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▽レス始

「妖との仲介人 25件目(GS)」

ラッフィン (2007-02-13 23:43)
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「ここだ。懐かしいな〜ってまだ、一年も経ってないのか?」

依頼を受けた日の週末、横島は雪蛍、タマモ、愛子を伴い現場へとやってきていた。そこで思い出されるのは、自分が助けた猫又の親子。俺のあげた竹とんぼを大事にしているか?とか、元気にしているのか?とか、あれからいろんなことがありすぎだせいで、猫又の親子に会ったのが遠い昔のように感じてならない。

「自然がたくさんあっていいね」
「そうね。でも、ここも開発されちゃうんでしょ?」
「ああ、俺達がこの依頼を解決した後に工事に取り掛かるらしい」
「こんないいところを取り壊すなんて、青春じゃないわ」

依頼人から今回の話を聞いた横島達は早速現場を見に来ている。その現場は以前横島が助けた猫又の親子の住処があるはずの場所で(まぁ、以前は道に迷っていたために詳しい場所まではわからないのだが)横島は会えるかもしれないと密かに期待している。あの後、幸せに暮らしているのか?と成り行きとは言え自分が助けた親子の無事を確かめたいと思っていた。それと、この依頼の対象があの親子ではないことを願っていた。

「ここからは慎重に行くぞ」
「「「うん」」」

実際に被害にあった場所に入るので、ここからは慎重に進む。戦闘を横島その後ろに愛子でその左右に雪蛍タマモという位置だ。戦闘力はないに等しい愛子を護る形で展開している。

「タマモどうだ?」
「妖気は確かに匂うけど、この森事態に匂いが染み付いてるから場所の特定は近づかないと駄目ね」
「そうか・・・」

タマモの鼻で相手の気配、位置を探ってもらうがあまり効果がないらしい。森に匂いが染み付いているということは、ここに長く住んでいるということはますますあの親子が関係しているという可能性が高いということで横島の気分が落ち込んでしまう。

「もう少し先に行ってみよう」
「横島君、気を落さないで」
「ああ」

愛子が横島を励ますが、横島は力ない笑みを浮かべて応えるだけである。それから4人はさらに森の深くまで進んでいくが、出てくるのは森の生き物だけで妖怪などが出てくる気配がない。それでも、気を引き締めて周囲を警戒する横島達。そこへ。

クンク・・・ピク!

「横島!くるわ!」
「!?どこからだ?」
「待って・・・右前方!!」

タマモが方向を示した直後、木の陰から一つの小さな影が飛び出してきた。

「はや!!」

その影の予想外の早さに向き直るのが精一杯で避けることができない。次に体にくる衝撃に対して横島は目を閉じ身を硬くした。

「にいちゃ〜〜〜〜〜〜ん!」
「へ?げふぅ!!」

が、その影が発した言葉に思わず力を抜いてしまい横島はモロにその衝撃を受けてしまう。どうやら、影は小さな子供のようで、その頭が横島の鳩尾に食い込んでいるようだ。高速+急所=ダメージ大
横島は影に突き飛ばされ後ろの木に頭部を激しく打ちつけ気を失った。

「ああ!にいちゃん、しっかり!!」

ガクガクガクガク

ガンガンガンガン

その子供は横島が気を失っているのを見てパニックになり激しく揺さぶる。馬乗りになっている状態で揺さぶっていて、気がついていないが横島の頭は揺さぶるごとに地面に叩きつけられている。横島は頭から出血していて、だんだんとひどくなってきていた。あまりのことにタマモ、雪蛍、愛子の3人は呆然としている。

「にいちゃん!起きて起きて」

バシバシバシバシ!

さらにその子供は横島を起こそうと往復ビンタで気付けをするも効果はなく、横島の頬は真っ赤に腫れ上がっていくだけだ。

「ああ、にいちゃ〜ん。死んじゃ駄目〜!!」

自分が原因だということに気がついていないようだ。しかし、多少冷静になったのか少し思案し子供は何かを閃いたようだ。

「こういう場合はどうするんだっけ?えっと〜、そうだ!人工呼吸するんだよね!」

顔を薄い赤色に染めてその子供は人工呼吸を試みる。

「スーハースーハー、よし!じゃ、えっと・・・いただきます

何か激しく間違っているような気もするが子供の唇がゆっくりと横島に近づいていく。近づくごとに子供の頬の赤みが増していっているのは気のせいではないだろう。

「ん〜・・・」

そして、あと数ミリでくっつくというところで、正気に戻った横島シスターズ+1に止められた。

「「「ちょっと待ちなさい!!」」」
「にゃあうん!!」

左右から雪蛍と愛子にひっぱられ、口はタマモの両腕によって押さえられ、あっさりと横島から引き離された。

「全く、あなたは何をしようとしてるのよ!」
「えっと、人工呼吸」
「ってか、あなたは何者?」
「オ、オイラは猫又」
「どうしてヨコシマのことを知っているの?」
「ま、前に助けてもらったから」

雪蛍の感情むき出しの言葉に律儀に全て答えている自称猫又の子供。そんな言葉を全く聞かず、雪蛍はどんどん暴走していき話しの方向もどんどんと違ったほうに向いていく。

「だいたい恋人の私を差し置いてキスしようなんてずうずうしいのよ!私にいってくれればいつでも、そりゃもう情熱的なキスをしてあげるっていうのに。ヨコシマったらいつも照れちゃって『俺らは兄妹なんだぞ』なんていうんだから。いいじゃない血は繋がってないんだし、義理の妹って萌えだと思うんだけど。ヨコシマが求めてくれればキスどころか最後までOKなのに〜」

もはや自分の妄想に浸って周りが見えなくなっている。体をクネクネと動かして端から見ていると危ない人にしか見えない。そこに雪蛍の言葉に黙ってられないというように乱入者が現れたことでさらなる混沌の場と化す。

「待ちなさい!誰が横島の恋人ですって?」
「誰って私に決まってるでしょ?」
「あなたは妹でしょうが!恋人は私よ!」
「いや、あなたこそ妹でしょ・・・タマモちゃん」
「そうそう、雪蛍ちゃんの言うとおりよ。横島君の恋人は私なんだから」
「愛子ちゃん!あなたもどさくさにまぎれて何言ってるの?」
「え?事実だけど?」
「「どこが事実なのよ!!」」

そう、タマモと愛子が乱入したことにより、この場は混沌と化す。もはや蚊帳の外に出された感じの猫又の子供はどうしたものかとオロオロするばかりだ。そんなとき、横島がめを覚ます。

「ん・・・あれ?気絶してた?」

横島にいち早く気付いたケイが飛びついた。

「にいちゃん!」
「え?お前、ケイか?」
「うん。そうだよ。にいちゃあああああん」
「っとと、どうしたんだ?いきなり泣き出して」
「ごめんなさい。オイラのせいで」
「ああ、さっきのか。まぁ俺にはいつものことだから気にするな」
「でもでも〜」
「はは、よしよし」

猫又の子供―ケイ―はさきほど横島にしてしまったことを謝って泣き出してしまう。横島としてはいつもシロがさきほどより強烈なことをしているので、慣れっこだったのだが。そんなことを知らないケイがこうなってしまうのはしかたないだろう。横島は落ち着かせるようにケイの頭を優しく撫でてやるのだった。


「で、お前一人なのか?母ちゃんはどうした?」
「それが・・・突然、母ちゃんがおかしくなっちゃったんだ!」
「おかしくなった?」
「うん・・・」

ケイの話によれば1ヶ月前に水汲みから帰って来たときに豹変していたらしい。目はつり上がり、爪を伸ばしていて雰囲気がとても怖かったとのこと。その日から森に人間が近づくと容赦なく攻撃をし始める。幸い死人は出ていないが一番重くて全治三ヶ月の重症を負わせたのだ。よって、横島達にお鉢が回って来たということのようだ。しかし、不思議なことにケイには危害を一切加えないというのだ。攻撃するのは森に近づいてきた人間だけ、そのことを疑問に思うも解決には至らず、ひとまずそのことについては保留し、まずはケイのお母さんをなんとかするということで纏まった。母の雰囲気に野生の勘か何かで危ないと感じたケイは逃げ出すことはしなかったが、距離を置き警戒するようにして、母を観察していたのだ。そして今日、遊びに行くと理由で母から離れていたケイは懐かしい匂いを感じてきてみたら横島に会えたという。

「そっか、頑張ったなケイ」
「うん!でも、にいちゃんとの約束は守れてないよ。母ちゃんはオイラが守らないといけなかったのに・・・」
「悔いても仕方ない。今は母ちゃんを助けてあげないとだろ?今回も俺がいる。一緒に母ちゃんを助けような?」
「うん!オイラ、頑張るよ!」
「よし、いい返事だ」

どうやら今回の事件は悪いことにケイの母ちゃん――美衣さん――が主犯らしい。だが、美衣がそんなことを進んでするとは思えない。何かしら原因があるはずだと確信している横島はなんとかして原因をつきとめ解決してあげたいと思った。と、上手く話しが纏まったところで、話すタイミングをうかがっていた雪蛍が話しかけてくる。

「ところで、お兄ちゃん。この子はなんなの?」

雪蛍同様、それが気になっていたのか愛子、タマモも頷いている。そこで、ようやく横島は雪蛍達とケイは面識がなかったことを思い出した。

「ああ、悪い悪い。こいつは猫又のケイ。以前受けた仕事で知り合ったんだよ」
「「「そうなんだ、よろしくね。ケイちゃん」」」
「んでな、ケイ。こっちは俺の妹・・・まぁ、本当のじゃなくて義理なんだが、雪女の雪蛍と妖狐のタマモ。それから、俺のクラスメイトで九十九神の愛子だ」
「よ、よろしくお願いします」

3人は笑顔でフレンドリーに挨拶するも、ケイはやや緊張した面持ちだった。この森からあまり出ず、人との接触もほとんどなかったケイなので、突然大勢と知り合えば戸惑って当然だろう。
挨拶を終えた横島達は早速、美衣さんに会いに行く。原因はなんなのかは美衣さんの様子を見ないことにはどうすることもできない。医者が患者の様子を見て、触診したり、聴診器で診察しないと病気がわからないのと同じである。が、その必要がなくなった。なぜなら、向こうからやってきてくれたからだ。最も友好的かと聞かれると否と答えるしかない様子だったが。

「ケイ!!」
「かあちゃん!」
「美衣さん!」
「ケイ!その人間から離れなさい!」
「かあちゃん。この人はにいちゃんだよ?わからないの?」
「ケイ、早く離れなさい!」

現れて早々、横島から離ろの一点張りの美衣。ケイの必死の説明にも耳を貸さないというか横島のことを覚えてないのか、主張を変えない。横島達から見ても美衣の目は狂気に染まっていて、とても正気には見えなかった。

「美衣さん、俺は横島です!覚えていませんか?」
「人間!ケイから離れなさい、殺しますよ?」
「美衣さん!」
「慣れなれしくよばないで。この森から出て行きなさい!」

横島も声をかけてみるも、美衣は横島のことを知らないようにつっぱねる。そのとき横島は美衣に違和感を感じた。そのときと言ったが先ほど現れたときに美衣を見てからずっとといったほうが正しい。なぜか美衣の気配と被って別の気配を感じたのだ。横島はチラっと愛子のほうを見た。愛子は横島を寄代にしているためか、ある程度なら意思の疎通が可能になっていたので、横島の意図を理解し自分の影に手をつっこみ中から文珠を取り出す。愛子は意思疎通はもちろんのこと、影から横島の意識下にストックしてある文珠も取り出せるようになったのだ。その文珠を雪蛍に渡す。その文珠にはすでに文字が込められていた。その文字を見て、雪蛍は属座に横島の意図を理解した。伊達に前世(?)は恋人をしていないというとこだ。
そして、美衣に向かって文珠を発動させた。

<覗>

雪蛍の頭に現在の美衣の精神状態が映像で映し出される。そこには美衣の他にもう一つの強力な思念が存在していた。つまりは美衣は霊に取り付かれていたのだ。

「お兄ちゃん!あの猫又に霊が憑いてるわ!!」
「霊が!?」

雪蛍の言葉に驚いて振り向く横島。それを好機とみなした美衣は一気に間合いを詰めてくる。

「ケイから離れなさい!」
「くっ!」

ガキィイイイイイイイイイ

美衣の爪が一閃。横島が咄嗟に出したサイキックソーサーと激しくぶつかり合い火花を散らせる。攻撃を止められた美衣は反撃に備え後退したが、横島は追う素振りどころか攻撃する意思さえ見せなかった。親しくした者との殺し合いはもうこりごりなのだ。

「美衣さん、もうやめてください」
「ケイから離れなさいといったはずです!」
「かあちゃん!にいちゃんのこと忘れちゃったの?」
「ケイ、待っててね。すぐに助けてあげるから」

美いの中ではケイは人間に捉えられていると認識されていて、雪蛍達は横島の僕と見られている。ケイは必死に自分の恩人のにいちゃんだと訴えるも正気でない美衣に意味はなく、話は平行線をたどることとなった。どうしようかと悩む横島にタマモが小さな声で話しかける。

「ねぇ、文珠で霊と分離できないの?」
「それも考えたんだが、魂を無理やり分離しちまうとどんな影響があるかわからないんだ。だから、それは最終手段だろうな。それに・・・」
「それに?」
「まだ、そいつは悪霊になりきれてないはずだ。それほど邪悪な気配を感じない。でも、このままなら近いうちに悪霊になるな。できれば悪霊になる前になんとか成仏させてやりたいが」
「じゃ、<浄>かな?」
「そうだな。でも、あそこまで魂がくっついてると下手すると美衣さんの魂まで成仏しちまう。どうしたもんか」

解決策が見つからず頭を抱える横島。そうしている間にも美衣は殺気を緩めることはせず、隙あらば襲い掛かろうとしているので、気は抜けない。途方にくれる横島に雪蛍からの救いの手が差し伸べられた。

「だったら、精神に直接ダイブして内から排除しちゃえば?」
「そうか!ナイトメアの要領だな!!」

雪蛍は文珠で精神を視た時に二つの精神が確認できたことを思い出しいってみたのだ。横島はそれを納得し実行するため、早速文珠を取り出した。取り出したのは4つ。それぞれに<精><神><侵><入>と込める。

「潜り込めるのは二人だけだ。それ以上は美衣さんがもたない」
「お兄ちゃんは当然入るわね。後は愛子さんかな」
「そうね。横島が入るならそれに憑いている愛子も入ることになるし」
「雪蛍達は俺らが戻ってくるまで美衣さんとケイを頼むな?」
「「任せて!!」」
「頼んだ!行くぜ愛子!」
「ええ」

愛子は横島の中にもぐるのを確認した横島は美衣に向かって駆け出す。

「!?」

自分に向かってくる横島に反応し、爪を一閃。鋭い攻撃が横島に迫るもそれが横島に当たる前に文珠が発動し、横島と愛子は美衣の精神にダイブした。


緑の生い茂る深い森。近くでは小川のせせらぎが聞こえ、動物達が喉を潤しにやってくる。そんな自然溢れる場所に横島は降り立つ。

「ここが、美衣さんの精神」
「綺麗なところね」

隣には愛子が現れ、美衣の精神世界の風景に目を輝かせる。いつまでもこの風景に見入っているわけにはいかず、すぐに美衣についている霊を見つけ出すために動き出す二人。

「横島君!あれって街じゃない?」
「ん?あれか、そうみたいだな」

森の中をさまよってあたりを見回していた愛子が指した方向、その遠くに高層ビルなどの建物が見える。さらに先に進んでいくと、一軒の家があった。森の中にあるのは不自然な住宅地によく見る庭付きの家。庭に面した開けられた窓には優しそうな男性が一人座っていて、一匹の野良猫と思わしき猫に餌をあげているみたいだ。

「もしかして、あれがケイの親父さんか?」

とすると、ここは美衣の夫との思い出の空間なのだろう。無粋なことはせず、横島は愛子をつれて先に進む。それから、美衣が猫又になったとき、ケイが生まれたとき、夫が死んでしまったときなど記憶を辿り、次に現れたのは横島と初めてあったときだ。

「愛子、近いぞ。気をつけろよ?」
「わかったわ」

横島は記憶が最近のことになってきたために、敵に近づいてきたことを悟る。愛子も横島の言葉を聞き、気を引き締めた。二人は注意深く奥に進んでいくと一軒の小屋を見つける。それは、横島の記憶にある猫又親子の家と同じだった。

「霊気を感じるってことはここにいると思う。愛子はちょっと戻っててくれ」
「・・・わかったわ」

敵の場所がわかったので、戦闘能力を持たない愛子は横島の中に戻ってもらうことにした。そして、横島は小屋の扉に手をかけ、開け放つ。
そこで目にしたのは、猫又である美衣と30代後半から40代くらいの女性である。その女性は元は美人だったのだろうが、やつれていて疲れているような印象であった。

「美衣さん?」
「あ!あなたは横島さん!?」

部屋に入って名前を呼んだ横島に気がつく美衣。横島のことを覚えていてくれたようだ。そして、隣の女性も横島に気がついた。

「ニンゲン?サレ!モリカラサレ!」
「な、なんだ?」
「お、落ち着いてください!彼は敵ではありません!!」

横島の姿を見かけると現実世界での正気を失った美衣と同じ台詞を言い、襲い掛かってくる。美衣はなにやら動けないらしく身をよじるくらいしか出来ず、せめてものと口で説得しようとするも、半ば悪霊になりかかっている彼女には効果はない。

「サレ!タチサレ!!」
「のわ!」

サイキックソーサーで攻撃を受けて、横島は霊を説得しにかかる。

「聞いてください!なんで人間を攻撃するんです?何を怒っているんです?」
「サレ!タチサレ!!」
「ぐ、あぶな!!」
「モリカラタチサレ!!」
「くそっ、仕方ない。ハンズオ「待ってください!!」・・・美衣さん?」

説得を試みるも、相手は聞く意思がない。というか聞こえてもないと見た横島は霊波刀で除霊をしようとするも、美衣によって止められた。

「美衣さん、どうしてとめるんですか?」
「彼女に憑かれたときに彼女の記憶を見ることができて・・・可哀想に思えて。なんとか助けてあげたいんです!」
「・・・・」
「私も彼女の立場だったら同じことをしていたかもしれないんです。横島さん!お願いします。彼女を成仏させてあげて!彼女を助けて!!」

美衣の真摯な願い。憑かれて体の自由を奪われても彼女の想いがわかる美衣は助けたいと思っていた。そんな願いを横島は叶えることを断ることはできない。

「わかりました。なんとか彼女を助ける方法を探します」
「ありがとうございます」
「美人の頼みは断りませんよ。それと、お礼は解決してからお願いします」
「はい!」

横島の答えに笑みを浮かべて返事をした美衣。全幅の信頼を置いているようだ。ならば、期待に応えねばなるまい。

「さて、助けるっていったからには強引に除霊するわけにはいかないな。どうすっかな?」
『何か未練とか恨みがあるんじゃないの?それを解決すれば成仏するんじゃない?』
「なるほど。でも、どうやって原因を探るんだよ?ヒントっていったら、人間を物凄く恨んでいるってことだろう?」
『あのね・・・・文珠を使いなさいよ』
「あ・・・」

内からの愛子の指摘で文珠を取り出し<覗>と込め、女性の恨みの原因を探る。

「・・・・そういうことかよ!」

文珠によって流れてくる女性の記憶。そこには横島に――正確にはオカルトGメンに――依頼してきた会社に自分の息子を殺された母親の恨みがあった。
その息子は、小さいころはこの森で遊ぶのが大好きで自然を愛する腕白な子供で、思い立ったら行動あるのみ!という直情的な一面を持っていた。ここの開発計画がたったとき、小さいころの思い出の詰まった森を、自然豊かなこの森を壊すことが許せなかった彼は真っ先に反対する。が、多数の賛成意見により開発が決定してしまう。それでも、なんとかならないかと思っていたとき、その会社の裏側にたどり着いてしまう。それを知った会社は彼の口封じにと彼を殺した。息子の遺品を整理していたときに偶然見つけた息子の手記で母親はこの事実を知ってしまったのだ。そのことで会社を訴えようとしたが、不幸にも事故に会い命を落としてしまったが、会社への恨みで現在に至っている――というのが女性からの記憶であった。しかし、これだけなら女性は悪霊になっているはずである。その想いとは別に息子の守ろうとした森を自分も守ろうと、息子の意思を継ごうという想いがあるから、悪霊になる手前で止まっているのだろう。

「美衣さん、必ず助けますから待っていてください!」
「はい、お願いします」

横島は彼女の息子の手記があれば解決すると思い、一度現実世界に戻ることに。猫又の母と、息子思いだった母、子供を愛する二人の母を救うために。


「お兄ちゃん!」
「にいちゃん!」
「横島!」
「ただいま。ケイ、雪蛍、タマモ!雪蛍、すぐに隊長に連絡してくれ。至急、調べて欲しいことがある」

精神世界から戻ってきた横島は美智恵の協力を得るために雪蛍に連絡してもらう。そして、霊に憑かれた美衣と対峙する。

「愛子、問題が解決するまで美衣さんをお前の学校世界に入れておいてくれ」
「Okよ」
「タマモ、愛子の援護を頼む」
「了解!」
「じゃ、いくぜ!!」

愛子が姿を現し、タマモ、横島が霊気を練る。そして、横島と愛子が美衣に向かって走り出した。

「シッ!」

ガキィイイイイン!

向かってきた横島に鋭い一撃を見舞う美衣。その爪をソーサーで見事に受け止め時間を作る。そこにタマモが美衣に幻術をかけて動きをとめると、愛子が美衣の両肩を掴み、そのまま横島の影に美衣を引き釣り込んだ。机から横島へと寄代を変えた愛子だが、空間作成能力は健在で、今までは机の中へと引き込んでいたが、今は式神のように横島の影に引き込むことで異界へと入れることができるようになっていた。その能力を使い、美衣を問題が解決するまで隔離したのだった。

「ひとまず、これでよし」
「横島。いきなりどうしたの?私達は話がみえないんだけど」
「お兄ちゃん。美智恵さんにつながったよ」
「ああ、サンキュ。タマモ、雪蛍もだけど。話は後でな」
「わかったわよ」

美智恵に電話でこの事件の真相を語り、会社のことと、息子の手記のことを調べてもらうように頼むと二つ返事でOKがもらえた。横島は美智恵に後日、会う約束を取り付けるとケイに向き直る。

「ケイ、いきなりでごめんな。この問題が解決するまで美衣さんを隠さないといけないんだ。我慢してくれるか?」
「うん、オイラにいちゃんを信じるよ。ちゃんとかあちゃんを助けてくれるんだよね?」
「ああ、絶対に母ちゃんを助けるよ」

優しくケイの頭を撫で付ける。ケイの不安そうな顔を少しでも和らげたくて。後ろで雪蛍とタマモが羨ましそうな顔をしているのは気にしない方向で。

「じゃ、しばらくケイは俺らと住もうな?」
「え?にいちゃんと一緒に生活するの?」
「ああ、美衣さんもいないし。俺らに責任の一旦があるからな。嫌か?」
「ううん、にいちゃんと生活できるの、オイラ嬉しいよ」
「そっか」
「うん」
「よし、じゃ俺らの家に帰るか!」
「「「「おー!」」」」

こうして、横島達は家に帰還した。家につくなり疲れていたのかケイはぐっすりと横島のベットで寝てしまう。横島は雪蛍とタマモに精神世界でのことを話し、後日に美智恵と会うことになっていると伝えた。


翌日。俺は電話の音で目をさます。受話器をとると相手は隊長だった。

「横島君。昨日のことだけど、その話にあった手記を手に入れて調べたら面白いように証拠が出て来たわ。すぐきてくれる?」

これにはすぐに承諾した。雪蛍達はまだ起きてないようなので、書置きを残し、すぐに家を出る。もちろん、俺に憑いている愛子も一緒なのだが、まだ中で寝ているようだ。隊長と話す前に起こそう。愛子に起きてもらわないと異世界にいる美衣さんと美衣さんに憑いてる女性を助けることはできないからな。

「お、横島君。今日はどうしたのかね?」
「ああ、隊長に頼んだ調査の結果を聞きにね」
「あれか。先生なら上にいるよ」
「わかった」

オカルトGメンのオフィスに入ると西条がいた。いつもなら嫌味の一つでも言ってやるとこだが、今はそんなことをしている場合じゃない。はやく美衣さんを救ってケイを安心させてやりたいからな。我慢だ、我慢。

コンコン

「誰かしら?」
「横島です」
「開いているから入ってきて」
「失礼します」

部屋に入るとすでにテーブルの上に何枚かの書類が置いてあり、コーヒーを飲んでいる隊長がソファに座っていた。俺は愛子を起こし、早速調査の結果を聞くことにする。愛子も姿を現し、俺の隣に座った。

「隊長。早速で悪いんですが調査の結果を聞きたいんですけど」
「ええ、この書類を見てくれないかしら?」

俺は渡された書類に目を通す。そこには件の息子の事件の他にその会社がやっていた悪行が書き記してあった。

「これをね、上層部の連中に見せたらみんな青ざめちゃってね」
「そりゃ、そうでしょう」
「これを秘匿するって条件で、開発の中止と今後、このような裏家業をするのを禁止させたのよ」
「そうっすか。ありがとうございます」
「本当なら警察に言うところだけど、そしたら、大事になって平社員とかが路頭に迷っちゃうからね」
「そうですね」

美智恵から開発中止の書類を渡され、それを美衣さん(に憑いてる女性)に見せることで、無事に成仏させることができた。


「ただいま〜」
「おかえり、兄ちゃ・・・母ちゃん!!」
「ケイ!心配かけてごめんなさいね」
「母ちゃああああああああん」

感動の親子の再会だ。二人はきつく抱きしめあっている。その傍ではナルニアにいる太樹と百合子を思い浮かべる雪タマがいたり。愛子は涙を浮かべながら『青春ね』といってたりした。横島は二人が落ち着くのを待って話を切り出す。

「美衣さん、これからどうするんです?」
「そうですね。こう噂が広がってしまったらあの森にはもう住めませんし」

あの森の付近では「森に入ると襲われる」と噂がたっていた。近々、問題を解決するために対策会議も開かれるという。こう大事になってしまうと住みにくくなるために美衣は困ってしまった。そこで、横島は提案をする。

「美衣さん。提案があるんですけど・・・」


あとがき

今回は長くなった・・・・ラッフィンです!

最後のシーンですけど、

俺は渡された書類に目を通す。そこには件の息子の事件の他にその会社がやっていた悪行がびっちりと書き記してあった。

「こんなにあったんですか?」
「ええ、私も驚いたわ。今頃、マスコミや警察に囲まれてるでしょう」

隊長はテレビの電源を入れる。するとそこにはリポーターに囲まれている件の会社の社長が映っていた。この数ヵ月後、再起を図ろうといろいろな対策を練るも実らず、身売りすることに。それをある会社が吸収する。それから数ヶ月と経たないうちに業績が伸びに伸び、一年もたったころには吸収前以上の利益をたたき出す。
その会社には伝説のスーパーOLがいるとかいないとか。

ってネタもあったんですけど、ボツにしました。

そして、ケイですが。まだ明確に性別は書いてません。まだ悩んでいるのもあるんですが、別に性別を書かなくても話は進めるってこともあったんで、無理に書かなかったんです。

では、また次回!お会いしましょう。


レス返しです。


wata様

雪蛍はすでに添い寝を経験してますので、次のステップってことですw


somosomo様

今回はシリアスになってしまいました。次回以降に期待してください。


whiteangel様

ある意味一生続きそうな争いですよね。そのうち疲れて和平を結ぶこともあるかもしれません(笑)


内海一弘様

ベスパの他に小鳩まで!?
ケイはどっちでしょう(汗)

どっちでもネタはあるんですけどねw


蝦蟇口咬平様

いつもはボケてるけど、いざというときに頼りになる。そのギャップにやられてしまうんでしょう。


もも様

愛子はもちろんストライクゾーンです。雪蛍とタマモで慣れていると思ってください。あ、胸のサイ・・・グショ!氷の塊に潰されコメント不能。

PS・能力は影に引き込むという形で残りました・・・


放浪の道化師様

そうです!慣れです!雪蛍とタマモで。

能力は横島の影に引き込むという形で残っています。

性別は・・・どうしよう?


ういっす様

ケイは女の・・・・は!!危うく洗脳されかけた!!
まだ、決めてません。悩み中です。


DOM様

雪蛍、タマモ、愛子のレースはある意味一生続きますからね〜。
和平の可能性が高いかとw

子猫はわかりません。雄と雌と両方ネタがありますから。どっちでもOKなんですけどね。


太一様

納得いただけてホッとしました。

今回は萌なしのシリアステイストでした。おもった以上に長くなってしまいましたからね〜。自分でも驚きです。


秋桜様

愛子も小鳩もおキヌちゃんも大好きだ〜〜〜〜〜!!!!

今回はシリアステイストだったんで、ニマニマはなかったですね〜。
電波も圏外でしたから。


魔那様

横島は過去に男の子って聞いているので少年と思っただけです。
雌にするかはまだ決めてません。


sen様

初めまして。

普段はいつも通り雪蛍としてお兄ちゃんといっていますが、ベスパ達と話しているとき、感情が高ぶったり突発的なことだったりした場合はヨコシマになります。

なんとか完結まで頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。


わーくん様

抑えて、抑えて!本音が少し出てますよ!!

まだ性別は確定してません。悩んでます。
サイプライズ!?期待されとる!!プレッシャーだ・・・

雪蛍の嫉妬・・・ある部分ですか?(爆)


Schwarz様

Thank you.
It holds out to the conclusion.
Please continue your favors toward assistance.


白色彗星様

修正しました。
ご指摘ありがとうございます。

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