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▽レス始

「光と影のカプリス 第60話(GS)」

クロト (2007-04-04 18:51)
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 翌日の昼休み。除霊委員メンバーは使われていない教室に移動して、愛子の机の中で打ち合わせを行っていた。
 今日の話ばかりは、部外者に聞かれるわけにはいかないのだ。

「……つーわけで、日曜日に所長が学校調べてくれることになったんだけど、おまえんとこはどーだった?」

 と自分のところの説明を終えた横島がピートに話を振ると、齢700の半吸血鬼は少し考え込んだ後、

「……ええ、先生の見解も小山さんとだいたい同じでした。
 僕たちの手に負えないようなら手伝ってくれるって言ってましたけど、小山さんが調べてくれるならお願いしない方が良さそうですね」

 GS事務所が2軒で合同調査となると、人は相当大きな事件だと思うだろう。日曜日でも運動部の生徒に出くわす可能性はあるから、それは避けるべきだった。
 あとはどちらが引き受けるかだが、調査の仕事なら唐巣教会より小山事務所の方が向いていると思う。

「そだな。美神さんは何て言ってた?」

 横島はピートの意見に頷いて賛意を示すと、最後にキヌに報告を求めた。
 キヌはちょっとためらいつつも、

「あ、はい。美神さんもそんな感じのこと言ってました」

 と答えはしたがその続きは言えず、ひきつった笑いでごまかした。
 小竜姫と唐巣はこころよく無償協力を申し出てくれたというのに、彼女の雇い主だけが実にシビアな方針を示したからだ。経営者としては正しい姿勢といえなくもないのだが、現在の情勢では非常に肩身が狭い。
 その代わりに、ふと脳裏に浮かんだ疑問を口にする。

「でも横島さん。小山さんとか唐巣さんに来てもらうんでしたら、校長先生の許可とかがいるんじゃないですか?」

 その意見はもっともなことで、横島も考慮せざるを得ない。

「うーん、それはそうだけど避けたいところだよなあ……じゃあ夜中に忍び込むか?」
「夜でも宿直の先生がいるわよ」

 しかし彼の次なる提案も、今度は愛子の指摘であえなく撃沈した。愛子は夜中も学校にいるので、そうした事情にも詳しいのだ。
 うぐぅの音も出ない横島だったが、次に発言したタマモは恋人だけあって彼の味方であった。

「じゃあ、小山さんに角モードになってもらうっていうのはどう?」
「それだっ!」

 逆転の妙手に横島がぽんっと手を打つ。小竜姫は香港の時は角の姿になっていても外界の状況はきちんと把握できていたから、あの時と同じようにポケットに入っていてもらえば、人にみつかる心配をせずに見て回ることができるのだ。
 タマモは除霊委員活動にあまり関心はないが、今回は自分の身の安全にかかわることだから真面目に考えたのである。

「そうね、それだったら横島君とタマモちゃんが私に勉強教わりに来た、っていう建前もつくれるし」
「やかましいわっ!」

 愛子も笑いながらタマモの案に賛成したが、横島は怒声でもって答えた。自分とタマモの名だけが出された理由を彼もはっきり自覚していたからである。
 ただ名前が出なかったキヌの方は逆に表情を暗くした。
 確かに成績は悪くないからわざわざ日曜日に学年が違う愛子に教えてもらいに来るというのは不自然だし、調査の仕事に自分がいてもたいして役に立たないことも分かっている。しかしひょっとしたら横島といっしょに「仕事」できるのはこれが最後になるかも知れないのに参加できないのはちょっと寂しい。
 しかしキヌは純朴そうに見えても令子の薫陶を受けている身、窮地に陥ればとっさの機転も利くのである。

「それだったら、日曜日より平日の放課後の方がいいんじゃないですか? この前の仕事の事後調査とか理由つければ、校内歩き回っててもおかしくないですし」

 これなら人目を気にせずに堂々と動き回れるし、キヌがいても怪しまれることはない。「理由」もある意味本当だ。

「……そだな、それが1番いいかも」
「そうですね。それなら全員でやれますし」

 数秒ほど脳内で検討した後、横島とピートもキヌ案に賛成する。
 そのあと小竜姫とも打ち合わせた結果、調査は2日後の木曜日に行われることになったのだった。


 当日の放課後、除霊委員メンバーは予定通り横島たちの教室に集合していた。級友たちはすでに帰るか部活に行ってしまっていて、残っているのは彼らだけだ。
 角モードの小竜姫はタマモの制服の胸ポケットに入っている。横島の胸ポケットだと目立ってしまうし、かと言ってズボンのポケットでは多大な差し障りがあるからだ。万が一股間の辺りに落ちてしまったらもう生きていけない。

「俺は一向に構わんのやけど、うちの所長もシャイだからな。まあそーゆーとこも可愛いってゆーか」
「死なせますよ!?」

 竜女神さまの怒りの念波が激バカ少年を強打する。まったく、言うにことかいてこの男は!
 カリンがいれば速攻でお仕置きしてくれていただろうが、今は引っ込んでいるのが残念だ。
 その低く冷たい声色に横島は震え上がって、

「じょ、じょーだんですって所長。そ、それよりこの教室に何かおかしいとことかありますか!?」

 とすかさず話題を変えてごまかす。もしピートの危惧が正しいなら、いつも彼らが授業を受けているこの教室に何らかの異常があるはずなのだ。
 小竜姫はこのさい横島を徹底的に説教しておきたかったのだが、みんなの前ではやはりまずいと自制して、普通にその質問に答えた。

「そうですね、校門からこの教室に来るまでに受けた感覚だけでも、この学校が霊力の溜まり場になっているのは分かります。
 ただ、これが原因だとはまだ言い切れませんね」
「他に理由があるということですか?」

 ピートにとってそれは光明とも言える見解である。思わず身を乗り出して訊ねた。
 小竜姫の方は対照的にごく冷静な口調で、

「あるかも知れない、と言うことです。建物の形状とか、魔法陣のようなものが原因になっている可能性もありますから。
 たしか横島さんは覚えがあるんじゃなかったですか?」
「へ……ああ、そう言えば」

 しばらく記憶をさぐった横島は、十秒ほどしてようやくその事件のことを思い出した。
 令子の所にいた頃に冥子と合同でマンションの除霊をした件と、初めてカリンを呼び出したマネキンの除霊の件である。そういえば以前小竜姫にも話したことがあったような気がするが、よく覚えていてくれたものだ。
 これはもう俺への愛(以下略)と叫びたいところだが、今ここでやるのはあらゆる意味で間抜けである。横島は煩悩をクールダウンして、再び仕事のことに思考を集中させた。
 なるほど、ああしたモノが原因ならばタマモやピートに責任はない。ただこの見解は、タマモたちが転入した直後から霊障が増え始めたことへの説明にはならないと思う。
 横島がそう言うと、小竜姫は感心したような様子を見せた。

「そうですね、ただこれも今のところは可能性の話ですから。とりあえず、校内をくまなく歩いてみましょう」
「はい」

 と横島が素直に頷く。どちらにせよやらねばならぬことだ。
 橙色の夕日が差し込む校庭を5人揃ってのてのてと歩いていると、ときどきまだ残っていた運動部の生徒が何事かと訊ねてくる。その度に先日キヌが挙げた建前を言うのだが、そうすると彼らは簡単に納得して部活動に戻って行った。

「タマモとおキヌちゃんのおかげで助かったな。日曜日とか夜中とかだったらもっと追及されてたぞ、きっと」
「いえ、どう致しまして」

 キヌがうれしそうににっこり微笑む。生き返ってからは横島の家に行くことも少なくなっていたので、こうして彼に感謝してもらえる機会はまれなのだ。

「でもそれらしいものは見つからないわね……」

 愛子も小竜姫の仮説には期待をかけていたのか、しかしそれがなかなか現れないので逆に気落ちしかけていた。

「あるとしたら建物の中だと思いますよ。もう少しがんばりましょう」

 とピートは励ましたが、しかし結局、校舎すべてを回っても霊障の原因になりそうなものは見つからなかった。


 日がほとんど落ち切って暗くなりかけた屋上に集まった除霊委員メンバーの顔色は、一様に疲労よりも失意の色が強かった。
 けして小竜姫のせいというわけではないが、1度希望を出されてからそれを打ち砕かれると、最初からそれが無かった場合よりも落ち込んでしまうのだ。

「……やっぱり、僕たちのせいなんでしょうか?」

 ついに覚悟を決めたピートがタマモの胸ポケットの中の小竜姫にそう訊ねる。そしてかえってきた返事は、やはり予想通りのものだった。

「そうですね。今見て回った限りでは、それ以外の理由は考えられません」
「そうですか……」

 ピートががっくりとうなだれる。それほど強い霊は引き寄せられて来ないとはいえ、いつ自分たちのせいでケガ人、あるいは死者が出るかと思うと気が重くなる。やはり妖怪が人間社会にとけこむのは無理だったのか?
 しかし今は、直接責任のないキヌの方が積極的だった。いや責任がないからこそ、心に重荷がない分すばやく反応できたのだろう。

「何か方法はないんですか? 小竜……小山さん」
「ええ、もちろんありますよ。かなりの努力が必要な代わりに根本的に解決できる案と、すぐ出来る代わりに対症療法でしかない案と、どちらから聞きたいですか?」

 血走った眼で詰め寄ってくるキヌに、小竜姫は慈母のようにやさしく安心させるような、それでいてちょっと悪戯っぽい口調で答えた。最初に話を聞いてから3日間の猶予があったのだから、ピートの懸念が当たっていた場合のことも考えておくのは当然のことである。
 普段の姿ならさらなる頼りがいで女神さまの株価急上昇が期待できたと思うが、まあみんなが困っている時にそんな俗っぽい事は求めるまい。

「え?」

 キヌはあまりに余裕ありげな小竜姫の返事に一瞬ぽかんとしたが、その内容を理解するとくいっと当事者たちに顔を向けた。
 ピートたちもきょろきょろと顔を見合わせあっていたが、やがて言い出しっぺのピートが代表で、

「では、すぐできる案の方から」

 と即効性のある方の説明を先に求める。その場しのぎでもいいからとにかく早く霊障を解消したい、というのが人情というものだろう。
 小竜姫も本当に意地悪をする気はないから、すぐに説明を始めた。

「はい。ピートさんたちは学校にいる間のほとんどの時間をあの教室の中で過ごすわけですから、教室から妖気が漏れないように結界を張ればいいのです。
 完全に遮断してしまえば、浮遊霊の類が引き寄せられることはないと思います」

 もともと若い男女が大勢集まる場所だから、ピートたちが教室から出ている間に放散される分くらいは彼らが放散する霊気(オーラ)に混じって希釈されるから問題あるまい。

「ただそのままですと教室の中に妖気と霊気がこもってしまいますので、ときどき吸印札か何かで吸収してやれば良いでしょう。その後1度結界を解除して『換気』するとなおいいですね」

 さすがは再修業中の身とはいえ霊能修業場の管理人、その方策には微塵の隙もなかった。結界札や吸印札は買うと高価な代物だが、自分たちでつくればほぼ無料だ。
 しかしかなり手間がかかるのも事実である。このメンバーではぐーたら度No1のタマモが手を挙げて発言権を求めた。

「それだったら、私たち自身が妖気を抑えるアイテムとか身につけてればいいんじゃない?」

 と、それはそれで良案かと思われたが、小竜姫は同意しなかった。

「いえ、もともと放散されていたものを外力で押さえつけるのは体に良くありません。短時間ならともかく、ほぼ毎日8時間近くになるのでしょう?
 ―――さて。こう言えば『かなりの努力が必要な代わりに根本的に解決できる案』の内容も分かりますね?」
「修業して妖気をコントロールできるようになれってこと?」

 タマモがげんなりした口調で答える。なるほど自力で抑える分には制御や解放もできるわけだから体に悪影響はないだろうが、それを習得・実行するのはたいへん面倒くさそうだ。
 が、ここで不埒にも恋人のはずの横島が敵に回った。

「いーじゃねーかタマモ、今後のこともあるんだし。
 つかおまえいつも俺がお札書いてるときTV見たりお菓子食ったりして遊んでばっかだろ。ちっとはマジメに修業とかやれ。
 結界札までつくれとは言わんから」

 横島がお札を書くのはアイテム作成と霊能修業をかねた重要な習慣だったが、タマモはTVをイヤホンで聞くくらいの配慮はするものの、書写に付き合うとか手伝うとか、そういう殊勝なことはぜんっぜんしてくれないのだ。
 以前カリンがお札を書いていたときに横島がそばでエロ本を読んでいたのを彼女が不快がっていた理由がよく分かったが、別に意趣返しをしているわけではない。実際にタマモのためになることなのだから。

「う゛……」

 タマモは内心で唇をかんだが、小竜姫と横島の勧めは彼女のためを思ってのことで、単に面倒だというだけでは論破できそうにない。
 まあ横島といっしょに真面目にがんばるというのも悪くはなさそうだけれど、言われたから大人しくそうするだけというのは何となく面白くなかった。

「タマモチョップ!」
「いてっ!? な、いきなり何すんだおまえは!?」
「あんたが知る必要はないわ」
「大いにあるわぁぁぁ!!」

 横島は咆哮したが、ここで梅干とかベアハッグで逆襲するわけにもいかない。
 今夜はいぢめちゃる、などと意味不明な決意を固めつつ、この場はおとなしく引き下がった。
 そしてその間にも議事は進行していく。

「でも小山さん、私が教えてもらいに行ってもいいんですか?」

 愛子は訓練でどうにかなるならぜひ習いたいところだったが、それでも態度が控えめなのはまったくの部外者の自分が頻繁に押しかけては迷惑にならないだろうかと不安に思ったからだ。

「そうですねぇ……」

 問われた小竜姫は軽く首をひねった(角モードだが)。
 愛子のことをわずらわしいなどと思いはしないが、机をかついで事務所まで来させるのも何だし、むろん自分が学校に行くのも差し障りがある。

「では私は横島さんとタマモさんに教えますので、愛子さんとピートさんは横島さんたちから習うようにして下さい。
 こうすればタマモさんも手抜きできませんからね」
「な、何だってー!?」

 唐突な御託宣に横島がM○Rな悲鳴をあげる。
 小竜姫としてはこれは会心のアイデアで、タマモは意欲が低そうだし教師役は荷が重いが、横島も一緒にやらせれば問題は両方とも解決するのだ。タマモもちょっとは真面目にやらざるを得ないし、教師役は横島にやらせればいい。
 彼にとっても霊力コントロールの修業になるから、決して無意味なことではないし。
 横島は小竜姫の意図は読めたが、この流れでは拒めそうもない。彼女の再修業は順調に進んでいるようだ。

「と、とにかく。これでみんな安心して学校にいられるんですから、めでたしめでたしってことじゃないですか?」

 キヌが脂汗をハンカチでぬぐいつつ、何とかそうフォローして場を締めた。


 家に帰った横島は入浴と夕食を済ませたあと、脚の間にいるタマモを片手で抱っこしながらTVを眺めていた。もう一方の手はデザートのお揚げプリンを自分とタマモの口に交互に運んでいる。1日の仕事を終えた後の優雅な休息のひとときだった。
 皿洗いを終えたカリンがやって来て隣に腰を下ろしたので、ちょっとばかりグチをこぼしてみることにする。

「はー、所長もきっついよなあ。何で俺まで霊気抑える修業しなきゃならんのだろ。いや、事情は分からんでもないけどさ」

 ピートや愛子が小山事務所に通うのは問題があるし、逆に小竜姫がそう何度も学校に来るわけにはいかない。しかしタマモが教える側に回るのは無理だろうから、横島が同席して教え方を覚えるのが手っ取り早いというのは理解できた。
 しかし横島はタマモたちがこの技術を習得するまでの間、結界札と吸印札の生産枚数を倍増させるという仕事もあるのだ。恋人と友達のためとはいえ、ちと負担が重すぎるのではないだろうか。

「そうでもないぞ。超加速の練習をする時間は減ったから、その分を宛てればいいんだから」

 カリンは子どもをあやすような口調でそう答えた。
 後遺症で動けなくなる時間も減るから、その時間をお札生産増に使うこともできるのだ。

「あー、そりゃそーなんだけどさ」

 横島も頭ではわかっていた。ただ仕事が増えたので、ちょっとグチってみたくなっただけである。その相手として、自分の一部というのは非常に適任であったから。
 カリンはフフッと小さく笑うと、横島の肩にころんと頭を乗せかけた。

「まあ、がんばれ。私もできる限り手伝ってやるから」
「ん、ありがとな。ところで思いっきり話が変わるんだが、前に所長と責任取って結婚って話があった時に寿命の話が出たろ。
 タマモもやっぱ500年とか千年とか生きたりすんのか?」

 妖狐の寿命は800歳とも言われるし、封神演義に登場する姐妃(だっき)は千年の女狐だった。ならここにいるタマモもそのくらい長生きするのだろうか。
 急に話を振られたタマモはびっくりして目をしばたたかせたが、質問にはちゃんと答えた。

「そうね。はっきりした年数は分からないけど、人間よりはずっと長いと思うわ。長いから幸せとは限らないような気もするけど……。
 でもそれがどうかしたの?」

 不老長寿はみなの願うところだが、自分だけそうなってしまうと親しい者たちとの別離は避けられず、最後には1人になってしまうからだ。
 もっとも前世の記憶をなくし、現世では横島より年下の今のタマモにはあまり実感の湧かない話であったが……。

「あ、もしかして私を1人で残していくのがつらいとか、そーゆーこと考えてくれたとか……?」

 どうにもならない事ではあるが、もしそうなら大変うれしい。
 しかし彼女の恋人はしょせん煩悩魔人、タマモの希望は半分以下しか満たされなかった。

「んー、まあそれもあるっつやーあるんだけどな。
 でもそれより、奥さんがずっと若いままなのはすごくいーんだが、俺が老けちまうとHを拒否されたり浮気されたりしねーかってちょっと気になってな」
「「…………」」

 カリンもタマモも開いた口がふさがらない。このバカはいったい何年先のことを真顔で喋っているのか?
 それでもタマモのことを少しは気にしているのはこの男にしては上出来だ。そう思ったカリンは、少しだけ話に乗ってやることにした。

「まあ、おまえにやる気さえあればタマモ殿や小山殿と同じ時間を生きることもできるがな。
 菅原道真公のように死後に神界に迎えられるのは無理だろうが、小竜気を操る私たちなら生きたまま竜族になることは可能だと思う」

 などと横島をたきつけるような事を言ったのは、そうしてもらえばひょっとしたら「自分が出ている時は横島の霊力がなくなる」というデメリットが解消されて、自由に行動できるようになる方法も見つかるかも知れないからだ。横島の影法師である事は決して嫌ではなく誇りを持っているくらいだったが、それとこれとは別の問題である。
 神魔族は幽体が皮をかぶったようなもの、と言われるが、彼らの性質は仙道(仙人になる修行法)でいう「陽神」に近い。要するに超強力な小竜気のカタマリをつくって、そこに自分の意識を乗り移らせれば竜神横島の誕生である。うまくすれば竜神カリンもつくれるかも知れない。
 気が遠くなるほどの修業が必要なことでもあるし、大して期待はかけていないけれど……。

「んむ……!?」

 煩悩一直線な話をいきなり悠遠な未来構想の話に変えられた横島が目をぱちくりさせて首をかしげる。突然ではついていきがたい難度だったようだ。
 腰を落ち着けてゆっくり考えてみようとしたところで、後ろの押入れが予兆もなしに爆発した。

「わ……!?」
「むぎゅっ!?」

 横島とタマモは成す術もなく爆風に背中を叩かれて思い切り前屈&畳への頭突きをかますハメになったが、さすがにカリンは素早く振り向いて2人をかばう形で戦闘態勢に入っていた。

「何だ、いったい!?」

 もうもうと立ち込める白い煙を油断なく見据える。そしてそれが晴れた後には、27、8歳くらいのスーツ姿の青年がうずくまっていた。
 横島によく似ていたが、知っている顔ではない。

「こ、ここは……アパート? ……じゃないな。どこなんだ!?」

 青年はきょろきょろと室内を見渡していたが、やがて横島の姿を見つけると急になつかしそうな顔になって肩をつかもうとしたが、

「何者だ、どこから入ってきた?」

 と鼻先にでっかい刃物を突きつけられて硬直した。見れば黒いチャイナ服の女の子が、即死ダメージ必至っぽい凶器を持って鋭い目で自分を睨みつけているではないか。
 青年は横島とタマモのことは知っていたが、この少女には見覚えがなかった。

「き、君……誰!?」

 両手をあげながらも訊ねてみるが、少女の反応はやはり冷たかった。

「それはこちらの台詞だ、不法侵入者」

 言われてみればもっともである。青年はのっそりした動きでスーツの胸ポケットから運転免許証のようなものを取り出すと、指ではじいて横島の方に飛ばした。言葉で説明するより物的証拠を示した方が早いと思ったらしい。

「ん、何だこれ、GS免許証か……? なになに、氏名:横島忠夫、交付年月日:平成14年5月13日、だと……!?」

 横島とタマモはそろって腰を抜かした。


 ―――つづく。

 先にネタバレしておきますと、最後に出てきたのは原作のタダスケです。タダスケはアシュ編を経験してなさそう→並行世界アリの世界観→この世界に来るのもアリかと考えてしまいました。
 ではレス返しを。

○naoさん
 お久しぶりです。
 小竜姫さまは皆に騒がれるどころか角モードでしたorz
 当然予想外の来客など現れず……。

○遊鬼さん
 鬼道君の新技なんて考えつきませんでしたのです(酷)。
 まあ復讐にまみれた人生よりは幸せなのではないかと。
 学校でのお話は実に穏やかに終わってしまいました○(_ _○)

○通りすがりのヘタレさん
 タマモうどんは横島の好みにもかなりヒットしてるものと思われます。ちっ、横島のくせに(ぉ
 おキヌちゃんは根性で出番をゲットしましたですよ。しかも次の話にも出られる……かも知れません。
 鬼道君の成長は林間学校編で見られる……のかな?? 横島君がお仕置きされるのは確実でしょうけど(笑)。

○minoさん
 GSルシ読破お疲れ様でしたー。楽しんでいただけたようでうれしいです。今作も今後ともよろしくお願いします。
>きっとタマモは『具』ではなく『器』なのでしょう
 横島が妄想したのはもちろんそちらの方でしょうな。
 なんでこんな男が好かれるのか筆者にも理解できません(笑)。
>小竜姫の訪問で横島の高校の霊障問題は解決するのか?
 あっさり解決してしまいました。だって本当はえらい竜神様ですから(ぇー
 林間学校は今しばらくお待ち下さいー。

○whiteangelさん
>着々と小山事務所が横島色に成ってきてますね
 実質的に横島が経営者なので致し方ありません(笑)。
>学校
 横島君がチョップくらう程度で終わってしまいました。
 ラストミッションだったというのにorz
>サーヴァント情報
 ここの横島君は「煩悩の丘」を持ってませんので、サーヴァントは養えないのです。むしろSLG風のステータス表示になったりして(ぉ

○ばーばろさん
>タマモンのひくつき
 彼女も乙女でありますからヽ(´ー`)ノ
>いぁ、じゅうぶんにあるでしょう。「俺と所長の一夜のロマンス」発言は
 結局横島はタマモに燃やされるかカリンにぼこられるか2つに1つだったわけですなw
>タマモ丼とカリン丼
 いや、人に譲るくらいなら筆者みずからやります<超マテ
 横島君はあの場で口に出さずに済んだのはラッキーでありました。
>鬼道は小竜姫さまにすっきりさせてもらえたのか
 ああっ、そんなことマジメに考えてしまったら小竜姫さまの清純なイメージがぁぁぁ。
>「ミニスカ生足」でアクション
 すいません、無理でした○(_ _○)

○Februaryさん
>タマモうどん
 2号と3号はちゃんと中身も書きたいところですねぃ。具や器になってはくれないでしょうけど(笑)。
>「大怪獣タマモドン」と「大怪獣カリンドン」
 横島君はシバかれるのが好きみたいですし、自分から呼び出そうとするかも知れませんな。

○読石さん
>タマモさんも相変わらず嫉妬深いと仰っていますし、嫉妬妻カリンさんて感じですねぇ
 嫉妬深いというのは横島のことだったのですが、なるほどそういう見方もアリですか!<マテ
 たとえ1人だけでも浮気を許すというのは、日頃の折檻沙汰とはうらはらに寛大なご処置でありますな。
 横島君も心を入れ替えて2人一筋にすればいつの日かダブル丼も……?
>タマモうどん壱号
 すいません、登場しないので細かい設定はないのですorz
「前半合ってる」というのは「おまえが具になってるように聞こえる」というくだりです。「てんぷらうどん」とか「肉うどん」とかと同じ感覚だと思って下さいませ。

○UEPONさん
>つまり横島じゃなくてタマモのハーレムw
 逆転の発想ですな、すごいっスー。
 両刀使いにしてフタマタ(?)とはさすが傾国の美女。
 横島も3(ピー)できるなら不満はないでしょうし(ぉ
>カリンでも違和感ないけど
 や、やっぱりそうなのでせうか!?
>林間学校
 止め役の美智恵さんがいませんからねぇ。
 果てしないカオス状態が恐ろしいことになりそうです(^^;
>壊れたテレビの直しかたですかw
 おお、分かってくれる方がいた!
 横島の扱いなんてそんなもんです(酷)。
>まずは校長に立ち入り許可を貰わないと〜〜〜
>「除霊委員+ゲストの小竜姫さま」
 なるほど、それは確かにそうですね。
 実はその辺まったく考慮してなかったんですが、本文はそれを念頭に置いて書きました。
 ご意見ありがとうございました。

○内海一弘さん
>おキヌちゃん
 自力で出番を勝ち取る!そうでなくてはこの生き馬の目を抜く二次SS界で生き残ってはいけぬのですよー(激違)。
>派生型のカリンうどんと小山うどん
 横島のくせにー!
>横島の存在を知っていながら小竜姫様に依頼する鬼道…。チャレンジャーですねぇ
 冥子の暴走よりはマシだと思ったのではないかと。
 最悪の場合は横島は簀巻きにして、仕事はカリンと小竜姫だけに頼むという荒業もありますし(ぉ
>横島の学校は林間学校って無いんだろうか
 修学旅行とかはやると思いますけど、原作では無かったですねぇ。
 女湯を覗くとか定番のイベントもありますのに。

○KOS-MOSさん
 ここの横島君は相変わらず幸せであります。何故こんなにも?(笑)
 学校の調査は平和裏に終わりましたが、その分次回はどたばたさせたいと思いますー。

   ではまた。

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