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「GSユータロー極楽大作戦八話(GS)」

ミアフ (2006-10-12 20:39)
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八話『ばっと・ごっと・ふぁーざー検

唐巣の運転するワゴン車は、とある建設途中の遊園地の前で止まった。
バブルランド遊園地・・・・・・魔族パイパーがいると思われる場所である。
一行はそれぞれ、獲物を持って、バブルランドの中へと向かった。

バブルランドの入り口で一行は立ち止まる。

「魔力の密度が濃いな・・・・・・パイパーの奴はこの敷地のどこかにいるだろうが、詳しい場所は検討がつかんか」
と、手元のレーダーを見ながらカオス。
カオスのレーダーは大雑把な位置しか把握できない、広域探査用のレーダーだった。
レーダーを片手にカオスは周囲を見回す。
半端に出来上がったメリーゴーランドにコーヒーカップ、建築途中の巨大な城のアトラクション。
誰も乗っていない観覧車は寂しく廻り続けていた。
「こういう光景をみると、物悲しい気持ちになるね・・・・・・」
パイルバンカーを担いだ唐巣は荒廃した遊園地を見て、眼を細めた。
本来遊園地とは大人や子供たちを楽しませるための場所である。
それが無残にも荒れ果てているのは訪れる者に一抹の憐憫を与えた。
「・・・・・・ここはつまんにゃいのにゃ〜」
「なにか、寂しい気持ちになります」
猫耳れーことちびピートがそれぞれ優太郎と横島の足元にしがみつき、きょろきょろと首を動かす。
「で、これからどうします?」
優太郎はしがみつくちびピートの頭を撫ぜながら、唐巣に訊ねた。
唐巣は金の針を取り出した。
「こちらがパイパー攻略の鍵となる金の針を握っている。私とDrとで敷地内を探索しよう。
連絡は美神くんが用意していたトランシーバーで行おうか。
君達はパイパーの奇襲に備えていてくれ・・・・・・向こうが君達を人質にとろうとする可能性もある」
唐巣の真っ当な算段に横島は軽く頷く。
「そうっすね・・・・・・結界でも張って、そこに籠もっていますか。
芦、おキヌちゃん、簡易結界張るから手伝ってくれ」
横島は背負った荷物の中から注連縄のようなロープを取り出す。
かなりの防御力を持つ結界を展開できる霊的アイテムである。
「ではDr、私達も動くとしましょうか」
「ふむ。虱潰しというのはいささか面倒くさいが仕方あるまい・・・・・・魔力の濃い場所を探してみるとしよう」

神父と錬金術師は遊園地の奥へと向かい、歩き出した。

「ほほぅ?この奥からは一際強烈な魔力が発せられておるな」
アトラクションを巡っていた唐巣とカオスは洞窟を模した建物の中を走るカートレイン乗り場に辿り着い

ていた。
薄暗い穴の奥から、かび臭い匂いと共にパイパーの魔力が漂ってくる。
周囲の魔力の濃さと、ここの魔力の濃さは比べ物になら無いくらいこちらの方が濃い。
十中八九、パイパーの根城はこのアトラクションの中だろう。
「・・・・・・電気系統は完成しているようだ。このカートを使って移動するか?」
近くにあったアトラクションの管理室を見ていた唐巣。
このアトラクションはこの遊園地の中でも数少ない完成した設備らしい。
電気さえ通せば、もう使用できるようだ。
その意見にカオスは首を振った。
「いや、徒歩の方がよかろう。移動が制限された状況ではパイパーとは闘いにくいだろうしな。
カートに細工されている可能性も無きにしも非ず・・・・・・」
「そうですね・・・・・・内部の照明だけ使用することにするか」
ブレーカーを上げ、洞窟内部の照明が点く。
それでも、かなり薄暗い。
せいぜい、足元がぼんやりと見えるくらいの光量だった。
「視界が悪いな・・・・・・闇にまぎれての奇襲に警戒すべきだな」
「一応、私がライトを持っているから、灯りについての心配はいらんぞ」
カオスの持っていたステッキの先から、光が溢れる。
かなりの機能を仕込んでいるステッキらしい。
「行くか」
「前衛は任せよう」

二人は洞窟の中へと向かった。

内部はむき出しの岩肌。月明かりのような弱々しい照明。
カートのレールの脇には西洋童話をモチーフにしたらしいロボットが備え付けられている。
唐巣とカオスが通るたび、ロボット達は各々、機械的な声で喋りだす。
それはたわいない御伽噺だったり、童謡だった。
「・・・・・・オカルト的な事には慣れているが、突然ロボットが喋るのは心臓に悪いね」
霊感を最大源に研ぎ澄ませ、洞窟を歩いていた唐巣は嫌そうな顔で呟いた。
どこにパイパーが潜んでいるかわからないのに、突然オブジェから声を掛けられる。
そのたびにいちち反応してしまうのである。
緊張感をそぐようで、なかなかに困りものの仕掛けだ。
そんな唐巣の後ろを歩いていたカオスはふと、後ろを振り返った。
「ん?」
後ろには童話ロボットが陳列されている。
なにかに違和感をカオスは感じたが、それが何なのか分からない。
「どうしたDr?先を急ごう」
よくわからない違和感をカオスは抱くが、そんな様子を無視して唐巣は先を歩いていく。

ガシャン・・・・・・

後方から金属音がしたような気がした。

「唐巣さんたち、パイパーを見つけたかしら?」
結界の中でれーことちびピートと遊んでいたおキヌは呟いた。
その横では優太郎が霊体ボーガンを握り、横島は見鬼君で周囲を警戒している。
「さあ。神父たちなら心配ないと思うけど」
優太郎はぽりぽりと頭を掻く。
「唐巣神父はあの美神さんの師匠だからね。優秀なのは間違いないだろうし」
夢の中で令子が自信満々に唐巣のことを信頼していた。
肉体も若返っているし、装備もしっかりしている。
そういう意味では安心できる。
「しっかし、暇やな〜。いや、パイパーが来ないっていうのは良い事なんだろうけど」
見鬼君を握っていた横島は欠伸をする。
唐巣たちと別れて、そろそろ一時間近く経つが、はっきり言って何も起こらない。
元から集中力が欠けるきらいのある横島はもうだらけている。
「ったく、よこちまはだらしないのにゃ!もっとしゃっきりとするのかにゃ」
にゃんこなれーこが横島の尻を蹴っ飛ばした。
幼児化しても、れーこは半端に大人の人格が残っている。
「まじめにやーにゃいと、またじきゅうさげるにゃよ?」
「え〜・・・・・・これ以上下げるって、幾らに!?」
「んんん?」
頬に手をあて、しばしれーこは考え込む。
なかなか微笑ましい姿だが、考えることがバイトの時給についてというのが子供らしくない。
そして。
「なんと10円にゃのかや!」
「そいつは本気で勘弁してください!!」
マジ泣きで横島はれーこに土下座する。
いきなり25分の1に時給を下げられたくはなかった。
「ったく、なにやってんだか・・・・・・」
呆れたように優太郎は呟く。

ボコ・・・・・・

どこからか、土が盛り上がるような音がしたような気がした。

「すまんが唐巣・・・・・・どうやら我々は嵌められた様だ」
「・・・・・・どういう意味だ!?」
カオスは前を歩いていた唐巣に告げる。
カオスは突如、後ろを振り向き、魔銃を構えた。
「木偶のフリはもういい!大人しくこの一撃で砕けろ!!」
引き金が引かれ、薄暗い洞窟に銃火が輝く。
「Dr!?なにを撃っているんだ?」
魔銃の速射が何かを砕く。
銃撃が唐巣とカオスの通ってきた道に鎮座してあったロボットたちを打ち抜いた。
いくつかのロボットは銃弾を受け、四散したが。
「こいつは!?」
唐巣もパイルバンカーを構えて、それらと対峙する。
今まで、単なるオブジェのフリをしていたアトラクションのロボットがゆらりと動き出し、各々、獲物を構えて二人に迫ってきた。
カオスは後ろから付いて来る、得体の知れない気配に気づいていたのだ。
「どうもパイパーが魔力で操っていた人形らしいな。魔力濃度が濃すぎて気がつかんかった」
忸怩たる口調でカオスが悔しがる。
弓矢で唐巣たちを狙うロビンフッドや斧を握って駆けて来る7人の小人。
サーベルと鍵爪を振りかざすフック船長にその手下。
その他西洋童話の登場人物を模したロボットが数十体。
後ろからだけではなく、前方からもロボットが現れる。
「挟撃かッ!左右に逃げることは封じられ、前と後ろで挟み撃ちとは・・・・・・私達を確実に仕留める気なのか?」
唐巣はパイルバンカーのセーフティを解除した。

カション!

パイルバンカーを振りかざし、引き金を引く唐巣。
迫ってくるロボットの一体にチャージされた一撃が放たれた。

「吹き飛べッ!!」

ズドムッッッ!!

炸薬が破裂し、数体のロボットがパイルバンカーでまとめて打ち抜かれる。
貫かれた衝撃で後方のロボットを巻き込みながら爆破した。
単純な物理的破壊力も桁外れに高いパイルバンカーである。
ロボットの合金装甲もベニヤ板の如く叩き割った。
カオスも銃だけでなく、ステッキを振るい、迫ってくる敵をなぎ払う。
「パイパーめ、魔力でロボットを操り人形にしておるのか。
大人を子供へ変えるだけでなく、こういう搦め手も使えるとは計算外だった!」
フック船長のサーベルをステッキで受け止めるカオス。
「唐巣ッ!すまないがここを突破して奥へ向かおう・・・・・・この数、我々だけではマトモに相手しきれんぞ」
白兵戦が苦手だったカオスは後方から迫ってくるロボット群に幾度か銃弾を打ち込む。
足止めを狙っての攻撃だったが迫ってくる勢いは大して変わらない。
生物ではないので威嚇射撃では怯まないのだ。
前方から迫ってきたロボットは丁度、唐巣がパイルバンカーで粉砕しおえていた。
「走るぞ、唐巣」
「ああ、迎え撃つにしろ、逃げ切るにしろ、この場所では不向きすぎる」
互いに頷き、二人は走り出した。

それに気づいたのはれーこだった。
無いよりはマシと思って装備していた猫耳と尻尾がピンっとなる。
「にゃにゃ?」
鼻をピクピクさせ、結界の外を睨むれーこ。
「どうしたのかな。れーこちゃん?」
まるで縄張りに入った動物を警戒するような挙動は猫そのもの。
フーフーととある地面の一点をれーこは睨みつける。
『接近!接近!接近!』
「うぉっと!?見鬼君が反応している!?」
寝そべっていた横島が飛び起きた。
隣においていた人形型の霊的存在探知機見鬼君がぐるぐると廻りだす。
ボコボコと結界の外の地面が盛り上がり、小さなものが幾つも這い出してくる。
「きゃぁ!?」
「こいつはッ?」
ネズミだった。
結界をぐるりと囲むように、無数の穴からネズミが這い出してくる。
その数は1000、いや10000はいるだろう。
視界一杯のドブネズミ。
地面一面に蠢いて、まるでくすんだ灰色の絨毯が波打っているように見える。
あまりの数に優太郎達は顔色が真っ青になった。

ちゅぅぅぅッ!!

ネズミ達が一斉に結界へと体当たりをし始めた。
「く、人海戦術というやつか!?」
捨て身の体当たりで結界に振動が走る。
「ネズミですけど・・・・・・」
優太郎の言葉におキヌがちょっとズレた言葉を返す。
そんなことを言っている間に今度はネズミがガリガリ結界を齧りだす。
かなり強固な結界を張ったが、この数では近いうちに結界は破られるだろう。
「わ、わ、わぁ!?どうする?どうするんだよ芦?」
「わぁぁぁん!?」
横島は結界をよじ登ってくるネズミにパニックになっているし、ちびピートはあまりの恐怖に泣き出している。
「く、この数とターゲットの大きさじゃ、霊体ボーガンは有効じゃないな。
破魔札か何かでネズミ共を結界から引っぺがさないと!!」
優太郎が懐から破魔札を取り出す。
優太郎の霊力は一般人並だが、御札自体がかなり高級なため、それなりに効果は高いはずだ。
「まって、ゆーたろ−。ここはあたしにまかせるにゃ!」
「はい?」
破魔札を投げつけようとした優太郎をれーこが制した。
ずいっと前に出てネズミ達に向かって吼える。

「にゃぁぁぁぁぁごぉぉぉぉぉ〜〜〜!!!」

それはまさしくニャンコの鳴き声だった。

ちゅー!ちゅちゅー!?

「うぉすっげ〜!!」
そう横島が呟くのも無理はない。
怯えた声をあげ万匹のネズミが、れーこの鳴き声一つで一目散に結界から離れた。
まるでモーゼが海を割ったかの如く、ネズミの海が二つに分かれる。
その様子にれーこはにやりと笑って。
「にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!」
ちゅ!?ちゅ!?ちゅ!?ちゅ!?ちゅ!?
れーこが吼えるたびにネズミが逃げ出す。
これがカオス謹製の猫耳の効力だった。
れーこの言霊に猫耳から猫の魔力がエンチャントされ、ネズミに対し本能的恐怖を与える鳴き声を生み出すのである。
見た目にさえ拘らなければ、これ以上無い程のオカルトアイテムである。
結界を恨めしそうに遠巻きに囲んでいるネズミ達。
れーこが腰に手をあてVサイン。
その姿に危機が遠のいたことを感じて優太郎は安堵する。
「これで神父が、パイパーを倒すまでの時間が稼げるか?」
思わず、そう呟いた時だった。

グラリ。

「ほ〜っほっほ!そうはいかないのさ〜!」
どこかで聞いた声が遊園地に響く。
地面が揺れ、間欠泉が吹く上がるように土砂が空中に舞い上がった。
その際に出来た大穴から、推定4、5Mはありそうな巨大なドブネズミが地上へと顔を出す。
巨大ネズミの頭部には悪趣味なピエロ、すなわちパイパーの上半身が生えており、厭らしい笑みを浮かべて優太郎達を見つめていた。


悪魔パイパーの本体、参上。


あとがき

次回でパイパー編は完結する予定です(当てになら無いけど・・・・・・
荒唐無稽なアクションシーンを書くのが好きなんで、そういうシーンをかければいいんですが。
あまり唐巣とカオスが戦闘していない。
せめて次回では活躍を!!
神父の杭打ち機は地味に役立つ予定です。

レス返し


azumaさん

猫耳は眷属のネズミ相手に使用しました。
残念なことにバトルシーンはあまり無かったです。
人形相手に撃ち貫くだけでした。


内海一弘さん

はじめは男全員で猫耳モード。
ある意味で凶悪な戦いを書いていたんですが・・・・・・あまりに語尾がうざかったんで削除。
800年前は猫耳騎士団と激闘を繰り広げたんですけどね。
パイパーとは優太郎、横島が先に遭遇しました。

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