に関して何かを言う事は無かった。


エミとピートは静かに頭を下げ、
ルシオラ、横島、令子は何も聞かずにエミを歓迎した

――横島は藁人形を携えていたが


「紹介状を認めた以上、私はエミ君の研修を監督する責任があってね、
令子君と2人なら何とかなるんだが……」

「冥子の〜〜研修も〜〜和宏君に〜〜お願いしたいの〜〜」

「……と、いう話なんだが流石に3人は難しくてねぇ…」

神父の額が心なしか防衛ラインを下げているように見えるのは
気のせいだろうか?

「失礼ですが冥子ちゃんの研修なら何故夫人がやらないのですか?」

ルシオラが尤もな疑問をぶつける

「新人GSの研修は〜〜現役GSの〜〜監督の下に〜〜
行う事っていう〜〜規則があるのよ〜〜でも〜〜
おばさんもう引退しちゃったから〜〜監督できないの〜〜」

「マジっすか?」

「マジよ」

横島の台詞に令子が応える
どうやら本当らしい。

「……つまり私に3人の内の誰かの面倒を見て欲しい、
という事でしょうか?」

「不躾な頼みというのは重々承知している。だが研修を安心して
任せられる他のGSも、もう他の新人の研修を抱えていてね…
もう君しか安心して任せられそうな人材に心当たりが無いんだよ…」

「私も〜〜ルシオラさんなら〜〜冥子をお任せするのに〜〜
異存はないわ〜〜お願いできないかしら〜〜?」

「なるほど……」


他ならぬ神父の頼みであるが、問題は誰を監督するかである

冥子

…………却下
ルシオラは一瞬だけ神父のカミを心配したが、
背に腹は換えられなかった。横島の中の記憶で
彼女の事はよく知っていた

エミ

彼女は別に問題ないが彼女もどうせならピート
の近くで研修したいだろう。人の恋路を邪魔する
趣味はない。冥子と一緒というのはまあ試練だと
思ってもらうしかない。却下


となると……

(まあヨコシマとずっと一緒に修行してきたし、
今更拒むのも器が小さいって物よね……ヨコシマも
喜ぶだろうし、どうせ遅いか速いかの問題だったし
……ま、いっか)

ルシオラの脳内ドラフト会議は30秒で終了した


「解りました。私も弟子がいますので1人だけなら
研修の監督を努めさせて頂きます。他ならぬ神父の
頼みですし」

「おお……引き受けてくれるかね!ありがとうルシオラ君
感謝するよ!それで誰の研修を引き受けてくれるのかね?」

「冥子なんか〜〜どうかしら〜〜?」

抜け目無く自分の娘を進めてくる夫人を無視する

「ヨコシマの修行の兼ね合いもありますので美神さんの研修を
引き受けさせて頂きます。……よろしいかしら?美神さん
ヨコシマもいいでしょ?」

「ルシオラが決めたなら俺に異議はないよ」

「……いいの?」

まさかルシオラの方から誘われると思っていなかった

「ヨコシマとずっと修行してきたし3人の中で
一番除霊スタイルも近いから妥当でしょ?」

余裕たっぷりの表情で令子を見る

(正々堂々と勝負するって言ったでしょ?アドバンテージは
私にあるって事を思い知りなさい♪)


――ピシッ


「……それもそうね。じゃあお願いするわ
ヨロシクねルシオラさん


――横島クンもね♪」


横島に笑顔でウインクしたその顔は横島の
頬を紅くするのに充分な威力を持っていた

(取り合えずお返ししておくわねルシオラさん
……美神の女を甘く見ないことね♪)


「……暫くは賑やかになりそうね」


笑顔で握手する2人だったが握り合った手に
血管が浮いていたのを男性陣は見なかった事にした


続く


ユンケルからゼナにLVアップ
オラワクワクしてきたぞ


ごめんなさいもう睡魔が限界です

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