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「GS美神〜大神・横島奮闘記〜 prologue:美神サイド(GS+サクラ大戦)」

真田芳幸 (2007-02-14 00:29)
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 彼女があの場所にいたのは、特に意図した結果ではなかった。

   ◇◆◇◆◇◆

 美神令子はイライラしていた。

 第一に、外が暑かった。
 気温27℃とは、一体何の冗談なのだろうか?今が初夏だというのならまだわからないでもないが、なんだって三月下旬にこんなに暑くなるのだ。
 実際、昨日までは三日ほど肌寒い日が続いていた。というか、今朝は結構気温が低かった。だから、スカートこそミニだがストッキングを穿いたし、冬服(要するに生地が厚くて袖が長いのだ)を着たというのに……!

 第二に、仕事が少なかった。
 一月ほど前、師より独立の許可を取り付け、手続きを済ませ、事務所を開いて早一週間。その間にこなした仕事はたったの五件。それもすべて師の紹介によるもので、加えて彼女自身の能力からしてみればウンザリするほど容易なものだった。

 だが、少ない仕事をこちらに回してくれる師に文句を言ったら罰があたる(ちなみに、彼女の師の仕事が少ないのは無能ゆえではない。むしろ、業界トップクラスの腕であるといってよい。彼は金儲けに興味がなく、周囲の恵まれない人々を救うことを己が天職として定めているために、大々的な宣伝や売込みを全くと言っていいほどしないのだ)。
 師は仲介料も最低限しか受け取ろうとはせず(というか、彼の場合自分がこなした仕事に対する当然の報酬すら受け取らないことがよくあった)、従って彼女は文句を言うどころか感謝すべき立場なのだ。
 いずれにせよ、見習い時代に作った貯金(……)がなかったらなかなか苦しいことになるところだった。

 頭ではわかっている。
 彼女はまだ高校を卒業したばかりと非常に若い。信用がものを言うこの業界で、これは大きなウィークポイントだ。実績も、有能だが有名とは言い難い師の下でのアシスタント経験くらいのもの。
 とどめに、開業してまだ一週間。これで依頼が殺到していたら、かえって不気味だ。
 だが───。

(感情が納得しないのよ!! こっちは十年、いえ百年に一度の天才だってのに!! 資格試験一位で合格したってのにぃぃぃっ!!
 ……これじゃ、ママに申し訳が立たないじゃない……)

 彼女の母は、この業界では“世界最高”の枕言葉と共に呼ばれる存在であった。
 父親が海外で働いているため、殆ど母子家庭に近かった美神家。誰よりも強く美しく、優しく時に厳しい母の姿は、彼女の憧れだった。
 ごく幼い頃から、将来はママのようになりたい、と思っていたのだ。

 その母は、もうこの世にはいない。
 三年前、彼女の中学三年生の夏に死んだ。
 彼女は、母の死に目には立ち会えなかった。それどころか、母の遺体に最後の別れを告げることすらかなわなかった。
 彼女は一人旅行に行っていたのだ。
 帰ってきて、母の死を知った時には,もう全て終わっていた。

 何故教えてくれなかったのか。
 激昂した彼女が詰問すると、父は耐え切れなくなったかのように目をそらし,ポツリと言った。

 ───子供に見せられるような状態ではなかった
 ───私を恨んでもいい。だが、私はお前に、あんな母さんを断じて見せるわけにはいかなかった

と。

 それで、彼女は理解した。
 母は殺されたのだ。『奴等』の手によって。

 彼女は父を突き飛ばした。走って、走って、走り続けた。
 どこをどう走ったのかなど覚えていない。
 気が付くと、そこは母の十五年来の知己が神父を務める教会だった。

 ───どうかしたのかい?

 神父の優しい問いかけ。その言葉には、必死で泣くまいとしていた彼女の心を揺さぶる、本物の心がこめられていた。
 恥も外聞もなく、彼女は神父の胸に飛び込んだ。
 子供のように泣きじゃくる彼女が途切れ途切れに洩らした言葉で、彼は事情を悟ったようだった。

 ───そうか、美智恵くんが……

 彼がそっと呟いた。
 同時に、自分を支える腕に、ほんの少し、力が加わったことを美神は感じた。
 彼は、泣き止む気配のない彼女を、そっと支えていてくれた。


 あの日、彼女は決心したのだ。母と同じ道へ進み、『奴等』と戦うことを。
 もう、泣いたりはしない。泣いている暇などない。彼女は、強くならねばならなかった。
 その日のうちに神父に弟子入りを志願し(彼は母の『同業者』だった)、それまでは遊び半分だった『修行』に本気で取り組み始めた。
 そして、師が驚くほどの成長を遂げた彼女は、昨年資格試験にて首席合格を果たし、先月、高校在学中でありながら早々と独立許可を得たのである。

 だというのに───。

 気持ちが沈みかけたのに気付いて、彼女は軽く頭を振った。母のことを思い出して感傷に浸っている場合ではない。それこそ母に笑われてしまう。

 目下彼女が早急にしなくてはならないことは───そして、これが全くと言っていいほど進展しないのが、彼女のイライラの第三の原因である───助手となる人間を探すことだった。
 本格的に探し始めたのは独立許可取得直後だから、もう一月が経つ。なのに、候補すら未だに存在しない。

 まず、資格試験合格者たちに声をかけてみた。……が、元々が独立を目指しているものが大半であるわけで、誰一人として応じてはくれなかった(いや、確実に応じてくれそうな者が一人だけいたのだが、諸事情により彼女だけは“絶対に”御免こうむりたかった)。
 彼女としてもそれはわかっており、駄目元で言ってみただけなので大してがっかりもしなかったのだが。

 既に独立している連中を……とも一瞬考えたが、すぐに打ち消した。いくらなんでもそれは失礼だろう、と思ったのである(いくら相手のほうが実力は下だとしても、などとわざわざ意地悪く考えるあたり、彼女の性格がよく出ている)。

 というわけで、一般募集をすることになったのだが。
 結果として、合計四度行った面接の度に、彼女は精神的疲労とストレスを蓄積していくことになったのであった。

 例えば、ある男はエンターテイメントとしてのオカルトにどっぷりとはまりこんだ、いわゆる『オタク』だった。
 美男子ならまだしも、背がひょろひょろと高いばかりで髪型は適当、頬はこけておりしかも妙に陰気な話し方、とくれば、彼女でなくとも即行で不採用を決めることだろう。

 またある男は、背が低く小太りで、妙に油っぽい顔にセンスのない眼鏡をかけていた。気付かれていないとでも思っていたのか、美神の脚線を見ては密かに息を荒げていた。
 いい加減疲れていた彼女は、「ジロジロ見てんじゃないわよっ!!」と一喝して追い出し(というか蹴り出し)、警察に通報したのである。
 その後のことはよく知らないが、何でも実は某女子大のテニス部の部室に盗撮のためのカメラを仕掛けた犯人だということが発覚して、めでたく逮捕されたらしい。
 何の慰めにもならないが。

(あーもう! せっかくポスター作ったのに、どうしてまともな人間が一人も来ないのよーっ!?)

 ちなみにそのポスターの宣伝文句は以下の通りである。

「アシスタント募集。素人でも大丈夫。危険は全くありません!
 美人GSが優しく指導。
 あなたも、除霊やってみませんか?
 給与、勤務時間等応相談」

 そして、彼女の写真がプリントされているのだ。

 はっきり言って、怪しさ大爆発である。これでまともな人間が来ると思っているあたり、彼女の感覚は素敵なズレ方をしていると言えよう。

(ゴーストスイーパーを何だと思ってるのよ)

 GS。ゴーストスイーパー。
 つまりGhost Sweeper、意訳すると、悪霊退治屋ということになる。

 悪霊? などと眉をひそめることなかれ。
 文明の発展という光は、同時に様々な闇を生み出した。いや、生み出したという言い方は実のところ正確ではない。
 近代文明の初期に一度は抑え込まれ、人々の記憶からも忘れ去られていた闇の住人達が、近年とみにその数を増してきたのだ。それに呼応するかのように、これまでは一般的な人々とは全く無縁だった、いわゆる『霊』達も力をつけ、現世に生きる者達に災いをもたらすようになったのである。
 そこでゴーストスイーパーの出番となった。
 物理的実体を持たない悪霊の類、実体を持ってはいても物理的な方法ではダメージを与え難い妖怪の類を、『霊力』でもって退治する、というのがその仕事である。

 霊を明確に認識する力、あるいは『この世ならざる』力を持つ者は少なく、ゴーストスイーパーの任に耐えうる者は更に少ない。そして、需要が多く、供給が少ないのならば、価格は高騰するというのが資本主義社会の摂理だ。
 ゴーストスイーパーの不足具合は、「少なすぎる」としょっちゅう批判を浴びる司法職のそれに匹敵するほどであり、また仕事自体がかなり危険なものであることから元々高額の報酬を得ることが許されているので、一旦独立すればいくらでも大儲けできる。

 ……と、うまくいくほど世の中甘くない。
 まず、礼金があまりにも高いため、客がスイーパーを恐ろしく慎重に選ぶのだ。高い料金払ってダメでした、となるのを避けようとするのはごく自然なことだが、おかげで極端な二層化が生じている。
 すなわち、有名で金持ちな者と、無名で貧乏な者と、だ。
 そして、当たり前のことだが、後者の方が圧倒的に多い。
 かくして、持つ者はますます栄え、持たざる者はどんどん落ちぶれていく。

 そしてもう一つ。仕事が仕事であるため、危険度が洒落にならないのである。稼ごうとすれば、時には自分の能力を超えた危険な依頼をもこなさなければならない。そんな大博打を張る人間は今時いないし、いたとしてもすぐに引退に追い込まれるのだ。
 負傷、もしくは……死、によって。

 そんなわけで、「法外な」と形容できるほどの収入を得ているのは、ごく一部なのである。

 とにかく、ゴーストスイーパーは危険な仕事だ。そして、この世ならざる力、『霊力』を操るには、多大な精神力が必要とされる。
 スイーパー本人が除霊に集中できるように補佐してくれる優秀なアシスタントが───この際、有害でさえなければ無能でもいいというような幾分やけくそ気味の気分に美神はなっていたのだが───是非とも欲しいところなのだ。

 彼女は自信家だが、その自身はあくまで彼女の実力に応じたものであり、決して己の力を過信しているわけではない。もっと経験を積んでからならともかく、駆け出しの身で母や師のように助手なしでハイレベルな仕事をこなすのはまずいことこの上ない。

 ……そんな役割を求めている助手、これを集めるための宣伝文句がアレである。美神令子という女性は、殆ど意識することなく人を詐欺にかける才能があるようだった(成功するかは別として)。
 確かに一つの強さかもしれない。だが、彼女が得たいと願い、そしておそらく彼女の母親が娘に望んだであろう強さとは大きく異なるように思われる…………。

 そんなわけで、繰り返しになるが、美神令子は非常にイライラしていた。

「なあ、美人の姉ちゃん」
「ちょっと待てよ、おい」
「すこーし、俺達と話をしねえか?」

 そんな彼女の前に立ち、口々にそんなことを言ってくる男が三人。不良、という以外何の説明も必要としないだろうと思われる風体だ。一様に下品なニヤニヤ笑いを浮かべながら、彼女に迫ってくる。

「あ、あの……な、何か?」

 怯えているように見せるため、僅かに体を硬くし、声を震わせる。つまり彼女は全く動揺していないわけで、内心こんなことを考えていた。

(今時マンガでもこんなの流行らないんじゃないかしら。
 うわ、カッコわる!!)

 天才的な……いや、悪魔的な演技力と言うべきか。彼女には狙いがあった。

「そんなに怖がらなくてもいいって〜」
「ちょっと場所変えようか」
「じゃ、こっち行こうこっち」

 果たして彼女の思惑通りの台詞を男達は吐き出した。
 ちなみに、今の言葉を美神流に解釈すると、この言葉は「貴女様のサンドバッグにして下さいませ☆」という意味になる。
 人前で実力行使に及ぶのは流石にためらいがあるが、裏通りなら何も問題はない。そう考えたのは不良達ばかりではなかったのだ。

 傍から見れば、不良達に絡まれ、金品を奪われそうに、あるいは何らかの暴行を受けそうになっている美女。
 実は彼女は、三匹の子豚を自らのテリトリーに誘い込もうとしている極悪非道な狼だったのだが、この光景を眉をひそめて見ていた一人の青年を含め、誰一人としてそのことに気がつかなかった。
 美神は、己のストレス解消のために、三人を精々利用してやろうと思ったのである。

   ◇◆◇◆◇◆

(あー、スッキリした♪)

 声に出したら周囲から誤解を受けそうなことを、美神は思った。

 自分より弱そうな相手にすら一人で向かっていく度胸がなく、徒党を組んでは人にたかっているような連中である。実績はともかく、実力的には間違いなく一流の、しかも直接戦闘を得意とするタイプのゴーストスイーパーである彼女にしてみれば、赤子の手をひねるようなもの。
 まず、彼女は霊力を放出した。
 ただし、特に収束させたわけでも志向性を持たせたわけでもない。霊的視覚がないに等しい一般人、その中でも筋金入りに鈍そうな連中だ。当然、彼らの目には何も映らない。しかし、この場合はその方が好都合なのであった。
 前述の通り、霊と称される存在、霊力と呼ばれる力を明確に認識できる者は非常に少ない。だが、だからと言って何も感じないわけではないのだ。人もまた、『肉』の身体、すなわち『肉体』と同時に、『霊』の身体、すなわち『霊体』を持つ、霊的存在でもあるがゆえに。

 実際、彼らは美神の霊力を感じ取った。だが、彼らはそれが霊力であるということを知らない。
 人間、知らないものに対しては本能的に恐怖を抱くものである。ましてや、それが見ることすら出来ないものであるとなれば。

 彼らは正体不明のプレッシャーを感じ、足が竦んで動けなくなってしまった。立っていられるのが不思議な程に、体がガクガクと震えていた。
 後悔と恐怖と混乱に囚われた六つの瞳。彼らが見せる醜態の全てが、彼女には愉快痛快だった。

 そして、とどめ。
 内に抱え込んだイライラを全て破壊衝動に転化し、一瞬の躊躇いもなく男達に叩き込んだ。
 具体的には、『急所』への蹴りが三発。

 意識を手放してなお悶絶する不良たちを見ていると、ストレスから開放され正常に戻った彼女の心にも罪悪感が……やはり欠片も湧いてこなかった。
 むしろ清々しい気分である。

(ま、一般人相手に霊力使っちゃ本当はいけないんだけど……。
 この場合は霊力で攻撃したわけじゃないから合法よね♪)

 彼女の愛読書のヒロインであり、今彼女がやったような華麗かつ苛烈な蹴りで、幾人もの男達の人生を『私生活』の面で終わらせてきた、世界一美しい警察官も言っている。

「法はあたしの為にあるのよ!!」

と。

 つまり、法は自分の好きなように解釈してしまえばいいのだ。……イヤな言葉もあったものである。

 さて、本人曰く「スッキリした」彼女がふと気が付いてみると、少し離れたところに一人の青年が立っており、こちらを見ていた。
 一言で言うなら「好青年」。白いシャツに青のジーンズという、さっぱりした服装。収まりの悪い逆立った髪は、おそらく手を加えているのではなく天然だろう。
 顔立ちなどから察するにどうやら年下らしいが、結構背が高い。美神自身、日本人成人男性の平均に匹敵する身長の持ち主なのだが、この青年は更に十センチほど高いようだ。均整の取れた体つきといい、スッと立った姿勢といい、不良たちとは実に対照的であった。

(新手?にしては様子が変だし……あ、そうか)

 青年はおそらく心配して追ってきてくれたのだろう。美神はそう思いあたった。
 その心配は結果として的外れだったわけだが、行動に移すことができるというのは今時なかなか珍しい。

「助けようとしてくれたんだ。ありがとう」

 素直に感心したので、彼女は青年に歩み寄り、微笑して礼を述べた。
 途中何かを踏んだような気もしたが、大したことではない。

「いえ。どうやら必要なかったようですね」

 青年は無難な返事を返してきた。

 それ自体は別にいい。だが、彼の妙に硬い表情が気になった。
 なんというか、年頃の男が美女の微笑を受けて浮かべる表情ではない(彼女のうぬぼれではないはずだ)。彼女の三人組への仕打ちを見ていたことを割り引いても、どこかおかしい。
 彼の顔から読み取れるのは、暴力を振るった彼女への恐怖や嫌悪ではなく……むしろ、何か不可解なものを見たかのような困惑?

(あれ? まさかこの人───)

「ひょっとしてあなた、見えたの? 私の霊力」

 一般人に目視できる程練り上げた霊力ではなかった。単に脅しに使おうとしただけなので、その程度で十分だったのだ。
 だが、見えないはずの霊力の光、それをこの青年が『見た』のだとすれば───。

「霊力? あの光が……
 って、それでは、あなたはゴーストスイーパーなのですか!?」
「ええ」

 やはり。美神は納得して頷いた。
 彼には、彼女が発した霊力の光が見えていたのだ。つまり、彼には『素質』があるということになる。

(これは思わぬ拾い物かも?
 よく見たら、結構いい男だし♪)

 改めて観察してみると、微かにあどけなさが残るとはいえ、彫りの深い、鋭く引き締まった容貌は、十分に二枚目と呼べる。
 足が長く、肩幅は広い。見事な体格だ。
 加えて、細身と見えたその身体は、ちょっとした仕草等から考えるに、かなり鍛えられているように見受けられた。

「あ、あの……何か?」

 その声で気が付いたが、彼女は青年をずいぶんジロジロと眺め回していたようだ。青年は困惑し、顔を僅かに赤くしていた。

(なかなか可愛いじゃない)

 そんな純朴なところにも、美神は好感を持った。

「あなた、体力に自身はある?」
「へ? ……まあありますけど。それが何か?」

(よしっ!!)

 彼女の助手選びがまるでうまくいかなかったのは、ロクな奴がいなかった事情は無論あるが、何より「こいつだ」とピンと来る人物が皆無だったことによるのである。彼女の直感に引っかかる人間は、ただの一人もいなかった。

 一般人ならいざ知らず、彼女は霊能力者である。五感と同じくらい、時にはそれ以上に、自分の霊感を信じていた。
 その霊感が、今度こそ告げているのだ。
「こいつだ」と。

「私はゴーストスイーパー美神令子。
 あなた、私の助手をやってみる気はない?」
「…………は?」

 だからだろう、全くの初対面の人間に、いきなりこんな事を言ってしまったのは。

 後にこの時のことを自ら省みて、彼女は、いくらなんでも急すぎたかと一人苦笑することになる。
 だが、この時彼女はやっと助手が決定『した』(既に過去形)開放感に浸っており、彼がどう答えるかということなどは考えてもいなかった。
 よほどストレスを溜めこんでいたのだろうと思う。

 こうして、いきなり勧誘してきた挙げ句、何も返事をしていないのに妙に浮かれた様子の美女を見ながら、青年はひとしきり困惑することになったのであった。

 この後、美神は青年を強引に事務所へと連れ込み、高校では何かかスポーツ系の部活動に取り組むつもりだと言って渋る彼(なんと、先日中学を出たばかりなのだという。これには美神も少々驚いた)を口八丁で丸め込み、泣き落としまでかけて「助手をやる」という約束を取りつけることに成功した。
 どこか釈然としない表情で帰っていく青年を事務所の窓から眺めつつ、美神は「これでようやく普通に仕事が出来る!!」とガッツポーズをしていた。

 ───無論。
 助手の存在と依頼件数には、何の相関関係もないわけだが。

   ◇◆◇◆◇◆

 さらに二日後。
 美神令子除霊事務所は、もう一人の少年を雇い入れることとなる。
 どーしようもないほどにスケベで根性なしで役立たず、何でクビにしないのか美神自身不思議に思うほどの駄目男。
 助手としての理想からは程遠い、その少年は、しかし幾多の事件を乗り越えて、誰も予想だにしなかった成長を遂げてゆくことになる。
 ───だがそれは、これから語られるべき物語。


【作者より】
 こんばんは。二つ目のプロローグ、美神サイドの投稿です。
 大神サイドと見比べてみると、ちょっと面白いかもしれません。
 現在第一話執筆中。

【レス返し】
>Gさま
 感想ありがとうございます。ご期待に沿えるよう頑張ります。
 大神の過去の「事件」は、せっかくクロスオーバーで出すからにはそれなりの背景があった方がいいよね、ということで設定してあります。この事件そのものはあまり絡んできませんが、影響は後々まで響くとか響かないとか(ぉぃ
 美神? 狙ってやってるに決まってるじゃないですか。やだなあもう(笑)

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