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「リスタート 第二話(GS)」

(´ω`) (2007-05-06 00:26/2007-05-06 12:17)
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3月3日AM05:00

――パチリ

午前5時ジャスト
目覚ましが鳴った訳でもないのに横島忠夫(12)は目覚めを迎えた

「・・・習慣っつーのは魂で憶えてるモンなのか・・・」

いつもならこの時間に横島を散歩という名のマラソンに連れ出す狼少女が現れる

「・・・起きるか」

軽く頭を振って胸に湧きかけた感傷を霧散させてカーテンを開けベランダに出た。
肌寒さが妙に心地良い

雲一つないよく晴れた空が東の方から赤らみ始めていた


――リスタート――
  第二話


タッタッタッ――

午前7時の横島家前

町が動き始める準備を始めた閑静な住宅街に軽快な足音が響き渡る

「ふぅふぅ・・・当たり前だけどめっちゃ体力落ちてんな〜」

17歳と12歳のそれを比べること自体が無意味なのだと
解っていながら横島は一人ごちて家に入る

「ただいまー」

「え?忠夫?お前こんな朝早くにどこ行ってたんだ?」

「ランニングだよ、体力作り」

上下ジャージの横島が見て分からんかいと言いたげな目で大樹を見ると

「ヨコシマ?」

台所からルシオラが顔を出した

「あっルシオラ、おはよう・・・ってふおぉぉぉぉ!」

「ひゃっ!ど、どうしたのヨコシマ?」

突然奇声を上げルシオラを目を皿にして凝視する

「そ、その格好は・・・」

「え?あ、ああこれ?今朝食の準備をお手伝いしてたから
百合子さんに借りたんだけど・・・似合う?」

ルシオラは百合子から若い頃に着ていた服を――
昨日着ていたあのコスプレチックな黒スーツは色々問題があると言われ
百合子がクローゼットの奥から引っ張り出してきたブラウスにパンツ
という至ってシンプルな服装の上からエプロンを着けていたのだが――

「ル、ルシオラのエプロン姿・・・なんという新鮮さと破壊力・・・クッ!
い、いかん、いかんぞ横島忠夫っ!これは試練だっ!決意を新たに
した俺を試す為に天が下した甘美な罠っ!ああっ!しかしっ!
目の前に佇むこのアルカディアを避けて通る等という事が果たして
正しいのかっ!?そうっ!人は新たなフロンティアを恐れては
ならないのだっ!今この心に熱く滾るスピリッツを胸に横島忠夫は
新たなるステップへと第一歩を踏み出すべきなの「ガスッ!」
はぶしっ!!!」

台所から飛んできたフライパンが顔面にクリーンヒットして
横島は沈黙した

「朝っぱらから訳の分からない妄言を垂れ流す暇があったら
さっさと顔洗って歯を磨いて来んかいこのバカ息子っ!!」

声の主は推して知るべし

「あ、ルシオラさん、お皿並べてくれるかしら?」

「は〜い」

百合子に呼ばれ沈黙した横島を一顧だにせずルシオラは
台所に戻った


「フッ・・・無様だな、忠夫」

大樹もそういい残してダイニングルームへ歩を進めた


「お、男はフロンティアを目指すんや・・・」

その呟きを聞いたものはいなかった


「「「「いただきます」」」」

テーブルにはご飯・味噌汁・漬物に目玉焼きにおひたしと
これぞ日本の朝食というライナップが勢揃いしていたが・・・

「あれ?」

「どうしたのヨコシマ?」

器用にお箸を扱っておひたしを口に運ぶルシオラを横島は
不思議そうに眺める

「ルシオラってこういうの食べて大丈夫なんか?」

「ああそっか、ヨコシマと一緒にいた時は砂糖水ばかり
だったもんね。あの頃はエネルギー補給が最優先だったから
砂糖水しか飲まなかったけど別にあれしか受け付けない
ってワケじゃなかったのよ。もちろん甘いものは好物だけど
基本的に人間が食べられるものは何でも食べられるわよ」

そう言って漬物を食べて見せて「ね?」と笑いかけるルシオラ

「ルシオラさんは包丁捌きだって中々だったわよ?忠夫」

「ふーん」

そう呟いて味噌汁を一口啜る横顔を期待と不安が
混じった顔でルシオラが眺めているのに横島は気付いた

「な、何だよ俺の顔になんか付いてるか?」

「え?そうじゃなくてその・・・味噌汁・・・美味しい?」

「へ?あ、ああ、うまいよ」

「ホント!?」

「ホントだってば」

「良かった・・・」

「???」

「今日のお味噌汁はルシオラさんが作ったのよ」

「へ?マジ?」

「百合子さんに教えて貰いながらだけどね」

ズキュン!

頬をほんのり染めた嬉しそうなルシオラの表情は
横島の心にクリティカルにヒットした

「そ、そうか・・・うん、こらうまいっ!」

照れ隠しに朝食を掻き込み始めた横島と頬を染めるルシオラを
百合子は漬物をコリコリと音を立てて微笑ましげに眺めていたが・・・


「忠夫のクセに忠夫のクセに忠夫のクセに忠夫のクセに
 忠夫のクセに忠夫のクセに忠夫のクセに忠夫のクセに・・・・・・」


味噌汁が冷めるぞ大樹


「無様ね」


キャラが違います百合子さん


親の仇の様な瞳で自分の息子を睨みつつ出勤して行った大樹を
送り出すと、百合子は朝食の後片付けを終えたルシオラ
と横島をリビングに座らせた

「さてと、ルシオラさん、貴女のこれからの事なんだけど
貴女はこれから先どうするか考えはあるのかしら?」

「私は・・・私はヨコシマと一緒にいたい、としか考えてません
具体的に何をするかというのは正直まだ何も・・・」

「まぁそんな所でしょうね。でもこれからの生活の事も
考えなきゃいけないでしょう?そこで私から提案が
あるんだけど聞いてくれるかしら?」

「「提案?」」

「人間にならない?」

「「は?」」

「正確に言うと戸籍を取得しないかって事よ」

「つまり社会的に人間と同等の権利を持たないか
って事か母さん?」

「あら、忠夫にしては冴えてるじゃない」

悪いものでも食べたのかしらと一人ごちて
紅茶をかき混ぜる百合子

「ルシオラさん、私は貴女が忠夫と一緒に居たいと
言うことには反対じゃないの。むしろこんなバカ息子
を貴女みたいな人が選んでくれて感謝したい位よ。
でも、それならそれでキチンとけじめをつけて欲しい
というのも母親としての本音でもあるわ。無論貴女にも
都合というのが有るだろうし強制は出来ないけど」

「で、でもそんな事が「それに戸籍があれば社会的にも
正式に忠夫の妻と名乗る事も将来的に可能だし」是非
お願いしますっ!!!!!!!!!!」

「まてまてまてっ!」

「何だい忠夫、お前はルシオラさんと結婚したくないって
言うのかい?」

「ひどいわヨコシマっ昨日の言葉は嘘だったの!?」

既にその明晰な頭脳で「横島ルシオラの将来」の
明確なビジョンを構築しつつあったルシオラが
泣きそうな瞳で横島を見つめる

「そうじゃなくてっ!そんな無茶な事どうやる
ってんだよ!?大体寿命だって人間より遥かに
長いかもしれないのにどうやって誤魔化すんだよ!?」

「何言ってんだよ。お前のお友達には700歳のバンパイア
ハーフの同級生がいたって昨日話してたじゃないか?
その人は戸籍をもってないっていうのかい?」

「あ」

考えてみればその通りである。確かにピートはバンパイアハーフ
で厳密に言えば人間じゃない。しかしあいつは公的機関である
オカルトGメンに入ると言っていたしその為の資格を取るために
高校に入りGS免許も取得していた。しかし・・・

「で、でもどうやって戸籍なんか取得するんだよ?まさか
偽造するのか?」

「経歴はこっちで勝手に作るけど偽造なんかしないわよ
・・・・・・・・・・・裏技は使うけどね」

ビクッ!

急に室内の気温が下がったような気がして思わず
抱き合う横島とルシオラ

「まぁ私に任せておきなさい」

そう言って百合子はどこかに電話をかける

「#$%%&・・・・・・」

日本語じゃない言葉で誰かとやり取りをする百合子

「これでよし、と」

「ど、どこに掛けてたんだ?」

「日本の裏側にある国の大使館よ」

事も無げにそう言ってまたどこかに電話を掛ける

「あ、もしもし?横島百合子ですけどー元気だった?
ちょっとお願いがあるんだけど・・・いえいえ大したこと
じゃないのよ。ちょっと女の子の帰化申請を今日中に
認めてほしいなーなんて思ってお電話したの・・・
え?ホント?さっすが頼りになるわー・・・うんうん
大丈夫よーこう見えても百合子口が堅いんだから♪
あ、うん、じゃウチの旦那の部下がそっちいくから
よろしくねー♪」

「ハイ、おしまい」

「ど、どこに掛けていたんですか?」

恐る恐る尋ねるルシオラ

「この国で今一番偉い人の所よ♪」

にこやかに紅茶の香りを楽しみつつ応える百合子

ピンポーン

「あら早いわね」

そういって玄関に向かった百合子が戻って来ると
その手には封筒が抱えられていた

「じゃこれに名前を書いてね。あ、そうだ
名字と日本風の名前を付けないといけないわね」

「み、名字ですか?」

「そうよ。ルシオラだけじゃちょっとアレだしね
何かないかしら?」

もはや深く考えないことにした横島とルシオラは
自分を誤魔化すために名字と名前を真剣に考え始める

「・・・じゃあ「芦蛍」でお願いします」

「芦蛍ルシオラ・・・いえルシオラ・蛍・芦ね
良い名前じゃないの」

「あ、ありがとうございます」

「じゃ身元引受人は私にしておくわね」

そう言って百合子は書類に自分の名前を記入する

何も考えるな、考えたら負けだ
自分にそう言い効かせる横島とルシオラを
誰が責められようか

「はい、じゃこれで貴女は今日から南米某国から
日本に帰化した日系3世のルシオラ・蛍・芦よ
おめでとう♪」

「「は、はぁ・・・」」

ピンポーン

「あ、来た来た」

玄関から話し声が聞こえてくる

「・・・ご無沙汰しております紅井チーフ・・・いや横島夫人ですね
失礼致しました」

「黒崎君も変わりないみたいね、ゴメンなさいねこんな事
頼んじゃって」

「いえ、お役に立てて光栄です・・・」

「じゃこれを例の所に届けて頂戴ね」

「お任せください。・・・横島夫人、いえ、紅井チーフ
戻ってくる事はお考えではないのですか?」

「・・・村枝の紅ユリはもういないのよ。黒崎君」

「しかし貴女と横島課長が居りさえすれば我が社は…
いえ、出過ぎた事を申しました。お許しを・・・」

「いいのよ黒崎君・・・。ウチの人をよろしくね・・・」

「お任せください・・・では・・・」

・・・・・・・・・・・・


「ねぇヨコシマ・・・」

「ルシオラ・・・今は何も考えずに喜ぶんだ・・・
 考えたら・・・負けだ」

「う、うん・・・そうよね、これでいいのよね?」

「そうだ・・・これでいいんだ・・・くっ・・・」

「ヨコシマ泣かないでっ!泣いたらお日様に笑われるわっ!」

「ルシオラっ!」

「ヨコシマッ!」

互いに抱き合いその肩で涙を隠す二人だった


この日、南米某国から帰化した日系人"ルシオラ・蛍・芦"(18)が
誕生したがこの件に関わった関係者は何かに怯えるように
皆口を噤んだがこの件が問題になることは無かった


尚、ルシオラ・蛍・芦の先祖に魔族の血が流れており、彼女は
先祖帰りで霊能力があると書類の備考欄に記載されていたという


村枝の紅ユリ

村枝商事を日本を代表する商社の一つに成長させた影の功労者であり
日本のみならず世界各国の政財界にその名を轟かせた女傑である。
結婚して主婦になった現在もその影響力は計り知れない・・・


          続く


皆様こんばんわ(´ω`)です
リスタート第二話をお送りいたします

感想欄20(´ω`;)
正直なんていっていいのか・・・
皆様本当にありがとうございます
皆様の感想がいただけるということが
こんなに嬉しいものだとは思いもよりませんでした

皆様から頂いた感想を無駄にしないように努力していきますので
もうしばらくお付き合い願いますよう心よりお願い申し上げます

感想を頂いた皆様には心から感謝の言葉をお送りいたします

本当にありがとうございました

さて第二話ですが・・・
第一話の反響が凄かったのでちょっと怖いです
今回はもう百合子の独壇場ですね
書いててこれでいのかと悩みましたが
構想上ルシオラをGSにするという形にもっていくので
その為にはどうしても戸籍取得させねばならなかった為
今回百合子に頑張ってもらいました

次回は"あの人"が登場する予定ですのでいよいよ
横島×ルシオラコンビの本格始動です


呼んでくださっている皆様に楽しんでいただける
SSをモットーに頑張りますので
もうしばしのお付き合い頂けたら幸いです

ではまた次回のあとがきでお会いしましょう

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