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「スランプ・オーバーズ!12(GS+オリジナル)」

竜の庵 (2006-12-04 21:56)
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 『それでは駄目だ・マリア』


 誰だろう


 『銀食器は・もっと丁寧に扱うんだ』


 金髪で 蒼い眼をして


 『君は…本当に・子供なんだな…』


 何で


 『魂魄・か……マリア・今はどんな気分だい? 生まれたばかりの魂を宿し・しかし・類稀なる天才の手による・プログラムで駆動する…今の・自分を』


 そんなに 私のことを


 『教育か…この私が・君を? ははは…滑稽だ。マスターは・私を…人間と勘違いしているようだ。道具が・人にものを教えるようなものだよ…』


 悲しそうな目で 見るの?


 『命令は命令だ…マリア・私は君を・一流の淑女へと育ててみせよう。機械は・コマンド通りに・動くものだからな』


 ああ そうか この人は


 『さあ・テーブルマナーのレッスンを再開しよう。実際にものを食べなくても・こうした礼儀を知ることには・意味がある。君が・人の世界で暮らす限りな』


 悔しいんだ――――――――――――――


 覚醒の瞬間、マリアの意識にはノイズが混ざる。
 形の無い、音でも無い…強いて言うなら、『夢』。

 「………思い出しました・アーサー…兄さん」 

 アーサーへ放ったロケットパンチの影響で意識を失っていたマリアが目覚めたのは、見覚えのある部屋のベッドの上だった。

 「ここは・私の部屋…あの頃と・変わっていない…」

 マリアの重量を加味して調節されたマットの硬さが、とても懐かしい。

 「…っ! …右腕・下腕部全損…及び・左足・ヒール中破…バランサー調整・右腕は・パージします」

 自己診断の結果を即座に応急処置へと反映し、マリアは立ち上がった。大きな姿見に、煤けた己の姿が映っている。

「いけない…皆さん・が…!」

 感慨に耽るのは、美神達の無事を確認してからだ。
 マリアは左足を引き摺りながら、『勝手知ったる』城内を、大広間へと急ぐ。


              スランプ・オーバーズ! 12

                     「終始」


 笑い話に出来るほど、かの事変が齎した影響は小さくなかった。
 彼が…横島からしない限り、美神もおキヌもその話をすることはない。

 無理に笑うに決まっているから。

 心の一部を切り離し、記憶が触れないうちに笑い飛ばせるように。意識がそこに到達しないように。

 「美神さん…おキヌちゃん。何だよ一体…オレ、知らんうちにセクハラしてた!?」

 ぶたれた頬をひりひりさせながら、横島は恐ろしく近い位置にある美神の顔を見る。でも、目を合わせようとしない。美神のまっすぐにこちらを射抜く大きな瞳が、今は見られない。

 「…………………手」

 「へ、あ、うわ血だらけや…あ、あれ? おキヌちゃん、ちょっと? んな事したら服が汚れるっちゅうか胸が当たってるっ!?」

 美神が呟いた一言とおキヌがしがみ付く右手の熱さで、横島はようやく我に返った。心の防衛本能がそうしたのか、一瞬前までフラッシュバックしていた茜色の記憶は封じ込められているようだ。
 真っ赤になっている横島の顔に、さっきまでの危うさは消えている…そう判断した美神は、呼吸を整えると身を翻して唇を噛み締めた。

 「おキヌちゃん、そのバカの手当てしといて」

 「………はい!」

 ショウチリは戸惑うばかりだ。彼らからすれば神域が消えた途端、美神が横島の頬を平手で打ち、おキヌが彼の右腕を奪うように抱き締めた…意味するものも何も分からない行動があったのみ。

 「兄様…一体何が…?」

 「オレにも分からぬが…忠夫の奴、一瞬だが尋常ではない雰囲気じゃったぞ」

 おキヌが巻いたハンカチからは、血が滲んでいる。医務室であるし、探せば包帯ぐらいありそうだが状況が許さなかった。

 「ありがと、おキヌちゃん」

 「いいえ…これくらいしか出来ませんから。全部癒すことなんて、私には…」

 「いやいや、十分だって。くそ、カオスの奴…何しやがったんだ」

 「そ、そうです! いきなり霊力が消えて…」

 カオスがなにやら自慢げに話していたようにも聞こえたが、そんなものを気にする場合では無かった。横島が虚ろな瞳で文珠生成に失敗している姿が、とにかく痛ましく、悲しく、辛く…おキヌには見ていられなかったから。


 「カオスゥゥゥ…………」


 「「「「「「ひぃっ!?」」」」」」


 怨嗟・憤怒・憎悪……ああ、金色のオーラが今は赤黒い…決して紫には混じらない、赤と黒の熱情…
 美神の発した声に内包されていたのは、殺意なんて温い感情では無かった。

 「やってくれたわね………もう……ほんと……いろいろどうでもよくなってきたわ…うふふふふふふふふふふふふ…」

 神域で浄化され清浄な空気に満たされていた室内は、いまや美神の溶岩を煮詰めて毒を塗したようなオーラに、光すら湾曲しそうな勢いで歪んで見える。
 霊圧の有無なんて、全く関係ない。カオスは何度もペンライトの正常動作を確認しては、だくだくと脂汗を流して後ずさっていく。

 「な、何がどうなっておるんじゃ!? ワシ、そんなにひどい事したのか!? こんな…空気が変質するほどにっ」

 「ままマスター!? この女・本当に人間ですかっ!?」

 「うふふふふふふふ…ストレスって…メーター振り切るとこんなに気持ち良かったのねぇー…うふふふふふふふ」

 マリアの悩みに答えられず、冥子の悩みには気付きもせず。アーサーには苦渋を舐めさせられ…挙句の果てには横島のトラウマを抉った。
 美神令子の堪忍袋の緒は…袋ごと引き裂かれ千切られげしげしと踏み躙られて、跡形を無くした。

 「あんたもう人外の存在よねじゃあ殺しても殺人にはならないわよねどうやって死にたいかしらやっぱり折れるもの折って千切れるものは千切って…」

 「折って千切る!?」

 「撤退!! 撤退をマスタァァァー!!」

 ゆらりゆらりとカオスに迫る美神を止められる者は、この場にはいない。

 冥子の暴走を巨大怪獣が街を襲う恐怖とするならば。

 美神の暴走は都市伝説の趣。見たものをトラウマへ誘う異次元の恐怖体験…

 「そうね最初はうるさい舌を次は視線のうざい目を次は足首を次は手首を次は膝を次は肘を」

 「うっぎゃああああああ!? 何じゃそのシミュレートも終えてますみたいな破壊予定表は!? 正気に戻れ美神令子! おい小僧! 何とかしろ流石にお主だって寝覚め悪いじゃろうが!?」

 「素手でどうにか出来る人と違うことくらい知ってるだろーがぁっ!?」

 霊力を振るえない今の横島に、怒れる美神を止める術は無い。
 というか、霊力でどうこうする次元の問題でもない気がして、横島はとりあえず合掌した。

 「間接…鼓膜…歯…ふふふふふふふふふふふふふ」

 残り3歩で、美神の腕がカオスに届く。カオスはとっくに壁際である。


 「んあ……令子…ちゃ〜〜ん……どこ〜??」


 それはまさしく、救いの女神の声。寝ぼけ気味ではあるが。
 ベッドに上体を起こして目を擦る冥子に、一斉に全員の視線が集まった。若干一つ、縋るようなSOSを求める視線もある。

 「冥子!」

 もう一歩でカオスの顔面に手がかかる…白目を剥いて魔王様が卒倒する寸前、美神はベッドの方へ駆け出していった。

 「令子ちゃん……」

 「あんたねぇ…! あんまり心配かけるんじゃないわよ!!」

 怒りの余波か、美神の大声には真摯な怒気が混ざっていた。暴走の恐れから滅多に冥子相手には使うことのない種類の、感情である。

 「あううう……お薬切れてるぅ〜…」

 「冥子あんた、今までのこと覚えてるの?」

 「うん〜……記憶は一緒なの…」

 しゅんとなって毛布の端をいじいじと弄くる。頼れるお姉さんだったあの雰囲気がすっかり元に戻っていた。鼻血を噴いて倒れた直後ではあるが、美神はその事に少しほっとしている。

 「その薬ってどんなものなの? どうせ厄珍の所で買ったんでしょう」

 「あんの親父…! よりによって冥子ちゃん相手に商売しやがるか!? 絶対ぼったに違いねえ…!!」

 札束を扇のように広げて高笑いする小男が、横島の脳裏で踊ってうざい。

 「あいつも馬鹿じゃないから、六道家相手に下手なモノを売ったりはしない…とは思うけど。…でもそれはそれ、これはこれね。………死なす」

 この日本でオカルトショップを経営するのに、六道家の影響を受けずにいられるわけがない。
 厄珍堂は同業他社と違って店舗のチェーン展開等はしておらず、その分特定の常連相手に深く関わりをもって営業していて、信用度も『表向き』高い。
 そもそもオカルトグッズの販路は極めて狭く、顧客の絶対数も海外に比べ少なめな日本では、六道の名を敵に回して商売が可能なほど、取り回しのいい商品ではなかった。
 厄珍堂は独自ルートで仕入れた品物を、時に販売、時に実験名目で譲渡したりするが…六道家の目を掻い潜って非正規品を入手する手腕は、流石としか言いようがない。

 「厄珍さんは〜悪くないの〜…私、ずっと前から…お願いしてたから」

 「前から…? 冥子、そんなに変わりたかったの?」

 はきはきと話し。

 颯爽と舞い。

 十二神将を完全に使役し…

 当然、暴走もしない。

 薬に頼る根性は許せないが、美神だって今の自分を変えたいと思ったことは何度もある。霊力の強化もあるが、それ以上に自分の幼さを。
 冥子のお姉さん仕様は、彼女の変身願望そのままの姿。こうありたいと願う冥子の心格を具現化したもの。

 「私も〜…令子ちゃんみたいに…なりたかったの………ごめんね、令子ちゃん…う…ふえ…ふえええええ…」

 薬が切れた反動もあるのか、普段より冥子の気配が乱れるテンポが速い。 げ、と美神のこめかみに汗が伝う。

 「お、おキヌちゃんショウ!!」

 「あ、はいっ!!」

 「ぬおうっ!?」

 阿吽の連携が、最悪の事態を防ぐべく最速の形で行われた。
 全てを察した横島が、生贄もといショウの襟首を持ち上げ…おキヌがどしーんと小柄な付喪神の体を冥子のほうに突き飛ばす。ころころ転がったショウは、冥子の胸元にぶつかって停止した。

 「ほらほら冥子! 泣いたらこの子に嫌われるわよー!? 抱っこ出来なくなるわよー!!」

 「ふええ…? あ、ショウちゃんだ〜」

 「おおおおお…脳みそが揺れる…視界の変化に内臓がついていけん…おふっ!?」

 鎮静剤兼万が一の生贄効果を狙ったショウ投入は、冥子がぬいぐるみのように抱き締めた結果、成功を収めた。不安定だった霊圧が今は落ち着きを取り戻し、美神の背中の悪寒も消えて重畳。

 「ガキに嫉妬は見苦しいが…! ちょっとだけ羨ましいとか思ったオレ…せめて美神さんの胸の中へダーーーイぶふぅあっ!?」

 「マセガキはタチ悪いわよっ!!」

 おキヌを挟んでいたにも関わらず、横島は跳んだ。久々に。そして天華の対空砲火によって一度天井に当たってから石床へ、べしゃりと這い蹲る。

 「あー、なんかちょっとだけスッキリしたわ。ありがとね、横島君」

 「お…礼なら……もっと…別の………形で…っ」

 「あ! 美神さん、霊力回復してますよ!?」

 「! しまった、カオスは!?」

 冥子にかまけて、惨殺寸前だった老人のことを失念していた。美神達が慌ててカオスがへたり込んでいた壁際に目を向けても、時既に遅し。
 黒衣の魔王とアーサーは、扉を開けた気配もしないままにその場から消えていた。

 「あ、キヌ姉様これ…書置きです」

 床に目線が最も近かったチリが、一番にその紙切れを見つけて手に取った。

 「書置き…読みますね。『興が削がれた。出口のゲートは来た場所に開いておいてやるから、さっさと帰れ。マリアは修理が済み次第、そちらへ送る。アーサーの件はワシが預かっておく。次に相見える時は、もう少し大人の対応をすることだ。さらばじゃ。ドクター・カオス』……字がもう、凄いことになってますよコレ」

 日本語で、達筆は達筆なのだが…万年筆の筆跡の至るところに、インクがこすれたり跳ねたり書き損じを塗りつぶしたり。とても大人の手紙には見えない。

 「…よっぽど怖かったんやなー」

 「おおぅい令子! 追わんでいいのか!? あの老いぼれは逃げたのじゃろうが!!」

 冥子に頬ずりされ、こちらも逃げたいショウだったが。
 美神は天華を仕舞うと、舌打ちして目を閉じた。ややもせずに首を横に振る。

 「…駄目ね。もう霊圧も感じられない…ゲートを潜られたら、この城内じゃ探しようもないわ。悔しいけど、今は撤退ね」

 怨み骨髄ではあるが、美神もプロだ。引き際を間違えれば、全員が異界に取り残されるハメに陥ってしまう。ある意味病み上がりで不安定な冥子を抱えたままでは、身動きもとれないし。

 「この扉、もう玄関と直結して固定してあると思うわ。さっさと出ていけってね」

 「くっそ…! オレもカオスに聞きたいことが出来たってのに…」

 拳を平手に打ちつけ、横島は心底悔しそうな表情をした。彼のそんな表情は珍しい分、詳しく聞くことは憚られる。
 美神は深呼吸して気持ちを整えると、脱出の準備に取り掛かった。

 「マリア姉様は大丈夫でしょうか…」

 「カオスはどうしようもない馬鹿だけど、マリアの事についてだけは信用出来るわ。きっちり直るわよ」

 「事務所で帰りを待とう、チリちゃん。笑顔でお出迎えすれば、マリアも喜ぶから」

 おキヌに頭を撫でられ、チリは神妙に頷く。せっかく会えたというのに、また離れ離れになるのが切なかった。

 「冥子、立てる?」

 「うん〜……あら? あれれれれ…」

 「ぅあっとぉ!?」

 脱力し切ったショウを降ろし、冥子は揃えておいてあった靴を履き、立ち上がろうとしたが…案の定ふらついて横島に支えられた。鼻血のせいではないだろうが、貧血気味にまだ顔色が青白い。

 「では不肖横島がお姫さまだっこで「インダラちゃ〜ん」っごふうっ!?」

 喜々として冥子の膝裏に手を伸ばしかけていた横島の顔面を、インダラの蹄が直撃した。2発。

 「事務所に戻って、今後の事を話し合いましょ。正直不安要素が多すぎて、仕事に身が入らないわー…」

 怪しげな薬に手を出した冥子。
 結局連れ帰ることの出来なかったマリア。
 全ての元凶、ドクター・カオス。

 そして。

 ここ最近、色々と不安定な…横島。
 思えば、横島と妙神山に登り天華を授かり、下山して世界を回っていた辺りはまだマシだった。
 だが、日本に帰って事務所が通常営業体制に戻ってから…ずっと横島は何かに悩み、苦しんでいるように見える。
 表面上はいつもの横島を演じている。セクハラに励み、潰されても飛ばされても復活し、ヘタレな自分、『普段どおりの自分』である、と。
 だが、違和感の残る唐突なセクハラやギャグが、最近は多い。横島自身、意識していないだろうけれど。

 (…私の時よりずっと深刻なスランプじゃない、こいつ…)

 インダラの背に冥子が跨るのを手伝う横島の顔にはUの字が二つ刻まれている。某トナカイの刻蹄桜を受けたような跡であった。
 付き合いの長い美神だからこそ、横島の抱く苦しみに気付ける。手を差し伸べてやりたい…心の奥底では思っていても、己の性格上真正面から受け止める余裕がないのが、歯痒かった。


 (一つ一つ…地道に解決していこう。私の問題も含めて、ね…)


 「…じゃあ帰りましょ。冥子! 戻ったらたっぷり話を聞かせてもらうからね?」

 「ええええ〜〜! 令子ちゃん目が怖い〜〜…」

 「黙らっしゃい。あと、十二神将も没収だからね」

 「えええええええええ〜〜〜〜〜〜〜!!」

 こういう言い方はアレだが、恐らく冥子の問題が最も早く解決出来るのでは、と美神は踏んでいる。彼女の性格からいって、抱えている問題は深いものの至ってシンプルで対処もし易い。対症的な策で解決可能だ。

 既に具体的な策を、美神は思いついていた。

 (ま、便利使いして悪いけどね)

 誰からも見えない角度で、美神は口の端を細く、静かに吊り上げるのだった。


 「きゃ!?」

 と、同時に。

 とある神族の草鞋の鼻緒が切れて、つんのめった彼女は、可愛らしい悲鳴と共に尻餅をついた。

 「な……何か、不幸の前触れが…!? また、また崩壊するのですか? …うう…」

 暗雲とは無縁の山頂であるにも関わらず、彼女の目には蒼天にかかる黒雲雷鳴豪雨のイメージが、限りなく具体的に見えていた。


 「ドクター・カオス!! ミス・美神達は…と・何をなさって・おられますか」

 「む? おおマリア気が付いたか。いやホレ、ワシ、仕事抜け出してこっち来たからのう…ちょっと土産をな」

 マリアが大広間になんとか辿り着いた時、彼女のマスターは…何故か、玉座の周りを這い蹲って何かを探していた。

 「この辺に転がっておったと…おお、あったあった」

 黒衣の埃を払って立ち上がったカオスの手には、『縛』と浮かんだ文珠が載せられていた。横島がアーサーに投げたものの、不発に終わっていたやつだ。

 「文珠…それが・お土産・なのですか?」

 「その通り。今やっておる研究に不可欠なものでな。実際に必要なのは文字の刻まれていない文珠なんじゃが、これはこれで解析の役に立つ」

 カオスは医務室から大広間に直行して、ずっとこの文珠を探していた。既に医務室からこちらに繋ぐゲートは切ってあるので、美神達が追い縋る可能性もない。

 「研究…あ・それより! 皆さん・は……!?」

 「美神令子達なら、もう城を出た。案ずるな、誰も大した怪我はないわ。…めっちゃくちゃ怒っておるようだけどな。寿命が500年ほど縮まったわい…」

 文珠をケースに仕舞う手がガクガクと震えていた。久しぶりに味わった魂を削られる恐怖に、流石の魔王も肝を液体窒素に漬け込むくらい冷やした。

 「マリアよ。ワシの側より離れてまだ数日ではあるが…どうじゃ? 己が往く道の最初の一歩でも見つけられたか?」

 「……まだ・分かりません…けれど・大事なことを・知りました」

 マリアが心の中で再生するのは、小さな少女の笑顔。自分を姉と慕う、稀有な存在。

 「マリアのこと・とても大切に・してくれる存在が・ドクター・カオス以外にも・いること…知りました。ドクター・カオスの・しようとする事…もし・その方々にも・悪影響あるなら…マリアは…」

 マリアは玉座に腰掛けたカオスを見上げ、逡巡するように目を逸らせた。自分の発言が即ち、創造主に対する裏切りに繋がると理解して。それはアンドロイドとしても、人間としても…許されるものではない。

 「流石に言葉が足らんかったか…良かろうマリア。ワシの計画の全てを、今こそ話そうではないか。アーサーという仲間も増えた今、大幅に計画の前倒しが可能となったからのう」

 「アーサー・兄さんのことも・思い出しました。ドクター・カオス…本当に・忘れていたのですね…」

 心なしか咎めるようなマリアの視線に、カオスは頬を掻いてそっぽを向く。

 「なあに、思い出せば諸々帳消しじゃて。では話してしんぜようか我が計画!」

 もともとの話題の本命はこっちだが、どうにもすり替えた感が残るまま、カオスは立ち上がって黒衣を大袈裟に翻し…告げた。


 「プロジェクト・オーバーズの全てを!」


 ただ、計画名を叫ぶカオスは…近年の彼では感じることすら出来なかった、威厳と風格、自信に満ちていた。

 「オーバーズ…」

 知らず、マリアは魔王の語るその内容に引きこまれていく。カオスが何をしようとしているのか。マリアの大切な人々がどうなるのか…
 彼女が人の身なら、ごくりと喉を鳴らしていただろう。

 「……そのような事・本当に・可能なのですか!?」

 全てを聞き終えたマリアは、問わずにはいられなかった。カオスの始めようとしていることは、アカシックレコードに刻まれた技術全てを駆使したとしても、成功率はコンマの後に0が幾つ付くのか…限りなく低い。

 「残念ながら、科学的裏付けも論理的根拠も全く無いな。当たり前じゃ! この計画はワシがあらゆる工程を0から構築する。現状では絵空事…机上の空論甚だしい!」

 絵空事、と断じるカオスはしかし、ふてぶてしい。絶対の成功を確信した笑みをマリアに向けている。以前、彼女を送り出した時とは随分な違いだ。
 カオスの話を聞いて、マリアの心は乱れる。計画内容を吟味しようにも、必要なデータが膨大過ぎて演算機能が焼き切れそうになってしまう。カオスの頭脳では、シミュレーションが可能なのだろうか。

 「マリアよ。今ここで答えを出す必要は無い。お前が感じているとおり、この計画の結願にはまだ時間が掛かる。ワシの話をゆっくり時間をかけてお前なりに検証し、結論を出すがよい。それまでは、美神令子の所におればよい」

 混乱するマリアに歩み寄り、その頭に手を置いて。
 カオスは柔らかい声と表情で、娘に言った。

 「…イエス・ドクター・カオス。マリア…もう少し・考える時間・必要です…」

 「うんと悩むんじゃ。悩みは人を成長させるでな…」

 さて、と。カオスは苦悩するマリアの向こう、淡い光に照らされた広間の奥へ目をやり。

 「向こうは向こうで、大変なようじゃがなー…ザマみろ美神令子…」

 まだちょっとだけ腰が引けていたが、カオスはストレスで目の血走っていた美神を思い出して、いやらしくほくそ笑む。


 …その姿は、壮大な計画を知った今のマリアからしても。


 (小悪党…)


 そのものだったりした。


 『あ、オーナーお帰りなさいませ。外出中、来客が…』

 「ごめん人工幽霊一号。悪いけど後にして」


 美神の予想通り、医務室の扉は外に直結していた。
 一行は背中にどっさりと疲労を蓄積しながら、言葉少なに来た道を戻り、ゲートを潜って元の廃工場へと戻ってきた。
 運転を横島に託して、美神は後部座席で冥子と並んで熟睡。

 …美神の代わりに助手席に座ったおキヌが、隣をちらちら見ながらなんとなく上機嫌だったのはご愛嬌。雰囲気さえ許せば、お喋りしながら帰りたかった。

 行きの5倍以上も時間をかけて事務所に到着した時、辺りはすっかり暗くなっていた。


 「さて冥子…薬、出して」

 「ええ〜…」

 「出・す・の!」

 「あう…」

 休憩も挟まず、横島も学生服を着替えることなく…応接間のソファに冥子をちょこんと座らせて。
 その胸にはぐったりしたショウもいるけれど。
 美神は厳しい顔で冥子の前に掌を突き出して催促した。

 「…分かったわよぅ…じゃ、じゃあ、お部屋に取りに行くわね〜」

 「オレは置いていかんか冥子…」

 抱き心地が余程気に入ったのか、冥子はショウを車内からずっと抱きっ放しであった。無抵抗を貫く付喪神兄にもかなりの気疲れが見えている。
 言われてようやく、冥子はショウをソファに降ろして応接室を出て行った。美神は足取りに注意していたが、もうよろけることもないようだ。階段で転んだりも…


 「きゃあ〜!?」


 ごつ、と鈍い音が廊下から聞こえて、横島が腰を浮かせた。

 「……なんていうか、安心したわ。いつものあの子で」

 「確かに…」

 しみじみと呟かれた美神の台詞に、浮かせた腰はまた沈む。おキヌの入れたお茶が温かい。

 「…遅いわね、って…ああああああ!!」

 のほほん冥子の復活に和んでいたのも束の間。
 洗面所の方から聞こえてきた水音に、美神は大声を上げて応接間を飛び出していった。横島とおキヌはぽかんと見送るばかりだ。

 「どしたんやろ、美神さん…?」

 「あの、キヌ姉様? もしかして冥子様…またお薬、飲んじゃったのでは…」

 「ああああーっ!?」

 「……オレは、正直そっちのが助かる…」

 冥子の座っていたソファに寝そべり、気力を失った声音でショウは言う。
 それほど嫌なら本体である笙の姿に戻ればいいのに、と妹は思ったが…付き合ってしまうのが、兄の美点でもあるので黙っていた。

 「やられたわ……」

 果たして、美神は戻ってきた。にこにこと微笑む冥子を連れて。

 「令子ちゃん、私のことは嫌い?」

 「…あんただって冥子なんでしょ? 別に嫌ってないわ」

 横島とおキヌの間にため息をつきながら座った美神は、自分の迂闊さに更にストレスを募らせる。天を仰ぐ表情に、精彩の色はない。
 寝そべるショウに優しく膝枕をしてスペースを確保した冥子は、小さな薬瓶をテーブルに置いてラベルを美神達に向けた。ミチガエール−α、とあまりに怪しい薬名に美神は眉を顰める。

 「…見違えるわけね、つまり。心格矯正薬だってのは本当だったか…」

 「あの子がね、もうお話していいって言うから喋るけれど。私は彼女の理想を実像化した姿。『六道冥子 〜バージョン・令子ちゃん〜』だそうよ」

 「バージョン・令子ちゃんって…」

 「そういや、前に冥子ちゃんのアシスタントしたときも…美神さんの真似とかしとったなぁ」

 GSとして、一人の女性として。
 六道冥子の憧れは、美神令子であった。立ち居振る舞いや判断力、処世術に至るまで、美神は冥子にない物をたくさん持っていたから。

 「お察しの通り、私はこの薬の効果によって一時的に分裂したあの子の虚像。令子ちゃん、あなたを求めた六道冥子の心が生んだ、一つの到達点」

 「いやでも、美神さんはこんなお姉さんっぽくは…どっちかっつーと癇癪持ちのお子様…ひぃごめんなさいぶたないでぇーっ!? …おろ?」

 いや、いつも折檻を覚悟して喋ってはいないが。
 横島がいらん一言を堂々と呟き、当然の如く苛烈な突っ込みを予感して頭を抱えても、打撃は来なかった。

 「…美神さん? 何かセンサーに異常が…?」

 「…一緒にしないで。もう細かいのに突っ込む気力が沸かないだけよ」

 白い目で横島を見る。精神的疲労の弊害が、こんなところにも現れているとは。予期せぬラッキー(?)に、横島は思わず十時を切って何かに感謝した。

 「で? 冥子にとって、あんたが出てくるのは相当の負担になってるのには気付いているわけ?」

 「…ええ。でもね、あの子だって軽い気持ちで薬を飲んだわけではないの。彼女はずっと悩んでいた。不安定で危なっかしい自分が、どれだけ周囲に迷惑をかけていたか…自覚した、と言ってもいいかしら」

 「だからって、こんなやり方じゃ無意味なことくらい、分かるでしょうに」

 「そうね。だから、あの子は言ったわ」

 嫣然と、そこで冥子は微笑んだ。


 「私と代わって欲しい、って」


 「なっ…!?」

 「それって、今の冥子さんが今までの冥子さんと入れ替わるってことですか!?」

 「ちょっと分かり辛いけどそういう事なのかよ!?」

 そこまで。

 そこまで、冥子は思い詰めていたのか…!

 出会ったばかりのショウチリを除く三人の驚愕は深い。

 「ふふ…令子ちゃん達なら、こういうリアクションを取るとは思ったわ。あの子の知っている美神令子・横島忠夫・氷室キヌならね」

 冥子はワンピースの膝の辺りに行儀良く手を置いて、少しだけ肩を竦めた。僅かに伏せられた瞳に浮かぶのは、複雑な感情だ。

 「だから、私は…精一杯頑張らないとだめなの。令子ちゃん、お城では無茶をしてごめんなさいね」

 「冥子には、私があんたみたいに見えてるってことなの…? そして、こうありたいと願った…?」

 「ええ。あなたの存在は、その髪の色みたいに眩しかった。奔放で明るくて、優しくて強くて」

 太陽ね、と…冥子は言った。直視すると、自分の弱さが、影の部分がくっきりと映し出されそうで怖いくらいに、と。
 美神にとっての冥子。
 冥子にとっての美神。
 この二つの視点は…両者が思う以上にかけ離れていたようだ。

 「…なら、努力しなさいよ。黒髪が地味なら染めればいい。臆病な性格なら改善すればいい。難しいことくらい、誰だって分かる。言うほど容易くないのは猿だって分かるわ…」

 「冥子さん頑張ってたじゃないですか…! 免許停止処分になって、ここに飛び込んできたときはびっくりしましたけど、動物園でだって、美神さんに頼ることなく除霊もして…」

 「そうだ! 天然でおっとりしてたっていいじゃないっすか!? 同類のおキヌちゃんだってこんなに立派なのに!!」

 「私同類ですか!?」

 不意打ちで指を指されたおキヌが、ガーン、と擬音混じりに叫んだ。そこら辺が天然である証拠なのだが。

 「…あの子に薬を使う決心をさせたのは、その動物園なのよ。令子ちゃんに後を任されたアフリカゾウを結局…何時も通りに除霊してしまった、その後悔の念がね」

 「冥子…私だって分かってたわよ。でも、あそこではい分かりました、なんて直ぐに十二神将で除霊するような子ならとっくに見限ってるわよ!?」

 美神は知っている。
 冥子は十二神将と共に育ち、苦楽を共に生きてきた。
 けれど、彼女は十二神将の力に溺れているのではない。頼っているわけでもない。
 十二神将と冥子は、家族にも似た絆で繋がった同胞なのだ。
 だから。
 普通の式神使いが式神に『命令』するところを。
 冥子は『おねがい』する。
 頑張った式神を褒め、傷つけば悲しみ…普段の生活でも、彼らと常に共にありたいと願う。

 「伊達に同僚…友達面してんじゃないのよ私だって! 見込みがあるから付き合ってんのよ! あんた、もういいから冥子に体を返しなさい!」

 「令子ちゃん…うん、そうよね。不自然よねこんなこと」

 美神の懺悔のような…告白のような激白に、冥子は静かな微笑みで答える。

 「でもね、もう…あの子は決めちゃってる。何も出来ない、GS免許すら無くした自分では、令子ちゃんの…みんなの側にいる資格はないからって。今もね、とっても嬉しいって…令子ちゃんに友達って言ってもらえて嬉しいって喜んでる」

 「友達に資格なんてありません! それこそ免許があるものじゃないんですよ!? 美神さんはこれでも、冥子さんのことすっごく心配して…」

 「そうだ冥子ちゃん! 今の冥子ちゃんと代わるってことは…冥子ちゃんは消えるってことだろ!? 大切な友達の美神さんを置いて、この世から…!!」

 糾弾する気はないのだろうが、自然と横島とおキヌの口調は厳しくなる。冥子との付き合いは美神ほど長くないが、黙っていられるほど大人ではなかった。

 「…………冥子ちゃんは、ほんとうに良いお友達を持ってるのね。…私、ちょっと妬けちゃうかな」

 「「あ…」」

 横島もおキヌも、今更だが気付いた。今の冥子が…とても、寂しげであることに。
 擬似的に与えられた人格とはいえ、彼女もまた『六道冥子』であり、一つの魂の形だった。
 今までの冥子の復活は即ち、この冥子の消滅を意味している。たった今、横島が叫んだように。

 「……あ、ごめんね? そういうつもりじゃなくて…えっと」

 二人の深く後悔したような様子を受けて、慌てて冥子は両手を振った。

 「……OK。やっぱり、こうね。全部上手くやるには」

 冥子の『友達と言ってくれてありがとう』発言以降、意気消沈したのか顔を俯かせてソファに深く座り込んでいた美神が、やにわに立ち上がって冥子を指差した。


 「冥子! あんた、妙神山行ってきなさい!」


 「え!? えっと、令子ちゃんなんでそんな方向に…?」

 「要するに、自分に自信つけて私達に対するコンプレックスを失くせばいいのよ。十二神将を暴走させない心の強さ…冥子がもつ心格を、自覚させるの!」

 腰に手を当て、晴れやかに言い放った美神の表情は何故か明るい。対照的に、冥子は困惑気味である。

 「ぶっちゃけ最初から考えてたのよ。冥子の研修の最終段階は、妙神山修行だってね。この子の霊力なら、あそこでの修行を受ける資格は十分にあるし。精神修養の意味でもうってつけだわ」

 「え、でも…」

 「紹介状欲しい? でも小竜姫様と面識あるし、いらないと思うわよ」

 「いえ、あの…」

 「あ、そのブローチってお気に入り?」

 「は?」

 冥子のワンピースの胸元には、怖くて値段が聞けないような大きさの宝石をあしらったブローチが、いつも輝いていた。
 それと今の話の流れにどんな関係があるのか…冥子は困惑しながらも頷いてみせる。

 「妙神山に登るときも、必ず付けていくのよ? じゃあ今度の週末に決行ってことで! あー疲れた! 今日は解散解散! 横島君も詰襟のままで肩凝ったでしょ」

 「え? 令子ちゃん? 私…あれ? なにこの全部解決したみたいな空気…」

 「オレにもさっぱり…」

 「わ、私も何が何だか…美神さん、あのー」

 一人大きく伸びをして…満足げに温くなったお茶を飲み干す美神に、おキヌは訳も判らず、取り合えず説明を乞おうと話しかけると。


 「あ、そうそう。おキヌちゃんも同行してってねー」


 沈黙は一瞬。


 「えええええええええええええええええええええええ!?」


 悲鳴は数瞬。


 こうして、天然コンビによる週末の妙神山登山は敢行されることとなった。


 ぱりーーんっ ぱりぱりぱりんっ


 「あ! 小竜お姉ちゃんの茶碗が真っ二つに割れたと思ったら十二個の破片に四散したでちゅ!? 面白いでちゅねぇ!!」


 …夕食後の、とある台所での風景。
 奇しくも、おキヌが悲鳴を上げたのと同時刻であった!


 続く


 後書き

 竜の庵です。
 予告どおり、マリア編EPと冥子編OPをお送りしました。
 冥子がどのような形で収まるのか…丸分かりかもですが、ネタバレはやめましょう。ね? ね?


 ではレス返しです。


 一つ目玉様
 人工文珠と同じく、ジャマーもまだ仕様を明記しておりませんので…もうちょっと、説明にはお時間を下さいませ。ですが、仰られているのは全くその通りですなぁ。
 一つだけ言えるのは、ジャマーは一企業のプロダクトである、ということでしょうか。自企業の首を絞めるようなもんは作りません。カオスが何をどこまで考えているのか、その部分との擦り合わせの難しさはあるかも…だってカオスですし。


 カシム様
 一度スイッチが正常に入れば、とんでもない代物でも造れる…それが作者のカオス像です。
 町の発明家クラスのモノなら、ぱぱっと造っちゃえるんでしょうね。簡単に作ってしまえることも、問題なんだろうなぁ。
 惨事には至りませんでしたが、カオスの美神に対する評価はまた変わったでしょうね。トラウマ寸前。


 内海一弘様
 効果は同じ、しかし稼動に至るシステムはアシュ製よりも泥臭い。単純な技術力では、アシュタロスに及ぶものではないでしょう、カオスは。でも、違う筋道から同じ結果を導き出せるカオスの技術もまた、人外のものでは。
 カオスに非はない…! 横島がその手の話題に過敏なのと、その横島の変化に美神達が敏感だったのが不幸でした。理不尽な怒りの捌け口にされたカオス可哀想。
 アーサーには今後、カオスの片腕として働いてもらいますよーう。使える奴ですからね。
 美神達との決着はイコール物語の主軸の問題なので…まだまだ先になるでしょう。


 kurage様
 ドクター・カオスではなく、魔王カオスの威厳を、これからもびしっと表現出来ればいいのですが。かっこいいカオスは作者も好きですから。
 慈悲ではありませんが、虎口は免れました今回。美神の『殺すリスト』のトップランカーになったのは間違いありませんが…。


 スケベビッチ・オンナスキー様
 横島の存在は、誰にとってもジョーカーなんだなぁ…と他人事のように思った今回です。ババを引く、なんていいますが…今回のカオスは正にソレ。
 大手スポンサーの話、冥子編終了時辺りから加速する予定です。未定ですが。その冥子がどうなるか、のんびりとお待ち下さい。妙神山修行は鼻血程度じゃ済まないでしょうけど。


 以上レス返しでした。皆様有難うございました。


 次回は、冥子修行編ですね多分。
 一応ですが、最終的な展開までのプロットは出来上がったので、なんとか書き進めて行きたいと思います。
 プロジェクト・オーバーズなんて単語をようやく出せましたから。


 ではこの辺で。最後までお読み頂き有難うございました!

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