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「極楽大冒険 Report.04(GS+ガンダム0083ネタ)」

平松タクヤ (2007-02-26 22:43)
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 -Narration-


 「私の心は、今宇宙(そら)のように震えている……」

 村枝商事本社ビル前。
 ここで今、二人の男がビルを見上げて感慨にふけっている。

 「どこかお加減でも?」

 「いや、私に従ってあの専務の汚い工作で散り散りになった部下達の事を思うとな……」

 「そうですね。本社で横島支社長に従って戦ってきた者も、私だけになってしまいました」

 「クロサキ君、私はこれでよかったのか?多くの無念が漂うここへ戻ってきて。私は、多くの犠牲の上に立っているではないか」

 不屈の信念で走ってきた大樹にも不安はあったのだという事を感じさせる。そして、そんな不安もクロサキだからこそ漏らせるのである。クロサキへの信頼は相当大きい。

 「それは指揮を執る方の宿命でしょう。この会社はまだ若いのです。波が穏やかになるには、まだ……」

 「そうだな。私はただ、駆け抜けるだけのことだ……」

 クロサキの言葉に諭されて、決意を固める大樹であった。


 「極楽大冒険」
 Report.04 BACK TO PARADISE


 「横島部長……!!」

 本社ビルに入った大樹は、OLに呼び止められた。

 「おお、久しぶりだね美奈子君!!」

 「いつ日本へお戻りに……」

 「今日だよ。やっとナルニアでの仕事が終わってね」

 ナルニアの仕事が終わったという事実に、美奈子の表情が明るくなる。しかし……。

 「こ、今夜……あの……」

 「フッ、君とはもう終わってるんだよ。私のことは忘れてくれたまえ」

 「部長……」

 ほろほろと涙を流す美奈子。相変わらずのプレイボーイ振りを発揮する大樹であった。


 社内の大ホール。ここでは、現在専務の職についている中年親父が自慢げに演説を行っていた。

 「三年前、つまり、横島大樹とその一派が本社に在籍していたことは我が社にとって最悪の年であった。この困難を乗り越え今また三年振りに一大イベント、この私の演説を挙行できる事は我が社の安定と平和を具現化したものとして、喜びに耐えない。その共有すべき我が社の恩恵を、一部の矮小なる者どもの蹂躙に任せる事は即ち、人間としての尊厳を捨てる事に他ならない……」

 専務のおごりがあちこちに浮き彫りになった、かなり身勝手な演説であると言える。そしてこれを社内放送で聴いていた大樹も当然、怒りの感情を抱く。

 「情けない!あのような禍々しい物言いをあの男に許すとは!!」

 一部の矮小なる者どもとは誰の事か、それが自分たちの事を名指しされていたからこその怒りである。また、そんな演説を許してしまった自分に対する怒りも含まれている。

 「これは、左遷されていった者たちへの冒涜だ!!」

 大樹としては苦しかったナルニアでの日々、そして汚い工作であちこちへ散り散りになった仲間たちの事を思わずにはいられなかった。それを「矮小なる者どもの蹂躙」の一言で片付けられてしまっては、大樹にとってはそれは冒涜としか感じられなかったのである。

 「横島支社長。現に我々は、ここにいるのです」

 大樹を諭すクロサキ。こうしたサポートはすぐ熱くなりがちな大樹にとって必要不可欠なものである。だからこそ、大樹のクロサキへの信頼も厚いのである。

 「そうだ。我が社に巣食う亡者どもを薙ぎ払う為に」

 クロサキの言葉で冷静さを取り戻したとはいえ、あの専務への怒りは忘れられない大樹。


 「ハッハッハ、愉快愉快、実に愉快だ」

 この余裕はどこから来るんだ、と言わんばかりの笑みを浮かべて悦に入る専務。しかしその余裕も次の瞬間、消え失せることとなる。

 「専務」

 「何だね?」

 「ナルニアから横島支社長が帰国されたとのことです」

 「な……横島だと!?」

 『横島』の名を聞いて、突然顔に脂汗を浮かべ、震え出す専務。

 「わ……私はおらんと言え!!いいな!!」

 何を今更。対策を疎かにしたツケだが、滑稽なまでのうろたえようだ。

 「やあ、専務!!」

 「ひぃっ!!」

 突然、敵が目の前に現れさらにうろたえる専務。実に滑稽である。

 「そう邪険にするこたぁ無いでしょう専務!はるばるナルニアでのプロジェクトを成功させて凱旋してきた元部下にそれはないです」

 大樹はニカッと笑顔を作っていた。しかし目だけは笑っていない。

 「最も、あんたの汚い工作が無ければ立場は逆になってたでしょうがね……フッフッフ……」

 「お……おのれぇ……」

 「待ちに待った時が来たのだ。私の、多くの部下達の左遷が無駄でなかった事の、証の為に!!」

 そう叫んで大樹は書類を専務の顔に投げつけ、そして専務を書類ごと殴り飛ばす。


 バギャァァァンッ!!


 「はああ〜っ!?ぱべぽあ〜ッ!!」

 「再び村枝の理想を掲げる為に!私の専務就任の成就の為に!日本の本社よ!!私は帰ってきた!!」

 ぶっ飛ばされた専務は、自分の顔に叩きつけられた書類の文面を見て蒼白する。その書類に記されていた内容は以下の通り。


 以下の条項を、弊社は認めるものとする。

 ・横島大樹ナルニア支社長及び百合子夫人の日本本社への復帰

 ・横島支社長の専務への昇格

 ・左遷された横島派社員の本社への復帰

 ・○○専務の平社員への降格及びエロマンガ島支社への転属

                                村枝商事代表取締役


 「な……私がヒラに降格!!??しかもエロマンガ島へ左遷だとォ!!????」

 「言ったはずです。私は二年後……つまり今日確実に元の部署に戻れると。アテが外れてお気の毒ですな!しかもエロマンガ島行きとは、おめでとうございます……」

 そもそも裏工作で大樹を左遷させて専務の地位に座り、成績も残せなかった中年オヤジである。こんな結果になっても仕方が無いといえるが。

 「おのれ……おのれ横島ァァァッ!!認めん!!私は断じて認めんぞォォォッ!!」

 己の愚かさを決して認めようとしない専務はゴルフクラブを手にとって、大樹に襲い掛かった。


 ガシッ!!


 「な……っ!?」

 振り下ろされたゴルフクラブは、クロサキの手によって止められていた。

 「ここはお任せを。横島支社長、いえ、横島専務!!」

 「ありがとう、クロサキ君」

 「横島専務、お見事です!予想以上の戦果です。これで、我々の三年間も報われました」

 「うむ!惰眠を貪る連中には、これこそ悪夢というものだな」

 大樹は思い切り見下した目で、専務……いや降格処分となったヒラの中年親父をあざ笑っていた。

 「では、元専務。エロマンガ島で成績を残して早く戻ってきてくださいね……フッフッフ……」

 「ちくしょぉ〜っ!!!ナルニアなどでなく本当に月の裏側にでも飛ばしておくべきだった〜っ!!!!」

 高笑いする大樹。そして元専務はクロサキに連行されていった。それはさながら売られていく子牛の様で、BGMに『ドナドナ』が非常に似合う光景であった。しかし、それもこれも大樹を甘く見すぎた報いである。
 そして、そんな勝ち誇った大樹の姿に心打たれるOL達。

 「横島部長……いや専務!!」

 「おめでとうございます!!」

 「啓子君!冴子君、真理子君!良子君……!」

 「あの……今夜は……?」

 「フッ、君達とはもう終わっているんだよ……」

 それでも大樹がプレイボーイであることには変わりなかった。


 「ん……う〜ん……」


 一方その頃、ホテル『茨の園』では少女がようやく深い眠りから醒めた。

 「……あれ?ここは……?確か私……横島さんのお父さんと……」

 「お目覚めのようね」

 「あ、あなたは……ひょっとして……!?」

 少女は目の前にいた人物に驚く。それは想い人の実の母親だったのだから。

 「そうよ。あの宿六を使って手荒な真似をしてしまったこと、まず謝っておくわ。ごめんなさいね」

 「一体……これはどういうことなんですか?」

 「よしよし、アンタの心配することじゃないのよ。安心しなさい。ちょっと確かめたいことがあってね」

 「確かめたいこと……?」

 少女は不思議そうな顔をする。これまでの状況からして、この婦人が何を考えているのか理解できそうに無いからだ。

 「あ、今頃あのバカ達、派手にやらかしてるかもしれないわね……」

 溜め息をつく婦人であった。


 会社でのプロジェクトを一通り終えた大樹は、本社ビルの屋上で一人空を見上げていた。

 「しかし、何と他愛のない。鎧袖一触とはこの事か……」

 大樹の『プロジェクト・ナルニア王国物語』。一見いとも簡単に成し遂げたという印象を受けるが、実際は綿密に計画したからこそ上手くいったのであって、決して簡単ではなかった。それでも事を成就してみると、こういう思いになるものだ。それだけ満足できる内容だったといえる。
 事を全て成し遂げて、達成感に包まれて空を見る大樹。


 「親父!聞こえているか!!返事をしろ!!」

 突然どこからか声が聞こえてきた。

 「聞こえているだろう、親父!親父が忘れても、俺は忘れはしない!!」

 「くっ……、忠夫か!!」

 大樹の目の前に、一人の少年が踊りこむ。それは大樹の長男・横島忠夫であった。

 「俺は決着をつけるまで、おキヌちゃんを取り戻すまで、親父を追い続ける!!」

 「フッ……しかし、私の勝ち戦に華を添えるだけだ。そして!!貴様に話す舌など持たぬと言ったはずだーっ!!!」

 なんて言いながら話すのが大樹である。喋らずにいられない性格であった。

 「うおおおおおおおっ!!!!」

 先ほどは使うのをためらった『栄光の手』であるが、もはや横島は容赦などしないという一心だった。彼の右手に霊波刀が生成され、それを大樹めがけて振り下ろす。

 「遅いっ!!」


 ガキィッ!!


 「な……なんだと!?」

 霊波刀を、懐から出したサバイバルナイフで受け止める大樹。何人も殺してるワザ物であるが、何故霊波刀を受け止められるかというのはオラオラパンチに匹敵する謎である。

 「てめーは本当に人間かよ!!」

 「そんな怪しい攻撃してくるお前に言われる筋合いは無い!!」

 今度は大樹がナイフを振り回してきた。たとえ自分の息子といえども平気でナイフを突きつける、大樹はそういう男である。しかし横島も場数を踏んでるだけあって、ナイフを紙一重でかわしていく。

 「満足だろうな、親父!でもそいつは、おキヌちゃんを奪われた俺にとって屈辱なんだ!!」

 「フッ、わからんでもない!随分肝を嘗めたようだな!!」

 物騒な刃物を振り回す親子バトルが展開されていた。以前の情けない戦いからはよりレベルアップしたと言えるだろう……といっても戦う理由が女であることには変わりは無いのだが(女が美神からキヌに変わったとはいえ)。

 「戦いの始まりは全て怨恨に根ざしている。当然の事!」

 ごもっともな台詞である。

 「クッ、いつまで減らず口を!!」

 「しかし、怨恨のみで戦いを支える者に私は倒せん!私は義によって立っているからな!!」

 「テメーのどこが義によって立ってるんだボケェ!!」

 息子の恋人の拉致というとんでもない悪行をやってのけているのだが、大樹はそれをいささかも悪とは思っていない。自らを正義と信じているからである。このように自らを正義と信じれば、敵は悪であり、善悪の区別というものはない。某国大統領を髣髴とさせる。

 「くそぉぉぉぉっ……!!」

 「歯車となって戦う男にはわかるまい!!」

 大樹のナイフが、まともに直撃すれば死にかねないスピードで迫ってくる。横島はかろうじてかわすが、ナイフはバンダナをほんの僅かかすめていた。地面に切れたバンダナが落ちる。

 「おおああああっ!!」


 ゴォォォンッ!!


 「ぐぅわぁぁぁぁっ!!!」

 大樹の突きが空振りした隙を突いて、横島の霊波刀が大樹の脇腹を捕らえる。霊波刀を解禁したとはいえ、命に別状は無い程度の出力に留めてはいるが。

 「くっ……腕を上げたな!!」

 大樹もここで初めて成長した息子の実力を認めざるを得なかった。大樹にとっては、思わぬ苦戦で意外だと思ったに違いない。

 「ぬおおおおっ……ぐわっ!!」

 横島はさらに攻撃を続ける。しかし大樹が足払いに出て、足元をすくわれた横島は姿勢を崩してしまう。

 「フッ……」

 倒れこんだ横島に対し、大樹がナイフを持ち替えて一気に振り下ろす。

 「うああああっ!!!」

 倒れたまま横島は右足で大樹のナイフを握った手を蹴り、怯んだ隙にすかさず起き上がる。だが構え切ってないため、すぐに体勢を立て直した大樹に迫られてしまう。

 「所詮、貴様とは価値観が違うようだな!!」

 「くそぉっ……!!」

 迫り来る大樹の足を横島の霊波刀がかすめ、スーツが切り裂かれる。しかし大樹は全く怯まず突進を続け、横島と取っ組み合う。

 「うおおおおおおっ!!」

 「ぬおおおおおおっ!!」

 横島の顔面に迫るナイフ。間一髪のところで霊波刀を受け止め、鍔迫り合いとなる。

 「く……くっ!!」

 「ぬううううう……」

 大樹の気迫に圧倒される横島。ナイフがどんどん押してきている。とてもじゃないが横島の体力では持ちそうには無いだろう。

 「フッ…………」

 「まだだぁっ!!!」

 横島は残った左手で文珠を取り出し、”爆”の字を込めて両者の間に投げ入れた。


 ドォォォォォン!!!!


 「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 「あぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 文珠が大爆発を起こし、爆風で両者とも吹き飛ばされる。

 「ちぃっ……どこでそんな技を身につけた、忠夫……」

 「俺だって何時までもヘタレ小僧じゃねーんだよ……」

 二人は構え直す。かつては大樹が圧倒的な実力を誇っていたが、今の二人の能力差は僅差だった。僅差だったからこそ、この戦いは膠着状態になったのだ。二人とも息は上がり、服も身体も傷だらけだった。

 「……そろそろ終わりにするか……」

 「ああ……」

 大樹はナイフを構え直し、気迫を込めて息子に視線を向ける。その表情はどこか充実しているようでもあった。

 「さあ……お前の背負ったものの重みをかけて挑んで来い!!」

 「言われなくても解ってるわ!!」

 横島も霊波刀を構え直して、大樹の攻撃に備えた。決着をつけるなら今しかない。これが最後の一撃だ、という気持ちで立ち向かう。

 「「行くぞっ!!」」

 二人が同時に踏み込んだそのときであった。


 「やめてぇぇぇぇぇぇっ!!!!」


 「「!?」」

 突然、悲痛な叫び声が屋上に響き渡る。それに反応し、二人は同時に足を止めた。そしてその声の主は、横島が良く知る人物のものであった。

 「お、おキヌちゃん!?」

 そう、屋上には大樹によって拉致されたはずの少女・氷室キヌの姿があったのである。その瞳には、涙すら浮かんでいた。

 「お、親父に変なことされなかったか?あのエロ親父のことだから……」

 「貴様に言われる筋合いは無いっ!!」

 「二人ともやめてください!!どうして……どうして親子で争わなければならないんですかっ!!」

 キヌは必死で訴えるが、横島親子は争うことを一向にやめようとはしない。そして大樹には疑問が浮かんでもいた。

 (何故ここにおキヌちゃんが?百合子……どういうつもりだ?)

 そしてその疑問は、キヌの隣にいる人物を確認したことで解決した。

 「全く、バカばっかりやってるんだから……」

 「ゆ……百合子!!」

 「お袋!?」

 大樹の妻にして忠夫の母親、『グレートマザー』横島百合子その人であった。恐らく彼女がキヌをここまで連れて来たのだろう。

 「百合子……おキヌちゃんを解放するとは、どういうつもりだ?」

 「予想外のことは起こるもの……」

 大樹の質問に、百合子は少々悪意のこもった笑みを浮かべて返答する。

 「私は故あれば寝返るのさ!」

 「百合子……獅子身中の虫め!」

 「せっかくの息子の彼女を、傷つけられたくないからね……」

 「なにゆーてんねんおかんっ!!」

 『息子の彼女』という言葉にキヌが反応し、頬を紅く染めたのはもはやお決まりであった。
 とりあえず、キヌの無事を確認できた横島は少し安心していた。もしここで大樹によって何か変なことされてキヌが泣いていたのであれば、横島は怒り狂って親でも殺していたに違いないだろう。

 「横島さん……」

 「止めるな、おキヌちゃん」

 「まさかまた……、『男はたとえ肉親でも倒さねばならんときがあるんだっ!!』とかいうつもりですか……?」

 かつてこの親子の醜い戦いを見ていたからこその台詞であった。しかし、今はあの時とは状況が違っていた。

 「そうじゃない、って言ったら嘘になる」

 「じゃ、じゃあ!!」

 「でも俺は……怒ってんだ。おキヌちゃんまで巻き込んだあのバカ親父と、それを阻止できなかった俺自身にな……」

 目の前で彼女を拉致された怒りというものは、そうそう収まるものではない。まして過去にそれ以上の悲痛な思いをしているからこそ、今度こそ絶対に大切な人を守らなければならないという気持ちが強いのだから。

 「えっ……」

 キヌは、これが単なる親子の醜い嫉妬からの争いではなく、横島が純粋に自分の為に怒ってくれているということにはっと気付く。

 (横島さん……私の為に……)


 「行くか……私の真実の戦いを後の世に伝えるために!!」

 「貴様ぁっ!!」

 ついに二人の決着をつけるときが来た。二人とも小細工など無い。ただぶつかり合うのみだった。西部劇でよくある睨み合うガンマンの如く、二人の間の時間が数十秒止まる。

 「やれやれ、しゃくだねぇ……」

 そう言いながらも、二人の決戦の合図でも出すかのように指を弾く百合子。


 パチンッ!!


 「「行くぞっ!!」」

 指が弾かれる音に反応し、二人が一気に踏み込み、激突する。大樹は親の威厳とプライドを守るため、忠夫はキヌを守るために。


 「ガトォォォォォォォッ!!!!」
 「ウゥラキィィィィィッ!!!!」


 「あ、あのぉ〜……、『がとー』と『うらき』って何……?」

 「……知らなくてもいいことよ」

 キヌと百合子がどうでもいいようなツッコミを入れている間にも二人は接近戦にもつれ込んだ。斬り合いの間合いに入ると同時に大樹がナイフを突き出し、それを横島が霊波刀で受け流す。

 「もはや、語るまい!」

 「うぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 横島が霊波刀で唐竹割りを繰り出し、それを大樹がナイフで受け止め流し、今度は大樹のナイフが横島の胴を狙う。そのナイフを再び横島が受け止め、大樹を押し返し霊波刀で突きを繰り出す。大樹はナイフで突きを受け止めるが……。


 パキィィィィィン!!!


 大樹のナイフが鋭い音とともに砕け散った。さすがにただのサバイバルナイフで霊波刀を何回も受けていれば負担が大きすぎ、破壊されても可笑しくは無いだろう。最も『物質を越えた刃』である霊波刀をただのナイフで受け止めるなんて事は超人・大樹だからこそ出来る芸当だったのだが。

 「南無三!!」

 「これで、ダウンだぁっ!!」

 横島は渾身のボディーブローを、大樹の腹にこれでもかといわんくらいの拳圧で叩き込む。


 「どぅううううおおああぁぁぁ!!」


 モロに決まったのか、大樹は最早立ち直ることなく膝をつき、そのまま地面にその身を沈めた。

 「はぁ……、はぁ……、決まったか……?うっ……」

 横島ももはや満身創痍という感じで、息も切れ切れ、地面に片膝をついていた。

 「横島さんっ!!」

 戦い終わり、傷だらけの想い人の元へキヌが飛び出してきた。手をかざし、ヒーリング―霊的治療を施す。

 「……サンキュー、おキヌちゃん……」

 「もう、無茶ばっかりするんですから……。でも……お父さん、死んでませんよね……?」

 「あの化物じみた親父のことだ。これくらいじゃくたばらねーよ」

 あの横島忠夫の実の父親だ。これくらいのことでくたばるような男ではない。現にいまそこで、上半身だけ起こして息子のほうを見ている。その表情は、敗北による屈辱など感じさせない、どこかすっきりとしたものだった。

 「……見事だったぞ、忠夫……」

 「なんだよ親父、改まってさ」

 「……ただの妬みとかひがみとかそういうんじゃない、なんというか……純粋にその娘のためにここまでやるとはな……。まさか忠夫が女のためにマジになるなんて思ってもいなかったぞ。立派になったな、忠夫……」

 「え……?」

 あのひねくれた父親が、女のために必死で戦った自分を褒めたことに横島は驚く。

 「親父……、もしかして『俺が可愛い彼女を作るのを阻止してやる!!』とか思ってたんじゃねーのか?」

 「馬鹿言え。俺は『一応』が付くとはいえお前のたった一人の親父だぞ?息子の幸せを願わねーわけねーだろうが」

 「じゃあ何でこんなことしたんだよ……?」

 「はーい、こっから先は私が説明してあげるわよ」

 そこに百合子が割り込んできた。

 「お袋、一体全体これはどういうことなんだ?おキヌちゃんまで巻き込んどいて……」

 「確かめたかったのよ」

 「確かめたかった?」

 不思議そうな顔をする横島。隣にいるキヌも同じだった。

 「忠夫、アンタそのおキヌちゃんとくっついちゃったそうね」

 「ちょ、ちょっと、おかん!!」

 「え、あ、あの……その……」

 二人の関係を突っ込まれて、耳まで真っ赤になっている横島とキヌ。百合子は『照れるな照れるな』とばかりに笑っている。

 「でも忠夫って、あのバカ亭主と同じでバカでスケベで優柔不断で浮気癖があって煩悩のままに生きる人生を楽しんでるような奴だからね。心配だったのよ」

 「「大きなお世話だ!!」」

 忠夫だけでなく、大樹からもツッコミが入った。

 「事実じゃないのよ。で、忠夫がどれだけおキヌちゃんのことを想ってるのか、親として確かめる必要があったわけ。それでちょっと手荒だけど、こんなことを思いついたのよ」

 「それだったら、んなことせんでも……」

 「こうでもしないと忠夫は本気にならないからね。でも、あの宿六相手に本気で戦ってたところを見ると、忠夫の気持ちは本物だって事がわかったわ」

 「ってなあ……。やることが過激すぎるんだよ、親父もお袋も」

 そりゃあ、息子の彼女を目の前で拉致したり、息子にナイフで切りかかったりなど過激以外の何物でもない。

 「もし『さらわれたら別の女見つける』なんて考えたりしたら、私が血の海に沈めていたけどね……」

 「俺は鬼かーっ!!」

 「おキヌちゃんはいい娘よ。気の弱そうなところはあるけど優しいし可愛いし、餓える心配もない。しかも今は『生きた女子高生』になったわけだから、問題点はすべてクリアしたし。そんな娘見捨てるような奴は本当の腐れ外道よ」

 「あ……あの……私、そんなことないですよぉ……」

 想い人の母親の言葉に、キヌは恥ずかしさのあまり恐縮してしまっていた。百合子はそんなキヌの方に顔を向ける。

 「何言ってるのよ。忠夫はアンタのために命張って戦ったのよ。だから、忠夫の彼女だということに自信持って良いのよ。それに忠夫みたいな奴の彼女なんて、おキヌちゃん以外には務まりそうにも無いしね」

 「えっ……」

 「頑張りなさい。私、応援してあげるから。忠夫がアンタみたいないい娘を泣かしたりしたら、私もお仕置き手伝ってあげるわよ」

 「はっ、はい!!」

 「ちょっ、お袋!!何言うとんねぇぇぇぇん!!!」

 浮気したときのお仕置きは恐らく大樹の比にはならないだろうと忠夫は直感し、うろたえる。そんな彼の隣では……。

 (ちょ、こ、これってひょっとして……『横島さんのご両親公認の仲』ってことですよね?恋愛には親の障害が付き物だっていうけど、ご両親が認めてくださったってことは……私がもう横島さんのぱーとなーに確定したってことですよね……?これはもう……このままいっちゃいましょうってことでいいんでしょうかーっ!!??私、私、もう〜!!!!)

 両手を肩に当てて、真っ赤になって頭から湯気を立てて身体をくねくねさせていたキヌの姿があった。

 「あのー、おキヌちゃーん?」

 「うーん、こんなに可愛いのに妄想癖があるのねぇ……」

 数分の間、キヌはステキな夢の国から戻ってこなかったという……。


 ――数日後――


 横島大樹・百合子夫妻はナルニアでの仕事を終え、日本の本社の仕事に復帰。都内に高級マンションを購入し、そこで暮らすこととなった。その際にエロマンガ島送りになった哀れな中年がいたことは、あまり知られていない。
 そして横島夫妻公認の仲となったこの二人は……。

 「おキヌちゃん」

 「はい」

 「この前、うちの親の騒動に巻き込んでしまったお詫びとしてこれをあげるよ。本当にごめんな……」

 「で、でも……、あれはもう気にしてませんし、それに……(ポッ)」

 頬を紅くするキヌ。あの騒動があったからこそ二人の関係が横島夫妻公認になったのだから無理も無いだろう。

 「いや、俺から詫びいれねーと気がすまねーからさ、受け取って欲しいんだよ……」

 横島は懐からリボンのついた小さな包みを出し、キヌに差し出した。

 「これは……?」

 「球根……なんだけど」

 「きゅうこん……」

 『きゅうこん』という言葉に反応したキヌが、突然かしこまった態度を取る。

 「どしたの?」

 「横島さん……きゅうこんってことは……それは『ぷろぽーず』の言葉と受け取って……で、でも私まだ高校生ですし……、それに心の準備が……あいたっ」

 天然ボケなのか、わざと言ったのか。一人でワンダーな世界めがけて突っ走るキヌに、横島はデコピンで突っ込みを入れる。

 「コラ。それは球の根っこと書いて『球根』。そっちの『求婚』じゃないって。まあ、口で言えばおんなじなんだけど」

 「うぅ……ごめんなさい」

 「ホントは咲いてる花を渡したかったんだけど、この花は植付け時期が四月だからさ。んなもんで今は球根って形でしか渡せないんだよ」

 「そうなんですか。一体何の花なんですか?」

 「それを開けてみればわかるさ」

 言われたので、キヌは袋を開けてみた。その中にはメッセージカードが入っていた。

 「……『ぜふぃらんさす』……花言葉は『純白な愛』『清純』……」

 「俺なりに足りない頭使って調べたんだけどさ、その花言葉、まるでおキヌちゃんのことを言ってるみたいでさ」

 横島で無くとも、『純白な愛』『清純』という花言葉はまさしくキヌに相応しい言葉であると思うだろう。だからこそ、ゼフィランサスの球根を贈り物としたのである。

 「……横島さん……」

 キヌは照れながら、にっこり微笑んだ。

 「ありがとうございます。私……このお花、大事に育てますから」

 「ははっ、きっとおキヌちゃんが育てるなら、綺麗に咲くはずさっ」

 似合わないキザな台詞をとりあえず言ってみる横島であった。


 「へぇ、ずいぶん仲がいいことねぇ……」

 「「み、美神さん!?」」

 二人の後ろから、彼等の雇用主が突如現れた。不機嫌そうな顔をして。

 「用事で出かけてたんじゃなかったんスか?」

 「予定繰り上げて早く帰ってきたのよ。花の球根までプレゼントするなんて……見せ付けてくれるじゃない。アンタたちいつからそんな仲になったわけ?」

 「え……いや……こ……これは……」

 夜叉がいると形容しても良いくらいの迫力の美神に、横島もキヌも顔中冷や汗だらけになっていた。

 「私の知らないところで、何か有ったようね。詳しく説明してもらおうかしら?特に横島クンにはね……」

 マズイ。そう判断した横島は、キヌとアイコンタクト―目と目を見ただけで互いの次にすべき行動がわかる、サッカー日本代表もまだ会得していない技―を交わす。

 「美神さん、これはこの前私が横島さんのお部屋をお掃除した時のお礼にと、横島さんが渡してくれたんです……あは、あはははは……」

 「そ、そうッスよ。おキヌちゃんの言うとおりッス……ははは……」

 「なーんか怪しいのよねー……」

 まだ美神のジト目が二人に突き刺さる。

 「み、美神さん!美神さんにもこれを差し上げますから……」

 動揺しながらも、横島は懐からまた何かを取り出して美神の目の前に見せた。

 「花……?」

 「は、はい。美神さんにもお世話になってるッスから、感謝の気持ちでってことで」

 「ふーん……。ま、気持ちは解らないでもないから、とりあえず貰っとくわね」

 なんか納得いかないような顔をしながらも、美神は横島の差し出した花を受け取った。

 「……デンドロビウム……花言葉は『わがままな美女』か……」

 (ゲッ!!)

 一瞬、マズイ!!と横島は思った。万が一のためにと買っておいた花だったが、さすがにこの花の花言葉までは知らなかった。見事なまでに美神に相応しい花言葉で、『シバくぞコラァ!!』とか言われるのは間違いないのだから。しかし美神の反応は、横島の予想とは違っていた。

 「ま、いっか」

 美神らしくなく、あっさりとその場を去っていった。デンドロビウムの花束を持って。


 



 あとがき

 親子対決、終了となりました。

 実は横島夫妻の行動は、息子がおキヌちゃんをどんな気持ちで想っているのかを試すためのものだったりします。あの両親だったら、これくらいやってもおかしくないだろうと思いましてね。
 で、今回横島はおキヌちゃんを守るために必死で戦い、とうとう大樹をも倒してしまいました。そして晴れて両親公認の仲です(大爆笑)。
 グレートマザーも大樹も息子がここまで本気になれば、きっとおキヌちゃんとの仲を全面的にバックアップするでしょうな。
 最も、あの息子のことですからまだ安心は出来ないでしょうが(汗)。
 最後の花のプレゼントも、0083ネタだったりします。花言葉があの二人にピッタリだったもので。

 次回はついに、横島の卒業式です。この後どういう展開になるかはお楽しみに。

 レス返し。

 >みどりさん
 やっぱあのスーパービジネスマン&スーパーOLの下で働いてりゃ超人になってもおかしくないでしょうな(汗)。

 >ゆんさん
 横島、男になりましたよ(謎)。

 やっぱり恋愛は、告白する勇気を持てた方が勝ちですからね。それで怒るってのは筋違いでしょう。
 私の描くおキヌちゃん、マリ姉要素が強いからなあ(謎)。ネタとかそんなんじゃなくて、歌とかラジオとかのイメージする要素からも(苦笑)。

 願わくば彼らの未来に幸多からん事を……その笑顔が末永く守られんことを。

 >いしゅたるさん
 どうもですー。

 デラーズ閣下……誰なんでしょうなあ?(コラ)
 とりあえず声のイメージは、

 横島大樹:大塚明夫さん
 横島百合子:真柴摩利さん
 クロサキ;飛田展男さん

 でお楽しみください(爆死)。

 >いりあすさん
 村枝商事……一体何を作ってる会社なのか。私設軍隊とか持ってそうな気がする(壊死)。
 この二人に比べれば内海課長のほうがまだマシかも?

 夫婦のたくらみは、横島とおキヌちゃんの仲を確かめるための演出だったということです。
 あまりにも過激な演出でしたがね(爆笑)。

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