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▽レス始

「マウチュ! 天使と悪魔な女の子『弐』(GS)」

缶コーヒーのボスの手下 (2006-12-20 18:20)
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突然の緊急事態で、町は大混乱の中にあった。マウス達はそれを上から眺められる位置にいる。ビルの屋上だ。
ほとんど霊団と呼んでもいいであろうほどに大量発生した悪霊達の姿は、まるで大津波である。
幸いなのは、霊達が全力で走れば十分に逃げ切れる程度の速さだということと、強固な壁を壊すほどにはパワーがないということ。
霊的な結界の中に逃げ出した市民には一切近づけないようで、死者は見たところではあまり出ていない。
しかしそれも『あまり』である。数人の死者が出ているのは、紛れもない事実であった。マウスの瞳から涙がこぼれる。

「急がないと……! ママ!」
「イエス、マウス」

マリアがマウスを後ろから抱き上げた。アンドロイドの体からベルトらしきものが伸びて、二人の体に巻きついていく。

「飛びます、マウス」
「うん!」

(あまり不用意に近づかない方がいいぞい。一度でも飲み込まれれば流石の魔族でも一瞬じゃからな)
(はい。わかりまちた!)

マウスを抱くアンドロイド、マリアがビルから飛び降りる。足に穴が開いて、そこから勢い良く霊的エネルギーが噴出した。
これはマウスが開発したエネルギーの圧縮貯蔵装置、『マウスタンク』を改良し、ジェットエンジンにしたものである。
それを駆使してマリアは、ジェットコースターの用量で真下への落下から地面と平行になる角度への飛行に移行し、霊団の十メートル上空を飛ぶ。

(マウス、攻撃開始じゃ!)
(わかりまちた!)

自分にかかっている風圧などもろともせず、マウスはブラスターを霊団に向けて構えた。
この銃、マウスブラスターは非常に高性能かつ特殊なオカルトアイテムである。
その弾となるのはマウスの魔力。それも、魔力をそのまま撃ち出すのではなく、ブラスターが自動で加工してくれるのだ。
細かい点にまでこだわったマウスの努力の賜物か、マウスブラスターは弾の加工法を知ることに成功している。
それも一種類だけではない。マウスの声によって、多種様々な魔弾を構築し、放つことが可能なのだ。
例えば、このように圧倒的な数の敵を相手にする場合は、

「バレットショット!」

高速連射を可能とする弾の一つ『バレット』と拡散し銃弾を広範囲に広げる効果のある弾『ショット』を組み合わせて使う。
組み合わせられるのは二種類までが限界であるが、弾の種類だけでも十を超えるため、その泥用性はきわめて高い。

(いいぞい。その調子じゃ)

バレットは弾がそれやすく、また一発の威力が低いが、相手が低級霊の集団であるため十分。
ショットによる拡散で尚ダメージが落ちているとしても、元が強力な魔弾の一発は数体の霊を突き抜けていく。
マウスの狙い『市民から霊団を遠ざけるための牽制攻撃』は成功していた。霊団が、マウスを集中して狙い始めたのだ。

「ママ!」
「大丈夫、です。マウス」

地面からおびただしい数の霊が這い上がり、マウス達の飛ぶ空を舞う。
それは自分たちの敵を止めるための数十本ものロープ。巻き付き絞め殺してやろうと迫ってくる。
一つのロープは増したから迫り、また一つのロープが正面から襲い掛かり、縫い目を縫うような攻撃が続く。
それらの中をくぐり抜けられるルートを、マリアは計算し続け、ただひたすらに回避する。末恐ろしい精度だ。
更には、かわされても尚接近してくるロープもブラスターによって一瞬の内に断ち切られていった。

「前方に、市民の男性が一人。逃走中、です」
「本当でちゅか!?」

敵を撃ち抜きながら、マウスは進行方向を見定めた。確かに、霊達から逃げ回っている青年の姿がある。

(見捨てるのじゃ、マウス)

「!!」

カオスから告げられた言葉に、マウスは従いたくなかった。マウスは助けたかった。
いや、助けるのだ。

「爺は黙ってろでちゅ! マウチュは、マウチュのやりたいようにやるんでちゅ!」

無謀とも言える回答。だがマリアはそれに従った。彼女には、マウスの命令に逆らう意思などない。
前方の青年との距離が狭まる。絶えず魔弾を撃ち放つブラスターが火を吹いて、彼を追っていた霊を一網打尽に打ちのめした。
だが、だからといって彼が安全になったわけではない。本当に危険なのはここからだ。
助けるとは言っても、マウス達自身が最も追われている身であり、つまりこれは青年を巻き込むのと同様だ。
確かに青年が生き残る道はこれしか残されていなかったのかもしれないが、だとしても危険過ぎる道。地獄であった。
青年を追う霊を滅するのに夢中だったマウスの右足に、ロープが迫る!

「ッ!」

(マウス!)

一本のロープが、マウスの右足の裏に突き刺さり、貫いた。履いているお気に入りの靴から鮮血がほとばしる。
抗えない激痛が少女を襲い、染め上げた。流れ出す涙を止められるものはいない。
さらに傷つけられることへの恐怖心でマウスはブラスターを振りぬき、突き刺さった悪霊のロープを断ち切った。
続いて襲い掛かる霊をがむしゃらに射撃する。その狙いは定まらず、一本、二本と撃ちこぼれ、それらが彼女の命綱、マリアのベルトを切り裂いた。
途端体が地面へと落下をはじめる。咄嗟に伸ばされたマリアの腕は届かない。
落ちていく体の先には、後ろを振り返った青年がいた。視線が不思議と絡み合い、距離が近づいていく。
その数秒後、唇が触れ合った。

「「!?」」

(なんと!)

マウスを抱きとめようとしていたのか、青年の手はがっしりとマウスの腕を掴んでいる。
落ちていた力と、それを受け止めようとする力が重なって、なんとも熱い接吻のようであった。
咄嗟に唇が離され、マウスと青年、互いが息を吐く。体は硬直していた。
マウスの中で、麻痺していた思考が蘇る。こんな隙を作っている場合ではないのだ。何故ならもう直ぐ後ろにまで敵は来ているのだから。

「逃げてくだちゃい!」

静止状態にある青年に言う。額の赤いバンダナに染みが出来ているのが見えて、一瞬マウスは青年が怪我をしているのかと思ったが、そうではなかった。

「お……お、俺はロリコンじゃ……ん? ……!!」

青年がマウスの右足を凝視する。靴と足には太い風穴が開き、そこから絶え間なく赤い鮮血が流れていた。
肉の内側までハッキリと見えるその傷は間違いなく重傷で、一刻の猶予を争うほどではなくとも治療が必要だ。

「応急処置おーきゅーしょちオーキューショチ……」
「それはいいでちゅから早く逃げてくだちゃい!」

(そうじゃ! 応急処置は逃げながらやればよいじゃろう! やらんかったら殺す!)

マウスの怪我に慌てふためく青年と爺。これではまるで出産前の妻を気遣う夫と爺である。

「いいわけないだろー! あぁもう何かもっと追ってきたー!」

激しく傷を気遣いながらも、更なる大群に変わった霊団から逃げ出す青年。その逃げ足は速い。

「あぁしかも何か当たってるー!」

青年はマウスを正面に抱いて走っている。何が当たっているのか、それはご想像にお任せしよう。
身長138センチでありながらCに近いBというある意味反則級のボリュームが、青年の頭を否応なく蝕んでいく。
そのことにまったく気付いていないマウスはただ痛みに耐えるばかりだが、その表情が青年に与えるダメージは何故か倍加した。

「つうかそれより怪我どうにかせんと……よしっ!」

青年が着ている白いシャツを自ら引き裂き、震える手で少女の右足に巻きつけた。見る見るうちに、シャツは赤く染まっていく。

(もっとしっかり巻かんか! 足の裏は重要なんじゃぞ!)

「へ? 今なんか聞こえたような……」
「爺は黙ってるでちゅ! それより、ちょっとマウチュの頭を肩に乗せてくれまちぇんか?」

後方が見えなければブラスターが使い辛い。だからこその頼みなのだが、鍛え抜かれた(?)上目遣いが凶器である。

「俺はロリコンやない……俺はロリコンやない……」

そんなことを呟きながらマウスの体が持ち上げられる。視界が広がって直ぐ、マウスはブラスターを右手に構え発砲した。
青年の足によりだいぶ距離の離れていた霊団の前衛が次々と消え去っていくが、やはり数が尋常でなく、効果は薄い。

(お前! 偶然とはいえマウスと接吻などしておいて、それでロリコンじゃないとは何じゃ! 男ならロリ属性になれ!)

「また何か聞こえたような……そこらの霊が喋ってるのか?」
「気にちないでいいでちゅ! ただの爺の戯言でちゅ!」

緊張感のないツッコミをしながらも引き金は引いたまま。独特な弾の飛び出す音が鳴る。
それは耳に響くような音ではなく、むしろ聞き心地の良いくらいの銃声が響いた。青年は少し驚くが、それでも前を向いて走り続ける。

(あれだけの数相手にバレットでは歯が立たんぞ。グレネードを使わんのか?)
(町でグレネードなんて使えるわけないじゃないでちゅか! 守るのは命だけじゃないんでちゅよ!)

「挟まれたー!」

青年が叫んだ言葉に驚き、マウスは首を後ろへ向ける。青年の言ったとおり、進行方向からも敵が迫っていた。
圧倒的な戦力差による挟み撃ち。状況を打破するべくマウスの脳が加速する。
建物を破壊して退路を作ってみても走りづらくて追いつかれる。マリアの助けを借りようにも距離が離れすぎている。
利用価値のある要素は此処が町であること。マウスは首を振り回して、周りの地形から情報を引き出す行動に入った。

「もう駄目やぁぁぁ! こんなことなら昨日窓を破壊してでも美神さんの素肌を焼き付けるんだったー!」

いろんな意味で情けない諦めを見せる青年。マウスはそれに怒りを感じ、鋭い視線を向けた!

「ふざけるなでちゅ!」
「……へ?」

突然の怒声に青年の顔が引きつる。マウスは鋭い目をそのままに、言葉を続けた。

「死ぬのなんて許されないでちゅ! 生きてるんでちゅから、汚くもがいてでも生きるんでちゅ! 生き続けないと駄目なんでちゅよ!」

マウスは命が消えることを何よりも恐れる。死にたくないし、死んで欲しくないのだ。
ましてや、死んだ亡者たちに殺されるなどまっぴらだった。この場で諦めることなどマウスにとっては論外なのだ。

「! あそこのマンホールを吹き飛ばしまちゅから、中に入ってくだちゃい!」

そう言い、マウスは前方にあるマンホールへ銃を向け、「バレットブラスター」と叫びながら引き金を引いた。
ブラスターから連続で吐き出される魔弾がマンホールのくぼみを打ち抜き、重い鉄を跳ね上げる。

「あ、ああ!」

青年は走って、飛び込むように闇の中へ突っ込んだ。

「ハシゴを掴んでくだちゃい!」
「お、お、お、おう!」

下まで落ちるスレスレで青年の腕がハシゴを掴む。
青年が上を見れば、開いた穴から霊達が侵入してきていた!

「此処なら町を壊さずにすみまちゅ! ガトリンググレネード!」

マウスが青年の頭を抱いて支えにし、右腕を上に向けて発砲する。
『ガトリング』により絶え間なく魔弾が撃ち出され、撃ち出された魔弾が『グレネード』により、爆発する。
それは青年に息をつく暇も与えない猛攻。いや、それ以前にマウスの胸を押し付けられて呼吸が出来ていない!

「く……少しずつ押されてまちゅ。グレネードでも数に勝てないなんて、地獄でちゅ……」

(だからチャージシステムを組み込めと言ったじゃろうが!)
(相手が襲い掛かってきてるのにチャージなんてしてる暇ありまちぇんよ!)

マウスの表情は苦いものだが、その目の光が失われることはなく、むしろ青年の体から力が抜けようとしている。

(……敵を攻撃しながらチャージする方法があればいいんでちゅが……そうでちゅ!)

「インプット!」

インプットは弾の名前ではない。新たな弾の作り方をブラスターに刻み込むためのパスワードである。
攻撃が中断されこれ幸いと距離を詰めてくる霊の集団に対し、ブラスターはまだ向けられたままだ。
脳の高速回転が驚くほどの速さで弾を構築していき、また同時にそれが銃へと刻み込まれていく。
魔弾の形状は非常に大きく半透明で、マガジンに一発しか入らないであろうほどのもの。構築を終えたマウスが、引き金を引く。

「ドレイン!」

そう、大きな弾は撃ち出すものではない。霊を吸引するためのものであった!
数が多いとはいえ一体の力がとても弱い霊達は吸い込まれる力に耐えられず、弾の中へおぞましい数の霊が圧縮、吸引されていく。
内部が霊で埋まるほどに魔弾は色を変えていき、数秒の後、始めは半透明だったものが完全に白く染まり、強い光を放った。
これが、この弾の本当の力を発揮する条件を満たした合図である。

「リリース!」

溜めた力を解放する命令『リリース』により、白い凝縮された力が一気に噴出す。
細い重心から打ち出されたとは到底思えないマンホールほどの太さもある白い光線が通り過ぎたとき、マウスの前に霊はいなかった。
ドレインで吸収された魂はその時点で浄化され、清い力となる。リリースによって撃ち出すことで更に狙った対象をも成仏させる。
つまりそれは、現時点での最強の除霊弾であった。

(どうやら運良く敵の核も落としたようじゃな)

霊団の源、核となる霊を滅ぼせば、霊達は目的を失ってまた放浪を始める。戦いは終わった。
同時に、青年が力尽きた。

「キャッ」

青年とマウスの体が落下し、直ぐ下にある下水道の地面にぶつかる。
マウスが青年の腹の上に着地したため、呼吸困難に陥っていた青年に追加攻撃が下された。

「この人、鼻血出てまちゅ……」

見れば、マウスの服の胸元にも血がついていた。

「あれ……なんだか目の前がぼやけてきまちた……」

(いかん! 早く治療せんと……誰かおらんのか!)

マウスはふらつき、次第に意識を失って青年の上に倒れ掛かった。
亜麻色の髪の女性がそんな二人を見つけたのは、それから一分もしない内であったという。


後書きっぽい戯言

どうすれば横島をロリコン化できるだろうかと悩みながら書いてました。一体何に悩んでいるんだろうかと自分をツッコミたい気持ちで一杯です。
別の意味でやれるだけやったつもりです。でもやっぱり横島は緊張感をぶち壊すスペシャリストだなぁと関心&呆れております。なんか映画のカーチェイスシーンのパロディみたいになってます。横島の威力は偉大です。

レス返しっぽい戯言

ZXさん
警備員を格好よく書いたのは咄嗟に電波を受信したからです。
これからも素敵な電波を受信できるよう祈って書いてます。

somosomoさん
かなりいいところを持っていってしまって非常に美味しいキャラなのに、無名なのが味噌です。
この後彼に名前をつけようとは思っていません。というか思いつきません。何かいい名前を思いついたら教えてください。

SSさん
警備員の名前募集中です。無名のままっていうのも美味しいのですけどね。
この後も格好いい無名キャラを出すべくいろいろ電波受信中です。

DOMさん
横島ロリコン化計画進行中です。今回の事が客観的にどれだけ威力があるものなのか書いた本人にはよくわからないので、教えていただけると幸いです。
僕もタマモは好きですね。ですが実は一番すきなのはパピ○オ(犯罪)だったりしますが。
計画の早期決着のためにもタマモとシロには早めに出てきてもらう予定です。
人外美少女はGSにとって重要な要素の一つです。

ZEROSさん
実際は自信なんてないんですけど、頑張ります。
今まで培ってきた経験を活かせれば幸いなのです。そして良い電波を受信できるかが勝負!(笑い

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