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「上を向いて歩いていこう その7(GS)」

hanlucky (2006-12-30 06:49)
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妙神山、そこは世界有数の霊格の高さをほこり、神と人を繋ぐ場所とも称されている。
そして、GS達の修練の場としても有名なところで、歴史上、霊能力者として武勇を残して来た者の多くが、ここで修行した者であった。

------この門をくぐる者 汝一切の望みを捨てよ

妙神山には門番がおり、その門番を倒したものだけが修行を受けられる資格が与えられる。
門番を倒す事もできない者は、修行しても------死ぬだけだ。
修行する際、賭けてもらう物がある。それが、己の命。
生きて帰りたければ、耐えろ。
できなければ、死。

ヴィー ヴィー

そんな、多くの霊能力者に恐れられている妙神山であるが、ただ今、何かあったのか警報が鳴り響いていた。

「警報------!! 急いで、伝令を回せ!!」
「殿下、お待ち下さい!!」

門番の制止も空しく、一人の子供が山を下っていった。


------上を向いて歩いていこう その7------


「それじゃぁ〜な〜!」
「おう、また明日〜!」

今日も学校が終わり帰宅につく横島。
先ほど友達とも別れ、後はのんびり一人で帰るだけ。

「最近、なんか変なんだよな〜、あの女〜」

あの女とはもちろん美神令子。
西条が現れてから、妙に態度がよそよそしい。
横島はそれが気に食わず、むしゃくしゃする。

「……ふん! まさか、あの女の好みがあんなんやったとは------な!」

近くに落ちていた空き缶を拾って、ぶん投げる。
ダメだ、おかげで最近ぜんぜん集中出来ない。

「------あだっ!? 誰じゃーー!! こんなもん投げつけたんわ!!」
「や、やべ〜。」

周りもろくにみず、投げたため、横島が投げた先に移動して来た不良に当たってしまった。

「あ〜ん? おどれか!?」
「ご、ごめんなさい!!」

逃げおくれた横島を捕まえ、不良が頭をわしづかむ。

「ごめんですんだら、警察はいらんのじゃ、このぼけが!!」

横島はついていないと思いつつ、この場を我慢する。
まさか不良もこんな小学生を本気で殴るなんて事はないだろう。

「------まて〜い!!」
「「ん?」」

横島が不良に襲われていると、どこからもともなく聞こえる声。

「それ以上、弱いものいじめをするというのなら、この余が相手になるぞ!!」

みかけは横島と同じぐらいのただのガキ。
とりあえず、不良がデコピン一発をお見舞いする。

「ぎゃっ!? おのれっ無礼者!!」

変な少年は、懐に差してあった刀を抜き不良に切り掛かろうとする。
こんな攻撃、不良は足で防ごうとするが、

「------何をやってるんだ!!」
「今度は誰だ!?」
「あ、西条!……さん。」

しかし、刀が不良に届く事はなく、その前に制服姿の西条が現れる。
どうやら今から、美神の家へ向かう最中、寄り道をしていたらここに出くわしたようだ。

「……あまりいいものじゃないな。高校生が小学生をいじめるなんて。」
「はっ! いきなり現れて調子にのってんじゃねえ!!」

不良はすでに横島達に眼中になく、西条に向かって行く。
だが、そんな直線的な攻撃。

「甘い!」
「ぐけっ!?」

カウンターを合わせて一撃で沈める。

「……大丈夫だったかい? 横島くん。」
「あ、うん。」

横島はうつむいたまま西条と目を合わさずに言う。
確かに助かったが、何故か悔しい。

「そこの君も……ん、君はまさか?」

少年を見つめ、西条がこの少年が人間じゃない事を知る。

「その角、まさか、竜神族なのか!?」

文献などでしか見た事がない竜神族と出会い驚く西条。

「ふん、その通りじゃ、頭が高いぞ! 余は天龍童子! 竜神族の王、竜神王の跡継ぎなるぞ!」

別にそこまでわかっていたわけではなかったが、本人が勝手に名乗ってくれた。

「へ〜、だったらなんで、竜神族の跡継ぎともあろうものが護衛もつけずに一人で人間界をうろついているんだい?」
「そ、そんな事、余の勝手じゃろうが!!」

途端に焦る天龍。
どうやら勝手に動き回っているのだろうと西条は確信する。

「……折角、下界に来たのだから少しぐらい余も羽を伸ばしたいと思って何が悪いんじゃ!!」
「いや、何を聞いてないけど。」

特になにか知りたかったわけではないが、天龍は次々と自分で暴露してしまう。

「ん〜、今から訓練なんだが……仕方ない、少しだけだが君達に付き合おう。」
「…別に俺は関係ないのに。」

西条は後で美智恵に連絡を入れておこうと考え、近くのデパートにでも案内する。
それに付き合わされる横島。
デパートに着いた後は、とりあえず屋上にある子供広場に向かう。

「……人間の子はいいのう?」
「え?」

天龍が周りで賑わってる家族連れを見て、ぼそりと言う。

「生まれてから700年、父上はいつも忙しくて、余は遊んでもらった事などほとんどない。」
「……天龍。」

2年前に両親を亡くした横島であったが、それでも自分には唐巣が常にそばにいてくれた。反対に、親は生きているがそばに居てくれない天龍。
どっちが幸せなのかは分からない。

ただ…

「なぁ、天龍…」

ただ、天龍と遊びたくなった。

「……おい、あっちで一緒にあそぼうぜ!」
「む? 家臣のくせに生意気じゃぞ!」
「いつの間に家臣になったんだよ!」
「ほれ、はやくせい! おいていくぞ!」

子供達に難しい言葉など必要ない。
体を動かし、一緒になって遊べばいい。それだけでいい。

「ふ〜仕方ないな〜、もう少し付き合うか。」

西条が一人、フェンスに寄りかかりながら、横島達を見守る。
しばらくすると、他の子供達も一緒になって遊んでいる。

「……そういえば、先生に連絡をしなく-------」

------身の毛がよだつとはこの事か。

「どうして、いままで気づかなかったんだ!!」

油断していた。
浅はかな行動だった。
あの子は、竜神族の王子。多くの敵がいて当然。

「くっ!? 感じろ! どこだ!!」

急いで横島たちの方へ駆け寄る。
見れば横島も何か辺りを見渡している。
何事かと辺りの大人達は騒ぐが、今はそんな事を気にしている余裕はない。

「…落ち着け、実戦なら幾度もこなしてきた!!」

己を叱咤し、気を確かにする。
…守れるだろうか?
いや、守ってみせる!

------そして殺意の塊が弾丸に変わる。

「くっ、読み切れ------!?」
「------あっち!!」
「------!? そこか!!」


正に間一髪。
天龍を狙った狙撃を、西条は神通棍でたたき落とす。
後少し、後少し横島の指示が遅ければ……

「っ、強い!?」

その勢いは弾丸の如し。

「相殺しきれないっ!?」

西条の霊力と、弾丸に込められた二つのエネルギーがぶつかり合い爆発が起こる。
そして、一斉に逃げ惑う人々。

「------僕とした事が民間人をこんなに巻き込むなんて!!」

だが、助ける余裕などどこにもない。
今は相手の第2射を防ぐ事だけに集中しなくては己も死ぬ。

「横島君!! どこからこの妖気が流れているか分かるかい!?」
「え…あ、今のばく、はつで…」
「あ…あ、あ……」

横島と天龍は、今の爆発で気が引けてしまっている。
情けない。
そんな横島に頼らなければいけない『自分』が情けない。

「兎に角、建物の中に!」

逃げるのは危険。
だが、ここにとどまればさらに危ない。
西条はリスクを承知で天龍と横島を両手で担ぎ上げこの場から離脱する。

「くそ! くそ! この僕がこんな無様な!!」

だが今は逃げろ。
生きていれば挽回は効く。
生きていれば、未だ見えぬ敵を倒す事も出来る。

「はぁ、はぁ------また来る!!」
「くそーーー!!!」

綱渡りをしている気分だ。
一つ間違えればゲームオーバー。
だが、まだ間違えるわけにはいかない。
振り向き様に神通棍で防ごうとするが、先ほどより威力が強まっている。

「------だからといって!!」

ならば弾道をそらすだけだ。
だが、威力が強く、今の西条では抑えきれない。
弾丸はそらしきれず西条の左肩に突き刺さる。
そしてその衝撃に負け、後ろへと弾き飛ばされる。

「ぐぁぁぁあああ!!!」
「西条さん!……え、羽根!?」

西条の肩に突き刺さっていたのは一枚の羽根。
弾丸のような早さで横島達を狙った正体がそれだった。

『------少しはやるじゃん!! まさかあたいの狙撃を2発うけて生きていられるなんて!!』
「ぐっ! き、きさま、その姿……ハーピーか!」

いつの間にか、先のフェンスに降り立ったハーピー。
その姿は人と同じような姿だが決定的な違いとして、羽が生えているという事。
西条は、右手で傷を負った部分を抑えながらも、横島と天龍を守るため前に出る。

(遠くから攻撃され続けられたらこちらには対向手段がない。)

このまま狙撃を続けられたら、確実に敗北していただろう。
無論、こちらもいつまでも狙撃されやすい場所にいるつもりはなかったが。

(どうする、向こうは一人。騒ぎになれば、もしかすればこの子の護衛がかけつけてくれる可能性が出てくる……何をバカな事!! もし来なかったらどうする。常に最悪を想定して考えるんだ。)
『これ以上邪魔が入らないうちに------終わらせるじゃん!!』

ハーピーは右手を振り上げ、三枚の羽根を装着し放つ。
それは正に弾丸------フェザー・ブレット。

「------仕方あるまい!!」

だが、それが発射されるより早く西条は、GSの切り札とも言えるアイテム、精霊石を目の前に投げつける。
その石に籠められたエネルギーが爆発し、羽根の弾丸を防ぎ、ハーピーへの目くらましになる。

『------く、まだこんなものを!!』
「逃げるぞ!!」

左肩が悲鳴を上げているが今は気にするな。
再び、横島と天龍を担ぎ上げて、今度こそデパートの中に逃げ込む。

「くそ!! だが、やれるだけの事はやってやるさ!!」

力がない自分を悔やんでいる暇はない。
そんな事はハーピーを倒した後にいくらでもすればいい。
なんとか建物に入る事に成功して、横島達を下ろす。

「あ、あの、僕らは……」
「え、あ、あぁ。」

西条は声をかけられてようやく横島達に気を回す。

「…君たちは何も心配しなくていい。大丈夫だ、僕がハーピーから必ず君たちを守ってあげる。安心したまえ------」

西条は横島達の頭を撫でながら、横島達に、何より己に誓う。
そうだ。
GSは決して------

「ゴースト・スイーパーは決して、負けたりしない!」


『ちっ! これ以上時間をかけるわけにはいかないね!!』

ハーピーは西条達を見失った後、自身もデパート内に入って行ったが、この人ごみの中見つかるわけにもなく、とうとうしびれを切らしてしまう。

『出てこい、天龍童子!! さもないと無関係な人間を一人ずつ狙撃していくよ!!』

恐れていた事が起こる。
未だ、民間人の避難は完了していない。

「ど、どうすればいいんだよ……」
「余は……余は、く、情けない!」

一階のフロアで、柱の影に隠れながら震えている二人。
西条は先ほど、何処かに行った為ここには居ない。

「余に力があれば、あのような妖怪に好きにさせぬというのに…」
「天龍……」

さっきから逃げてばかりだ。
守られてばかりだ。
そして、震えているだけだ。

「……仕方ねぇじゃんかよ。今の俺らが何かしたって足手まといなだけだし、だから、西条さんに言われた通り、俺らに出来る事なんて隠れている事だけじゃんか。」
「横島!! おぬしはくやしくないのか!?」

天龍が横島の襟を掴んで睨むが、横島は目をそらし仕方ないともう一度だけ言う。

「…俺には将来倒さなくちゃいけないヤツがいるんだ。だから、こんな所で死にたくない。」
「ふん! 倒さなくちゃいけないヤツだと? それを言い訳に逃げているだけじゃろうが!!」
「------お前だって逃げてるだけじゃねえか!! 俺と同じ腰抜けなんだよ!! いいカッコすな!!」

互いに睨み合いが続くが、次のハーピーの一言がそれを終わらせる。

『------3つ数えるうちに出てこい!! 出てこなきゃ、無関係な人間を狙撃してやるじゃん!!』
「横島よ……」

天龍はハーピーの方を見ながら、横島に語りかける。

『------1!!』
「余は逃げんぞ! 余は腰抜けなんかじゃない!!」
「え、いや、さっきのは言葉のあやっていうか、ムキになるなよ!」

横島は天龍がこれから何をするか察して止めようとする。

『------2!!』
「ムキになどなっておらぬ! そうだ、余は将来、王になるのじゃ! こんなところで、あんなヤツ相手に逃げるわけにはいかぬ!!」

だから、動け。
足よ、動いてくれ。

『------3!!』
「なのに! なぜ足がうごかんのじゃ!! このバカ足が!!」

ハーピーが民間人に狙いを定めようとした瞬間------

がしゃん

『な、いきなり光が!?』

照明が全て落ちる。
外は明るいため、完全な暗闇ではないが------隙を作るには十分。

がしゃん


『元にもど-------

「もらったぁぁぁあああああ!!!」

 ------ぎゃぁぁぁぁあああああ!!!』


照明が上がった瞬間、ハーピーが目にしたのは、己の頭上から落ちてくる西条。
西条は、ハーピーが飛んでいる位置より上の階に行き、照明を落とすと同時に、ハーピーが居る場所まで飛び降り、神通棍で斬りつけたのだった。

「手応えあった!……このままクッションにさせてもらうよ。」

空中から落下していくハーピーと西条。

『------ふざけるなぁぁああああ!!!』
「くっ!? だが、この近距離で!!」

先ほどの一撃で決めれなかったのが誤算。
確かにハーピーの苦手な接近戦だが、同時にハーピーの得意な空中戦でもあった。
ハーピーがうまく西条を振り払い、西条は受け身も取れず、地面に激突する。

「ごはっ!?」

途中までハーピーに食らいついていたが、それでも3階ぐらいの高さはある。
全身が悲鳴を上げ、これ以上の行動をストップさせる。

『ぐ、流石に今のは危なかったじゃん……』
「がはっ! まだ、だ、まだ、僕は……」

なんたる失態。
何故、先ほどの一撃に全てを出し尽くさなかった。
攻撃後の事など考えず、ハーピーを倒す事だけに集中していれば、もしくわ。

『……よくも、あたいをここまでコケにしてくれたね!』

ハーピーが立ち上がろうとしている西条に近づく。
分かっているのだ。
西条には最早、抗う力がない事を。

『さて、どんな風に殺して------』
「------待て!! 余ならここにおるぞ!!」

そんな事させない。
震える体を無理矢理にでも引きずって、柱の影から天龍が姿を現す。
その震える右手に神剣を携えて。

「余はここにおる!! 貴様の相手は余が直々にしてやろうぞ!!」
『……順番が元通りになったじゃん。だったら、相手になってもらおうか!!』

西条へと延ばされていた腕は天龍の方へと向き、そして天龍を射殺すためのフェザー・ブレットを放つ。

『これで、任務達成じゃん!! お前ごときにあたいのフェザーブレットが防げるか!!!』

天龍にあの弾丸はかわせない。

「逃げるんだーーー!!!」

神剣で防ぐなんてなおさら不可能。

「う、あ、あぁぁあああ!!?」

迫り来る死の羽根。

『ゲームクリアじゃん!!』

天龍一人でかわせないのなら------

「------この大バカもん!!!」
「な、なにをする!?」

横島がその場から突き飛ばす。
弾道はギリギリで、天龍と横島の間を通りすぎる。

『く、邪魔さえしなけりゃ放っといてやったものを!!』
「俺だって、これ以上、邪魔せんわ!!」

と、言いつつも横島は天龍の手を掴んで、ハーピーの狙撃を受けない位置に逃げ込む。

「だ、か、ら、無理っていうたやろう!! いいか、次は助けんからな!!」
「なっ!? 勝手に助けたのはおぬしじゃろうが!? 大体、さっきのだっておぬしが突き飛ばさなければ、華麗によけれたものを!!」
「はぁ!? あんなに震えてたのに、よく言うよ!! 戦力差も分からんくせに……もう知らん! 勝手にやれ!」
「言われなくても勝手にするわ!! 余には王の力が眠ってるのじゃ、それを引き出す事さえできれば、あのような……」

「「……あれ?」」

天龍が指差した方向にハーピーがいない。
思わず、横島と天龍がシンクロして変な声を出す。

『------もういい加減に------死ね。』

その声は後ろから聞こえる。
恐る恐る振り返ると、そこには獲物を追いつめた狩人がいた。

「あ、あ、たすけ、て、神父ーーー!!?」
「小竜姫ーーー!!!」

子供もわめき声も飽きた。
この至近距離でのフェザー・ブレット。
かわす事も、受ける事も不可能。
よって、死ね。

『くたばれぇぇえええ!!!』

ハーピーがここに来て3枚も同時にフェザー・ブレットを放つ。
強運など、これの前に何の意味がある。
これを防ぎたくば、実力を持って防げ。

『決ま------なんだ!?』

今度こそ天龍を倒したと思った瞬間、フェザーブレットが破魔札によって防がれる。

「------せ、先生!!」
「唐巣神父!!」

現れたのは、美智恵と唐巣。
西条はデパートの職員達と照明の策を伝えたと同時に、美智恵にも連絡を入れておいたのだ。
美智恵はデパートに急ぐ前に、唐巣に連絡を入れておいたが、二人ともデパートまでの距離を考えると、よくここまで早くこれたといったところか。

「なんとか間に合ったようだね。」
「横島くん、そして天龍童子、よくがんばったわ。」

美智恵は、そのままハーピーと対峙し、唐巣に西条へのヒーリングを急がせる。
ハーピーも、これで天龍達へ危害を加える余裕がなくなった。
もし、天龍達に攻撃しようものなら、その瞬間、自分の命もなくなる。

『たく、次から次へと------いい加減にしやがれ!!』

ならば、ハーピーが狙うのは美智恵のみ。
ハーピーは渾身の妖気をこめて、美智恵にフェザー・ブレットを放つ。
同時に美智恵がとった行動------それは前進。

『バカめ!! これをかわせるわけ------』

「本当に優れたGSが------」

顔に狙い定まった弾丸を、頬が裂かれながらも回避する。

「------こんな攻撃をかわせないと思っているの!!」

『バカな!? 紙一重で!?』

ハーピーは攻撃後の硬直でほんわずかだが、反応が鈍い。
そこを美智恵が、見逃すわけがない。
美智恵は退魔札を取り出し、ハーピーに叩き付ける。

「悪魔よ退け! 生まれ出でたる暗き冥府へと帰るがいい!!」
『ギャァァァァぁぁ!!?』

退魔札が発動し、ハーピーを冥界ヘと連れ去ろうとする。

「やった------え、あ、あぁ!!?」

横島はハーピーが撃退されたと喜び、美智恵達の所へ歩もうとした瞬間、新たな妖気を感じ取る。

「なにこの妖気はっ!?------退魔札が!?」

ハーピーを冥界に送り込もうとしていた退魔札が何かに貫かれ、その効果が失われる。

『ゲハっ!? ぐ、は、は、ぐぅぅうう……』

異界に連れて行かれるのを必死で抵抗したハーピーは力を残してなく、そのまま地面に落下する。
だがそれを、疾風の如き速さで阻止し、ハーピーを抱きかかえる存在。

『……全く、遅いと思ってきてみればやられてるなんて、お姉さん、情けなくて、涙が出ちゃうわよ〜。』

その姿は、先ほどまで戦っていた相手と全く同じ。
違うと言えば、顔や、背と胸が少し小さいくらいか。

『------仕方ありません、アエロー女王。ケライノーは、私たち三姉妹の中で、最も遅く、要領も悪いのですから。』
「くっ!? いつの間に!?」

さらに、アエローと呼ばれたハーピーとは逆方向からもう一体のハーピーが現れる。アエローとは対象に背が高く、胸も大きい。

『オキュペテー、言い過ぎよ!……確かに事実だけどね〜。』
「アエロー、ケライノー、オキュペテー……光栄ね、まさかギリシャ神話にも出てくるあの有名なハーピー三姉妹に出会えるなんて。」

美智恵は軽口を叩くが、この状況をどう打開するか、必死に模索していた。
先ほどのアエローの動き、そして気がつけないほどの高速移動をするオキュペテー。確かにケライノーとは格が違う。

(せめて、西条君が動ければ、横島君達を逃がす事も可能なのに……)

西条の方を見るが、唐巣も周囲に気を張っているため、ろくにヒーリングが進んでいない。


『ん〜、これ以上遊んでいたら、いい加減新手が来そうだし------終わらせてもらうわよ。』


------アエローが美智恵に牙を剥く。


------上を向いて歩いていこう その7・完------


あとがき

ハーピー三姉妹なんてもん出てきました。
次回は、あるキャラが意外な登場をするかも。

それでは、よいお年を…

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