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!警告!ダーク、バイオレンス有り

「闇に染まる 第十二話(GS)」

アイク (2007-03-21 21:46)
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―第十二話   変わり果てた姿   ―


「っ!ジークさん!なぜですか!?」

「それが最良だと判断したからです」

おキヌの所に転移した小竜姫達。
小竜姫は真っ先にジークに詰め寄り文句を言う。
一方のジークは、そんな小さい事は関係ないと言わんばかりに切り捨てる。

「あ、あれ?なのね〜」

「ヒャクメどうしたんです?」

「横島さん、隠蔽効果の有る守護結界を張っているのね〜」

「それが何か問題が?」

ヒャクメの困った様な声に小竜姫はヒャクメに聞き、ヒャクメの答えにジークは更に聞く。
ただの結界だと心配し、隠蔽効果を加えるのは別におかしくは無い。

「問題といえば問題なのね〜
 横島さんが解く為の文珠を渡してくれなかったから、結界をどう解くか考える必要が有るのね〜
 純粋な力押しはダメなのね〜。
 そんな事をしておキヌちゃんを吹っ飛ばしてしまったら元も子もないのね〜」

「・・・ピンポイント射撃で小さな穴を開け、そこから壊すのはどうでしょうか?」

「少し危険だけど、横島さんの状態を考えたらそれが一番良いかもしれないのね〜」

ヒャクメの言葉にジークは少し考えた後すぐに案を出す。
その案は結界を力任せで吹き飛ばすのでは無く、ヒビか穴を開け、少し不安定にし、
そこから破壊する手法だった。
力任せには変わり無いが、ただ吹き飛ばすよりは安全だ。

「まぁ、少し不安定になれば十分なのね〜。結界の基点さえ分かれば解く事はできるのね〜」

「・・・そういえばあなたは、呪術や結界を解くのが得意だったわね」

「忘れていたんですか?」

ヒャクメの言葉に思い出す様に言った小竜姫にジークはヒャクメを気の毒に思いながら言う。
同じ情報を扱う者として同情しているのだろうか、少々自虐気味に思っているのかもしれないが、
ジークの背中は少し煤けていた。
ヒャクメもヒャクメで背中が煤け気味だ。

「さ、さっき言った横島さんの状態というのはどういう事なの?ヒャクメ?」

「確かにそうですね」

2柱の作り出すイジケ気味な暗い雰囲気に焦った小竜姫は、話題を変える事で誤魔化そうとし、
横島に起こっている事を少し理解している様なヒャクメにその話題を振る。
ジークは軍人としての意地で復活し話題に食いつく。
一方ヒャクメも珍しく真面目な顔をする。

「どうしたの?ヒャクメ?」

「横島さんじゃないけど、オチャラケは無しで言うわ。
 横島さんは魔族化しかけているの。
 しかもそれだけじゃない。自分の持つ魔力が体を侵食されているわ。つまり・・・
 横島さんはもう長くないの」

「「「!!!」」」

口調を真面目なモノに変えたヒャクメの言った事は軽いものでは無かった。

ヒャクメは言ったのだ。横島の持つ時間が少ないのだと。

小竜姫は純粋に驚き、ジークも驚きはしたが、じっ・・・とヒャクメを見ている。
結界内のおキヌも同様に驚く。
出る事も、外部とのコミニケーションは出来ないが、外で何が起こっているかは分かる為だ。

「待って下さい。
 先程のヒャクメさんの驚き様はソレだけじゃ無いんじゃあないじゃあないんですか?」

「そうね。確かにソレだけじゃ無い。
 横島さんは人体実験の被検体にされ、それで出来た傷等を霊力で治していたみたいなの。
 でも人間の細胞分裂の回数は決まっていてるのね〜

 霊其構造もボロボロ、体もボロボロ・・・
 そんな体で戦った横島さんはハッキリ言って・・・
 なぜ生きているか分からない程弱りきっているのね〜」

「「「・・・・・・・・・」」」

ジークの問いにヒャクメは律儀に言う。口調もいつの間にか元に戻っており、
悲しみ等も滲み出ていた。

分からない。

それが彼等に共通する横島への思いだ。
何故そんな体になりながら山岡を殺そうとする横島が・・・
おキヌの心配をしながらソレを自分達に任した横島が分からない。

「横島さんは、命を削って戦ったのね〜今も止まらないで戦うのね〜
 しかも横島さんは、多分魔族化による心の変化に自分に対する恐怖を少し感じているのね〜」

「無理矢理止めない限り止まらないって事?」

「そうなのね〜」

あの短時間で横島の心を少し覗いたヒャクメの言葉にはただ気の毒な色を含んでいる。
小竜姫は止まれない横島に対する悲しみ感じる。
2柱のやり取りをジークは静観するのみ。

「そろそろおキヌさんを救出して脱出しましょう」

「そうするのね〜」


そうして彼等は行動を始めた。


――――――――――――――――・ ―――――――――――――・―――――――――――――


そのころ横島は地上に出ようとしていた。横島は不用意に出ず、両手に文珠を出していた。
目を瞑り集中している横島にワルキューレは静観しながら最高指導者の言葉を思い出す。


最高指導者の間にいるのは、最高指導者とワルキューレの2柱のみで、
少し薄暗く大きい飾り気のあまり無い部屋だ。

「ええか?おまえの任務は横島忠夫を魔界に連れて来るこっちゃ。方法は別に何でもええ」

「斉天大聖老師にどう説明すれば良いでしょうか?」

「心配せんでええ。神界には話をつけてあるさかいに、何も考えんとやればええんじゃ」

最高指導者の言葉にワルキューレは疑問に思う。
最高指導者みずから言う任務を受けるのは軍人としては名誉有る事だ。
そして、任務に疑問を思うのは軍人としては間違っているともワルキューレは思っている。

どうも、何かを感じるワルキューレ。

「別に横島忠夫を取って喰うワケとちゃうぞ」

「分かりました。問題有りません」

そんなワルキューレの疑問と心配を解消するかのように最高指導者は言う。
ワルキューレは疑問などを振り切り任務を受ける。


「ワルキューレ。見物は離れて頼むぞ」

「分かっている」

横島は両手に持つ文珠に【爆】と込めワルキューレの方を見ずに静かに言った。
この時、横島の目には優しさ、慈悲は無く、ただ殺す。その意志だけの双眸だ。

「3・・・2・・・1・・・」

ドオォオン!

「「「!?敵襲〜!!!」」」

「やはり来たかっ!」

「ああっ!」

ワルキューレに行動すると伝える為に横島はカウントし、文珠を発動させる。
いきなりの爆発に多くの人間は少しパニッ気味になるが、横島が来ると考えていた2人は冷静だ。
2人の名は、片方はアンデン、もう片方はリリーマンといい、ハマードの部下だ。
2人は我先にと逃げる。

ドォオオン!
    ドゴォォオォォォォン!!
             ドカァァァァアアアアン!!!


「おおおおぉぁあああぁぁぁぁぁあああああ!!!」


「「「「「「ぎぃいぃぃぃいぁああぁぁぁあぁあぁあああ!!!」」」」」

横島の咆哮と、文珠による爆撃と爆音が大地を震わせる。
逃げ惑う人間の集まりに投げられた【爆】の文珠は彼等を吹き飛ばし、焼き、破壊する。

さらに横島は文珠で強化した体で彼等の体を素手で引き裂く。

「!?魔力が・・・
 はぁぁああぁぁぁぁああああああああああああ!!!」

そんな時だ。横島が再び自分から魔力を感じたのは。
横島は気合を入れる様に咆哮をあげ、魔力を捻り出す。
黒い輝きは横島の右腕を先の凶悪のフォルムへ変える。

激痛は無い。

「うぉおぉぉぉぉぉおお!!!」

ドォォォォォオオオオン!

「「「「「ひぃぃぃぃぁああぁぁあぁぁっぁああああ!!!」」」」」

横島の獣の様な咆哮と共に爆音が響き渡り、さらに人の断末魔の叫びが響く。

横島の右手が人を裂き、左手から出された【爆】文珠は爆炎で吹き飛ばす。
次々と破壊する。

ズダダダダダダダダダダダ!

「死にたくない!死にたくない!!死にたくなっ、ぎゃぁぁあああぁぁぁぁぁあ!!!

恐怖から必死に応戦する者の姿もあった。
だが横島の前ではただの雑魚。
魔の右腕に引き裂かれ、場を赤く彩ったのみ。

破壊を指揮する横島の両手。
無慈悲な破壊音である爆音を建物等が倒壊する音が音に高低を付け、咆哮が音質を変え、
発砲音が音を多様化する。
多数の人達の悲鳴や断末魔が彩り、異なる音が統合され一つの曲と化す。

死のオーケストラ。

演奏は終わらない。

(これが“あの”横島か・・・?)

ワルキューレは空から見る横島の所業に、変わりように唖然とする。
自分の記憶から変わり果てた横島の姿に。
当時の情けなさは、魔獣の様な咆哮からは感じさせない。
優しさは、オーケストラを奏でるその姿からは知らせない。
バカをやっていたアホ面は鋭い目と鬼の様な形相となっている。

「おい!早くしろ!」

「分かっている!」

先程一目散に逃げた2人組は飛行機の中で言い争っていた。
飛行機のエンジン音に気付かない人間はいない。

「邪魔だ!」

異形と化した右手から放たれた黒い光は剣と化し、横島はその出力を増しながら全てを斬る。
ひたすら漆黒の霊波刀を振るい、斬り、断つ。

何時のまにか横島は飛行機の前に立つ。

「っ!おい!」

「轢き殺せば問題ないだろう!」

焦るアンデンに自分を激励する様に叫ぶリリーマン。
飛行機の前輪が横島に迫る。

「斬り裂く」

「「「なっ!?」」」

横島は文珠【巨】を発動させ霊波刀に使う。
霊波刀はその大きさを巨大化させる。
天を斬り裂かんとする高出力、高収束率の漆黒の巨大な霊波刀を横島は無慈悲に振り下ろす。

「「うわぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁあぁあ!」」

ズシャアアアアッ
         ズッドォォォォオオオオオオン!!!

アンデンとリリーマンが最期に見たのは己に振るわれた漆黒の光。
光は彼等を飲み込み、飛行機を断ち、塵と成す。

「がはっ!?・・・まだだ!まだ終わりはしない!」

そんな時横島は血をいきなり吐く。だが止らない。止まりはしない。
血を吐き、その目から血の涙を流し、毛細血管が破裂したのだろか、
体のいたる所から血を噴出しながら巨大な霊波刀を横薙ぎに振るい、全てを灰燼と化そうとする。

「馬鹿な・・・人間がこれ程の力を振るうだと?私の最高出力の3倍以上だぞ・・・?
 まさか最高指導者様はコレを予期していたのか?」

ワルキューレは自分の見の前の光景が信じられなかった。
人間の限界を超え、上級魔族並の戦闘力を発揮する横島に戦慄を覚える。

そして、最高指導者が自分に課した任務は重要で、それと同時に恐ろしいモノだった。
万が一この攻撃を喰らえばワルキューレの命も危うい。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

ワルキューレがそんな事を考えている間に、横島の方は殲滅を完了した様だ。
全てが残骸、完全に形を変え、荒れ果てた大地。
その大地を赤黒い血が鮮やかに色どる。
様々な残骸が地に刺さり、それが墓標に見えない事もない。
そんな中力無く立つ疲労困憊、立っているのがやっとのボロボロな横島。
横島の荒い呼吸音がやけに大きく感じさせる。

暗かった空がゆっくりと明るくなる。夜明けだ。

「はぁ・・・はぁ・・・ぐっ・・・」

ドサッ・・・

横島は終に地に沈んだ。
そんな横島をワルキューレは何も言わずその体を持ち上げる。

「!?・・・軽い。こんな体で・・・」

ワルキューレは理解出来ない。
成人男性の平均体重以下のこのボロボロな体でこれ程の破壊行為を成した横島が・・・
何を思い、行動したか分からない。
己の腕の中で力無く眠る横島の存在を理解出来ない。

「・・・寝顔は意外と可愛いものだな。
 っ!?こうしている場合じゃない。しっかりするんだワルキューレ大尉!任務中だぞ!」

つい横島の寝顔に見入った自分を叱咤し、ワルキューレは魔界へ帰還する。
その様を見ていた存在は多数いた。
その1つは魔界、最高指導者の間の主だ。

「ククク、期待以上の存在になりそうや・・・っ!
 クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

水晶で横島の、死のオーケストラを見ていた魔界最高指導者は実に楽しそうに笑った。
その部屋には鎖で拘束される光の玉があるのを知るのは彼だけだ。


―後書き―
自分も忘れ掛けていた奴2人を出しました。憶えている人はいないだろうな〜
もうすぐ一段落がつく。少し展開が速いかな?
ジークやヒャクメ、小竜姫の口調でかなり悩んでしまった・・・もっと精進せねば!!!

短編を何か書こう。自分的に面白いネタを見つけたから。

でも時間が無い、かな?微妙だけど上手く時間を調節したら書けるから問題ないか?

では失礼!

〜レス返し〜
・February様
 はい。山岡は残念ながら・・・そして、お約束は大事です。
 おキヌちゃんが死んで、大体4,5時間てトコですかね。
 文珠2つ消費で1つより長くなってます。
 原作より効果の持続時間が長いのは半魔族化している為と思って下さい。

・DOM様
 ヒャクメにも少しカッコいい(?)様子を入れてみました。でも、なんか微妙?

 最後の手段でサイトで直に見るしかないですかね?結構疲れますが・・・
 全部読むのに俺は休み無しで頑張ったけど、途中でリタイア。
 3日かけて読みました。我ながら情けない・・・

・アミーゴ様
 し、しまった〜!素で間違えた!!!
 実は何話かでこういう口調でいこうと考えながらキー打っていた為か間違えた・・・

 確認してから投稿すればよかった・・・

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