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「それ時、最初の歯車、―陰陽師の戦い―(GS)」

氷砂糖 (2007-05-30 23:52/2007-06-02 13:51)
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 高嶋家の鬼門の方向には,一本の桃の木が植えてある.鬼門の方向に、植えられた桃の木には,、鬼門の方向から侵入する邪気をはらうとされているからだ。

 今そのありがたい桃の木には、一匹の白い鴉が止まり桃の実をぱくついていた。


それ時、最初の歯車
―陰陽師の戦い―
提供 氷砂糖


「は?草壁家当主と陰陽頭の前で御前試合」

 とりあえず見つけた白夜を逆さに吊るしていると、話があるといって、メイを連れてやって来た西郷の話は,突然の物だった。

「誰が、何で?」

「お前が、メイの身柄を要求してだ」

 高島は千夜の注いだ茶を一口飲むと、西郷にジト目で質問を続ける。

「だいたい,今メイは,お前の預かりになっているはずだろ?」

「正確には私とお前の連名でだ。メイの件で返り討ちにあったという直属の事を覚えているか?」

 庭では吊るされた白夜が、十二神将に群がれている。それを見てメイと千夜は楽しそうに笑っているが、白夜はかなりの勢いで嫌がっている。

「ああ、そういえば直属の名前も草壁だったな。まさか直属になった身内がやられたんで、当主が汚名返上の為乗り出してきたのか?」

「いや、草壁の直属は現当主の弟でな、周りからの評価も弟の方が良く、実力で行けば弟の方が当主になってもおかしくは無かったのだが、弟自信が兄と争うのを嫌ってな、直属の話が来た時これ幸いと当主の話を蹴ってそっちのほうに行ってしまったんだ」

 西郷はそこで話を一旦切ると、庭の方へと目を向けた。庭のほうでは、群がられていた白夜が縄から抜け出しキレタのか、今度は十二神将達を追い掛け回している。やっぱりメイと千夜は、楽しそうにそれを眺めていた。

「それで?」

「ああ、それ以来弟に当主の座を譲られた当主、などと呼ばれてしまうことになってな。本人はそれなりに実力があるのだが、弟が優秀すぎた。草壁当主は自尊心や権力欲が強くてな」

「弟が失敗した、仕事をかたした陰陽師を倒して、自分の方が上だと証明したいと。完全にお家騒動のとばっちりじゃねえか、てことはメイの身柄に関しては、俺を引き出すための方便か?」

「ああ、その通りだ」

 高嶋は現実逃避したいのか、庭の方を見ると、メイと千夜が十二神将と白夜を叱っていた。どうやら暴れすぎたようだ。

「元気になったな」

「ああ、父親の事を知った時からは、かなり立ち直った」


「ここは?」

「目が覚めたようだな」

 メイの様子を見ていた西郷が、メイが気を取り戻したことに気付いた。

「高島、目を覚ましたぞ」

「おう」

 部屋を遮っていた屏風を越えて、高島と千夜が姿を現した。

「気分はどうだ?」

「あ、はい、だ、大丈夫です」

 メイはあたりを見回すと、高島の顔をまっすぐ見て、メイにとって最も重要な事を聞く。

「あの、おっとは、おっとはどこですか?」

 三人の表情に、苦いのもが走る。

「おっと私を捨てるって私に伝えた時泣いてたんです、それで、それで、それでもしばらくしたら私をむかえに来てくれたんです、でもその時お化けに襲われてて、だけど友達が助けてくれたんです、だからおっとに言いたいんですむかえに、むかえに来てくれてありがとおって、ありがとおって………」

 メイは、三人の様子に気付いたのだろうか、もうすでに、彼女の言うおっとが、もうすでにいないことに。

「おっとは死んじゃったんですね」

「ああ」

 皆を代表して高島が答える。

「高島!?」

「隠していてもしょうがない、それに本人が気付いてるんだ」

「はい、気にしないでください」

 メイは気丈にも相手を安心させるためか、笑みを見せる。

「大丈夫です、何も心配しないでください、大丈夫です」

 必死で笑おうとするメイを、千夜がそっと強く抱きしめた。

「……お姉さん、だい、大丈夫なんです、私は、私は大丈夫なんです」

 メイが大丈夫と口にするたびに千夜はメイを抱く力を強めていく。

 強く、強く、強く、強く、強く。

「だから、…………こんなに、こんなに、強く、だ、抱き締めなくても」

「強柄なくてもいいのよ、辛いことがあったなら、泣いてしまいなさい、それは普通の事なんだから」

「ふ、う、あ、あ、ああああああああああああああああああ!!!!!!!!
おっと!おっと!なんで!おっと!う、ぐっう、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 メイは千夜の胸の中で、声が枯れ涙が尽き果てるまで泣き叫び、千夜はメイが泣き止むまでメイの頭をなで続けた。


 星よ少女の悲痛の泣き声を聞け。


 月よ少女の命賭ける慟哭を聞け。


 愛しき者を亡くしたココロ優しき少女の悲しみは、癒える事は無いだろう。


 されど少女が自らの父を愛した事を、誇りに思う日が来るだろう。


 その時が来ることを信じて、少女を見守ろう。その先に少女の幸せがあると信じて。


「千夜殿は、いや女人というものは、男では手の届かない種類の強さを持っていうる、そうは思わないか高島」

「ついでに女しか持ってない怖さというものもあるがな」

 高島は笑いながら、庭先でもうすでに式神達と戯れている、千夜とメイを見て笑う、平和である。この平和を続けることができるなら、何でもやろう。最後に身内の誰もかもが笑っていられる結末を望んで。

「ところで、何でお前では駄目なんだ?」

「私の伯父の娘が、草壁家に嫁いでいてな」

「そうか」

「ああ」

 世の中は、どんな所で何が繋がっているかわからない物だ。


 御前試合当日、陰陽寮の本殿に天幕が張られ、多くの人が試合の開始を今か今かと待っており、その端では今回の主役と、

「高島様、本当にすみません私なんかためにこんな大事を……」

 メイは小さな体をさらに小さくし、精一杯今回のことを謝っている。高島は、目の前で頭を下げているメイを、後ろ頭を見て頬をかいている。

「あ〜気にするな、別にお前のためだけにやるわけじゃない。今回の御前試合で勝てば、陰陽寮からそれなりの仕事を回してもらえるし、陰陽師としての評価も上がるしな」

 そうのたまう仕事も評価も全然気にしない自堕落陰陽師照れ屋風。それを聞いて千夜は笑って、西郷は渋い顔をしている。

「そうなんですか?」

 そして、疑うことを知らないいろんな意味で将来有望な少女。

「ああ、それよりも俺は謝られるより、ありがとうといって貰える方が、俺はうれしいが?」

 メイは、下げていた頭を上げ、自身なさそうに言い直した。

「えっと、ありがとう御座います?」

「それでいい、いや、それがいいか」

 高島は、そう言い笑って、メイの頭をなでる。

「あ」

 メイは最初何をされたか、理解できなかったが、しばらくすると、恥ずかしそうに受け入れた。

「あやつは、子供の扱いが上手いな」

「時々近所の幼子と一緒になって、泥んこになって帰ってくることもあります」

「そうなのですか?」

「はい」

 ちなみにその子供たちは高島と同じ孤児で、高島家ではそんな子供達相手に、炊き出しをしたりしている。

 たとえ次の時に来ない子供がいたとしても、高島はそれを止めたりはしなかった。

「高島どの時間です」

「分かった」

 高島は呼びに来た童に応じ、会場へと足を運んでいく。

「高島しっかりな」

「兄さま、お気を付けて」

「高島様!」

「ん?」

「あの、がんばってください!」

「ああ」

 高島は笑って答えると、颯爽と試合へと向かっていった。


「当主、時間です」

「うむ」

 見ているがいい、弟の身でありながら兄を超えんとするおろかな愚弟よ、そして感謝するがいい、お前がわが一族に塗った恥を、私がぬぐってやるのだからな。

 草壁家当主の表情は醜く歪み、これから自分の栄光の道へと、思いをはせる。

 しかしこの試合の後手にした小娘は、どうすべすべきか。ふむまあいい、あの式神には使い道がある。それに必要なくなれば、慰み物にするのも悪くは無い。所詮下賎な血の物だ。

 ここからだ、ここから私の栄光が始まるのだ。私の実力を認めようとせぬ愚か者どもよ、頭を垂れ私に許しを乞うがいい。

 そうして、草壁家当主は、試合に向かっていった。


 格子の後ろに、陰陽頭が居るのだろう。何人かの直属と思われる陰陽師が、待機している。

「こりゃいい見世物だな」

 高嶋がめんどくさげにあたりを見回すと、やる気十分の草壁家当主と、見物人である何人もの貴族が見える。

 草壁家の御用達なのだろうか、すべての貴族は、草壁家当主に注目し、高嶋には目もくれようとしない。

「まあおやじや美形どもはいいとし、てきれーなねーちゃんまで、あっちを見とるのは気に食わんな」

 完全にどうでもいい事を、真剣に考える高島。呆れてはならない、彼にとっては、とても大切なことなのだ。

「これより草壁家当主と、高島家当主の御前試合を開始する!双方用意はよいか!」

「うむ」

「へーい」

 審判役が声を張り上げ開始を告げ。二人が応え、試合が始まった。

「始め!」

「先手必勝!」

 高島は開始の合図と同時に、袂から引き抜いた札を投げつけた。

ドン!

 炸裂音が木霊する、高島は、油断することなく煙りを見つめる。

 不意に高島が動いた、地面に土行符を叩きつけ後ろに跳んだ。

ドゴン!ゴガァン!

 直後土壁が現れ、すぐさま砕かれた。

 高島は着地すると、すぐさま右へと飛ぶ。

 ズゴン!
  ズゴン!
   ズゴン!

 高島のいた場所に、氷柱が三柱突き刺さる。

 転がった反動で立ち上がる、煙が晴れたとき、そこには緑色の球体に包まれた草壁がいた。

「高島!草壁家は結界術の家系だ、生半可な術では通じんぞ!」

「先に言え!」

「常識だ!」

 試合中にもかかわらず、罵り合う二人、西郷には審判からの注意が入る。

「はははははははは!草壁はその名のとおり、壁を得意とする。貴様のような下賎の者の術なぞ、届きはせん!かぁぁぁぁぁつ!!」

 草壁の気合と共に、雷撃が高島を襲う。高島は、金行符を投げつけると、金行符は燃え尽き雷撃を散らした。

「少しはやるようだな!だがこれでどうだ!!!!!」

 草壁は結界ごと移動しながら、次々に雷撃を、氷柱を叩きつけるが、高島は符を使うことなく回避していく。

「ええい、大人しくくらうがいい!!」

 草壁は、苛立ち高島に攻撃を加えるが、高島は、時には符でさらには符すら使わず避ける。

「チ」

 高島は小さく毒ずく、余裕そうに見えて、そうではない。移動しながらできる攻撃では、結界は破れない。大きな攻撃をしようとしても、草壁の攻撃で、ためを作る余裕が無い。

「めんどい、俺が何でこんな事せにゃならんのだ」

 そういいながら高島の脳裏には、千夜やメイ、ついでに西郷の顔が浮ぶ。

「しゃーない、切り札使うか」

 高島は迫る氷柱を身を捻ることで避けると、持ち符の切り札を除いた物を全てばら撒いた。

「ふん、小ざかしいは!全ての札を一斉に炸裂させることで我が結界を破るつもりか!
そんな物は無駄だ!」

 草壁はそう言うと、手を合わせ印を組む。

「草壁式結界術奥義!天岩戸!!ハァ、キェェェェェェェェェェェェェェェェ」

 草壁を覆う結界が何十にもかさなる、移動できる事と結界の中から攻撃できるというメリットを捨て、質と種類の違う結界を何重にも張り、神話にある天岩戸の名を使うことで更に結界の強度を上げる。

「この結界砕けるものなら砕いてみよ!!」

 高島はその草壁を見ている、符が空を舞う中高島の右手に五枚、左手に五枚、計十枚の符が握られている。

「悪りいが面倒なんで切り札使わせてもらうぞ?」

 草壁の表情に亀裂が走る、草壁は対戦相手を調べなかった高嶋とは違い、少しは調べている。

 高嶋は手に持つ十枚の符を同時の投じた。

 高島が作り出した切り札“五行回帰”

 五行を用い、五枚の符で相克である五芒星を、残りの五枚で相生である円を、相克相生ともに重なり合い陣をなす。

 そして陣が発動した時、陣の内では相克と相生が繰り返される。

 相克で消えたものは相生で生まれ、

 相生で生まれたものは相克で消える。

 このサイクルの中、陣の内にあるものは五行陰陽が世界を現すと言う性質により、全てのものは相克相生に巻き込まれ五行に帰る。

 妖人神魔一切合切差別無く。

 まずいぞ、まさか高島めそんな物まで持ち出してこようとは、だがこの私が貴様の切り札の弱点を知らぬとでも思うたか!

 草壁はすぐさま天岩戸を解くと、すぐさま後ろに下がった。

 確かに五行回帰には弱点と言える点はある。それは術の性質上、術式を起動させる呪が長いことと、効果範囲が陣上にしか及ばないことだ。

 ゆえに術が発動する前に陣から出れば、値万金の好機を得るはずだった。

「なに!」

 高島は術を発動させること無くいまだ中を舞う符を一枚掴み、

「ばーか」

 悪戯が成功した時の悪餓鬼の笑みを浮かべると、

「疾!」

 符に霊力を込め草壁に向かい投じた。

 ドゴォォォォォン!!!

 これまでで最大の爆音と土煙が舞った。

「人相手になんて使うわけ無いだろ勿体無い」

「それまで!勝者高島!!」

 そして審判が勝敗を下した。


「高島様すごかったです!!」

「兄さんご無事で何よりです」

「おう」

 二人の出迎えに高島は先ほどとは違った笑みを浮かべ、二人の頭を乱暴に撫でる。

「あれを出した時は慌てたぞ」

 二人に遅れ西郷が現れた。

「使うわけ無いだろあんなの」

 五行回帰に使用する符は作るのに特別な製法を要する。

 紙をすく水は富士の霊水そして紙をすく途中に御神木の枝を混ぜなければならない、
さらに符に書く式は自らの血、しかも相克に使う符は新月の夜のもの、相生に使うものは満月の夜のものでなければならない。

 金も手間も存分に掛かる一品なのだ。

「懐かしかったか?」

「馬鹿を言うな」

 高島は西郷に冗談めかして言うが、西郷は顔をしかめる。

 あの術式こそ高島と西郷が初めて組んだ時に使用した物だったからだ。

「高島今回のことどう思う?」

「さあ、誰かが裏で手を引いてるのは感じるがな、じゃ無けりゃ陰陽頭がこんなこと許すとは思わんし」

「そうか」

 高島は空を見上げる、空には白い雲と一羽の鳥が飛んでいる。

「まあ、今回の件はこれで一件落着でいいんじゃないか?」

 ピィィィィィィィィィヒュルルルルルルルルルルルルルルルルルル

 高い空に鳥の鳴き声が響き渡った。


「ところで兄さまそろそろ手を離してください」

「髪の毛がグチャグチャです」

「…………すまん」

 なんともしまらない奴である。


 どうも氷砂糖です、
今回は陰陽師の戦いをお送りしました、内容はまあサブタイのとおりです。
いやあ歯車のほうは戦闘が書けて楽しいです、早く本編のほうでも戦闘シーン書きたいです。

実は氷砂糖本編、歯車共に千夜の人気が出てきて驚いてます。

内容に関してはこれまでで次は私心です。
シビルーーーーーーーーーーーー!!
ギギルーーーーーーーーーーーー!!
そしていつもいつも花束を持ってきてるけど全然渡せてないくてバサラが子供と結婚しなきゃなんないんだと言った時ものすごく自分の格好を気にしていて対に最後まで名前の出てこなかった女の子ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
好きだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!
女の子は最後に花束渡せたんですけどねw
炎爆のメンバーも好きなんですが、
他には私服のマックスや髭の無いレイが好きだったりW
いやマクロス7最後まで見たんでテンションが高くて。
さあ次はダイナマイトだ。


レス返し

 アミーゴ様
今回高島の陰陽師としての戦いはどうでしたか?
高島が千夜のように……無理に決まってるじゃないですかw
実は白夜本編と歯車で強さが違ったりします、生きてる年数分。
毎度レスありがとう御座います。


 ラーメン大王様
六道設定は書いてるうちに自然に追加されたものだったりします。
ほんとにちゃっかりゲットしちゃってるんですよね、
本編歯車双方応援有り難う御座います。


 SS様
うう、歯車のほうではフラグ回収難しいです、
今後に期待して待っていてください。


 ハニ丸様
ですね、もっとも手にしても千夜に常時張り付かしていそうな気がw
本編のほうもご期待を。


 内海一弘様
とりあえず今回は高島メインの話でした、
そのうちに西郷メインの話もやってみたいです。
両方にレス感謝を。

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