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▽レス始

「光と影のカプリス 第32話(GS)」

クロト (2006-10-10 18:38/2006-10-10 18:54)
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 その次の日、横島と小竜姫は予定通りGS協会に出向くことになった。

「行ってらっしゃーい♪」

 それをタマモがにこやかな笑顔で見送る。彼女は電話番だった。
 単なる事務員でも留守番電話よりは印象がいいし、用もないのにタマモをGS協会に連れて行くのは憚りがあるので。
 横島は彼女の期待に応えるためにも、良い仕事を取ってこなければならない。
 タマモとて毎日高級稲荷寿司を食べるわけではないが、たとえば本場の讃岐うどんを食べるために四国に行く、ということになればそれなりに費用がかかる。ボランティアだと収入は時給だけだからそういう贅沢はできない。
 火炙りの刑も怖いが、「横島と2人で旅行するの、楽しみにしてるね」なんて言われればポジティブな意欲もわくというものだ。
 もっともタマモもただ横島に働かせるだけ、なんて身勝手なことを考えているわけではない。電話番やお茶くみはもちろん、必要とあれば除霊の現場にも行くし、帳簿の1つもつける。それなら横島も我が侭な女だとは思わないだろうし、無償で奢ってもらうよりは正当な報酬として受け取る方が感慨も深いではないか。


 GS協会の門をくぐった横島と小竜姫は、さっそく斡旋部に直行した。掲示板の前に立った小竜姫が、画鋲で貼られた何枚かの依頼票を眺めながら横島に訊ねる。

「それで、どんな仕事を探すんですか?」
「はい。今回は初めてですから、すでに現れてる悪霊を祓うだけとか、そんな感じの単純なやつがいいです。報酬はとりあえず気にしない方向で」

 小山事務所は対象に接近しての直接攻撃を得意としている。隠れた悪霊を引っ張り出すとか原因不明の怪現象を解明するとか、そういう面倒なものはどちらかと言えば苦手だった。いずれはチャレンジしたいが、今は経験を積み実績を重ねてスキルと評価を得るのが先決だ。そもそも横島自身、そんな仕事をうまくサポートする自信はない。

「なるほど、分かりました」

 横島の思惑をおおむね理解した小竜姫がそう答えて、依頼票の文を読み始める。現代の人界ではどんな霊的現象が起こっているのか、という初歩的な点からしても、今の彼女には目新しく興味のあることだった。
 やがて横島がその中の1枚を指さしながら小竜姫の袖を引いた。

「所長、これなんかどーでしょう。空き家の除霊、30万円ってやつなんスけど」

 住み着いた浮遊霊の退治、及び可能ならその原因の発見と解決、という内容である。対象は単体、霊力レベルはD。意識はほとんどなく、攻撃はしてこないが説得はまず不可能。と注釈がついていた。
 依頼人が別途に調査業務だけはやった場合、こういう説明が付属しているのだ。その分報酬は安くなってしまうが。

「あ、はい。いいですよ。で、それをどうするんですか?」

 なにぶん初めて来るところだから、小竜姫はよほど怪しいことでない限り彼を信じるしかない。横島は年長の美しい女神さまから頼りにされることに感動を覚えつつ、手続きの方法を解説した。

「これを受付に持って行って詳しい話を聞いて、受ける気になったら正式にお客さんに紹介してもらうんです」

 協会としても無断で依頼人に話をされたり取り合いになったりしたら困るので、依頼人の氏名や連絡先まで依頼票に記載してはいない。第一それでは仲介料が取れないではないか。
 ただしこれはGS側にも利点がある。組織をバックにしている分の信用を得られる上に、依頼料は決定済みだから値切られる心配がないのだ。特に横島たちはまだ無名な上に見た目普通の高校生と女子大生で押し出しが弱いから、そういう面倒が省けるのは助かる。
 さまざまな意味で新規開業者向けのシステムと言えるだろう。
 2人が受付に行くと、そろそろ退職も近そうな風貌をした男性の担当者が、今日は暇なのかお茶まで出して親切に説明してくれた。

「これですか。まあ中身はごくありふれたもので難易度も低い方なんですが、報酬が相場より低いんで今まで残ってたやつですね。
 やってくれるなら紹介しますよ」

 横島たちはルーキーだが仕事のレベルも低いので、担当者氏は特に危惧は抱かなかったようだ。
 彼の話によると、依頼人は貸家の前の住人が出て行ったので新しい借り手を募集していたのだが、それが見つからないうちに浮遊霊が入り込んでしまったらしい。ただあまり裕福でないので報酬があまり出せず、そのため引き受け手がいなかったという。
 何しろ30万円では、ちょっと道具を多めに使ったらすぐ赤字になってしまうのだ。また屋内の仕事だと、建物や家具を破損したら弁償という場合もある。令子のような一流どころなら素手でもOKだが、そういう連中はこんな安い仕事洟(はな)も引っ掛けない。
 横島が今住んでいるアパートの件と似ていたが、こういうのは除霊の仕事としては割と多いケースなのだ。
 それはさておき。小山事務所は道具代はタダみたいなものだし、あまり贅沢を言ってられる身分でもない。横島も霊力レベルAで30万円なら受けないが、Dならまあいいかと判断した。
 小竜姫がちらりと目を向けてきたのに頷いて、受諾の意を示す。
 こうして、横島たちは多少安めながら仕事を取ってくることに成功したのだった。


 その日は依頼人と会って鍵を借りたころには日が暮れてしまっていたので、横島と小竜姫が現地に赴いたのは翌日である。屋内の仕事で狐火を使うわけにはいかないので、タマモは今日も留守番だった。
 2人がそこに到着してみると、なるほど周りの家とは微妙に違う冷たい感じがある。外から見てこうなら、家の中には依頼書通り、あるいはそれ以上の霊がいるに違いない。

「依頼には『可能ならその原因の発見と解決』ってありますけど、外から見て何か分かります?」

 と横島は雇い主に声をかけた。自分には分からないが、力を封印しているとはいえ高位の竜神である彼女になら分かるかも知れない。

「そうですね、少し周りを歩いてみましょう」

 だが小竜姫もすぐには分からなかったようで、横島を後ろに従えて塀の周りを歩きながら上を見たり横から眺めたりし始めた。やがて門の前で立ち止まって、

「ここですね。この門から『陰の気』が入って来てるんです。元気な人が住んでいればはね返せる程度の微弱なものですけど、空き家になればたまる一方ですから。
 浮遊霊というのはそういう所に惹かれて集まってくるものです」

 と風水っぽい概念で見解を示した。
 見れば丁字路の交差点のすぐ先が門で、道路がまっすぐ門に向かう形になっている。道路に沿って流れて来た気がそのまま門から家に入っていく、ということらしい。建築主が出入りの便利さを優先してそんなことは気にかけなかったのか、それとも門ができてから丁字路ができたのか、そこまでは分からないが。

「じゃあ門を移動させれば解決するんですか?」
「そうですね。すでに中にこもってる『陰気』は別に浄化しなきゃいけませんけど」

 小竜姫は確信に満ちた表情で答えた。現代文明とか奇抜な発想とかを抜きにした一般的な霊学では、やはり小竜姫は横島のはるか上を行っている。
 横島はちょっと首をひねって、

「うーん、でも門を動かすのはすぐってわけにはいきませんよね。とりあえず結界札でも貼っときましょうか」
「そうですね、それでいいと思います」

 敷地の中に入ってから、門扉を閉じてビニール袋に入れた結界札を数枚貼り付ける。もちろんこれは応急処置でしかないが、最終的にどうするかを判断するのは依頼人の仕事であろう。
 鍵を開けて家の中に入って見ると、間取り図の通りではあるが廊下などが狭く感じた。電話台などが置かれているせいかも知れない。
 凶暴な霊ではないらしく破壊の後は見られなかったが、日光が遮られているわけでもないのにひんやりとする。小竜姫の分析は間違いなかったようだ。
 しかしそれより問題なのはこの家屋の構造の方で、

「これじゃ木刀振り回すわけにはいかないっスね、小竜姫さま」

 狭い場所で長柄の武器は使いにくいし、間違って壁に穴でも開けてしまったらえらいことだ。
 こういう状況では、横島の破術や金縛りが極めて有用である。万が一かわされても、建物や家具には一切傷をつけずに済むから。
 ただそれでは小竜姫の修業にならないので、彼もそういう提案はできない。

「……そうですね、やむを得ません」

 そうした事情は小竜姫にも理解できる。
 まあ考えてみればいつでも神剣を使えるとは限らないのだし、これも修業だろう。そう思い直して、静かに呼吸を整え闘気を高める。
 そこに後ろから物言いがついた。

「あ、待って下さい小竜姫さま。霊によっては強いのが来ると逃げ出すこともありますんで、最初から気合い入れ過ぎるのは良くないかと」

 霊の行動パターンはさまざまで、狂犬のように襲い掛かって来る者もいれば攻撃されても反応しない者もいる。そしてこちらの気配を察したとたんに逃げて行く者もいるのだ。比較的少ないケースだが、令子の所にいた頃はたまに見た。

「……そ、それもそうですね」

 いきなり気合いを削がれた小竜姫がどもりながら答える。
 これも横島の言う通りだ。敵がもし非力で敏感なタイプなら、戦わずに逃走することもあるだろう。
 その位のことは小竜姫も頭では分かっていたが、修行場では必要ない配慮だったので、ついいつもの癖が出てしまったのだ。
 なるほど、これが現場の実戦というものか。と小竜姫は何度も心で頷いた。
 だがそこにまたしても後ろからの声がかかる。

「つーわけで小竜姫さま、素手ですけどがんばって下さい! 終わったら俺が熱いベーゼでねぎらいますので」
「要りません!」

 2度までも水を差されてかっくんと膝を崩す小竜姫。
 訂正。この男と一緒にいるときに力みすぎを心配することはない。


 しかし横島もやる気はちゃんとあるようで、今度はカリンを呼び出していた。彼自身はお札で小竜姫のピンチに備え、カリンには背後の守りと逃げられた時の追跡をさせる気らしい。たかがレベルDの浮遊霊1体相手に慎重すぎる布陣だが、彼の商人の血は「初仕事に失敗は許されない」とまことにシビアな判断を下していたのだ。
 まずは1階の各部屋を見て回る。小竜姫の見立てでは家の主の拠点、つまり1階の書斎にいるだろうという事だったが―――。

「……何ダ、オ前タチハ? ココハ俺ノ家ダ、出テ行ケ……!」

 やはり彼はそこにいた。しかしほとんど意識はない、と書かれていたはずの霊が非常にまともな発音で喋ったことに横島とカリンは少なからず驚いていた。

「しゃべった……?」
「それに霊力も高いぞ。C……いやB以上か?」

 といっても調査を請け負ったGSが測り間違えたのではない。それからかなり日数が経ったため、その間に紛れ込んできた他の霊を吸収して強くなり、意識も発達したのである。
 明らかな敵意が感じられた。逃げ出すどころか、気を抜いたら向こうから襲って来るかも知れない。

「うーん、これじゃ割に合わんな。いや報酬を上げてもらえば……って、依頼人はそんな金がないからこーなったわけで、美神さんならともかく俺と小竜姫さまじゃムリだよなぁ……」
「なるほど、事前調査の報告が正しいとは限らないというわけですね。本当に勉強になります」

 後ろで横島が何かぶつぶつ言っているのが聞こえたが、小竜姫は依頼料の相場など知らないし、そもそも目的が商売ではなく修業だからあまり気にしなかった。今の彼女にとってはかなりの強敵を前にして、真剣な顔つきで構えを取る。左手は軽く握って胸の前に、お札を持った右手は腰の辺りにそえられていた。
 ところでカリンもこうした点では小竜姫と似たようなものだから、報酬が少ないからと言って意欲をなくしたりしない。肩から愛剣を引き抜いて小竜姫に差し出す。

「今のあなたではあれを素手やお札で倒すのはちょっと骨だろう。この部屋には家具もないし、これを使えば楽になると思うが」

 デザイアブリンガーは禍刀羅守(カトラス)からできた霊剣だが、同時にカリンの一部でもあるから、横島とカリンは小竜気(シャオロニックオーラ)を注ぎ込むことでパワーアップさせることができる。小竜気=小竜姫の竜気だから、当然小竜姫にもそれは可能だ。
 そして本来の持ち主である横島たちは、手に持っていなくても霊力を送り込むことができたから―――。

 そんな威力の斬撃に耐えられる浮遊霊など、いるはずがなかった。

「ここはあなたの棲むべき場所ではありません。すみやかに輪廻の輪に還って、新しい人生を歩んで下さい」

 という弔いの言葉に続いてひらめいた一閃で、除霊はあっさり終わったのである。


 その日の夜、小山事務所の所員一同は初仕事を無事成功させたということで祝賀会を開いていた。

「除霊自体はかなり簡単に済んでしまいましたが、あの霊にとってはその方が良かったでしょうし、私もいろいろ得るところがありました。誰もケガせずにすみましたし、本当によかったと思います。
 ということで、ささやかですが一席用意させていただきました。遠慮なく召し上がって下さいね」

 という小竜姫の挨拶が終わるか終わらぬかのうちに、横島とタマモがテーブルの上の食べ物をぱくつき始める。タマモの前には稲荷寿司が、横島には野菜と果物主体のオードブル。小竜姫にはいつもより少し豪華な精進料理とお神酒が用意されていた。
 小竜姫は他人が肉や魚を食べることにとやかく言う気はないが、自分がメニューを選ぶ時にわざわざそれを入れる気もないというわけだ。まあ、殺生を禁じるのなら植物も同じじゃないかという気もしないでもないが……。

「でもカリンさん、あなたは食べられないのにつまらなくないですか?」
「いや、いつもの事だからな。気にしないでくれ」

 それに横島もタマモも美味しそうに食べてくれるから、カリンはむしろそれを見ていたいという気分の方が強かった。今だってせっかくの祝賀会、食べることはできなくても参加しているだけで楽しい。

「まあ何にせよ、うまくいって良かったっスね」

 横島も上機嫌でそう言った。ただその内心はちょこっとだけ複雑である。
 霊力レベルB〜Cとなれば、他の条件にもよるが本来は安くても500万円はする仕事だ。しかし小竜姫がそうしたことには関心が薄い上に、レベルBだったという証拠もないので増額交渉に踏み切れなかったから商売としては失敗だったかな、と横島は感じていた。
 ただこれで次の仕事も堂々と取れるし、小竜姫は素直に喜んでいるからまあいいか、という所なのだ。考えてみれば仮に再調査を依頼して適正価格をつけてもらったとしても、依頼人にはそれを支払う財力はないのだから。
 もっともこういう裏事情はタマモには話していない。言わでものことを言ってみずから不幸を招くなど、どう考えても間抜けではないか。

「それにしても小竜姫さま、何で俺の祝福の気持ちを受け取ってくれないんスか!? せっかく全身全霊を以ってお祝いしよーと思ってるのに」
「要りません!」

 小竜姫は言下に拒絶した。そんなモノを捧げられたらお嫁に行けなくなってしまう。
 これさえ無ければ安心して頼れるんだけど……という小さな小さな呟きは、言葉としては出て来なかった。


 まあそんなこんなで祝賀会は和気藹々と(?)進んでいたが、突然隣の部屋から妙な音が聞こえたかと思うと、何らかの霊体が出現する気配が感じられた。

「―――誰だ!?」

 危険や悪意は感じなかったが、一応は竜神の領域であるこの部屋に空間転移して来られるなどただ者ではない。カリンは素早く立ち上がると、横島を後ろにかばいつつ肩の剣に手を伸ばす。
 もっとも小竜姫はその正体をすでに察していたようで、軽く手を挙げてカリンを止めると、襖を開けて入ってきた女性に向かって少しあきれたような声をかけた。

「こんな時間に何しに来たんですか? ヒャクメ」

 と。


 小竜姫にヒャクメ、と呼ばれたその女性は、見た目は彼女と同じくらいの年頃で、特徴的な髪型と服装をした3つ眼の美女であった。少なくとも人類ではないが、小竜姫の知り合いのようだし雰囲気がいかにも軽そうでフレンドリーなので、横島たちはとりあえず警戒心は放棄することにした。
 当のヒャクメは小竜姫の言い草にさも心外そうな表情をつくって、

「そんな言い方ってないと思うのねー、せっかく様子を見に来てあげたのに。昼間は仕事だからまずいでしょう?」

 言われてみればそれもそうだ。気分を直した小竜姫が改めて来意を訊ねると、ヒャクメは卓袱台の上の食べ物と飲み物を眺めながらごく軽い調子で答えた。

「別にたいしたことじゃないのね。時間が空いたからちょっと様子を見に来ただけなんだけど、その様子なら大丈夫そうね。
 ……ところで私も夕ご飯まだなのね。せっかくだから混ぜてもらっていい?」
「別に構いませんが……」

 まさか夕食をたかりに来たのか?とかすかな疑念を抱きつつも、断るほどの事でもないので小竜姫は承知した。

「じゃあこちらへどーぞ、美人のおねーさん!!」

 横島がすかさず尻を浮かせて、ヒャクメが入るスペースを空ける。今は祝賀会の席なので、飛びかかるよりは普通に話をして親密になろうと目論んだようだ。ヒャクメは小竜姫との会話を聞く限りでは彼女と同格、つまりかなり高位の神と思われるが、煩悩魔人にそんなステータスは何の抑止力にもならなかった。
 ヒャクメは特にためらいもせず、横島の隣に腰を下ろして自己紹介を始めた。

「ありがとう、それじゃお邪魔するのねー。あ、私はヒャクメ。神界で調査官をしてて、今は小竜姫の再修業の相談役とお目付け役も仰せつかってるのね」

 といってもいつも人界にいるわけではないらしく、ときどきここに来て話を聞いたり、法的な書類を用意してやったりするのが主な役目だそうだ。
 その一連の発言に小竜姫は面白くなさそうな顔つきをしていたが、間違いではないらしく口出しはしてこなかった。

「私も仕事増やされちゃったけど、小竜姫も運が悪かったのねー。場所が香港じゃなくて日本だったら、メドーサに勝てたかも知れないのに。
 で、あなたが横島さんね? 小竜姫から話は聞いてるのねー。箱入りな上に融通が利かないから大変だと思うけど、見捨てないであげて欲しいのね」

 ヒャクメは横島たちとは初対面にもかかわらず言いたい放題だったが、小竜姫は言い返す言葉が思いつかないのかやっぱり黙っている。箸を持った右手がぶるぶる震えていたりするけれど。
 話し好きな女性らしく、横島を相手にしてぺらぺらと喋り続けている。

「今日だってうまくやれば報酬が500万円になったかも知れないのに、小竜姫って欲がないから。ま、それもいい所なんだけど」
「―――ッ!?」

 ヒャクメに悪気はない。ただちょっと、さっき横島の脳裏を占めていた思念をなかば無意識に読んでしまっただけのことである。
 お神酒でちょっと舌がなめらかになっていたせいでついそれを口に出してしまったからとて、誰がそれを責められようか。
 というか、責められるのは横島であった。

「横島、今の話ほんとなの? 30万円を500万円にできたっていうの」

 横島の背後に狐色の業火がどよどよどよんと揺らいでいる。今の話を逆に考えれば500万円の仕事を30万円で受けてしまったという事だから、普通の経済感覚を持っていれば怒って当然だろう。

「ま、待てタマモ! 俺は何も悪くないぞ。第一依頼人にそんな金は無くてだな」
「つまり、話は間違いじゃないってわけね?」

 言い訳するということは、ヒャクメの話が事実なのを認めるということだ。横島はまたしても自分が盛大に墓穴を掘ったことに気がついた。
 カリンが慌てて止めに入ったが、それは1歩遅く。

「あんぎゃーーーっ!!」

 横島の絶叫が部屋に響き渡った。それでも頭がアフロになる程度で済んだのは、タマモも初仕事成功という手柄は手柄として認めていたからであろう。
 南無妙神山大菩薩。


 ―――つづく。

 次は正当な報酬を受け取れるといいですねぇ(ぉぃ
 ではレス返しを。

○whiteangelさん
 小竜姫の好感度と自分の小遣いもかかってますからねー。
 まさに正念場です。

○もけけぴろぴろさん
>と思えばやはり横島でしたね
 相手が美人でなければ考えようともしなかったでしょうw
>老師
 有り得ますねぇ……でもゲームで買収できるのならずいぶん楽な課題ですなw

○KOS-MOSさん
>タマモのお揚げにかける魂
 横島君は一緒に暮らしてかなり経つのに、まだ見くびってたようですw
>小竜姫。脱☆だめなこがんばれ
 そして女神様の誇りを取り戻すのです!
 ヒャクメさまは……どうでしょう。

○盗猫さん
 横島もまだまだ修業が足りませんw
>小竜姫フラグ
 今の所は頼りになる異性ですからねー。今の所は(ぇ

○零式さん
>だからこっちがこんな天気になったんかっ!?
 今度は槍が降るかも知れませんねぇ。
>タマモはお揚げ坂あきらめてなかったんすね?
 生ある限り彼女の前進は続くのです。

○ミアフさん
>実質的な経営者が横島だから、安全な仕事ばかりしそう
 難しい仕事が来たらカリンに押しつけるという手がありますから(ぉぃ

○HALさん
 小竜姫さまはしばらく人界にいてもらいます。もちろん他のイベントも入れますけど。南部(中略)はまたそのうちに(逃)。
>横島、もうあっちには戻らないかもしれないなあ
 丁稚待遇のままではカリンとタマモが納得しないでしょうからねー。「美神&横島除霊事務所」にするくらいのはじけっぷりを見せないと令子に勝ち目はなさそうです。
>後見人まで唐巣神父に変わっているようだし
 GS試験受けた時すでに唐巣教会所属でしたからね。
 というか令子からは霊能は習ってな(以下略)。
>貴重な男を失ったことになるわけで
 いざとなれば美智恵が西条を日本に呼ぶことでしょう。
>「しかし」の使い方、間違ってないと思いますよ?
 ありがとうございますー。

○遊鬼さん
>神父も小竜姫さまもあまりに素直すぎ(笑)
 すっかり騙されてますw
>タマモ
 らぶこめは良いものです。

○暁に咲く華さん
 励ましのお言葉ありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくです。

○TA phoenixさん
>完全に他力本願な態度が涙を誘います^^;
 最初が情けないからこそ、成長していく姿が共感を得られるのですよ! ……たぶん。
>小竜姫様がヘタレていくにつれてヒャクメが活躍することで神魔のバランスが保たれたのでしょうか?
 つまり小竜姫さまが成長するとヒャクメがだめなこになるというシーソーゲームなんですね?<マテ
 だとするとヒャクメも自分の地位を守るために何かたくらみそうですねぇw
>マーフィーの法則の生きた見本ですねw
 別のマーフィーなら良かったんですがww

○内海一弘さん
>令子
 実はまだ情報が行ってません。
 もちろんすぐバレますけどww
>ハーレムへの第一歩
 令子や唐巣のところでは出来ませんでしたからねぃ。
 危うし小竜姫さま!
 そしておキヌちゃんの再登場はいつだ(ぉぃ
>タマモ
 ある意味良妻かも知れませんw

○通りすがりのヘタレさん
>横島は果たしてタマモを満足させ、燃やされずに済むのか。いや、すまない!
 やっぱり燃やされました(酷)。
>目的(煩悩)のために頭の回転を早くさせたその能力を賞賛するべきか否かが難しいところ
 有能な悪人が1番危険ですものねぇ。
>美神親子は舞台落ちしたわけですが
 せめて令子がGSに復帰しないとどうにもならなさそうですが、後釜は現れる気配もありません(酷)。
>メフィストフラグ
 一応「また会おうな」は果たしたことですし<マテ

○SSさん
>美味しい・・・美味しすぎるよ横島
 いい思いばかりさせるのも何なので、とりあえず燃やしてみました<マテ

○とろもろさん
>さすが紅ユリと超やり手支社長の息子ですね!
 将来が楽しみ、というか怖いです。
>小竜姫様のお札
 今は100マイトしか使えないので売るほどの物はつくれない……というか、それを仕事にしてたら修業になりませんし(^^;
>経費を極限まで節約
 商売の基本であります。
 今回も普通のお札使ってたら赤字で、タマモの火力が倍になっておりました。残念(ぇ
>使ったり、売ったお札代は、別計算で経費としてあげれば
 令子なら使ってない分まで(中略)かも知れませんねぇ。
>小竜姫様が人間竜姫ちゃんで免許を取るときは、やはり、横島君の弟子って言う事になりますよね?
 当然そうなるでしょうね。
 小竜姫さま、今ならまだ間に合うから戻りましょう!
>お揚げ坂を上りきろうと考えているタマモちゃんにいくらでもと言うとは
 昼間に頭を使いすぎてボケてたのかも知れません。

○kouさん
 ご意見ありがとうございます。
>これなら端から見るとメドーサとやる事は変わりませんし
 表面的には似たような事をしていても、立場が違えば周囲の解釈も異なると思われます。メドーサは逆らった者を殺したりもしてますし。
>デタントの関係上魔族がGS組織を作っても小竜姫の事を出されると魔族のほうを責められないでしょうし
 これはその通りですね。同じような条件(能力封印とかレポートとか)なら文句はつけられないでしょう。
 ただ人間並みの能力でメドーサのような真似をしてもうまくいくはずがありません。小竜姫はそこまで考えていなかったかも知れませんが、ヒャクメはそうタカをくくって開業のためのマンション賃借を承知したのでしょう。
 その理屈が通らなかったら、kouさんの仰る通り最初のレポートを出した時に怒られて閉店でしょうね(^^;
>その程度の事の餌にしましたか、横島も未熟ですね
 それも要らないエサでしたしw
 しかし愛子の存在に思いを致さぬとは、確かにおっしゃる通り失策でしたねぇ。ここではカリンとタマモがいる分、飢えてないのかも知れません。
>給料
 まあお人好しの横島のことですから、愛子を雇ったら最低賃金くらいの金は払うでしょう。彼がそんなに金に執着する男だったら、令子の丁稚になるわけがありませんし。
 そういえば愛子の学費ってどうなってるんでしょうねぇ。備品扱いでしょうか<マテ
>経営
 そうですね、実力的には問題ないと筆者も思ってます。
 美神親娘も唐巣教会も敵対はしないでしょうし。
>神父の弟子の名を使えば日本は権威に弱い所が沢山あるので簡単に中々の仕事を取れるでしょうから
 そういうことは神父や小竜姫が好かない……というかそんな仕事横島の方がサポートしきれません(^^;
 彼も本来はまだ見習いレベルですから。カリンはともかく(ぉ
>あっさりと億万長者は確実でしょうね
 しかしそう簡単に儲けられては横島らしくないような気もしますねぇ。
>両親のコネ
 横島はあの両親に必要以上に借りを作ろうとはしないかとw

○名称詐称主義さん
 うーん、香港の件の詳しい事情は六道女史も知らないでしょうから、現状では小山事務所はノーマークでしょうねぇ。
>その航海があぶなかしく見えてしまうのは
 やはり横島には最後でコケるというオチが似合うからでしょうか?(酷)

○KEIZUさん
 横島と小竜姫が互いの不足を補い合えば死角はないですからねぇ。カリンとタマモが監督と補佐もしますし。
 しかし普通に成功するだけじゃ面白くないですよねぃ<マテ

○読石さん
>諸葛横
 こやつの場合知略はほとんど自分のためというのが称号に相応しくないようなw
>タマモ
 横島もいいかげん観念すればいいのですが。

○わーくんさん
 開業祝いありがとうございますw
 横島君も小竜姫さまを射止めるべく奮闘してくれることでしょう。
 六道女史は……未定です。

   ではまた。

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