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「極楽大冒険 Report.01」

平松タクヤ (2007-01-30 01:37/2007-01-30 02:11)
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 -Side of Yokoshima-


 『横島クン、卒業後の進路って決めてるの?』

 「まだ別に決めてねーけど」

 高校生活も残すところあと一ヶ月あまりとなった。
 この学校にも色々と思い出があるんだよな。机の妖怪に呑み込まれたり、ピアノの妖怪が出てきたり、『除霊委員会』が結成されたり、貧乏神が騒ぎを起こしたり、落第しかけておかんに殺されかけたり……と。

 で、今俺の話し相手になってるのが、さっき話した机の妖怪・愛子だったりする。
 あの一件以降俺のクラスメートとして学校で青春を味わっており、周囲にもすっかりなじんでしまっていた。

 『この時期に何も考えてないなんて、いかにも横島クンらしいわねー』

 「ま、こいつは美女さえいれば後はどうでもいいって言うような奴だからな」

 「うるせえぞ!!」

 勝手に俺をそういうキャラにするんじゃねー、メガネ(仮名)よ。

 「そういう愛子はなんなんだよ」

 『私?私は机という学校の備品だから、当分はこの学校で青春を満喫することになるわね。それも悪くないけど』

 「じゃ、こうしてお前と話してられるのもあと一ヶ月ほどってこったな」

 『そうよね。そう考えると、なんか寂しくなるわね……』

 そうなんだよな。
 愛子は俺のクラスメートとはいえ、その本体は学校の備品である『机』なんだから卒業ってのはねーだろうからな。何せあいつの中に取り込まれたときは、三十二年間も委員長やってたって聞いてたし。
 なんだかんだ言っても、こいつと過ごした学校生活は満更でもなかったけどな。宿題とか補習とか、色々手伝ってくれたし。それを考えると寂しくなる、という愛子の気持ちは解らないでもない。

 『…………今気付いたんだけど、横島クン、卒業できるの?』

 「そうだよな。横島が卒業するなんて、奇跡でも起こらん限り無理だろ」

 「な!!???」

 愛子とメガネ(仮名)が心無いことを突っ込んできた。

 『だって、横島クンって出席日数も成績もレッドゾーンじゃない。去年なんてお母さんに殺されかけたんですってね。ま、それも青春よねー』

 「大きなお世話じゃ!!!俺だってバカじゃねーぞ!!卒業式までに証書をもらうためのスケジュールはちゃんと出来とるわ!!」

 そう叫んで、俺は卒業までに必要な単位と出席日数を確保するためのスケジュールを書いたメモを愛子とメガネ(仮名)に突きつけた。
 流石に去年、落第しかけたときはナルニアから『グレートマザー』ことおかんがすっ飛んできて殺されかけたからな……。『高校卒業できずに、母親に撲殺された少年』なんてアホな死に方で新聞の見出しを飾るのは御免だからな。
 三年はちゃんと計画を立てて、確実に卒業できるようにしておいた。

 「横島のくせに計画性ある行動するなんて……こりゃもうすぐ天変地異が起こるな」

 「やかましいっ!!!!」

 お前ら、俺をなんだと思ってるんだ。

 『なんだ、卒業する気あったのね…………ハァ』

 「当たり前だろうが!!それにその溜め息はなんだ!!」

 『……さぁね』

 んなこと言いながら、その寂しそうな目はなんだ、愛子。

 「……ニブチンだねぇ、横島……」

 メガネ(仮名)よ、何を言ってるんだ。


 「極楽大冒険」

 Report.01 Pure Valentine's Day


 
 『ところで横島クン、今日は何の日かわかるわよね?』

 愛子が悪戯っぽく聞いてきた。

 「ん?今日は……俺は美神さんとこの仕事もねーし、特に変わったことはねーと思うけど」

 『……ハァ、やっぱモテない男の子って忘れたくなるのよね、今日という日を……。これも一つの青春かしらね』

 「それってどういう意味だ?」

 『ホラ、アレを見なさいよ』

 愛子が指差した先には、両手に抱えきれないほどの袋をぶら下げた、金髪の容姿端麗なヴァンパイアハーフの姿があった。それを見て、俺は今日が一体何の日なのかを鮮明に思い出した。

 「また今年もこの日が来たんか…………」

 そう、バレンタインである。
 そもそもバレンタインというのは、バレンタインというキリスト教徒がローマ皇帝に処刑された日である。またイギリス軍が歩兵戦車を完成させたのがこの日だったために戦車にバレンタインと名づけられたという逸話もある。悔し紛れに知識を身に付けたんだけどな……。
 チョコレートを送るという習慣は日本だけのものであり、製菓会社の策略によって踊らされたアベック共が大量増殖する日に歪曲されてしまったのである。
 それに俺自身も、この日にはあまり良い思い出が無かったりする。ある日は生きたチョコを5リットルも口移しに飲まされ、ある日は愛子がこっそり置いたチョコのせいで酷い目にあったり、ある日は貧乏神に遭遇したり(まあ、そのおかげで小鳩ちゃんと知り合えたんだが)、ある日は魔法薬入りチョコでとんでもない目にあったりと。
 でも、毎年俺にチョコをプレゼントしてくれるエエ娘もいるというのが救いではある。
 全て高校二年の時に起こっていたという心無いツッコミは却下の方向でな。

 「別に良いけどね、俺は。悔しかねーよ」

 ピートの事だが、まあ、今となってはもう見慣れた光景だしな。
 それにあいつの追っかけは、ヴァンパイアハーフである奴が人間の食い物を食う必要が無いって事を知ってるのだろうか。ご愁傷様、って感じだな。
 そのおかげで、俺とタイガーはあいつにプレゼントされた弁当にありつくことが出来たんだが。

 「まあ、義理チョコいっぱい食える日だと思えば気が楽になるぜ」

 「なっさけねーな……」

 「何とでも言え」

 メガネ(仮名)、空しくねーのかんなこと言って。

 『本当は羨ましいんでしょ?じゃ、これ私からの贈り物よ』

 愛子はそういうと、本体の机の引き出しの中から何かを取り出して、俺の目の前に出した。普通なら何ともないのだが、こいつの場合は机が生きてるから見方によっては不気味かもしれん。で、その愛子が出したものなんだが……。

 「……ヲイ。これ、明痔の板チョコじゃねーか……」

 『どこかの不祥事やらかした製菓会社よりはマシでしょ』 

 いくら義理だからっていって、流石にこれはねーだろ愛子……。今年のバレンタインのはじめてのチョコが明痔の板チョコってのはトラウマになるぞ、俺。

 「横島……これこそ青春ってやつだぜ……」

 『そ。青春よねー』

 何だその爽やかな笑顔は……。それに仲間を見るような生暖かい視線で見つめるな、そして肩に手を置くな、メガネ(仮名)。

 『……なんてのは冗談よ。はい、こっちが本当の私からのチョコよ』

 悪戯っぽく笑って、愛子は引き出しから立派な包みの箱を取り出した。それも結構大きい。

 「……さっきのタチの悪い冗談が無けりゃ素直に喜んでたんだけどよ」

 『それも一つの青春ってことで』

 まあ、愛子の気持ちが嘘偽り無いってことはわかるので、感謝して受け取ったけどさ。それに今年は高校生活最後のバレンタインだしな。

 「横島ァッ!!!貴様って奴はァァァァァッ!!!!」
 「横島サンは裏切り者ジャァァァァァッ!!!!」

 愛子からチョコを貰った直後、メガネ(仮名)だけでなく、俺の後ろでも巨体が唸って慟哭していた。つか、いたのかよタイガー。まったく、図体デカいくせに存在感ねーんだからさ。

 「何言ってんだよ。お前だって六女の……一文字魔理さんっていうもらえるアテがあるじゃねーか」

 「でもそれはそれ、悔しいモンは悔しいんジャァァァァァァッ!!!!!」

 付き合ってる彼女がいるくせに悔しがるなんて、俺に言わせりゃ贅沢すぎるぞ、と。

 「「ぶえっくしょぃ!!」」

 俺とタイガーは同時にくしゃみをしてしまった。誰か俺達のこと噂してんのか?

 「何ィッ!!?タイガーに……チョコ貰えるアテがあるだとォッ!!???」

 メガネ(仮名)の奴が、突然震え出した。そりゃそうだよな。普通ならどう考えてもコワモテのタイガーにチョコ貰えるアテがあるなんて思えねーし。

 「神は死んだ!!!!!」

 そう叫びながら、メガネ(仮名)は何処へと走り去ってしまった。さぞやショックだったんだろうな……。
 で、愛子がさっきの明痔の板チョコをタイガーに差し出した。

 『みっともないわね、タイガーくん。はい、私からのささやかな贈り物よ』

 「ウォォォォォン!!ありがとうっ、愛子しゃん!!!!」

 ……明痔の板チョコで感激の涙流してるよ、タイガー……お前って奴ぁ…………。

 「……う、腕がつった…………」

 俺の隣の席に、両手いっぱいのチョコを抱えてピートが座った。

 「ヘイヘイ、モテモテ君は辛いねぇ」

 「傍観して無いで助けてくれてもいいじゃないですか……」

 「うっせー、モテる男は俺の敵だ」

 「同意ですノー」

 俺とタイガーは、嫉妬のまなざしで大量のチョコ攻勢を受けたモテモテ君を見つめていた。といっても俺もタイガーも、昔ほどは女に餓えてはいねーんだけど、それでも悔しいものは悔しいのである。


 「で、横島さんたちはなにを話していたんですか?」

 とりあえず一まとめにチョコを片付けたピートが、俺・愛子・タイガーの会話に参加してきた。

 『バレンタインに嫉妬したモテない男達が傷を舐めあう青春』

 「「あのなぁ……」」

 愛子がまたタチの悪い冗談をかましてくれた。思わず俺とタイガーは二人突っ込みをしてしまったぞ。

 『冗談はさておき、もうすぐ卒業だからその話題でね』

 「卒業ですか。僕は以前から言ってた通りにGメンを目指しますけど、皆はどうしますか?」

 そういえばそうだったな。ピートの奴、700年も生きてるくせにオカルトGメンの入隊条件である高卒の資格がなかったからこの学校に転入生として入ってきたんだよな。しかもご丁寧に俺のクラスだったから、モテモテぶりに嫉妬したぞ俺は。

 「ワッシは、このままエミさんとこの仕事を続けますノー。まだGS試験も通ってないケン……」

 「まだ通ってねーのかお前は……」

 『私はさっき横島クンと話してた通り、学校の備品として青春を続けるわ。で、横島クンはまだ何も考えてないのよねー』

 「悪かったな」

 「え?横島さん……まだ卒業後の進路、決めてないんですか?」

 ピートが驚いたような顔をする。

 「そりゃ、俺も高校卒業っていう人生の節目迎えてるわけだけどさ、その後にやりたい事っていってもピンとこないんだよな」

 そう、俺、卒業した後にやりたい事っていうのがどうも釈然としねーんだよ。進学なんて俺の成績じゃまず無理だって事はわかってるので最初からアウトオブ眼中だしな。つか死語やな。
 一時期ルシオラのことで自暴自棄になってたことをまだ引きずってんじゃないのか、ともいえるけど。少なくとも今は、ルシオラのことはあの時見た夢のこともあってだいぶ整理はついてるけどな。
 で、そのときにあいつと『絶対幸せになってやる』って約束はしたんだが、その幸せがどういうものかもまだはっきりとしない。

 「ま、とりあえずは今までどおり、美神さんの助手を続ける……かな」


 -Side of Kinu-


 「うにゅう……」

 「声同じだから違和感ないけど、何どっかの雪国少女みたいな寝言言ってるんだよ。次は『けろぴー』とか言うのかい?」

 「……あ、おはようございますぅ……」

 私、何時の間にか居眠りしてしまったみたいです。何気にアレな台詞なんですけど、一文字さん。

 「やっぱり昨日の夜、チョコ作りで夜更かししたんじゃない?」

 ドキッ

 見事なまでに見抜かれてました。
 そうです。今日は『ばれんたいんでー』です。
 幽霊だった頃はただチョコを男の人に渡すだけの日だと思ってたんですけど、生き返ってからは幽霊だった頃には感じる事の無かった感情が芽生えて、なんというか……その……。

 「なーに赤くなってんのかね、チミは。やっぱり、横島に渡すのかい?」

 「あ……えっと……は……はい…………」

 「ま、赤くなってんのはおキヌちゃんがそこまで横島のことを好きだっていう証拠だよ。別に悪いことでもなんでもないさ」

 かぁぁぁぁぁぁぁっ

 火照ってしまったじゃないですかぁ。一文字さん、カッカッカッって笑わないでくださいよぉ。
 はい、私が横島さんのことを好き……それも『らいく』じゃなくて『らぶ』の意味で大好き、なのは事実です。
 当の横島さんは相変わらずナンパ三昧で、チチシリフトモモとか叫んで、美人の女の人を見るとすぐ飛び掛って100%殴られる、そんなのばっかです。普段見慣れているからそれくらいはどうってことは無いんですけど。
 でも、問題はそんなことじゃなくて、あの人は八方美人で優しすぎるのか、鈍感なのか、なかなか私の想いに気付いてくれないんですよ……。生き返って、美神さんのところに戻ってきて初めてのお仕事で告白したんですけど……有耶無耶にされちゃいましたし。
 それにあの人を慕ってる人が私だけじゃないってことを考えると……なかなか一歩を踏み出せないんです。なんか自分だけ抜け駆けしているみたいで、他の人に悪いことをしてしまう気がして。

 「ロマンあるねぇ。やっぱ幽霊なんかやってたから?」

 「一文字さん、あまり氷室さんをからかうものじゃありませんわよ。それに幽霊とロマンは関係ないと思うわ」

 「別にからかってるわけじゃねーんだけど」

 弓さんが会話に入ってきました。彼女はどこか不機嫌そうな顔をしていました。一文字さんのことじゃなくて、別の理由で不機嫌になってるような感じです。

 「弓さん、どうしたんですか?そんな顔して」

 「どうしたもこうしたもありませんわ。雪之丞、今日になっても音信不通で何やってるのかわからないんですもの!

 「はぁ……そうなんですか」

 弓さん……お互い想い人のことで苦労しますね……。雪之丞さんも恋愛に関しては超が三つつくほど鈍感ですからね……。

 「今日がどういう日なのかくらい、ちゃんと理解して欲しいものよ!」

 よく見ると、弓さんの小脇には立派な包装紙とリボンに飾られた大きな箱が抱えられていました。弓さんも昨日の夜、頑張ってチョコ作ってたんですね。それなのにチョコを渡す人は音信不通って……雪之丞さん、女心がわかってませんよ。横島さんもですけど。

 「まあ落ち着けよ。その雪之丞だってそこまでバカじゃねーんだし。今日会えなかったら制裁の一つや二つでもしてやればいいってことさ」

 「言われなくても当然ですわ。で、一文字さんはどうなんですか?」

 「あたし?多分タイガー、嫉妬でもしてるだろうからさ。もらえるアテがあるのに妬いてんじゃねーよ、とでも言ってやるよ」

 フフッ。なんか学校で嫉妬の炎を燃やしてるタイガーさんと、横島さんの姿を思い浮かべちゃいました。横島さんも、もらえるアテがあるんですから妬かないでくださいねっ。

 「それに今年は、タイガーの高校生活最後のバレンタインだからな。特別に気合入れて行くぜ」

 「あ……」

 そっか……。今思い出したけど、今年は横島さんも高校生として最後のバレンタインデーだったんだ……。だからこそ、今年は絶対自分の想いを伝えるんだ、っていう一心で夜遅くまでチョコを作ったんじゃないですか。
 よし、私も気合入れていかないと。


 キーンコーンカーンコーン


 「じゃ、一文字さん、弓さん、また明日」 

 渡すときのことばっかり考えて、授業も耳に入らず、放課後を知らせるチャイムが鳴るのが待ち遠しかった私。その待望の鐘の音が鳴るや否や、私は友達への挨拶もそこそこに、学校を飛び出しました。
 勿論目指す先は、想い人の住むあの場所。今日は美神さんのお仕事は入ってないので、あの人がいる場所といえば当然あそこ以外には考えられませんから。
 いつもはそんなに遠くないはずなのに、今日に限って遠いように感じてしまうもどかしさ。ああ、胸がどきどきしています……。

 もうそろそろ横島さんのアパートが近くなってきたと実感させる、一つ前の交差点。私はそこで、聞きなれない声を掛けられました。

 「ねぇ君、ひょっとして六道女学院の生徒?もしかして……僕にチョコを渡しに来たんだねーっ!!!!」

 「いいえ」

 「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」

 見知らぬ人が私をナンパしようとしましたが、きっぱりとお断りしました。私がチョコをあげる人、いいえ、私が想いを寄せる人は、この世だろうとあの世だろうとたった一人だけなんですから。それにナンパの『てくにっく』も、横島さんに負けてますよ。ただ、泣きながらその場を走り去っていく姿を見て、少しばかり罪悪感を感じましたけど。とりあえず、心の中で『ごめんなさい』と呟きました。
 そしていよいよ横島さんのアパートの前までやってきました。いつもの横島さんの部屋のドアの前で、ちょうどよく赤いバンダナを巻いたその人が鍵を開けようとしているのが見えました。
 よし、今が絶好のチャンスです。

 「横島さ…………えっ!?」

 私が横島さんのところに駆け寄ろうとしたそのときでした。隣の部屋のドアから、女の子が出てきて横島さんの所へと向かったのです。私は思わず立ち止まってしまいました。


 「横島さん……」

 「あ、小鳩ちゃん」

 それは、横島さんのお隣さんの花戸小鳩さんでした。そして彼女のすぐ近くに浮いてるちっちゃいのが……小鳩さんに取り憑いてる貧乏神さん……といっても一応は福の神さんなんですけど。

 「横島さん……これ、小鳩からです」

 小鳩さんは、両手に乗せた小さな箱を横島さんに向けて差し出しました。ささやかながら、小鳩さんの気持ちがこもったチョコレートだと……私にも感じられます。
 私は……足が止まってしまい、その光景をただ見つめているだけでした……。

 「あ、ありがとうっっ、小鳩ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」

 横島さん、感激の涙を流してそれを受け取りました……。それはまるで『生きてて良かったぁ〜!!!!』とでも言わんばかりの感激でした……。 

 『嬉しいやろな。小鳩の気持ちがたっぷり詰まったチョコやさかい』

 「もぅ、貧ちゃんったら……。あ、今日はバイトがあるので、失礼しますね……」

 「ホンマ、ホンマありがとねぇぇぇぇぇっ、小鳩ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

 そして小鳩さんは駆け足でアパートの階段を下りていきました。その顔は、頬を赤らめているのが私にもわかりました。


 「…………」

 私は無意識のうちに、その場から逃げるように駆け出してしまいました……。


-Side of Yokoshima-


 憂鬱な日だとばかり思ってたバレンタインだったが、今年は現時点で愛子と小鳩ちゃんから、それぞれの想いがこもったチョコが貰えた。昔に比べると、俺も出世したものだ。

 「さて、今日は仕事もねーし……」

 かといってアパートでえっちなDVDとかを鑑賞してても有意義ではない。ここはちょっとした気分転換をしよう、と俺は思った。

 「街の中でもほっつき歩きますか。ナンパも兼ねて」


 で、俺は行く当てもなく商店街を歩いていた。
 バレンタインデーだというのに、某菓子屋は不祥事やらかして業務停止処分を喰らって商売のチャンスを失うという屈辱を味わっている。まあ、自業自得なんだけどさ。

 「おぜうさぁぁぁぁぁぁん!!!!ずっと前から愛してましたぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 ドグワシャッ!!!!!!!

 「はなげっ!!!」

 今日も今日とてナンパ失敗。いつものように殴られた。そりゃ、バレンタインデーにナンパなんてする勇者は俺くらいなもんだろ。大抵の女の子は彼氏とくっついてるか、彼氏にチョコを渡しに行く途中だし。
 気を取り直して、もう一度……と思ったそのとき。

 「ん?」

 俺の目の前で、誰かがぶっ倒れた。それは裾の長いコートに身を包んだ、小柄な男だった。つーことはまさか……。

 「よ……、よ…………、よ…………」

 その『友人Y』は俺に向かって、残された僅かな力を振り絞って何かを告げようとしている。「よ」ってことは俺の名を呼ぼうとしてるのだろう。

 「……よしだやの……牛丼を…………」

 ヲイ……。吉田屋の牛丼を俺に求めるのか、友人Yよ。


 「ふーっ……ようやく三日ぶりの飯にありつけたぜ……」

 「まったく、バレンタインデーに行き倒れてんじゃねーよ」

 しょうがねーから、吉田屋で牛丼をおごってやることにしたが、生憎今はBSEやらなんやらで牛丼は時間限定の販売だ。なので牛焼肉丼をおごってやった。
 つか、こっちも薄給生活で苦しいっつーのに俺に何回も飯をたかるな、友人Y。

 「友人Yって……俺は人呼んで伊達雪之丞なんだが。というかお前だって『Y』だろうが」

 「細かいことは気にすんな。それに自分で『人呼んで』とか言うな、ダテ・ザ・キラー」

 「その名で呼ぶな!!」

 プチ漫才をかましながら、悪友同士牛焼肉丼を食っていた。

 「そういえば横島、お前もうすぐ高校卒業なんだろ?その後の進路はどうするんだ?」

 雪之丞が思い出したかのように卒業後の進路の話題を吹っかけてきた。皆考えることは一緒か?つか、こいつ高校とか通ってるのか?と突っ込みいれたいんだが。

 「今んとこ、ピンとこねーからな。とりあえずは美神さんとこの仕事を続けるかな」

 「特に予定が無いんだったら、俺と一緒に世界を武者修行するか?」

 「男二人だけなんて俺は却下だ。やっぱ美女と一緒じゃねーとな……。幾多の危険を美女と潜りぬける……これこそ男のロマンって奴だ!!そうだろ!!」

 「一人で盛り上がるな」

 俺にそんな話をしたところで愚の骨頂だってことは解ってるだろうが。俺は美女となら世界一周だってやってやるが、男二人だけなんて死んでも御免だからな。まあ、妙神山の時は特別な事情があったけどさ。

 「ところでさ、行き倒れて貧乏人の俺に飯たからなければいけねーなんて、お前一体どういう生活してるんだよ……前から気になってるけどさ」

 「ちょっと香港で一ヤマあってな。で、今日がバレンタインだってことを思い出して死に物狂いで戻ってきたってことさ……」

 「弓さんにチョコ貰うのか?」

 俺は横島なだけに、ヨコシマな笑みを浮かべて女の話題を吹っかけてやった。つか、自分でいうのもなんだが寒いギャグだぞ。奴は女の子慣れしてねーからな、どんなリアクションするか楽しみだ。

 「弓の奴がヒステリー起こすのが嫌なだけだがな」

 ちっ、意外と冷静だ。それに素直じゃねーし。やっぱ付き合ってだいぶ経ってるから慣れてきたのか?雪之丞のくせに……。
 今度は雪之丞が、少し口をニヤッとさせて聞いてきた。

 「弓のことを聞いたなら、俺からも聞かせてもらうぞ。横島、単刀直入に聞くが、おキヌとは今どういう関係だ?

 ぶっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 「横島、汚ねーぞ」

 「ゲホゲホ……、何でお前がそんなこと聞くんだっっっっっっ!!!!!!!!!!!」

 思わず口から米粒吹き出したぞ俺!!何でこいつの口からおキヌちゃんの話題が出るんだ……。

 「弓がな、最近『氷室さんが時々元気なさそうな顔をしてるのよ。多分横島さんとのことじゃないかしら?』とか不安そうに言ってるからな。勘違いするなよ、別にお前のために聞いてるんじゃねえ。俺はただ弓に要らん心配をさせたくねーだけだからな」

 いつも音信不通で何やってるのかわからずに、弓さんをいらだたせているお前がそれを言うか。おキヌちゃんがいつも言ってたぞ。

 「まあ、おキヌちゃんとはいつものようにさ、給料日前で困ってるときに飯作ってもらったり、部屋を掃除してもらったりしてるけどさ……。別に弓さんが心配するようなことはしてねーつもりだが?つか、お前も弓さんに行く場所と帰る時間くらい伝えとけ」

 「お前なあ……そこまできたら恋人通り越して事実上の『半同棲』状態だぞ」

 ぶはっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 「いちいち吹くな」

 「ゲホッ……、は、半同棲ィッ!!??」

 今度はお茶を吹いちまったぞ!!何言うてんねん雪之丞!!別に俺はそんなつもりは……。

 「それでいておキヌに特別な感情抱かねーなんて、お前は相当のニブチンだぞ。そりゃ弓だって心配するわけだ」

 え……!?
 おキヌちゃんは困った人を放っておけない優しい娘だから俺に色々と世話焼いてくれると思ってるけどさ。まさか俺に対して特別な感情抱いてるとは思ってなかったな……。
 そりゃあ、今時おキヌちゃんみたいな優しくて、可愛くて、健気で、家庭的な女の子なんてそうそう居ない。それに今は幽霊じゃなくて生きてる女の子だし。

 「横島、高校卒業という人生の大きな節目迎えてるんだから、そろそろ自分の気持ちに決着つけたほうが良いと思うぞ」

 自分の気持ちに決着……か。そりゃ、高校卒業っていう節目で、何時までも優柔不断なままってわけにもいかねーしな。俺はふと、おキヌちゃんのことを振り返った。

 御呂地岳での、三百年前の幽霊だったおキヌちゃんとの出会い。
 GS試験のとき、心眼の助けもあって目覚めたばかりの霊能力で必死に戦った俺を騒がしくも応援してくれたおキヌちゃん。
 香港でのメドーサ一味との戦いのとき、ずっと俺のそばを離れずに励ましてくれたおキヌちゃん。
 死津喪との戦いのとき、俺を救うために特攻も厭わなかったおキヌちゃん。
 別れたあと、ワルキューレに戦力外通告されたとき、夢の中に出てきてくれて俺を元気付けてくれたおキヌちゃん。
 ルシオラが死んだとき、悲しみに暮れる俺の手に残った霊破片を優しく包み込んでくれたおキヌちゃん。

 そうだ。俺のそばには、いつもおキヌちゃんがいてくれた。いつもおキヌちゃんが励ましてくれたから、時々叱ってくれたから……今の俺があるんだ。
 もしあの日、俺とおキヌちゃんが出会わなければ……今頃どうなってたのかも想像できない。

 俺……やっぱりおキヌちゃんのことが……。

 「感慨にふけってるみてーだな。シリアスに考え込む横島なんて、ギャグにしか思えねーけどな。つか、壊れキャラだぞ」

 「うるせーよ」

 こんなときに心無いボケをかますな、雪之丞。俺がシリアスに考え込んじゃいけねーのかよ。今気付いたが、奴のどんぶりはとっくに空になっていた。

 「それじゃ、ここいらで俺は行くとするぜ」

 「弓さんとこか」

 「ああ。今頃あいつ、『今日がどういう日なのかくらい、ちゃんと理解して欲しいものよ!』とか癇癪起こしてるだろうからな。横島もちっとはおキヌの気持ち、解ってやれよ」

 勘違いすんなよとか言っときながら、本当は俺のこと心配してんじゃねーのかお前は。所謂ツンデレってやつか?
 そういって、雪之丞は吉田屋を後にした。会計はいつものように、俺が二人分支払ったけどな。

 
 おキヌちゃんの気持ち……か。
 そういえば、俺、まだおキヌちゃんからはチョコ貰ってねーな。いつもは必ず俺にチョコをくれるおキヌちゃんが、まだ俺にチョコを渡してくれないなんて……一体どうしたんだろう?今年に限って用意してねーとか、あるいは誰か別の男に……って、おキヌちゃんに限ってそんなことがあるわきゃねーだろ!!
 つか、それだったら早くアパートに戻らねーとな。今頃俺を探して迷子になってるかもしんねーし……悪い事しちまったな、俺……。

 


 -Side of Kinu-


 「どうして私……あの時逃げちゃったんだろ……ハァ」

 結局私は、そのまま美神さんの事務所に逃げるように帰ってしまいました。制服も着替えずに、ベッドに身を投げ出して溜め息ばかりつく私。
 あの人に惹かれてる人が、私一人だけじゃないってことはとうにわかってるはずなのに。それがわかってるなら、構わずに声をかけてチョコを渡すことなんて何とも無いはずなのに。
 そのチョコは今、私の机の上にぽつんと置かれている。空色に青いストライプの入った包み紙に赤いリボンの箱に入った手作りチョコが。 

 「ホント、私ってあと一歩が踏み出せない意気地なしだなあ……」

 幽霊だった頃は『ばれんたいん』の意味も知らなかったから、食べてもらうだけで嬉しかったから、何も考えずに行動できた。でも今は生き返って、恋を覚えた。だからこそ、その先に待っている結果が……怖かった。
 私はただ、天井を見上げて自虐的に呟いてるだけでした。


 「『ちょこれーと』を先生に食べさせるのが、『ばれんたいん』の日でござるか?」

 「そうよ。好きな人にたらふくチョコを食べさせるのがバレンタインの日。平安時代の大妖だった私にはあまりなじみの無い日だけど」

 「よーし、そうと決まれば早速先生にちょこを渡しに行くでござるよ!!」

 「でも横島は今日は仕事ないからどっか出かけてるかもしれない……って、もう飛び出しちゃったわね……。やっぱりバカ犬はバカ犬ね」


 リビングで騒ぐシロちゃんとタマモちゃんの会話が、壁越しに私の部屋にまで聞こえてきました。彼女達のその無邪気さが羨ましい、と思えました。私も横島さんに出逢って最初の頃はバカな女の子、しかも幽霊だったけど。今日だけあの頃に戻れたらなあ……なんて考えたってしょうがない。
 その騒動の後、タマモちゃん、美神さんまで巻き込んだみたいです。


 「何テキトーなこと吹き込んでるのよ」

 「だって、単純で面白いんだもん。というか美神、その机の上の大きな箱は何?」

 「べ、別になんでもないわよ……」

 「ふーん、何でもないんだ。じゃ、ちょっと見せてもらってもいいよね?」

 「見世物じゃないわよ……って、何勝手に取ってるのよ!!」

 「……大きなハート型チョコにでっかく『義理チョコ』の文字……。ちょっと……これ、判断に苦しむよ……」

 「う、うるさいわね!!あいつになんか、義理で充分よ、義理で!!!」

 「こんな大きい義理チョコがあるの?実は美神も横島にその気があるんじゃない?」

 「そ、そんなわけないでしょ!!大体私がそんな子供っぽい行事に参加するような女に見える?」

 「じゃあ何で慌てるわけ?」

 「う゛……」


 美神さん、相変わらず素直じゃないですね。チョコレートまで素直じゃないんですから。素直じゃない、といえばあの時チョコを渡せなかった私もなんですけどね。
 はぁ…………。

 あれこれ考えましたが、結局は精神の袋小路に迷い込んでしまうだけ。何時しか私は目を閉じて、『もういいかな……』なんて思って眠りにつこうとしていました……。


 『んな簡単に『もういい』とか『もーダメだー!!』とか言うな!!』

 『俺たちは、何も失ったりしない……』

 『ほら、おキヌちゃんがいてよかったろ?』


 ふと、私の脳裏にあの人の声が、私に向かって時々叱ってくれて、そして微笑んでくれたあの人の顔が思い浮かびました。

 「……横島さん……」

 ……そうですよね。そんな簡単に諦めちゃダメ、って言ってくれたのはあの人じゃないですか。ここで『もういい』なんて言ったら、それこそ本当にあの人に合わせる顔がない……ですよ。

 「……私……!!」

 そして、もう一度あの人にチョコを渡しに行くことを決意しました。ベッドに沈めていた身を起こし、コートを羽織り、机の上においていたチョコを手にとって。


 「それ以上言うと……そのナインテール襟巻きにしてあげようか?結構高く売れるかもね?」

 「そ……それだけはご勘弁を…………」


 ……ちなみに私が事務所を出て行くとき、美神さんとタマモちゃんは騒いでて私に気付きませんでした。なんか殺伐としてます……。


 -Side of Yokoshima-


 「……雪が降ってきたな」

 もう空はすっかり真っ暗になり、そして白い雪が何の前触れもなく降ってきた。やっぱり二月、まだまだ冬だなって思わせてくれる。俺は別にロマンチストじゃねーから、幻想的なバレンタインデーになっただなんて微塵とも思わないがな。早く帰ってコタツにこもってデンド○ビウム状態になりてー気分だ……って、俺はコウ・ウ●キか。
 というわけで、俺は家路を急ぐため駆け足をしようとした。それに……。

 ドンッ

 その矢先、俺はいきなり横からきた人にぶつかってしまった。かなり大きな音がしたから派手にぶつかっちまったみてーだ。俺はちょっとバランスを崩しただけで済んだが、相手のほうは倒れてしまっていた。
 相手も地面に手をついて起き上がる。それは腰までかかりそうな長い黒髪の、白いコートを羽織った女の子だった。
 お……女の子!!??
 そうと解れば、俺が次に取るべき行動は……もう既に決まっていた。

 「大丈夫っ!?ケガはないっ!?俺ってドジで……」

 俺はその娘が立ち上がるのを手伝おうと手を差し伸べたが……。

 「……横島さん?」

 俺の名前を知っている女の子。
 艶のある黒髪に、澄んだ瞳をした、可愛らしい声を持つ女の子。
 そして……俺が良く知っている女の子。

 「……おキヌちゃん……!?」

 なんという偶然だろうか。今さっき会おうと思っていた矢先に、こんなところで出くわすなんて。なんか、さっきのシチュって初めて会った時を思い出させるみたいだ。
 こんな雪の降る中、どこに行こうとしていたんだ?ひょっとしたら……。
 というかおキヌちゃん、上半身だけ起こしたまま、ほっぺを紅くしてぼーっと俺を見つめたまま固まっている。

 「あれ……おキヌちゃん?」

 なんか固まったままなので、俺は差し伸べた掌を彼女の目の前でチラチラさせた。

 「……。あっ!!」

 ようやく我に帰ったみたいだ。そして自分で立ち上がり、両手を背中に回してしまった。その身体が小刻みに震えているのがはっきりとわかる。

 「……あ……あの……」

 彼女はモジモジと、恥ずかしそうにポツリポツリと言葉を紡ごうとする。
 そのとき、俺は期待と不安がごちゃごちゃだった。チョコを貰えるのか、それとも『ごめんなさい』って言われてしまうのか。なかなか次の言葉を言い出せない彼女を見てると尚更だ。
 俺が思い悩む中、彼女はキッと顔をあげ、俺を真摯な眼差しで見つめ、頑張って声を出した。

 「よ……横島さんっ!!」

 俺の名を呼ぶと同時に、背中に回していた両手を目の前に出す。その手の中には、空色に青いストライプの包み紙に紅いリボンの箱。ということは……!!

 「こ……今年のばれんたいんちょこですっ!!」

 やっぱり!俺にチョコを渡しに来てくれたんだ……おキヌちゃん……。
 でも、そうならなんでいつものようにすっと渡してくれなかったんだ……?昔は別に恥ずかしがることなく渡してくれたのに……。
 俺が疑問に思ってるのが顔に出たのか、おキヌちゃんが慌てたように言葉を付け足す。

 「あ……今年は、その…………、横島さんの高校生活最後のバレンタイン……ですから、いつもとは違って……」

 え……?

 「私の……精一杯の想いを込めて作ったチョコなんです……!!」

 おキヌちゃん……。
 彼女の表情は、怖がってるけど勇気を振り絞った、そんな感じがひしひしと伝わってくる表情だった。
 そういえば俺……、おキヌちゃんが生き返って美神さんとこに戻ってきてから最初の仕事で、おキヌちゃんの気持ちも解らずに酷いこと言ってしまったよな……。

 「ありがとう……おキヌちゃん……」

 俺はおキヌちゃんの真心がこもったチョコを両手で受け取り、裏表の無い、素直な感謝の気持ちを顔に出した。

 「横島さん……!!」

 チョコを受け取った瞬間、おキヌちゃんの表情が、いつもの明るいヒマワリのような笑顔になった。やっぱりおキヌちゃんは笑顔じゃないと……似合わないよな。


 そういえば、さっき雪之丞に牛焼肉丼をおごらされて、金が無いことを思い出した……。

 「さて……今晩はこれをオカズに飯やな……」


 ズルッ


 「よ……横島さぁん……」

 いかん、ムードぶっ壊しちまったぞ俺。おキヌちゃんがずっこけてるし……。またあのときの二の舞演じちまうのか……?

 「もぉ、しょうがないですねぇ。晩御飯に困ってるんでしたら、私が作ってあげますから……ね?」

 少し呆れながらもいつものポケポケした感じで、おキヌちゃんは俺に飯を作ってくれると言ってくれた。

 「マ、マジで!?是非お願いっ!!ううっ、やっぱおキヌちゃんはエエ娘やなぁ……」

 「そ、そんなこと無いですよぉ。じゃ、今からおかずの材料買いに行きますから、一緒に行きませんか?」

 「うん!!もちろんっ!!」

 ……なんだかんだいっても、俺の高校生活最後のバレンタインは、最高の形で迎えられた……ということにしておこう。

 「横島さん……大好きです……」

 おキヌちゃんが俺の肩に身を寄せて、ポツリと呟くのが聞こえた。


 


 



 あとがき。

 平松タクヤです。
 ついに長編「極楽大冒険」のスタートです。

 私ははっきりいって小説書きに関してはまだ駆け出しのペーペーなので、書くのは非常に苦労しました。
 季節柄、バレンタインのネタで始めることになったので、それぞれの心理描写を描くのに苦労させられました…。
 今回私としてはこの形に収まりましたがどうでしょうか。
 基本的には横キヌで、他のヒロインもちょくちょく交えていこうか、と。

 この作品では、挿絵のほうも描いてますので、そちらもよろしくです。

 次回は、バトルも交えた展開になる予定ですのでー。

 プロローグへのレス。

 >スカートメックリンガーさん
 ハイ。「るろ剣」好きなもので(笑)。
 ご期待に添うよう頑張ります。

 >駄剣アンサラーさん
 バリバリの横キヌでいくつもりでっせ(笑)。

 >ばーばろさん
 おキヌちゃんはメインで活躍しますが、小竜姫さまやタマモは……先をお楽しみに(笑)。
 鬼怒川温泉のことは知ってますよー。
 だからこそ出来た「特急きぬ」なのです(謎)。

 >八雲さん
 基本はやっぱ「煩悩のままに」なので(爆笑)。

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