―第六話 始まりの鐘が鳴る ―
二人を囚えていた牢獄は崩壊の時を迎えていた。
だが、現時点でソレを察した者はいない。
人の傲慢さは、至極単純で簡単なモノさえ見落としてしまう。
「来たぞ!撃てぇ!」
横島を殺すべく彼等は動き出した。だが、彼等は間違えていた。
彼等は山岡の作った実験体が逃げ出したのだと思ったのだ。
もし、監視カメラ等で確認しておけばまだ戦り様が有っただろう。
警報音と表示されたエリアに「またか…」といった感じで行く。
到着したのは6人の男。
リーダー格の男は通路に見えた影に彼は5人にそう指示した。
彼の声と共に彼等の持つマシンガンが火を吹く。
弾幕が通路に充満し、視界が悪くなる。
「撃ち方止め!銀の弾丸をコレだけ使ったんだ、死んだだろう。
確認が終わったら戻るぞ〜」
弾幕で目標が見えなくなると彼はそう指示し、
気楽に振り返らずにそう言った。
だが、そんな彼の横顔に一つの青く輝く物が目視できない速度で横ぎる。
パァン!
「!?なっ!?」
何かが弾けた音に、
彼が急ぎ振り返って見たのは頭部を失った男の姿だった。
トマトを潰した様な肉片が四方に飛び散り、濃厚な血の臭いが充満する。
男は自分が死んだと理解していないのだろうか、立ったままだ。
その姿が酷く不気味で、彼等の銃を持つ手が震える。
「お、おい!」
「っ!構えろ!」
最後尾にいた一人が煙の方を指差し叫ぶ。
リーダーは反射的に銃口を煙の方へ向け叫んだ。
彼等の目緋色に輝く丸型が見えた。
その光を見た彼等の心に不安という闇が包み込む。
銃を持つ手と背筋に嫌な汗が流れる。
煙の中から出てきた横島はまったくの無傷だった。
そして、彼等を不安にさせたのは横島の左目だ。
だがそれを分かろうとも、不安は消える事は無い。
「に、人間?」
「・・・邪魔だ」
「「「「「!?!!?」」」」」
リーダーが半信半疑にそう呟いた。横島は小さくそう呟き、動く。
彼等には横島の姿が幻の様に消えた様に見えた。
グサッ
「あぐぅ!?」
最後尾にいた者の呻き声に振り返り、彼等が目にしたのは、
胸から剣を生やしたそいつの姿だった。
「二人目・・・」
「う、撃てぇえ!」
男を貫いたそのままの姿勢で横島は小さくそう言う。
リーダーは我に返ったのか、それとも狂ったのか叫ぶ。
ズダダダダダダダダダッ!
ドサッ
「!?いない!?」
「ドコに行った!?」
彼の声に反応したのか、それとも恐怖に負けたのか・・・
男達は撃つ。仲間の体が有るにもかかわらず撃った。
仲間の体は蜂の巣になり、見るも無残な姿となり倒れたが、
そこには既に横島の姿は無い。
二人は悲鳴の様な声で叫び、一人は三歩、もう一人は一歩、
リーダーの前に行く。もう一人は怯え腰で、リーダーの後ろへ下がる。
「っ、上だ!」
その時リーダーには剣を持つ右手を振りかぶり、
三歩前に出た男を上から襲い掛かる横島の姿が見えた。
彼の声に反応し、二人は上を見たが遅い。
一人はそのまま縦に一刀両断にされ、
もう一人は腰を回し、横薙ぎに払った太刀で、胴より上と下が分かれる。
噴き出す鮮血が横島を紅く、鮮やかに彩る。
「三人目、四人目・・・」
静かに数える横島に二人は再び撃とうとしたが、横島の方が先に動く。
床を蹴り跳び上がり、壁を蹴り、天井を蹴り、
リーダーの後ろにいた男の背後に着地し後ろからその首を斬り落とす。
横島は、彼等に絶命の叫びをあげる暇すら与えなかった。
ドサッ
「五人目・・・おまえで最後だ」
振り向き様に男の体を蹴り倒し、
静かに生き残りリーダーの男を見てそう言った。
けして大きな声では無いのに、その声音は良く響き渡る。
バン バン!
「う、うわぁあああ!」
男は恐怖で顔を青くし、銃口を横島へ向けトリガーを引く。
弾丸は2発放たれた。しかし、それも横島は避けきる。
そして、銃はカチカチと音をたてもう弾は無い事を持ち主に伝える。
男は絶叫し、横島に背を向け逃げようとした。
ザシュ
「あぁっ」
だが横島は逃がす気は無く、剣を男へ投げた。
剣は男の右大腿部を貫き、床へと縫い付ける。
ズブ
「がはっ」
グサッ
「っああああ!」
横島は男の側へ行くと、剣を抜き、脇腹を蹴り、仰向けにし、
続いて剣で左大腿部を貫き、再び床へ縫い付けた。
「俺の聞く事に素直に答えろ」
「言う!言うから命だけは!」
横島は左手で男の頭を掴みその視線を己の目へ向けさせ静かに言う。
男は横島の緋色の左眼を見た瞬間心臓を鷲掴みにされた様な感覚を感じた。
だがそれは気のせいだと無理やり思う事にする。
目の前の人物が横島だと知っていれば、
そんな愚かなマネはしなかったかもしれない。
「山岡は何処にいる」
「Aブロック地下4階、第二研究室
(Bブロック地下3階、第四実験室) !?!!」
男は偽りの情報を口にしようとしたが、
口にしようとした情報は出ること無く、口が勝手に紡いだのは真実。
そして男は思い出す。ココに人質をとられ、
大人しくしているはずの人物の名を。横島忠夫の名を。
男の顔は青を通り越し白くなる。
男の表情に横島は口の端を少し吊り上げる様に笑い、
男に自分の右手が握っているモノを見せる。
【真】と込められ輝く文珠が有った。
「っ・・・横島、忠夫」
震える唇が紡いだのは、目の前の人物の名。
男の声音は恐怖に染まり、心情をも伝える。
そして思った。先程感じたモノは間違いではなっかったのだと。
「さ、最初から、殺すつもりで・・・」
「おまえにはもう用はない。休め。永遠にな・・・」
静かな一言の後、横島は掴んでいた左手を離し、
指先に霊気を集中させ、男の首を貫いた。噴き出した鮮血を横島は浴びる。
横島は聞き出した所へ行こうと左手と剣を抜き、立ち上がる。
ふと、男の死に顔が見えた。
恐怖、絶望、等で酷く歪み醜い。
横島は何事も無かった様に、自分には関係無いと、
興味は無いと言わんばかりに顔色一つ変えず歩き出した。
「来たぞ!」
「相手はあの横島忠夫だ!撃て!」
ズガガガガガガガガガガ!
横島が通路の角を曲がると、奴等はいた。今度は十数人の団体で来た。
内二人がそう叫ぶと同時に数多の鉛玉が発射される。
彼等は自分等の標的が横島と知っているようだ。
キィイ、キキキキキキキン!
横島は反射的に左手に等身大のサイキックソーサーを出し、
盾とし身を護る。
ソーサーに当った鉛玉は金属同士をぶつけた様な音をたて、全て弾かれる。
横島は剣を床に刺し、
右手に通路の幅分の長さ有る、大きなソーサーを出す。
「切り裂け。サイキック・ソーサー」
キィイイイイイインッ
ズドオォォオオオオオン!
「「「「「「「「「うがぁあああああああ!!!」」」」」」」」」
ズシャァアアアッ
横島の右手から放たれたソーサーは、
自らを造った横島の意思に従い、甲高い音をたてながら回転し横一閃に飛ぶ。
前方にいた者達を切り裂き、そして爆発する。
総数十数名の彼等はその大半が切り裂かれ、
残りの生き残った者達も爆発の爆風と衝撃にその命を絶たれる。
彼等の遺体は倒れ、通路は紅の川となった。
横島が一歩歩くごとに、ピチャピチャと音がする。
雨の日に聞きなれた音だ。
雨の日との違いは・・・水では無く、血が音をたてている点だ。
ソレを作った本人は気にした様子は無い。
まだ始まったばかりだ。
―後書き―
何かキツイものを感じる。書いた本人が言っちゃあ拙いと思うけど(汗)
書いた時は何か電波を受信したみたいに、
思うままに書いてしまったんだっけ・・・(自問自答気味)
あと、大文字の仕方とか疑似タグ一覧で知りましたけど・・・
やり方をちゃんと理解できているか不安で使いませんでした。
いつか試してみようと思ってます。
短編でも書いてみますか・・・
では失礼。暇つぶしに見て下さいな。
〜レス返し〜
・通りすがり様
原作では確かに様々な条件が揃った結果でした。
反魂が失敗する理由としては様々有りますが、その中で有るのは、
本人の魂が使われていない点です。
本人の魂が無いのに、何を体に入れたんですかね?
地脈をのエネルギーを使える様にその場所で死ぬ必要は有るとは、
思いますが・・・
大切なのは、本人の魂と体というのが俺の見解です。
あと、ご指摘ありがとうございます。
・皇 翠輝様
ハマードは元々この時の為、
まぁあと一つ有りますが死んで貰うつもりだったんでご容赦を・・・
楽しみにして頂き嬉しい限りです。
・DOM様
そうなんですよ。
あと、おキヌちゃんはルリちゃんみたいにはなりませんよ。・・・タブン