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▽レス始

「リスタート 第十三話 (GS)」

(´ω`) (2007-05-19 00:20/2007-05-19 00:56)
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作者注 前回に引き続き今回も一切ギャグはありませんので
    その点ご了承頂けます様お願い申し上げます


来るっ!!


その身を無数の蝙蝠に代えてブラドーは私たちに
襲い掛かってきた


「バンパイアミストっ!!」

「主よ、精霊よ、敬虔なる僕にその偉大なる加護を与えん…アーメン!」

ピートさんも身体を霧に代えて襲い掛かる蝙蝠を避わし
神父も聖祝を唱えて結界を展開して蝙蝠をはじき返す

どうやらあっちは大丈夫みたいね…

――なら私もっ!!

両手に魔力を収束してこちらに来た蝙蝠の前で
叩き合わせる

パァンッ!

圧縮され弾けた魔力は無秩序に放射線を描き
蝙蝠たちを貫いた

一発の威力は低いけど数を相手にするには丁度良いわね


床に落ちた蝙蝠たちが黒い染みに変わり
玉座の前で一つに集まると伯爵に戻る


「――愉悦なり」


全然ダメージを与えてないわね…

「今度は此方からいくぞっ!
ダンピールフラッシュ!!」

「殺害の王子よ、キリストに道を譲れっ!」

「避けないと痺れるわよっ!」

ピートさんが伯爵に霊波弾を放つのに合わせて
神父が神聖な霊波を放ち、
私も一寸本気目の霊波砲をお見舞いする


ドドドムッ!!

まともに当たった!!
これならっ!


「――無意味」


そこには無傷の伯爵がいた


「「なっ!!」」

ウソでしょっ!?
今の波状攻撃は下級魔族程度なら瀕死物だったのにっ!


「――非力なれども余に久方振りの痛痒を貢し事を
褒めて遣わす………よって


――褒美を与える」


――チクッ


首筋に僅かな痛みが奔った

「っ!?」

「なっ!?……しまっ…!」

「クッ!」


痛みの正体――蝙蝠が牙を立てて私たちの首筋に
喰らいついていた――いけないっ!


「ピートさん!神父!」


「「グウゥゥゥゥ……!」」


2人の瞳が徐々に赤みを帯びて喉からうなり声を上げる
――まさかっ!


「――褒美として我が眷属として仕える栄誉を与える

――誇れ」


――っ!


ゾクリ


この感覚……伯爵の魔力が私の霊基に侵食し始めたっ!
まずいっ!このままじゃ……私…まで…


「――抗うか娘…詮無き事を…」


――こうなったら……


「神父、ピートさん、ごめんっ!」

パシュッ!……ドサリ…

頭部に麻酔を打ち込み2人は声を上げる間もなく
その場に倒れ伏した……ごめんなさい…少しだけ眠っていてね


「――錯乱したか……あわドクン…ほう」


思考を切り替えなさいルシオラ。これは除霊じゃない


――魔族同士の殺し合いよ


「――それが汝の本性か……愉快、実に愉快なり


――暫しの戯れを許そう」


「……戯れ?」


何故こんなに気持良いのだろう

自分の中に眠る本能が歓喜の声を上げている

貴方はこの歓喜に耐えられなかったのですか?

他者にこの衝動をぶつける事に耐え切れなくなったから
貴方は理に抗ったのですか?

――アシュ様


でも私は大丈夫です

私にはこれ以上の歓喜を教えてくれた人がいます

その人がいる限り私はこの歓喜に流される事も
耐え切れなくなる事もありません


「戯れ……そう、戯れね……いいでしょう


――弄んであげる」


それを今から証明して見せます


――リスタート――
  第十三話


ドゴオオォォン!


「がはぁっ!」

幻影の私に仕掛けてきた伯爵に、隣に待機していた私は
十分に手加減した霊波砲をプレゼントする
これで何発目かしら?

「さっきまでの余裕は何処に行ったのかしら?
――夜の支配者さん?」

反対側の壁まで吹き飛ばされたブラドーが
紅い瞳に憎悪を滾らせて私を睨む

「――我を嬲るか……!」


でももう霧になって逃げる力も残っていないでしょう?


「あら?気に障ったかしら……でも私を睨むのはお門違いよ?
……これでも伯爵に合わせて差し上げているのだから

嘘は言っていない。私の中の歓喜を上げるソレが声をあげている

――コロセコロセコロセコロシツクセ

――クラエクラエクラエクライツクセ


その本能の叫びをもう一人の私が抑えつけている
本能を凌駕する強い声で


――ヨコシマにまでその叫びを向けるの?

――愛しい人をお前は喰らい尽くしたいの?


もしここで本能の侭に振舞う私を見ても、ヨコシマは私を愛してくれる

――優しく抱きしめてくれるでしょう
そういう人だから


でも私は嫌だ

そんな姿をヨコシマに見せたくない


目の前で私を睨む男には、そういう風に思える人はいないのだろうか…


もういないのでしょうね

自分の息子を噛む位なのだから

私は軽く被りを振って思考を散らす
煩い位に喚き立てていた叫び声はいつの間にか声を潜めていた

「いいわ、これ以上罪に塗れる前に私が終わらせてあげる
ピートさんに、息子に親を殺させるわけにはいかないわ」


――魔族らしくない考え

……貴方が私にくれたのよね?


「――罪、か……笑止なり」

ブラドーが呟く


――?

その顔は……何?


「――罪など既に犯しつくした


――そしてその罰は我に科せられる事は許されなかった…」


何故


――血の涙を流すの?


「――我が罪はピエトロの母を…

人間の娘を愛した事こそが我の罪……!」


なんで…すって…?


「――余があれの母を……

イレーナを愛しさえしなければ…
そして彼女もまた余を愛しさえしなければ…


――イレーナは余の罪をその身で購わずに済んだのだ…!」


――!!


「そ「どういう事だ…?…ブラドー…!」ピートさん!?」

足許は覚束無いながらもピートさんは私の隣に歩み寄ってきた
かなり強めに麻酔を掛けたのに…それにブラドーの呪縛は?

「――ほう…余の呪縛に抗いきったか…不肖の息子よ」


真祖の血を引いてるのは伊達じゃないって事ね…
――いえ、今はそれより…

「母さんを愛した事が貴様の罪だと…?
――ふざけるなっ!!母さんは貴様を…!」

「――ふざけてなどおらぬ……」

胸元から取り出したロケットが乾いた音を立てて開き
ブラドーは目を落とす……


「――美しく、我が心の闇を照らす月の如き娘であった……
この身に宿る宿業を忘れさせる程に優しく…な……」


――何故そんな穏やかな顔でロケットを覗くの!?

「――あれを…イレーナを愛した余は…確かに忘れていた…
彼女もまた、自らの宿業も、在り方も、何もかもを忘れさせて
くれる程に余を愛してくれた……」

「………」

「――汝が生まれ、我は考えた……このまま全てから身を背け
この島で静かに生きる事を許されたのだ…と……


――その考えこそが罪である事も解らずにっ!!」

「っ!!」

血を吐くような形相
――その怒りの矛先は……誰?

「――汝が4つの時、ヨーロッパで死病が猛威を振るった…
イレーナは薬を苦しむ人々に分け与えたいと願い、余もそれを
許した…薬を携え、島を出たイレーナは人々に薬を配り歩き…

――最後は救った筈の人間共の手で火刑に処せられた…!
吸血鬼の僕となって死病を振りまき、あまつさえその身に
悪魔の子を身篭り産み落としたという罪でな……

――その時ですらもあれは…イレーナは半言一句、恨みの言葉を
口にせなんだと聞いた時……


「――余は自らの犯した罪を思い知らされた!!
自らの宿業に目を背け!在り方も!何もかもを忘れ!
島で親子三人静かに暮らす等という夢想に執り付かれた余の罪を!
イレーナに…あの心優しき娘に!罪を購わせてしまったとな!」


哀しい

この人は…ブラドー伯爵は

――その怒りの矛先を自らに向けていたのね


「――イレーナを失った我はその罪を忘れぬ為に…
二度と己の宿業から目を背けぬ為に人間を狩り続けた…
復讐等という甘えは許されなかった…イレーナはそのような
愚行を喜ぶ女では無かった故に…我は我の心の命ずる侭に…
何時の日にかこの無限の寿命に終わりを告げる審判の日まで
人間を狩り続けると誓った!
――二度と愛さぬ為に!愛されぬ為に!」


ゴウッ!!


血を吐くような独白の終わりと共にブラドー伯爵から
凄まじい魔力が放たれる

……でもそれは蝋燭が燃え尽きる前の最後の輝きに似ていた


「ブラドー!!」

「――ピエトロよ……最早語るべき事は何も無い
余は審判の日まで己の宿業に従う……」


私が相手だと言いたかった

でもその時、伯爵はピートさんしか見ていなかった
――伯爵は自分の息子に……?


「……ならば今宵この時が貴様の審判の日だ……!
――ブラドォォォォォォォ!!!!

「――貴様如きがぁぁぁぁぁぁ!!!」


その一瞬はまるでスローモションのように私には見えた

ピートさんの全霊力が込められている拳が吸い込まれるように
ブラドー伯爵の心臓を貫いていく様子を


――伯爵は困ったような、それでいて優しい笑顔で見届けた


――ポタリ……ポタリ……


「――何故、涙を流す…?…息子よ…」

心臓を貫かれ、背中から生えた拳から滴る紅い血が、
ポタリポタリと絨毯に染みを広げる


――それでも伯爵は笑みを崩さない


「……解らないのですか…?
――父さん……!」

顔を俯かせるピートさんの頬を伝う涙が
ポタリポタリと絨毯に染みを広げていた

――その表情は見えない


其れには応えずピートさんの頬を伯爵の震える手が拭った


「――泣くでない…汝は誇り高き真祖の一つ子であるぞ」

「母さんは……貴方を心から愛していた…!幼かった僕の
目から見ても解るくらいに……!」

「――果報よの…」

「母さんを失い……貴方は愛する事を止めたっ!
そして宿業に逃げた!今日この日が来るのを解っていながら!
――何故ですかっ!?」

「――今日この日が来るのを解っていたからこそ、だ……グゥ…!」

貫かれた胸から腕を抜き、口から血を溢れさせた

「父さん!!」

「――良いのだピエトロ……此れで…良いのだ…」


そのままオープンテラスに歩を進める伯爵を
優しい夜風が出迎えた

「――新月…か。我が審判の夜に相応しい…」


「――ピエトロよ……宿業から目を背けてはならぬぞ…
目を背けたその時から……いつかお前に追いすがってくる…
――この父のように、な……」

「っ!」

「――お前はイレーナの息子…そして我が息子である…
父と同じ轍を踏むでないぞ…お前なら…きっと…!」

「…はいっ!」

「――お前の目許はあれに…イレーナに良く似ている…」


――ヨコシマ

貴方から貰った文珠……
この人の為に使っても…いいわよね?

せめて…これ位…最後に…


私は念を込めた文珠をピートさんに手渡した


「ピートさん…これをお父さんに…」

込められた文字は


    "想"


「これは…?」

「お願い…早くお父さんの処に…!」


背中を押してピートさんをお父さんの処へ送り出す


――ポウ……


「――これは夢か…?…


――イレーナ…」

「……母さん…?」


目許がピートさんにそっくりな

月のように物静かに微笑む

美しい女の人が浮かび上がった


「――余を迎えに来てくれたのか…?…イレーナ…
――余は何という果報者か…」

「っ!父さんっ!」

――伯爵の身体が徐々に灰になって

「――もう何も想い遺す事はない…
ピエトロよ…お前はお前の道を往け…

――余とイレーナが汝の往く末を見届けようぞ…」

息子へ優しい微笑みを遺し


――伯爵の身体は夜風が天に運んで逝った


――愛していたぞ


――我が息子よ……


「父さぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!!!」


――ピートさんの慟哭と涙も伯爵と共に天に運ばれて行った


6月18日 AM10:00


――イタリア・ローマ空港


「では先生、ルシオラさん。お気をつけて」

「ああ…ピート君も今は無理をせずにね…」

「はい…気持ちの整理が付いたら僕も先生の所へお邪魔させて頂きます」

ピートさんと神父が一時の別れの握手を交わす

「ルシオラさん…ありがとうございました
貴女にはこの言葉しか思いつかない……」

そう深々と頭を下げられちゃうと何だか恥ずかしくなっちゃうわ

「そんなに気にしないで…神父の弟子同士、でしょ?私達」

「…はいっ!」

そう返事をしてピートさんは笑った

――困ったような、それでいて優しい笑顔で

「じゃあ、元気でね!日本に来たら私の弟子と一緒に歓迎するわ!」

その時は恋人だって紹介しようかしら♪

「はいっ!お弟子さんに会えるのを楽しみにしています!」

「ではルシオラ君、行こうか」

「はい!」


その日のローマは雲一つない青空だった


続く


皆様こんばんわ

(´ω`)でございます

リスタート第十三話をお送りいたします

書き上げてもう今日は一杯一杯です…
ピート氏とブラドー伯爵のお話ですが如何だったでしょうか?
納得できない方もいらっしゃると思いますが
この2人をシリアスに描くというのは(´ω`)では
これが限界です。もう絞っても何も出て来ません

一行書き上げるのに何時もの倍の労力が掛かりました

シリアス物はこれでお腹一杯というのが本音です

キーボード打つ指が震え始めてきてますので
ご意見ご感想を頂いた皆様方には大変申し訳なく
且つ恐縮でございますが今回のレス返しは
レスを頂いた皆様全てにこの場で
厚く御礼申し上げる事で代えさせて頂きます

いつも温かい御指摘ご感想に預かり誠に感謝に絶えません
皆様からのレスを頂ける限りの間は頑張って更新させて頂きますので
今後も御指摘ご感想をどしどしお寄せ下さいます様心よりお願い申し上げます

レスを頂いた皆様本当にありがとうございました

ではまた次回のあとがきでお会いいたしましょう

おやすみなさいませ


……あ、タグ打ち込まないと…

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