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「上を向いて歩いていこう その9(GS)」

hanlucky (2007-01-15 06:26/2007-01-16 05:33)
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時は、天龍が妙神山を逃げ出した後の事。
神界では、とある一騒動起きていた。

「ふんふん、今日はいい天気なのね〜こんな日に仕事する人間(神)の気がしれないわ〜」

彼女の名前はヒャクメ。
神族の調査官で、情報の収集と分析が仕事である。
自身が持つ百の目は、ありとあらゆるものを見渡す事が出来ると言われていて、彼女の役職は正に天性といって過言ではなかった。
だが、天はヒャクメに二物を与える事はなかった。

「……ふ〜、気分が乗らないのね〜。」

彼女の性格は、いわゆる気分屋。

「やっぱり今日は〜趣味に没頭しちゃおうかしら?」

仕事を出来る能力は持っているが、本人の性格や、やる気がないため、いつまでも下っ端のヒャクメさん。

「今日は誰を------!? あら〜、メドーサさん、お暇なのね〜?」

ヒャクメがいつもの、マイ秘密基地に向かう途中、メドーサが屋台で一杯やっている。
一見普通の光景? かもしれないがしかしここはストーカー調査官のヒャクメ。
ありとあらゆる神族のスケジュールを把握している彼女は、メドーサがさぼっていると知っている。

「ふ〜、誰かと思えば、無能調査官かい。」
「む、むのう……おちつけ、おちつけ…今日は確か、西で暴れている妖魔の討伐って聞いていたんですが〜?」
「流石ストーカー調査官だね。別に、上官が、あたしを毛嫌いしているからね。まぁ、裏切り者なんかの力なんか借りたくないだろ?」

メドーサは昔、神族に敵対していたが、ある時、魔族からも狙われる立場になり、仕方なしに、神界に投降していた。

「……あの〜、その〜……メドーサさんも、大変なのよね〜。」
「ふん、別におかげで昼間っから、酒をって……なんか来るぞ?」
「へっ?」

メドーサが指差した方向から、猛ダッシュで現れる何か。

「〜〜メ!!」
「あ、あれ、は!? でも、あの事はバラしてないし!? それじゃ、あの事!? なんで、なんで!?」
「お前さんは、普段一体何をやってるだい?」

目の前から自分に向かってダッシュしてくる者に、ビビり始めるヒャクメ。

「〜〜クメ!!」
「あぁ、やっぱり盗撮した写真を男どもに、売ったのがバレたのかしら〜!!? でも、あれはまだ序の口の写真だったのに〜!!?」
「おい、まさか、あたしの写真までとってないだろうね?」
「------ヒャクメ!! あなた、そんな事を!! って今のそれどころじゃないわ!!」

走って来た者は小竜姫。
息をきらしながらながら、必死の形相でヒャクメの胸ぐらを掴む。

「ごめんなさいなのね〜〜!! なんでもするから許して〜〜!!」
「いいから、私の話を聞きなさい!!」

自称、エリート調査官ヒャクメ。
この後、己の命がかかっていため、死ぬ気で結界と、その中の天龍を発見する事に成功する。


------上を向いて歩いていこう その9------


------終わらせてもらうわよ。

アエローは、その瞬間まで確かにケライノーを抱きかかえていた。
だが、横島達にフェザー・ブレットを放った時には既にケライノーの姿はなかった。つまり、その一瞬でケライノーを何処かに隠れさせていたという事になる。
美智恵達はその事を考える前に、アエロー、オキュペテーの相手をしていたので、気がつけば誰もがケライノーの存在を忘れていた。

『……みんな、あたいの事を忘れてたみたいだけど……仕事が楽になったとポジティブに考えるじゃん。』

美智恵も、唐巣も満身創痍。
対するケライノーはアエローに妖気を分けてもらい、十分戦える。

『それじゃ、一気に終わらせるじゃん!!』

唐巣がなんとか抵抗をみせようとするが、フェザー・ブレットを凌ぐ事しか出来ず、結局時間稼ぎにもならない。

「神父!!------くっ、くそ!! くそ!!」

震えながらも、天龍の前からは動かない。
これがなけなしの最後の意地。
------友達に手は出させない。

『……邪魔!』

フェザー・ブレットを放つまでもないと、ケライノーのキックで宙を舞う横島。

「げほっ!? げは、ごほっ!?」
「よこしまーーー!!」
「よこ、しま、く、ん。」

横島はあまりの痛みに泣く事すら出来ず、腹を抑えて横に倒れる。

『さて、これで終わりじゃん!』
「き、さま〜! よくも、横島を!!」
「げはっ!? てん、りゅ、う、にげ……」

残すは天龍童子、ただ一人。
今度こそ、助けは来ない。

「友がやられても、余は何もできんのか!?」

悔しくて涙が出る。

------俺が、天龍の初めての友達だ!

あの時は、へたくそな答えしか出せなかった。
家臣のくせに生意気な、と照れただけ。

「余は守られていてばかりで、余は何も出来ないのか!?」

だが、横島はそれを笑っただけに全く気にしていなかった。
自分が照れている事などお見通しだと。

「……ちく…しょう。」

情けない、本当に自分が情けない。

「…ちくしょう。」

だから、動いてくれ。
今度こそ動け! 他の誰でもない、友と呼んでくれた横島のためにも、ここで動かないわけにはいかない!!

「ちくしょう! ちくしょう!」

ケライノーがフェザー・ブレットを構える。
横島は腹が痛いというのに大声で逃げろと叫んでいる。
本当に、情けない。友にここまで心配させておいて------逃げられるか!!

「ちくしょぉぉぉぉぉおおお!!!」
『------何!?』

天龍から竜気が溢れる。
それがそのまま暴走し、ケライノーは思わず怯む。

「角が生え変わった!? これなら!!」

それは竜神族に取って、大人になった証でもある。
天龍は神通力が使えるようになり、竜波砲を、ケライノーに向けて放つ。

「これ以上、好き勝手にはさせんぞぉぉぉ!!」
『このガキ!! 調子にのりやがって!!』

ケライノーとてこれ以上は引けない。
二人の姉は、小竜姫とメドーサを引きつけているのだ。
なのに倒せませんでしたでは最早会わす顔がない。
天龍の攻撃は、ケライノーを捉えたが、気合いでこらえ、渾身のフェザー・ブレットを放とうとする。

「------させるか!!」
「横島!? 馬鹿者、無茶をするな!!」
『貴様!? 離せ、邪魔だ!!』

横島がケライノーに飛びかかり、それを阻止する。
腹は痛い。だけど、今、動かなくちゃ何にもならない。

『うっとうしい!! あっちへ行ってな!!』

しかし、いつまでもしがみつけるわけもなく、振り落とされ、美智恵の方へ蹴飛ばされてしまう。
そしてケライノーは横島に見向きもせず、天龍に狙いを定める。
天龍が、竜気砲を放つが、今度はケライノーのなんとかそれを見切る。

「くっ! 横島君!! これを!!」
「えっ!? だって、俺!!」

ケライノーが回避に専念した瞬間、美智恵は横島に最後の退魔札を託す。
ここまできたら賭けるしかない。
今のケライノーならば、少量の霊力をこめた退魔札でも十分。
アエローとの戦いで力を使い果たした自分より、まだ動けて、相手の油断を誘える横島の方が若干可能性が高い。

「俺、こんなの使った事------」
「------信じなさい。自分が信じられないというなら、唐巣神父を、あなたの師匠を信じなさい。あなたは、彼の背中をずっと見て来たのでしょ?」

天龍がもう一度、竜波砲を放つが、今度も避けられてしまい、それだけでなくフェザー・ブレットが放たれる。

『くたばりなっ!!』
「ひっぃいい!?」
「あ!? 天龍!!」

必死にしゃがみ込み、難を逃れるが、もう後がない。

「……ごめんね。あなたみたいな幼い子にこんな事頼まなくちゃいけないなんて……お願い、勇気を出して、ね?」
「…………………僕、は。」

横島は美智恵から札を受け取り、駆け出す。
それを美智恵は笑顔で見送り、立ち上がる。

「------ハーピー!!! これでも喰らいなさい!!」

最後に残された霊力を神通棍にこめて、ケライノーに投げつける。

『あ〜ん? 引っ込んでな!!』

それをフェザー・ブレットで弾くと同時に、美智恵にも一発放つ。
最早かわす事は出来ず、フェザー・ブレットは美智恵を貫こうとするが、美智恵が意識を失い崩れ落ちたため、運良く回避に成功する。

そして、その間にも横島はケライノーの背後から迫って行く。

「う、あぁぁぁぁあああああ!!!」
「------!? 来るな、横島!!」
『まだ動けたのか!?』

退魔札は一定の霊力をこめるだけでも発動する。
よって横島が霊力を札にこめられるかどうかが鍵になってくる。

『それはっ!?------いや、お前に使えるわけ!!』

ケライノーの油断、それは横島が霊能力者だと分かっていない事。

「頼む、成功しろ!!」

これが最後の勝負だ。
横島が退魔札をケライノーに投げつける。
そしてその札に霊力は------

『こけ脅しが!!』

------こもっていない。

「そ、そん、な!!」

札は、ケライノーの右腕に弾かれ地面へと落ちる。
それはこの2年間を、自らで否定したようなものだった。

『------っと!? そんな不意打ちももうきかないじゃん!!』
「くっ!? 横島、はやく、逃げい!!」
「て、てんりゅう!? でも、おれ……」

すかさず、放った竜気砲も、精度が低く、ケライノーは少し動くだけ回避できた。
天龍も、周りに味方がいるため大きな力をこめることが出来ないでいる。
下手にこめても、精度が低くなり、結果、暴走してしまう可能性が高いからだ。
天龍は、この場では狙い撃ちされると、場所を移動する。

「くそ、なんで、だよ…」

横島は、自分のあまりの不甲斐なさに、軽く呆然としていた。
心で何処かで、今のでうまくいくと思っていたのだろう。
だから、この先のことなど全然考えていなかった。
天龍がこの場から離れて行くのを、見ているだけしか出来ない。

「今まで、なんだったんだ…」

伊達にこの2年間、コツコツ訓練してきたわけではないのだ。
その成果が、まさか退魔札を発動させることすら出来ないとは、一体何をやってきたのだろう。

「信じるって、やっぱ俺じゃ……」

信じろ、美智恵はそう言った。
自分を、そして……

「------忠夫君!!」
「え? し、しんぷ……」

意識を取り戻した唐巣が、必死に体を動かし、横島のほうを見つめる。
その顔は、いつも通り、放課後の、訓練を教えている顔。

「忠夫君、思い出すんだ。毎日、自分がどうやってきたか。」
「……思い出す。」

そうだ、この2年間、自分が何をやってきたか。
思い出せ、自分は、どうやってきかを。

「大丈夫だ。次は出来るよ。」

そうだ。
発動するわけがない。
自分の霊力を武器にした事などないのだから。
己の霊力で、札を発動させようとしたのが間違いだった。

「君には、味方がいる。」

次は出来る。
どうすればいいか、思い出したから。

「------この世界中が君の力になる。」

------横島は走り出す。
ケライノーに弾かれた退魔札を拾い、天龍の元へと急ぐ。

「てんりゅぅぅぅぅぅうう!!!」
『ん? なんだ、雑魚だけか。』
「よこ、しま……ばか、もの。」

天龍は、目覚めたばかりの力を扱いきれず、ケライノーのフェザー・ブレットに追いつめられていた。

「おら、この鳥女!! 俺がもう一回相手したる!! これでも、くらえ!!」
『……だから、霊力がこめられてな------!?』

第一の油断。
それは、さきほどの横島が投げつけた退魔札は発動せず、ケライノーは横島が霊能力者じゃないと決めつけていた。
第2の油断。
ケライノーに投げつけられた退魔札に霊力はこもっていなかった。
だから、今度も同じ結果だと思ってしまった。

「------いまだ!!」

退魔札がケライノーに当たる寸前、横島は先ほど唐巣が見せたような霊波砲を放つ。
それが、最大の油断。
横島の勘違いだったのか、それとも子供ながらの発想だったのか、誰が霊力をこめるのではなく、霊力をぶつけて退魔札を発動させよう。
そして、肝心の威力は唐巣や天龍とは比べようがないぐらい弱いものだったが、退魔札を発動させるには十分すぎる。

『------ギャァァァァアアア!!?』

ケライノーの失敗は、退魔札に集中するあまり横島の動きをあまり見なかった事。
美智恵によってうえつけられた退魔札の恐怖が、例え発動していなくても、注視するしかなかった。
突然発動した退魔札から、よけるには既に時が遅かった。

『グ、グ、グ、きさ、まら、覚え、て、おけ、、いつか、かな、ら、ず、か、な、らず……』

ケライノーは最後まで言う事なく、冥界へと連れて行かれる。

しばらく、横島と天龍はそれをぼうっとしながら見ていたが、

「……あは、あはは、やった、やったやった、やったぁぁああ!!!」
「……ふん、邪魔しおって、後少し遅かったら、余が倒しておったものを!」

「は〜? たまに素直に喜べよ!!」

天龍は、少し黙りこみ、

「……助かった、恩にきるぞ、横島よ。」
「え? あ、ん、え〜と、俺も、さっきは、あり、がと。」

素直に感謝され、横島が逆にどもる。

「それじゃ、おあいこでいいじゃろ?」
「……確かに、ってなんでそんなに冷静なんだよ!」
「ふ、おぬしが勝手に動揺しとるからじゃ。」
「うるせえ!……おい、天龍!」
「……なんじゃ?」

横島は、右手を天龍に差し出す。
それは、友好と勝利の合図。

「ほれ、タッチと、握手だろ?」
「ふむ、仕方ない、やってやるかの。」

右手と右手がバンっとぶつかり合い、そして握手。
そして、二人とも疲労が一気にきたのか床へ倒れ込む。

「なんかさ、今日、色々あったよな〜」
「そうだな。おかげで、あまり遊べなかったぞ。」

「あぁ、だからまた遊ぼうぜ。」

「……ふん、おぬしがそこまでいうなら仕方あるまい。付き合ってやるぞ。」

「……全く、素直じゃねえヤツ。」

「うるさい! それ以上いうなら友達じゃなくて、家来にするぞ!!」

「え?……はは、それじゃ、少しだまっとくか。」

「……ふん!」

「……あ〜疲れた。」

「……」

「…」


「------殿下!! 今、助太刀って……あら?」

小竜姫が、急いで駆けつけて来たが、そこに敵の姿はない。
そして、床に転がっている二人。

「殿下の角……まさか、この二人で……」

訂正、転がっているのではなく、疲れきっていて寝ている二人。

「全く、起きたらお仕置きです!……でも、今はゆっくりお眠りなさい。」

とりあえず、二人にヒーリングをかけ始める小竜姫。

「……どんな夢を見てるのかしら?」

横島と天龍の寝顔は、楽しそうに見えた。


------上を向いて歩いていこう その9・完------


あとがき

そろそろまた、時間が飛びます。
多分、中学1年ぐらいになります。
少しは、横島が動きやすくなるのではないかな、と思っとります。

そろそろテスト期間なので、次の更新はちょっと後になるかもしれません。

>冒頭3柱の会話後のタイトルですでに『完』になってましたよ?
は、はず……ありがとうございます、修正しました。

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