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▽レス始

「光と影のカプリス 第35話(GS)」

クロト (2006-10-21 16:16)
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 遊園地のマスコットキャラクターが女の子を担いで爆走しているというのに、それを止めようという客は1人も現れなかった。
 なにぶん状況がシュールすぎて、助けるべきだと思った頃には2人ははるか遠くに去ってしまっているのだ。また彼らの半数がイベントの類だろうと思って見過ごしていたというのもある。
 タマモはもう落ち着いていたが、カリンをはね飛ばしたロボット相手に素手でやり合う度胸はない。と言って衆人環視の中で変化や狐火を使うわけにはいかないが、マッキーがなぜ自分をさらったのかはやはり気になったので、何かの参考になればと思ってちょっと匂いを嗅いでみた。

(これって……妖気?)

 自分とは少し毛色が違うが、マッキーの右耳の辺りから確かに妖気を感じる。サイズはせいぜい数十センチという所だが、小妖精の類がロボットを狂わせたと考えれば辻褄も合う。
 もしこの推測が正しければ、妖精を追い出せばマッキーは正常に戻るはずである。

「……って、手が届かないっ!?」

 やはり横島たちか従業員が助けてくれるのを待つしかないようだった。


 その横島とカリンは走りながらマッキーへの対処法を考えていたのだが、彼を壊さずにタマモを取り返すというのはなかなかの難題だった。しかしマッキーが暴力を振るっているのならともかく、単にタマモを抱えて走っているだけだから本気で攻撃するのは憚りがある。
 カリンは結局横島を置いて行くのは止めたらしい。今はさっきと同様並んで走っていた。

「でもおまえを吹っ飛ばしたくらいだから、かなりパワーあるんじゃねーか、あのロボット?」
「ああ。しかしさっき気がついたのだが、ロボットというのは人間より重いのだろう? そう考えれば当たり前だとも言えるな」

 たとえばスピードが同じで重さが2倍なら、パワーも2倍ということになる。それならカリンを蹴転がせてもおかしくないし、タマモを軽々と担いでいるのにも納得がいく。人間形態のタマモは40kgはあるはずだが、マッキーにとっては自重の4分の1強に過ぎない。その程度なら大した負担にはならないだろう。
 ちなみにタマモは変化の術を使うと体重も変化したものの見かけ通りの重さに変わる。当人にも原理は分かっていないのだが、人間形態で仔狐の体重のままでは軽すぎて困るから、実生活ではその方が便利だった。その代わり以前自分で言ったように「化けてるときはその姿に見合うだけのエネルギーを消耗する」というコストがあるのだが。

「うーん、それだと体重ゼロのおまえじゃ圧倒的不利だな」

 カリンは普段は地面に足を踏ん張ったり、霊力で擬似的な重みをつくったりして行動しているのだが、デザイアブリンガーも飛行能力も使わずにマッキーを取り押さえるのは至難だろう。
 カリンもそれが分かっていたからあえて横島と並走しているわけで。しかしこのままではいつまで経っても追いつけない。

「ああ。そこで考えたんだが、小竜気を足に出すことはできるか?」
「へ、足に……? ああ、そっか、そーゆーことか!」

 本体と分身という最も身近な間柄だけあって、横島はカリンの言わんとした事をすぐ理解した。
 地面を蹴る力を小竜気で強化すればそのぶん足が速くなる、というごく単純な理屈である。横島もマッキーに比べれば軽いが、カリンが挑むよりはずっとマシだ。

「両足は無理っぽいけど、片足だけならいけそーかな」
「十分だ。じゃあ戻るぞ」

 マッキーと多少距離が開いたためか、周囲の客は自分達には注目していない。カリンが消えても不審がられることはないだろう。
 影法師が体内に戻って霊力が回復した横島が、さっそく右足に精神を集中する。腕に比べると少しやりにくかったが、何とか膝から下全部に小竜気を発現させることに成功した。

「何かギプスみたいだけど……しゃーねーか」

 腕だと片方だけでも見栄えは悪くなかったが、足だとブーツを片方履き忘れたような感じでどこか不恰好に見える。しかし今の力で両足をカバーするのはやはり無理そうだった。
 こつこつと地面を叩いて調子を取った後、思い切り床を蹴る。つま先で地面を押すのと同時に小竜気のパワーも叩きつけて、受け取る反動を倍加した。

「んひょおっ!?」

 横島の体が予想以上の加速で前にぶっ飛ぶ。危うく通行人にブランチャーをくらわせる所だったが、とっさに左足で進路を曲げて回避した。そのまま猛スピードで突進していく。

「う、うまくやれば便利かも知れんけど、速すぎじゃーー!!」

 期待以上のスピードが出たのはいいが、その加減まで思い通りというわけにはいかないらしい。
 せっかくの新技も完璧に使いこなせる日は遠そうだ。


(……で、こいつは何をしたいのかしら?)

 マッキーの頭上でタマモはそんなことをもう1度考えていた。
 エエ女、とか女殺シ、とかいう単語からすれば、えっちな行為が目的と考えるのが妥当だろう。走り回っているのは人が居ない所を探しているのに違いない。
 不愉快、というよりバカらしい気がしたが、その展開は不都合ではなかった。人目がなくなれば小鳥か何かに変化して脱出することができるのだから。なら下手に暴れて刺激するより、おとなしくして機会を待った方がよさそうだ。あんまり目立ちたくはないけれど……。

「やっと追いついたぞこのドロボー猫! 女返せーっ!」
「え?」

 後ろから聞こえた大声にタマモが顔を向けると、保護者の煩悩魔人がすごい速さで走ってくるのが目に映った。走り方が何だか変だが、それはささいなことだ。
 マッキーの耳の中にいる妖精のことを教えるべきかどうか迷ったが、そんな所に手を伸ばすのはかえって危険かも知れない。ここは少し様子を見た方がいいだろう。
 ―――いや、それよりも。

「横島、私のためにそんな必死になって……?」

 少年の目は血走り、表情はひきつっている。シリアスとかハードとかいう表現は全く当てはまらないが、それが逆に彼の真情を表しているように思えた。
 実際は小竜気走法のコントロールでいっぱいいっぱいになっているだけなのだが、いわゆる美しい誤解というやつである。

「ニャニャッ!?」

 マッキーも横島の急接近に気づいたのか、とりあえず追っ手の視界をふさげそうな物陰を探してきょろきょろと辺りを見回し始めた。
 その挙動が意図するところは、追っている横島にも明らかだ。

「逃がすかよ……タマモ、気をつけろよ!!」

 一声叫んでラストスパートに入る横島。今の彼は本気と書いてマジだった。カリンや小竜姫と違って、タマモは横島が「保護している」存在なのだから。

(カリンは前から足払いして失敗したんだよな……なら俺は!)

 横島は地面を蹴ると同時に身を沈め、後ろからマッキーのふくらはぎにスライディングキックを放った。
 今度は2人の進行方向が同じだから、横島もマッキーも受ける衝撃は少なくて済む。つまり横島が足の裏をケガしたり、マッキーの下脚が曲がったりするハメにはならないのだ。腿が床に擦れて痛かったが、そのくらいは我慢の範囲だった。

「ニャッ!?」

 足を蹴り飛ばされてバランスを崩したマッキーが後ろに倒れる。一方横島は蹴った反動をブレーキにして止まると、すぐさま飛び上がって落ちて来るタマモを両腕でキャッチした。お姫様抱っこのままマッキーの体をまたいで反対側に着地する。

「横島……!!」

 感極まったタマモが思わず横島の頭に両手を回してすがりついた。
 逃げる手立てがあったのだから、助けてもらったこと自体はたいして有り難がるほどの事ではない。価値があったのは、ここまでして助けようとしてくれた行為そのものだった。「味方でいてやる」とか「俺の女」とかいう言葉が口先だけじゃないことを、態度で示してくれたのだから。

「タ、タマモ!?」

 横島にとっては当たり前のことだっただけに、タマモのこの反応は意外だった。
 しかしせっかく感謝してくれているものに水を差すこともない。とりあえずそのまま抱きかかえていたのだが、周りに居た客はそれを見て見ぬ振りしてくれるほど粋ではなかった。

「おおっ、やるじゃねーか! つかこれってショーなのか?」
「兄ちゃんカッコいい!」
「ひゅーひゅー! 熱いねえ!」

「……え!?」

 万雷の拍手と歓声で自分たちが注目されていたことに気づいた横島が真っ赤になってタマモを下ろそうとする。だが2人を見ていたのは他の客だけではなかった。

「ニャニャーッ、ヨクモヤッタナコノ軟派野郎メー!!」

 そう、マッキーが起き上がろうとしていたのだ。彼は足を払われて転んだだけなのだから、すぐ起きて来ても不思議ではない。

「やべ、逃げるぞタマモ!」
「うん! ……って、あれ何?」

 横島もタマモも好戦的な性格ではないし、見せ物になるのも趣味じゃなかった。再び脱兎のごとく駆け出したが、いつの間にかその正面にロナルドドッグとマニーキャットが現れていた。2人ともデジャヴーランドのマスコットキャラクターで、特にマニーはマッキーの恋人という事になっている。
 ロナルドはただのぬいぐるみにしか見えなかったが、マニーの方は鬼子母神も裸足で逃げ出しそうなほど凶悪なオーラを炎のように噴き上げていた。手に持った棒切れもバチバチと放電している。
 その眼光はなぜか横島の方を向いていた。恋人を転ばせたことを怒っているのだろうか?
 どこかで見た覚えがあるそのオーラに横島は震え上がったが、抱っこしたままのタマモに「逃げるのよ横島!」と声をかけられて我に返った。

「小竜気、全・開ーーーー!!」

 横島の逃げ足の速さは超人の域に達している。小竜気のパワーを加えれば、タマモの体重など問題にならない。あっという間に2人はロナルドとマニーの射程距離から逃げ去った。

(す、すごい脚力……霊能者より陸上やった方がいいんじゃないかしら)

 ロナルドの中の人―――マッキーを狂わせたボガートを捕獲しに来た美神美智恵―――が呆然とそう呟いた。数字で表現までは出来ないが、あれはおそらくオリンピック級だろう。それも女の子をかかえたままで。
 しかしそれは自分には関係のないことだ。美智恵はさりげなく歩を移してマッキーの背後に回った。言うまでもなく、彼の逃亡を阻止するためである。

「……チッ!!」

 一方のマニーはものすごい舌打ちを漏らしたが、横タマを追うことはできない事情があるようだ。憂さ晴らしということか、今度はマッキーに顔を向けて棒切れを振り上げる。
 マッキーは腰が抜けたのか座り込んだまま逃げようともしない。
 ただ顔の前で手を振って非暴力を訴えているのが哀れを誘うが、マニーはにっこり笑って断罪を宣言した。

「こん浮気者がーーーっ! あんたがっ、泣くまでっ、シバくのを止めないッ!!」

 マッキーの頭に振り下ろされた棒切れから弾けた霊波がボガートを痺れさせる。気絶してマッキーの耳の中から転がり落ちた。
 ロナルドが素早くボガートを掴み上げてポケットの中に隠す。マニーは「さ、行くわよ。このヤドロクがっ!」と言いながらマッキーを引き摺っていった。

「きょ、今日のショーはすごかったな……」
「何つーか……マジ喧嘩!?」

 その一部始終を眺めていた客たちが多少ブルってはいたものの、オカルトGメンは何とか秘密裏に妖精を退治することに成功したのだった。


 横島とタマモはしばらく走ってマニー達の姿が見えなくなったのを確かめると、ベンチに座ってひと休みすることにした。
 さすがの横島も疲れが出たらしい。

「はあ、何とか逃げ延びたか……しかし何だったんだろーなアレ」
「……あいつの耳の中に妖怪がいたんだと思う」

 タマモが小声でぼそっと答えた。大きな声を出して回りに聞かれたら何かと面倒だ。
 横島が驚いてタマモの方に顔を向ける。

「え、そーなのか? うーん、確かにマニーのあの殺気は人間とは思えんかったからな」

 マニーの中の人が聞いたらそれこそ人間やめさせられそうな愚言である。知らぬが仏とはこの事だろう。

「退治しに行く?」

 とタマモは言ったが、気が進まない様子なのは明らかだ。
 むろん横島も心は彼女と一緒だった。依頼された仕事でも断る権利はあるというのに、なぜ巻き込まれた事件で命を捨てなければならないのか。

「いや、それは無謀だろう。それに騒ぎも起きてないし、ロナルドとかが何とかしてくれたんじゃねーか?」

 マッキーやマニーがまた暴れ出したのなら、今ごろ大騒ぎになっているはずだ。しかしそんな気配はまったくないから、たぶん事件はもう解決したのだろう。

「で、タマモ。これからどーする? 今日はもう帰るか?」

 こんなデンジャラスな体験をしてなおアトラクションで遊ぼうと思えるほど横島の神経は太くない。タマモもその点は似たようなものだが、まだ未練があったらしく少し考え込んだ後、

「じゃ、最後にもう1つだけ。ところで横島、ケガとかしてない?」
「ああ、大丈夫だよ。それで何に乗りたいんだ?」
「うん、あれ」

 とタマモが指さしたのは大観覧車だった。なるほど、最後の1つとしては良い選択かも知れない。夜になったらイルミネーションがついたりするのだが、それはまた今度でもいいだろう。


「ゆっくり動くのも悪くないわね。で、こういう時って人が豆粒みたい、って言うのかしら?」

 タマモはゴンドラの窓に顔を貼りつけて、下界を物珍しげに眺めている。絶叫系の乗り物は周りを見る余裕などないし、高層ビルに行った事もないので、高い所から地表を見下ろすのは初めての体験なのだ。

「そーゆー言葉ってどこで覚えてくるんだ? つーか狭いのに何でわざわざ隣に座るんだよ」

 しかしそれに答える横島の声は少しばかり不快そうだった。
 普通は向かい側の席に座るものだと思うのだが、タマモが押しかけて来たせいで窮屈になっているのだ。
 いや女の子の方からくっついて来てくれるのは大歓迎なのだが、何もこんな場所でしなくてもいいと思う。相手が守備範囲内の娘ならいろいろとスキンシップができるのだが、タマモにそうするわけにはいかないし。
 するとタマモは外を見るのをやめて、ふっと視線を床に落とした。

「……横島に言いたいことがあったから。ほら、真向かいに座るより横に並んだ方が話しやすいでしょ」

 タマモの言うことは心理学的にも間違っていない。向かい合うと気分的に対決姿勢になるので、理論的な話をするにはいいが情緒的な話をするのには不向きなのだ。もちろん横島の家に心理学の本があるわけがないので、これはタマモの本能的な知恵であった。

「何か言いにくいことなのか?」

 わざわざゴンドラの中で言い出したのは、よほど他人に聞かれたくない事柄なのに違いない。そのくらいは横島でも分かる。
 それにしてもこの横暴狐娘が言いよどむとは、よほど高価なおねだりでもするつもりなのか。いや、それはあまりに場違いすぎる。もしかして彼女の身に何かまずいことでも起こっているのか……?

「あ、ううん、そういうことじゃなくって」

 そんな深刻な顔されても困る、とでも言いたげにタマモは軽い調子で首を横に振った。

「さっき助けてもらったお礼まだ言ってなかったから。自分で逃げられなかったわけじゃないけど、横島が助けてくれたのは事実だから……ありがと」

 どうやら目を合わせて言うのが照れくさかったという事のようだ。タマモはうつむいたまま、訥々と言葉を並べていく。

「そ、それでね。あんたもようやく私の魅力が分かったみたいだから、彼女になってあげてもいいかなって。ほら、あのとき言ったでしょ。『その女は俺んだ』って」

 世間一般では恋人同士の間で使われる用語だろう。横島のことだからそう深い意味はなかったかも知れないが、ああ言った上であんな必死になって助けてくれたのだから、少なくともウソではあるまい。
 なら、自分も結論を出すべきだ。
 もとより拒む気はなかった。もしそうなら香港の時の「何でもしてあげる」を借りのまま残しておかなかっただろう。

「……え゛」

 横島の顔にびしりと亀裂が入った。
 確かにそんなことを言ったような気がする。しかも間違いではない。タマモを自分の恋人にするかどうかはともかく、他の男に譲る気はまったく、全然、これっぽっちも無いのだから。
 ただ問題は、タマモが彼にとってロリの範疇に入るということで……。
 さいわいタマモは顔を上げなかったので、横島の表情の変化には気づかなかった。

「ってゆーかここまでコナかけられて単なる被保護妖怪のままじゃ落ちつかないから、さっさと彼女にしなさい」
「……告白にしてはずいぶんとえらそーだな」
「う、うるさいわね、いーじゃない。
 ……じゃなくて。先に告白したのはあんたでしょ!?」

 素に戻った横島がぼそっと指摘してやると、タマモも自覚はあったのか真っ赤になって少年を睨みつけた。まあ、彼女らしいと言えばらしいのだが。
 しかしこれでは話がこじれかねないと思ったのか、タマモは舌鋒を収めて己のセールスポイントを語り出した。

「で、でも私って結構お買い得だと思うわよ? 年上と年下で2回美味しいし、特技も持ってるし」
「……そうだな」

 と横島は穏やかに同意してやった。
 お買い得という部分にではない。彼女が最初に言ったように、横島がタマモのことを「俺の女」だと思っていて、タマモがそれを認めるのなら、その関係はやはり恋人同士というのが自然だろうという事だ。
 タマモがロリだとか妖怪だとか、細かいことはいいじゃないか。タマモの方も横島が異種族だからどうこうとは思っていないのだし。
 横島が腕を上げて、そっとタマモの肩の上に手を乗せる。
 歳相応で、しかし彼にとっては小さくてきゃしゃなその体は、確かにいとしくて、守ってやる価値のあるものだった。

「じゃ、これからは彼氏と彼女ってことでよろしくな。タマモ」
「うん!」

 タマモはぱーっと満面を綻ばせて、恋人の胸の中に飛び込んだ。


「ところでタマモ、このことはクラスの連中には内緒だぞ。何言われるか分かったもんじゃねーからな」

 横島としては、これはぜひクギを刺して置かねばならない超重要事項である。ピートと愛子以外の級友にバレたら、外道扱いは確実だから。
 しかしタマモはそんな横島に、ニヤリと小悪魔チックな笑みを唇の端に浮かべて見せた。

「んー、どうしよっかな? クラス公認のカップルっていうのも悪くないし」
「ナヌぅ!? おまえは恋人を魔女狩りに差し出すってゆーのか!?」

 本当にそう思っているのか、血相を変えて騒ぎ出す横島。タマモはいよいよ邪笑を深くして、

「フッ、それが嫌なら毎週私を遊園地に連れていくのね。もちろん夕食は高級寿司かうどん屋さんよ」
「……。どうやら俺は保護者としてしつけ方を誤っていたよーだ」

 横島はタマモを自分の腿の上に座らせると、後ろから少女のこめかみに中指の第2関節を押し当てた。左右から挟んでドリルのようにねじ込む。

「痛い痛い痛い痛い! 分かったわよ、黙ってるから離してー! ほらもうすぐ下に着くし」

 とタマモが両手を上げて降参を宣言すると、横島は一応信じたのか手の力をゆるめた。

「まったく……ほんとに黙ってろよ? 俺にも一応立場ってもんがあるんだから」
「……うん」

 今度はタマモも素直に頷いた。彼女が転入した時の級友たちの反応を思い起こせば、横島が不安がるのも分からなくはない。
 それでも告白を受け入れてくれたのだから、やっぱり「俺の女」発言は信じていいんだ、とタマモは頬を緩ませた。
 体を横向きにして、横島の頭を両手で抱き寄せる。いつも彼を背もたれにして座っている時と同じ、あたたかくて気分が安らぐ感触が少女の全身をつつんだ。

「横島……大好きよ」

 タマモは恋人の耳に届くか届かないかのかすかな声でそう呟いて、そのままゴンドラが下に着くまで目を閉じていた。


 ―――つづく。

 横島のくせにーーーー!(絶叫)
 今回の後書きはこのひと言につきますです(ぉぃ
 ではレス返しを。

○零式さん
>横島のくせにぃぃぃぃぃぃっ!!
 丁稚のくせに生意気だぞーーー!!
>美神さん!!お仕置きたのんだっ!!
 タマモの愛の力で逃げられてしまいました。
 でもまだ許してもらったわけじゃないですし(w

○kntさん
>かっこいーーーー横島君じゃないみたい!
 彼も何かに取り憑かれてるのかも知れません<マテ

○読石さん
>ボガートじゃなくタマモフラグ完成の為に使わされたキューピットの恋愛イベント?
 ああ、本当にそんな風になってしまいました。
 タマモさん、悪いことは言わないからその男だけは止めておきなさい。
>美神さん
 丁稚を取られました(ぉ

○ミアフさん
>小鳩ちゃん
 あとは毒入りバーガーの販売とか。
 それ以前に登場自体が危ぶまれておりますが(^^;
>美神親子
 横島君にとってのインパクトだけはありましたが(ぉ

○ロムさん
>横島君は妖狐の少女と幸せに暮らしました
 うーん、それでハッピーエンドになってしまっては横島君らしくないですし<超マテ

○とろもろさん
>タマモルート
 逝ってしまいました。どうなるんでしょ<マテ
>小鳩ちゃん
 筆者は大人数を捌き切れないヘタレなので○(_ _○)
>美神母
 美神家というのは美智恵が初代というわけじゃないみたいなので、出来のいい霊能者がいれば娘の婿にと考えても不思議はないですよねぇ。
 しかし優秀な霊能者は他にも居るので、そこまで拘りはしないかと思います。ここの横島君は文珠持ってませんし。
>神様達の寿命を考えれば、20年や40年、人間のとっての数週間みたいなものですよ♪
 確かに寿命と時間の尺度が比例するとしたら、20年居てもおかしくないんですよねぇ。人界の企業が「1ヶ月研修」って言うのと同じ感覚で「10年研修」って言ってもおかしくないですから。
 横島君、本当に一生小山事務所に勤められるかも知れません。
>横島君ハーレム
 どうしてくれましょうかねぇwww

○盗猫さん
 美神さんぴんちです。
>小鳩ちゃん
 筆者の不才の致すところでorz

○KOS-MOSさん
 カリンとタマモだと、人間関係的に修羅場にはなりにくいんですよねぇ。
>美神さんのシバキ
 いつかは二股野郎に天誅を下して欲しいものですが。
>タマモルートへのフラグが乱立してますねぇ
 フラグどころか決めちゃいました。

○遊鬼さん
>デート
 横島のくせにーーー!
>タマモ
 ボガートよりタチの悪いやつに捕まりました(ぉ

○whiteangeさん
>タマモ
 ご想像通りかと思われます。そろそろ横島には天罰が必要ですよねぇ(ぇ

○内海一弘さん
 横島君、ついにロリに堕ちました。まあタマモは将来性は抜群なんですが。
>両手に花
 令子のシバきからも免れましたし、どうやってお仕置きしようか悩んでおります。

○あきさん
>カリンは横島の影なんで、両手に花のように見えてもまったく問題なし!
 はい、理論的にはケチのつけようが無いんですよねぇw
>美神にはどうも手出しできないですね
 女の敵をシバくだけならともかく、小山事務所そのものに自分からケンカを売るほどバカではないかと。

○通りすがりのヘタレさん
>たとえ無自覚とはいえ、一度吐いた言葉は戻せぬぞ?
 戻さぬどころか覚悟完了しちゃいました。これからは心置きなくロリコン野郎と呼んでやって下さいw
>思わぬ横島の台詞に混乱状態のタマモ嬢
 横島もいつもながら要らんことばかり言うヤツです。
>果たして美神の魔の手から逃げ切ることが出来るのか!
 今回は逃げ切りましたが、令子の執念はそんな浅くないですよねぇww

○kkhnさん
>カリンの「抱っこ自体は嫌じゃないのだが」はどういうことですか!
 事情はどうあれ、今までにいろいろスキンシップしてますからねぇ。
 スケベ心丸出しでなければ抱っこくらいはOKだったりするのです。
>タマモンとカリンと横島で3人一塊でTVみてほんわかイチャイチャベタベタですか!
 なんて贅沢なorz

○LINUSさん
>鉢合わせ・・・・きっとするんだろうなぁ
 しないわけがありませんのです。

○SSさん
 ご満足いただけたでしょうか(^^;

○TA phoenixさん
 筆者の拙文でタマモの魅力をいくらかでも引き出せれてば幸いでございますー。ついに勝負をつけてしまいました。
>魔鈴さん
 最初のころは恋人候補だったはずなのですがorz
>何という素敵な設定でしょうw
 ここに注目してくれた方がいてうれしいです(ぉぃ

○KEIZUさん
 タマモは元の魅力が深遠ですからv
>美神親子
 もしかしたらこの親子は、筆者の手では扱い切れない超存在なのかも知れませんです。
>両手に花?
 この幸せ者をどうしばいてやるべきでしょうかねぇ。

○HALさん
>馬鹿ップル
 今後の大バカっぷりが筆者にも心配であります。
 横島は墓穴を掘るのが似合う男ですが、今回は珍しくいい方に働きました。
>美智恵にとっての彼の大きな価値
 こうなったら何とか自分の手で娘を更生させてほしいものです。
 出来るかどうかは別として(ぉ

○kouさん
>横島たちがボガートに気付かないのは可笑しいのでは?
 はい、タマモは気づきました。
 すぐ気づかなかったのは、やはりあまりに想像外だったからですね。普通はそんなこと考えもしないでしょうし。
>カリンも此処まで変化しましたか
 報酬とはいえ唇キスもしてますからね。
 今後どう動くかはネタバレ禁止ということで。
>この横島なら原作のように呪っても神は許されるでしょうか?
 しっとの神ならたぶん<超マテ
>あの環境に適応するのが先か、それとも原作の様にノイローゼになるのが先か
 せめて横島君がシバかれてあげればストレス解消になるのですが(ぉぃ
>息抜きの為に賞金首を駆らした方がよいのでは
 オカG職員が悪霊を退治するのは公務ですから、賞金はもらえないでしょうねぇ。
 株式投資とかなら問題ないと思いますが……。
>美神たちに実力が知られてしまうでしょうが
 今回知られたのは逃げ足の速さだけなのでまだ反応しません(ぉ

○適当さん
 はじめまして、よろしくお願いします。
 魔鈴さんは……筆者も出したいと思ってはいるのですがorz

○たのみさん
 はじめまして、よろしくお願いします。
 過分なお褒めのお言葉、恐縮であります。
>プレッシャーww
 あう。
 ご期待に沿えるよう精進する所存でありますm(_ _)m

   ではまた。

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