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「闇に染まる 第十五話(GS)」

アイク (2007-04-04 19:34/2007-04-05 06:20)
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―第十五話 救いは存在するのか? ―


アシュタロスの言った一言、
『ルシオラは既に・・・君の中には存在しない』が横島の頭に何度も何度も繰り返し流れる。
まるで壊れたラジオやテープレコーダーかの様に。

理解したくは無い。しかし理解するしかない。
アシュタロス曰く、自分がアシュタロスを無意識に取り込もうとしているとの事。
ではルシオラは?
自分はルシオラの全てを・・・命だけでなく来世すら奪ったのか?
横島の心を絶望が支配する。横島とアシュタロスを包む闇が更に濃くなる。

「一応言っておくが、君がルシオラを取り込んだワケではないぞ?」

「・・・・・・・・・違うのか?」

重々しく言うアシュタロスに横島は不信感を抱かせた表情でアシュタロスの顔を見る。
アシュタロスがフォローのつもりでそう言ったのだと横島は思った為だった。

「ああ。君が取り込んだワケじゃない・・・・・・・・・
 人工授精、この単語を聞いた事はあるかね?」

「?それが何の関係が有るんだ?確か母体の体外で精子と卵子がうんぬんで受精卵を作る事・・・
 !?まさかっ!」

アシュタロスの突拍子も無く言った事に横島は素直にそう言い、
突如脳裏に浮かんだ答えに、嘘で有ってほしいと思いながらアシュタロスの目を見る。
アシュタロスは何も言わずに首を横に振った。

「残念だが君の考えている事は正しいと思うぞ。ルシオラは転生した。
 人が生み出した狂気の産物としてな・・・・・・・・・」

アシュタロスの一言に横島は俯きその肩を震わせる。
無意識の内に握り締めた拳はその力から白くなり、掌からは血が流れる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「それにルシオラはあの女に取り込まれているだろう」

「!?・・・・・・・・・・どういう事だ」

長い沈黙を保つ横島にアシュタロスは話を続けようとする。
横島の声音は地獄の亡者さえ振るわせる程冷たい。
横島は視線でアシュタロスを射殺さんとばかりに睨みつけた。

「私の消滅しなかった霊波片はもう一つあるという事だ。ただし、明確な人格を持ったものがね・・・」

「それがどういう・・・っ!まさかっ・・・!?」

横島はアシュタロスの言う事に一つの仮説を思いつく。
出来れば間違いで有ってくれと内心呟きながらだが。

「欠けた霊波片はその補充を求めた。そしてその対象となったのがルシオラだ。
 ルシオラ達は私の作品であり娘、私との霊基構造の相違点は非常に似ている。
 別にパピリオやベスパでも良かっただろうが、ルシオラが一番簡単に手に入るからな・・・
 彼女はおそらく山岡と関係がある者に近づきその体を奪い、魅了の魔眼でも使ったのだろう」

2人を包む闇が更に濃く、黒くなる。
横島の緋色な瞳は殺意や憎悪で冷たい光を内包し、その目つきは鋭いものとなる。

「そいつの名は・・・?」

「(これが“今”の少年の姿か・・・)
 言っていなかったかね?もう一人の私、名はアスタロト。神族名イシュタル」

横島は何も言わない。ただ虚空の闇の中睨むだけ。まるで闇の先に怨敵がいるかのようにだ。
何とかそう言った横島にアシュタロスは興味深く横島を見る。

「私に限らず多くの悪魔や天使は神話等の関係で様々な名を持っている。
 私は一説では“アスタロト”という名だ。だが実際は私一人、一体どういう事か?
 真実はこうだ。
 かつて私は2人いたのだよ。
 神話には書かれてはいないが、私が・・・イシュタルが堕天した時2つに分かれた。
 それがアスタロトと私、アシュタロスだ」

横島はただ静かに何も言わず聞いている。
だが、その心は暗く黒い意志がその大半を支配する。
2人を包む闇は横島の心を反映しているのだう、黒い何かが漂い始めた。
それだけでは無い。憤怒と憎悪をも反映し、闇が静かな地鳴りの様な音をたて、震え始めた。

「アスタロトはイシュタルと似たような性格をしていた。まぁ、私の元となったのもイシュタルだが、
 そうだな・・・・・・・・・簡単に説明すれば私とアスタロトは双子の兄弟みたいなものだ。
 まぁ違いとして、アスタロトはイシュタルのコピーとも言える存在で女性体だったが、
 何故かゴモリーだけが美女だと記されているが、それはまぁいい。

 それはさて置き、あれは神魔上層部がデタントの流れを作ろうとした時だったか・・・
 私が宇宙意志の存在気付いたのは・・・
 宇宙意志に気付いた私は神魔が反転した世界をシミュレーションし始めた。
 ちなみに私はアスタロトには魂の牢獄の事は教えなかった。
 アスタロトは私の3分の1程の力しか持たず、魂の牢獄には囚われていなかったからだ」

「アシュタロス。おまえとアスタロトの関係うんぬんはどうでも良い。
 おまえは何が言いたいんだ?早く言ってくれないか?」

アシュタロスが延々とアスタロトとの関係を言っていると、横島はひどく無表情に、
声音に苛立ちを込めそう静かに言う。

「ふぅ・・・全てを聞きたまえ。これはベスパやパピリオ達も知らない事で、知る者も少ない事なのだから」

「・・・・・・・・・早く言え」

一息いれたアシュタロスの言葉に横島は少し長めの沈黙の後そう言う。
諦めが少し表情に入っているのは疲れからだと思うが。

「では続ける。
 アスタロトがどうやら私のなおし忘れた宇宙意志関連の書類を見たようでね・・・
 先程言った通りアスタロトはイシュタルコピーの様な存在。
 彼女は私と違い、神族であった頃の事を引きずっていたのだ。そして・・・」

「要約すればその女は、おまえの計画に乗って神族に戻ろうとした。で、何が有った?
 普通はそのままじゃあないのか?」

アシュタロスは片眉をピクッと少し動かし、横島を静かに見た。
アシュタロスはしばらく何も言わずに沈黙を保つ。横島は何も言わずアシュタロスを見、言葉を待つ。

「・・・そうだ。究極の魔体の作成を始めた時だった。いきなりアスタロトの行動に不審な動きが有り、
 気付かれない様に私は秘密裏に調べたのだよ。結果はもう一体の魔体の作成だった。
 其れだけならば良かったのだが、厄介な事にアスタロトは技術の一部を魔界正規軍に流したのだよ」

「其れだけでおまえは処分したのか?」

横島は嘲笑と共に呆れた様子でそう言う。何時の間にか西洋風なテーブルと椅子が具現化し、横島は座る。
机の上にはクラッカーと紅茶が用意されていた。

「いくら君のイメージ通りに大抵は出来るがこんなモノを用意するかね?」

「いや、適当に机と椅子を用意しようとしたらこんなモンが出てきたんだよ」

「・・・・・・・・・文珠といい、魔力の扱いといい・・・君は本当に規格外だ」

「知るか・・・・・・こんなモンが出てきたのはおまえの影響だろう?」

横島の様子にアシュタロスは呆れる。
横島の我知らずな適当に言った言い分にアシュタロスは更に呆れながらも横島同様席につき、
紅茶を飲みながらアシュタロスはそう言う。アシュタロスの言い分に横島は投げやりにそう言った。

「どこまで話したか・・・そうそう、技術流出までだったな。
 確かに君の言う通りそれ程重大なモノで無ければ処分しない。
 だが彼女が流したのは魂の結晶に行き着くまでの試作型、魔族の魂製の結晶を流したのだよ」

「・・・計画が一部でもバレたのか?」

「いや・・・そうならない為に私はアスタロトを飲み込んだ。
 今になってから私はいかに軽率な行動だったとは思うが、そこまで焦っていたみたいだな
 まさか、消滅せずに私の中で生きていたとは思いもしなかったが・・・」

「で、メフィストを生み出して裏切られ、平安京から跳ばされて・・・
 色々やって、あの大戦になり・・・今に至ると?」

「そうなるな・・・・・・」

横島は自分の空になったカップに紅茶を注ぎながらそう問い、
アシュタロスの言葉にそう締めくくりなら聞くと、アシュタロスは疲れたようにカップを見、
カップの中身を全部飲み干しながらそう言った。

「ほれ・・・しかし、それじゃあなんで最高指導者は何もしなかったんだ?正規軍に売ったなら、
 何かしらのアクションが有っても可笑しくは無いだろう?」

「すまないね・・・
 確かに最高指導者から幾つかの問いが有ったが、身内の問題で私が処理した。とそう報告したよ」

横島は空になったアシュタロスのカップに紅茶を注ぎながらそう聞いた。
アシュタロスは横島に礼を言い一口飲むと答える。
横島はアシュタロスの言い分に首を捻り、不思議そうな顔をする。

「よくそれで納得したな」

「当時はデタントに移行しようと必死だったからね・・・
 こんな小さな事に気にかける余裕なんか無かったのだよ。私にとっては助かったがね」

アシュタロスの弁に横島は7割程納得した様で静かに紅茶を飲む。
アシュタロスの方も横島から何の追求も無い為紅茶を飲んだ。

「君は誰を恨む?」

「質問の意味が分からないな・・・」

アシュタロスの質問に横島は紅茶を飲みながら静かにそう聞いた。
アシュタロスはそんな横島のマイペースな反応に溜め息を付いた。

「私の起こしたあの事件で、結局君は誰を恨んだと聞いているのだよ」

「・・・なんでそんな事を聞く?」

「知りたいからではいけないかね?君の深層意識に今のところ住む私でも、君の事で知らない事は有る」

横島はカップを机に置き、アシュタロスを睨みつけそう言うも、
アシュタロスはプレッシャーの欠片も感じてない様で笑顔だ。

「はぁ・・・まあいい。俺は自分以外に恨んでねーよ。
 隊長やおまえも、恨んでいない。
 ただ、隊長には助言して欲しかったな・・・まぁ、それで何が変わると言えば分からんがな・・・
 妙神山とかに行けば確実におまえの計画は失ぱ・・・・・・・・・」

「どうしたのかね?」

横島は何かに気付いた様に言いかけで言うのを突如として止め、アシュタロスは興味深くそんな横島を見る。
横島の顔は嫌な事に気付いた様で顔を少し青くする。

「そうだよ・・・アシュタロス。なんで過去に戻った隊長は妙神山とかに行かなかったんだ?
 もし未来でおまえの起こす事件を神魔が知れば、行動するだろう?
 ルシオラ達は生まれないで、おまえの事は魔界で身内の事で、魔族が解決していたんじゃあないか?」

「たしかにそうだが?」

「まさかとは思うが・・・そんな事をすれば未来が不確定になるのか?」

「正解だよ」

横島の突然思いついた事にアシュタロスは笑顔でそう言う。
そんなアシュタロスの様子に横島は背中を嫌な汗が流れる。

「人界で起きたナ○スの様な事を時間移動で止めれば、別の所で似たような事は発生する。
 だが私の様な事を起こすのは、まぁ存在しないだろう。
 宇宙意志も自らを滅ぼす様な奴と似たような存在を許しはしないだろうしな。
 もし、何らかのトラブルで未来が変われば、
 彼女にとって既に起こった事は未定となり、完全に予測不能となってしまう。
 下手な助言で自分が知る以外の結果になるのは避けたいだろう。
 例えば君が、当時魔族となり、私の尖兵になるといった様な事でも起これば大変だ」

「おまえ、教師にでもなればどうだ?」

「生憎私は消滅が望みなんでね。お断りだ」

アシュタロスの説明は最後に出した例えに横島は理解する。
確かに、下手に動けば失敗する様なギリギリなバランスの下勝利したのだ。
失敗しない為には何もしない事が良い。

横島は表情を元に戻しそう茶化す様に言うが、アシュタロスはそれを笑顔で断った。

「・・・話を変えるが、俺が完全に魔族化するまでのタイムリミットは?」

「アスタロトが完全にルシオラを取り込むのと同じ位で、人界の時間にして約一年だ」

「ルシオラはまだ完全には取り込まれていないのか・・・?」

アシュタロスの言った事に本当に小さいが希望の光を見出した横島はアシュタロスに問う。
カップを持つ手は小刻みに震えている。

「恐らくだがね・・・まぁ奴も完全に取り込むまで君の前には出てこないと思う為、
 下手に希望を持てば砕かれた時何も出来ないぞ?」

「・・・・・・・・・そう、だな」

(アスタロトを抹消してもらう為にも、君の心が折られるワケにはいかないのだよ。
 君に私の負の遺産を処理してもろうのは気が引けるが・・・コレしかないと私は思うのだ)

アシュタロスは横島に一本の杭を刺しておく。
自分の望み、完全なる消滅。その為に横島という駒は自分にとって貴重だ。
アシュタロスの考えは場所が場所だが、横島に伝わる事は無い。

「さて、お喋りの時間はお終いの様だ」

「!?何だ?」

突如横島とアシュタロスが使っていた机と椅子が消え去り、
闇がまるで霧のが晴れるかの様に消えて行き、真っ白な世界となって行く。
そんな様子に横島は左右上下を見渡した。

「そうそう言い忘れていたが、君が上手くやればルシオラは復活するぞ。

 (君が目覚めた時、僅かに残っているルシオラの霊基構造を塊とした蒼の文珠を君の手に握らせておく。
  全てを語るには時間が少なすぎた。自分で考えろ。
  コレ以上私が助言をする事はもう出来ないのかもしれ無いのだから・・・)」

「!?おい!それは一体どういう事だ!」

アシュタロスの姿が見えなくなるとアシュタロスは突然そんな事を言った。
先程希望を捨てろと言ったのはアシュタロスだった。
その本人が言ったのだ。わざわざ希望の匂いを匂わせる様な事を。
完全なる矛盾、アシュタロスは一体何を考えているのだろうか?それを横島が知る術は無い。
もっとも、横島がこの自己中心的に近い考えで何を考えるかは不明だが。

「それは君が考える事だ。そうそう、私の事はベスパには内緒で頼むよ?」

「アシュタロス!!!」

視界が真っ白になり、横島は彼の名を叫んだ。だが返事は返って来る事は無い。


―後書き―
風邪を引きながらやってしまったアイクです。
アシュタロスうんぬんかんぬんはネットで調べたモノなんで。なんか知らんがそこが少し微妙。
女性化はオリジナルですがね。

さて、ラスボスの名前が出たこの話。どうなるかは作者の私も分かりません。

だって、ここからラストの物語を書いたメモを紛失しちまったんだもん!!!
    ↑
(かなりアホな発言)

てぇ事で、紛失した部分を考えねばなりません。
考えながら『狼さんシリーズ (タイトル)』(仮)の構想でも練りますかね〜
おキヌちゃんで行くか美神さんで行くか・・・18モノに挑戦しようかゆっくり考えます。

早く風邪が治ってほしいアホ丸出しなアイクでした。
書く暇があったらさっさと治せよって言わんといて下さい。書いてからミクロン単位で後悔中ですから。


〜レス返し〜
・アミーゴ様
 ついていない時に限って悪い事が続きますからね〜嫌ですが。
 二足の草鞋って単語の響きがなんか良いな〜って思います。
 だって、二重スパイみたいでカッコいいじゃない!?(←アホ発言)

・Dr.J様
 指摘ありがとうございます。貴方のレスで少々修正させて頂きました。
 参考にもなり、わざわざすいませんでした。

・February様
 横島の子供はどうなるか・・・それは秘密です。
 だってその方がカッコいいから!!!(←面白そうからでは?)
 っとそんな事はありえないと思う(多分)ので安心(?)して下さい。

・DOM様
 (ギクッ!)変身、ですか・・・変身というかなんというか・・・・・・
 とりあえずかなり後に分かります。(汗)

 エロはどう書いて良いのか分からない点が有るので、時間が少しかかりますんで御用者を・・・

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