「状況はわかったのねー」
美智恵から事務所内で起こった出来事を聞いたヒャクメが難しい顔で言った。
たまたま妙神山に遊びに来ていたヒャクメが時空震を感知し、小竜姫と任務で来ていたワルキューレと一緒に飛んできたのだ。
美智恵はひのめを別室に寝かせ、騒ぎ立てる全員を宥めつかせた時に小竜姫達が来たので、美智恵が理解できる範囲で詳細に説明したところだった。
「原因はおそらく負荷(ストレス)ですね」
「「「「「負荷(ストレス)?」」」」」
ヒャクメの言葉に、全員が眉をしかめた。
「もしかして!!」
いきなり大声を出したシロに全員の視線が集まり、
「ひのめ殿が年増姑怪獣ママゴンのあまりの恐怖に潜在能力が目覚め……!」
「シロちゃん……」
美智恵はシロの言葉を遮って言った。
「少し黙りなさい」
「くぅーーーーん!!」
年増姑怪獣ママゴン美智恵の絶対零度の声と視線に、シロは尻尾を股に挟んで令子の背後に隠れて恐怖で震えた。
あの師匠にしてこの弟子ありである。
「それでヒャクメ様、その負荷(ストレス)というのは?」
「え、えーと、ひのめちゃんの強力な念力発火能力(パイロキネシス)の負荷がかかりすぎたのね」
ヒャクメはかなり腰の引けた状態で言った。
「それはおかしいわ、発火能力はちゃんと念力封じで封じてるもの」
「ええ、でも念力封じで発火能力は散らされても霊的中枢(チャクラ)から霊波は生じているのね」
「……なるほど、そういうことね」
ヒャクメの言葉に、美智恵はすぐに原因に思い至った。
「生じた霊力が発散されずに蓄積しすぎたのが原因ですか?」
「そうなのね、赤ちゃんはすぐ泣くことで異常を知らせたり、ストレスを発散させたりするんですけど、ひのめちゃんの場合霊波も一緒に放出するのね。
でも、発火能力の回路が封じられて、霊波が生じても発散できずに蓄積されていったのね。で…」
「溜まりに溜まった霊波が逃げ道を求めてもう一つの回路、時間移動能力で霊波を発散させたってことか……」
令子がヒャクメの言葉を引き継いで言った。
「あまり強い封印を施すと、霊的中枢(チャクラ)の成長を阻害すると思ってまだ時間移動能力を封じてなかったけど、まさかこんな幼児の年で時間移動能力を起こすなんておもわなかったのねー」
「さすが私の娘ね、将来が楽しみだわ!!」
苦笑して言うヒャクメに、美智恵は二人目の娘の潜在能力に期待を強くした。
そんな二人をタマモは半眼で見ながらボソリと言った。
「ただ単に顔に皺寄せて迫ってきた年増姑怪獣が怖くて、逃げるために馬鹿力を出しただけじゃないの?」
「たしかに、あれは怖かったでござるよ」
「タマモちゃん、シロちゃん、何か言ったかしら…?」
「あ、あの、それはともかくヒャクメ様、それで横島さんは一体どこに飛ばされたんですか?」
不穏な雰囲気になってきたのを察したおキヌが、今一番大事なことを聞いた。
「時空震の痕跡からして、22年前の過去に飛ばされたみたいなのね」
すでに痕跡の調査を行っていたのであっさり返答が来た。
「わかったわ、文珠もいくつか手元にあるし、さっさと横島君を連れ戻してきましょう。
ヒャクメ、時間移動能力の封印を今だけ解いて頂戴」
「待て、それはまだ許可することはできない」
デスクの引き出しから文珠を取り出す令子に、ワルキューレが待ったをかけた。
「前に言いましたが、美智恵さんが過去に戻るのが最後の時間移動となっているんです。
今回の事故で、おそらく神魔上層部ともめることにかもしれません。
神魔上層部の許可が下りるまで少し待ってください」
ワルキューレの言葉を引き継ぐように小竜姫が言った。
「ぱっと行ってぱっと帰って来るからだけだから別にいいでしょ!?」
「そう言う訳にはいかないんです……」
小竜姫は立場と私情に挟まれて、辛そうな顔で言った。
「それで、もしもその上層部ってところが許可を下ろさなかったらどうしたら良いわけ?」
「それは……」
タマモの言葉に小竜姫は答えることができなかった。
しかし、それだけで答えは十分だった。
「つまり、横島を見捨てるってことね」
「それは本当でござるか!?」
「そんなのってないですよ小竜姫様!?」
「ふざけるんじゃないわよ、うちの丁稚の処遇を勝手に決めないで!」
「みんな落ち着きなさい」
口々に小竜姫達を責める令子達を、美智恵は落ち着いた声で嗜めた。
「まだ許可が下りないと決まった訳じゃないでしょう?
……それに、たぶん私達が助けに行く必要はないと思うわ」
「……なんでママにそんなことがわかるのよ?」
憮然とした顔で聞く娘に、美智恵は少し考えて、
「そうね……、私の感かしら」
「ママの霊感?」
「霊感って言うよりかは―――」
美智恵は何故か穏やかに微笑み、
「女の勘、かしらね?」
その場にいる全員が、キョトンとした顔で美智恵を見た。
『GS美神’77 極楽大作戦!!』
〜昭和のGS達【その2】〜
―――落ちる。
何もない闇の中をただ落ちている。
横島はこの落下感を過去に二回体験したことがあった。
「うどわああああぁぁあぁぁああ!!!」
だが強い浮遊感に怯え、ただ情けない悲鳴を上げることしかできず、何も行動することができずにいた。
そして、いきなりできた穴のような暗闇に突っ込み―――
「うひゃあ!!!???」
スポーンと光のある空間に放り出され、
ンゴギャ!!!
人類が発してはヤバい音ともに、頭から地面に着地した。
シーンと、その空間に地獄のような静寂が落ちた。
が―――
「あー、死ぬかと思った」
少し時間が経つと、何事もなかったように横島はむくりと起き上がった。
―――無傷なのが激しく謎ではあったが―――
「いてて、一体何が起こったんだ?」
横島は体についたほこりを叩きながら立ち上がり、周りを見回した。
「……ここはどこじゃい」
横島が放り出されたのは、ビルの隙間と隙間にできた路地裏のようだった。
「あー…まあ…うん、とりあえず事務所にもどるか」
先ほどの現象について考えようとしたが、情報が足りなさすぎるし自分ではわからないだろうと思い、事務所にもどってから令子に聞くことにした。
路地裏から出ると―――
「あれ?」
レトロな街に出た。
やたら角々したロゴの看板のついた店が並び、車道を走る車はTVだけで見たことがある古い車種のみが走り、道を歩く人々のファッションは何世代も前のものでださく見えた。
「えーと、あれ?」
横島はあまりに自分の知らない街の様相に思考が追いつかず、
―――レトロ仕様が売りの街か、ここは。
などと馬鹿な思考がよぎった。
「よし、まずは落ち着け俺。こういう時は一つづつ確認していくんだ。
えーとまずは、ここは誰? 俺はどこ?」
良い感じにテンパっていた。
「つーかマジでここどこだ? 事務所どこいった? いや、俺の方がどっかいったのか」
なにか現状がわかるものはないかときょろきょろと周りを見回した時、時計屋が目に留まりあることに気づいた。
「あれ?」
時計屋の時計は11時を指していた。今外は明るいので午後ということはないだろう。
横島達がお茶を飲んでいた時間は午後3時頃だった。自分の腕時計を見ると、確かに3時を指し示していた。
「まさか……」
横島はふと思いつき、近くのコンビニ……はなかったからスーパーに入ってあるものを探して店内を走り回り、目的の物―――新聞を見つけて日付を見て愕然とした。
「昭和52年ーーーーーー!!??」
ここまできて、ようやく自分が時間移動したことに気づいたのだった。
だが、横島も伊達に経験は積んでおらず、時間移動は過去二回経験しているので慌てず騒がず対策を――――
「こらあかんもうあかん俺一人だけ飛ばされちまったらもうどうしようもねーじゃねーか助けてみ゛がみ゛ざーーーん゛!!!!」
講じることもせず、慌てて騒ぎまくった。
それから店員の通報で駆けつけてきた警察が来るまで騒ぎまくり、さらに警察との鬼ごっこを演じるはめになったのはまったくの余談であった。
「やっぱ、ひのめちゃんが時間移動能力を使ったんだろうなー」
執拗に追いかけてきた警察をなんとか撒いた横島は、見慣れぬ街を歩きながら原因を考えていた。
「隊長めちゃめちゃ怖かったから、ひのめちゃん怖がって馬鹿力でも出したんかな?」
割と的を射ていた。
「この時代に飛ばされたのも、隊長の昔話してたからかな?
……まあそれはともかく、これからどないしょうか」
とりあえず、今後どうするかを考えることにした。
「たぶん美神さん達が助けに来てくれるとは思うけど、いつになるかわからんしなー」
横島は令子とヒャクメから時間移動について簡単にだが説明を受けたことを思い出した。
時間移動を行う際、自分の行きたい時間から誤差が生じてしまうことを聞いていていた。
その誤差は少ないもので数分、多ければ数年単位になることもあるという。
平安京に飛ばされた時、令子とメフィストだけが未来に戻ってしまい、道真に捕らわれた横島達を助けるために再び平安京に戻った時に、時間と場所がズレていたのが良い例だろう。
そのため助けが来るまでに野垂れ死にしてしまわないように、食と住だけはなんとか確保しなければならない。
だが、この時代に飛ばされたのは横島一人で、財布の中身はお世辞にも多いとは言えず、また無条件で頼れる人物はこの時代には―――
「いるじゃん、あの人が」
一人だけいた。
「で、そうやって時間移動してきたと?」
「はい、そうっス」
そう横島が返事を返したのは、前に写真で見た若き日の唐巣和宏だった。
横島はお人好しと言える位他人を信じる唐巣ならば、しばらくの間厄介になれるだろうと思い電話帳で唐巣の事務所を調べ、幸いにも近所にあったので訪れたのだった。
今唐巣の事務所兼住居の応接用のソファーに向かい合って座り、中央に置かれた机の上には証拠として横島の持っていたGS免許を置き、現状を包み隠さず説明したところだった。
「なるほど、つまり君は不慮の事故で未来の私の弟子の妹さんの超能力に巻き込まれて――平成……だったか?――、の時代からこの昭和の時代に飛ばされてきたと?」
「はい、そうっス」
「ふーん……」
唐巣は気のない返事を返しながら、横島のGS免許を手にとって眺めた。
「それで、君は私にどうしてほしいんだ?」
「迎えが来るまでしばらくの間ご厄介になりたいんすが」
「……」
唐巣は横島の返答を聞き、横島のGS免許を放り投げるように机の上に置き、紫煙を吐き出してから咥えていた煙草を苛らただしげに灰皿にねじ込んだ。
その様子を見て、横島は何故かひどく嫌な予感がした。
「……ふんっ、普段の私だったら、未来からの来訪者なんて話題を振られたら喜々として聞いたんだろうが……」
「あの、神父……?」
「生憎な、小僧。 今はお前の作り話を楽しんで聞いてる余裕は俺にはないんだよ……!」
そう吐き捨てるように言って睨み付けてくる唐巣に横島はびびった。
こんな事態は想定外だった。
「ちょ、待ってください神父、本当の話ですって……!」
「どこで俺のSF好きを聞いたか知らんが、わざわざこんな小道具まで用意して人をからかうどころかたかりに来やがって……!
もちろんそれ相応の覚悟できてんだろうなあ!?」
横島は唐巣に胸倉を掴まれながらもしどろもどろに説得しようとするが、唐巣はさらにヒートアップしていった。
「こっちは色々立て込んでるって言うのに、人の神経逆なでしやがってこんガキが!!」
「ちょ…、しん……、苦しいっす……!!」
凄い力で締め上げてくる唐巣に横島はかなり焦った。
横島は知らないことだったが――いや、話で聞いていたことはあるのだが――、唐巣が教会から破門されたのは、つい昨日のことだった。
同じ宗派の信者の子供が異教の悪魔にとり憑かれ、唐巣が除霊を行おうとしたのだが自分の宗派の術では除霊することができなかった。
その悪魔を除霊する術はあるにはあったのだが、異教の除霊術のため戒律で厳しく禁じられていた。
だが被害者の子供の衰弱が激しく一刻の猶予もなかったため、教会の許可なく独断でその異教の除霊術を行い、なんとか除霊に成功して子供を救うことができた。
しかし、唐巣は許可なく異教の術を行使したということで査問にかけられることになった。
そんな中、唐巣はあまり厳しく罰せられないだろうと気楽に考えていた。子供を助けるためにはあの方法しかなかったため、恩赦が出ると信じていたのだ。
そしてあまり長くない査問の後、薄っぺらい紙が一枚だけ送られてきた。
紙には、「主の御名の下、厳粛なる査問の結果唐巣和宏を神の家から永久に追放とする。なおこの結果に関する如何なる異議質問等は一切受け付けない」という短い文章が書かれていただけだった。
それを見た唐巣は思わず笑ってしまった。
つまりなにか、あんたらはつまらん戒律を守るために、あの幼い子供の命と魂を悪魔に明け渡せと?
あんたらはあの子供と同じ目にあっても喜んで殉教できるとでも言うのか?
ふざけるのも大概にしろ!
理性では昔から頭の固い教会のことだから、この判断が降りるのは予想できたし――わすかだが――理解できた。
だが感情が全然追いつかなかった。どうしても暗い感情が浮かんでしまう。信じていただけに余計だった。現実を受け入れるには唐巣はまだ若すぎた。
唐巣は自分の信仰心が揺らぐのを感じ、「あれは教会の人間の判断で神の意思ではない」と必死に自分を言い聞かせて落ち着かせようとした。
しかしいろんなことが脳裏に浮かび、そのたびに暴れだしたい衝動にかられていた。昨夜は一睡もできず、食事も喉を通らなかった。
そんな情緒不安定の状態の唐巣の元に、最悪とも言っていいタイミングで横島は訪れてしまったのだ。
唐巣が横島の話を聞いたのも、聖職者とそしてGSとして助けを求めて訪れたものを放っておけないという義務感と矜持からだった。
で、自分が人生で最高潮に苦悩している真っ最中だというのに話を聞いてみると、荒唐無稽なことを当たり前のように話してたかってくる大馬鹿野郎だったのだから、唐巣の怒りは如何程のものか測りしれなかった。
「今すぐこの場で罰を与えて悔い改めさせてやっても良いんだが、生憎今の俺はそのままお前を主の御許に送りかねん……!」
「ひ……!?」
唐巣は横島を片手で締め上げた状態で顔が触れるぐらい引き寄せ、血走った眼で睨み付けながらドスの聞いた声で言った。
どうやら、腹いせに私刑(リンチ)しないだけの理性はなんとか残っているようだった。
「だから……!」
そのまま片手で持ち上げたまま入り口まで引っ張っていき、
「とっとと失せろォオオーーーーーーー!!!!!」
外に勢い良く蹴り出し、横島の手荷物を叩きつけた。
「もう二度と来るんじゃねえぞ、馬鹿ガキ!!」
唐巣は蹲って咳き込む横島にそう言うと、ドアを叩きつける様にして閉めた。
「ゲホっ、ちょっと待ってください神父! 神父に見捨てられたら、迎えが来るまでの間俺はどこで過ごせばいいんすかーーー!!??」
横島は咳き込みながらもドアをドンドン叩きながら必死に呼びかけた。
そしてドアがわずかに開き、目だけを覗かせた唐巣が神託を述べるように厳かな声で言った。
「そんなに迎えがほしいのなら、今すぐ私がよこして差し上げようか?」
目がマジだった。
「すんませんしたぁぁあぁあああーーーーーーーー!!!!!!」
横島は逃げ出した。
なんとか逃げ切った。
唐巣から逃げた横島は、どこをどう走ってきたのか広い川原のある土手道に来ていた。
「あかん、まさか神父に追い出されるとは思わんかった……」
横島は道の隅に座り、いつの間にか沈み始めた太陽を眺めながら呆然と呟いた。
確かに初対面で非常識な話をしたのは自覚していたが、あの人の良い神父に手酷く追い返されるとは思わなかった。
絶対に大丈夫とタカをくくっていただけにダメージがひどかった。
「さすがに文珠で神父をどうこうするのもなあ……」
横島は文珠で人の心を操るのに抵抗感がかなりあった。
以前南部グループの事件の際、グーラーに『恋』の文珠をためした時、自分の予想以上の効果を発揮した。
それから暗示にかかったグーラーは、操られるままに躊躇なくガルーダの攻撃から身を呈してかばってきた。
あれにはさすがに横島も引いた。
そしてグーラーの「魔物にも心はある」という言葉は、須狩だけでなく横島自身にも深く突き刺さった。
以来横島は本当に必要がないとき以外は人――もちろん人外も含めて――の心を、特に身近な人間の心を操るようなことはしたくなかった。
「次はどないしよ、金もあんまし持ってないし……って……」
ふと嫌な予感がして、慌てて財布の中を見た。
そしてその予感は大当たりだった。
「マジか、持ってる金全部発行年数が平成以降じゃねーか……!」
唐巣のところまで交通機関を使わなかったので気づかなかったが、今横島の財布の中に入っている硬貨とお札はすべて平成以降に発行されたものだった。
硬貨には平成と銘打たれおり、お札はこの当時は千円札は夏目漱石ではなく伊藤博文だったし、五千円札と一万円札は新渡戸稲造と福沢諭吉ではなく聖徳太子だった。
まあ新渡戸稲造と福沢諭吉については今は財布の中にいないので関係はないのだが―――
とにかく、今横島が持っている金銭を使おうとしても、警察沙汰にしかならいのは確実だった。
これで横島は天下無敵の無一文になった。
「やべえ、これじゃすぐに飢え死にしてまう、こうなりゃ親父とお袋のところに行ってみるか?」
横島が子供の頃に、二人が若い頃は上京して働いていたということを聞いていた。
二人が結婚して、子供(忠夫)を出産してから大阪に仕事の都合で引越ししたとも聞いていたので、二人とも東京のどこかで生活しているはずだった。
だが、先ほどの唐巣のようなこともあるので、自分が二人のところに行ってみた時の反応を脳内でシミュレートしてみた。
『俺、未来から来た二人の子供なんすよ! だからしばらく面倒みてください!』
『百合子さはぁーーん、やっぱり俺たちは結ばれる運命なんで(ドバキャ)ぐぼぁ!!』
『ふざけるんやないで、こんあほんだら! こんジャリいきなり来て大人をナメくさりおって、その根性叩き直したる!』
『ちょっと待ってや母さん、ほんまやって信じたってやーーー!!』
『おのれにおかん呼ばわりされる言われはないで!! 往生せいやあーーーー!!!』
『ぎゃーーーーーーーー!!!???』
『なんで俺までーーーー!!!???』
「あかん、ダメじゃん!
……いや、仮に、本当に仮に信じてもらったとしたら……」
『俺、未来から来た二人の子供なんすよ! だからしばらく面倒みてください!』
『百合子さはぁーーん、やっぱり俺たちは結ばれる運命なんですね……って、そんなに俯いて黙りこくってどうしたんですか?』
『あの母さん、ショックなのはわかるけど、元気出したってや……?』
『…………T・P〇ん……』
『『はい?』』
『タイム〇トロールってさあ、歴史で不幸な人を助けるための機関なんやってね……』
『『へっ?』』
『これってさあ、歴史的に見てすっっっっごい悲劇やよね!!(ジャキン!)』
『『ピ、ピストルーー!?』』
『タイム〇トロールがこの歴史を知ったらきっとこうするに決まっとるっ!!
おのれら殺して良い歴史に変えたるわーーーー!!』
『タイム〇トロールはそんなことしないっすーーーーーーーーーー!!』
『てか、この当時はT・P〇んはまだ連載されていないーーーーー!!』
『じゃかあしい、命(たま)ぁ奪(と)ったるわーーーーーーー!!!(ガキュンガキュン!!)』
『『わ゛ーーーーーーーー!!??』』
「全然あかん、助けてもらうどころか逆にとどめを刺される!!
つーか、この分じゃ他の知ってる人のとこ行っても変わらねえんじゃねーか!?
あーもー誰でもいいからなんとかしてくれーーーーーー!!」
いい加減自分の時代とのギャップと、考えることに疲れた横島は夕日に向かって吼えた。
そして、いきなりクールダウンして夕日をぼーっと見て、
「……人は違っても、夕日だけは変わらねえんだな」
自分の時代と変わらないものを見て、そう呟いた。
自分が知っていて知らない人達がいるという、この中途半端な時代に飛ばされたことに横島は辟易した。
どうせなら、自分の知らない時代に飛ばされた方がまだマシだったように思えてきた。
それに―――
この世界にはお前との思い出がないんだよな
自分の思い人であった蛍の少女との絆がないことを思った。
そして、思考がさらにネガティブな方向に向いていった。
その時―――
クスクスクス……
少女の笑い声にそちらを向き、
「僕横島、ずっと前から愛してましたー!!!!!」
目の前にいる薄手のシャツに包まれた形の良い乳に向かって、愛の告白と同時にルパンダイブをした。
「なんでやねん♪(ドグシャア!)」
「つっこみ!?」
つっこみにしてはやたら凶悪な攻撃力を持ったパンチで迎撃された。
「あれ、オチはないの?」
思いっきり鼻面に良いつっこみを受けて倒れている横島に、良い乳をした少女が話しかけた。
「オチって、俺は芸人とちゃうで!?」
「あれ、そうなの? さっきから見てたけど、最近流行りの漫才ってやつの練習じゃなかったの?
だから、こっちもつっこみってので返したんだけど」
「んなわけあるかーーーーー……い……!?」
鼻面を抑えて顔を上げた横島は、相手の顔を見て驚愕した。
「残念ね、結構面白かったのに。
えっと、横島君だっけ? 私は美神美智恵、暇だったら一緒にお茶でもしない?」
そうのほほんと笑いながら逆ナンパしてきた少女は、横島がつい数時間前に写真で見た自分と同年代の美神美智恵その人だった。
続く
どうも、なんとか更新できました北条ヤスナリです。
やっぱりSSは難しいですね、文章で表現するのもさることながら、自分が思い描いていた通りにするのもまた難しいです(´・ω・`)
他のSS書きの方達はどうなんでしょうか?
早く文章を書くことに慣れたいです。
で、時代背景についてなんですが、ざっと調べただけなんでひょっとすると、ていうかたぶん間違えていると思うので、その辺は笑ってスルーして頂くと幸いです( ̄▽ ̄;ゞ
へたれですみません(´・ω・`)
あと、多くの方が言うようにオチが見えているのは覚悟の上なんで、オチまでの過程を楽しんで頂けたら幸いです。
では、初めてのレス返しを。
〇菅根さん
ありがとうございます、焦がさないように注意しながらなんとか完成させたいと思います。
〇ノラ猫さん
ありがとうございます、期待に応えられるように頑張りたいと思います。
〇トトロさん
どうも初めまして。
>それにしても美智枝さん、ひのめの情報教育を横島に任して良いんでしょうか? 女性型横島が誕生する予感が。
ひのめちゃんはきっと重度のブラコンになってしまうと思うわけですよ。で、ひのめちゃんの教育は、横島がした方が案外一番常識人になるような気g(ry
〇趙孤某さん
どうも初めまして、なんとか落ちまで持っていけるように頑張りたいと思います。
〇シル=Dさん
ありがとうございます。
>しかし、美智恵&令子が雷のエネルギーを受けて起こす時間移動を
>自身の霊力の暴走だけで発生させるとは、ひのめちゃん恐るべし、、、
真に恐ろしいのは、そこまで追い込んだ年増姑怪獣ママゴンでs(ry
〇米田鷹雄さん
ありがとうございます。
>しっかりとしたプロットもあるようですし、これからが楽しみです。
一応プロットはできているのですが、書いているうちに何故か変わっていたりします( ̄▽ ̄;ゞ
破綻しないように気をつけたいと思います(´・ω・`)
〇七位さん
ありがとうございます
>それをいい意味で裏切ってもらえる事を期待してます。
なんとか良いように裏切りたいと思います。(悪い意味でなら、いくらでも裏切r(ry)