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「極楽大冒険 Report.02(GS)」

平松タクヤ (2007-02-22 00:03/2007-02-22 21:35)
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-Side of Kinu-


 「よっこしまさんっとでーと♪よっこしまさんっとでーと♪」

 ……自分でいうのもなんですが、端から聞けば怪しいとしか形容できない歌を私は口ずさんでいました。でも私自身はそんなこと全然気にならないんですよ。だって、あまりにも嬉しくて嬉しくて……。
 そもそも何でこんなことになったかというと……。


 約三時間ほど前。


 私は横島さんのアパートを訪れました。

 「横島さーん」

 ドアの前で呼びましたが、全然返事がありません。なので、ドアをコン、コンっとノックしてみましたがそれでも反応がありません。『留守でしょうか……』と思ったら、部屋の中からはかすかに霊力を感じました。私は『横島さんの身に何かあったんじゃ……』と心配になり、幽体離脱してドアをすり抜けてみました。すると……悪い予感が的中してしまいました。


 「何か……何か食い物を………………ぐふっ」


 お部屋の真ん中で青白い顔をして頬がやせこけてた横島さんが這いつくばってうわ言を呟いている姿が……。

 『よ、横島さはーんっ!!!!!!』

 私は思わず、幽霊状態のまま横島さんのもとへと駆け寄りました。近くで見るととても痛々しい姿です……。

 「……お……おキヌちゃん……?でも宙に浮いてるし、背後には人魂が…………。幻覚……だよなぁ…………お迎えが……来たんかいな…………」

 『横島さーんっ!!しっかりしてー!!幽霊にもならずに死んじゃダメー!!!』

 無我夢中で私は横島さんの胸倉を掴んで、頬をペチペチと叩いてました。

 「……あ……い……痛いって!!」

 とりあえず、我に帰ったみたいです。ふぅ、良かった。

 
 「よいしょっと」

 私はドアの鍵を開けて外にあった身体に戻り、改めて横島さんのお部屋にお邪魔します。お腹を空かした横島さんへの応急処置として、ポケットの中に入れてたキャンディを手渡しました。

 「うう……すまんのう……」

 横島さんは涙を流しながら、私の差し出したキャンディを美味しく味わっていました。そのときの横島さん、まるで女神様か何かのように私のことを有り難く見つめていました。ちょ……、そんな目で見つめられたら私……、きゃっ……恥ずかしいですよーっ!!

 「何赤くなってんの」

 あ……。今は妄想にふけってる場合じゃありませんでした。横島さんがこんな状態ですし。

 「一体どうしたんですか?」

 「いや……例の如く給料日前でひもじくて……。もう三日も飯食ってなくてさ……、部屋を這ってるゴキブリも食えるのかなって思っちまったくらいだ……

 「ちょ、ちょっとゴキブリまで食べようと思ってたんですかっ!!」

 「人間、食おうと思えばなんだって食えるからなぁ……」

 横島さぁん、いくらなんでもそれは人としてやってはいけないことですよ……。そんなことしたら病気になっちゃいます!!
 もう、横島さんったらしょうがないんですから。で、私はおずおずと口を開きました。

 「あ、あの、何かご飯作りましょうか?」

 「え、マ、マジ!?是非!!お願い!!ぷりーず!!!」

 「この前もそうでしたけど、食べ物に困ったときは言ってくださいね。私がいつでもご飯作りますから」

 「くぅぅぅぅぅ、おキヌちゃぁぁぁんっ!!!やっぱエエ娘やなぁ〜!!!」

 フフッ、なんか可愛いですね。思わず『おー、よしよし』と横島さんの頭を撫でちゃいたい気分です……きゃっ♪

 「そんな大げさにならなくてもいいんですよ。私、横島さんのためだったら何だって……って、な、何でもありませんっ!!」

 いっけない、心の中で思ってたことがつい口に出ちゃいました。横島さんのこととなるといっつもこれなんですから、私って。

 「じゃ、オカズの材料買いに行って来ますのでちょっと待っててくださいねっ」


 私はいつものように、スーパー『マルヤス』に行きました。幽霊だった頃からお世話になってるお店です……って、今改めて冷静に考えるとスーパーでお買い物する幽霊って……変でしたよね。自分で言うのもなんですけど。

 「えっと、さんまとほうれん草とおネギと……」

 「よぉ、おキヌちゃん」

 「あっ、こんにちはー♪」

 お店の主人のおじさんが声を掛けてきました。いつぞやのときは私のことを『そんじょそこらの生きてる奴より信用できらあ!』って言ってくれた気さくなおじさんです……って、幽霊なのに信用されてたってのもおかしいですけど。しかも代金ツケにしてもらったことも何回か……なんだかなあ。

 「ところで最近、ますます可愛くなってるねぇ」

 「え?そ、そんなことないですよぉ」

 「昔っから『恋する乙女は美しくなる』って言うからなあ。バレンタインの日に彼氏と来たときは幸せそうだったしな」

 「か……彼氏って、そ……そんな風に見えちゃったんですか……。は、恥ずかしいです……きゃーっ!!」

 私、横島さんのことを話題にされるといつもこうなってしまうんですよね。生き返ってからは特に。おじさんもそれをわかっててからかうんですから、もうっ。

 「お、そうだ。いつもおキヌちゃんには世話になってるからな。感謝の気持ちを込めて、これをあげるよ」

 「これは……福引券ですか?」

 「おう、今丁度店の前でやってる最中さ。特等が温泉旅行のペアチケットだから、運がよけりゃ彼氏と一緒に温泉旅行だせ」

 え……?いっしょに……おんせん…………?


 …………………………………………ぼふっ。


 よ……よよよよよよ横島さんと二人っきりで温泉旅行ですかーっ!!???
 そうなったら……混浴の露天風呂で二人とも生まれたまんまの姿で…………

 「おキヌちゃん……」

 「はっ、はい、何でしょうか……」

 「……おキヌちゃんの胸……大きくなったね……。なんか俺好みになってきたって感じやなぁ……」

 「ウフフ、だってこの胸の中には、私の横島さんへの愛がたっぷり詰まってるんですから……ポッ」

 「な……なあ、もっと……良く見せてくれる?」

 「え……ちょ、ちょっと……。で……でも、横島さんだったら…………悪くないですから……」

 なーんて会話して、二人の関係は一気に接近して、そして…………きゃ〜っ、私ったら、私ったら〜〜っ!!!


 「おーい、おキヌちゃーん、何幽体離脱の大技を見せてんのさ。そんなの人にホイホイ見せるもんじゃねーぞ」

 『えっ?』

 おじさんの一言で私は我に帰りました。幽体離脱の大技って、何を言ってるんですか……あれ……?なんか宙に浮いてるみたいです……。それに感覚が幽霊だった頃のように……。

 『あーっ!!!!』

 周囲を良く見ると、私の身体が倒れてました……って、知らない間に勝手に幽体離脱してるじゃないですかーっ!!!!!!
 最近になって魂が身体に安定してきたといっても、勝手に幽体離脱してしまうことはあるみたいです……妄想にふけっちゃうと。


 「すみません、お騒がせして……」

 「なーに、いいってことよ。年頃の女の子なんだからさ。ほら、まいどあり。で、福引やってくんだろ?頑張ってきなよ」

 さっきあれだけ取り乱してしまったからなあ、ってことで遠慮しようと思いましたが、せっかくおじさんが好意で福引券をくれたんですからやらないと申し訳ないですよね。
 お店を出ると、おじさんが言ってたとおりすぐ目の前で福引が開かれていました。ガラガラ、ガラガラと音を立てて八角形の箱をぐるぐる回して玉を出すっていうアレのことです。私も以前やったことはありましたけど、当たったのは残念賞のてぃっしゅぺーぱーだけだったりします。ちなみに景品は、上から順に……


 一等 名雪川温泉旅行ペアチケット
 二等 東京デジャヴーランドペアチケット
 三等 壬天堂WRYY
 四等 壬天堂D's
 五等 スーパーササニシキ
 残念賞 ティッシュペーパー一箱


 (……温泉旅行……当たるといいなあ……)

 なんて淡い期待を抱いても、今までこういうので当たったことの無い私ですから期待するだけ損かもしれません。何兆分の一の確立で幽霊から生き返れた、ってのは置いといて。でも残念賞のティッシュでも生活に役立ちますから無駄にはなりませんよね。それよりも私としては、五等の『すーぱーささにしき』が何となく気になるんですけど。

 「はい。一枚だから一回分ね」

 私は福引所のおじさんに福引券を渡し、箱のハンドルを握りました。

 (……温泉旅行…………横島さんと温泉旅行…………)

 なんて、ほんの僅かな、とはいえないくらいの念をハンドルを握る手に集中させて、ガラガラと回してみました。


 カーンッ……コロコロコロコロ……


 中から出てきたのは、青い玉でした。えっと、これって……。 

 「当たり〜!!当たり〜!!」

 あ、当たったんですか!?今まで残念賞のティッシュしか当たらなかった私が!?

 「おめでとう!!二等賞のデジャヴーランドペアチケットだよ!!」

 で……でじゃぶーらんどぺあちけっとですかーっ!!???温泉旅行じゃないけど……ペアチケットってことは……。


 横島さんと……二人っきりで……


 「お嬢ちゃん、何ぼーっとしてるのさ。せっかく当たったってのに……」

 あっ!!いっけない、また妄想の世界に突入してしまうところでした。というか、今頃横島さんお腹すかしてるはずですし、急がないと……。

 「あ、ありがとうございますっ!!」

 私は賞品の入った熨斗袋を受け取って買い物袋の中に入れると、すぐに駆け足で横島さんのアパートへと急ぎました。


 「ごめんなさい、遅くなっちゃって!!」

 「う゛……、おキヌちゃん……」

 横島さんはすっかり弱弱しくなっていました。すみません、余分な時間をかけてしまって……。

 「では、すぐにご飯作りますから、あと少しだけ待っててくださいね」

 いち早く横島さんを空腹の苦しみから解放するため、私は戦闘態勢に突入しました。まずはエプロン着用から。決して『裸エプロン』なんて想像してはいけませんよ?でも、横島さんがどうしてもって言うんだったら……って今はそんな場合じゃありません!!次はお米を研いで綺麗になったらすぐに炊飯器にセット。そして包丁とまな板を用意しておかずの調理。時間がないけど手順には間違いが無いように。

 「はい、出来上がり♪」

 手際よく作業を進めた結果、そんなに時間をかけることなくさんまの塩焼きとほうれん草のおひたしとお味噌汁が出来上がりました。いっそのこと『おキヌの三分クッキング』でも開こうかなあ、なんて思ったり。

 「うわぁぁぁぁい!!!いただきまんもすーっ!!!!!」

 横島さん、感激の涙を流してました。そこまで喜んでもらえると、私も嬉しいです。でも、流石に『いただきまんもす』はないでしょう。


 「ごちそうさまぁ!!いやぁ、やっぱおキヌちゃんの作ってくれた飯は最高やなぁ……」

 「お粗末さまでした」

 あっという間に横島さんは私の作ったご飯を平らげて、幸せそうな笑顔を浮かべていました。本当に良かったです、喜んでもらえて。大好きな人に料理を作って喜んでもらう、これぞ女の幸せ……かな?
 さて、後は先ほど福引で当たったデジャヴーランドペアチケットのことですけど……。やっぱり、直接伝えるのって……とても恥ずかしいですよぉ〜!!でも……でも……せっかくのチャンスなんだから、ここで頑張らなきゃ駄目よ、キヌ!!

 「あれ?おキヌちゃん……」

 「え?」

 横島さんが、何かに気付いたみたいです。

 「これは……?」

 横島さんが手にとっているのは……立派な装飾がされた袋です。ちょ、ちょっと、それって……!!

 「やーっ!ぎゃーっ!!見ないでください、見ないでーっ!!!」

 「デジャヴーランドペアチケット……?」

 本当は私のほうから色々と心の準備をした後に話すつもりだったのにー!!なんで横島さんに見つかっちゃったんですかーっ!!!ホント私ったらドジ過ぎるーっ!!!

 「おキヌちゃん……もしかして……」

 『もしかして』って、横島さん私のことを『ご飯を作ってくれたことを交換条件にデートを強要する抜け目が無い女』って思ってるんじゃないでしょうかーっ!!私、横島さんに軽蔑されてしまったのかもしれません!!そして愛想をつかされて……そんなことになったら私、三百年も経ってから生き返った意味が無くなってしまいます……!!

 「よ、よこひましゃんっ、こ、これはですね……」

 「俺を……俺をデートに誘ってくれるの!!??メシ作ってくれただけじゃなくて!!!」

 えっ!?
 涙目で私を見つめる横島さん。その迫力に押されて、私は思わずコクンと頷きました。

 「うわぁぁぁぁぁぁんっ!!!!やっぱおキヌちゃんはエエ娘や〜っ!!!!!!」

 横島さん、大粒の涙を流して喜んでます……。しかも両膝を突いて両手を高々と上げて『うっしゃあ!!』とか叫んでますし。てっきり軽蔑されるとばかり思ってたのに……。ということは……


 やったぁ!!横島さんとデート成立〜!!!

 ありがとう、くっきー恋愛の神様♪
 というか向こうでは横島さんが『俺の時代が来た〜!!』とか叫んでました……。


……というわけで、私は舞い上がってるのでした。

 「よっこしまさんっとでーと♪よっこしまさんっとでーと♪よっこしまさんっと……」


 「極楽大冒険」

 Report.02 Twin memories


 -Narration-


 二月もそろそろ終わる頃、春の兆しがあちこちで芽生え始める。
 季節の春だけではない、ある二人にとっての春もそろそろ訪れようと……。

 「しゅっしゅ、しゅっしゅ」

 JLK葉線の舞浜駅前で、一人の男が軽快なフットワークを見せてジャブを振るっていた。所謂『シャドーボクシング』というやつである。

 「流石に女の子を待つ男のパンチは違うぜ……」

 一人でシャドーボクシングやってフフフ……とほくそ笑んでる彼の姿は端から見れば怪しすぎる。よって周囲は冷や汗をかいていた。

 「女の子が……女の子が俺をデートに誘いおった……!!俺を……この俺を…………だーっはっはっはっはっは!!!!」

 彼は勝利の笑いを上げていた。一般人が見ればだいぶ頭がいっちゃってるみたいだと言われても仕方が無いであろう。

 「しかし、デジャヴーランドってのがなあ。俺、あそこにはあまりいい思い出が無かったりするんだよな」

 そう、彼・横島忠夫はこの千葉県にあるくせに『東京デジャヴーランド』と名乗っているテーマパークで、マッキーキャットに蹴り入れられたりマニーキャットにガンつけられたりロボットと間違えられて解体されそうになったりと……ろくな思い出が無かったのである。

 「今までいい思い出が無かったなら、今日いい思い出を作ればいいってことだがな」

 横島は前向きに考えた。しかし彼の事だ、今までの経験からして果たしていい思い出を実際に作ることが出来るのか。

 「うるせえよ」

 ナレーションに突っ込みいれるな。

 「今は午前六時三十分か。人気アトラクションは結構並ぶから早めに行きましょ、とあの娘がせかすからはよ起きたんだけど……その彼女がまだ来てねーんだよな、これが」

 デジャヴーランドの開園時間は午前八時。いくらチケットを用意しているとはいえ、日曜日のこの手のテーマパークは混雑するのは最早お約束。だからこそ早く並ばなければならないのであるが……。肝心の相手の女の子がこないことに、横島は不安を感じていた。

 「まさか、あの娘のことだから迷子になってるんじゃね―だろうな……。それともあの娘がべらぼうに可愛いもんだから、電車ん中で先走った痴漢に襲われたとか……だとしたら、俺はそいつを『許るさーん!!』

 振り仮名を間違った叫びをあげるほど不安になっていた横島。

 「横島さはーんっ!!待たせてごめんなさい、遅れちゃってー!!」

 舞浜駅から、慌てふためいた様子で一人の少女が横島のもとに駆け寄ってきた。 そして横島の不安は、彼女の元気な声によってかき消されることとなった。

 「東京駅で、飛び降り自殺した幽霊さんに道を尋ねられて……それで時間がかかってしまって」

 「なんじゃそりゃ」

 「すみません。困ってる人を見ると放っておけない性分で……」

 普通じゃない会話をまるで天気の話でもするかのように普通にしてしまう少女。自分自身つい最近まで幽霊であって、今でも近所の浮遊霊達の親睦会に参加してる彼女にとっては普通のことなのだろうが。

 「まあ、俺は別に怒ったりしてないからそれはもういいよ。しっかし……可愛い服やなあ……」

 横島は、少女が着ている衣装に見とれていた。大きな帽子に赤い上着、白いロングスカートとカシミヤのストールという清楚な彼女の魅力を更に引き出すコーディネートにノックアウトされたという感じである。

 「ウフフ、せっかくの横島さんと二人っきりのデートですから。思いきって奮発しちゃいました♪気に入ってもらえて嬉しいですっ」

 微笑みながら無邪気にクルリと回って、ストールとスカート、そして彼女自慢の長く艶やかな紺色がかった黒髪を靡かせる少女―氷室キヌの姿に、横島はもはや理性がオーバーヒートしてしまっていた。

 (いい……実にいい!!新鮮や!!おキヌちゃんの新たな魅力発見や!!)

 普段、チチシリフトモモとか叫んでる横島であるが、こういう清楚で可愛らしい少女の魅力は彼にとってそれ以上の破壊力を秘めているのであろう。グッと右の拳を握り締めて『生きてて良かった……』と感慨にふけってる横島に対して、キヌが右手の人差し指を唇に当てて語りかけてきた。

 「横島さん、思いっきり普段のまんまの格好ですね……」

 「う゛っ……」

 キヌが言ったとおり、横島は赤バンダナと上下とも青いデニムという、お決まりの格好であった。

 「こ、これでも二着しかないデニムの綺麗なほうを着てきているんだよ……」

 普段はヨレヨレの方を着て、ここ一番しゃれ込むときには綺麗なほうを着ていく。着るものに金をかける余裕が無い貧乏人の悲しき宿命である。というか横島自身も着るものに関しては結構無頓着なのだが。

 「みんなビンボーが悪いんじゃ!!」

 「もう、せっかくの楽しいデートなのにふてくされちゃ駄目ですよ。さ、順番並びましょ」

 そう言ってキヌは横島の手を引っ張って、デジャヴーランド入場門の行列に加わるのであった。


 「でも、丁度今日がお仕事も何にも無い日で、良かったですね」

 キヌが横島とデートの予定を立てたこの日は、丁度美神は南アフリカの精霊石のオークションに出かけていた。シロとタマモには『肉と油揚げあげるから、ちゃんとお留守番してるのよ』と取引を成立させた。こうして誰にも邪魔されない、大好きな彼との二人っきりのデートを無事に迎えることが出来たのであった。

 「それにお空も雲はどこにもありません!まるで天が私達を祝福してるみたいですっ!!これを運命的といわないで何を……あ、痛っ」

 一人でトリップ状態になってたキヌを、横島が軽いデコピンをくらわして現世に引きずり戻す。

 「こら。一人で盛り上がらないように」

 「あぅ……横島さんのいぢわる」

 普段真面目なキヌだが、この辺は横島と大して変わらないのかもしれない。最も彼女の場合は対象が特定の人物ただ一人なので、その点では横島よりはしっかりしているとも言えなくも無いが。

 入場門前に突っ立っている時計が指している現在の時刻は午前七時十八分。開場までまだ四十二分も時間がある。

 (ああ……、待ち遠しいなぁ……)

 楽しみにしていると、どうしても待ち時間というのは長く、じれったく感じてしまうものである。あまりのじれったさに、隣の横島の腕にしがみつくキヌ。

 「ちょっ、おキヌちゃん?」

 「こうしてると退屈しないんです。いいですよね?」

 突然しがみついてきたキヌにドギマギする横島。だがヒマワリのような笑顔を見せられては、断ろうにも断りきれない。

 「あ、ああ……」

 困った顔を見せる横島であるが、『いい匂いがするなぁ……』と下心も抱いていたのであった。しかしこんなことも思っていた。

 (……この笑顔、ホント癒されるよな。やっぱりこの娘は何時までも笑顔で居て欲しいよな……)


 「ん?ありゃ横島じゃねーか」

 デジャヴーランド正門前を通りかかる横島のクラスメートのメガネ(仮名)が、横島の姿を見かけた。流石にこの行列の中でもいつもの格好をしていればすぐ目に付くものである。

 「なんであいつがここに居るんだ?」

 そういうメガネ(仮名)だって彼女が居ないくせに何故デジャヴーランドの傍にいるんだ……というツッコミを入れたくなる。恐らくは彼女が居ない寂しさを紛らわすために『脳内彼女』とデートを楽しもうとしたのであろう。哀しすぎる。
 そんなメガネ(仮名)が横島の隣を見ると嬉しそうな顔をした、おめかしした美少女が彼の腕にしがみついている光景が……。

 「な……なななななななな!!!??????」

 メガネ(仮名)はその光景を見て凍りついた。

 「よ……横島のやつがあんな美少女とデジャヴーランドでデートだとォォォォォッ!!!??????」

 あの『モテナイ君』の代表格であった横島忠夫が美少女とデジャヴーランドの入場門前に並んでいる……メガネ(仮名)にとってはそれはまさに『絶望』であった。横島という最後の砦があったからこそ、モテない自分のアイデンティティを確立出来たのだから。しかし、現実に横島は現在隣で腕にしがみついている美少女・氷室キヌだけでなく、他の女性にも結構モテていたりする。最も本人にはそんな自覚は全然無いが。

 「横島があんな美少女とデジャヴーランドでデートするような仲だなんて、有り得ん!!絶対に有り得ん!!!横島……今日から貴様は俺の怨敵だ!!!!」

 メガネ(仮名)の両の眼には、メガネを透かして嫉妬の炎が浮かび上がっていた。いや、この場合は嫉妬ではなくモテない男のひがみと言ったほうがより正確だろうが。

 「横島ァァァァァァッ!!!!!」

 「お、メガネ(仮名)。お前が何でこんなところに居るんだ?」

 「お前……そのいかにも天然で世間知らずな美少女をいい様に騙くらかして付き合わせているんだろ!!絶対そうだ!!そうに違いねぇ!!!」

 「な……?何テキトーなことぬかしてんじゃぁ!!!!」

 「そこの彼女!!君は騙されてるんだ!!こいつはおっぱい星人で超が三つつくほどのスケベ男なんだぞ!!こいつと付き合ってたらいずれセクハラされて泣かされるに決まってる!!」

 「言いたい放題言ってんじゃね……「ちょっと言い過ぎなんじゃないですか!?」……おキヌちゃん?」

 横島が反論しようとしたところに、キヌがキッとした目つきをして割って入る。

 「横島さんは本当にいい人なんですよ?そりゃ、ちょっと……いえ、かなりどうしようもないほどスケベなのは違いないですけど、横島さんはいつだって私に優しいんです。私だけじゃありません。横島さんと一緒にいて、その優しさに触れた人は、みんな横島さんのこと好きになっちゃうんです」

 「え……?」

 キヌは全くの正直な発言をする。多少天然入ってるが。
 しかしメガネ(仮名)には全くそれが信じられない。それほど横島に対する先入観が強すぎるということなのだが……。

 「横島ァッ!!貴様、この娘を洗脳しただろうっ!!!正直に罪を認めろ!!そうすれば酌量の余地はあるぞ!!」

 「アフォかぁぁぁぁぁっ!!!!」

 「……あの……あんまり横島さんのこと悪く言うと……いくら私でも、怒っちゃいますよ?」

 普段大人しくて優しい娘ほど、怒ったときが怖いとはよく言われることである。

 「そういうことだ。俺も彼女の怒るとこは見たくねーからな。さっさとお引取り願おう」

 横島は落ち着いた、そしてどこか勝ち誇ったような態度でシッ、シッと掌を振っていた。

 「ド畜生がァァァァァァッ!!!!!!世の中何かが間違ってるぞォォォォッ!!!!!」

 メガネ(仮名)は叫び、涙を流しながら猛ダッシュでその場から去っていった。

 「まったく、モテ無い男のひがみってのは醜いなぁ。俺も人のこと言えねーけどさ」

 「ひがみじゃなくて嫉妬じゃ!!」

 去りながらもツッコミを入れるメガネ(仮名)。強く生きろ……。


 そんなこんなもあって、ようやく時計の針が午前八時を指した。

 「お待たせいたしました。只今より東京デジャヴーランドを開園いたします……」

 ついに、待ちに待ったデジャヴーランド開園を知らせるアナウンスが響きわたり、入場門が開かれた。

 「さ、横島さん!めいっぱい、楽しみましょう!!」

 大はしゃぎで駆け出すキヌと、そんな彼女に振り回されつつある横島が門をくぐる。

 「じゃ、最初はどこに行く?」

 「え〜っとですねぇ……」

 まずどこに行こうかと尋ねる横島が問うと、キヌは手提げ鞄からパンフレットを出して行きたいアトラクションを探す。

 「ここですね♪」

 キヌの人差し指がさしてるのは、『グレートウォールマウンテン』。所謂『絶叫系マシン』のアトラクションであった。

 「え?おキヌちゃん……これって……」

 「はい♪ずっと前から乗ってみたかったんです♪」

 「あ、ああ……そうなんだ……」

 にこやかな笑顔を浮かべるキヌとは対照的に、横島はこめかみに冷や汗を浮かべていた。


 「このアトラクションはCチケットです!大人一人千五百円になります」

 「げ……」

 一人千五百円と言われて尻ごむ横島。貧乏人ゆえの悲哀である。

 「貧乏って……貧乏って……」

 「横島さん、お金の心配は要らないですよ。私が立て替えておきますから」

 「えっ!?マジ!?」

 「はい。横島さんと楽しめるなら、これくらいの出費なんてへっちゃらです♪」

 「くぅぅぅぅっ!!やっぱエエ娘やぁぁぁっ!!」

 キヌの優しさを受け止めた横島は、感激のあまり絶叫アトラクションへの不安が何時の間にか消え失せていた。しかし、同時にちょっとした疑問も浮かび上がった。

 「ところでさー、おキヌちゃん。一体給料いくら貰ってんの?まさか日給三十円のまんまってことは……ないよなぁ?」

 「え……?」


 ひゅううううう…………


 気まずい空気を乗せた風がが二人の間を通り過ぎた。


 「午前中だけでも、結構乗りましたねー♪」

 「ああ……」

 時刻は正午を指していた。丁度お昼時ということで、二人はレストランでちょっと休憩。満面の笑みを浮かべているキヌと、どこかげっそりしている横島の二人である。

 「横島さーん、なんて顔してるんですか?」

 「そりゃあ、絶叫系を何回も乗ってりゃさぁ……。つかおキヌちゃんが絶叫系好きだなんて思ってなかったし……」

 「フフッ、そりゃ私、幽霊の時に空を飛びまわってましたからね。生身の身体であのスリルを味わうのもまた面白くて」

 「そんなもんなのかねー」

 「そういうものです。で、横島さんは何を頼みます?」

 メニュー表を横島に差し出すキヌ。無論この昼食もキヌのおごりであるのは言うまでも無い。

 「うーん、あんまおキヌちゃんに出費させるのもなんだから、俺はこの一番安いやつでいいよ」

 「そんな遠慮しなくてもいいのに。でも、横島さんが言うんだったら」

 (普通、こういうときは男が女の子におごるもんなんだけどなぁ……。やっぱ貧乏はつれーよぉ……)

 服装といい、先ほどのアトラクションの件といい、つくづく自分の貧乏が恨めしく思う横島であった。

 「じゃ、私はこの『いちごさんでー』を」

 「つか、おキヌちゃんがそれ頼んだらなんかシャレにならんような気がするんやけど……」

 「どうしてですか?」

 「解らなきゃ解らないでいいんだよ……」


 「お待たせいたしました」

 数分後にはそれぞれの注文した品がテーブルの上に置かれた。横島は遠慮して一番安いランチ、キヌはいちごサンデーである。

 「あ、おいしい〜。やっぱりこのいちごさんでー、甘くておいしいですね♪」

 幸せそうにスプーンをくわえながら目を潤わせて感激するキヌ。その姿があまりにも可愛くてしょうがないと横島は思う。テーブルの下で拳をぐっと握り締めながら。

 (幸せそうでかぁいいじゃねーか……。そりゃあおキヌちゃんはいつも可愛いけどさ、このとびっきりの幸せいっぱいの笑顔ってのは俺の前でしか見せないんだよなあ……)

 もしかして、この笑顔を独占できるのは俺だけなのか?とか思いつつ、無邪気にいちごサンデーを味わうキヌをボーッと見つめる横島。そしてふと物思いにふける。

 (よく考えりゃ、おキヌちゃんは妖怪を封印するための人身御供となって、三百年間幽霊としてずっと山奥で一人ぼっちの寂しい日々を送ってたんだよな。三百年も山奥で孤独な日々を過ごすなんて、俺には想像できねーほど辛いことなのは間違いねーよな。だからこそ、せっかく生き返って得た『第二の人生』は、釣りあいがとれねーほどめいっぱい幸せに過ごして欲しいと思わずには……)

 「横島さん……。もしかして横島さんもいちごさんでー食べたいんですか?」

 物思いにふけっていたせいか、キヌからそう思われてしまったようだ。

 「いや、別に……」

 「こんなにおいしいんですから、横島さんが欲しがるのも無理ありませんね。じゃ、食べさせてあげますから」

 キヌはにっこりと、いちごサンデーをスプーンで一口分すくって横島のほうへと近づけた。もちろんそのスプーンは先ほどキヌが口の中に入れたものであることは言わずもがなである。そしてこの行為自体も言わずと知れた、『あーん♪』というやつだ。恥ずかしいことこの上ない行為の上位トップ5に必ず入るとも言われるアレである。

 「え……ちょ、ちょっと……」

 いつもは美女を見ると自分のほうからセクハラ行為に走る煩悩魔人・横島であるが、女の子の方から迫られるととたんに物怖じしてしまうのであった。

 「いや、いいって。おキヌちゃんが全部食べてよ」

 「ほら、早くしないと溶けちゃいますよー」

 ニコニコ笑顔のキヌは、全く聞く耳持たない。

 (……つかこのスプーンで食ったら俺、おキヌちゃんと間接キスするってことじゃないか……!!)

 二人の間の時間が静止する。しかし周囲の時間は動いており、流れれば流れるほど注目が集まってしまうのも事実である。第一、キヌは全く引きそうにも無い。

 (くっ……この状況を脱するに最善かつ最短の選択肢を取るか……)

 とうとう観念した横島は、スプーンに自分の口を近づける。そして……。


 「はい、あー……「横島ァァァッ!!!」えっ!?」

 「なっ!?」

 突然の叫び声に、二人は目を丸くした。

 「美少女とデートだけでは飽きたらず、いちごサンデーを『あーん』してもらうだとぉ!!しかも既に女の子の口に入ったスプーンで!!!!」

 そこに居たのは、血の涙を流し背後に負のオーラを纏っていたメガネ(仮名)であった。

 「お前……泣いて帰ったんじゃね―のか?」

 「友人として、てめーひとりにいい目を見せてたまるかってんだぁぁぁぁっ!!!!男の友情をナメるなぁっ!!!!!不幸は分かち合うが、幸福は邪魔してやるのが我が校の鉄の掟じゃぁっ!!!!!」

 「もはやそれは友情じゃなくてただのひがみだっつーの……」

 怒るどころか呆れ果てる横島。その彼のテーブル越しでは少女がニコニコ笑いながら、静かに、あくまで静かにただならぬオーラを漂わせていた。

 「横島さん」

 「え?」

 キヌは手提げ鞄の中から、耳栓とアイマスクを出して横島に手渡す。

 「しばらくの間、これを付けててください」

 「え?でも……」

 「でももすともありません。付けてといったら付けてください。私が外すまで、絶対外しちゃ駄目ですよ♪」

 ニコニコ笑顔でも目が笑っていない。逆らったらいかん、そう確信した横島は『触らぬ神に祟り無し』の言葉を思い出し、キヌの言うことに素直に従うことにした。

 「は、はい……」

 横島がアイマスクと耳栓を装着したのを確認すると、キヌはすっくと立ち上がってメガネ(仮名)を睨みつける。

 「一度ならず二度までも……」

 「え?な、何怒ってるんだよ君!?俺はただ、そのスケベ男に騙されてる君を救おうと……」

 メガネ(仮名)はキヌの背後に漂うオーラにたじろぐ。そのオーラは、メガネ(仮名)の嫉妬によって生み出された負のオーラすら完全に凌駕していた。さらには生身であるにもかかわらず、青白い人魂を二つ従えていた。

 「『人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄に堕ちろ』って言葉、ご存知ですよね?」

 「え……?恋路って……!?」

 「今、貴方は私の恋路を邪魔しました。さすがにこの場にはお馬さんは居ませんが、それ相応のお仕置きは覚悟してもらいます」

 キヌは手提げ鞄から、なにやら怪しい装飾の笛を取り出し、口に当てた。

 『受けなさい!!死の拷問……デス・ローレライィィィィィィィッ!!


 ピョリピョリピョリリリリリリリィッ!!!!!!!!


 キヌの奏でる笛の音は音調と音程というものが存在しない、まるで米軍の新兵器を思わせるかのような怪音波であった。その音波は百人が一斉に黒板を引っかき、千人が一度に紙にマジックで線を引く。それ以上の音波をキヌは奏で続けていた。

 「ぎょぅぁぁぁぁぁっ、耳が、耳がァァァァァァッ!!!」

 キヌの音波とともに、メガネ(仮名)は口から泡を吹き、あっちの世界へ旅立ったのであった……。

 「悪霊退散!!……なんちゃって♪」

 メガネ(仮名)が完全に意識を失ったのを確認すると、キヌはテーブルに戻って待たせていた想い人のアイマスクと耳栓を外す。

 「横島さん、待たせてしまってすみません」

 「って、何やってたのさ……」

 「ああ、あの方なら『めっ!』と叱ったら帰っちゃいましたよ」

 「ああ、そうなんだ……」

 (良かったです。横島さんにはあの仕置きを見て欲しく無かったですから。もしアレを見られたら『黒キヌ』とか言われれちゃいます……)

 先ほどの事の顛末を見られなかったことを安心するキヌ。しかし横島は『見なかった』というより『見てはいけない』という気持ちのほうが強かったわけなのだが。

 「さ、続きを……あああ〜っ!!!

 先ほど邪魔が入って中断された『あ〜ん』の続きをやろうとしたキヌだったが、案の定いちごサンデーはもうドロドロに溶けていた……。

 (ああんっ、もう!!なんであんなとってもいいところで邪魔が入るのよーっ!!!)

 気まぐれな恋愛の神様を恨めしく思うキヌであった。


 午後は午前とはうって違って、しっとり系のアトラクションを中心に楽しんだ二人。

 「やっぱ落ち着くなー、この手のアトラクションって」

 「そうですねー」

 ランチタイムを邪魔されたキヌの機嫌もすっかり良くなり、最高のデート日和と言ってもいいくらいの良い雰囲気となった。

 「あ、マッキーキャットさんにマニーキャットさんです。横島さん、せっかくですから記念写真撮りましょ♪」

 「記念写真って……カメラ持ってるの?」

 「はい!この日の為に『でじたるかめら』買っちゃいましたから!……あれ、横島さん?」

 (……俺には到底買えそうにねー代物だな……)

 またもや貧乏を恨めしく思い、溜め息をつく横島であった。

 通行人に撮影を頼み、マッキー&マニーをバックにツーショット。デジカメの再生機能で写った画像をチェックするキヌ。

 「うわ〜っ、綺麗に写ってますねー」

 綺麗に撮れた大好きな人とのツーショットに幸せいっぱいのキヌだった。そんな幸せそうなキヌを見て、横島もどこか嬉しそうだ。

 (そうだよな、彼女には幸せになってもらわねーとな、三百年分利子つけて。……こんなこと思ってしまうってことは、俺ってやっぱり……)

 「おキヌちゃん、今とっても幸せかい?」

 「はい、私とっても幸せですよ。横島さんとこうして二人っきりでデートして、素的な想い出をつくっていって……」

 満面の笑顔で横島の質問に答えるキヌだったが、その直後寂しそうな顔をする。

 「でも……だからこそ不安になるんですよね」

 「不安?」

 「私……元々はとっくの昔に死んでしまって、三百年間現世を彷徨い続けた幽霊なんですよ。それなのに、生き返ってこんなに幸せになっていいのかなって……」

 「おキヌちゃん……?」

 「そうこう考えてると、これは夢なんじゃないのかなって思えてきて……。だから何時かは夢は醒めて、私は元の幽霊に戻ってるのかも……」

 夢。
 確かに普通に考えれば、既に死んでしまって幽霊となった存在が、人間に生き返れるはずなど無い。そして死者蘇生術の完全な成功例は、彼女……氷室キヌが唯一のケースであった。だからこそ、『自分だけ生き返れて幸せになっていいのか』という不安に駆り立てられるのであろう。
 そんな不安に包まれ、今にも涙をこぼしそうな痛々しい表情をしてしまうキヌ。

 (……何言ってるんだよ……。そんなこと……)

 そしてそんな彼女の姿を見て、横島はある決意をする。

 「なあ、おキヌちゃん」

 「はい?」

 「ちょっと……俺に付き合ってくれる?」


 「あのぉ……。一体どこに行くんですか?」

 「ついてから〜、のおったのしみ〜♪」

 JLK葉線の電車の中にて。二人は夜の花火ショーが残ってるにもかかわらずデジャヴーランドを後にし、K葉線の電車で何処へと向かっていた。横島が怪しい歌を歌っていることについてはノーコメントの方向で。

 「じゃあ……、何で私目隠しされてるんです?」

 「※それもついてから〜のおったのしみ〜Yeah!!(※リピート)」

 キヌの目には、先ほど横島につけたものと同じアイマスクが付けられていた。横島が言うには『さっき俺に目隠ししたから、今度は俺が目隠しする番』とのことである。

 「おっと、電車乗り換えるから俺の手を放さないで」

 「はい」

 東京駅でK葉線から別の路線に乗り換える。この乗り換えはかなり距離があることで有名だ。目隠ししているキヌを安全に、そして正確にエスコートする横島。

 (横島さん……一体私をどこに連れてくんでしょうか……?というかもう、このまま何処へと二人でどこまでも……きゃっ、私ったら……)

 ずっと手を繋いでいる所為か、キヌの妄想がヒートアップしてしまっていた。

 (でも横島さんの顔が見れないのがなぁ……)

 と、残念がってもいたが。


 キヌにとっては何処かもわからない駅で電車を降り、改札を出る。そこから徒歩で数分の場所。

 「よし着いた。もういいよ、目隠し取って」

 横島に言われてようやくアイマスクを外せるようになったキヌは、その開放された両目に写った風景に驚く。

 「え……?横島さん、ここって……?」

 それは、東京都心に立ちそびえる全高333mの朱色の鉄の塔。浅黄色の夕焼けが、その塔をさらに真紅に染めあげる。そしてこの場所は、何よりも横島忠夫にとっての『想い出の場所』でもある。

 「そ、東京タワーさ」

 「それはわかりますけど、どうしてここに私を?」

 「そりゃ、おキヌちゃんに見て欲しいものがあるからさ。ここからじゃ見えねーから、場所を移すよ。だから……」

 「え、ええええええっ!!!???」

 ゴニョゴニョとした小声で話す横島の言葉に、キヌは顔を真っ赤にしてしまう。それもそのはず、『お姫様抱っこしていいかい?』なのだから……。
 で、『パンパカパーン』っていうBGMがあまりにも似合いそうな、美少女をお姫様抱っこした十八歳の男子がそこに居た。

 「お、俺だって恥ずかしいんじゃ!!そこ!!見世物じゃねーからジロジロ見るなっ!!」

 誰に突っ込んでるんだ。キヌに至っては、大好きな人の両腕で抱きかかえられたあまりの嬉しさでまたもやステキでワンダーな世界に逝ってしまっているし。

 (は、恥ずかしいのは私もです……。でも、横島さんの両腕で抱かれるなんて、私……もう……)

 「おーい、赤くなるのはいいけどこれから場所移動するから。しっかり捕まってるんだよ」

 「はい!」

 (あぁ……横島さんの顔がこんな近くに……、私、私……)

 横島は、右の下腕でキヌの両足をしっかりと支えつつ、自由になった右手首でビー玉状の得体の知れないアイテム……彼だけが作り出すことができる都合のいい代物『文珠』に念を込める。キヌの方も、横島の首にしっかりと両腕でしがみつく。もちろん視点は横島の顔で固定されているのはお約束である。

 ”跳””躍”

 文珠にその二文字が刻まれ、横島の両足に光となって纏わり着く。

 「横島忠夫、突貫します!!」


 ヒョォォォォォォォォッ!!!


 凄い勢いで、キヌを抱きかかえたまま横島が上空へと跳び上がった。見る見るうちに地上が遠のき、東京タワーが下に流れていく。

 「うぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 コウ・ウ●キのような叫び声を上げながら横島はどんどん上へ上へと跳んでゆく。阻止限界点でも突破するのか。

 「つぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 丁度上昇が止まったところで、地上何百メートルにもなる展望台の屋根上が差し掛かった。そして下降とともにそこに着地する。

 「到着……っと」

 「えっ……、もう着いちゃったんですか」

 屋根上に着いたところで、横島は上昇中ずっと抱きかかえていたキヌを降ろす。ちなみに彼女は上昇中、ずっとドリームの中にいたらしく終始ぼ〜っとしていた。


 キヌが落ち着いたところで、横島は西の空を指差す。

 「ほら、あれを見てみなよ」

 横島が指差したその先には、昼と夜との僅かな間のみ見せる幻想的な風景があった。浅黄色の陽が地平線の彼方へと沈み行く。町並みも紅に染まってゆく。地上から何百メートルも高いこの場所で無ければ見ることのできない絶景だ。

 「美しいだろ……」

 「はい、とても美しいです……」

 二人はほんの一時の幻想に身をゆだねる。それはどんな宝石よりも、芸術品よりも美しいものだった。決して人の手では作り出せない美しきもの。

 (でも……どうして私に……?これは横島さんにとって忘れられない過去、それも余所者なんて無用の想い出のはずなのに……)

 この場所でしか見られないこの風景は、横島にとっては特別な想い出のはずである。それも、彼の心の中に誰にも触れられたくない想い出。何故それを自分に見せてくれたのか、キヌは疑問に思っていた。

 「あれ?もしかしてさ、何でこの夕日を見せてくれたのかって思ってない?」

 横島に思ってたことを見透かされて、ドキッとするキヌ。
 この夕日にまつわることは、横島の周囲では暗黙のタブーとされていた。しかし今、彼自身がその夕日をキヌだけに見せている。これが何を意味するのか、キヌには様々な想いが交錯して理解できずにいた。

 「確かにさ、アイツ……ルシオラが死んでしまったことはショックだった。俺は絶望し、自分の中に閉じこもって周囲を遠ざけていた」

 横島は淡々と、かつて愛した魔族の少女の想い出を語る。

 「でも、流れていく時間の中で俺はアイツの本当の気持ちも理解せずに生きることから目を背けていたってことに気付き、目が醒めたんだ。アイツは俺を生かすために死んだ。けど決して俺のことを恨んだりなんかしちゃいねえ。アイツの望みは生き残った俺の幸せ唯一つなんだから」

 「横島さん……」

 「アイツが死んだことでで誰かを恨んだりとか、自分を責めたりとかして俺が闇に堕ちるなんてことになったら、それこそアイツの死は無駄になっちまう。俺はそれに気付いたとき、本当に済まない事をしてきたと思ったよ。アイツにも、周囲の人たちにも」

 横島の目は、ほんの少しだけ悲しみを秘めつつもしっかりと前を見つめていた。

 「それに俺はゴーストスイーパーなんて仕事やってるわけだし。おキヌちゃん、GSの仕事ってどういう風に考えてる?」

 「GSのお仕事……ですか」

 「ああ。正直に言ってくれよ」

 「はい。私にとってのGSのお仕事とは……迷える霊の未練を無くし、成仏に導くことだと考えています。独善的といえばそうかもしれませんけど……」

 キヌらしい回答であった。彼女自身、成仏できなくて幽霊になったはずなのに誰にも何の怨みも抱かなかったどころか、他をいたわる慈愛の心を忘れなかった故にネクロマンサーの笛さえも使いこなせてみせたのである。

 「なるほど。俺はこう思ってるんだけど」

 横島は夕日をバックに、渋く決めてみる。

 「俺がこの仕事始めたのって、最初は美神さんの色香目当てという不純な動機だったんだよなぁ……。だからこそ時給255円とかいうはっきり言って労働基準法違反な薄給で働いてたわけだ」

 「私なんて日給三十円でしたよ」

 「ま、それは置いといて。で、その仕事やってるうちにおキヌちゃんやルシオラ、いろんな人・妖怪・霊・魔族……出会いと別れを繰り返して、GSっていう仕事の本質ってのがわかってきたような気がするんだ」

 「本質……?」

 「ゴーストスイーパーは頑張って今を生きている人間のため、死してなお生前の概念に囚われ死という現実を受け入れずに現世を彷徨い生き人に災いをもたらす亡霊に過去との決着をつけさせ成仏させる。だから、何時までも過去に縛られてちゃゴーストスイーパーじゃねぇんだよ」

 「……!!」

 横島のこの言葉に、キヌはハッと気付く。

 「わかったろ?俺が言ってることが。おキヌちゃんが過去幽霊だったからとか、そんなことに縛られることは無いんだよ。いろんな巡り合わせがあって、今をこうして生きている。それは決して夢なんかじゃない。そして大切なのは、これからじゃないか」

 「横島さんっ……!」

 「ま、今でも美神さんの丁稚に甘んじてる俺が言うような台詞じゃねーけどさ」

 横島の一言一言に込められた優しさに心を打たれるキヌ。デジャヴーランドで見せた不安はもう、そこには無かった。

 「だから、これからもっともっと幸せになったっていいんだよ。多分、あの導師のおっさんとか女華姫とかいうゴッツイ顔のお姫さんもそれを願って後で生き返れるような仕掛けを用意したんじゃないかと思うよ」

 その笑顔は決して嘘偽りなど無い、横島の全くの素直な気持ちを写し出していた。

 「本当に、本当に……、私、幸せになってもいいんですよね?」

 「言っただろ」

 「じゃ……」

 キヌは突然、横島の手を握り締め、彼の目の前に曇りの無い笑顔を近づけた。そして頬を紅く染め、ポツリポツリと言葉を紡ぐ。

 「……私を幸せにしてください」

 「……へ?」

 この言葉に目が点になる横島。

 「だって、元々は幽霊だった私が今をこうして生きているのは、あの日横島さんに出逢えた事からはじまったんです。だから……、横島さん無くして私の幸せはありえないんです……!」

 「で、でも俺ってさー、バカでスケベで浮気症で煩悩のままに生きる人生を満更でもないと思ってて、ここ一番は臆病になっちまうどーしよーもねー男だぞ?そんな俺がおキヌちゃんを幸せにだなんて……」

 気が動転してた所為か自虐的に呟く横島に対し、キヌは照れた様子など微塵も無い表情で語りかける。

 「そんなことないですよ!どうして私が、ずっと、ずっと横島さんのもとを離れなかったか、考えたことありますか?」

 「……」

 「私……自惚れてるかもしれないけど、誰よりも横島さんの真実の姿を知ってるつもりだと思ってます。愛を求めていたが故の、その心根に流れる本当の優しさを……」

 「優しさ……?」

 「だから私は横島さんのもとを離れるつもりなんて無いですし、ルシオラさんだってその優しさに惹かれたんだと思うんです」

 ルシオラの名が出てきたことに、横島の心が動く。心の傷をえぐるような発言ではない、全くの素直な言葉に感じられた。

 (……そっか……。だからルシオラは、俺の為に……。そして、この娘も……)

 キヌもここまで言ってしまった以上、もう後戻りはできないと覚悟していた。そして、ついに前から聞こうと思っていたことを口にする。

 「でも……今、そしてこれから私が横島さんの傍にいることを、ルシオラさんは許してくれるでしょうか?」

 文字通り命がけで横島を愛したルシオラの隣で、想いを打ち明けられずにずっと見ているだけだったキヌ。そして、ルシオラは今はもう横島の心の中の存在。だからこそ聞けなかった。それは横島の心の傷に触れることにもなりかねなかったのだから。
 しかし先ほどの横島の『過去に縛られることは無い。大切なのはこれからだ』という言葉で、それを聞く勇気が生まれていた。もう迷いは何も無い。

 「……許すも許さないも、ルシオラが一番許さないことは、『俺が幸せにならないこと』だから」

 横島の表情にも、曇りも悔やみも何も無い。そしてそれは決して演技などではない。ありのままの『横島忠夫』であった。

 「この前、俺の夢の中にルシオラが出てきてな。『現実に、未来に目を向けて、幸せになって欲しい』って言ってくれたんだよ。さっきも言ったようにアイツの願いは俺の幸せ唯一つだから、俺が幸せになれるんだったらアイツは許してくれるはずさ」

 そして横島は、どこか照れたような顔をする。

 「俺……、この前のバレンタインの時も思ったんだけど、アイツが死んで自暴自棄になった俺が立ち直ることができたのは、おキヌちゃんのお陰だと思うんだ」

 照れながらも、その視線はまっすぐとキヌの瞳を見つめていた。

 ドキンッ

 キヌの胸の鼓動が高鳴り、心の奥底に暖かいものが込み上げてくる。

 「いや、それだけじゃない。あの日おキヌちゃんと出逢えたから、いつもおキヌちゃんが傍にいてくれたからこそ、今の俺が有るんだ。GS試験のとき、香港のとき、死津喪との戦いのとき、ワルキューレに戦力外通告されたとき……」

 (ついでに言えば、おキヌちゃんが俺の飯作ってくれなきゃ俺、とっくの昔に餓死してたかもしんねーな……)

 少年の嘘偽りの無い心からの声に、いつしか少女の瞳には涙があふれていた。

 「だから……、俺を幸せにできるのは、今はおキヌちゃんしかいない……そう思うんだ……」

 自分の言った言葉に恥ずかしがる横島。初々しくもある。

 「横島さん……私、これからも横島さんの傍にいてもいいんですよね……」

 「も、もちろんさっ」

 普段見せない横島の真摯な態度に対し、キヌもまた裏表の無い素直な気持ちを打ち明ける。

 「横島さんを幸せにできるのが私だけなら……私を幸せにできるのも横島さんだけ……私、そう思うんです……」

 瞳を涙で濡らしながらも、キヌは自分のありのままの気持ちを決して誤魔化すことなく横島にぶつける。

 「私、横島さんのことが……世界中の何よりも、誰よりも…………大好きです……」

 「おキヌちゃん……」

 ついに言ってしまった告白。だが、キヌには恐れも後悔も何も無い。 

 (そういえば俺、以前も同じ事を言われて『こーなったらもー』とか変なこと言っちまってぶち壊しにしちまったことがあったよな……。ホント、あの時はおキヌちゃんの気持ちも解らずに酷いこと言っちまったよ……。だけど、今は……あの時とは違うぜ!)

 横島の脳裏に、かつての過ちが浮かび上がる。少女の一途な気持ちに答えなかった自分に罪悪を感じてもいた。だが、今は違う。ここまで一途に自分のことを想ってくれて、ずっと離れない少女がいてくれることが素直に嬉しく思えていた。そしてそんな少女が彼には愛しいとさえ思えた。その少女を抱きしめ、彼は告げた。

 「……これから一緒に……幸せを夢見てもいいよな……」

 「……はい!!」

 「俺も大好きだよ……おキヌちゃん……」

 「やっと、やっと横島さんが私のことを『大好き』って言ってくれた……。私、嬉しいです……」

 少女は大好きな少年の胸の中で、自分の思いが成就した嬉し涙を流していた。その二人を、夕日が優しく照らし、汚れの無い朱色の世界で包み込んだ。


 (……ルシオラ。俺、これからはおキヌちゃんと一緒に幸せを見つけることにするよ……。おキヌちゃんを幸せにできるのが俺だけなら、そして俺を幸せにできるのがおキヌちゃんだけなら、お前も許してくれるよな……?お前のことも、お前との想い出も忘れるなんて事はない。けど、俺がそれで幸せになれるんだったら、お前も喜んでくれるだろ、なっ…………)


 


 ――その後。

 「なあ、おキヌちゃん……」

 「何でしょうか?」

 「悪りーけど、幽体離脱して俺を地上に降ろしてくれない?実はさー、もう文珠のストックがねーんだよ。さっきジャンプするときに使ったので最後なんだな……」

 ズルッ

 「横島さぁん……またこのオチですかぁ……」

 せっかく恋人同士になれたというのに間の抜けた横島の発言にずっこけるキヌであった。

 (やっぱり横島さんには私がついていてあげないとダメですよね……)


 「……とうとう、新しい大切な人を見出したようですね」

 「ああ」


 ――人間界と神界の接点の一つといわれる地で、複数の存在がなにやら話し合っていた――


 「あの戦いでは、奴は大きな喪失を経験した。それは悲劇だった。その傷を隠そうと道化師を演じていたときもあった。しかし、あの娘のお陰で奴は悲劇を受け入れ、全てを許容し、自らの立つべき場所を見つけることができた。いや、奴自身強い心を取り戻したことも大きいがな」

 「そういう点では、彼は救われたといえるでしょう。それならば…………は杞憂に終わるのでは?」

 「いや、そんなことはない。いくら奴が悲劇を乗り越え、本当の自分の存在意義を見つけたとはいえ、やはりアレは……その半分は強大な『悪魔の力』を秘めているのだから。リスクは大きいぞ……」

 「でも、その力が発露するような状況に陥らなければ……。それに今の彼には『彼女』がいますから。私は彼女に賭けてみたいと思います」

 「そうか……。だが、それでも奴が秘めてる力が危険なことには変わりは無い。監視を怠るべきではないな」

 「とはいえ、デタントの関係上我々が人間界に口出しするようなことは出来ませんから。今は見守っていきましょう」




 あとがき

 第二話ですが、えらい長くなりました(爆死)。
 実は最初のプロットがご破算になったので思い切って作り直した結果こうなったという……。
 あとサブタイの元ネタがわかった人は笑ってやってください(爆笑)。

 さて、第二話でとうとう告白して、恋人同士になっちゃいました。
 『ものすごくベタで激甘なラブコメ』を目指しましたが……やっぱまだ未熟ですね、私は。
 それでもまだ『横島忠夫争奪戦』が終わったわけじゃあありません。むしろここから更に激化していくんじゃないか、と。
 ルシオラのこととか、横島の卒業後の進路とか、今回の最後のほうの布石(汗)とかまだいろいろありますからね。

 次回は、「日本よ!!私は帰ってきた!!」というヒントを出しておきます(謎)。


 コメントへの返信ー。

 >内海一弘さん
 一話書くだけでも苦労してますからねえ。気長にお付き合いしていただければ幸いです。

 >ゆんさん
 一話完結式の話でしたからね。
 一文字さんが北国の話を知ってるのは……今アニメやってるからじゃ?(謎)

 >ばーばろさん
 そうそう。やっぱ横島は軽いノリで関西芸人の魂を持った、煩悩のままに生きる人生を謳歌する男じゃないと。
 今回、おキヌちゃんの気持ちにとうとう答えてしまいましたが大変なのはこれからですよ〜。

 >meoさん
 「鳥坂さん」です(笑)。あの人も幽霊を光画部の部員にしたりしましたからねえ。

 >八雲さん
 今回はついに横キヌくっつけちゃいました(笑)。
 つか、あそこまでしてもらっておキヌちゃんの気持ちに応えなかったら、横島外道になっちまうと私は思いますよ(爆笑)。

 >SSさん
 挿絵は出来れば入れていく方針ですのでー。

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