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▽レス始

「それ時、最初の歯車、始まり、始まり(GS)」

氷砂糖 (2007-05-16 23:10/2007-05-16 23:13)
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                 それ時、最初の歯車
                     ―始まり、始まり―
                      提供 氷砂糖


 此度の物語の始まりは、時は平安、場所は京、回り始めた歯車の最初の一つが動く前、すべてはこのときより始まった、


「高島、高島はいるか!いや、いるのは分かっている、
おとなしく出てくれば頭を体から切り離す位で勘弁してやろう、
さっさと出てくるがいい!!」

           (すいえんのかんむり)
 束帯を身にまとい、垂纓冠を頭にかぶるという貴族としての正装を身にまとった男が、ドスドスと足音をさせて、怒声を寝殿造りの屋敷の中に響き渡らせる、

「ええい!往生際が悪いぞ、早く観念して姿を現すといい!!」

 男が叫ぶたびに、冠からこぼれた長髪が波打つ、普段は二枚目といえる顔も今は憤怒の様相に染まり見る影も無い。

「そんなに大声をだされて、此度はどうなされたのですか西郷どの?」

 あまりの大声に引かれか、すのこへ十二一重を身にまとった14歳くらいの少女が姿を現した、

「おお、千夜殿、これはみっともない所をお見せした、申し訳ない」

 千夜が姿を現したことで今の態度思い出してか、謝罪をし袂を合わせなおす、

「かまいませぬ、互いに古くからの間柄です、それにこう言っては何ですが西郷殿がその様に怒気をあらわにするのは珍しくもありませんし」
「……ますます申し訳ない」

 小さなやわらそうな顎に手を当て、可笑しそうに笑う年下の少女に普段の様子を思い出してか西郷は頭を下げる、

 陰陽寮、宮廷ともに女性に数々の女性に噂される西郷も、ただ唯一この場所においては等身大の自分に戻されてしまう、まあ強制的であるとしても心地よかったりするのだが。

「それで、この度は兄がどの様な迷惑をおかけになったので?」

「高島のやつめ、こともあろうに藤原に繋がる貴族からの依頼があったのをを無視したのです、まったく私が変わりにやっておいたからいいものを、あのままではどんな事をされるか分かったものではない」

 千夜は話の内容が事のほか大きいことであるのに驚き、綺麗に整えてある眉をしかめ、
高島の居場所を伝えることにする、

「兄は今『場』にこもっております」

 『場』とは、符などを作る場合、呪力、いわゆる霊力をこめるため雑念がこもらない様に結界を張り巡らせた場所のことである。

「分かりました、高島家の『場』は確かこの奥でしたな、では失礼します」

「西郷殿」

 その場を立ち去ろうとした西郷を千夜が呼び止める、

「何でしょうか?」

「兄にお伝えくださいますか?後でお話がありますと

 笑っているのに笑っていない、華がほころぶような笑顔のはずなのに後ろには阿修羅が見える、普段はそそとしておとなしく、可憐と言う言葉がよく似合う彼女であるが、ひとたび逆鱗に触れれば陰陽師二人ははだしで逃げ出すしかなくなったりする。

「う、うむあ奴には私からしっかり伝えておこう」

 そういうと西郷は足早に『場』に向かって去っていった、まるで逃げるように。


 高島家の『場』は屋敷から少し離れた場所に存在する、
入り口である戸を南東つまり辰巳の方角に、格子のついた窓を北西すなわち戌亥の方角に、これは鬼門である丑寅と、鬼門の出口に当たる裏鬼門である未申の方角を閉ざすことで、
『場』を閉ざし清浄に保つための措置である。

シャリ、シャリ、

 その『場』において男が一人墨をすずりに溶いている、
背をまっすぐ伸ばし、綺麗な姿勢を保つその姿はどこか神聖な気を放っている、

 コト、

 男は溶いていた墨を静かに置くと、今度は筆を手にし、自分を落ち着かせるように深い呼吸をする、
 そして筆を墨汁に浸し、余分な墨汁を落とし、紙に筆を走らせる。

『……男はやおら十二一重の内側に手を入れると、普段は着物に隠れて見えない女の白く柔らかい乳房をもにし抱き始めた、

「ああ、ああ」

女は男の己の身をまさぐる手の感触に逆らわず、むしろ己が身を預ける、
男は女の反応に気を好くしたのかさらに手を下げ、女の秘部に触れようと手を女の下半身に持っていこうと』

「清浄に保たねばならぬ『場』で何をやっとるかーーーーー!!!」

「ガハ!!」

 突如乱入してきた西郷に蹴り倒された、

「ええい!依頼に来ず何をやっとるかと思えば、神聖な『場』で貴重な紙にこのような艶ものを書いておるとは、ふざけるのも大概にせよ!!」

 この当時紙の製法は伝わっていたが、それなりに手間のかかる紙は高価で、木簡が使われていた、陰陽師もその類に及ばず、よほど高名な陰陽師以外は木簡を使うことの方が多かった、

「やかましい!いきなり何しやがる!!せっかく人が気分欲(誤字で無し)後世に残るであろう名作をしたためていたというのに!!!……って西郷じゃないか、珍しいな『場』まで来るなんて」

 先ほども記したように『場』とは陰陽師にとって退魔の道具である符などを作る場所である、直属の師弟関係があるならまだしも、いくら親しいからといってそれ以外の陰陽師を入れるものでも、また入ろうとするものでもない、
 まあこの男はそんなことを気にしたりしないのだが、なんせそんな重要な場所であんな物を書く男である、

「お前が無視した仕事を私が変わりにやってやったのだ!そのことに関して説経をしてやろうと来たのだ高島!!ええい『場』にこもって何をしているかと思えば!!!」

 西郷の怒髪天をつく勢いの剣幕も高島の御神木に巻く注連縄のように太い神経には関係なかった、

「お、そうなの?ありがとな」

「……まったく、お前という奴は」

 あまりにあんまりな高島の態度に、西郷は無理やり怒気を抜かれたように嘆息し、気を切り替えるように眉間を揉む、コリが堪っていたのか以外に気持ちよかった、

「ふう、説経をしても無駄だな、もういいせめて何で来なかっただけでも言え」

 疲れた様子の西郷に、高島は倒れた机を治し壁に符を貼りながら答える、
『急遽如律、情』先ほどまで高島の邪な気で澱んでいた『場』が一気に清浄な物になる、
その様子を見ながら西郷は思う、陰陽師として一級以上の力を持ちながら、どうしてこいつはこうなのであろうかと、きっと魂に刻まれているのだろう、横島もこんなんだし、

「で?」

「だって依頼人の貴族ごっつい男じゃん、そんな奴の依頼なんてやる気おきねえよ」

「そこらへんは同意してやろう、しかし正式に陰陽寮から回せれてきた依頼だぞ?無視などしたら除籍されても文句は言えんぞ」

 同意してしまう時点でこの二人は似たもの同士なのだろう、それはともかく高島は西郷に振り返り、どこか疲れたように口を開いた。

「なあ西郷、どうしてこの京に陰陽師が必要になるような事態が頻発してるとおもう?」

「そんなものは決まっている、今は世が乱れているからに決まっているだろ、飢饉や噴火、災害で地方はじこくだ、国中の澱みが中心たる京に集まってもいるのだろう」

 高島は西郷の答えに首を横にふる、

「違うぞ、西郷」

「何?」

「いいか、この京は遷都されると同時に、四神たる青龍、朱雀、白虎、玄武の加護を最大限に引き出したこの世に存在する中で最高の結界が張られている、外から怪異の類が入ってこないように、そうだな、この結界を通り抜けることが出来るのは神魔かそれに並ぶ実力を持ったものだけだな」

「むう、確かにそうだな、では高島何故京において魑魅魍魎、悪鬼羅刹のたぐいがたえぬのだ?」

 陰陽師の家系においてそれなりの地位にある西郷と違い、当時三歳だった高島は、才があるといって当時存命だった高島家当主が拾い育てられた、その五年後に当主が亡くなり、高島の血を継ぐ千夜と世に放り出されることになった、

 そして高島は自分と千夜が生きるためと、齢十を数える前に退魔の行に手を染めることになったのである、

西郷は思う、そんな彼の友人はこの問いにどのように答えるのだろうか?

「決まってる、外から入ってこないなら、中から現れてんだろ」

「ほう」

「京の中で起こる怪異のほとんどが誰某の恨み妬みのものだ、たまに現れる力を持った妖怪なんてのも元人間が多い、それに宮廷なんかで行われている権力の奪い合いなんかもかなり大きい原因じゃないのか?
一応陰陽寮から以来があった時に調べてみたが、今回の依頼人の貴族も権力をかさに来て好き勝手やって恨みを買ってたみたいだしな、
まあ幸い俺に権力欲なんてないしな、千夜も好きな男のところにでも嫁いでくれればいい、俺は余生を楽しく美人のねーちゃんと暮らせりゃそれでいいし」

「そうか」

 西郷はこの男に権力欲が無いのは本当だがそれだけではないと知っている、高島は何度か身分のそれなりに高い貴族に、「要職に取り立ててやるので千夜を寄こせ」と言われているのを断っているからである、

まったく、この男にこんなところがあるからいつまでも縁が切れないでいるのだ、

 西郷はため息をつくと、本音は見せずと実は其なりに親しいものにとって丸分かりの態度に乗ってやることにした、

「まあ話を戻すが、次の陰陽寮からの以来は自分でこなせよ」

「へい、へい」

 やる気の無い高島の返事に一瞬縁を本気で切ってやろうかと考えたが、
 意趣返しの手段があったので、それをとることにした、

「そうそう、千夜殿が言っていたぞ、後から話があると」

「……西郷、弁護してくれないか?」

 一縷の望みを込めて西郷に、雨の中ダンボールに入れられ捨てられた子犬のような視線を送るが、

「怖いからやだ」

 即座に拒否される、陰陽寮において一流を名乗れる二人であるが、実態はこんなもんである。


 どうも氷砂糖です、

 この作品正式には、 それでも時は進みだす、最初の歯車 、と言います、
長いので略しました、以降『それ時』で、

 内容から分かるように、『それ時』本編と関係があります、原作と違い高島の血筋が続いていたらという想像が元になっているのでそこらへんは度勘弁ください、
 とはいってもあんまり原作から離す気も無いので、高島にはメフィストにたぶらかされたり、上半身マッチョな魔神の指からビームで死んだりしてもらいます、

『最初の歯車』では何故高島の血筋が続いているのか?とか、『それ時』本編で分かっていない事等を書いていくつもりです、

 作中にある木簡に関しては氷砂糖のオリジナルです信じないでください、

 また四神の結界に関しては某漫画を参考にさせていただきました、
 作者さんに感謝を、

 最後にレスに関しては『それ時』本編と『最初の歯車』と分けさせていただきます、
 ごっちゃになりそうで怖いので、

 本編にレス下さった方本当にありがとう御座います、励みになりました。

 でわこれにて失礼します氷砂糖でした。

 PSタイトルの場所がうまくいきませんどうやったらいいのでしょうか?

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