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!警告!バイオレンス有り

「闇に染まる 第十話(GS)」

アイク (2007-03-15 03:33)
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―第十話  覚醒  ―

一瞬だが時は止まった。
山岡と横島はただ唖然と横島の右腕だったモノを見ている。

「キュエエエエエ!」

「しまった!」

その一瞬が時として命取りとなる。
ヴァリアントはその翼を広げ、爆炎から飛び出し横島に強襲した。
目はギラギラと怪しく輝き、その速さを更に速くなっている。
ヴァリアントの強襲に気付いた横島だったが遅かった。

ドスッ

「ぐっ・・・」

ヴァリアントの右手の爪は横島の腹を貫いた。
横島は大きく目を見開き、激痛に苦悶の声を洩らすが、それは一瞬の事。

横島はすぐさまヴァリアントを睨みつけ、
文珠を1つ取り出すと【斬撃】と込め、
左手に使い左手刀で自分を貫いているヴァリアントの腕に、
力任せにおもいっきり振り下ろし斬る。

ドシャッ

「キュギュエエェエエ!」

「おまけだ。受け取れ!」

ヴァリアントは右腕を斬り落とされ、更に怒りを増したのだろうか、
大きく吼えながら横島を蹴ろうとし、
横島は文珠を1つ出してヴァリアントの足下に転がし、
そして左の手刀でヴァリアントの胸を貫こうとする。

ガッ  ドン!

「くっ・・・がはっ」

「キュギャギャギャ!」

横島の手刀はヴァリアントに届く事は無く、横島は蹴飛ばされ、
その身を大きく壁に叩き付けられ、
横島は力無く床に沈みそうになる体に無理に力を入れ耐えようとするも、
横島は片膝を付き、口から血を吐いた。
風穴の開いた腹からも止めどなく血は流れている。

そんな横島をヴァリアントは襲わない。

否、襲えない。

足下に在る文珠は【縛】の文字が浮かび、拘束している為だ。
ヴァリアントはもがき、拘束から逃れ様と必死になっている。

「はぁ・・・はぁ・・・くぅっ、
 く、くくく・・・山岡、おまえの自信作はこのザマだ。
 おまえの番だ。殺す・・・」

「ひぃいっ」

横島は幽鬼の如く立ち上がり壊れた様な笑みを浮かべ、荒い息を整え、
【塞】の文珠で無理に塞ぎ、【治療】の文珠でその無理を無くし、傷を治す。
今の横島の目は正に修羅の如く、そして羅刹の様でも有り、
そして同時に手負いの獣・・・否、手負いの魔獣だ。

その体からは殺気が霊気と混ざり合い、放たれている。
その重圧は山岡を再び恐怖のどん底に突き落とす。

山岡は腰が抜けたのか立とうとするも立ち上がれない。

横島は山岡の目の前まで歩いて行くと、
文珠【斬】の効果が持続している手刀を山岡に振り下ろそうとする。

「グル、キュギャア!」

「なに!?」

(い、今だ!)

ヴァリアントは喉を鳴らすとその口から霊波砲を放つ。
先程の霊波砲と比べると3分の1以下の威力だが、破壊力はかなり高い。

横島はヴァリアントの喉を鳴らす音に気付き、咄嗟に振り返り、
自分に向かってくる霊波砲に体を捻る事で避ける。

山岡はそのスキに手足をバタつかせる様に動かし、
横島から、死を振りまく者から逃げる。

「詰めが甘かった。って、なっ!?」

「キュギャ!キュギャ!キュギャア!」

横島は自分の詰めの甘さに情けなく感じながら、
再び山岡を殺そうと逃げる山岡の方へ向こうとした時、
ヴァリアントが霊波砲を横島に3連射したのだ。

(ちっ、読みも甘かったか。
 もう体力、霊力共に残り少ないってのに・・・)

横島は霊波砲を避けながら内心己への苛立ちを洩らす。
先程ヴァリアントを殺さないでいた事が完全に裏目に出た。

そんな横島に奇妙な感覚が襲った。

(なんだ?これは・・・?落ち着いて、いく?)

横島には全てがスローモーションに見え、
それと同時に心が落ち着き、頭が冷える。
そして何故だろうか。走馬灯の様に脳裏に映像が奔る。

この施設に連れて来られるまでの記憶。

両親、幼馴染、美神達との出会い、霊能の覚醒、猿神との修行・・・
そして散ってしまった蛍の化身・・・

(ルシオラ・・・)

夕日が好きだと言ったルシオラ。そしてその笑顔。
愛しいルシオラの笑顔。

それが蛍火に輝き蛍の様に散っていく。

思い出すのは自分に後を任せたルシオラの顔。
死を覚悟しながらも自分に後を任せたルシオラ・・・
その姿が先程銃で撃たれ、倒れるおキヌの姿と重なった。

ドクンッ

心臓が再び強く脈打つ。
心臓から血液と共に何かが横島の体に駆け巡る。

ドクン ドクン ドクン

(これは・・・さっきの剣と同じ?じゃあコレは魔力?
 力が・・・湧いて来る・・・
 !?これは!?・・・ぐっ!)

心臓が強く脈打つと共に、横島の枯渇していた霊力の代わりに、
魂が生産した魔力が補充される。
そして、強い何かが横島を襲った。

憎め!怒れ!そして破壊せよ!
破壊せよ!破壊せよ!破壊せよ!全てを破壊しろ!

それは強力な破壊衝動だった。だが不思議とその衝動は急速に収まる。
横島は気付いてはいないが、黒だった右目も左目同様緋色に変わっている。

「キュルウアァア!」

ちょうどその時、【縛】の文珠の効果が切れ、
ヴァリアントが咆哮をあげながら横島に襲来する。

(俺は左手一本だろうが、首だけになろうが、魂だけになろうが関係ない。
 山岡を殺すまで、おキヌちゃんを生き返らせ、
 美神さんの・・・皆の所に帰すまで俺は死ぬわけにはいかない。)

「はぁぁぁぁ」

横島は息を吐きながら魔力を左手に集中させ、
左手版の栄光の手を発現しようとする。だが・・・

「っ!?くっ」

魔力は集まりはするが放出は出来なかった。
そして、ヴァリアントの蹴りが横島を襲うも、
文珠【盾】を使う事で一瞬止め、再び【縛】を使い拘束する。

「グルルッ キュルア!キュルア!キュルア!」

「くそっ・・・このままじゃあ逃げ切られちまう」

拘束されたヴァリアントは慣れたのか霊波砲を連射し、
横島はそう呟きながら霊波砲を避け続ける。

(しかたがない。霊気はどうだ?)

横島は物は試しと、左手に栄光の手を纏おうと試す。
結果は問題なし。
先程発動したのと寸分変わらない籠手が発動した。

(なんで魔力じゃ駄目なんだ?
 まあ今はいい。今はコイツを殺さねぇとな)

バチ、バチチッィ!

横島は左手に文珠【強化】を使った。
先程と同様蒼い雷光を纏う。
ただ異なるのは霊波刀を出していない点だ。
横島の『霊力』は底を付いていた為だ。

「キュギャア!キュギャア!キュギャギャ!」

「はぁ!」

横島はヴァリアントが放つ霊波砲の嵐を、傷を作りながらも突破し、
その左手でヴァリアントの胸の中心を貫こうとし、
標的である胸の中心を見据える。

蒼い雷光を纏った一撃。
先の雷光を纏った霊波刀はヴァリアントの左腕を断ち、左側の頭を貫いた。
故にコレがヴァリアントを十分殺せる一撃。
更に今のヴァリアントは文珠により拘束されている。

この一撃は必殺の一撃。

そして横島はこの必殺の一撃を放つ。

「キュギャア!」

「くっ!このクソ野郎が!」

だがヴァリアントは文珠の拘束を力ずくで解き、
更には左腕を再生させ、その爪で逆に横島の頭を潰そうとし、
横島はその一撃を避けたものの、体勢を大きく崩す。

「キュア!」

ザュゥ ドフッ

「っ!」

ヴァリアントは掛け声と共に左手を振り落とす。
横島は避けきれず左肩を大きく裂かれ、
ギリギリ繋がっている状態となる。
更に横島のノーガードな腹に蹴りが決まる。
苦悶の声を洩らしそうになる横島だが、腹への一撃で声も出ない。

そしてヴァリアントは横島の頭を潰すべく、貫くべく、
左ストレートを放つ。

(俺は死ぬワケには・・・)

横島には自分へ放たれた拳が見えている。
だが避けようと思うも体は少しも動かない。
迫り来る死・・・

「死ぬわけにはいかねぇんだよ!」

ドクンッ

「ぐ、ぐがぁああああぁああああ!」

横島が己が意志を叫ぶと同時に心臓が大きく脈打った。
横島の体を魔力が更に蹂躙し、激痛が襲う。
喉が裂けんばかりの絶叫。
緋色の瞳が妖しく輝き、黒い魔力が横島の体から噴き出す。

「キョエ?!」

ヴァリアントはそれを危険と判断したのか下がろうとする。
だが動けなかった。

3度目の拘束。
地面に輝く文珠は2つ。【拘束】でヴァリアントの動きを完封する。

バキィッ

「ギョア・・・」

黒い魔力をその身に纏った横島の左拳が正確にヴァリアントの顎に当たり、
骨の折れた様な音がし、ヴァリアントは弱弱しい声を洩らす。
そして魔力が一つの形を成した。
それは黒き右手。
調度失った肘の少し上まで覆う漆黒の手甲。
攻撃的に所々鋭利に尖り、鬼の手の様な硬質感を持ち、
それを見る全ての者に魔を思わせる。
横島の緋色の双眸は虚ろに近い。
だがその目には純粋すぎる殺意が込められている。

ズドォッ

「ギョ、ギョアッ・・・」

横島はその右腕でヴァリアントの胸を貫き、腕を抜く。
紫の、ヴァリアントの血をその身に浴びる。
そして横島の右手には脈打つ拳大の赤い玉。
ヴァリアントは自分の核と言えるモノを摘出され、
そして、文珠の呪縛により動けないヴァリアントは膝を付く事も許されない。

ピキィッ

「ギョガァッ」

横島は右手の玉を強く握り、その玉にヒビを入れる。
鬼の様な爪が玉に食い込む。
ヴァリアントが苦しそうに顔を歪め、苦しそうに鳴いた。

「これで、終わりだ・・・」

バキャッ

「グギョギョギャアァァッァアァアアアアアア!!!」

横島はそう静かに冷たく呟き、玉を握りつぶす。
核を砕かれたヴァリアントは断末魔の叫びをあげ、
煙の様に、まるで最初から無かったかの様に消え去った。


―後書き―
やっと十話まで来た〜我ながら更新が遅くて情けない。
文章量もたいして多くは無くて、普通だと思うんだけど、少ない方なのか?
そう思って少し増量してみました。
でもあまり変わってない。
シロとタマモを出すか迷ってます。
どうしよう?

更新が更に遅くなりそうで怖い。

〜レス返し〜
・アミーゴ様
 何度か挫けそうになってもなんとか踏ん張ってます。
 呼び捨ては・・・気にしないでいいですよ。

・February様
 >サレナって何語なんだろう?
 確かに、其れは気になりますね。
 気になって調べてみたんですが・・・結果は不明。
 たぶん類語だと思うんだけどな〜

 親子喧嘩で一番酷いのは美神親子だと思うんですがね(笑)
 世界大戦になりそうで怖い。

・内海一弘様
 横島の体の件は後々書くんで、気長に待って下さい。
 大した秘密じゃあ無いですがね(苦笑)

・DOM様
 なぜ外道が出ると!?
 ええ出ますよ出しますよ。クサカベもシンジョウらしき奴も、
 あとあのハゲも。名前を借りただけになりそうで怖いですがね。
 ダーク一直線から、
 少し息抜きに萌えを実験的に入れたい今日この頃ではありますがね。

 >明人×瑠璃派
 同志よ。としか言えませんね。俺もそうなんで。
 ラピスも良いんですがね。
 Benさんの『時の流れに』は読みましたか?
 物凄く良い作品で、読み応え抜群ですよ。

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