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「GS横島!!極楽トンボ大作戦!! 第二十話(GS)TS有り注意」

球道 (2007-02-14 17:39)
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暗い部屋、カーテンの隙間からは、優しく月の光。

何処からとも無く風。

風はカーテンをヒラリ、はためかせる。

月明かりに少女の顔が朧に映る。


「……んふぅ………、むみゅ……」

ベッドの上で寝返りを一つ、月の光から逃げるように、掛け布団を軽く巻き込みながら体を丸める。

腕の中には、丁度すっぽりと納まるサイズの物が抱えられている。

「んふふぅ……、よ、こしまぁ……」

しっかりとした縫製と、愛情をこれでもか! と言うくらいに詰め込まれた布製品。つまり人形。

その名も『眠れない日もこれで安心!! 離れていても一緒だよ、快眠抱き枕! 忠夫君一号』である。

抱えているソレに頬擦りし、無意識にか口付ける。勿論、人形の口元に。

ちう〜。

「えへぇ、……、た、ただお……、むにゃ」


その寝顔は、誰が見ても幸せに見えるであろう、そんな顔だった。


ばたたたたたたたたたたたたた!!!

静寂を破る、足音は突然やってきた。

足音は部屋の前で止まり、間を置く事無く、ドアを開ける。

「雪之丞殿〜!!」

足音の主は、犬塚シロ、雪之丞と呼ばれた少女、伊達雪乃の義妹である。

まったくこんな時間に、如何したのだろうか?

シロの足音で既に覚醒していた雪乃であったが、流石に眠い。

枕元の時計を見ると、三時半。

いつも雪乃が起きる時間よりも、一時間以上早い。


「ふぁ、どうしたのよ、こんな時間にぃ……」

漏れ出た欠伸を噛み殺し、瞼を擦りながら雪乃は訪ねる。

「先生の部屋の鍵を借りに来たでござるよー」

「ん〜? 横島の部屋の鍵ぃ〜? 」

ニコニコと笑うシロの言葉に疑問符を浮かべながらも、鍵の在り処を教える。

ゴソゴソと机を漁るシロ、そして。

「おお、あったでござる」

程なくして鍵を見つける。


「それでは雪之丞殿、拙者、先生とさんぽに行って来るでござるよ」

さんぽ、その言葉に合点がいく。

あー、横島が前に愚痴ってたことがあったっけなー。

朝っぱらから何十キロも走らされるー、とか。

「あ、そうそう、朝ごはんは先生と食べてくるでござる」

さんぽの後は、シロがご飯を作るんだけど、肉料理ばっかりで走った後には辛いー、とか。


がちゃ

ドアを開けるシロ。

「それじゃ、行ってくるでござる〜」

「……、いってらっしゃ〜い……」


……、横島も大変だなぁ……、今日は朝からフルマラソンかぁ……。

胃薬……、持って行ってあげた方が……、いーかなー?


そんな事を思いながら、雪乃は再度眠りに、


「ふむ、今から行けば、二時間は先生と同衾できるでござるなっ!」


つかなかった、つけなかった、否、飛び起きた。

たしか横島は、こうも愚痴っていた気がする。

朝起きたら、隣にシロが寝てることが良くある、朝から3Rは流石にキツイ、と。


「ちょ! ちょっと!! ちょっと待って!?」

シロが扉を閉める前に、雪乃はシロに待ったを掛ける。


「ん? 如何したでござるか?」

きょとん、とした様子で、シロは立ち止まる。

「あ、え、え〜っと……」

こ、このまま行かしてしまったら、この娘は横島と同衾、つまり添い寝をするって事で……。

横島の愚痴から察するに、十八歳未満禁止的な行為に発展することは間違いなく……。

なんて羨まし……、ちがう! 不潔よ!!

私も横島と一緒の布団でゴニョゴニョ……、じゃなかった、何としてでも阻止しなきゃ!!


「私も添い寝する!!」

(私も一緒に行く!!)


…………。

………。

……。


!?


な!何言ってんだ、私ー!!


そんなこんなで。


「只今私はー、横島の布団の中にきていまーす」

はぁい! 現場の伊達です、……じゃない!

わ、私は何やってんだー!!


GS横島!!

極楽トンボ大作戦!!


第二十話


布団の中に、三人。

否、二人と一匹。


シロは、布団が狭いと感じるや否や、人間形態を止め、犬の姿「狼でござる!!」

狼の姿で、横島の腕の中にいる。


私は横島の背中の方から抱きついて、横島の体温を感じている。

流石に真正面からは恥ずかしすぎる、今でさえ、顔から火を噴きそうなくらいだというのに。


横島の背中を見ながら、溜息を吐く。

昨日から、私の心は大きく荒れていた。


そう、昨日の、金曜日から。


……………………

………………

…………

……


今日は華の金曜日!

高校で言うならば、公立高校における五日間の出席日の中で、唯一! そう、唯一、憂鬱じゃない日!!(作者調べ)

明日は何てったって、土曜日!! 英語で言うならdoyoubi!?

休みだよ?休み!! たった六時間そこそこ机に座って、船をえっちらおっちら漕いでるだけで!

明日はおやすみ〜♪

あ〜、明日も学校だよぅ……、だなんて涙する必要も無いのさ!


学生達は狂喜乱舞し、土曜日曜と言う二連休を利用し、金曜日を謳歌するべく町を徘徊する!

『だってだって、土日、休みなんだからオールしても全然よゆーじゃん?』

等と、言いながら、肌やら脳細胞やらその他諸々のダメージを顧みずに、ただ、

『学生ってー、遊ぶのが仕事って言うかー? ベンキョー? 何それ? キャハハ』

と、遊び惚ける金曜日!!


それが今日!!


華の金曜日!!


だというのに……。


「「…………」」


無言で気まずそうに道歩く人間が居るじゃないか!?


「……、あーもう、二人とも何、意識しあってるのよー!」

と、伊達タマモ。


「いや、その、な?」

「えと、あの、ね?」

と、横島忠夫と伊達雪乃。


いつもは仲の良いこの二人、今日は何処と無くギクシャクしている。

勿論横島、雪乃間である。

チラチラと互いを意識しあい、目が合って、目を逸らす。 ほら、今も、これで今日二十七回目。

話し掛けようとすれば、同時に話し掛けて、

「あのさ……」「えっと……」

「あ、わりぃ……」「ご、ごめん……」

お約束すぎるでしょうに……。


勿論、こうなってしまったのには原因がある。

それは……。


「お姉ちゃん達、キスしたってだけで意識しすぎよ?」


そう、そうなのだ。

昨日、この二人、横島忠夫と伊達雪乃、熱い接吻を、キスを、ベーゼを交わしたのだ。

その後色々と騒動があったため、有耶無耶になってしまっていたが、事実は事実。

しちゃったものはしちゃったわけで、変えられないし、変えたくない。

横島は横島で、思い出して朝まで悶々と布団の中で一人稽古。

雪乃は雪乃で、忘れていて夢で見て飛び起き、思い出したその感触を、振り払おうと朝まで、筋トレフルコース。


そんな訳で、ちょっと、……結構? 否、かなり気まずい二人なのであった。


「大体さー、横島、経験あるでしょ? 私とかシロとか、小竜姫様とかー、他にも何人か」

「それにお姉ちゃんだって、雪之丞だった時はかおりさんとか居たんだし……」


「んなっ! ば、馬鹿! おまっ!!」

「そ、そりゃそーだけどよ……、ちょっと違うって言うか……、って、横島#」

さり気無い爆弾発言に、慌てる横島&気が付いて拳を握り締める雪乃。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

大地を揺らすほどに揺らめく紅い闘気。

「ひぃっ!?」

「…………#」


「昔! 昔の話だ!!」

「私の記憶が確かなら、この世界に来る三日前が最後だったかしら……? シロはその二日前」

クスリと妖しく哂うタマモ、過去の女扱いは流石に腹が立つらしい。

「あ、阿呆! せっかく穏便に済ませようと、……って、ひぃぃぃぃぃっ!?」


「……へぇ……、さぞ楽しかったでしょうね……」

一歩、また一歩と横島に歩み寄る雪乃。

ゆらり、ゆらりと紅い闘気もそれに従い迫り来る。


「別にな、知ってたぜ?」

急に口調が変わる。

「四年前だったかな? ああ、そうだ、四年前だ……」

ポツリポツリと呟く雪乃、否、雪之丞。

「久しぶりに野郎共の暇が揃ったからって、呑みに行ったんだったよな……、『居酒屋みぃ』に……」

ゴキッ! ゴキッ! と、間接にあまり良くは無さそうな音が辺りに響く。

「三時間くらいだったか? 酔いが回ってよ、ピートはダウン、タイガーはションベンだったか? あいつは行ったっきり帰ってこねぇ」

横島は恐怖で竦み上がって動けない!

「俺も横島もベロンベロンでよ、そんなんになった野郎の話って言うとよ、女の話しかねぇんだよな……」

横島は恐怖から立ち直った!

「俺は勿論かおりの話でよ、横島は……、ああ、誰の話だったか?」

横島は逃げ出した!

「おっと、まあまあ、待てよ、てめぇの話だ……、聞けよ」

しかし、回り込まれてしまった!

「タマモと、シロと、小竜姫と、ワルキューレと、居酒屋の女将さんと……、人間相手にシタ事ねぇって言って馬鹿みたいに笑ってよぉ」

横島は助けを呼んだ!

「んなわけだから、俺はてめぇの武勇伝を聞いてもおどろかねぇ訳だ……」

しかし、誰も助けにはこなかった。 というか、見放された。

「でもなぁ……? なんでだろう……な?」

なんと!雪之丞の拳に物凄い量の霊力が溜まっていく!!

「こんなにムカついて、イライラして、怒りに身を任せたくなるのはよぉっ!!」

なんと!雪之丞の紅い闘気が霊力に反応して拳に集まりだした!!

「おらぁっ!!」

振り上げた拳が紅く染まる! 闘気と霊気が互いに反応しあい、物質化する!

肘までを澄んだ紅い装甲が覆い、炎のような闘気が漏れ出している!

キラキラとした霊気を大気中に撒き散らしながら、その拳は、その時、音を、光を越えた!


「っぅぺげらっ!?」

……どうぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!?


「……、女の敵! 天誅!」


女の敵!横島忠夫を倒した!!

18632の経験値を手に入れた!

ちゃらららっちゃっちゃっちゃ〜!!

雪乃はレベルが上がった!!

レベル72になった!

HPが9あがった! (559/568)

MPが7あがった! (380/402)

ちからが11あがった! (673)

たいりょくが4あがった! (439)

すばやさが6あがった! (538)

かしこさが5あがった! (611)


雪乃は闘装術(紅)を覚えた!!


「……うわぁ……、横島、ぐちゃぐちゃ……」


……合掌


「あ〜、死ぬかと思ったぁ〜」

ポリポリと雪乃に殴られた頬を掻きながら、情けない声を上げる横島。

まあ、無理も無いが。

「普通、死ぬって、アレは……」

本当、人間離れしてる、っていうか、してってるのかしら、と、タマモ。

ちなみに、まだダメージが残っているため、横島はタマモに肩を借りている。

「まあ、手加減してくれたんだろ? 雪は優しいし……、って痛い痛い!!」

「また、お姉ちゃんの事ー、昔の女はもう要らないのかしら……?」

横島の臀部を容赦無く抓り、タマモは頬を膨らます。

「そんなこたぁねぇぞ? この世の女は全部俺のもんじゃー! って昔っから言ってるだろ?」

「ばーか」

呆れたように笑いながら、つっけんどんに返す、満更では無さそうだ。


「……お前は昔の女じゃないよ、タマモ」

タマモの耳元で囁く横島。

「うん、解ってる……、でもね? 横島」

「どうした? タマモ」

タマモは横島の首元に口付けるように顔を寄せると、ボソッ、と呟いた。

「さっきから私のお尻を撫ぜてる手を退けないと、あそこの、こっわぁいお姉さんに、こ・ろ・さ・れ・ちゃ・う・ZO?」

「ひぃっ!? ゆ、雪!? こ、ここここ! これはちがうんやぁ!! 右手が勝手に!!」

ぺこぺこと米搗き飛蝗のように謝りだす横島、なんともまあ、無様である。

「なぁ〜んてね〜♪」

「へ?」

ぺろ♪ と、舌を出しておどけるタマモと、ハニワ顔で固まったままの横島。

「うっそ〜♪」

横島が怒るのも、また、無理も無い話しだったりで……。


「タ〜マ〜モ〜!! この!お前と言う奴は!!」

タマモに掴みかかろうとする横島。

「あはは、怒った〜」

タマモは、そんな横島の手をするりと抜けて。


「ん」


ちゅ


横島の唇を掠め取った。


「んふふ、この身体での初キスあげちゃった♪」

「おいおい……、通学路だぞ?」

不意打ちのキスに驚く様子も無い横島、その様子にタマモは首を傾げる。

「ん〜、やっぱり変ね、前から思ってたけど」

「はぁ?いきなりなんだ?」

まったくもって唐突な話に横島は疑問しか抱かない。

「なーんでお姉ちゃんとだけそんなに初々しい訳? 私も横島と嬉し恥ずかししたいのに」

「……、言われてみれば……、何でだろ?」

う〜ん、と唸る横島。


実はそれも『世界』の仕業だったりするのだが、勿論、横島達が気付く筈も無いわけで……。


「ま、いいわ、横島、もっかい」

目を瞑り顔を上げ、桜色の唇をちょこっと可愛く突き出し、ん〜、と、キスをねだるタマモ。

「おいおい……、しょ、しょうがないな……」


そんなタマモの唇に横島は軽く触れる程度のキスを……。

「……っ!?」

「ん〜!」


キスを……。


「…………。」

「ん〜〜!」


キス……。


「仲が宜しい様で」

「あ、あはは……!」

「お、お姉ちゃん!?」


「ちょっと強めに殴っちゃったかなー? なんて心配になって戻ってきてみたら……、へー、元気ね、横島」

冷ややかな視線が横島を射抜く。

「あ、あははっ……、か、回復力には自信が……」


「とりあえず……」

ギラリ!

雪乃の目が輝く。

「ひぃっ!?」


「……もう予鈴が鳴るから教室にいきましょう」

「は、はい!いえっさー!!」


「……、サー……?」

「失礼しました! イエス、マム!!」


……………………

………………

…………

……


あれから、横島とは一言も話さなかった。

多分、話したとしても、粘着質な嫌味しか出てこなかっただろうし。


私自身、自分の醜い嫉妬心を静めるのに、精一杯で、周りに気を配れなかったからだ。


「はぁ」

もう一つ溜息を吐く。


コツン、と横島の背中に、額を寄せる。

あれから一日程経っても、私の頭の中には色々な物が渦巻いている。


でも。


横島の体温を額に、否、抱きついて身体中に感じると、


「横島だし、しょうがないかなぁ?」


だなんて、思ってしまう私は。


相当横島に参ってしまっているようだ。


横島は起きたらにどんな反応するかな? 

なんて事を考えると、自然に笑みがこぼれた。


ちゅっ!

横島の背中に軽く口付けすると、ちょっとしょっぱい、汗の味がした。


「おやすみ、横島」


AM 10:45


ずるずるずる…………。

長い何かを啜る音。

ずるずるずる…………………。

二重奏で奏でられる、ソレは、何故か悲哀に満ちていた。


『シロと一緒に、横島とさんぽに行ってきます。 雪乃

  PS. 朝ご飯は、タマモが隠し持っているきつねうどんを食されたし。』


ぐしゃ

そう書かれたメモは、カップうどんの蓋と共に、丸められ、捨てられた。


「雪乃の」

「お姉ちゃんの」


「「馬鹿」」


あとがき


書いたー!


レス返しだー!


桜川様、アト様、のえ様、片倉 希様、アイク様、夢識様、Quin様、東雲様、ゆん様、スケベビッチ・オンナスキー様、内海一弘様、LUCIFER様、冬様、February様、煉様、いりあす様、鋼鉄の騎士様、アサガミ様、Dr.J様。


レスありがとうございます。

皆さんの御期待や、声援あればこその、球道です。

これからも、コツコツと頑張って話数を増やしていければ、と思っております。


さて、今気がついたのですが、今日、今現在、バレンタインデーだったのですね。

実は私、菓子関係の業界の人間ですが、とんと忘れていました。あはは。


まあ、まだ製菓学校生(四月より勤務)なのであんまし関係ないですけどもね。


皆さんはチョコを貰いましたか?

私は……。


……まあ、それはともかく。

そのうち、雪乃の話で、バレンタイン物やりたいですねー。

やっぱり、外伝ですかねー。

決行するなら、来年とか……、忙しくなければやりたいですねー。


と、言うことで、次回また逢いましょう!

ばっちこ〜い!!

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