インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「想い託す可能性へ 〜 はち 〜(GS)」

月夜 (2007-02-04 03:21)
BACK< >NEXT


 想い託す可能性へ 〜 はち 〜


 さて、件(くだん)のニニギノミコトの荒御霊は、今どこをどうしているかというと……。

 追っていた動く箱から物凄いスピードで迫ってきた、わけの分からない物体をとっさに右腕で庇(かば)ったせいで右腕を吹き飛ばされていた。

 おかげで今まで支配を強めていた、ニニギノミコトの神格が封印された人形への支配力が大幅に失われてしまった。いくら神代からの永い時間を掛けて支配していった人形とはいえ、元々の格が違う為に些細な事でその支配力は綻(ほころ)んでいく。

 封印の地であったならば人形を動かす必要が無い為、そちらに振り向けていた力をも支配力にする事ができたのだが、今は人形の修復とその再支配の両方に力を振り向けなければならなかった。
その為、その人形を支配している存在は、攻撃を受けた場所から未だ一歩も動くことが出来なかった。

 (おのれ〜小賢しや人の子らめ。よもやここまでのダメージを負わされるとは……。この人形を完全に支配出来ておれば、あの程度の攻撃は取るに足らぬものであったものを〜〜。儀式を受けておらぬサクヤの分御霊を取り込めておれば、このような事態にはならなかったものを〜〜〜)

 強大な力を手に入れたその存在に、手傷を負わせる者等など居ないと思っていたがそれは早計だったと思い知らされていた。

 その存在は神代からの永き間、闇(くら)い妄執をコノハナノサクヤヒメノミコトに抱き続けていた。妄執が執念となり、人形の支配を徐々に強めていく。欠けた右腕を睨みながら、その存在はこれまでを振り返る。己の闇い妄執を湧き上がらせるために。


 忌々しいイワナガヒメとニニギノミコトの封印結界が、理由は分からぬが解かれたのを好機と見て地上に出てみれば、その様相が驚くほど様変わりしていた。

 (ほう? 人間めらは、ここまで繁殖しおったのか。くくくくく、これは壊しがいがあるではないか……。どれ、一つ手に入れたこの力の贄にでもなってもらおうか…………む? いやその前にサクヤヒメを手にいれるか。くくくくく……愉しみでならぬ。あの白き肢体が吾(われ)に嬲られて悶える様を思うとなぁ)

 まずは自由になった喜びを周囲に知らしめようと力の行使を考えたが、なぜか唐突にその誘惑が薄れ、変わりにサクヤへの劣情が急激に膨れたその存在。

 (さぁ、どこにいる? サクヤよ)

 ニニギノミコトの力を羨み欲し、その伴侶の純粋な生命の煌きとその儚く美しい容姿を陵辱する事によって得られる闇い愉悦に耽る、今の世では名も忘れ去られたその存在は、己の内に膨れ上がる欲望の求めに従ってサクヤを探した。

 (ふ……ふはははは、見つけた……見つけたぞ! ぬぅ、中までは結界に阻まれて見えぬか……いや、なんだ? もう一つサクヤの気を感じるぞ? もしや……)

 その探索が関東にまで及んだところで、目的のサクヤの気配を複数感じる事が出来たが、その内の二箇所だけが特に存在感が強かった。しかし、その二箇所の内の一つは強力な結界に阻まれて、中の様子までは窺い知ることが出来なかった。

 残る一つは、結界は張ってあるが最初に見つけた気配の結界よりは劣り、中の様子まで窺う事が出来た。その中ではひ弱な人間に転生していたサクヤが居た。

 (そうか……、あの時の分御霊か。くくくく、転生しておったとはな。これは好機であるな。あの転生体の魂を取り込めば、もう一つの結界に守られたサクヤに問題無く近付ける。くくくくく……はぁはははははは。サクヤよ、吾が行くまでホトを濡らし待っておれよ。ふぁ〜ははははははハハハハハハ!!)

 そいつは舌舐めずりをして、人間に転生したサクヤ……おキヌちゃんに狙いを定めた。己の闇い欲望のままに瘴気を纏い、空を飛んで目的の地へと向かう。


 一連の動きを離れた場所で見ていた“狂った除くモノ” 

 途中派手に膨らんだ攻撃衝動を除き、周囲への警戒とサクヤへの劣情以外の思考をある程度除いて誘導に成功した狂った除くモノは、口の端を歪めて嗤った。

 闇い妄執に取り付かれたその存在は、己が操られている事など全く気付いてはいなかった。


 その存在の思考が現在へと戻ってくる。

 (そうだ……この人形の支配が終われば、世界を思うままに意のままに変えられる。未だ世界に対して命令出来ぬ人形ではあるが……支配が完了した暁には……くくくく……ふふふふ……はぁ〜はははははは!!)

 闇い愉悦の嗤いを言の葉を発せぬ人形の身で上げながら、その存在は回復に努めていた。周りを瘴気で冒し、森を腐らせて出来た泥濘(でいねい)を用(もち)いて破壊された腕を再生させながら、声を発せぬ身で哄笑し続けていた。


 富士山本宮浅間大社拝殿内に突如白色の強い光が点り、物凄い速さで魔方陣が描かれていく。

 その様子を、本殿から拝殿へと出てきていたコノハナノサクヤヒメノミコトは静かに正座して眺めていた。

 (そろそろですね……。あの時に放った私の分身に会えるなんてワクワクしますね)

 サクヤヒメが見ている前で、拝殿の中心から半径三メートル程の大きさの魔方陣が完成し、徐々に光量が増していく。室内に満ちていた光が一際輝いた瞬間、そこには八名の人影が現れていた。

 「到着〜なのね〜」

 強烈な発光が収まった拝殿内で、ヒャクメの能天気な声が響いた。

 「ふあぁぁぁ……なんだか心地が良いですね〜。それに懐かしい……」

 魔方陣の中心でおキヌちゃんがホンワカとした口調で、感想を述べる。

 「ここは? さきほどの社より強い気配を感じるでござるよ」

 シロは周りをキョロキョロと見渡し、鼻もスンスンと鳴らして状況を把握しようとしているようだ。

 「ここに満ちる神気は、おキヌちゃんの神気とほとんど同じようね。でも、何だろう? おキヌちゃんと違って落ち着けない」

 タマモは何かを感じているのか、落ち着かない様子でおキヌちゃんの衣装の袖を無意識に掴んでいる。

 「さすがは女神のお膝元だわ。満ちる神気が半端じゃないわね」

 令子は場に満ちる神気の大きさに、内心で舌を巻く。

 「…………(以前に訪れた時とは比べ物にならない神気だわ。おキヌちゃんと共鳴してるのかしら?)」

 美智恵は、過去に日本各地の神社仏閣を訪れた時とは桁外れに違う神気に戸惑っていた。

 「! (大きい……なんと存在感の大きな方か。このまま何もかも委ねてしまいたい誘惑に駆られる)」

 小竜姫は、背後に感じた巨大な神気に思わず振り向いて神気の持ち主に気付くと、無意識のうちに片膝をついて、頭を垂れていた。

 「久しいな、サクヤよ。こうして見(まみ)えるのは幾年月(いくとしつき)のことか。そなたを残し、輪廻の輪に逃げた妾は最早会う事も出来ぬと思っておったが、会えて嬉しいぞ」

 女華姫は正座しているサクヤヒメに気付くと、そちらを向いて話しかけた。

 「お久しぶりですね、姉さま。皆さんも、ようこそいらっしゃいました。深夜ゆえ、何も持て成せない事を許してくださいね。さすがにこの時間に巫女達を起こすのは忍びないですから」

 女華姫が話しかけたことで、全員の目が向いたことを確認したサクヤヒメは、そう言って頭を下げ伏した。

 「あ、頭を御上げ下さい、サクヤヒメ様。そのような事をされては、我々が困ります」

 小竜姫がサクヤヒメに駆け寄って、頭をあげるよう促した。

 「ありがとうございます。改めて挨拶しますね。富士山本宮浅間大社主祭神・コノハナノサクヤヒメノミコトです。此のたびは私と我が良人(おっと)、ニニギノミコトの不始末に皆さんを巻き込んでしまい、すみませんでした」

 サクヤヒメはそう言って目礼した。

 「やはり何か知っておるのか? サクヤよ」

 「姉さまの問いに答える前に、皆さん楽になさって下さいな」

 サクヤの言葉に全員、めいめいに楽な姿勢で座った。

 全員の意識がこちらを向いたのを感じたサクヤヒメは、語り始めた。

 「姉さまからも聞いたと思いますが、神代の時代に私を我が物にしようとした輩が居ました。その者の名は、もう私も思い出したくないので術を使って記憶から消しているのですが、私がそこに居る私の分身(わけみ)の魂を輪廻の輪に放った時に、その者は私が張っていた結界に触れて滅んだのです。悪意を持って私に近づくモノを最も小さき粒にまで分解する結界でしたから、ひとたまりも無かったのでしょう。しかし、神族の一端でもあったその者は、力を欲する執念だけで現世に留まり果(おお)せたようです。姉さまと我が良人が施した封印の隙間から侵入して、我が良人の神格を封じた人形に憑依したようなのです」

 長い説明を終え、サクヤヒメは一息ついた。

 「妾は封印を破られた際に、ニニギとは違う猛々しく闇い霊波をあの人形から感知して疑問に思い、答えに行き着いたが。サクヤよ、そなたはどうしてその者が人形に憑依した経緯を知っておる?」

 女華姫が顎に右手の甲を当てて、サクヤヒメに問うた。

 「可能性の世界樹に訊いたからですよ、姉さま。私も当時は、結界に誰かが触れて消滅した事は知っていましたが、まさかそのまま留まり果せて人形を支配しているとは思いもしませんでした。なので、私の分身に身の危険が迫るまで知らなかったのです」

 嘆息して、サクヤヒメは女華姫の問いに答えた。

 「やはりサクヤヒメ様も可能性の世界樹にアクセスできたのね。なら、どうやって倒せるかも判るんじゃ?」

 令子が勢い込んでサクヤヒメに尋ねる。

 「私はあの人形を消滅させるつもりはありませんよ?」

 令子の問いにサクヤヒメは、令子達にとって意外な答えを返した。

 「え? ですが、野放しにしておいては後々脅威になる予感がします。今のうちに対処するのが最善と思いますが?」

 小竜姫が、意外な答えを返されて呆けた令子の代わりに尋ねる。

 「対処即ち消滅させると考えないでください。あの人形の神格は、いつか良人が必要とするかもしれないので残しておきたいのです。ですから、私は憑依している不埒者を剥ぎ、断固として滅殺するつもりですよっ

 サクヤヒメが感情も顕わに言った途端、辺りが揺れた。

 「え?」

 「な、なに!?」

 「地震?」

 おキヌちゃんは何かに気付いたような疑問を発し、先程から微妙に怯えていたタマモは突然の揺れに大げさなほど驚き、美智恵は冷静にいつでも動けるように腰を浮かせながら言葉を発した。

 「あら、ごめんなさい。いけないいけない、危うく噴火させるところでした」

 小さく舌を出してウィンクするサクヤヒメは、そう言って自身の怒気を静めた。サクヤヒメの気が静まるのに連動して辺りの揺れも治まっていく。

 (ふ…噴火? ……も、もしや!?)

 ある考えに至り、冷や汗を垂らす令子。周りを見回すと、各々(おのおの)も自分と同じ結論に達したのか、顔を引きつらせている。タマモなんて、あからさまにおキヌちゃんにしがみついている始末。

 「いや〜、かなり揺れもうしたな〜。久しぶりの大きな地震でござった」

 いや、約一名何も気付いていない大物が居たようだ。

 「(コホン)それはさておき、これは不幸中の幸いです。このたびの件が無かったら、遠い未来で乗っ取られた人形によって、世界にひどい災厄が起きていたでしょうからね。姉さま、かの者を人形から引っぺがす手伝いをお願いします」

 空咳を一つして、サクヤヒメは女華姫に向き直ってそう言った。

 (((((さておかないで! でも突っ込めない〜〜(のね〜〜))))))

 女華姫とシロを除く全員が、顔を引きつらせ背中に冷たい汗を流しながら心うちで葛藤していた。

 「(この、火山娘が……)良かろう。もとよりそのつもりでおったからな。ニニギから神格を剥いだように、剥ぎ取ってみせよう」

 女華姫はニヤリと獲物を見据える女豹のような笑いを面(おもて)に出し、内心では妹の激情ぶりに苦笑する。

 不意にサクヤヒメが耳に手を当て、何かを聞くような仕種(しぐさ)をした。

 「どうした? サクヤよ、何かあったのか?」

 怪訝に思った女華姫が問う。

 「あ……森が……消えちゃいました……」

 同時におキヌちゃんが悲しい声で呟いた。

 「ど、どうしたの? おキヌちゃん」

 しがみついたタマモがおキヌちゃんを心配して訊く。それにしてもタマモは、何をそんなに怯えているのだろう?

 「ああ、私の分身はキヌと言うのね。こういう場合、お久しぶりと言うのかしら? それとも初めましてなのかしら? (くすっ)なんにしても、また再び会えて嬉しいわ。思いがけず今世でニニギ様と邂逅しているようですね(私達の願い。叶えないとね)」

 おキヌちゃんの方を向いて、笑顔でサクヤヒメは話しかける。

 「はいっ。でも、森の子らが……」

 サクヤヒメの言外の言葉に力強く答えるも、先程感じた森に住む命たちや森自体の断末魔によって表情に暗い影を落とす。

 「二人だけで分かり合ってないで、わたし達にも教えてくれないかしら? 何か良くない事でも起きているんでしょう?」

 令子がしびれを切らしたように二柱に訊く。

 「貴女方がニニギノミコト様の人形の追撃を振り払った森が、かの者の瘴気によって森に住む命共々殺されてしまいました」

 令子の質問にサクヤヒメは淡々と言葉を紡ぐが、辺りが小刻みに揺れていてサクヤヒメの怒りは隠しようが無かった。

 ((((お願いだから、噴火しないで〜(なのね〜)))))

 サクヤヒメの様子に令子達は戦々恐々としている。今回はおキヌちゃんも一緒に怒っているので、余計に心配だった。女華姫はそんな彼女達を見ても、泰然自若としている。

 「森が死んだって……。いくら民家が無い地帯でも、それだけの規模の霊障が起こればオカルトGメンにも第一報くらいは入っているはず。確かめてきます」

 そう言って美智恵は拝殿を出て行こうとした。

 「お待ちなさい。電話は、この拝殿にも置いてあります。それを使いなさいな。そこの社務所へ続く廊下の柱に据え付けてありますから」

 サクヤヒメは美智恵を呼びとめ、電話のある方を指差した。

 「ありがとうございます」

 美智恵はサクヤヒメに礼を言って、懐から出そうとした携帯電話をしまい、教えてもらった廊下へと消えた。

 残された面々は、今後の行動方針を決めるべく話し合う。口火を切ったのはタマモだった。

 「サクヤヒメ、訊きたい事があるの」

 「何でしょうか? 九尾の狐さん」

 タマモのぶしつけと取られても仕方ない質問にも、微笑みで答えるサクヤヒメ。先程までの底知れない雰囲気はなりを潜めていた。

 「私の名前はタマモと言うの。私は転生前に一度だけ、あなたの旦那に会って助けてもらった事がある。その時は無造作に神通力を使ってたし、私も傷ついていて気にしている暇も無かったから確認まではしていなかったんだけど……」

 タマモにしては珍しく、遠まわしに言葉を選んでいる。

 「ニニギ様の神通力についてお知りになりたいと?」

 タマモが何を聞きたいのか察して、サクヤヒメは彼女に問いかける。

 令子や小竜姫・ヒャクメも知りたいのか、彼女達も身を乗り出していた。

 「ええ、そうよ。さっきから震えが止まらないのよ。私は何か大事な事を忘れている気がするのよ」

 タマモはそう言って、己をかき擁(いだ)きながらサクヤヒメの瞳を見る。

 「あら、では貴女が大陸の陰気の核でしたか。良人より大陸から巨大な陰の気を纏った仙狐がやってきて、助けを求められたと聞いた事があります。なんでも、呪詛の的にされた大王(おおきみ)を救う為に身代わりになったとか。どうやって我が良人の事を知り得たのかは知りませんが……。その仙弧が背負わされた陰の気はあまりにも大き過ぎて、この豊芦原の国に住まうモノ達にもかなりの悪影響を及ぼしたそうです。そのあまりの被害に緊急を要したらしく、ニニギ様はとりあえずの処置としてその巨大な陰の気を反転させたそうです。纏った陰の気を反転させて陽の気へと変えると、仙狐の毛並みが輝くような金色になったそうです。その仙狐は傷つき弱っていたので、怪我をする前の状態に戻したとも言っていましたよ。怪我が治ると我が良人に礼を述べて、また大陸の方へ戻ったらしいですが、その後のことは聞かされていません」

 サクヤヒメはタマモを安心させるように、ゆっくりと説明した。

 「陰気を反転させて陽気へと変えた!? そんな……いくら神様といっても、そんな事が出来るなんて……。巨大な儀式を要する術式じゃないと無理なんじゃ?」

 サクヤヒメの言葉に疑問を持った令子は、その事を訊いてみた。

 「ニニギ様は儀式を必要とはしませんでした。ただ、世界に対して命令するだけですよ」

 (なんですって!? それは言霊という事なの!?)

 サクヤヒメの言葉に、令子はニニギノミコトの神通力に慄(おのの)いた。周りを見渡して令子と同じ結論に達した者は小竜姫とヒャクメのようで、二柱とも驚愕の表情を浮かべていた。女華姫は最初から知っていたのか、驚いている様子は見られなかった。シロに至っては気付きもしていない。

 「世界に命令って……どういうことよ? それに私の毛並みが金色に変わった? 私の毛は元々金色……だったはず……」

 サクヤヒメの説明にタマモは疑問に思ったことを言の葉に載せるも、最後の部分で自信が無くなったのか尻つぼみに自身に問いかけている。

 「良人の前に現れた仙弧は白き毛並みに覆われた、それは美しい化生だったそうです。ただ、巨大な陰の気を纏っていたせいで、その見事な白き毛並みは灰色にくすんで見えていたそうですよ?」

 タマモの自身への疑問を自分への質問と感じたのか、サクヤヒメはそう彼女へと答えた。

 「あ……あ……私……え?」

 サクヤヒメの言葉にタマモは混乱し、今にも倒れそうなほどの様子だった。その様子をみかねたのか、サクヤヒメはタマモに静かに近寄りそのまま彼女を優しく抱きしめた。

 「無理に思い出そうとしないで下さい。我が良人によって、少なからずこの世界での在り様を変えられているのですから。白き面の仙弧よ 、心優しき仙弧よ 、されど気高き仙弧よ。そなたは諸々の人々の悲しき想いをその身に荷(にな)いて全てを昇華出来たのです。心静かに穏やかに……そなたの憂う過去は時の彼方……そなたはそなたが想う良き人を想いお休みなさい……

 「……タ……ダ……オ」

 サクヤヒメに抱きしめられたタマモは、サクヤヒメの詠うような言葉に影響されたのか、想い人の名を呟いて深き眠りに沈んでいった。

 「ちょっちょっと、サクヤ様! タマモに何をしたんですか!!」

 令子はタマモが気を失うように眠ったのを見て、サクヤヒメの神秘的な雰囲気をものともせずに詰め寄った。それはシロが反応するよりも早かった。彼女は腰を少し浮かせた状態で固まっていたのだから。

 「ご安心下さいな。現在の世界での在り様と、遥か遠き時の彼方での在り様との乖離(かいり)に混乱していたので、眠らせたのです。多分、あんなに怯えていたのは、彼女の在り様を変えた我が良人の神通力に本能的に恐怖を覚えていたからでしょう。この社は我が良人をも祀っていますから、その神気に中(あ)てられたのかもしれません」

 そう言って、サクヤヒメは彼女の胸の中で眠るタマモをそっと抱き上げ、いつのまに召喚したのかタマモがすっぽり入るくらいの藁敷きに清潔なシーツが被さった寝床の上に彼女を横たえた。

 令子は詰め寄った姿勢のまま、その様子を見ているだけでしかなかったが軽く安堵のため息を吐くと、さっきまで座っていた所に戻って座った。

 (タマモに対してあれほどの心配を見せるとは、もう心配は要らぬでござるかな)

 シロは令子が取った行動に内心で頷く。もう彼女は自分達を裏切らない。そうシロは確信を持った。

 「ふ〜、なんだかんだで、自己紹介もまだだったわね。失礼しました、私は美神令子。よろしくお願いしますわ」

 タマモが安全と判って気を落ち着けた令子は、元の位置に戻り座るとそう自己紹介した。

 「拙者、犬塚シロと申す。人狼にござる。キヌ殿とそこに寝ているタマモとは一緒に住んでいるでござるよ」

 令子が自己紹介を始めた事に、自分が名乗りをしていない無作法に気付き、シロも続いて自己紹介した。

 「改めて初めまして、サクヤ様。私は現世名を氷室キヌと言います。今世にてニニギ様と巡り会う事が出来ました。以後良しなに」

 おキヌちゃんは、サクヤヒメと相対して微妙に戸惑っているようだった。人格ベースが人間のおキヌちゃんは、自分とほぼ同じ存在に対しての戸惑いが大きいらしい。

 「私は神界出張所妙神山管理人、小竜姫と申します。此度の件、神界にも重大な影響があると我が上司 斉天大聖の判断により、罷(まか)り越しました。隣の彼女は神界調査官のヒャクメと言います。お見知りおき願います」

 「紹介に預かったヒャクメです。よろしくお願いしますね〜」

 小竜姫の堅い挨拶と対を成すように、ヒャクメは軽い調子でそう言った。

 一通り自己紹介を終えた令子達は、今後の対応をどうするか再び話し合い始めた。

 「あ、そうだヒャクメ。あんた今、敵がどこにいてどんな状態か見る事できない? サクヤ様とおキヌちゃんが言っていた事の証左が欲しいのよ。ママも調べてるだろうけど、情報は早い方がいいわ」

 思考を切替えた令子は、ハッと思いついたようにヒャクメを見て訊く。小竜姫や女華姫も問われたヒャクメを見やった。

 「分かったのね〜。やって見るのね〜。おキヌちゃん、こっちに来てなのね〜。貴女が感じた座標を基にしてやってみるから」

 ヒャクメは頷くと虚空から出したトランクを開けて、中からキーボードと吸盤型のセンサーを取り出して準備をする。

 「はい」

 呼ばれたおキヌちゃんは、ヒャクメの隣に近寄って座った。

 ヒャクメはおキヌちゃんの額に吸盤型センサーをパコっと取り付け、自身にも同じような吸盤を額の眼に付けると、キーボードをカタカタ叩きだす。その間、固唾を飲んで見守る小竜姫と令子にシロ。女華姫はサクヤヒメの方へと近寄って、二柱で何やら話していた。

 「ポンポンポンっとね。敵対存在の現在座標確認。じゃ、映すのね〜」

 軽い口調でヒャクメがキーボードを操作すると、トランクの中から淡い光が空中に迸(ほとばし)る。その淡い光の柱の中に件(くだん)の敵が映し出された。

 「これが今回の敵なのね。変色した右腕とこれまた同じ色に変色した大地と繋がっているけど、どういうことか判る? ヒャクメ」

 映し出された敵の姿に眉間を顰めて、令子はヒャクメに訊いた。眉間を顰めたのは、人形の容姿が横島にかなり似ていたからだ。苦い想いが心内に広がる。

 「ん〜、変色している右腕は胴体との繋がりがイマイチなのね〜。だから多分、瘴気で周りの木々や土を腐らせて、失った右腕の代わりとする為に取り込んでるみたいなのね〜。さっきサクヤ様とおキヌちゃんが言っていた森が死んだというのは、この事だと思うのね」

 ヒャクメは半眼で、トランク内のモニターに映し出される光景を視ながらそう説明する。おキヌちゃんを通して、彼女にも森と森に住んでいた生命の断末魔が感じられて、彼女にしては久しぶりの激甚なる怒りを覚えていた。

 「それにしても、あの瘴気はどういう事かしら? 封印の人形を操っているのは仮にも神族なんでしょ? 土地を侵すほどの瘴気を出すのって有り得るの?」

 空中に映し出された映像に疑問を持った令子は、ヒャクメや小竜姫の方を見て訊いた。彼女の眉間は先程の映像によって未だ顰められていて、不快な気分を表している。

 「本来なら有り得る事ではありません。しかし、先程聞いたサクヤ様のお話でならば、可能性はあります。 神族とて負の感情を持つ者はおります。それでも大抵は堕天するほどではありません。しかし、堕天はせずとも神族が瘴気を出す事例はあります。それは、世界に対しての在り様が人間の信仰が廃れる事などによって変わった時です。この場合、堕天ではなく妖怪化する事になり、大概が負の感情に引きずられて瘴気を出したりします。それゆえに元が神であったならば、封印された神格を取込む事も不可能ではないでしょう。……時間は掛るでしょうが」

 小竜姫が小首を傾げて令子の問いに答える。ただ、彼女は今説明した事がうろ覚えだったようで確証が持てないのか、ヒャクメに視線を向けて合っているかどうか問いかけている。

 目線で問いかけられたヒャクメは内心で苦笑しながら、頷くことで合っている事を小竜姫に伝えた。

 「ということは、あいつの正体は神格を封印した人形に憑依した妖怪なわけね」

 小竜姫の説明を令子は簡潔にまとめた。シロはその回答にやっと得心がいったのか、左の手の平の上に右手をポンと置いて、ウンウンと頷いている。

 「美神さんの言う通りなのね〜。今は凄い勢いで右腕を修復しているけれど、逆にそのせいで人形への支配は進んでいないように視えるのね〜」

 ヒャクメが令子のまとめを肯定し、今も続けている観測結果を報告する。その横で座っているおキヌちゃんの表情には悲しみと憤りと悔しさが混ざって表れていて、空中に投影されている敵を睨んでいた。ニニギノミコトの神格を利用される事と、森の木々やそこで生活している命が失われるのが我慢ならないのだろう。

 「憑依した妖怪が封印の人形を完全に掌握した場合、最悪の事態が予想されます。サクヤ様のお話で、ニニギノミコト様の神通力は「完全なる言霊」と判明しました。ニニギノミコト様の神通力を悪用させない為にも、かの敵が弱っている今が好機です。ヒャクメ、貴女から視て、かの敵の封印の人形への憑依率はどのくらいですか?」

 武神の顔をした小竜姫が一同を見渡して現在の状況を整理し、具体的な討伐案を出す為にヒャクメに敵の現状を確認する。眠らされたタマモとGメンに情報を求めている美智恵以外は、再び集まって車座に座った。

 「ん〜、70%くらいなのね〜。本当はもう少し高かったんだろうけど、右腕が吹き飛ばされたダメージが大きすぎて、憑依率は落ちているみたいなのね〜。私の予測だけど、憑依率が85%を超えると簡単な世界への命令は出来ると思うのね〜」

 刻一刻と変わる敵の変化を睨みながらヒャクメは答える。彼女が視ているのは空中に投影された映像ではなく、手元のキーボードから投影された半透明の画面群である。そこには様々なグラフや図形が神代文字を伴って踊っていた。

 「ママが戻ってきてないけど仕方が無いわ。とりあえず敵に対した時の布陣を決めるわよ。まず、小竜姫とシロと女華姫が前衛、私が真ん中で指揮をして、おキヌちゃんが後方から皆への戦闘支援。んで、タマモはおキヌちゃんの護衛兼遊撃ってところかしら?」

 これでどう? と、一同を見渡して令子は提案した。

 「ふむ、妥当ではあるな。だが、妾を含めて全員が何を出来るかを把握せんと、思い切った行動が咄嗟(とっさ)には取れぬぞ?」

 令子の案に頷くも、女華姫は気になった点をついた。

 「イワナガヒメ様の指摘はご尤もですね。私自身の切り札は超加速です。これは極短時間ではありますが、術者の霊力の大きさによって術者自身の時の流れを周りより数百倍から数千倍に早めることができます」

 女華姫の質問に頷きながら、小竜姫は答える

 「拙者は横島先生より教えて頂いた「さいきっくそーさー」と、人狼の守護女神様への言霊による癒しの術が使えるでござる。あと、タマモとの合体技で拙者の「さいきっくぶりっと」にタマモの狐火を纏わせた火之迦具槌(ほのかぐつち)があるでござる」

 「その火之迦具槌って技はどんな威力があるのよ?」

 シロが言った術の想像を先の迎撃戦で披露された術によってある程度つくのか、令子はジト汗を後頭部に垂らしながら彼女に訊いてみた。

 「え〜っと……敵に着弾したあとに狐火が敵に瞬時に燃え移り、「さいきっくぶりっと」が形成炸薬というのでござるか? 運動エネルギーを特殊成形した先端部分に集めて圧力発火させて敵の装甲を焼ききり、内部へと続く穴を開けて中から燃やすのでござるよ。ポイントは「ぶりっと」内部を外側より柔らかく漏斗状にする事だそうでござる」

 まるっきり理解していない顔で、シロはあごに人差し指を当てて小首を傾げて言った。たぶんに横島が言った事を丸覚えしているだけだろう。一部、炸薬の部分で間違った表現になっている事に気付きもしていない(正しくは成形炸薬である)

 「……なんとなく、言いたい事は解ったわ。吹き飛ばすんじゃなくて、中と外から燃やし尽くすのがコンセプトなのね。シロ、今回の件では取りあえずその術は使わないからいいわ。女華姫様は人形から敵を引っ剥がす以外には何かある?」

 やや疲れた顔で令子はそういうと、女華姫へと向いた。

 「妾自身は戦神ではないでの。そう戦いに向いた神通力はあまり持っておらぬ。先程おぬしと戦った際にも、忍術を妾なりに習得した武術しか使っておらぬしの。戦をする前に、そなたらに訪れるあらゆる穢れを祓う詔を奏上するくらいか、癒術を施すくらいであるな」

 豊かな胸を下から支えるように腕を組んで女華姫は説明する。背筋をピンと張り、敷物の上に正座する彼女は凛としていて、その存在感は殊の外大きい。

 「じゃぁ、次はおキヌちゃんね。今はどんな事ができるの?」

 女華姫の説明を聞き終えると、令子はおキヌちゃんに水を向ける。

 「私が出来るのは、結界術と癒術に植物の効能による戦闘支援でしょうか。後は多少、水属性の術が使えます。火属性の術は、残念ながら私は知りません。サクヤ様は知っていますか?」

 令子に訊かれたおキヌちゃんは出来ることを答えるが、ここに来る前に令子が言っていた相反する属性を操るという言葉が引っ掛かり、サクヤヒメに訊いてみた。

 「火属性の術ですか……確かに私は使えますよ。火は灯(ともしび)に通じ、灯は命に通じますから。しかし、術の行使はあまり好きではありません。火は草々や木々を滅しますからね。私が富士を抑えている事柄をもって、火属性を持つとも考えられているようですが、富士を抑えるのは水属性に拠る所が大きいのです。とはいえ、永い年月によって人々の認識に、私が火と水の両方を扱う事が出来る神とされているのも事実ではあります。ああ、そうそう。キヌには、術に関して後で教える事があるので楽しみにしていて下さい」

 サクヤヒメは何の術が出来るか明言は避け、おキヌちゃんに術を教える事を示した。彼女はその話しぶりから、自分の分身であるおキヌちゃんを妹のように扱う事に決めたようだ。

 「はい、よろしくお願いします」

 妙神山で覚醒した直後は、サクヤヒメを自身と同じ存在として認識していた節があったおキヌちゃんだったが、当のサクヤヒメを目にしてからは長幼の序によるものなのか、おキヌちゃんもサクヤヒメを姉のように無意識に認識しているようだった。

 「ん〜、という事はやっぱり遠隔からの攻撃は、タマモに頼るしかないわけか」

 令子はおキヌちゃんやサクヤヒメの言葉に頭を掻きながら、敵に相対した時の戦術を頭の中で練る。

 「水属性の術だからといって攻撃に向かないわけではありませんよ、令子殿。水を固めれば飛礫(つぶて)に、薄く固めれば刃に、液体のまま包めば呼吸はままならず、霧状にしてしまえば敵の認識を阻害する事が出来ますよ。但し、キヌが水術を攻撃に使うかどうかは判りませんが」

 サクヤヒメは令子の呟きに、そう助言する。

 「ぶっつけ本番だとネクロマンシーではともかく、術使用による戦闘補助や攻撃補助の経験が少ないおキヌちゃんには荷が勝ちすぎるわね。ああ、それとこれが一番重要な事だと思うんだけど、憑依されている人形はどこまでなら痛めつけても良いの? 直接、憑依している敵に対して攻撃出来れば一番良いんだけど、それが出来ない以上、どうしても動きを鈍らせる必要がある筈だし?」

 戦術を煮詰めていく上で一番目標となる点を、令子はサクヤヒメや女華姫に尋ねた。

 「ヌシらが迎撃をして失った人形の右腕には目をつぶろう。しかし、他の部位、特に頭の部分には封印の要が施してある。頭を吹き飛ばすと人形に封印してある神格が解放されて、容易に乗っ取られような。憑依状態の妖怪は、霊体に酷似した状態でもあるから、おキヌに頑張ってもらうのも手ではあるな」

 女華姫は令子の問いにそう答えた。

 「ちょっと待って。人形を破壊して封印された神格を解放してしまったら、何で容易に乗っ取られるのよ? 封印状態にあるからこそ、妖怪化した下位の神族でも乗っ取る事が出来るんじゃないの?」

 女華姫の言葉に令子は慌てて訊き返す。

 「あれに施された封印には二つの意味がある。一つは未来に本人が必要とした時の為に残す事。もう一つは不心得者に利用されないようにする為だ。今回の件は、図らずも利用されかかってはいるが、それでもまだ猶予があるのは、二つ目の理由に拠るのだ。意思の無い純粋なエネルギーの塊である神格を支配するには、そのエネルギー量を受け止めるだけの器があれば、可能であるからな」

 「た……ただでさえ厄介な敵なのに、ソレに加えてそこまでの縛りがあるなんて……これはもう、おキヌちゃんのネクロマンシーと、女華姫様の力に頼るしかないわね。……あれ? ちょっと待ってよ。もし、受け入れる器が無かったらどうなるのよ?」 

 女華姫の説明に令子は顔を顰(しか)めて嘆息したが、ふと疑問に思った事を再度尋ねた。

 「制御に失敗した巨大な力は、暴走と相場は決まっておろう? しかも、日ノ本の要たる神格だ。それが暴走した時の規模なぞ予測も出来ぬわ。この日ノ本が消滅するだけなら小さいほうと考えても良いだろうな」

 無表情に答える女華姫。

 人形(ヒトガタ)を壊すことが出来ない勝利条件の厳しさに呻(うめ)く令子。彼女の表情には縦線が入り、なんだか投げやりな雰囲気になっている。

 「何も痛めつけてはイカンとは、言ってないぞ。封印術式の構成上、手足を失わせるにはいかんが、吹き飛ばさん程度の攻撃なら良かろう。と言うても、おぬし等の攻撃は威力が有り過ぎて不安ではあるがな」

 令子の様子に女華姫は呆れながら、そう補足した。

 「…………。まぁいいわ。取り合えず戦の準備は整えないとね、おキヌちゃん、サクヤヒメ様から、今の内に術のレクチャーを受けておいて。ヒャクメ、敵の様子はどう? 変わりない?」

 頭を切替えて令子はおキヌちゃんに指示を出して、敵の現状をヒャクメに尋ねた。問題を棚上げにしたわけでは無い……と思う。

 「はい、分かりました。サクヤ様、よろしくお願いしますね」

 おキヌちゃんはサクヤヒメと一緒に拝殿を出て行った。サクヤヒメの様子から、何か隠したい事があるようだったが、令子は気にしない事にした。打ち明けられる事なら、おキヌちゃんの方から話してくれるだろうから。

 「美神さん、敵はまだあのまま動いてないわ。私の見るところ、右腕の回復にはまだ時間が掛るみたい。もしかしたら瘴気で殺した森を全て取り込むつもりなのかも」

 空中に投影されたモニターのいくつかを見ながらヒャクメは答える。彼女の手元は、敵のより詳細な状態を得るべく、キーボードの上を踊る様に華麗で速やかに必要な情報を叩き出していく。

 「そう……。じゃ、決戦の地はそこで決まりそうね。ヒャクメ、その場所の詳細な情報をちょうだい。小竜姫、貴女に文珠を二つ預けておくわ。一つは敵の行動を止める<縛>で、もう一つは貴女自身の守りに使ってちょうだい。最初の奇襲で貴女の超加速で<縛>を使えば楽になるかもしれないから」

 令子は敵と対した時の考えを小竜姫に伝える。

 「その方法ですと、多分一瞬の時間しか得られないと思いますよ? いくら横島さんの文珠でも、遥か神話の時代では神族だった者です。身動きを縛るどころか、行動を遅くする事がせいぜいかもしれません。なので、イワナガヒメ様による敵の引き剥がしには時間が足らないと思います。奇襲案は良いと思いますので、敵が弱ったところでやってみてはどうでしょうか? もしくは、言霊を喋れないように<黙>と念じて使用するというのも手ですね」

 小竜姫はやんわりと令子の案の欠点を上げた。正面攻撃が性に合っている彼女にしては、奇襲案を取り入れた代案を出すとは意外だ。

 「そっか。やっぱり楽には勝たせてはくれないわけね。仕方ないわ、小竜姫の案で行きましょう。敵が言霊を操る前に短期決戦で決めるわよ。長引かせると、それだけ不利になるしね。さてと、おキヌちゃんが戻ってきたら、タマモを起して向かうわよ」

 令子は小竜姫の言葉を予想していたのか、あまり落胆はしていないようだった。小竜姫の作戦案を採ると、彼女は行動に移った。

 美智恵はこのままGメンの統括でついてくる事は出来ないだろう。長い入院生活による久しぶりの前線指揮。また長い間一人で除霊をやってきた事による集団戦闘へのブランクに不安はあるが、その辺は彼女達を信じる事にしよう。令子は心内に湧き上がる不安は表情に微塵も出さず、戦闘準備を整えていた。

 忠夫がこの世界に戻ってくるまで十二時間を切った。令子やおキヌちゃん、シロやタマモ達の試練はまだまだ続く。だが、彼女達はかつての絆を着実に取り戻してきている。


     続く


 こん○○は、月夜です。
拙作の第8話をここに投稿です。遅くなりました。遅筆ですみません。読んでいただけたら幸いです。
 では、レス返しです。

>通りすがり様
 ご忠告をありがとうございます。出来れば拙作の感想もいただけたら……とも思いました。感想無しの指摘は規約に引っかかるようです。お互い、ネチケットを心がけましょう。

>紅 様
 >他の投稿者の方々の作品の文書量を見て、調節するのもいいかもしれません
 助言ありがとうございます。気にならないと言って頂けただけでも嬉しいです。

>KMF様
 >細かい書き込みとそうでない所の差が少し気になりましたが他は問題ないと思います
 すみません、せっかく助言をいただけたのですが、私が自分の雑な所に気付けません。出来れば教えて欲しいです。私の拙作を誉めていただいてありがとうございます。

>読石 様
 >本来の姿に戻ったとたんにドジっ子属性が?
 本人はしっかりしているつもりなんですけどね(笑)この辺のギャップが彼女の魅力でしょうか?^^

 >和解もギャグっぽく為ったお陰で
 どうも私がドロドロとした感じが苦手でして……。それにこうした方がGS美神っぽいかなと思いました。

 >姫の美しさは表面の美醜など些細なモノ
 同感ですね。その辺をもっと書ければ良いんですが、私の修行不足で思うように書けません。

 >何でここまで熱烈な女華姫ファンに成ってるのか
 彼女に惹かれるのは理屈じゃないです。女華姫さまって、最高だと思います!

 >姫は川魚が好物なんだぁと
 え〜、書いてる私が岩魚を連想したくらいですから、読石様の感性は正しいと思いますよ。


 遅筆ですみません。頑張って書き上げますので、誤字・脱字、表現がおかしいところがあれば教えて下さい。


 それでは、次回投稿まで失礼します。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

yVoC[UNLIMIT1~] ECir|C Yahoo yV LINEf[^[z500~`I


z[y[W NWbgJ[h COiq O~yz COsI COze