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▽レス始

「式神横島 極楽大作戦!3 (GS)」

mugen (2006-11-12 18:37)
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テーブルを囲んでのお茶会が始まった。
テーブルには人数分の紅茶とケーキが並べられている。
正面に勘九郎、対面に美神が座りその両隣におキヌとシロが座る。マスクマン達は椅子には座らず、どこぞの黒服のように勘九郎の後ろに控えていた。
中央の機械は停止され、吐き出され続けていた悪霊も今は落ち着いている。
ちなみに、吐き出されていたそれまでの悪霊達はおキヌによって消滅させられた。
シロは椅子に座ると置かれていたケーキの匂いを嗅ぎ、ただのケーキである事を確認するや猛烈な勢いで食べ始めた。美神はそれを呆れた様子で確認した後に、ようやく目の前のティーカップに手を伸ばした。おキヌは何も手につけず、じっと勘九郎をにらみ続けている。
「依頼はどうした!!」と突っ込みを入れたいだろうが、そこはさすがに『GS美神』であった。


式神横島 極楽大作戦!3


「どう? 少しは落ちつけたかしら?」

ガツガツとおキヌのケーキにまで手を伸ばすシロを見て、質問するまでも無かったかしら…と心で思いつつ勘九郎は問いかけた。

「まあ…ねぇ…」

おいしいでござる、おいしいでござると尻尾をパタパタと左右に大きく揺らすシロの様子に苦笑しながら、美神も言葉を返した。

「そう、それはよかったわ。そうそう、私が何故ココにいるのかだったわね」

ゆっくりと紅茶のカップを傾けながら勘九郎が言葉を発する。

「私がここにいるのは…」

美神達三人の視線が勘九郎に集まる。

「―――今現在ここに住んでいるからよ」

「「「…はい!?」」」

「そうねぇ〜どこから話せばいいかしら…。あの後…そう、私が雪之丞に倒された後の事ね…」

遠い目をしながら話し始めた勘九郎に三人の口がポカンと開く。

「実際のところ私も死んだと思ったわ…まぁ現実には何とか生き延びれたわけだけど、その後が大変だったのよ。チャンネルが戻ったせいで、神族だけじゃなく魔族にも追われる事になって…」

「ちょ、ちょっと待った! ココに住んでるですって!?」

「もう、せっかちねぇ。これから私の活躍が…」

「んな事はどーでもいーのよ!! ココに着いた時に霊視したけど、あんたの魔力はともかく、こんなたくさんの悪霊の気配は感じなかったわよ!!! いくら結界を張っていたからって」

美神が思ったのは霊視した時の下級魔族並の妖気の事である。あの妖気が勘九郎の物だったとしたら話はわかる。が、妖気の数に納得いかない。

「あんたの魔力はって…相変わらずの失礼ぶりね美神令子。…まぁいいわ」

美神の言葉に呆れ顔の勘九郎だったが、気を取りなおして質問に答える。

「どうやら、あの機械はそこいらの邪気を取りこんで、次々と悪霊モドキを作り出す機械みたいなのよ。まあ、私に分る事はその機械は始めからここに有って、私はその機械を警備システムの用に使ってるだけって事。なぜそんな物がここに在るかは分らないわ。だって私は都合が良いからココに住んで修行してるだけだもの」

「元からココにあった!? って事は―――」

「そうね。美神令子―――あなたはここの持ち主にうまく利用されたって事―――って、ハゥッ!!」

手に持っていたカップが割れ、美神の身体から突然霊気が吹き上がる。
そこには夜叉がいた。
その顔を直視した勘九郎がたまらず椅子から転げ落ちた。

「お〜の〜れ〜〜〜!!!!!」

「み、美神どの…」

美神に怯えたシロが尻尾を縮こませる。

「お、落ち着いてください、美神さん!!」

「これが落ち着いてられるかぁぁぁ!!!!」

おキヌが美神をなだめようと四苦八苦するが―――


少々お待ちください


「はぁはぁはぁ…」

肩で息をする美神に、恐る恐る勘九郎が声をかける。

「あんた…めちゃくちゃするわね―――他人の家だって分ってる?」

部屋はめちゃくちゃになっており、美神のあまりの暴れっぷりが伺える。

「そんな事はどうでもいいのよ。私を騙した事がムカつくのよ!!!! まぁいいわ…後で、きっちり請求してやるから!!!」

「でも、請求はするのね…」

「…でござろうな」

「まぁ、美神さんですし…」

「あ、あんたらはぁぁぁ!!!」

三者三様ならぬ、三者一様の反応にこめかみを引きつかせる。
美神は一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、勘九郎と向き合う。

「まぁ、だいたいわかったわ。勘九郎―――」

「何?」

「あんたココを出て行きなさい!!」

「……はい!?」

突然の提案に顎をカクーンとさせる勘九郎。

「あんたがココを出て、この機械をぶっ潰して残る悪霊達をシバキ倒せば、依頼は完遂するって事。で、後は―――」

再び顔付きが変わってくる美神に、少しびくつきながらも勘九郎が言葉を挟む。

「チョ、チョット待ちなさい美神令子!!」

「ん!? 何よ!」

「私はココを出て行くつもりはないわよ! ココは私の家。昔の誼でご招待したけど、元々私達は敵同士なのよ。其処のところ解ってるの?」

「…見逃したげるって言ってるのよ!?」

場の雰囲気が変わっていく。少し剣呑な空気が辺りに漂い始めた。

「…どうやら、自分の立場を理解していないみたいね―――『私』が『あなた達』を『見逃してあげてる』のよ美神令子」

「…私達と遣り合うつもり?」

「以前のままと思わない事ね―――修行してるってさっき言ったでしょう。なぜ修行してると思う? 私の目的はね―――雪之丞をこの手で殺す事よ!!」

「なっ! そんなっ!」

「くっ…やっぱり悪者だったでござるか!!」

勘九郎の言葉に驚くおキヌと即座に臨戦体勢を取るシロ。そんな二人を他所に、美神が静かに尋ねる。

「メドーサのいない今のあんたに何が出来るの? 雪之丞と戦って討ち死にでもするつもり?」

美神の言葉を鼻で笑うかのように、勘九郎が言葉を返す。

「魔族をあまり見縊らない事ね…今のあなた達なら片手で殺せるわよ」

突然、勘九郎の身体から魔力が溢れ出す。場に満ちる妖気がはっきりと分る位濃くなっていく。

「「「!!!」」」

すぐに距離を取る三人だったが、その顔色はどんどん悪くなっていく。

「ぐっ…な、なんて妖気でござる…」

「こ、ここまでなんて…」

部屋に満ちる妖気にシロとおキヌが膝を付き蹲る。美神は何とか耐え凌いでいるがその顔に先程までの余裕が感じられない。

(くっ、最悪ね…ここまでとは思っていなかったわ…。せめて横島くん達が合流するまで…なんとか…)

「少しは理解してくれたかしら…今のままでも雪之丞を殺すのは簡単なの。でも、あの子は私を二度も殺した…まぁ二回目は殺しかけられた…が正しいけどね」

妖気を抑え、凶悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと何とか形を留めていたソファーに腰を下ろす。

「だから、私が育てたこの子達で甚振って、泣いて謝ったところを私が…私の手で殺してやるのよ」

その言葉に後ろに控えていたスーツ姿の五人が、美神達の前に立ちふさがった。

「…ゾンビね」

「ふふふっ、さあね。―――それであなた達はどうするの? 素直に殺される? それとも命乞いでもするのかしら?」

「冗談でしょ。このGS美神令子を舐めないでもらいたいわね!! それに、私達が何の準備もなくここに乗り込んで来たとホントーにそう思える?」

あくまでも余裕を感じさせるよう振舞う美神。勘九郎はそれに違和感を感じるも、自分の優位性は変わらない事をしっかりと把握している。

「…横島忠夫」

勘九郎がポツリと呟いた言葉に美神がピクリと反応を返す。

「うふふっ、時間稼ぎはいいわ。そう、彼を待ってるのね。お姫様を救う白馬の王子様ってところかしらね」

「だ、誰が「そうでござる!! センセーは拙者の白馬の王子様なんでござる!! センセーが来たらおまえなんかに…」」

「わ、私も横島さんを信じてます!!」

勘九郎の言葉に反論しようとする、美神の言葉を遮るようにシロが言葉を被せ、顔を赤くしながら叫ぶ。おキヌも負けじと横島の名前を呼ぶが、その頬は染められていた。

「だそうよ、美神令子。そこの袴のお嬢さんも、犬神のお嬢さんもそう言ってるわよ。あなたも素直に認めたらど「だ、誰があんなヤツを待ってるって? あいつは私の丁稚なのよ!! 私がいつそんな事を言ったのよ!? 何時何分何秒!?」」

勘九郎をキッと睨みながら、美神がマシンガンのように言葉をぶつけてくる。

「い、いや…その反応だけで十分分るんだけどね…。そう…彼が来るの―――だったら見逃してあげる事も出来ないわね」

勘九郎は当初呆れた表情を浮かべていたが、途中からその表情が憎しみに変わっていく。

「んなっ!?」

「何か変な事言ったかしら? 魔神大戦の後、中級魔族並の力を手に入れた半人半魔の化け物―――『魔人』横島忠夫。私の師匠であるメドーサ様を殺し、私と同じ『魔』の存在で在りながら、『人』として幸せに暮らしている男。そんな者を認められる? 私は魔族ってだけで世界から排除されかかっているのに…」

憎しみの丈を吐き出しながら独白する。

「それは自業自得でござろう!! 先生はみんなの幸せの為に戦っているでござる! そんな先生を、おぬしなんかと一緒にされたくはないでござるっっ!!」

「そうです! 横島さんは、横島さんは…」

シロが怒りの叫びを上げ、おキヌが悲しみの涙を流す。そんなおキヌの肩を慰めるように抱きながら、美神が先程と違う思いで勘九郎を睨みつける。視線で魔族を殺せたら…とでも言うような眼差しが三つ勘九郎に注がれる。

「無駄よ…横島くんの事をまったく分っていないヤツに、何を言っても無駄ってものよ!!」

「確かにこれ以上の問答は無駄ね…。じゃあそろそろ―――」

「「「…」」」

三人は力を溜めつつ、いつでも戦えるように身構える。
前衛のシロが霊波刀を正眼に構え、その隣で美神が神通棍に霊気を込め神通鞭に変える。後衛としておキヌがネクロマンサーの笛に唇を添えた。

「―――死んでちょうだい!!」

勘九郎の言葉と同時にゾンビ達がいっせいに襲い掛かって来る。

(速い!?)

かつて戦ったゾンビ達と比べ、その動きは比べ物にならない。
だが、美神は冷静に殴りかかってくるゾンビを避け、その頭部に神通鞭を叩き込む。
ピシリッ!と仮面が砕ける。

「なっ!!」

頭部を覆っていたのはマスクではなく仮面。その仮面の下から現れたのは人の顔、それも腐った物ではなく生前の―そう生きている人間の顔だった。

「ど、どうなってるでござるか!?」

シロもその顔を見て、ゾンビに迂闊に斬りかかれなくなり、防戦一方となってしまう。
仮面が割れた男が涙を流しながら美神に声をかける。

「コロシテクレ…」

「何、生きてるのコイツら…」

「そんな…」

美神の言葉におキヌが戸惑いの声を上げた。

「そう、生きてるのよこの子達―――説明してあげましょうか。これが私がここで身に付けた新しい術『魔操術』よ!!」

魔操術―――魔界の死霊使い(ネクロマンサー)が使う傀儡の術。死霊や死体に限らず、生きとし生けるモノを操る術だ。ただし、死したモノには必要無いが、生きているモノを操るには仮面を媒体として肉体に装着させる必要がある。ゆえに媒操術とも言うらしい。
これはかつて白竜会いた頃、メドーサに死霊使いの能力があると言われて教わった術だった。マスターする前に一度は滅びてしまったが、復活し逃亡して、この施設で出会ったGS達を実験台として修行してきたのだ。

「さぁ、どうするの? まだ生きてるわよこの子達。問答無用に殺すのかしら?」

楽しそうに笑う勘九郎だったが―――

ピュリィィィィィーーーーーーーー

おキヌのネクロマンサーの笛が心地よい音色を醸し出す。
とたんに生人ゾンビ達の動きが散漫になっていく。

「…そうだったわね。そちらのお嬢さんもネクロマンサーだったわね。なら―――」

生人ゾンビ達は狙いをおキヌに絞るが、一歩もおキヌに近寄らせまいと美神とシロが行く手を塞ぐ。生人ゾンビ達も果敢に攻めるが美神とシロのガードは崩れそうにない。
だが結局のところ、攻めなければ霊力を消耗していくだけだ。いつか生人ゾンビ達の魔手に捕らえられる事は間違い無い。

「なら、操っている根本を絶つしかないわけよ…ね」

美神が封印札にゾンビを封じていく。
おキヌの笛の音でその動きは明らかに遅くなっている。シロのサポートを受けつつ、何とか五体の生人ゾンビ達を封じる事に成功した。

「ふぅーん。まだまだ改良の余地があるわね…」

ここに来て勘九郎がようやくソファーから立ち上がり、魔力を開放する。
髪が伸びていき額から二本の角が生える。目が釣りあがり口が大きく裂ける。全身が黒く覆われていき、肉体が二周りほど大きくなる。
そこに現れたのはかつて見た魔族としての鎌田勘九郎の姿だった。

「じゃぁ、そろそろ私自身が相手をしてあげるわ。大丈夫…殺すのは止めにしたから」

「なら、どうするつもりかしら!?」

美神の額から汗が滴る。シロとおキヌもすでに霊力が尽きかけている。

(まともにやり合うのは無理ね…。横島くん…早く…)

「あなた達も私の魔操術の被験者になってもらうわ!!」

ゴウッと魔力の塊が勘九郎の右手より放たれ美神達を強大な魔力砲が襲う。

「なっ! でかい!!」

「さ、避けられないでござる」

「よ、横島さはーーーん!!!」

それぞれの絶望的な叫びが上がり、死を覚悟した美神達の前に淡く輝く丸い球が放られる。

「「「…あっ!」」」

「ふん! 来たわね『魔人』!!」

魔力砲と文珠が触れた瞬間、文珠が激しく光を放った―――


あとがき

今回もたくさんの感想を頂け感謝の極みです。
さて、今回は土日を利用して続きをなんとか書き上げる事が出来ました。
次回から横島とタマモが参戦します。
まだまだ序盤で式神にもなれてませんが、楽しく読んで頂ければ幸いです。

レス返しです。

1.夜明け前様>
私的解釈ですが、文珠とはイメージが重要だと思っています。
漢字を左右2つで別けて作成し、結合して別の漢字にする方法を原作で見ました。
そのような使い方も文珠の特徴の一つだと思いますし私の中でもすごい利用法だと思います。ただ、私が思ったのはカタカナで表記された方がイメージが捕らえやすい物の利用時の事です。例えばオルガンを漢字で表記すれば風琴と書きますし、サッカーは蹴球と書きますよね。両方とも同じ意味を示しますが、どちらがよりその物をイメージするかと言う事です。確かに制御には困るでしょうが、威力は上がるのではないかと考えたわけです。
ゆえに、使用する時に威力重視か制御重視かの選択肢を持たせたわけです。
このような説明で伝わりましたでしょうか?

2.ゾナ様>
申し訳ありません。
今回の本文の長さはどうでしょうか?読み応えありました?

3.ZX様>
はい、あくまでも使用する能力の一部として考えています。やはり、切り札的な使い方をさせていきたいと考えています。

4.素浪人様>
あくまでも選択肢を増やしただけのつもりです。
和文珠にたいするご感想が多い為、混乱を感じたなら申し訳無いとしかいえません。あと、文珠の進化は軸の一つです。正確には成長が軸でしょうか…。

5.maemura様>
いえ、あまり関係無いです。文珠の一つの発展形程度に捕えてください。

6.眉猫様>
うっ…それはヒミツです。って言うか、バレバレですか?

7.帝様>
はい、イメージのし易さが和文珠を作った一つの理由です。
もう一つは接続詞的名使い方です。

8.ふと思った改めアトリ様>
ありがとうございます。
和文珠があまりに大きな波紋を呼び申し訳無かったです。
作品の方で挽回したいと思います。


色々なご指摘、ご感想、本当にありがとうございます。

mugen

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