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「闇に染まる 第十四話(GS)」

アイク (2007-04-03 15:18)
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―第十四話  理由と真実   ―

何も無い虚空の闇、深淵かつ静かな永遠なる闇の中に横島はただ一人立っていた。
いや、立っているという表現は正しくないのかもしれない。
何故なら上下感覚、平行感覚すら感じられないのだ。
自分がドコに立ち、歩こうとすれば歩けるのか、自分の体すら有るすらも分からない。

「ココはドコだ・・・・・・俺は何でこんな所に・・・・・・?」

横島はそう静かに言う。
その言葉はこの闇の中“自分”にのみハッキリと聞こえる。
だが、もし仮にヒトがいたとして、この声は届くのか?と問われれば答えられないだろう。

それ程暗く、深い闇なのだ。

「・・・?光?コレは・・・水晶か?」

そんな闇の中横島に向かう光を放つ拳大の球があった。ゆっくりとした速度だが、確実に横島に近づく。
球は横島が手を伸ばせば触れられる程接近し、その動きを止めた。
球は透明で限りなく澄んでおり美しい。

横島がそう呟くと、球は映像を映し出した。

「これは・・・美神さんやおキヌちゃん、ピートに神父、小竜姫様との出会い・・・・・
 GS試験や、香港での事にシロとの事にワルキューレにジーク、ヒャクメ・・・月での事も・・・」

球に映されているのは横島視点の記憶の数々、映ってはすぐに消え、次々と変えていく。
まるでビデオテープの早送りの様でもある。映されるモノに横島はただそう呟きながら見ている。

「ルシオラ・・・・・・」

映像は移り変わり、水晶は蛍の化身を映し出し、映像を進めるのを止める。
水晶に映る彼女は優しげな笑顔を浮べている。

だが、水晶は突然映像を変えた。

『恋人を犠牲にするのか!?目覚め悪いぞ!』

球が映し出したのはある事を第三者の視点から見せたモノだった。
そう言うのは、かの倒した魔神。その姿とセリフに“見ている”方の横島は、
この後に自分が言った事を瞬時思い出す。

『・・・今、おまえを倒すにはこれしかねえ・・・・・・!
  どーせ後悔するなら―――――
  てめえがくたばってからだ!!アシュタロス――――――!!』
・・・か」

『!!や・・・やめろ――――――――――――――――ッ!!』

見ている方は映っている自分と一緒に口調も同じくそう言った。
ただし、見ている方の横島の声音には明らかな嘲笑が含まれていた。いや、大半が嘲笑だった。

映像はアシュタロスの絶叫と共に消える。

「後悔・・・か・・・・・・馬鹿馬鹿しい。いくら後悔しても時間は戻る事は無いのにな・・・
 後悔してもルシオラが返って来るワケでも無い。
 後悔して、道化を演じて・・・何故だか拉致されて、人を殺して、おキヌちゃんを護れなくて・・・

 後悔に何の意味も見出せないのにこの時の俺はこんな馬鹿な事を言った・・・」

横島は自嘲気味にそう呟く。
映像を映していた球はその色を失い、いつの間にか周りの闇に溶け込んでいる。
虚空の闇は正に“今”の横島の心の現われなのだろうか?

「俺は、一体何なんだろうな?
 美神さんの色香でこの世界に迷い込んで色々な人達と出会って・・・霊能に目覚めて・・・・・・
 様々な事件に巻き込まれて、本気で好きになった奴をこの手で殺し、世界を取ってしまった・・・」

横島は先程見た思い出に自問自答気味に言う。
そして、今の言葉をもしルシオラが聞けばすぐさま頬を叩いただろう。

だが、ルシオラはいない。

だからそんな事は起こりえない。
横島は自己嫌悪、いや、嫌うどころか自分を憎んでいる。
横島がルシオラを殺したワケでは無い。
だが、横島は復活の可能性を、アシュタロスを倒す為とはいえ、自ら潰した事でそう思っている。

あくまで“もし”だが、横島以外の人物が魂の結晶を破壊したのなら横島はその人物を恨み、
復讐と称した八つ当たりでその人物に怒りや憎しみをぶつけたかもしれない。

だが、歴史に“IF”は存在しない。

存在する可能性は有った。だが過去に戻った美神美智恵が何の行動もしなかった為に失われた。

「無意味だよな・・・・・・・・・
 道化を演じないで妙神山で、これ以上失わない為に、後悔しない為に力を求めた方が良かったな・・・

 ふっ・・・そう思う事すらも無意味な後悔だな。
 誰かを憎めば、楽になれたのかね・・・?」

自分が呟いた事に横島は馬鹿馬鹿しいと鼻で笑う。そして、悲しそうに危険な事を口にした。

「私を憎めば問題無いだろう?少年?」

「さぁ、な・・・アシュタロス」

何時の間にか、横島の前にかの魔神、アシュタロスが悠然と、威風堂々と立っていた。
アシュタロスの言葉に横島は悲しそうに笑うのみだ。

「おまえを憎めば楽になれるのかもしれない。
 けどな・・・おまえがいなかったら美神さんやルシオラ、ベスパ、パピリオは存在しないんだよ。
 それに、ルシオラを最終的に殺したのは俺だしな。

 あのカスみたいにおまえが直接手を下し、最終的に殺したワケでも無いしな・・・・・・・・・」

「(矛盾だらけだな少年。だが、分からなくも無いな・・・
  君にメフィストやルシオラが惹かれたのが何となくだが納得出来たよ・・・)そうかね」

横島はただ無感情に言っていたが、最後の方におキヌが“殺された”時の事を思い出し、
無自覚に殺気を放ち静かにそう言う。
そんな横島の言い分にアシュタロスは内心思う事を口にはせず、そう短く言うのみだった。

アシュタロスが感じ、思った事は、アシュタロスが口にしない限り彼以外には分かり得ない。

「ところで、ココはドコだ?俺は死んだのか?それになんでおまえが俺の目の前にいるんだ?」

「そう一気に聞くモノでは無いな。順を追って説明しよう・・・・・・
 まず、君はまだ死んではいない。ここは所謂君の深層意識だ。
 そして私がここにいるワケは・・・単純に君が私の霊波片、魂の欠片を取り込んだ為だ
 まぁ、君の糧になる事で私は消滅出来る為大人しく取り込まれているんだがね」

横島は動揺も何もせずに目の前の魔神に問う。
アシュタロスはそんな横島の様子に苦笑いし、一拍子置き、静かに説明する。

「俺がおまえの霊波片を取り込んだ?どういう事だ?」

「・・・・・・君は私自身が倒された時、私の一番近くにいた。其れだけではなく、
 私の分身である究極の魔体すら君は倒してみせた」

「???それがどうしたんだ?そんな事で俺がおまえを取り込むなんて有り得ないだろうが・・・
 第一、究極の魔体を倒した時は美神さんと同期合体していたから、
 美神さんもおまえの霊波片を取り込むだろう?」

横島はアシュタロスが言う事に不思議とそう問う。
だが、アシュタロスの言葉に横島は更にワケが分からないといった顔をする。

「・・・対極模様の文珠は、君の霊力とルシオラの霊基構造で出来ていた」

「!?!?!」

「霊基構造に再び出来た穴を君は無意識の内に私の霊基構造で埋めたのだよ。
 君が私を取り込んだ理由は理解したかね?
 (まぁ、予備と言わんばかりに少々多めに取り込んだ様だがね・・・)
 その為にメフィストには何の影響も無いがね・・・」

アシュタロスはまるで今日の天気は良いか?といった何でもない事の様に重大な事を言う。
横島の思考は止まってしまっていた。
アシュタロスの言った事が、対極模様の文珠がルシオラの霊基構造で出来ていた。という事は・・・

「ちょ、ちょっと待ってくれ。じゃあ俺は・・・」

「君が何を言いたいのかは分かる。しかし、口にしても現実は変わりもしないぞ。
 口に出せば楽になるだろうが、それは甘えだと私は思うぞ」

横島が何かをいおうとするも、アシュタロスはただそう言い切り捨てる。横島は何も言わずに俯く。
顔を上げた横島に、アシュタロスの言う甘えの色は無くなっていた。

「そうだな。確かにそうとも言える」

「さて、説明を続けるぞ?
 君は私を取り込んでから変化が始まっていたのは分かっているかね?
 自分が道化を演じている事を理解し、以前の君ならば逃げる時に逃げず、
 更に、人間をああも簡単に殺しはしなかっただろう?演劇の様な演出もしなかっただろう?」

横島の見せた肯定の意にアシュタロスは機嫌が良いのかそう続ける。
アシュタロスの言葉に横島は考える。

ハマードに捕まった時の反応、おキヌを助け出そうとゴミの様に殺した人間の数、
八つ当たりと言わんばかりに殺し続けた自分。どこか殺しを楽しんでいた自分。
魔力を使い全てを薙ぎ払う自分、そんな自分に恐怖した自分。・・・・・・

アシュタロスの言葉で全てが一つに繋がった。

「俺の性格が大きく変わったのはおまえの影響か?」

「私はこれでも恐怖公と呼ばれた魔神だからね」

「・・・はぁ。まぁいい。俺が魔力が使えるのはおまえを取り込んだからだったんだな。、
 それから、あの魔力で出来た剣を出した時におまえは俺に何をやったんだ?」

横島の言葉をアシュタロスは笑みと共に肯定する。
そんなアシュタロスの反応に横島は何かを諦めたかの様に溜め息をし、そう問う。

「ふむ。まず君の霊基構造は私を取り込む事で魔族のモノに変わり始めたのだよ。
 私の意識が君の中で覚醒したのは君の強い憎しみが原因だ。
 まぁ、それはさて置き、君の体は魔力に適応していなかった。
 其れだけではないが、とにかく君の体は限界だったのだよ。
 そして、何時崩壊しても可笑しくは無い為、私は君が無意識に霊波刀を出す時君に干渉し、
 魔力で霊波刀を発現させた。まさか、物質化するとは思ってはいなかったがね」

アシュタロスは言った事に横島は考える。
アシュタロス曰く自分の体は魔力を使えなかった。あのヴァリアントとの戦いで魔力を使えなかったのは、
アシュタロスのサポートが無かった為と推察するが、地上で殺しまくった時には魔力で霊波刀を出せた。
ヒャクメの言った右手の魔族化に右手から出した魔力製の霊波刀。
アシュタロスの言う霊基構造の変化・・・
導き出される答えは・・・

「俺は魔族化しかけているのか?」

「その通りだ。まさかまだ人間の範囲で有り、半ば暴走気味とはいえあれ程の魔力を制御しきるとは・・・
 まったく君は規格外だよ」

「・・・・・・・・・褒めているのか?」

横島の一言に出来のいい生徒に喜々と教える教師の様な笑顔を浮べたアシュタロスはそう言う。
対する横島はアシュタロスの最後に言った一言にジト目でそう言った。

「ふむ?褒めているつもりなのだが?」

「そうか・・・・・・・・・ところで、ルシオラもココにいるのか?」

不思議そうにそう言ったアシュタロスに横島は何か話題を変えようと、
そしてふと閃き気になった事を問う。

横島の一言にアシュタロスの表情が曇った。

「アシュタロス?」

そんなアシュタロスの様子に横島は不思議そうに首を傾げる。

「ルシオラは既に・・・君の中には存在しない」

アシュタロスが重々しく言った一言に横島の時が凍りつく。
アシュタロスが横島に告げるべき事はまだまだ有る様だ。


―後書き―
更新がかなり遅れてしまった。風邪はインフルエンザじゃなかったから良いものの・・・
治ったらまたひいてしまった・・・
それですこ〜し寝込んでしまったアイクです。

一週間以内に更新出来るかな?

『シロVSタマモ 勝利したのは誰だ!』の続編を考えてます。
タイトルはDOMさんの『淫乱狼男食べ歩き忌憚』を採用しよと思いましたが、
確実18モノなタイトルなので却下します。DOMさんごめんなさい(土下座)

『狼さんシリーズ (タイトル)』←みたいな感じなタイトルにします。


〜レス返し〜
・アミーゴ様
 無能は無能なりに頑張るって奴で(←ヒドッ!)
 無駄な努力な気がしますがね〜(←もっとヒドッ!?)

・February様
 人間だろうが神魔だろうが気に入らないモノは気に入らないという奴です。

 >宇宙意思がドロッセルマイヤーに見えてきた・・・
  くるみ割り人形の、あの魔法使いみたいなオッサン(?)ですか?

・BLESS様
 まぁ、それでも一応は期待しましょうよ。無駄だとしても。

・七つ目玉様
 わざわざご忠告ありがとうございます。
 私の考えでは、悪意や他意が無くとも排除された者や悪者にされた者達は気に入らないとの見解です。

 自分を滅ぼす事の出来る人が隣や家にいたら安心出来ないでしょう?
 この言葉をどう受け取るかは十人十色で違うと思いますが、普通ならば逃げたりするでしょう?
 宇宙意志ならば、排除の形に行くというのが、私の考えです。

・DOM様
 ヒャクメの存在意義に無能というステータスが入っているとの事ですか?
 ヒャクメが活躍しても最後でドジってしまうのが主流ですからね〜

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