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▽レス始

「リスタート 第九話 (GS)」

(´ω`) (2007-05-15 00:12/2007-05-15 00:52)
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3月2日 PM07:00

――???


――パシンッ

「うっ……?」


突然――
そう、何の前触れもなく突然私の中に"私"が知らないはずの"私の記憶"が流れ込んできました

「えっ?何…?…何ですかこの記憶は!?」


何年も訪れる修行者などいない平穏で、でも少し退屈な日常

そこに現れた非常識なまでに型破りな3人組

素人としか言い様がないはずなのに私の斬撃を避して見せた鉢巻の少年

荒ぶる竜の本性をむき出しにして暴れ狂う私を鎮める長髪の女性

外道に堕ちた元同胞と剣を交える私


「な…に…こんなの…私…しらな…あうっ!」


記憶は更に紡がれる


褒美という名目で極僅かな竜気を与える為に少年の鉢巻に唇を捧げる私

その与えられた竜気を呼び水に才能を開花させた少年

毎日がお祭りの様な、騒がしくも羨ましくなるような溌気に満ちた日常

女性の隣に立つという理由だけで前人未到の荒行に友と共に挑む少年

そんな少年を微笑ましくも、でもほんの少しの心の澱みを自覚して見守る私


「……これは私の記憶、なの…?……っ!…あ…あああっ?!!」


――そして訪れた審判の記憶が私を苛んだ


敵であるはずの魔神の娘と恋に落ちる少年

その慕情を貫かんが為に創造主である父に背いた蛍の化生

一時訪れた平穏の中で暫し紡がれた心休まる日々と破綻

自らの命と引き換えに少年を救い夕日と共に消えた蛍の少女

恋人と世界――ありえない筈の究極の選択を委ねられ……


――その心を結晶と共に砕け散らせながら慟哭の涙を流す少年


そこで記憶は終わった


「何…今の…?……どうして私…泣いてるの…?」


解っていた

悲しくて哀しいから泣いているのだと

同じく人に非ざる者が人に、一人は仄かな慕情を、
一人は真摯に情熱的な恋心を自覚して――

一人はただ傍観し、もう一人はその心を掴み取り

永久にその心の中に住み着く事を許された

傍観していた"私"は永久に機会を失ったというのに


これは嫉妬だと自分で解っていた

武神としての己に誇りを持っていた自分が
こんな醜い、しかも逆恨みに等しいそれを抱いていると自覚して
それを自戒して叱咤すべきなのに

私はどうしようもなく泣いた


「……横島さん…」

"会った事も無い"筈の少年の名前を呟く

心の中のどろどろとした澱みがほんの僅か静まった

「横島さん」

もう一度呟いた

心の中の澱みの中からほんの少し温かい"何か"が生まれた


「横島さん」

澱みは沈殿し、温かいそれが澱みすらも包んでいくのが解った


気が付くと


――私は泣きながら微笑んでいた


「小竜姫〜〜遊びにきたのね〜〜」


――リスタート――
  第九話


5月3日 AM11:00

――唐巣教会


「うむ、美神君も横島君も着々と修行の成果が出ているようだね」

「そうなんですか?自分ではよく解らないけど…」

教会の庭で基礎となる霊力を練り上げる訓練を終えた美神と横島に
唐巣はお茶を用意するため中に戻った

「俺も自分のはよくわからないっすけど美神さんは目に見えて
解りますよ」

「そうね、1ヶ月前に比べたら明らかに上がっていると思うわ」

「だろ?4月には83位だったのに今は84になっていrげぺっ!」

「「何の話をしてるのよっ!!」」

いつも通りの横島のセクハラ発言にいつも通りの制裁が加えられる
学校が始まってから続く"穏やか"な日常の1ページ


「お茶が入ったから一息入れようじゃないか」

教会の窓から唐巣が横島を視界に入れずにティータイムを告げる

心なしか唐巣の"砂漠化"の進行が緩やかになってきた様な気がするGWの一日であった


「でも効果が目に見え始めてきたのは本当よ?美神さん」

「そうなの?」

礼拝堂で神父の淹れた紅茶の香りを楽しみながらルシオラは美神に告げる
その隣で横島は紅茶そっちのけでビスケットに挑みかかっていた

「ええ、ヨコシマのバンダナもそうだけど、美神さんの指輪は霊基に
直接負荷を掛けているの。だから2人とも普段の生活そのものが修行
なのよ。それに加えて夜寝る前に霊気を空にして、寝てる間に霊的な
超回復をしているでしょ?だからこんな短期間でも効果は出て当たり前
といえば当たり前なのよ」

ルシオラは美神に寝る前に指輪を外して霊気を全て放出するように
指示していた。その言いつけは守られているらしい。

「うん、私の目から見ても確かに美神君はこの1ヶ月で霊力に幅が
出てきている。これからも続けて行けば、もしかしたら来年には
GS試験を受験できるレベルに達するかもしれないね」

「本当ですか!?」

「ああ、本当だとも…尤も六道学園は確か3年になるまで生徒の
GS試験受験は認めていない筈だから、あせらずにじっくりと修行しなさい」

六道学園は在校生のGS受験を3年の夏休みが終わるまで許可していない
これは未熟なまま受験して学園のブランド名に傷をつけない為の処置であり
3年になって学園から許可が出た者のみが9月に行われる前期GS試験
に望む事が出来る。

因みにGS試験は年度内に2回、9月と3月に行われる。つまり毎年
64名のGSが新たに生まれる訳だが現役GSの人数はここ10年
横ばい状態が続いている。これは引退や除霊中の事故による死亡や
再起不能が原因で現在日本の現役GSの総数は千人に満たない。
無論「もぐり」のGS等もいるにはいるが、その数は決して多くは無い
故にGSはその実態が外から見ると「よく解らない」仕事といわれながらも
その社会的地位は決して低くは無い職業なのである。


「そうですか…所で横島クンはGS試験を何時頃受けるつもりなの?」

「俺ですか?中学の間みっちり修行して卒業したらすぐに3月の試験を
受けるつもりっす」

「へぇ…じゃ合格したら最年少のGSの誕生って事ね…って…
高校はどうするの?もしかして行かないつもり?」

「勿論行きますよ。高校の間はルシオラが事務所立ち上げたらそこで
バイトしながら修行っす」

紅茶にミルクと砂糖をどばどば入れながら横島は質問に答えた

高校行かない等と言おうものなら百合子に"比喩表現"でなく
殺されるだろう…

不意に横島はその考えに行き着き、人知れず恐怖に駆られた

「高校生GSか…なんか漫画の題材にでもなりそうね」

「まぁ受かればの話っす」

「あんたねぇ…それはイヤミ?」

今でさえあれ程の力があるのにこれから3年間修行して受からない筈が無い
下手すれば3年後のGS試験で史上最年少首席合格者の誕生もあながち
絵空事ではないかも…

令子はそんな事を考えたが目の前の少年とその"絵空事"を繋げてみて
可笑しくなった。

何処にでもいそうで、こんな奴どこにもいないわよね…
顔は…"ギリギリ"及第だけどあのセクハラ癖だけは何とか教育し直さないと
ダメね…これから3年間が勝負かしら?"あれ"さえ治れば……
……ま、まあ千歩譲ってこの私と釣り合いが取れなくも無いかも…
ってな、何馬鹿な事考えてんのよっ!!

「美神さん?」

「へ?な、何かしら横島クン?」

横島に声を掛けられ思考の海から引きあがった美神は平静を装った

「いや急に黙り込んじゃったから」

「え?あ、ああ横島クンなら3年後のGS試験で合格できるわよ。
だから私はその前の9月の試験で何が何でも合格しなくちゃって
思っただけ。横島クンと同じ試験じゃ私の"首席合格"にも"ほんの
少し"だけ脅威にならなくもないからね?」

「やだなぁ、美神さんなら首席合格間違いなしっすよ」

前はそうでしたから、と横島は心の中で付け加えた

「そ、そう?お、お世辞でも嬉しいわ…アリガト」

僅かに顔を朱に染めて小さく礼を述べる美神をルシオラは
表面上何もない顔で紅茶の香りを楽しんでいた


――そう、表面上、は

(ふ、ふふふふふ…美神さん…やはり貴女がヨコシマと私の
間に割り込む最強で最凶な最恐の敵なのね…自分の見立てに
狂いが無かった事を私は喜べばいいのかしら?それとも今
この場で将来の禍根を絶つべし!といきり立つもう一人の
私の提案するままに行動すればいいのかしら?……ふふっ
困っちゃうわ…

――提案が魅力的過ぎて♪)


横島と美神がルシオラから発生するプレッシャーに慄き
唐巣がそっと自分の"カミ"に祝福を祈っている事に
気づいたのは紅茶がすっかり冷めてからであった


5月3日 PM07:30

横島家――


夕食の後片付けも終わり
横島とルシオラは部屋でゴロゴロしていた


――百合子は大樹と話があるからと1階の奥の部屋に
消えていった……


ルシオラが"気を利かして"遮音結界を張ってくれた為
ご近所迷惑にならずに済んだ、とだけ記しておく


「やっぱりヨコシマって大樹さんに似たのよね…」

「へ?」

「目の泳ぎ方がヨコシマそっくりだったわ」

そう言って"哂う"ルシオラの目は決して"笑って"いなかった

「な、ななななななんのことでせうかルシオラさん?」

「ううん、なんでもないのよ?…なんでもね」

目に影がかかり表情は見えなかったが横島はルシオラの
雰囲気から下手な対応は即・死を意味すると悟った


――だからルシオラが自分を抱き上げてベッドに移動した
のにも成すがままにされた


「るるるるしおらさん!?」

「気をつけて!"何か"がこの部屋にテレポートしてくるっ!」

「っ!!」

ルシオラの言葉を聴いた横島は即座にバンダナを外して霊気を
練り上げ、右手に栄光の手を纏った

「一体何が「黙ってっ!!……!来る!2体……え?…なんで!?」
ルシオラ?」

「この気配は…神族がどうして…!?」

「神族って…まさかっ!?」


刹那、何も無い空間から二つの人影が現れた


「そんなに構えないで欲しいのね〜〜」

大きな鞄を抱え全身に百の目を持ち、
のんびりとした口調で話しかけるその声


「お久しぶり…いえ、初めまして、ですね…ルシオラさん。
そして


――横島さん」

神剣を携え
緋色の短い髪の両横に竜の角を生やし
凛々しくも美しく
そして見るものを魅せてしまう
優しい微笑み


「なんで…貴女達が…!?」

「小竜姫様!?


と、ついでにヒャクメ!?」


「"ついで"じゃないのね〜〜〜っ!」


例えるなら刺身に付いて来る大根の千切りです


続く


皆様こんばんわ

(´ω`)でございます
リスタート第九話をお送りいたします

前回のちらしのうらがご好評頂けたようで嬉しい限りです
皆様の御指摘に預かりました通り何名か見逃していましたorz

特に多かったのがメド様と三姉妹ですね
メド様は素で忘れてました。三姉妹は…ちょっと現段階の構想では
ネタバレになりますのでご容赦ください(´・ω・`)

洒落のつもりで入れたピート氏ですが彼はこのSSではカッコよく
書いて見ようかなと思っていますので今後にご期待下さいませ。


さて第九話ですが
小隆…じゃない小竜姫様御降臨です
あ、ヒャクメはついでです、ついで。


さぁこの時点で原作逸脱してまいりました。でも基本のストーリーは
(ピート辺りを除いて)原作準拠で勧めていこうかなと思いますので
ご期待くださいませ


以下レス返しをさせて頂きます

ラーメン大王様
うーん…ああは言いましたが実際はどうなるかまだ固まっていないです
予定は未定ということでご容赦願います

寿様
るしのーとは御好評頂けた様で胸を撫で下ろしております

燐様
切っても切れませんね。やはり横島と美神がいての極楽大作戦ですから。
ランクについてはルシオラ的にはSが10個でも足りないというのが
彼女の本音ではないでしょうか?

meo様
論外は論外ですっ!
横島関係の苦労は減るというのは…ねぇ?

単三様
見られたら"実験"でなんとかしちゃうのでh
夏子は忘れてましたね…うーん、夏子ですか…

文月様
お初でございます
ルシオラが生きていたらというのもこの作品のテーマの一つですね
このSSは特定のキャラに対するアンチやヘイトといった意図は
ありません。あくまで演出と考えて頂ければ幸いです

チョーやん様
(´・ω・)っ〓■●_
フェードアウトダメ、絶対

woo様
美衣とグーラーは今後の構想次第ですねぇ
さてどうしましょう

SS様
そうですね数々の二次(検閲により削除されました
面白いと評価されるのは大変ありがたいことです
これからもお楽しみ頂ける作品を心がけて行きます

香向様
夜寝る前の習慣ですか…
ちょっと責任感じてしまいます

レンジ様
そんな事態になったら
(´ω`)の中の人は逃亡してしまう可能性大です
面白い作品が見れるというのはありがたいことです

wata様
黒キヌ様は…
すいません現段階ではちょっと…

万々。様
ヤマ○ュン展開絶対に在り得ませんので
ご安心くださいませ

エセ様
子一時間問い詰めただけで横島が改心
するならルシも苦労しないわけで…

にく様
GMですか…
たしかに最後の障害はGM…かな?

クレイドル様
お初でございます
通読ありがとうございます
番外編タイトルはこれからも考えてますのでご期待下さい

ガイギス様
シュタロス女性化は考えてませんでしたね…
うーん…元はマッチョなんですよね
このSSでは難しいかなぁ…

Grenade様
横島"関係"限定とお考え下さいませ

アイク様
ピートはこのSSではカッコ良く描こうかと
考えております

内海一弘様
!が1個増える毎に危険度は乗算されていきます
3個以上付くと…

俊様
ユッキー関係は現在白紙ですので
今後の展開にご期待下さいませ

パチモン様
お初でございます
パチモン様の後ろに季節外れの蛍が…

蒼様
るしのーとの内容は最終的には
どの位になるのでしょうねぇ…

yuju様
皆様のご感想が支えです
ピートはあくまでも洒落ですのでご安心くださいませ


いつも沢山のご意見ご感想誠にありがとうございます

ではまた次回のあとがきでお会い致しましょう

おやすみなさいませ

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