「あ、アイツ!?」
「来てくれたようですジャ」
博亞の登場に、驚く雪之丞とタイガー。
「待てよ・・・・・アイツが来てるって事は・・・」
雪之丞がもしやと思って観客席を見た。すると、そこにはゴスロリの衣装に身を包んだエヴァンジェリンと、巫女服の真名の姿があった。
「・・・やっぱりか」
「というか、二人の女性に応援される姿はある意味でうらやましいですケンノー」
「何か言いました?寅・吉・さ・ん♪」
そう言うと、いつの間にか隣にいた琉朱菜がタイガーの頬を抓った。
「い、痛いですジャ琉朱菜サン」
「もぅ、私がいるんですから・・・」
「だ、大丈夫ですジャ!!ワッシは琉朱菜サン一筋ですケンノー!!」
思いっきり大きな声で叫ぶタイガー。それにより、琉朱菜は頬を赤くしながらもタイガーの腕に抱きつくのだった。
「やれやれ、何してんだか・・・」
雪之丞が親友のノロケをぼやく中、戦いは始まる・・・。
エピソード七 学園での戦い(中編)
「第三試合!!剣崎博亞選手対宇崎ラン選手!!試合開始!!」
審判の言葉と共に、法円の上で戦いが始まった。
「先手は・・・・・俺が打たせてもらう!!」
博亞は地面を蹴ると、ランに向かって突きを放った。しかし、ランはまったく避ける素振りを見せなかった。そしてそのままランは・・・・・放たれた剣に向けて拳を放ったのである。
「ふ、無謀な」
「博亞の剣に、突きで対抗するか・・・・・何か秘策でも?」
観客席のエヴァと真名が見守る中、両者の攻撃が激突した。どうみても勝敗は見えている、皆にもそう思えた。しかし、予想とは大きく異なる光景が写し出された。
「な、なんじゃありゃ!?」
横島が驚くのも無理はない。ランは博亞の放った突きを、真っ直ぐに突きで受け止めていたのだ。
「ば、バカな!?」
「博亞の刃を防いだだと!?」
エヴァと真名が驚くのも無理はない。博亞の放つ刃は、真祖の障壁ですら軽々と貫くほどの突破力を持っているのだ。
「な・・・・!?」
それは博亞自身もそうだった。まさか剣による突きを拳で受け止められるとは予想していなかったのだ。
「反応が遅いよ!!」
その不意をつき、ランはしなやかな動きを駆使して左手で剣を弾くと、霊力を込めた蹴りを放った。その蹴りは博亞の腹部に突き刺さり、吹っ飛ばした。
「がは!?」
博亞はなんとか体勢を立て直して立ち上がるが、目の前にはすでに迫ってくるランの姿が。
「ちぃ!!」
「甘い!」
博亞は剣を盾代わりにして防ごうとするが、その剣を掻い潜るように拳が迫る。まるで、“チーター”が得物に爪を立てるような攻撃。博亞は繰り出されたアッパーにより、宙に浮いた。そして次の瞬間、地面に叩きつけられた。
「な、なんなんだあの攻撃は!?まるで動物みたいな動きだぜ!!」
雪之丞が驚きの表情を浮かべていると、医務室から帰ってきたクーがその動きを見て驚きの声を上げた。
「あ、あれは伝説の拳法【獣拳】じゃないアルか!!」
「獣拳?」
「そうアル。ケモノを心に感じ、ケモノの力を手にする拳法アル!!まさか、こんな近くに使い手がいるとは・・・」
クーがランの動きを見て感心する中、観客席の二人が叫ぶ。
「こらーーーー!何をしている!!博亞そんな小娘相手に何を手間取ってる!!!」
「確かに、相手が拳法家かもしれないが・・・・貴方は騎士だろう。騎士は一対一ならば「負けは無い!!・・・・でしょ?」・・・博亞」
二人の声援を受け、博亞は剣を握りなおす。
「まさか・・・・・貴方が【激獣拳ビーストアーツ】の使い手とは・・・・恐れ入ります。ですけど・・・・・・こっちだって・・・」
そう言うと、博亞の握る剣にヒビが入り始めた。そしてそのヒビの中から、真紅の光が漏れ始める。
「負ける訳にはいかないんだよ!!」
その言葉を発した瞬間、剣は砕け散った。そしてその中から、真紅の刀身で出来た“真剣”が目を覚ました。
「君も本気で来たほうがいいよ・・・・・・今の俺は、誰にも止められない!!」
「・・・分かりました。私の【激獣チーター拳】、受け止めれるなら受け止めてみてください!!」
互いの間合いの間で、見えない火花が散る。そして、それから数十秒、数分経っただろうか・・・・・二人は、動いた。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
二つの影が交差した。そして、その場に立っていたのは・・・。
「俺の・・・・・勝ちだ」
真紅の剣を持った男だった。第三試合は、剣崎博亞に軍配が上がった。ちなみにこの宇崎ラン、数年後に【獣拳戦隊】という戦士の一人として戦っていくのは、また違うお話。
「は~・・・・・やばかった」
「お疲れだな、博亞」
「おかえり・・・博亞」
クタクタで帰ってきた博亞は、エヴァと真名の片膝ずつを借り、眠りについてしまった。
「それにしても、あの博亞サンが苦戦とは恐ろしいですジャ」
「だな・・・」
タイガーと雪之丞が浮かない顔をする中、すっと腰を上げる者がいた、銀髪の侍・・・・シロである。
「次は拙者でござる」
「シロ、注意していけよ」
「了解でござるよ」
横島からの言葉を受け、シロは伏姫を手にするとそのまま舞台へとあがった。目の前には、ストレートの長い髪に前髪で顔がよく見えない少女だった。
(なんででござろうか・・・・・・何か、やばい予感がするでござる)
シロが思考の海に入ろうとした瞬間、審判の声が上がった。それを聞き、シロは考える事を止め伏姫を引き抜いた。
「犬塚シロ、参る!!」
シロは一気に飛び出すと、一撃必殺の体勢に入った。それを見た少女は、懐から・・・・・よりにもよって霊体ボーガンを取り出したのだ。それもただのボーガンではなく、リボルバー式の変わったボーガンだった。
「な!?」
シロの第六感が危機を察知すると、咄嗟に横に飛んだ。すると次の瞬間、数十本のボーガンが突き刺さっていたのだ。
「と、飛び道具使いでござるか!?」
シロは人狼の瞬発力を使い、残像で相手を翻弄させようと考えた。
「やっぱ早いね~。けど、そんなんじゃ私にはかなわないよ♪」
そう言うと、少女はボーガンを上に投げた。そして、ポケットから破魔札を何枚も取り出し、ランダムにばら撒いた。すると・・・。
「きゃいん!!」
破魔札地雷の罠にかかり、倒れてしまったのだ。その一瞬を少女が見逃すはずもなく、落ちてきたボーガンを手に取るとそのままシロめがけて発射する。
「な、なんの!?」
シロは伏姫でボーガンを弾くと、低姿勢から一気に勝負をかける。
「なんの!!」
それを見た少女は、腰につけていた神通棍を右手に、ボーガンを左手に取った。
「覚悟!!」
シロの渾身の一撃が放たれる。しかし、少女は身体を半分にずらしてシロの刃を避けたのだ。そして、神通棍で伏姫を上空に弾き上げ、ボーガンをシロの顔に向ける。
「これで、チェックメイトです♪」
「拙者の・・・負けでござる。お主の名前、聞かせてもらえるでござるか?」
「え・・・・聞いてなかったの~~~~~!!まったく・・・・私は天道寺神楽(てんどうじかぐら)だよ♪」
先ほどの戦闘モードとはまったく別のかわいい笑顔を向けて、神楽は勝利を収めた・・・。
「ううう・・・面目ないでござる」
「気にすんなってシロ。負けることで、自分の足りない点が分かるんだぞ」
「拙者に足りない点・・・・なんでござるか?」
シロが横島に尋ねると、その問いにルシオラが答えた。
「私が見た感じでは、シロちゃんは動きが直線的なの」
「直線的?」
「まぁ、簡単に言えば正々堂々ってとこかしら。動きが分かりやすぎるのよ」
「しかし、拙者は・・・」
「まぁ、人狼の動きで残像を使ってかく乱しようとしたのはいい点ね。でも、あの娘はいわゆる美神さんタイプだから、シロちゃんにとっては苦手なタイプといえるわ」
ルシオラの指摘を受け、メモメモと紙にその言葉を書いていく。
「まぁシロちゃんに色々教えちゃったから、今度は私が行くわ」
「大丈夫なのか、ルシオラ?」
「大丈夫よヨコシマ、私を信じて待ってなさい♪」
投げキッスをするほどの余裕を見せて、ルシオラが舞台に立つ。
「第五試合ルシオラ選手対黒糸 操(くろいと みさお)選手!!試合開始!!」
「先手いかせてもらうでーーーー!!」
操は先手必勝とばかしに、霊符からキョンシーを数体召還した。
「いけーーー!!イー・アル!!」
二対のキョンシーがルシオラに迫るが、ルシオラはまったく避ける気無し。というか欠伸をしていた。そしてキョンシーとルシオラとの間合いが一メートルとなった瞬間、突如どこからともなく現れたカブトゼクターによって二体は弾かれた。
「な、なんやのあれ!?」
操の指摘に、ルシオラの眼が輝いた(笑)。
「よくぞ聞いてくれたわ!!これは私が作った【霊的換装兵鬼カブトゼクター】よ」
物凄く嬉しそうな顔のルシオラ。そして、ルシオラが指をパチンと鳴らすと更にトンボ・サソリ・緑と赤のバッタ・黒いカブトゼクターが出現した。
「私の発明に対して興味をしめしてくれたお礼に・・・・・・・ゼクターたちの力見せてあげるわ♪」
「嫌ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
色んな意味でマッド化したルシオラのゼクター軍団により、操のキョンシーたちはアッサリと敗退するのだった・・・。
あとがき
どうも、煌鬼でございます。今回のネタとしては、来週ついに始まる獣拳戦隊な方々の一人が、この学院にいるという点ですなwこれが個人的に今回一番の満足な場面ですね。
おキヌ:そんな事よりも、また出てませんよ~(涙)
煌鬼:まぁまぁ
おキヌ:いい加減出してくれないと、“クスクス笑ってゴーゴー”しちゃいますよ?
煌鬼:それはアカン!!だいじょぶ、次回はおキヌちゃんDayだから。
おキヌ:信じてますからね・・・。
といった感じで、次回へ続きます。