「・・・なるほど。つまり今は小竜姫様がメドーサを抑えてくれてるんだな?」
(大雑把に言えばそうなのね〜。)
俺は現状についてヒャクメから説明を受けた。
(それにさっき横島さんが戦った陰念が使った術から見ても白龍GSがメドーサと繋がっている見て間違いないと思うのね〜。)
「魔装術、か・・・」
確かに俺が使う神装術が神族(ヒャクメ)から力をかりているように魔装術も魔族から力をかりていると考えるのは妥当だが・・・単純だな、おい。
(魔族と契約して行う術、疑うには十分すぎるのね〜。昨日のチェックの時点で白龍GS所属の受験生は3人。おそらく残り二人も魔装術、もしくは魔族から力をかりるような術を使うと考えたほうがいいのね〜。)
「あれが後二人・・・考えたくもねぇな・・・」
(下手するとあれより強いかもしれないのね〜。)
「・・・考えたくもないな・・・」
そう言いながら俺は頭の中に先ほどの陰念の姿を思い浮かべた。
・・・・あんな化け物みたいな奴はそんなに相手にしたくは無いぞ。
「それで白龍GSの残り二人の相手は誰なんだ?」
(あっ!!すっかり忘れてたのね〜!!次のピートさんの相手がそうなのね〜!!!)
「げっ!!マジか!?」
(マジなのね〜!しかももう始まってるはずなのね〜!)
俺はその言葉を聞いて急いで救護室を出た。
「やばいな。俺の試合が終わってから結構時間が経っちまってる!」
(治療と会話で約半年、げふんげふん!!約一時間も経ってるのね〜。まったく月日が経つのは早いのね〜。)
ヒャクメ・・・その言葉はいろんな意味で笑えません・・・
俺が会場の廊下を走って試合場について真っ先に目に入ったのは・・・
禍々しいピエロのような鎧を纏った男と、見たことの無い顔をしたピートとの戦いだった。
「眼鏡の神父はいつんなったらジュース持ってくるのよっ!!お前の弟子だけあってトロいわねっ!!」
「うるさいわねっ!!あんたの弟子ほどじゃないわよっ!!」
唐巣さんが私達のジュースを買いに行ってから大分経つ。
おそらく何処かで美神さん達と打ち合わせをしているのだろう。
それはわかるのだがいつまでもメドーサと二人にしないで欲しい。自分でもかなりイラついているのがわかる。
目の前では唐巣さんの弟子で吸血鬼の血を引くピートさんとおそらくメドーサの弟子であろう伊達と言う男との試合が繰り広げられている。
「ああ、弟子で思い出した。この間邪魔をしてくれたあの小僧は元気みたいだねぇ?」
「あなたには関係の無いことです。」
メドーサの言葉を私は切って捨てる。そして同時に心の中で確信する。やはり横島さんはメドーサの恨みをかってしまっている、と・・・
「くっくっく、つれないねぇ。あの小僧には色々礼をしたいと思ってるんだけどねぇ・・・」
そう言いながらメドーサは怪しく笑う。
「メドーサ・・・横島さんに手を出すならそれ相応の覚悟を持ちなさい。その様なことがあれば私は全力であなたに対します。」
「くっくっく、怖い怖い。」
メドーサは再び笑う。で、出来ることなら今すぐ仏罰を下したい!!!
「ああ、噂をすれば、だねぇ。」
メドーサの声を聞いて私はメドーサの視線を追った。
そこには勢いよく試合場に入ってくる横島さんの姿があった。
「さっきの小僧の試合を見せてもらったけど、なかなか腕を上げたみたいじゃないか。」
「それについては同意してあげます。」
そう言いながらお互いピートさん達の試合に視線を戻す。
試合はまさに互角。長引きそうだ。
「小竜姫、一つだけ聞かせな。あの小僧とあんたの関係はなんなんだい?」
「師弟ですよ。横島さんは私が一から鍛えている直弟子です。」
「ハン!正直に言いな!いくらあんたの弟子でもあんたがそこまでたんなる人間を守る理由になると思うのかい?」
そう言ってメドーサは私を睨みつける。
「あなたのような者に言っても理解できるかはわかりませんが、武門のものにとって師は親も同然、弟子は子も同然です。親が子を護って何がいけませんか?」
私はメドーサの視線を受け流しながらそう言った。
「ハン!あんたが親バカだとは知らなかったよっ!!」
「ええ、覚えておいてくださいね。」
ええ、本当に覚えておきなさい。彼は私の心から誇れる弟子であり、子であることを!!
そこでいったん会話が途切れる。
ピートさんの試合は未だに均衡を保っている。
「・・・この試合、長引けば吸血鬼の血を引くピートさんの方がスタミナが続く・・・勝負が見えましたね。」
「さぁ、どうかしらね。」
メドーサはそれだけ言うと何も言わなかった。
しばらくその場を沈黙が支配する。
試合は相変わらず。
ただ、私は視界の端で動き出す横島さんを捕らえていた。
(ピートさんの相手の名は伊達雪乃丞。白龍GS所属の受験生なのね〜。)
私はピートさんの試合を見ている横島さんに説明を続ける。
(相手が纏っているのは予想したとおり魔装術なのね〜。厄介なことに陰念より収束率は上なのね〜。)
雪乃丞の魔装術はほぼ完全に霊体が物質化している。見た目はともかく陰念なんかよりパワー、スピード、共に確実に上回っている。
「それはなんとなくわかるが、ピートのほうも見たことの無い顔してるぞ?」
(あれは単に吸血鬼の能力を使ってるからなのね〜。しかし、魔の力を聖なる力として使うとは・・・結構めちゃくちゃなのね〜。)
「あいつ、そんなこと出来たのか。まぁ、それは良いんだが・・・」
そう言いながら横島さんは試合を見つめている。
両者の力は互角。かなり長引きそうだった。
「・・・飛んでるな。二人とも。」
(・・・飛んでるのね〜。)
「・・・すでに人間じゃないな・・・」
(もとから片方は人間じゃないのね〜。って言うか注目すべきはそこじゃないと思うのね〜!?)
「んなこと言われても、俺は空中戦なんてしたことないし。」
(いやいや、それはそうだと思うのね〜!おキヌちゃんじゃあるまいしそんなフヨフヨ人間が飛んでたら人間はもっと違った進化してるのね〜!ってそうじゃなくてピートさんの力とかもう少し見るべきところはあるのね〜!!)
「いや、別に人が変わるわけじゃあるまいし、それであいつがどうにかなっちまう訳じゃないんだろ?」
(それはそうなのね〜・・・)
なんかドッと疲れました。まぁ横島さんらしいんだが。友達はどうなろうと友達、か。
そう思いながらも私は今のうちに現状を把握する。
ピートさんは未だに試合中。
小竜姫はメドーサと二人でいる。
?唐巣神父はどうしたのね〜?あっ、美神さんと一緒にいた。
それじゃあ美神さんたちも現状はほぼ把握していると考えても大丈夫なのね〜。
小竜姫たちが気になったがとりあえずは置いといてっと。
続いてもう一人、あの陰念に霊波砲を放ってくれた白龍GSの残り一人の男を捜す。
・・・居た!小竜姫たちの客席の真下!!
「ヒャクメ、メドーサが・・・」
横島さんもメドーサを見つけたようで声をかけてきた。
(横島さんも気がついたのね〜。その真下に白龍GSの最後の一人がいるのね〜。)
「あいつか・・・」
横島さんはあいつを見てただ一言だけそう呟いた。
おそらくは陰念の試合でも思い出したのだろう。
私はとりあえず監視を続けた。もともとわたしはそういった作業はプロだ。相手が不穏な動きをしたらすぐわかる。
試合は未だに続いている。
「こりゃ体力勝負だな。」
横島さんがそう呟いた。
確かに二人の力は互角。長引けば先にばてた方が負ける。それならば吸血鬼の血を引くピートさんの方が有利のはず。
わたしがそう考え横島さんに話しかけようとした時・・・
(!?横島さん!!)
「うおっ!?ど、どうした?」
(白龍の最後の一人が動くのね〜!)
「なに!?」
最後の一人が耳に手を当てた。ただそれだけの動作。ただし、私の眼はその耳についたイヤリングに霊力が込められたのを確実に映し出した。
(何かする気なのね〜!)
「・・・」
横島さんはすぐに動けるように構える。
そしてその男はイヤリングを耳からはずし、指で勢いよく弾いた。
その先は・・・ピートさんの試合をしているコート!?
(横島さん!!)
「わかった!!」
私の呼びかけに横島さんは動き出す。瞬時に手にサイキック・ソーサーを作り出し投げつける。
ドン!!!
横島さんのサイキック・ソーサーが床に突き刺さる。そして・・・
カァァァン・・・・
何かが弾かれる乾いた音が辺りに響いた。
あとがき
始めに大分間が空いてしまったことを心よりお詫びします。私生活がごたついたのと今までの書き方に限界を感じて少し考える時間が欲しかったので・・・
とりあえずはお久しぶりの投稿です。覚えている人がいるかも微妙ですがなんとか書き上げました。今回は今までの書き方と違い、横島、ヒャクメ以外の視点からも書いて見ました。今回は小竜姫様視点でしたが話によって変えて行きたいと思ってます。
レス返し
始めに、ご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
そしてかなり遅れてしまったことをお詫びいたします。
シクル様
この横島君は結構いい奴っぽく設定してますが・・・それはそれでなかなか明るくかけなくて困ったりもします。まぁその辺はヒャクメがカバーしてくれてますが。ヒャクメはおかげで原作より軽いかもしれません。
内海一弘様
少し原作と変えてみました。ヒャクメがいる以上やはり隠密行動は難しいかと思いまして。次はバトルですよー。・・・がんばります。
夢識様
オカマとのバトルです。予定では原作と同じく一対多数で行きます。ユッキーはどうしましょうか・・・
アイク様
横島君の心の葛藤は結構書いています。出来るだけワンパターンにしないようにしてますが・・・原作みたいに軽さが必要ですね。
耶麻様
テマリですか・・・確かに!!結構近いものがあります。あれみたいに乗ってみるのもいいですね〜。・・・どっかで使うかも・・・
とみぃ様
ヒャクメの点では確かにそれは感じていました。ただし思考でまで口癖を使うべきか悩んだ末の結果です。とはいえ確かにわかりにくいですね。今後は考えていきたいと思います。
今回は視点変更時の感覚を広くしました。いかがですか?
寝羊様
ピートVSユッキー・・・両者共に台詞が無い!!うう、未熟者です。ちなみにおまけは完璧に思い付きです。実は今も一つ思いついてるんですが・・・いつか書きます。お楽しみに〜。
への様
確かに。横島君の心のバランスは結構重要な今後の課題と考えています。出来る限りヒャクメがフォローしてますがそろそろ色々やりたいですね。