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▽レス始

「上を向いて歩いていこう その10(GS)」

hanlucky (2007-01-21 09:38)
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「え、夢?」

それは、幼い頃の親子の会話。

「そうだ、お前は将来大きくなったら、どんな人になりたいんだ?」
「ん〜、よ〜分からん。」

まだまだ幼い子供に、この質問は少し早かったなと父親が笑う。

「そっか、それじゃ、お前は父ちゃんみたいになりたいとは、思ったりしないのか?」
「父ちゃんみたいに〜? ん〜、でも、父ちゃんっていつもよ〜分からん夢を語ってくるじゃんか。」
「何を言う!? いいか、お前はまだまだ幼い。だから、俺の言う事はまだ理解できないと思うが、それでも俺は男の、いや、漢の美学をお前にも貫いて欲しいと思って、常に言い続けているんだぞ!!」

父親が、子供から微妙に否定的な意見を受けて、猛反発する。

「う、うん、分かった。僕もおとこのびがくってのを貫いてみるよ。」
「そうだ、それでこそ俺の息子だ!! いいか、男の夢、ロマンというのは……」
「男の夢、ロマンというのは……」

復唱する子供。

「如何に数多くのいい女と------グオッ!?」

父親の頭におたまが直撃する。

「あなた!! 何、忠夫に変な事教えているのよ!!」

忠夫、漢の英才教育を受ける。


------上を向いて歩いていこう その10------


「きゃぁぁぁぁああああ!!!」

女生徒達の悲鳴があがる

「やっべ、見つかった!?」
「こら、そこの変態!! 大人しく投降なさい!!」
「ふん、この横島忠夫、そう簡単に捕まえられると思うなよ!!」

警備員ごときがこの俺を? 笑止!!
と、言わんばかりに横島の動きは速い。
すぐに警備員を振り切り、横島は落ち着ける場所を探そうとした矢先、

「ん? ちっ、厄介な!!」
「…あんたってヤツは、くたばりなさい!!」

横島の前には天敵が現れる。
だが、この横島忠夫。そう簡単に倒されるつもりは毛頭なし。
まだ、やらねばならない、まだ、すべき事がある。

「まさか、わたしの学校にまで現れるなんて、ホント、死ね!!」

その女生徒の動きは、横島の反応速度についてくる。

「いいじゃないっすか、美神さん!! 別に減るもんじゃなし!!」
「精神がすり減るわよ!! 全く、なんでこんな変態が私の幼なじみなのよ!!」

その常人離れした動きをする女生徒の名前は、美神令子。
横島とはかれこれ8年近い付き合いになる。
何時からだろうか? この変態が変態になったのは?

「近頃、覗き魔が多くの学校で出現しているって話があったけど、やっぱりアンタだったのね!!」
「美神さん、それは違う。俺は将来、芸術家になる。そのためには数多くの裸体を見ておく必要があって、決しやましい気持ちで覗いていた------ってちょっとタンマ!?」
「い、い、か、ら、くたばりなさい!!」

美神が横島に対してラッシュを仕掛ける。
そして、その全てを防ぎきる、事など出来るわけもなく、何発かもらってしまう横島。

「ボディーが甘い!!」
「やべっ------ぐっ!!?」

顔面にガードを集中させ、ボディーブロウ。
これにはたまらず、片膝をついてしまう。

「神父も泣いているわね。こんなスケベで変態な弟子を持ってしまうなんて。」
「み、美神さん、あなたは勘違いしている。スケベとは漢にとって、名誉な称号であり、第一女好きを変態呼ばわりするのは自然の摂理を否定------ごはっ!? いい、パ、ンチ、だ。」
「アンタって、口だけは回るようになったわね? 覗き魔を変態といって何がおかしいのかしら?」

美神は、動けなくなった横島をこの後どうするか考えていると、横島が再び立ち上がる。

「ふ〜、やはり、将来世界チャンピオンになるような女に接近戦で勝てるわけないか……」
「どうやら、この場で死にたいみたいね。」

美神が指をポキポキ鳴らしながら、横島に近づいて行く。
横島は静かに、精神集中に入る。
まさか、こんなところで切り札を使わなくてはいけないとは、と。

「------行くわよ!」

美神が自分の間合いに入った瞬間、一気に距離を詰めてくる。
だが、間に合った。
この勝負------

「必殺!! サイキック猫だまし!!」

------引き分けだ!!

「そんな、目くらまし!?」
「はっはっはっは〜!! さらばじゃ〜!!」

サイキック猫だまし、それは、両手に霊波を集め、相手の鼻先で手をたたくことによって、一瞬目をくらます技である。
横島は見事に隙を作り、そのまま撤退に成功する。
だが、肝心な事を忘れている。

「……あのバカ、後で覚えていなさいよ。」

後ほど、教会でボロぞうきんと化した横島がいたのは言うまでもない。

横島忠夫、13歳。

順調に親父の背中を追っていた。


その頃、横島のもう一人の親である、唐巣和宏だが、白井総合病院にいた。

「……どうだね、調子の方は?」
「えぇ、大した事はないわ。大体、皆大げさなのよ〜。」

ベッドの上で横たわっているのは、美神美智恵。
ハーピー三姉妹との戦い、アエローが最後に貫いた攻撃は、美智恵のチャクラをずたずたにした。
その傷は深く、小竜姫、メドーサのヒーリングでは結局、応急処置にしかならず、後は自然回復を待つしかない状況であった。

「あの傷の影響か、私もすっかり病弱になったものね〜。結局、霊力も完治しなかったし。」
「一歩間違えれば、命も危なかったんだ。それを考えれば、僕はよくここまで回復してくれたものだと思うよ。」

美智恵の能力は、あの時の一撃で大きく落ちてしまっている。
特に、霊的抵抗力が極端に落ちているので、すぐに風邪などを引いてしまう体になってしまった。

「そうそう、令子の修行の方はどう? 進んでる?」
「彼女も、君と同様に素晴らしい素質を持っているっていう事がよくわかったよ。今はまだ、基礎を固めている最中だけど、もう十分に低級の悪霊なら一人で倒せるレベルかな?」

本来なら母親である美智恵が、教えるはずであったが、入退院を繰り返すような体ではろくに教える事は出来ないため、唐巣に美神を託した美智恵。

「……それじゃぁ、彼の調子はどうなの?」
「横島君かい?」

先ほどまでの美神の様子を喋っていたときとは変わり、唐巣はう〜んと苦悩したような表情を浮かべながら答える。

「……君や僕、令子君とはまた違ったタイプだね。」
「と、いうと?」
「常に安定した力を引き出せるタイプが僕たちならば、横島君はここ一番での動きはいいが、安定感がなく、好不調の波が激しすぎる。」

別にそれが悪いとは言わないが、この商売、己の命がかかっている以上は、やはり安定した力は必要。

「…でも、神父。それって安定したパートナーに恵まれれば、最高の相性ってことじゃない?」
「それは、令子君とコンビを組ませるって事かな?」
「ふふ、よくわかっているじゃない。」

自分の娘と、唐巣の秘蔵っ子である横島。
この二人のコンビがどのような除霊を行うか、非常に興味がわく。

「でもね〜」
「しかしね〜」

だが、それには一つの問題を解決する必要がある。

「絶対、イヤって言うわね〜」
「絶対、無理って言うだろうね〜」

互いの信頼はゼロだった。


「よ〜横島〜、ん? その傷はどうしたんだ〜?」

横島が美神の幻の左を受けてから、次の日。
クラスメイトが、よく見れば傷だらけの横島に声をかけている。

「まぁ、いっか。それより、昨日はまた派手に動いてたそうじゃねえか!! これで、このあたり周辺は六女以外コンプしたんじゃね?」
「六女か〜、あそこは流石に難しいな〜。」

六道女学院、普通の学校と違い、霊能科が存在していて、対侵入者用の防備も万全と評判だ。
それでも、無理ではなく、難しいと言う横島の言葉は、自信を現しているのか?

「しっかし、神父さんも大変だろうな〜。こんなスケベなヤツが弟子なんて。」
「神父にはお世話になっている。それはホント、これ以上にないくらいな。だが、これは漢のロマン!! そして俺は某主人公みたいに夢の女体を探している最中なんだ!!」

お〜、とクラスから歓声があがる。(男子限定)
そして女子からは軽蔑のまなざし、ありがとう。

「この血塗られた道、そこいらの女共に理解してもらおうとは思わんわ!!」
「------はいはい、わかったから席につけ、横島。」

横島が熱弁している内に、教師が前に立っている。
すぐに授業が始まり、この前に行ったテストが返却されていく。

「横島〜、どうだった〜。」
「ん〜、普通。」

見せろ、と友達が答案をひったくる。

「げっ!? 何が普通だよ!!」
「別にこの程度だったら楽勝だろ?」

答案には赤字で94点と書かれている。
学業に関しては、唐巣を安心させるためにしっかり勉強している横島。
勤勉とまではいかないが、安定した成績をキープしている。

「言っただろ? 神父には世話になってるって、だから、これぐらいの意思はみせとかなきゃいかんだろ?」
「ふ〜ん、なんだかお前が……」

友達、通称メガネ君がメガネを触りながら、

「お前が真面目だと気色悪いな。」
「ほっとけ。」


そんなわけで、横島は普通の学校生活と、唐巣についての修行との二つが生活サイクルを占めていた。


「------起立、礼。それじゃぁ、皆、寄り道せずに帰れよ〜。」


帰り道、一人帰る横島。

「さて、今日はあの女はいないし、のんびりできるな〜。」

のんびり、それは退屈に等しい言葉。
将来GSになるための修行、それも今ではただの作業となりつつあった。

「基本が大事ってそら分かるけど、う〜ん。」

唐巣が言いたい事など、もう分かっているつもりだ。
基本にこそ、全てがある。
だが、それだけでいいのか?

「と、考えても他に出来る事なんてないしな〜。」

あのハーピー戦以降、本当の意味で命を賭けた戦いはなかった。

「……当たり前だよな、ってかあんな事がそうそうおこってたまるかっての!」

唐巣にくっついて除霊を見学したり、実際に除霊をやってみたりしたが、あの時のように体が熱くたぎり、感覚が研ぎすまされる、そんな事は一切ない。
唐巣が側に居るのだから、命の保証はされている。その時点で、もうそれはリアルではなくゲームだった。

「さて、今日も後は、日課をこなして寝るか〜……ん、あれって…結界?」

------だから、忘れていた。

「……君主、危うからずに……なんだっけ?」

君子危うきに近寄らず。

「やっべ〜、なんかあっちの方向すっげ〜行きたくないんすけど。」

本当に久方ぶりだ。
この感覚。彼処はなんだ?
これまでの数年間、除霊も作業ようなものだった。だから除霊も日常みたいなものだった。
だが、この先は違う。
この先こそ、本当の非日常。

------これが、自分が幼き頃に迷い込んだ場所。

そこでしか、得られないものがある。
そこに置き忘れたものがある。
そこに倒すべき敵がいる。

------幼き頃に誓った思い。

「若さ故〜。」

己の中に巣食う悪魔。
それを倒してやると誓った決意。

「そんな思い、今もまだあるんかな〜。」

だから忘れていた。
なぜGSを目指したのか?
それを思い出させてくれるのが、この非日常。

「う、でも、やっぱ無理っす。」

横島の足がその先に向かうのを拒む。
そして、横島の足が後ろへと下がろうとした瞬間、

「きゃぁぁぁぁぁああ!!」
「------今、参ります!!」

横島の美女レーダーが反応した。
聞こえた声、経験場間違いなく上物っす。

「見えた!ってしまったぁぁぁあああ!!!」
「誰だ、てめえ!!」

気がつけば現場に直行の横島。既に時遅し。
状況は、一人の女性が倒されていて、その前に一人の男が立っていた。
後気になるのは、女性の近くに転がっている黒い塊か。

「くっ!? 新手とは流石にきついわね。」
「おぉ!! 褐色の肌に、そのナイスバディー!! おねぇさん、大丈夫ですか!!」
「む、無視か、てめぇ……」

横島が女性に近づこうとするが、女性はそれをナイフを出して牽制する。
よく見たら足を負傷していてこの場から動けないようだ。
そして、無視されて怒りで震えている男。

「近づくな!! おたくが味方だという証拠があるわけ!!?」

見れば、美神と同じぐらいの年に見える。
その目は、警戒心むき出しになっていたが、横島は萎縮する事もなく女性を捉えていた。
といっても横島が見ているのは、服の破れ目から見えるチラリズムだったが。

「------いい根性してるじゃねぇか、てめえはよ!!」

男が霊波砲を放つ。

「------何処見てんのよ、おたく!!」
「ぬぉっ!?」

だが、女性の攻撃をかわそうとした横島が偶然、死角から来た霊波砲を回避する。

「莫迦な!? 今のを見ずにかわすだと!? コイツ……出来る。」

最小限の動きで霊波砲を回避され、男は気を引き締める。
目の前の相手を侮るな、と。

「え? え? あ、ああ、あぁぁぁぁあああ!!?」
「いきなり、吠えるなんて、俺から隙をつくろうなんざ、あめぇ!!」

ようやく横島は、狙われた事に気づく。

「……考えりゃ、この辺りには一般人が入って来れないような結界をしいてあるんだ……てめぇ、なにもんだ?」
「は〜、は〜……びしっ!! 人に名を尋ねるときは、まず自分からって親に教わらなかったのか?」

こういう時はまず強気になるのだ、と横島は見れば自分とあまり年が変わらなそうな少年を指差す。

「------雪之丞、伊達雪之丞だ。」
「あ、ホントに名乗りやがった。俺はよっ……かっ……西条、西条忠夫。」

こんな所で本名を名乗るのはヤバいと判断した横島。
唐巣と名乗ろうとしたが、それもヤバいと思い西条と名乗ってしまった。
心の中で西条に謝っておこう。

「ちなみに僕は、お姉さんの名前の方が知りたいな〜。」
「……なに?」

空気も読まず、とりあえず女性の名前を知ろうとする横島。
近くの黒い悪趣味なぬいぐるみみたいなのは気にしない。
気にしたら、負けだ。

(この男、ホントに、女の味方じゃないのか?)
(このガキ、ホントに私の敵じゃないわけ?)

急に現れた珍入者に、徐々にペースを握られている事に気づいていない二人。

「……おたく、あたしを助けてくれるわけ? どんな素性かも分からぬ女を?」

そんな女性の言葉に横島の右手が、女性の手をいつの間にか握り、見つめ返す。

「このままあなたを置いて行きたくない。あなたが僕を信用してくれるというのなら、僕は身を以てそれに応えたい。」

そして、左手は、女性の腰のほうへと向かって行く。
漢たるもの、常に紳士であれ。
黒い塊が微妙に動いているが気にしない。魅力的な女性には秘密がつきものだ。

「……あたしの名前だったわね、小笠原エミよ。よろしくね。」
「で、話は終わったか?」

あ、忘れてた、と横島と、エミが雪之丞の方へと振り返る。

「てめぇ……俺とエミさんの甘美な一時を邪魔するなんて……」
「甘美っておたく……ホントに信用していいのかしら。」
「ふん、それで西条といったか? 俺の邪魔をするっていう事なら------」

雪之丞の殺意を感じる。
とっさに横島は、両手に霊気の盾を展開する。

「------死んでも、文句いうなよ!!」
「文句大有りじゃ!! くっ、サイキック・ソーサー!!」

横島は、霊気の盾、サイキック・ソーサーで防ごうとするが、雪之丞の霊波砲は横島の手前のアスファルトに当たる。

「------煙幕!?」
「おせぇ!!」

動きが速い。
目では追えても、それに対して体がついていかない。
なんとか顔面だけは避けようと、上半身をガードするが、雪之丞はまず強烈なキックで足払いをする。

「ちょっ、タンマ!?」

完全に態勢を崩された横島。

「------ベリアル!!」

横島が雪之丞にトドメをさされる前に、エミが何かを叫ぶ。
それと同時に、ず〜と横島に無視されていた黒い塊が動き出す。
警戒した雪之丞は、横島にトドメを刺す事なく一瞬で距離を取る。

『キキッ! 少しは休ませろよ、エミ!!』
「やっぱその塊、悪魔だったんかぁぁああ!!?」

だから突っ込みたくなかったんだと、心底後悔する。

「名前はベリアル、一応あたしの使い魔なわけ。」
「あーあー聞こえない、聞こえない。」

大体予想通りになってしまった。

「けっ、分かっただろ? 悪魔を連れているヤツにろくなヤツはいねえ。現に、ソイツは数ヶ月前まで------殺し屋だったんだ。」

元殺し屋のエミ、雪之丞が何者かは分からないが、エミが追われる理由は充分すぎるほどあるって事だ。

「殺し屋は廃業したわけ。第一、あたしが殺して来た連中は法の目をかいくぐって悪さしているような、殺されても文句言えるような連中じゃないっていうのにね、なんで今更あたしを狙うわけ?」
「------答える義理はねぇ!!」

横島、エミ、ベリアルの二人と一匹を同時に相手するには厄介だ。
雪之丞はまずは様子見と連発で霊波砲を放つ。
だが今度こそ、と先ほどと同じように横島がサイキック・ソーサーを展開し、それを防ぐ。

「器用な事するじゃねえか、だが守ってばかりじゃ、勝てねぇぜ!!」
「------さっきはヒントをありがとよ!」
「何っ!?」

横島がサイキック・ソーサーを雪之丞に目がけて投げつける。
もちろんすぐに回避行動に移す雪之丞であったが、雪之丞のその先にあった電信柱にぶつかる。
崩れ落ちる電信柱は横島達と雪之丞の間に倒れ込み、その瞬間を逃すわけがない。

「------さぁ、今っすよ!!」
「こら、おたく!!」

横島がエミを抱きかかえ一気にこの場を離脱する。

「待ちやがれ!!」
「待てって言われて待つバカがいるか!!」


------上を向いて歩いていこう その10・完------


あとがき

実習のテストで追試になりました……は、は、は、はぁ〜。(前日に三国志大戦したのが失敗でした。)
と、さておき、美智恵は、未来に行きません。
よって、これからもそれが色々影響するかも、しないかも。

とりあえず、雪之丞、エミの登場っす。
エミは美神と同じぐらいか一つ下かな〜と思ってるんですが、どうなんですかね?
……原作の2巻を見たら、横島中1、美神高2か3になっとりますな。

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