3月20日 AM09:30
横島百合子は洗濯物を終えて一息入れようかと考えていた
RRRRRR・・・
「はいはい今出ますよー・・・はい横島です」
「おはようございます横島夫人。黒崎です」
「あらー黒崎くん、君から掛けて来るなんて珍しいじゃないの
――何かあったのかしら?」
「息子さんとルシオラさんに六道家が接触しました」
黒崎が伝えてきた用件に若干眉を顰める百合子
「・・・・・・へー、ウチの息子も随分出世したのねー、天下の六道家から
声が掛かるなんて・・・六道家から使いでも着たの?」
「いえ・・・
――六道家当主本人自ら接触しました」
――ミシリ
受話器が微かな悲鳴を上げたが百合子の口調は変わらない
「・・・あらあらルシオラさんが焼き餅焼いちゃうじゃないの
変な所ばかり父親に似ちゃって、やぁねぇ」
百合子がこういう時に取るおどけた態度の意味を黒崎は知っていた
ああ、六道家は虎の尾を踏んだのだ、と――
「・・・・・・いかがなさいますか?」
「――ホントに世話の焼ける息子だこと・・・ウチの宿六は今会社にいるのかしら?」
「横島課長は現在本社で年度末決算の事務処理に当たっています」
「そう・・・ありがとう黒崎君。とりあえずウチの宿六の所に行って頂戴
――此方から電話するから」
「かしこまりました・・・紅井チーフ」
「私は"横島"百合子よ?黒崎君?」
「・・・失礼しました。では・・・」
ツー・ツー・ツー
端的に挨拶を述べて切ってしまったが、少しだけ嬉しそうな口調だった黒崎に
百合子は一瞬だけ苦笑いを浮かべて電話のダイヤルをプッシュした
我ながら過保護だとも思わなくも無い。だが今回は相手が悪すぎる
当主自ら出てきたという事はルシオラの事を調べた筈・・・
――当然息子と自分の事も。それでも尚ちょっかいをかけてきたという事は
あちら側もそれなりの勝算があっての事なのだろうが・・・
「舐められたものね」
自分が何故結婚して主婦になったのか?"横島"百合子になったのか?
その辺の事が六道家は分かっていない様だった
プルルル・・・プルルル・・・ガチャ
「あ、もしもしー?ケンちゃん?私百合子だけど・・・うん元気元気♪
ちょっとお願いがあって電話したの♪・・・・
うん・・・うん勿論会社にも悪い話じゃないわよ♪
それでね・・・
――少しだけウチの旦那
――横島大樹――を借りていいかしら?」
――リスタート――
第六話 後編
唐巣教会の礼拝堂では唐巣が令子にコーヒーを注いでいた
「・・・何か聞きたそうな顔をしているね?」
「え?」
「ここには神に懺悔をしに来る人もいるからね・・・
職業柄そういった人の顔は見慣れているんだ」
そう笑って神父は令子の前にカップを置いた
「あの二人、おば様とどこか行っちゃいましたね」
「・・・・・・私も懺悔せねばならないのだろうね」
「は?」
「いや、此方の話さ。・・・あの二人のことが聞きたい事なのかな?」
「・・・あのルシオラって女の人、GS試験にギリギリで合格だったって
話をおば様から聞いてたんです。試験で起きた事件の事も」
「・・・・・・」
「だから私、正直馬鹿にしてた。GS試験にお情けで合格にしてもらった
三流霊能者・・・って。でも・・・」
「・・・怖かったかい?」
「っ!」
図星を突かれて固まった手がカップの中の液体を揺らした
「わ、私はっ!・・・私は・・・」
何かを言いかけたが令子は何もいえなかった
唐巣に指摘された事は事実だったから
どう言い繕っても自分はあのルシオラという女性に恐怖したから
「・・・正直言うとね、私も怖かったよ。声も出せない位に、ね」
「えっ?」
「普段のルシオラ君は理知的で淑やか・・・ま、まぁ横島君を叱る時は
"多少"過激な行動に出るけど・・・とにかく優しい女性なんだよ」
「・・・」
「そのルシオラ君が怒り、と言って良いのかは分からないが
相手にあれ程の言葉と威圧感を与えた・・・横島君を侮辱された
という理由でね。普段の彼女からは考えられなかったよ」
侮辱という言葉を聴いて令子は俯いて赤面した
相手は12歳の少年である。その少年に自分は何と言った?
多少頭に血が昇っていたとはいえあんな言葉を浴びせるとは・・・
母が聞いたら何と思うであろうか?そんな事が頭の中を駆け巡り
令子は自分を恥じた
「横島クン・・・でしたっけ?私を許してくれるでしょうか?」
「勿論だとも。彼はまだ若いが大事な事は何かというのを
理解している。美神君がキチンと謝れば、ルシオラ君も
笑って許してくれるよ。そういう人達なんだよ、彼らは」
カップを傾けながら唐巣は年長者らしい、気遣いに満ちた瞳で
令子に笑いかけた
「そう、ですか・・・でもルシオラさんと横島クンは霊能者としては
実際の所どうなのですか?特に横島クンは霊能者というには
余りにも・・・その・・・普通の少年じゃないですか」
言葉を選んで唐巣に疑問をぶつける令子
ルシオラは曲がりなりにもGS試験に合格したのだから
霊能力は(実際どの程度なのかは不明だが)証明されている
しかしあの横島という少年からは人並み、いや人並み以下の
霊気しか感じられなかった。そんな少年がGSの弟子だという
令子の常識では考えられない事だった
「横島君はね・・・おそらく自分の霊能力を抑えている・・・・・・
いや、隠しているというのが正解かな?何か事情があるのだろうが
彼の中には外見からは想像できないような霊力が渦巻いているのが
私には感じられた。今の美神君を遥かに超える霊力がね」
「・・・うそ・・・」
まだ中学生に上がろうかという少年が、自分より高みに居ると言う。
唐巣の言葉でなければ一笑に付した言葉が目の前の超一流と賞される
霊能者から告げられたという事実が、令子のプライドを激しく揺さぶった
「恐らく彼は修行を積めば後々は、私や美智恵君を超える霊能者に
なれるだろうね。」
「・・・・・・」
あの少年が、一見何処にでも居そうなあの少年が目標とする
母をも超える霊能者になれる可能性を秘めている
そう考えた時、令子は心の中にじくじくとした何かが生まれたのを
自覚した――ああ、これは嫉妬だ
「・・・だが」
「・・・?だが?」
「GSとして・・・妖怪や悪霊を祓う事を生業とするGSとして
超一流になれるかは別の話だろうね」
「・・・どういうことですか?」
霊能者として超一流=GSとして超一流ではないのか?
「彼は・・・――優しすぎる」
「!!」
「人間に禍を為す悪霊や妖怪を祓うのがGSの使命だ。
だが中には理不尽な出来事や悲しみからそのような存在に
成り果ててしまった者達が、いやそちらの方が圧倒的に
多いのが実情だ・・・そのような悲しい存在もGSは
祓わねばならない。より大きな悲しみを産み出さない為にね。
だが・・・その時人としての優しさや慈しみは障害になる。
知識や経験は本を読み除霊の場数を踏めば手に入る。しかし
覚悟はどうだろうね?横島君は割り切れるだろうか?
非情こそが慈悲になり得ると言う事を理解できても実行
できるだろうか?」
「・・・・・・それがGSとしては話が別だ、という理由ですか?」
「・・・話が逸れてしまった様だね。申し訳ない」
唐巣はそう謝罪してカップを傾ける。目を軽く瞑っていた為
令子に表情は読めなかった・・・
「横島君の事はひとまず置こうか・・・ルシオラ君の事だが・・・
・・・・・・わからない」
「は?」
「いやぁ・・・恥ずかしながら私にも彼女がどの位の力を隠しているのか
皆目検討が付かないね。最初に会った時に先祖帰りで霊能力が人並み
外れているとは聞いていたけど、GS試験の時にはギリギリ合格できる
程度に力を抑えていたと横島君に教えてもらったんだよ。本当の実力は
今の研修中でもサッパリ分からない。だが少なくとも将来は私を越える
事は間違いない筈だよ」
そういって笑う唐巣に美神は唖然とした
「分からないって・・・神父の弟子なんでしょ!?」
「いやちょっとした事情があって私が面倒を見る事になっただけで、
厳密には私は彼女の師匠と言う訳ではないんだ。事情については
本人達から直接聞くと言い。彼女達は快く教えてくれるはずだよ」
「・・・判りました。その事はルシオラさん達に直接聞いてみます
・・・ところで彼女達とおば様は何処に言ったんですか?」
「・・・・・・・・・・・・何処に逝ったんだろうねぇ・・・」
神父は心の中で己の罪を神に告白して許しを乞い
弟子達の無事を祈った
無駄な事と知りつつも
AM13:30
六道家本邸
「・・・なぁルシオラ」
「なにヨコシマ?」
出された紅茶の香りを楽しみつつヨコシマに応えるルシオラの姿は
この豪華な応接間にも映えていた
既に4時間以上経過しているが冥菜は一向に姿を見せない
「気づいてるか?」
「ドアの壁の向こうに居る人たちの事?なら大丈夫よ。特に今すぐ私達を
如何こうするつもりは無いみたい・・・今のところはね」
そう言ってルシオラは出入り口付近に軽く目をやるとまた紅茶の香りを
鼻腔一杯に堪能した
「そっか」
――ガチャリ
「ごめんなさいね〜〜おまたせしちゃって〜〜ちょっと
準備に手間取っちゃって〜〜」
着物を着替えた六道夫人が応接間に入ってきた
――何の準備に手間取ってたのやら
「いえ、美味しい紅茶を堪能させてもらっていました」
おくびにも出さずに社交辞令で返すルシオラに冥菜も社交辞令で応えた
「あらわかる〜〜?ダージリンなのよ〜〜もう一杯いかが〜?」
「いえ、ご馳走様でした・・・ところで私たちにお話とは?」
世間話をするつもりはないのかルシオラはさっさと用件を切り出す
「別に難しいお話をするわけじゃないのよ〜〜ただ〜〜ちょっと
ルシオラさんに〜〜お願いしたいことがあるだけなのよ〜〜」
「お願いですか?」
「ルシオラさんに〜〜おばさん達の〜〜仲良しグループに〜〜
入ってほしいだけなの〜〜」
「・・・いくつか質問があるのですが宜しいですか?」
「なにかしら〜〜?」
「まず何故私を六道家の派閥に勧誘するのかその理由です。私のGS試験の
成績はご存知かと思いますが、六道家当主自ら勧誘するほどの理由が見つ
かりません。」
「ルシオラさんて〜〜たしか先祖帰りなのよね〜〜?そういう人たちって〜〜
大抵の場合〜〜物凄く強い力が眠ってたりするのよ〜〜ルシオラさんも〜〜
将来はその力が開花するかもしれないじゃない〜〜?だから〜〜いまのうちに
〜〜ツバつけておこうと思ってね〜〜」
これは半分事実で半分ウソである。先祖帰りに人外の能力が眠っていて才能が
開花するというのは本当だが冥菜がルシオラに目をつけたのはそれ"だけ"が
理由ではない
「・・・二つ目はこの部屋を取り囲んでいる方々も六道夫人の"仲良しグループ"
のお友達ですか?」
「あらあら〜〜おばさん何のことか〜〜わからな「カシャンッ!」・・・」
「ルシオラっ!?」
突然ルシオラが手元のカップを入り口付近の何も無い場所に投げつける
「では其方に隠れている人は只の侵入者と言う事ですね?」
「・・・完璧に隠れていたはずなのに流石、ということでいいのかしら
ルシオラさん?」
応接間の入り口付近の空間が歪み、誰もいない筈の場所から
腰に警棒らしき物をさげた妙齢の美女――美神美智恵が
姿をあらわした
「初めまして、ルシオラ=蛍=芦といいます。お名前を伺っても
よろしいですか?」
「美神美智恵といいます。先程は娘の令子が失礼致しました
・・・ところでいつから私に気が付いていたのかしら?」
「この部屋に入ったときから、です。素晴らしい穏行結界
ですね。霊気も気配も何もかも完璧に消えていました。
でも他の気配――空気の流れなんかもそこだけ不自然に
消えていましたから。」
「ぜ、全然気付かんかった・・・」
「普通は気付かなくて当たり前なんだから気にしちゃダメよ?ヨコシマ」
「まぁ〜〜美智恵ちゃん〜〜?かくれんぼしてたの〜〜?
だめよ〜〜客さんが来てるのに〜〜」
「ええ見つかっちゃいましたわ先生。今度は私が鬼ですわ」
この期に及んでまだ白を切り通す冥菜と美智恵
この二人も大概である
「紹介するわね〜〜こちらは〜〜美神美智恵ちゃん〜〜
私の生徒の中で一番優秀だった子なのよ〜〜令子ちゃんの
〜〜お母さんなのよね〜〜」
「さっきは娘の令子が失礼なことを言ってごめんなさいね?
横島忠夫君。後で言っておくわ」
「・・・どうして俺の名前知ってるか聞いていいっすか?
美神さん」
「わたしが〜〜おしえてあげたのよ〜〜横島君〜〜
"あの"村枝の紅ユリの〜〜息子さんだって〜〜」
表には出さないが若干の焦りを感じていた冥菜はカードを
一枚切った。壁の向こうの連中はともかく美智恵に気付かれる
とは思わなかった。なるべく穏便な話し合いで引き込みたかったが
あまりそうも言ってられないらしい。
「なんすか?それ?」
「あら〜〜お母さんの事知らないの〜〜?横島君のお母さんね〜〜
むかしは物凄い有能な〜〜OLさんだったのよ〜〜」
そう、その有能さは身を以って思い知らされた・・・
「・・・俺の知ってるおかんはスーパーの特売日に喜び勇んで
買い漁る人なんで"パシュ"・・・ってルシオ・・・ラ?・・・」
隣にいるルシオラの顔の輪郭がぼやけてくる。だがその顔は
何処までも優しさに溢れていて・・・
横島はルシオラの肩に身を預けるように眠りに就いた
「ごめんねヨコシマ・・・一寸だけ良い夢見ててね?」
「横島君?」
「あらあら〜〜?疲れちゃったのかしら〜〜?」
突如眠ってしまった横島を不思議に思ったが
ルシオラが二次試験の第一試合で見せた力――
麻酔か何か――を思い出す冥菜
「・・・百合子さんの事も私を勧誘する理由の一つなのか・・・
という質問にも答えて頂けるのかしら?」
若干雰囲気が変わったルシオラが少し気になったが
冥菜は気にしなかった
――いざとなれば美智恵も周りのGSもいる
何よりも娘から借りた六道家の守護神・式神十二神将を
自分の影に潜ませている。こんな小娘一人恐れる事は無い
息子を引き入れれば"あの"村枝の紅ユリがもれなく付いてくる
こんな美味しい話はまたと無い。是が非でも引き入れねば
その為なら多少強引な手段でも止むを得ない――
「ルシオラさんの〜〜身元引受人でしょ〜〜?おばさん〜〜
びっくりしちゃった〜〜百合子さんとは〜〜どういった〜〜
お知り合いなのかしら〜〜?」
「ご想像にお任せしますわ」
「ええ〜〜ルシオラさんの〜〜いけず〜〜」
そういいながらも冥菜はちらりと窓際に視線を送り
何かの合図を送る
「・・・最後の質問をよろしいですか?
――玄関はどちらでしょうか?」
にっこりと笑いながら冥菜にそう質問した
「あら〜〜もう帰っちゃうの〜〜?まだお返事を
聞いてないわ〜〜」
「お誘い頂き誠に恐縮ですがお断りさせていただきます・・・
――これでよろしいかしら?」
「理由を〜〜聞いてもいい〜〜?」
「・・・そうですね・・・ヨコシマがそれを望まない・・・
というのが理由かしら?」
「あら〜〜お師匠さんが〜〜お弟子さんの指示に〜〜
従っちゃうの〜〜?」
「私はヨコシマの師匠である前に恋人ですから
惚れた男のお願いには弱いんです♪」
そういってヨコシマの髪を軽く梳くルシオラ
「ルシオラさん?考え直してみない?決して貴女にとっても
悪い話ではないと思うのだけど?勿論横島君の将来にもプラスに
なると思うのだけど?」
「ヨコシマはそうとは思ってないみたいですし、私もヨコシマと
同意見ですわ美智恵さん」
「ええ〜〜ルシオラさんが〜〜うんっていってくれないと〜〜
おばさん〜〜いじわるしちゃうから〜〜」
その言葉を合図に部屋の周りの空気がにわかにざわつき始める
「いじわる・・・ですか?」
「そうよ〜〜とっても〜〜いじわるしちゃうんだから〜〜
だから〜〜おばさんの〜〜グループに入ってくれないかしら〜〜?
横島君のお家にも〜〜めいわくかけるのはいやでしょ〜〜」
陳腐で使い古された脅しである
ルシオラは怒る気にもなれなかった・・・・・・
―――?
ふと、ルシオラはその自分の感情に違和感を覚えた
怒る?私が?誰に?目の前の"人間"に?
何故?彼女達は"敵"だから?いいえ、"敵"じゃない
この程度の連中が"私"の敵になるとは思えない
じゃあ何故美神さんには"怒った"の?
ヨコシマを侮辱されたから?そう、それもある
でも美神さんは"敵"だから私は怒った
美神さんは敵なの?美神さんは・・・
――美神さんは私の"恋敵"だから私は怒った
ああ
私ったら
すっかり忘れていた
最近幸せすぎて
世界が私に優しすぎて
すっかり忘れていた
世の中はヨコシマや百合子さんや大樹さんや唐巣さん
・・・そして一応美神さんかな?
そんな人達ばかりじゃなかったんだ
"こういうの"もいたのよね
今更ながらに気付いたルシオラは周囲の事も忘れてクスクスと笑い始めた
「そうね、わたしったらそんな事も忘れるなんて♪」
「あら〜〜考え直してくれたの〜〜?」
ルシオラのその態度を恐怖からくる逃避だと思っている冥菜は
内心で少し脅しすぎたかと反省した
美智恵はそんな冥菜をみて「やりすぎですよ」と突っ込みを
入れたかった。いくらなんでも強引過ぎではないか。これでは自分達は
完璧に悪者ではないかと内心忸怩たるものがあった
まぁいいこれは結果オーライというやつだ
これで村枝の紅ユリも六道財閥に引き込める
そう考えると冥菜は小躍りしたい気分だった
――目の前の"小娘"から六感が麻痺するほどの魔力が放たれるまでは
わたしは〜〜いまなにをしてたのかしら〜〜?
そうよ〜〜ルシオラさんを〜〜ちょこっとびっくりさせて〜〜
ウチのグループに〜〜はいってもらおうとしたのよね〜〜
ルシオラさんがはいってくれれば〜〜横島君も〜〜
入るって事だし〜〜そうなれば〜〜横島君の〜〜
お母さんも〜〜うちにきてくれるもの〜〜
だから〜〜ちょっとくらいびっくりさせても〜〜
だいじょうぶよね〜〜わたしは〜〜六道なんだから〜〜
いうこときいてくれるわよね〜〜?ルシオラさん〜〜?
「やっぱりこの程度なのね、つまんないわ」
ルシオラが開放した魔力
――ほんの10000マイト程度――
をモロに浴びて冥菜は座ったままの姿勢で失神していた
部屋の周囲に居た連中も同様であったが
「あ、貴女・・・魔族・・・」
「あら、起きてたんだ」
特に気にするまでもなくルシオラは顔面を蒼白にしながら
こちらに神通棍を向ける美智恵に声を掛けた
――霊力は通っておらずカチカチと震えていたが
「流石美神さんのお母さんね。他の人は皆寝ちゃったのに」
「質問に答えなさい!」
「うるさいわねぇ・・・ヨコシマが起きちゃうじゃない」
麻酔でまだ眠っている横島を背負うルシオラは
まったく美智恵を警戒していなかった
「貴女、何が目的なの!?何故貴女みたいな強力な魔族が
人界にいるの!?」
「魔族魔族って煩いわね・・・魔族が人間を好きになっちゃいけない
決まりでもあるの?」
「何・・・をいっている・・・の?」
「別に説明しなきゃいけない理由は無いでしょ?安心しなさい
皆すぐに起きるし怪我も無いはずよ・・・あ、バイク教会だったわ
・・・ま、いいか♪ヨコシマ背負いながら歩いて帰るのもなんか
新鮮だし♪ヨコシマおんぶ出来るのも今のうちだけだしねー♪」」
そういいながら美智恵を一顧だにせずルシオラは応接間を後にした
「一体・・・なんなの?・・・あの娘・・・?魔族が人間を好きに・・・って
どういう・・・事なの・・・?」
へたり込んで呆然とそう呟く美智恵は自分が失禁していることにも
気付かなかった
――村枝商事本社
RRRRR・・・・
「もしもし?百合子か?ああ・・・全部OKだよ・・・
ああ、六道マテリアルが一番仕掛け易そうだったから
うん、まだ全然気付いてないみたいだな・・・
いま全体の25%抑えたよ・・・ああ非公開分も含めて25%だ
公開分だけなら40%位かな?え?まだ集めるの?
・・・・・・うん、OK今晩期待してるよ…
――愛してるよ百合子」
「奥様にお電話ですか?課長?」
「おお黒崎君、まぁ経過報告みたいなもんだよ」
「仲のよろしい事で」
「はははっ!まぁ我が家は夫婦円満だからなっ!」
「結構な事です・・・六道マテリアルですが、まだ気付いてないようですが
まだ集めるのですか?」
「ああ、あっちが気付くまでギリギリまでお願いだとさ・・・しかし・・・
あいつらここまでやられてまだ気付かないのか?六道家も危ないな、こりゃ」
「六道本家は全て非公開です・・・主要部門も一族で過半数保有してるので本丸は
難しいかと・・・」
「ああ判ってるよ・・・しかし百合子も厳しい振りして忠夫に甘いねぇ・・・
母親ってのはやっぱ息子には甘いものなのかな?黒崎君?」
「さぁ・・・ただ横島課長も奥様のことを余り言えないのでは?」
黒崎にしては珍しく薄く笑みを浮かべて大樹をからかう
「俺は義娘(むすめ)の為に頑張っているのさ黒崎君」
「ルシオラさん・・・ですか?」
「あの根性なしの忠夫をな・・・男の顔をするようにしてくれたんだ
――忠夫にはもったいない位だ」
タバコに火を付けて煙を吸い込む
百合子から電話が来たときは何事かとも思ったが・・・
まさかあの六道が忠夫とルシオラちゃんにねぇ・・・
「さて・・・じゃ残りもきっちりと買い集めるかね
・・・・・・ホントにあちらさんは気付いてないのか?」
「此方がダミー会社を介して分散買いしているのに全く
気付いていません」
「・・・・・・下手すりゃ今日中に乗っ取り成功するんじゃないか?」
「・・・課長なら可能かと」
「そうかね?・・・んじゃ――やっちまうか」
冥菜の誤算
それは"紅井"百合子が"横島"百合子になった事に関心を払わなかった事
――紅井百合子が手塩にかけて鍛え上げた横島大樹を完璧に無視していた事
彼の存在を全く無視していた事が六道家の一部門である六道マテリアル
が僅か1日で公開株の7割を世界各国に散らばるダミー会社を通じて
日本のある総合商社の手に渡ってしまうという事態になってしまった
事実上の乗っ取りが完成した事を大樹から告げられた百合子は
六道本家に"丁寧"なご挨拶の電話をかけた
「まぁいまさら挨拶も何も無いとは思うけど六道冥菜さんはいらっしゃるかしら?
"横島"百合子が電話してきたって伝えて貰えれば用件は判ると思うんだけど?・・・
・・・・へー、体調不良で寝込んでるんだ・・・いえ、そういう事なら結構ですわ
じゃあ起きたら伝えて置いてくださいな・・・ええ、
"次は無い"
と伝えていただければお分かりになると思いますので・・・ええ、ではお大事に・・・」
関係した全ての人間に六道家は緘口令を敷き
ルシオラに対して行った行為は全て"無かった"事としたが、
六道マテリアルが乗っ取られたと聞いて、冥菜は横島家周辺に手出しは無用とだけ
伝えたという・・・
横島大樹
"村枝の紅ユリ"こと紅井百合子の薫陶を受けその全てを引き継いだとされる
その能力は創業の人といわれた百合子に対し、守成の人と言われている
続く
はい第六話終了です
うわ・・・日付変わってる・・・
どうも(´ω`)です
今回はかなり冥菜さんに貧乏くじ引かせてしまいましたので
感想が正直めちゃめちゃ怖いです
かなり限界臭いので申し訳ございませんが
レス返しは代表してお礼を述べる事で代えさせていただきたいと思います
たくさんのレスを頂き誠に感謝に耐えません
拙い文章ですがもう暫くのお付き合いをいただければ幸いです
本当にたくさんのご意見ご感想誠にありがとうございました
ではまた次回あとがきでお会いしましょう
お休みなさいませ