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「栗色の髪の少女 横島! 第一話GS)」

秋なすび (2007-03-04 00:34)
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─本作品にはTS要素が含まれています、ご注意下さい─


アシュタロス戦役から早2ヶ月。世界の混乱も概ね落ち着いてきている。まぁぶっちゃけ世界がどうなろうと、そんな事気にしてやる義理はないが、これが懐を直撃する問題でもあるのだ、特に悪霊の数!正直困るものは困るのである。ただでさえ戦役終結後しばらく仕事もなく、どうしようもない無為の時間を横島クンを張り倒しつつ過ごしていたのだ。いい加減安定してもらいたいものである。
言っては何だが、この稼業は他人の不幸は蜜の味的な部分がある。唐巣先生やオカルトGメンの連中などはどうだか知らないが、他人の不幸がなければ我々は幸福になれないのである。世は並べて事も無しでは大変困るのだ。あぁ…特にエミとかエミとかエミの不幸なんて最高よね。どっかにエミの不幸落ちてないかしら!ないなら作ってやればいいのよね!よく言うでしょ?”災いを転じて福となす”って。(エミの)災いを上手く活用して(私の)幸運へつなげるのよ!……何か方向性を間違えてきたような気がしないでもないけどどうでもいいわ。
とにかく、最近は特に悪霊関係の事件もあまりなく、そう言う意味で不幸になる人もあまりいないようである。しかし、身内の不幸は案外近くに落ちているものらしい。しかも、これがなかなか看過し得ないような大きなものが…


ふと私は自宅も兼ねている事務所の寝室で目を覚ます。
窓から差し込む一筋の陽光──小鳥のさえずり──かすかに聞こえる雑踏の音──けたたましい男どもの叫び声────叫び声!?


何人もの男の叫び声がこの寝室まで聞こえている。間違いなくこの叫び声はこの事務所の前あたりが発信源のようだ、しかし「開けてくれ〜!」とか「出ておいで〜!」とか「触らせてくれるだけでいいから〜!!」とか聞こえてくる…なんのこっちゃ?
寝床から抜け出し窓から外を見やると、そこには男どもが事務所の前で押し合いへし合いしながらたむろしている。十人以上いるであろうか。
それを確認すると、私はこの事務所のもう一人の主であり私に従事している渋鯖人工幽霊一号に話しかけた。
彼(彼女?)はこの事務所を依りしろとする人工幽霊である。


「人工幽霊一号、外で何かあったの?」
『おはようございますオーナー。どういうわけかはよくわかりませんが男性が大勢ここへ押しかけています。結界で進入を防いでいますが…。それよりオーナー、横島さんが来られております』
「横島クンが?」
『はい、どうやら少しご様子が優れないようです』
「そう、わかったわ」


そう言うと軽く着替えを済ませ応接室へと向かった。
横島クンのことはどうでもいいが、男どもの叫び声がとにかく耳に障る!
それにしても、横島クン今日はバイトも入っていないはずだし、こんな朝早くからどうしたのかしら…?
そうこう思いながら応接室のドアを開けるとそこには、ソファの上で蹲る肩下辺りまである明るい鮮やかな栗色の髪で、ぶかぶかなデニムのジャケットとジーパンの袖と裾を捲り上げた姿の少女が俯き、両耳を両手で塞ぎ何やらぶつぶつと呟いていた。俯いているため顔は見えない。少女の側には、その姿をおろおろしながら見つめているおキヌちゃんがいた。


「…誰、その子?」


おキヌちゃんに訪ねてみるが


「み〜〜か〜〜み〜〜さ〜〜〜〜〜〜〜ん!『ごす!!』ぴぎゃ!!!」


おキヌちゃんが答える前に私に気づいたその少女は突然私に躍りかかってきた。
その姿に横島クンの影が脳裏に浮かび、私は反射的に右カウンターを彼女の顔面に放ってしまっていた。


「「あ…」」
「きゅ〜…」


しまった…


「だ、だいじょ「きゃ〜〜〜!横島さ〜〜〜ん!!しっかりしてください〜〜〜!」え…?えぇ!?」


おキヌちゃんはすぐさま、白目をむいて気絶してしまった少女の襟元をつかむと、叫びながらゆさゆさと揺さぶり始めた。


今なんて言った…?


「あ…、もしかして横島クンの妹さんとか?」


横島クンに妹がいるなんて聞いたことはないが…


その少女は見る限りでは中学生くらいだろうか。
格好はどっかで見たことがあるようなものだが、どう見ても横島クンには見えない。しかし、どことな〜く似ているよ〜な気がしないでもない…か??
未だおキヌちゃんがかっくんかっくん揺さぶっているせいで顔が良く見えないんだけど…


「横島さあ〜〜〜〜ん!」
『オーナー、どうやら彼女が横島さんご本人のようです…』


少女の脳をシェイクするのに余念がないおキヌちゃん。必死なためか反応がない。代わりに人工幽霊一号が答えてきた。


「…どういうことよ?」
『わかりません。しかし、霊波を観察するかぎり横島さんに限りなく似ています。』
「え?あ〜そういえば…でも似ているってことは、違うところがあるってこと?なら本人じゃない可能性の方が高いんじゃない?」


実のところ私は霊視はそれほど得意ではない。霊波だけで正確な人物判断などできない。
しかし、この少女からぼんやりと感じられる霊波は確かに横島クンのそれである。もし人工幽霊一号の言葉がなければすっかり信じていただろう。


『しかし、ご本人が「横島だ」と名乗られたもので…。申し訳ありません、うかつでした。外の様子から察するに、彼女は大勢の男性に追われていたようでしたので、緊急措置として招き入れてしまいました』
「あいつらはこの娘を追ってきていたのね…どういうことかしら?…まぁ似ているってことは親戚って可能性もあるし、それはいいわ。それに…」


未だに外で「おじさんとホテル行こうよ〜!」とか「お兄さんとピーしようよ〜!」とか何やら不穏なことを叫んでいる男どもを窓からちらっと見やる…みんな眼が逝っている。
私は顔を引きつらせながらも、少女を入れていなければどうなっていたか想像すると人工幽霊一号を咎めることなどできなかった。
しかし、うるさいわねぇこいつら…。とりあえず全員沈黙させておいた。拳で。


それにしてもこの少女は私のことを知っているようだがどういうことかしら…?とにかく本人に聞いてみるのが早いだろう。特にこちらに危害を加えようとしている様でもなさそうだったし。もし害しようとするのならばあんなに不用意に飛びかかってくるはずもない。
しかし、あの挙動はやっぱり横島クンを彷彿とさせるのよねぇ…。もしかしてやっぱり本人?


「って!おキヌちゃんやめなさい!!」


だんだんエスカレートするおキヌちゃんの揺さぶり攻撃に、その少女は見るからにグロッキーに顔を青く染めている。見ている方が酔ってくる。今にも身が出そうだ…
妙にハイテンションなおキヌちゃんを宥めて少女から引き離し、少女をソファに寝かせて目を覚ますのを待つことにした。


「ねぇ、この娘はおキヌちゃんのこと知ってたの?」
「あの…私がここに入ったときにはソファの上で蹲って独り言を言ってて、私が何を言っても反応しなかったんです…だから、そういうことはちょっとわからないです…」
「ふ〜ん…てことは、この娘が横島クンだってことは人工幽霊一号から聞いたわけね」
『申し訳ありません…』
「いいのよ。本当に本人かもしれないし」
『!?』
「どういうことですか…?」
「なんとなく…よ。もしかしたらそうかもしれないって感じてきたのよ」


霊視は苦手だが霊感は人一倍強い。自分の霊感にはかなり自信がある。
その霊感が、もしかしたらこの娘が横島クン本人かもしれないと告げている。しかし、どうして…?
もう一度しっかりと彼女の顔を観察してみる。
どこか面影があるような気がしないでもない…しかし、似ているかと言われれば答えはNoである。
できるのかどうかはわからないが、この娘を文珠で女性化した横島クンだと仮定したとしよう。しかし、彼女はいろんな意味で横島クンのイメージとは違いすぎる。
彼は以前エクトプラズムスーツで女性に変身したことがある。エクトプラズムスーツは、それを着用した者の理想とする異性の姿を具現化するものだが、その時の彼はスタイル抜群な妙齢の美女であった。
しかし、ここにいるのは明らかに中学生くらいの少女である。しかも特にごく一部に発育不足を観測できる。顔を見る限りかなりの美少女であるのは確かだが、間違いなく年齢的に横島クンのストライクゾーン外である。そのような姿を煩悩魔神の彼がイメージして変化するだろうか?不自然だ。
あるいは、実は実際文珠で変化したけどイメージ通りにいかなかったとか…?それはあり得ないことではない。
横島クンのことだ、バカなことをしてはドジるなんてことは日常茶飯事だ。そう考えると結構しっくり来るところがある。更衣室やら女湯やらを女性に変身して堂々と覗こうとしたとしても彼なら全くもって不自然ではない。
しかし、それなら外の男どもは一体…?覗き行為に怒っているような様子では全くなかった。これも少し不自然な気がする…


「う…う〜ん…」


つらつらとそのような事を少女を観察しながら考えていると、その少女は微かに唸り声を漏らしながら目を覚ました。


「あ、ょ…横島さん大丈夫ですか?」


おキヌちゃんはどう呼んだら良いか一瞬逡巡したようだが、とりあえずその名で呼ぶことにしたようだ。


「あ…おキヌちゃん…」


どうやら少女はおキヌちゃんの事も知っているようだ。やはり横島クンなのだろうか?


「ねぇ、あなた本当に横島クンなの?」
「あ!美神さん!!」


そう言うなり彼女はいきなり起き上がり向かい側のソファに座る私に向かって身を乗り出してきた。


「これ一体どうなってるんスか!?」
「えぇ…!?な、何が??」


少女の瞳は右が黒く、左が赤かった。所謂オッドアイとかヘテロクロミアとかいうやつだ。
少女の目は真剣そのものだが、目尻に涙を滲ませているのがわかる。
そして彼女は息を一つ吸い込むと


「朝起きたらいきなりこんな姿になってるワ!外に出たら男どもに声をかけられ続けるワ!しかも皆ついてくるワ!抱きついてくるワ!襲ってくるワ!危うく草陰に連れ込まれそうになるワ〜〜!!」


少女は両手で頭を抱えながら天を仰ぎ一気にまくし立てた。
え〜っと…つまり朝起きたら少女になっていて、男にモテモテになっていたということだろうか…?


「あ〜…なんかよくわかんないけどとにかく落ち着い「うお〜〜〜〜男に押し倒されるような趣味はないわ〜〜〜〜〜『どげし!!』ふぎゃ!!」落ち着け!!!」


上った血を強制的に抜いてやった。
本人から聞き出すまでもなくもう横島クン決定である。その挙動は間違いなく。


「で、ホントにあんたは横島クンなわけよね?」
「……はい……」


落ち着いたようだ。突っ伏して瀕死になっているとも言うがそんなことはどうでもいい。で、詳しく話を聞くことにした。
始まりは2時間ほど前に遡るようだ。


凍り付いた身体…”それ”を見つめたまま離せなくなった視線…
“それ”は自分のものであるらしき、しかし全く見慣れない細くしなやかな指先だった。
体中からいやな汗が噴き出す。


──何だ、これは──


停止していた思考が蘇ると同時に、ばっ!と四つん這いになり手鏡を探し始める。
しかし、普段から身だしなみなどほとんど気にすることはないのだ。ゴミ捨て場のようなその部屋の中で小さな手鏡は見つからない。部屋には備え付けの鏡などないし、この狭い空間には置物の鏡もない。邪魔だし。
焦りだし前のめりになりながら明らかにいつもより細い腕でいかがわしい雑誌の群れを漁っていたが、不意に重心を置いていた左手の下の雑誌が横に滑り…


「ふぎゃ!」


自分の発したものとは思えない高く可愛らしい声を上げて頭から雑誌の海に突っ込んだ。
その時、身体の下敷きになった左腕にとても柔らかな感触を感じ取った。


や〜らかいな〜…


頭のネジが数本抜けたのか…いや素のままか。
腐った脳みそはやはり状況を把握できていない様子だ。


「って、なんじゃこりゃ〜〜〜〜!!!」


慌てて上体を起こし自分の胸元を覗き込む。胸元にあたる部分が胸下まで下がってしまっており、すでに機能していないランニングシャツには、ほとんど肌が露出した小振りだが確かなふくらみが二つ見える。その小柄な勇姿は実に際どい角度で突起部分が隠れている。横からは丸見えだろう…
ゴクリと生唾を飲み込む。顔が引きつり、口元がヒクヒクとひくついている。一瞬躊躇った後に一気にシャツを脱ぎ去る…南無三!


ぶっ!!!


鼻から鮮血が吹き出した。


「オッパイや〜〜〜〜〜〜!おおぉぉぉおぉオッパイや〜〜〜〜〜〜〜!!」


最早何を言っていいのかわからなくなっていた。真っ白だった頭が桃色に染まってきている。


「はっ!これは夢や!さっきの夢の続きや!そうに決まってる!!でなきゃこんなところにチチがあるわけがない!!!」


チチの夢や〜〜〜!と謎な絶叫を発しながら壁に頭突きを繰り返す。しかし痛みは感じない。本当に夢なのか?いや、混乱のあまり痛覚が麻痺しているらしい。
いつもならばダクダクと血を流しても流しても気を失うことはないのだが、この時はなぜか不意に意識を手放し、またしても前のめりに突っ伏してしまった。


─数分後─


コンコン…


玄関のドアがノックされるのが聞こえ、はっ!と意識を取り戻す。いつものことだが頭の傷はすでに治っている。いつの間に拭い取られたのか流れ出た血すらもうない。


『小鳩です〜横島さんどうかしましたか〜?』


ノックの主はお隣に住んでいる花戸小鳩ちゃんであった。
小鳩ちゃんは花戸家に代々取り憑く貧乏神の貧ちゃんのためにずっと清貧生活を送っている健気な女子高生である。
最近その貧乏神は福の神へと生まれ変わることになったのだが、福の神としての力は非常に弱く小鳩ちゃんは福の神に守られているにも関わらず未だに貧乏生活を続けている。


「あ!小鳩ちゃん!」


彼女の声に一瞬で立ち直り玄関のドアを開け


「なんでもないよ!小鳩ちゃん!!」


緑がかった髪を三つ編みで後ろにまとめた小鳩ちゃんに爽やかな笑顔で言葉を返す。その姿は上半身裸…さらに立ち上がった時にサイズが合わなかったトランクスは膝下あたりまでストンと落ちていた…


             小鳩  絶句


いつもとは逆に自分を見下ろし、たれ眼気味な瞳を見開いたまま固まってしまった小鳩ちゃんを見て、漸く自分の姿・格好を思い出したが時すでに遅し。
もはや何をどうフォローしたら良いのか全くわからない。爽やかな笑顔を貼り付けたままこちらも完全に固まってしまった。


澄み切った空気に…人気もなく…静寂に包まれた住宅地の一角で…
小鳥のさえずりや…子犬の鳴き声が微かに聞こえる…そんな爽やかな朝…
ほぼ全裸な俺は…その肢体を余すことなくお隣の少女に観賞されているわけで…


二人とも息もできないまましばらくフリーズしていると、俄に小鳩ちゃんは瞳に涙をジワリと滲ませ、今にも泣き出さんばかりの表情を浮かべ…


「あ…あの…あの…ご…ごめんなさい…!!」


そう叫ぶと泣きながら逃げ出すように走り去ってしまった。


そっちは小鳩ちゃんの部屋じゃないよ〜〜…


そんなどうでもいい突っ込みを頭の中でしながらも、俺は固まったまま動けなかった…


─数分後─


「うお〜〜〜〜〜〜〜!絶対勘違いされた!!こ、小鳩ちゃん!誤解や〜〜〜〜〜〜〜!!!」


俺は誰もいない玄関の向こう側に向かって、ほぼ全裸のまま絶叫していた。


小鳩ちゃん誤解や〜…俺はロリコンじゃないんや〜〜…


おかげで冷静さを取り戻した俺は、ひとまず今の状況を確認した。なんというか、股間のブツも当然の如く消えていた…神隠しか息子よ!?
結局手鏡は見つからなかったので顔などは見ることはできなかったが、どう考えてもおかしいこの状態のまま学校へ向かう訳にもいかない。とにかく美神さんに相談しようと俺は事務所へ向かったのだった。


ここまで横島クンの話を聞いてあることに引っかかった。


ん?学校…学校…?あ!


「おキヌちゃん学校は!?」
「あ!いけない!遅刻しちゃう!!」


おキヌちゃんはこの騒動のせいで朝食もとれないまま、彼女の通う六道女学院へ向かった。


話は横島サイドに戻る。


自宅から事務所の近くまではいつも電車で向かう。
今日も電車に乗るために、少しばかり時間が早いせいか、人通りのまばらな駅までのいつもと同じ道を歩いていた。
淡い陽光が眩しいいつもの朝、しかし、いつもより明らかに低い高さの視線は正直怖い。いつも通る道のはずなのに全く違って見え、正直迷いそうだ。それに、周りの人間の身長がやけに高く見える。まるで自分で歩いていないような気分だ。
服装は、いつものぶかぶかのジーパンとデニムのジャケットの、裾と袖を捲り上げたものだ。靴もいつもと同じよれよれのスニーカーだが、とてもじゃないがサイズが違いすぎて、かなり不釣り合いでだ。それでも事務所までは我慢せねばなるまい。
ぶかぶかすぎる服装と奇怪なものを見るような視線達と格闘しながらも、しばらく歩いていると、突然一人の中年サラリーマン風の男が話しかけてきた。


「ねぇお嬢ちゃん、おじさんと遊ばないかい?」


最初”お嬢ちゃん”という言葉に、自分を指していることに気づかなかったが、三度言われた時漸く気がついた。


はぁ…?何だ、このおっさん?


と、そのリーマン風おっさんを見上げるが、その顔を見て絶句してしまった。
色の無い妖しく光る眼、その表情は明らかに逝っている。


ひぃ!!


それを見て盛大に引いてしまった。


「あ…あの、俺急ぐんで!」


そのおっさんの異常な面持ちに素で答えてしまい、そのまま走りだそうとした。
しかし、走ろうにも何もかもぶかぶかでは上手く走れない。
必死にぶかぶかな服と格闘していると、今度は学ラン姿の男に腕を捕まれた。


「いっ!?」


突然の衝撃にとまどいの声を上げるが、その直後さらなる衝撃が訪れた。


「結婚しよう!!!」
「は…はぁあ!!??」


その男の唐突なカミングアウトに、一瞬何を言われたかさっぱり解らなかった。しかし、それを理解する間もなくその男は俺に抱きついてきた!


「うぎゃ〜〜〜〜!!なにするんじゃ〜〜〜〜〜!男に抱きつかれて喜ぶ趣味はないぞ〜〜〜〜!!!!」


抱きつかれ大混乱に陥り、求婚されているということなどすでに記憶から抜け落ちている。


「は…離せ〜〜〜〜!」


混乱しつつも力一杯男をはじき飛ばし、殴り飛ばす。
少女の姿をしていても力はかなりのものだった。
解放されると少しホッとしつつもそのまま走りだそうと振り返った。
しかし


「うひゃ!!」


どこから現れいつの間に忍び寄っていたのか、別の男に今度は後ろから抱きすくめられた。


「ひぃ…離…っ!?」


本日二度目の離せを言おうとしたその時、前方斜め上に危険な気配を感じた。
見るとそこには空中着衣離脱という所謂ルパンダイブをかましてくる男の姿があった。
どうでもいいが白昼堂々、通りでやるか!?


「ひっ!!!」


身の危険を感じ、咄嗟に後ろの男の顔面に頭突きをくらわし、怯んだところを抜け出すと、前のめりになりながらダイブをかわし、その勢いで走り出す。
後ろで男二人人が抱き合い、熱いベーゼを交わしているが、そんなことは知ったことではない。


「何だ!何だ!一体何なんじゃ〜〜〜!!??」


もう何が何やらわけがわからなくなり、襲い来る男どもをなんとか撃退しつつも必死に逃げ回った。
当然、電車に乗る事などできるはずもなく、時々道に迷いながらも、ぶかぶかの服装を気にする暇もなく、ひたすら走って事務所まで辿り着いたのだ。
それにしても、サイズが一周りどころか四周り以上もでかい靴でよく走れたものだ。
そしてそのまま事務所に逃げ込もうとした。しかし


「ひぎゃっ!」


這々の体で辿り着いた事務所を目の前にして「助かった!」と思ったのも束の間、目に見えない抵抗に顔面からぶつかり、進入を阻まれた。


「う…そうか!人工幽霊一号!頼む、入れてくれ!俺だ、横島だ!!」
『え…?どういうことですか…?──しかし、この霊波は確かに横島さんのようですね、何があったのですか?』
「話は後だ!早く入れてくれ!!」


叫んでいるうちにも、一度撒いたと思った男どもが再び追ってきているのに気づいた。


「ひぃ!!!頼む!早…ぶっ!!」


突然無くなった見えない抵抗に、勢いよく前のめりに倒れ込み、頭からコンクリートの階段の角に突っ込んでしまった。
頭から血の噴水を上げながらも気絶している場合ではないと、すぐさま復活し事務所に駆け込んだのだった…


「それで、今に至るわけです…」


ぷるぷる身体を震わせながらも一部始終を話す横島クン。よほど怖かったのであろう。死んだ魚のような眼をしている。
それにしても、なんとも奇怪な話だわ…


「謎だらけだけど、ホントにあんたってトラブルを引き込むのが得意よねぇ…」
「そんなこと言ってないで助けてくださいよ〜!死ぬほど怖かったんスよ〜〜!?」


まぁ確かに怖いだろう。入り口にたむろしていた連中の顔を思い出すと寒気を覚えた。


「あら、でもいいじゃない。あんた今まで全くモテなかったんだから、どういう訳かは知らないけど、これからはモテモテよ?」
「男どもにモテても全然嬉かないわ〜〜〜〜!!!」


そりゃそうか。
横島クンはトリップ気味に半狂乱になっている。


「で、そうなった心当たりって全くないわけ?」
「はっ…!え?心当たりっスか?う〜ん…」
「何か前触とかなかった?そういえば霊気が”ブレ”るとか毎日同じ夢を見るとか言ってたわね、それと関係あるかもしれないけど、他に何かなかった?」


何にしても情報不足である。なんでもいいから解決の糸口が要る。とりあえずこの腐った脳みそに聞く他ないだろう。


「前触れですか……あ!」
「何かあったのね?」
「そういえば…」


心当たりがあったのか横島クンが何か言おうとしたその時、唐突に玄関のドアが開いた。
それは突然の訪問者だった。


「やぁ、令子ちゃん!外に何人も人が積み上がってたけど何かあったのかい?」
「あら、西条さん」


いつものように爽やかな笑顔で、腰まである長い黒髪を持つ青年が事務所に入ってきた。
彼は西条輝彦、オカルトGメンといわれるICPOの超常犯罪課に所属するGSである。私のお兄ちゃん的存在であるが、どういうわけか彼と横島クンは犬猿の仲のようだ。


しまった!さっきの連中そのまま事務所の前で放置してたんだった!
すっかり忘れてしまってた。でも悪いのは私じゃないわよね!悪いのは私の安眠を妨害したあいつらと横島クンよ!!


「西条さん、どうしてここに?」
「仕事で近くに来たから寄ってみたんだけ…ど…?」


そういうと西条さんは横島クンの方を見て動きが止まった。
一瞬、西条さんの目の色が変わっていたように見えた。なんか嫌な予感がする…
横島クンも身構えてしまっている。


これは…やばい…!


なぜだかわからないが霊感がびりびりと警鐘を鳴らす。


「君…」


横島クンを射抜くように見つめたまま西条さんがそう言葉を零すと、横島クンはビクッと身体を震わせた。


「な…なんだ「生まれる前から愛してました〜〜〜〜〜!!!!」うぎゃ〜〜〜!!!!!」


どこかで聞いたような科白を絶叫すると


西条さんは横島クン(少女)に襲いかかっていた


あとがき


今回はまだまだ前振りっぽい感じです。
まだまだ全然解らないことばかりですね。
とりあえず表記は付けておきましたけど、この西条さんは、壊れと言うべきなのでしょうか…?この行動にはちゃんと理由はあるんですけどね、言動については微妙ですが…
今回のオリジナル設定は霊視と霊波、そして横島クン家の鏡です。
霊視で霊波の違いを判別できるのか?原作ではそんな描写は私の記憶する限りありませんでしたね…
美神さんは霊視がそれほど得意ではないというのは、気合いを入れなければ浮遊霊をはっきり見れなかったことからして間違いないと思われます。霊視ゴーグルや見鬼君を使ってますしね。後半ではどうなっているのかと言われるとつらいですが…
おキヌちゃんはどうなのかはっきりとわかりませんが、ネクロマンサーでもありますし、美神さんより得意でも少し上ってなところで…ごめんなさい(汗
そして、横島クン家の鏡ですが、原作を見る限りでは備え付けの鏡らしきものが部屋の入り口の引き戸の横あたりにあるのがわかります。しかし、これが本当に鏡なのか、それとも、ポスターか何かなのかは良くわかりません。真っ白で何も描かれていないことからすると、多分鏡なのではないかと思いますが…ごめんなさい、ストーリー上こうしちゃいました。
まぁとにかくこんな感じで第一話でした。


レス返し

>Iwさん
はじめまして!
ご指摘ありがとうございます。投稿して読み直すことを忘れていたのですが、ホントに読みにくいですね…反省です。
人称に関しては複数の一人称で構成する予定です。


>ASUさん
はじめまして〜!
出来る限り完結させれるように頑張りたいと思います。
文珠の字間違ってましたね…ご指摘ありがとうございます〜。


>弟子二十二号さん
はじめまして!
お褒めくださりありがとうございます。大変恐縮です!
書くのは全くもって初めてなので、正直右も左も解らない状況です。
まだまだ未熟ですがよろしくお願いします。


>ペレ伊豆さん
はじめまして〜
えっと…一体なんなんでしょうか…?文章に抜け落ちている部分があるのでしょうか…?違っていたら申し訳ありません。
ていうか洋子シマタダってあれですか…?


>ashさん
はじめまして!
あぁ!意味が間違ってる…!はぁ…うかつでした…ホントにこれで文章書こうっていうのだから何か間違ってますよね。反省です。
ご指摘本当にありがとうございます。これからはもっと慎重に続けていこうと思います。


>meoさん
はじめましてです!
原作の設定ではイメージしていないことが起こってしまうということが、拡大解釈とご都合主義に繋がるということを言おうとしていたのですが、改めて読むと違うようにも取れますね…
うぅ…伝えたいことがちゃんと伝わらない。文章を書く人間がこれじゃだめですよね…反省です。
原作の設定は、あれはあれで不便であったり、ギャグへ繋がったりして面白いんですけどね。


>コバトさん
はじめまして!
そう言っていただけると…なんかとても緊張します(汗
ご期待に添えるように頑張っていきたいと思います。


>ブレードさん
はじめまして〜
ご指摘ありがとうございます!うっかりしていました…
こんなミスをするとは、先が思いやられます…

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